JP4056248B2 - アミロイドβタンパク質産生阻害薬のスクリーニング方法 - Google Patents

アミロイドβタンパク質産生阻害薬のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミロイドβタンパク(Aβ)の産生を阻害する化合物をスクリーニングする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルツハイマー病患者脳の病理学的特徴として、神経細胞の脱落に加えて、老人斑、神経原線維変化の蓄積が知られている。これらのうち、アルツハイマー病における最初期の病理変化は老人斑の形成であり、その主要構成成分がAβであることから、Aβの産生あるいは分解の異常がアルツハイマー病の発症・進展に深くかわっていると考えられている。Aβは前駆体タンパク質(βAPP)からβ-セクレターゼとγ-セクレターゼにより切断され産生される。β-セクレターゼについては、既に新規アスパラギン酸プロテアーゼであることが同定された(Neuron 27, 419-422, 2000)。一方、γ-セクレターゼについては、家族性アルツハイマー病(FAD)原因遺伝子、プレセニリンあるいはプレセニリンを含む複合体がその活性発現に関与していることが明らかにされている(Neuron 27, 419-422, 2000)。また、最近、プレセニリンと複合体を形成し、βAPPのプロセシングに関与する新規膜貫通型糖蛋白質としてニカストリン(Nicastrin)が報告された(Nature 407, 48-54, 2000)。
XB31α遺伝子は、鈴木利治らのグループによって単離されたが(荒木陽一、富田進、鈴木利治[2001]第74回日本生化学会大会10月25-28日京都; Genebank/EBI Data Bank: AF438482)、その機能は明らかにされていない。
XB31β遺伝子は、かずさDNA研究所の小原収らのグループによって単離されたが(Nucleic Acids Res, 28, 331-332, 2000; HUGE cDNA clone KIAA0726)、その機能は明らかにされていない。
XB31αおよびXB31βは、一回膜貫通型の膜タンパク質であり、アミノ末端側の細胞外ドメインには、2つのカドヘリン−様モチーフと1つのCa2+結合サイトを有する。約100アミノ酸からなる細胞内ドメインは、X11L結合サイトと酸性アミノ酸に富む領域を有する。
XB31α遺伝子は、スプライシングの違いにより2種類のタンパク質XB31α1とXB31α2を発現する。XB31α1は、XB31α2のアミノ末端側の10アミノ酸をコードする1つのエクソンを欠失している以外のアミノ酸配列はXB31α2と完全に一致する。XB31αとXB31βは、アミノ酸レベルで約55%の相同性を示す。
X11LはPIドメインとPDZドメインを有しており、PIドメインを介してβAPPと複合体を形成し、この複合体が解離することによりAβの産生が増加することが報告されている(The Journal of Biological Chemistry, 274, No.4, 2243-2254, 1999、The Journal of Biological Chemistry, 275, No.17, 13056-13060, 2000)。
XB51はX11Lと結合することにより、X11LとβAPPとの複合体が解離し、Aβの産生が増加することが報告されている(The Journal of Biological Chemistry, 275, No.30, 23134-23138, 2000)。
しかしながら、XB31αまたはβがX11LおよびβAPPと複合体を形成すること、X11LとXB31αまたはβおよびβAPPとの解離により、Aβの産生が増加することは全く知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようにAβの産生に関する詳細なメカニズムが明らかにされていなかったために、Aβの産生を阻害し、アルツハイマー病を効果的に予防・治療する化合物のスクリーニング方法は報告されていなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
(1)XB31αまたはβがX11LおよびβAPPと複合体を形成すること、
(2)X11LがXB31αまたはβおよびβAPPと解離することにより、Aβの産生が増加することをはじめて見い出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)XB31αまたはβを用いることを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(2)XB31αまたはβおよびX11Lを用いることを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(3)XB31αまたはβとX11Lとの複合体を用いる上記(2)記載のスクリーニング方法、
(4)XB31αまたはβ、X11Lおよびアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(5)XB31αまたはβとX11Lとアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)との複合体を用いる上記(4)記載のスクリーニング方法、
(6)XB31αまたはβ、X11L、アミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)およびXB51を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(7)XB31αまたはβとX11Lとアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)との複合体、およびXB51を用いる上記(6)記載のスクリーニング方法、
(8)XB31αまたはβ遺伝子を用いることを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(9)XB31αまたはβ遺伝子およびX11L遺伝子を用いることを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(10)XB31αまたはβ遺伝子、X11L遺伝子およびアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)遺伝子を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(11)XB31αまたはβ遺伝子、X11L遺伝子、アミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)遺伝子およびXB51遺伝子を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(12)XB31αまたはβ、X11L、アミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)およびXB51を共発現し得る細胞を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(13)Aβの産生量を指標とする上記(1)〜(12)記載のスクリーニング方法、
(14)XB31αまたはβとX11Lとの解離を阻害する化合物もしくはXB31αまたはβとX11Lとの結合を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法である上記(1)〜(13)記載のスクリーニング方法、
(15)アミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)とX11Lとの解離を阻害する化合物もしくはβAPPとX11Lとの結合を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法である上記(1)〜(13)記載のスクリーニング方法、
(16)XB31αまたはβおよびアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)と、X11Lとの解離を阻害する化合物、もしくはXB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの結合を促進する化合物、またはその塩のスクリーニング方法である上記(1)〜(13)記載のスクリーニング方法、
(17)X11LとXB51との結合を阻害する化合物、もしくはX11LとXB51との解離を促進する化合物、またはその塩のスクリーニング方法である上記(1)〜(13)記載のスクリーニング方法、
(18)Aβ関連疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法である上記(1)〜(17)記載のスクリーニング方法、
(19)アルツハイマー病の予防・治療薬のスクリーニング方法である上記(1)〜(17)記載のスクリーニング方法、
(20)XB31αが配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩である上記(1)〜(7)記載のスクリーニング方法、
(21)XB31βが配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩である上記(1)〜(7)記載のスクリーニング方法、
(22)X11Lが配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩である上記(2)〜(7)記載のスクリーニング方法、
(23)βAPPが配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩である上記(4)〜(7)記載のスクリーニング方法、
(24)XB51が配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩である上記(6)または(7)記載のスクリーニング方法、
(25)XB31α遺伝子が配列番号:2で表される塩基配列を含有する遺伝子である上記(8)〜(11)記載のスクリーニング方法、
(26)XB31β遺伝子が配列番号:4で表される塩基配列を含有する遺伝子である上記(8)〜(11)記載のスクリーニング方法、
(27)X11L遺伝子が配列番号:6で表される塩基配列を含有する遺伝子である上記(9)〜(11)記載のスクリーニング方法、
(28)βAPP遺伝子が配列番号:8で表される塩基配列を含有する遺伝子である上記(10)または(11)記載のスクリーニング方法、
(29)XB51遺伝子が配列番号:10で表される塩基配列を含有する遺伝子である上記(11)記載のスクリーニング方法、
(30)XB31αまたはβ、X11L、アミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)およびXB51を共発現し得る細胞を含有することを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(31)上記(1)〜(29)のいずれかに記載のスクリーニング方法または上記(30)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩、
(32)上記(1)〜(29)のいずれかに記載のスクリーニング方法または上記(30)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩を含有することを特徴とする医薬、
(33)Aβ関連疾患の予防・治療剤である上記(32)記載の医薬、
(34)アルツハイマー病の予防・治療剤である上記(32)記載の医薬、
(35)哺乳動物に対して、上記(1)〜(29)のいずれかに記載のスクリーニング方法または上記(30)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とするAβの産生阻害方法、
(36)Aβ関連疾患の予防・治療方法である上記(35)記載の方法、
(37)アルツハイマー病の予防・治療方法である上記(35)記載の方法、
(38)XB31αまたはβとX11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβとX11Lとの結合を促進することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害方法、
(39)XB31αまたはβおよびアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)と、X11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの結合を促進することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害方法、
(40)Aβ関連疾患の予防・治療方法である上記(38)または(39)記載の方法、
(41)アルツハイマー病の予防・治療方法である上記(38)または(39)記載の方法、
(42)アミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩をスクリーニングするためのXB31αまたはβの使用、
(43)XB31αまたはβを含有することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害剤、
(44)XB31αまたはβ遺伝子を含有することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害剤、
(45)Aβ関連疾患の予防・治療剤である上記(43)または(44)記載の剤、
(46)アルツハイマー病の予防・治療剤である上記(43)または(44)記載の剤、
(47)XB31αまたはβとX11Lとの複合体またはその塩、および
(48)XB31αまたはβとX11Lとアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)との複合体またはその塩を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるXB31αは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、XB31αと略記する)である。
本発明で用いられるXB31βは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、XB31βと略記する)である。
本発明で用いられるX11Lは、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、X11Lと略記する)である。
本発明で用いられるβAPPは、配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、βAPPと略記する)である。
本発明で用いられるXB51は、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、XB51と略記する)である。
XB31α、XB31β、X11L、βAPPまたはXB51(以下、本発明で用いられるタンパク質と略記する場合がある)は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0007】
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9または配列番号:11で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、各配列番号で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
各配列番号で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、各配列番号で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、各配列番号で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
【0008】
実質的に同質の活性としては、XB31αまたはβの場合はX11LのPDドメインとの結合活性などが、X11Lの場合はXB31αまたはβやβAPPとの結合活性などが、βAPPの場合はX11LのPDドメインとの結合活性などが、XB51の場合はX11Lとの結合活性などが挙げられる。
実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、上記の活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
【0009】
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、▲1▼各配列番号で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼各配列番号で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼各配列番号で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、▲4▼各配列番号で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲5▼それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、活性が消失しない限り、特に限定されない。
具体的には、XB31αには、(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するXB31α1と、(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第71番目と72番目に10アミノ酸が挿入されたXB31α2が存在する。
【0010】
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するXB31αをはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
【0011】
本発明で用いられるタンパク質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0012】
本発明で用いられるタンパク質またはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、それらタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0013】
本発明で用いられるタンパク質またはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0014】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0015】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0016】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0017】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したペプチドとを製造し、これらのペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質を得ることができる。この粗タンパク質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質のアミド体を得ることができる。
タンパク質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質のアミド体と同様にして、所望のタンパク質のエステル体を得ることができる。
【0018】
本発明で用いられるタンパク質またはそのの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。タンパク質の合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられるタンパク質を構成し得るペプチドまたはアミノ酸残基と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のタンパク質を製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられるタンパク質を精製単離することができる。上記方法で得られるタンパク質が遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0019】
本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子は、各タンパク質をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該遺伝子としては、本発明で用いられるタンパク質をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であってもよい。
本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子としては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明で用いられるXB31αをコードする遺伝子としては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列を含有する遺伝子、または配列番号:2で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するXB31αと実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であれば何れのものでもよい。
本発明で用いられるXB31βをコードする遺伝子としては、例えば、配列番号:4で表される塩基配列を含有する遺伝子、または配列番号:4で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するXB31βと実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であれば何れのものでもよい。
【0020】
本発明で用いられるX11Lをコードする遺伝子としては、例えば、配列番号:6で表される塩基配列を含有する遺伝子、または配列番号:6で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するX11Lと実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であれば何れのものでもよい。
本発明で用いられるβAPPをコードする遺伝子としては、例えば、配列番号:8で表される塩基配列を含有する遺伝子、または配列番号:8で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するβAPPと実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であれば何れのものでもよい。
本発明で用いられるXB51をコードする遺伝子としては、例えば、配列番号:10で表される塩基配列を含有する遺伝子、または配列番号:10で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するXB51と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子であれば何れのものでもよい。
【0021】
各配列番号で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、各配列番号で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するXB31αをコードする遺伝子としては、配列番号:2で表される塩基配列を含有する遺伝子などが用いられる。
配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するXB31βをコードする遺伝子DNAとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有する遺伝子などが用いられる。
配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するX11Lをコードする遺伝子としては、配列番号:6で表される塩基配列を含有する遺伝子などが用いられる。
配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するβAPPをコードする遺伝子としては、配列番号:8で表される塩基配列を含有する遺伝子などが用いられる。
配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するXB51をコードする遺伝子DNAとしては、配列番号:19で表される塩基配列を含有する遺伝子などが用いられる。
【0022】
本発明で用いられるタンパク質を完全にコードする遺伝子のクローニングの手段としては、本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明で用いられるタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
遺伝子の塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードする遺伝子は目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該遺伝子はその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明で用いられるタンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子から目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該遺伝子断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0023】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0024】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明で用いられるタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明で用いられるタンパク質をコードする遺伝子を含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0025】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0026】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0027】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
【0028】
このようにして、タンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0029】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0030】
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明で用いられるタンパク質を生成せしめることができる。
【0031】
上記培養物から本発明で用いられるタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明で用いられるタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0032】
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明で用いられるタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより測定することができる。
【0033】
〔Aβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法〕
本発明のスクリーニング方法は、
(1)XB31αまたはβを用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(2)XB31αまたはβおよびX11L(好ましくは、XB31αまたはβとX11Lとの複合体)を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(3)XB31αまたはβ、X11LおよびβAPP(好ましくは、XB31αまたはβとX11LとβAPPとの複合体)を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(4)XB31αまたはβ、X11L、βAPPおよびXB51(好ましくは、XB31αまたはβとX11LとβAPPとの複合体、およびXB51)を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(5)XB31αまたはβ遺伝子を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(6)XB31αまたはβ遺伝子およびX11L遺伝子を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(7)XB31αまたはβ遺伝子、X11L遺伝子およびβAPP遺伝子を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(8)XB31αまたはβ遺伝子、X11L遺伝子、βAPP遺伝子およびXB51遺伝子を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(9)XB31αまたはβ、X11L、βAPPおよびXB51を共発現し得る細胞を用いることを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法である。
【0034】
本発明のスクリーニング方法は、例えば、Aβの産生量を指標とすることができる。
Aβとしては、配列番号:13で表されるアミノ酸配列からなるAβ40、配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるβ42、配列番号:15で表されるアミノ酸配列からなるβ43などが挙げられる。
より具体的には、上記のスクリーニング方法において、試験化合物の存在下または非存在下におけるAβの産生量を測定し、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、遺伝子(ゲノムDNA、cDNA)などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
Aβの測定法には種々の方法が用いられるが、Aβ特異的抗体を用いる免疫化学的方法を用いることが好ましい。これらの方法には、免疫沈降法、ウエスタンブロッテイング、酵素免疫測定法、サンドイッチ型酵素免疫測定法あるいはそれらの組み合わせ方法が用いられる。
Aβ特異的抗体としては、ポリクローナル抗体を用いても良いが、例えば、BAN50、BNT77、BS85、BA27、BC05(Biochemistry, 34, 10272-10278, 1995)または6E10、4G8などのモノクローナル抗体を用いても良い。とりわけ、BA27およびBC05は、それぞれAβ40およびAβ42/43に選択的な抗体であるため、これらの抗体、あるいは同様な選択性を有する抗体を用いれば、Aβ40の産生を阻害する化合物、Aβ42/43の産生を阻害する化合物、あるいはAβ40およびAβ42/43いずれの産生も阻害する化合物を選択することが可能となる。
さらに、分泌型βAPP量はAβの産生を間接的に反映すると考えられることから、分泌型βAPP量を免疫沈降法、ウエスタンブロッテイング、酵素免疫測定法、サンドイッチ型酵素免疫測定法などの免疫化学的方法で検出しても良い。
XB31αまたはβ、X11L、βAPPおよびXB51を共発現し得る細胞としては、これらの遺伝子を含有するベクターで形質転換した形質転換体を用いることができるが、他にIMR-32、PC12h、Neuro-2a、SK-N-SHなどの細胞株、またはβAPPとPS-1/2を導入したHEK-293などの細胞株を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法(A)においては、例えば、試験化合物の存在下におけるAβ産生量が、試験化合物の非存在下におけるAβ産生量に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上減少している試験化合物をAβの産生を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。また、コントロールとして、XB31αまたはβ、X11L、βAPPおよび(または)XB51を発現していない細胞を用いて、試験化合物の存在下におけるAβ産生量を測定することもできる。
【0035】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明で用いられるXB31αまたはβ、X11L、βAPPおよびXB51、またはそれらをコードする遺伝子、またはそれらを共発現し得る細胞を含有するものである。
上記した本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物は、
(1)XB31αまたはβとX11Lとの解離を阻害するか、XB31αまたはβとX11Lとの結合を促進することにより、
(2)βAPPとX11Lとの解離を阻害するか、βAPPとX11Lとの結合を促進することにより、
(3)XB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの解離を阻害するか、化合物、もしくはXB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの結合を促進することにより、
(4)X11LとXB51との結合を阻害するか、X11LとXB51との解離を促進することにより、Aβ(特に、Aβ40)の産生を阻害する化合物またはその塩である。
【0036】
上記したスクリーニング方法で得られた化合物またはそれから誘導される化合物は、塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例アルカリ金属)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。
上記した本発明のスクリーニング方法で得られた化合物は、Aβの産生を効率良く阻害することができるので、Aβ関連疾患(例えば、アルツハイマー病)の予防・治療剤として使用することができる。
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物を含有する医薬は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等があげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウム等が用いられる。
また、例えば非経口投与に適する剤形としては、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉注射剤、腹腔内注射剤など)、外用剤(例、経鼻投与剤、経皮投与剤、軟膏剤など)、座剤(例、直腸剤、膣座剤など)、徐放剤(例、徐放性マイクロカプセルなど)、ペレット、点滴剤などが用いられる。
【0037】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.01〜1000mg、好ましくは約0.1〜1000mg、さらに好ましくは約1.0〜200mg、より好ましくは約1.0〜50mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で該化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0038】
本発明で用いられるXB31αまたはβを含有する上記疾患の治療・予防剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、哺乳動物(例、ヒト、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルート等によっても異なるが、例えば、XB31αまたはβを1回量として、通常0.001〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.01〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明で用いられるXB31αまたはβをコードする遺伝子を含有する医薬は、前記のスクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
【0039】
〔治療方法〕
本発明は、
(1)XB31αまたはβとX11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβとX11Lとの結合を促進することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害方法、
(2)XB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの結合を促進することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害方法を提供する。
この方法は、Aβ関連疾患(例えば、アルツハイマー病)の予防・治療方法として有用である。
XB31αまたはβとX11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβとX11Lとの結合を促進する手段としては、前記したスクリーニング方法で得られる、XB31αまたはβとX11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβとX11Lとの結合を促進する化合物またはその塩を投与することなどが挙げられる。
XB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの結合を促進するする手段としては、前記したスクリーニング方法で得られる、XB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの解離を阻害するか、またはXB31αまたはβおよびβAPPと、X11Lとの結合を促進する化合物またはその塩を投与することなどが挙げられる。
【0040】
〔XB31αまたはXB31βを含有する医薬〕
XB31αまたはβは、X11LとβAPPと複合体を形成することにより、Aβの産生を抑制することができるので、XB31αまたはβ、あるいはXB31αまたはβをコードする遺伝子は、Aβ関連疾患(例えば、アルツハイマー病)の予防・治療剤として有用である。
XB31αまたはXB31βをAβ関連疾患の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って実施すればよい。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、XB31αまたはβを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
【0041】
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに無菌的に充填される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
XB31αまたはXB31βの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜1000mg、好ましくは約0.1〜1000mg、さらに好ましくは約1.0〜200mg、より好ましくは約1.0〜50mg投与する。非経口的に投与する場合は、XB31αまたはXB31βの1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0042】
XB31αまたはXB31βをコードする遺伝子を用いる場合、該遺伝子を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該遺伝子は、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。製剤化は、前記したXB31αまたはXB31βを含有する製剤と同様に行うことができる。
該遺伝子の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0043】
〔新規複合体〕
XB31αまたはβとX11Lとの複合体、およびXB31αまたはβとX11LとβAPPとの複合体またはその塩は新規であり、上記した本発明のスクリーニングに有用である。
複合体の塩としては、前記した本発明のスクリーニング方法に用いられるタンパク質の塩と同様のものが用いられる。
【0044】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0045】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Hse :ホモセリン
【0046】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0047】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
[配列番号:1]
XB31αのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:2]
XB31αをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
[配列番号:3]
XB31βのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:4]
XB31βをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
[配列番号:5]
X11Lのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:6]
X11Lをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
[配列番号:7]
βAPPのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:8]
βAPPをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
[配列番号:9]
XB51のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:10]
XB51をコードする遺伝子の塩基配列を示す。
[配列番号:11]
Aβ40のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:12]
Aβ42のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:13]
Aβ43のアミノ酸配列を示す。
【0048】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0049】
参考例1 XB31α1 cDNAおよびXB31β cDNAのクローニング
クローニングに用いたYeast two-hybridシステムは、富田らの方法(J. Biol. Chem. 274, 2243-2254, 1999)およびLeeらの方法(J. Biol. Chem. 275, 23134-23138, 2000)を使用した。pGBT9hX11L-N+PIプラスミド、ヒトX11様タンパク質(hX11L)の第129〜555アミノ酸残基からなる蛋白質をコードするcDNAをヒト脳MATCHMAKER cDNAライブラリー(CLONTECH)由来のX11L結合蛋白質をコードするcDNAを単離するためのベイトとして使用した。陽性クローンの塩基配列を解析したところ、単離されたヒトcDNAクローン31は、3’末端にポリAシグナルが付加した1.5kbを含んでいた。得られたクローン31の5’塩基配列(〜200bp)をプローブとして用いてλgt11ヒト脳cDNAライブラリー(CLONTECH)をスクリーニングし、より5’末端側領域を含むクローンを得た。同様の操作でcDNAスクリーニングを3回繰り返して、新規蛋白質の全長を含む5つの部分cDNAを取得した。ヒトXB31α1(hXB31α1)cDNAの全長は、これら5つのクローンを連結することによりpcDNA3に再構築し、pcDNA3-hXB31α1を作製した。得られたcDNAは2.9kbpのコーディング領域を含む5.0kbp以上であった。そして、HUGE (A Database of Human Unidentified Gene-Encoded Large Protein Analyzed by Kazusa cDNA Project) Protein Database (Kikunoら、Nucleic Acid Res. 28, 331-322, 2000)で、2種の同様のcDNAが検索できた。そこで、取得できたcDNAをhXB31α1(Genebank/EBI Data Bank:AF438482)と、2種のHUGE cDNAをそれぞれhXB31α2(KIAA0911)およびhXB31β(KIAA0726)と名づけた(図1)。hXB31α2 cDNAは、hXB31α1のN末部分に10アミノ酸が付加した981アミノ酸からなる蛋白質をコードしており、hXB31α1 cDNAとhXB31α2 cDNAはスプライシング変異体であることが分かった。hXB31β cDNAは、hXB31α1と55%の相同性を有する968アミノ酸からなる蛋白質hXB31βをコードしていた。
XB31β cDNAクローンはかずさDNA研究所から入手し、pcDNA3にサブクローニングして、発現ベクターpcDNA3-hXB31βを作製した。また、これらのN末端にFLAG tag(DYKDDDK)を付加したFLAG-hXB31α1 in pcDNA3および FLAG-hXB31β in pcDNA3を作製し、以下の実験に用いた。
【0050】
参考例2 XB31α1とXB31βのノーザンブロット解析
Human multiple tissue Northern blots(CLONETECH社)を購入し、ExpressHyb Hybridization Solution(CLONETECH社)を用いマニュアルに従ってハイブリダイゼーションを行った。XB31α1およびXB31βのための具体的なプローブは、それぞれXB31α1の第871から971番目のアミノ酸をコードするcDNAおよびXB31βの第881から968番目のアミノ酸をコードするcDNAから作製した。プローブを[α-32P]dCTPおよびランダムオリゴヌクレオチド(High prime DNA Labeling Kit; Roch Diagostics)を用いて、鋳型cDNAを放射線標識した。
結果を図2に示したとおり、XB31α1およびXB31βが脳で強く発現していることが分かった。
【0051】
参考例3 抗体の産生
ウサギポリクローナル抗体UT-83は、hXB31α1 C末端18残基(配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第954番目〜971番目)のN末端にCysを付加した19アミノ酸残基からなるペプチド10mgをHemocyanin(SIGMA) 10mgにカップリングしてウサギに免疫(Primary injection+Booster x2)して得た。得られた抗血清はSulfo-Link Gel(Pierce)で抗原ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラムで精製した(最終抗体濃度 0.16mg/ml IgG。本願明細書中、希釈率を指定したものは全てこの溶液を希釈して用いている)。
ウサギポリクローナル抗体BS-7は、hXB31β C末端14残基(配列番号:3で表されるアミノ酸配列の第954番目〜968番目)のN末端にCysを付加した15アミノ酸残基からなるペプチド10mgをHemocyanin(SIGMA) 10mgにカップリングしてウサギに免疫(Primary injection+Booster x2)して得た。得られた抗血清はSulfo-Link Gel(Pierce)で抗原ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラムで精製した(最終抗体濃度 0.84mg/ml IgG。本願明細書中、先希釈率を指定したものは全てこの溶液を希釈して用いている)。
【0052】
参考例4 XB31α1およびXB31βのウエスタンブロット解析
(1)抗体の交差性検討
COS7細胞にhXB31α1、hXB31β in pcDNA3をそれぞれ10μg (プラスミドDNA) (6cm dish1枚1x107cellsあたり)をLipofectAMINE(GIBCO BRL)を用いて、トランスフェクションした。方法はメーカーのInstruction Manualに従った。トランスフェクション48時間後、細胞をPBS(組成:10mM Sodium Phosphate buffer pH7.4, 150mMNaCl)で2回洗浄した後、100μl cell lysis buffer(組成:0.5%TritonX-100, 0.05%β-Mercaptoethanol, 0.5mM EDTA, 0.5mM EGTA, 1mM NaVO4, 125mM Sucrose, 25mM Tris-acetate pH8.0), 10μl Protease inhibitor Mix(P.I.mix, 組成:5mg/ml Leupeptin, PepstatinA, Chymostatin in DMSO)を加え、細胞を可溶化した。氷上で30分インキュベートした後、12000rpm 10min遠心して、上清を取り可溶化成分を回収した。
回収した可溶化成分はTCA沈澱法を用いたMicroLowry法により、蛋白定量を行い、可溶化成分を1レーンあたり50μg(タンパク質)滴下し、SDS-PAGEを行った後、メンブランに転写したのち、抗hXB31α1抗体 UT-83(1/1000), 抗hXB31β抗体 BS-7(1/500)を用いてブロットを行った。2次抗体として抗ウサギIgG, peroxidase-linked species-specific whole antibody(from donkey) (Amersham Pharmacia Biotechnologies社) 1:5000を使用した。検出はECL Detection System(Amersham Pharmacia Biotechnologies社)を用い、メーカーのinstruction manualに従い、操作を行った。結果を図3および図4に示したとおり、抗XB31α1抗体UT-83および抗XB31β抗体BS-7は、hXB31α1およびhXB31βをそれぞれ特異的に認識していることが確認された。
(2)組織可溶化
組織化溶化は、C57BL/6J マウス, 8週齢, オスより各部位を採取し、5倍容の組織抽出緩衝液(1%SDS, 4M Urea, 1mM EDTA, 150mM NaCl, 20mM Tris pH8.0)を加え、DounceA ホモジナーザーで20ストロークした後、15000xg, 10min, 4℃で遠心し、可溶化された上清を回収した。この上清をTCA沈澱法を用いたMicroLowry法により蛋白定量し、粗可溶化成分を1レーンあたり50μg(タンパク質)滴下し、SDS-PAGEを行った後、メンブランに転写したのち、抗hXB31α1抗体 UT-83(1/1000)、抗Mint2 抗体(Transduction Labs, 1/1000)を用いて、ブロットを行った。2次抗体としてUT-83は、抗ウサギ IgG, peroxidase-linked species-specific whole antibody(from donkey) (Amersham Pharmacia Biotechnologies社) 1:5000, anti-Mint2は、 抗マウス IgG, peroxidase-linked species-specific whole antibody(from sheep) (Amersham Pharmacia Biotechnologies社) 1:5000を使用した。検出はECL Detection System(Amersham Pharmacia Biotechnologies社)を用い、メーカーのinstruction manualに従い、操作を行った(部位の略号は以下の通りである。Br;脳, Ht;心臓, Lu;肺, Li;肝臓, Kid;腎臓, Mus;筋, Ob;嗅球, CC;大脳皮質, ST;線状体, Hip;海馬, Ce;小脳, Mid;中脳, Th;視床, Pons;橋, Sci;座骨神経)。
結果を図5および図6に示した。図5からhXB31α1とhX11Lが共に脳で強く発現していることが分かった。また、図6からhXB31α1とhX11Lが脳の各種組織、特に大脳皮質、線状体、海馬、視床で強く発現していることが分かった。
【0053】
実施例1 XB31α/βとX11Lの共役免疫沈降
COS7細胞にLipofectAMINE PLUS (GIBCO BRL)を用いて、各3μgのhXB31α1 または hXB31β および(または) hX11L in pcDNA3 の各コンストラクトのプラスミドをトランスフェクションした。総DNA量は6μgに統一するため、トランスフェクション(-)の場合には空ベクターpcDNA3を加えた。トランスフェクション48時間後、P.I mixを含むice-cold PBS (組成:10mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.4, 150mMNaCl + 5μg/ml ロイペプチン, ペプスタチン, ケモスタチン)で細胞を洗浄し、 CHAPS Lysis Buffer (10mM CHAPS, 1mM NaF, 1mM Na3VO4, 10mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.4, 150mM NaCl + 5μg/ml ロイペプチン, ペプスタチンA, ケモスタチン)を 6cm Dish (3x106細胞相当)につき1ml加えて細胞を可溶化した。可溶化した細胞は、30分間・4℃で穏和に攪拌した後、12000rpm 10min 4℃で遠心し、上清を免疫沈降( IP)に用いた。IPは可溶化上清1mlに対し、UT-83 10μl(1.6μg IgG), UT-30 5μl(1.9μg IgG), BS-7 5μl(4μg IgG) ,コントロール用ウサギ非免疫IgG 8μl(4μg IgG)を加え、4℃で2時間攪拌した。その後、CHAPS Lysis Buffer中の 50%ProteinG-Sepharoseを100μl加え、さらに4℃で2時間攪拌した。樹脂を遠心により回収しCHAPS Lysis Bufferで3回洗浄した。この樹脂に対し、15μl 5x SDS Sample Buffer (43%(v/v)グリセロール(和光純薬(株)), 16%(w/v)SDS(和光純薬(株)), 64ng/ml ブロモフェノールブルー(和光純薬(株)), 5mM EDTA, 0.22M Tris-HCl pH6.8), 15μl 8M 尿素を加え、攪拌後、5分間煮沸して、樹脂に結合した成分を可溶化した。遠心後、この上清成分を6%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEを行った。SDS-PAGEはLammliの常法に従った。SDS-PAGE後、メンブランに転写し、ウエスタンブロットを行った。ウエスタンブロットは前述の方法で行った。検出に用いた1次抗体濃度は、各々UT-83 1/1000(抗XB31α1抗体), BS-7 1/500(抗体XB31β抗体), UT-30 1/1000(抗X11L抗体)で行った。結果を図7および図8に示したとおり、hXB31α1とhX11Lが細胞内で結合し、それぞれの抗体により共沈殿してくることが分かった。
【0054】
実施例2 結合ドメインの決定
XB31α1およびXB31βの細胞質ドメインをGSTと融合させたGST-細胞質ドメイン融合タンパク質またはGST蛋白質のみを結合しているグルタチオンビーズと、hX11L由来の蛋白質構成物を発現しているCOS細胞の全細胞可溶化物とインキュベーションした。ビーズに付着した蛋白質構成物を溶出後X11Lアミノ末端ポリクローナル抗体UT29を用いてウエスタンブロット解析で検出した(図9〜10)。図9および図10から、XB31α1およびXB31βはX11LのPIドメイン(図11)と結合することが分かった。
【0055】
実施例3 培養神経細胞におけるXB31αおよびX11Lの分布
C57BL/6J マウス胎生16日目胎仔胚より調製した 大脳皮質神経細胞を初期培養開始後12日目 (DIV12)に、以下の方法でXB31αおよびX11Lの共蛍光抗体免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。
具体的には、poly-L-リジンで被覆したカバーガラス上に生育したDIV12の細胞をP.I. mix (組成は前述)を含むice-cold PBS で洗浄した後、4%(w/v) パラホルムアルデヒド(ナカライ社)、4%(w/v) シュークロース(和光純薬(株))を含む PBS中で室温、10分間インキュベートし細胞を固定した。その後、0.1%(v/v)TritonX-100(Wako社) を含むPBSで室温、5分間インキュベートし、透過処理を行った。その後、PBSで2回洗浄インキュベートし、3% (w/v)BSA を含むPBSで室温10分間インキュベートして、ブロッキングを行った。さらにPBSで2回洗浄したのち、1%(w/v)BSAを含むPBS中の1次抗体溶液(1次抗体溶液 抗Mint2抗体(Transduction Labs 1/100), 抗XB31α1抗体(UT-83 1/100))を加え,4℃・3時間インキュベートを行った。
インキュベート後、PBSで3回、各5分づつ室温でインキュベートしつつ、洗浄し、1%(w/v)BSAを含むPBS中の2次抗体溶液〔抗マウスIgG, Goat, Alexa Flour488 Highly-cross absorbed(Molecular Probes社) 1:100, 抗ウサギIgG, Goat, Alexa Flour568 Highly-cross absorbed(Molecular Probes社) 1:100〕を加え、室温1時間incubateを行った。
この後、PBSで3回、各10分づつ室温でインキュベートしつつ、洗浄し、Immumount(SHANDON-RIPSHOW社)でMountを行い、標本を作成した。標本はLSM510(Carl Zeiss社)共焦点レーザー顕微鏡で観察した。各波長で観察した画像は共局在を示すため、Merge画像を作製した(図12)。図12から、XB31αとX11Lはマウス神経細胞内で共局在する事が分かった。
【0056】
実施例4 成体マウス脳組織のおけるXB31αおよびX11Lの分布
C57BL/6J 6週令オスマウスを0.2M リン酸緩衝液 pH7.5に溶解した 4%(w/v) パラホルムアルデヒド(ナカライテスク電顕グレード) で灌流固定した後、脳を採取した。この脳をさらに0.2M リン酸緩衝液 pH7.5に溶解した4%(w/v) パラホルムアルデヒドで一晩で後固定した後、30%(w/v) シュークロースを含む PBS中に浸し後固定液を置換した。この脳をTissue Tek OCT Compound中に凍結包埋し、クライオスタットを用いて20μmの切片を調製した。この切片をPBSでよく洗浄した後、0.1%(v/v)TritonX-100 を含むPBS中ので5分間室温でインキュベートすることにより、透過処理を行った。PBSで3回洗浄後、0.3%(v/v) H2O2 を含むPBS中 で室温5分間処理し、内在性peroxidaseのQuencing を行った。さらに3%(w/v)BSA を含むPBS 中で室温10分間インキュベートして、ブロッキングを行った。PBSで2回洗浄したのち、1%(w/v)BSAを含むPBSに溶解した1次抗体溶液(抗Mint2抗体(Transduction Labs 1/100), 抗XB31α1抗体(UT-83 1/100))を加え、4℃・3時間インキュベートを行った。
コントロールとして一次抗体を含まない1%(w/v)BSAを含むPBSを用いて同様の操作を行った。 インキュベート後、PBSで3回、各5分づつ室温で洗浄し、1%(w/v)BSAを含むPBS中の2次抗体溶液〔抗マウスIgG, Goat, Alexa Flour488 Highly-cross absorbed(Molecular Probes社) 1:500, 抗ウサギIgG, Goat, Alexa Flour568 Highly-cross absorbed(Molecular Probes社) 1:500 〕を加え、室温1時間インキュベートを行った。
この後、PBSで3回、各10分づつ室温で洗浄し、Immumount(SHANDON-RIPSHOW社)でMountを行い、標本とした。標本はLSM510(Carl Zeiss社)共焦点レーザー顕微鏡で観察した。各波長で観察した画像は共局在を示すため、Merge画像を作製した(図13)。図13において、(a-d)は海馬、(e-h)は大脳皮質、(i-l)は小脳の染色像を示す。海馬においてX11LとXB31αは、CA3領域のピラミダルニューロン等で共局在した。大脳皮質においては、第5層の神経でX11LとXB31α1は、強く発現しており共局在していた。小脳においては、プルキンエ細胞はX11Lを発現していないが、XB31αは発現していた。これらのことから、X11LとXB31αの両方を発現している神経細胞では、両タンパク質は共局在していることが明らかになった。
【0057】
実施例5 APPとX11L間の結合性に対するXB31α/βの効果
図14に示したような組み合わせ(+は発現ベクターでトランスフェクションを行ったものを示し、−は空ベクターpcDNA3でトランスフェクションしたものを示す)で293細胞に各3μg(Total 9μg/6cm dish 1枚あたり)のプラスミドDNAをLipofectAMINE2000(GIBCO BRL)用いてトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、実施例1と同様にして293細胞を可溶化し、共役免疫沈降(IP)を行った。IPに用いた抗体量はCHAPS Lysate 1mlに対し、G369 血清4μl, 22C11 (1mg/ml IgG) 20μlを用いた。G369はβAPPの細胞質ドメインに対するポリクローナル抗体を、22C11はβAPPの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体を示す。結果を図14に示した。図14から、XB31α1およびXB31βはβAPPとX11Lとの結合を強化することが明らかになった。
【0058】
実施例6 βAPPのパルス・チェイス解析
293細胞に対し、LipofectAMINE2000(GIBCO BRL)を用い10cm Dish 1枚あたり以下のDNA用量と組み合わせでTransfectionを行った。
A. APP(4μg)
B. APP(4μg), X11L(0.5μg)
C. APP(4μg), X11L(0.5μg), FLAG XB31α1 (13.5μg)
D. APP (4μg), FLAG XB31α1 (13.5μg)
総DNA量を等しくするために計18μgとなるように、空のpcDNA3を加えた。
トランスフェクション後48時間経過した293細胞をメチオニンを含まないDMEM (DMEM(-); GIBCO BRL社)で2回洗浄して、φ6cm dish(Total 1.0x107cells)にまき直し、新鮮なDMEM(-)3.5mlを培地としている293細胞に、最終濃度0.4mCi/mlとなるように102μlのL-[35S] in vitro cell labeling mix (Pharmacia Biotech AGQ0080)を加え、37℃・5%CO2インキュベータで15分インキュベートし、生成タンパク質をラベルした。その後、100μlの100xメチオニン(GIBCO BRL社)を加え、アイソトープの取り込みを停止させ、通常培地(10%FCS添加DMEM)に培地を交換し、37℃・5%CO2インキュベータに移し、インキュベートを開始した。細胞は0, 1, 2, 4, 8時間後にインキュベータより取り出した。その後、293cellをPBS(組成:10mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.4, 150mMNaCl)で2回洗浄した後、100μl細胞抽出用緩衝液(組成:0.5%TritonX-100, 0.05%β-メルカプトエタノール, 0.5mM EDTA, 0.5mM EGTA, 1mM NaVO4, 125mM シュークロース, 25mM Tris-acetate pH8.0), 10μl プロテアーゼ阻害剤混合液(組成:5μg/ml ロイペプチン, ペプスタチンA,ケモスタチン in DMSO)を加え、細胞を可溶化した。氷上で30分インキュベートした後、12000rpm 10min遠心して、上清を取り可溶化成分を回収した。
回収した細胞可溶化成分は抗体G369(Antigen:APP細胞質ドメイン)を用い、培地は22C11(APP細胞外ドメイン/ CHEMICON社)を用いてそれぞれ免疫沈降を行った。具体的には、細胞可溶化緩衝液中の細胞可溶化成分100μlに対し、100μl Mix▲1▼(2.2% SDS, 5.44M 尿素, 100mM Tris-HCl pH7.4)を加え、5分間煮沸し、タンパク成分を変性させた。その後750μl Mix▲2▼(6.7% NP-40, 0.4M NaCl, 26mM EDTA, 200mM Tris-HCl pH7.4)、350μl Mix▲3▼(10ng/ml ロイペプチン, ペプスタチン,ケモスタチン in DDW)を順次加えた後、G369抗体4μlを加え、4℃ O/Nで 攪拌して抗原抗体反応を進行させた。そののち、リンス液(0.1%TrotonX-100, 1mM EDTA, 150mM NaCl, 10mM Tris-HCl pH7.4)に懸濁した25%ProteinG-sepharose/25% Sepharose-CL4B(Pharmacia Biotech)を 50μl 加え、4℃ 3時間、攪拌した。樹脂成分を3000rpm・5分間・4℃遠心して沈澱、これを回収した。回収した樹脂は非特異的結合を除く目的で、洗浄液I (0.1% TritonX-100, 1M NaCl, 20mM Tris-HCl pH7.4)、洗浄液II (0.05%SDS, 1%TritonX-100, 5mM EDTA, 150mM NaCl, 50mM Tris-HCl pH7.4), リンス液(組成は前述)で、順次洗浄した。その後、樹脂に15μl 5x SDS Sample Buffer (43%グリセロール(和光純薬(株)), 16%SDS(和光純薬(株)), 64ng/ml ブロモフェノールブルー(和光純薬(株)), 5mM EDTA, 0.22M Tris-HCl pH6.8), 15μl 8M 尿素を加え、攪拌後、5分間煮沸して、樹脂についている成分を可溶化した。遠心後、この上清成分を6%ポリアクリルアミドゲルを用い、SDS-PAGEを行った。SDS-PAGEはLammliの常法に従った。SDS-PAGE後、ゲルを乾燥し、BAS2000 imaging system(FUJI)によりタンパク質に取り込まれた放射活性を定量した(図15)。定量結果は時間0のimAPPのシグナル強度を1として相対強度でグラフ上にプロットした(図16)。
図15および図16に示すとおり、βAPPとX11Lを共発現させると、βAPPの代謝安定化が見られた。さらにXB31α1を発現させると、XB31α1はβAPPの代謝を劇的に安定化した。また、XB31α1の単独発現ではβAPP代謝に影響が見られなかったことから、XB31α1はX11Lを介してβAPPの代謝を安定化する方向に制御していることが分かった。これは図13で示したXB31α1がβAPPとX11Lの結合を強化する結果と一致する。
【0059】
実施例7 サンドイッチELISA(sELISA)によるAβの定量
293細胞に対し、LipofectAMINE2000(GIBCO BRL)を用い6cm Dish 1枚あたり以下のDNA用量と組み合わせでトランスフェクションを行った。
A. APP(3μg)
B. APP(3μg), X11L(0.3μg)
C. APP(3μg), X11L(0.3μg), FLAG XB31α1 (5.7μg)
D. APP (3μg), FLAG XB31α1 (5.7μg)
総DNA量を等しくするために計9μgとなるように、空のpcDNA3を加えた。トランスフェクション48時間後、培地を回収し、J.Biol.Chem. 274 2243-2254, 1999に記載の方法によりsELISAを行い、培地中のAβx-40(図17), Aβx-42(図18)の値を定量した。
図17から明らかなとおり、βAPPにX11Lを共発現させるとAβ40の抑制効果が認められた。ここにさらにXB31α1を発現させるとAβ40産生をさらに抑制した。XB31α1の単独発現ではAβ産生に影響が見られなかったことから、XB31α1はX11Lを介してβAPP代謝を安定化し、結果としてAβ産生を低下させていると考えられる。
以上の実験結果から、図18に示すとおり、XB31α1またはβがβAPPおよびX11Lと複合体を形成することにより、Aβ(特に、Aβ40)の産生を抑制していることが分かった。
【0060】
【発明の効果】
本発明のスクリーニング方法を用いることにより、効率良くアルツハイマー病の予防・治療薬をスクリーニングすることができる。
【0061】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】XB31ファミリー蛋白質の構造の概要図を示す。
【図2】XB31α1とXB31βのノーザンブロット解析の結果を示す。probeは使用したプローブを示す。XB31αはXB31α1を示す。β−actinはβ−アクチンを示す。Heartは心臓、Brainは脳、Placentaは胎盤、Lungは肺、Liverは肝臓、Skeletal muscleは平滑筋、Kindneyは腎臓、Pancreasは膵臓を示す。数値はmRNAの大きさ(kb)を示す。
【図3】XB31α1とXB31βのウエスタンブロット解析の結果を示す。blot UT83はXB31α1ポリクローナル抗体UT83を、blot BS7はXB31βポリクローナル抗体BS7を用いた時の結果を示す。数値は分子量(kDa)を示す。バンドはXB31α1およびXB31βの検出位置を示す。
【図4】XB31α1のウエスタンブロット解析の結果を示す。blot UT83はXB31α1ポリクローナル抗体UT83を示す。−は抗原ペプチドが存在しない場合を、Hは抗原ペプチド(40nM)が存在する場合を示す。数値は分子量を示す。バンドはXB31α1の検出位置を示す。
【図5】マウスの各組織におけるXB31α1およびXB31βの発現をウエスタンブロット解析した結果を示す。Blot anti−XB31αは抗XB31α1抗体をブロットした場合を示す。Blot anti−X11Lは抗X11L抗体をブロットした場合を示す。Brは脳、Htは心臓、、Luは肺、Liは肝臓、Kidは腎臓、Musは筋肉を示す。バンドはそれぞれXB31αおよびXB31βの存在を示す。XB31αはXB31α1を示す。
【図6】マウス脳の各部分におけるXB31α1およびXB31βの発現をウエスタンブロット解析した結果を示す。Blot anti−XB31αは抗XB31α1抗体をブロットした場合を示す。Blot anti−X11Lは抗X11L抗体をブロットした場合を示す。OBは嗅球、CCは大脳皮質、STは線条体、Hipは海馬、Ceは小脳、Midは中脳、Thは視床、Ponsは橋、Sciは坐骨神経を示す。バンドはそれぞれXB31αおよびXB31βの存在を示す。XB31αはXB31α1を示す。
【図7】XB31α1とX11Lとの共役免疫沈降を行った結果を示す。+はXB31αまたはX11Lを発現させた場合、−は発現させていない場合を示す。XB31αはXB31α1を示す。anti−XB31αは抗体XB31α1抗体を示す。anti−X11Lは抗体X11L抗体を示す。control IgGは非免疫動物由来のコントロール用免疫グロブリンを示す。LyasteはCOS細胞の可溶化物を示す。バンドはそれぞれXB31α1およびX11Lの存在を示す。
【図8】XB31βとX11Lとの共役免疫沈降を行った結果を示す。+はXB31βまたはX11Lを発現させた場合、−は発現させていない場合を示す。anti−XB31βは抗XB31β抗体を示す。anti−X11Lは抗体X11L抗体を示す。control IgGは非免疫動物由来のコントロール用免疫グロブリンを示す。LyasteはCOS細胞の可溶化物を示す。バンドはそれぞれXB31βおよびX11Lの存在を示す。
【図9】XB31α1とX11Lの結合におけるX11L結合ドメインを同定した結果を示す。crudeはhX11L由来蛋白質構成物を発現しているCOS細胞の全細胞可溶化物を示す。XB31αはGST-XB31α細胞質ドメイン融合蛋白質を結合しているグルタチオンビーズを用いた場合の結果を示す。GSTはGST蛋白質のみを結合しているグルタチオンビーズを用いた場合の結果を示す。XB31αはXB31α1を示す。X11Lは全長X11Lを示す。NはhX11Lのアミノ末端ドメインを示す。N+PIはhX11LのPIドメインを結合したhX11Lのアミノ末端ドメイン示す。数値は標準蛋白質の分子量(kDa)を示す。
【図10】XB31βとX11Lの結合におけるX11L結合ドメインを同定した結果を示す。crudeはhX11L由来蛋白質構成物を発現しているCOS細胞の全細胞可溶化物を示す。XB31βは、GST-XB31β細胞質ドメイン融合蛋白質を結合しているグルタチオンビーズを用いた場合の結果を示す。GSTはGST蛋白質のみを結合しているグルタチオンビーズを用いた場合の結果を示す。X11Lは全長X11Lを示す。NはhX11Lのアミノ末端ドメインを示す。N+PIはhX11LのPIドメインを結合したhX11Lのアミノ末端ドメイン示す。数値は標準蛋白質の分子量(kDa)を示す。
【図11】X11L(全長X11L)、N+PI(hX11LのPIドメインを結合したhX11Lのアミノ末端ドメイン)およびN(hX11Lのアミノ末端ドメイン)の構造を示す。
【図12】XB31αとX11Lのマウス大脳皮質ニューロンにおける局在性および、それをMerge画像で現した結果を示す。
【図13】XB31αとX11Lのマウス脳の各組織における局在性およびそれをMerge画像で現した結果を示す。Hippocampus CA3は海馬CA3領域、Cerebral Cortexは大脳皮質、Cerebellar Cortexは小脳を示す。
【図14】XB31α1またはXB31βとβAPPおよびX11Lとの結合をHEK293細胞を用いて調べた結果を示す。AはG369(抗βAPP抗体)を、Bは22C11(βAPPの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体)を用いてウエスタンブロット解析した結果を示す。APPはβAPPを、XBα1はXBα1を、FLAG XB31βはFLAGとXB31βの融合蛋白質を示す。+は各蛋白質の発現プラスミドをHEK293細胞に導入した場合を示す。−はpcDNA3ベクターを導入した場合を示す。blot anti−APPはG369(抗βAPPポリクローナル抗体)を、blot anti−X11LはUT29(抗X11Lポリクローナル抗体 [Journal og Biological Chemistry 274, 2243-2254. 1999])を、blot anti−XB31αはUT83(抗XB31αポリクローナル抗体)を、blot anti−FLAGは抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロット解析した結果を示す。
【図15】HEK293細胞を用いてβAPPの細胞内代謝におけるXB31α1およびX11Lの影響を調べた結果を示す。Chase[h]は細胞をパルス標識後の測定時間を示す。APP/Vector/VectorはβAPP発現プラスミドのみを、APP/hX11L/VectorはβAPP発現プラスミドおよびhX11L発現プラスミドを、APP/hX11L/XB31α1はβAPP発現プラスミド、hX11L発現プラスミドおよびXB31α1発現プラスミドを、APP/Vector/XB31α1はβAPP発現プラスミドおよびXB31α1発現プラスミドをHEK293細胞に導入した場合の結果を示す。mAPPは成熟βAPPの存在を、imAPPは前駆体βAPPの存在を示す。
【図16】図15の定量結果において、時間0のimAPPのシグナル強度を1とした相対強度をグラフ上にプロットした図である。横軸は測定時間、縦軸はimAPPの相対強度を示す。APP/Vector/VectorはβAPP発現プラスミドのみを、APP/hX11L/VectorはβAPP発現プラスミドおよびhX11L発現プラスミドを、APP/hX11L/XB31αはβAPP発現プラスミド、hX11L発現プラスミドおよびXB31α1発現プラスミドを、APP/Vector/XB31αはβAPP発現プラスミドおよびXB31α1発現プラスミドをHEK293細胞に導入した場合の結果を示す。
【図17】APP、hX11L、XB31α1を共発現させた場合のAβ40およびAβ42の生産量を調べた結果を示す。縦軸はAβ40またはAβ42の生産量(pM)を示す。横軸のAPPはβAPP発現プラスミドのみを、APP/hX11LはβAPP発現プラスミドおよびhX11L発現プラスミドを、APP/hX11L/XB31αはβAPP発現プラスミド、hX11L発現プラスミドおよびXB31α1発現プラスミドを、APP/XB31αはβAPP発現プラスミドおよびXB31α1発現プラスミドをHEK293細胞に導入した場合を示す。
【図18】hX11LとXB31αの相互作用によるAβ産生機構の概略図を示す。NPTYおよびNPはそれぞれX11LのPIドメインとの結合部位を示す。Supressionは抑制していること、no supressionは抑制していないこと、Generation of Aβは、Aβ40が産生すること、Enhanceは強化すること、Interactionは結合すること、Stronger Supressionは強い抑制、Stabilization of APP metabolismはAPPの代謝安定化を示す。

Claims (9)

  1. (1)以下の(a)または(b)のタンパク質もしくはその塩と、X11Lおよびアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)を共発現する細胞を調製する工程、
    (a)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質
    (b)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されたアミノ酸配列を含有し、かつ、X11LのPDドメインとの結合活性を有するタンパク質
    (2)当該細胞に被験化合物を接触させる工程、
    (3)当該被験化合物によって、当該細胞からのアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生が阻害されるか否かを測定する工程
    を含む、アミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  2. 以下の(a)または(b)のタンパク質もしくはその塩と、X11L、アミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)およびXB51を共発現し得る細胞を含有することを特徴とするAβの産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
    (a)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質
    (b)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されたアミノ酸配列を含有し、かつ、X11LのPDドメインとの結合活性を有するタンパク質
  3. アミロイドβタンパク質(Aβ)の産生を阻害する化合物またはその塩をスクリーニングするための、以下の(a)または(b)のタンパク質もしくはその塩の使用。
    (a)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質
    (b)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されたアミノ酸配列を含有し、かつ、X11LのPDドメインとの結合活性を有するタンパク質
  4. 以下の(a)または(b)のタンパク質もしくはその塩を含有することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害剤。
    (a)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質
    (b)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されたアミノ酸配列を含有し、かつ、X11LのPDドメインとの結合活性を有するタンパク質
  5. 配列番号:2で表される塩基配列を含有する遺伝子または配列番号:4で表される塩基配列を含有する遺伝子を含有することを特徴とするアミロイドβタンパク質(Aβ)の産生阻害剤。
  6. Aβ関連疾患の予防・治療剤である請求項4または5記載の剤。
  7. アルツハイマー病の予防・治療剤である請求項4または5記載の剤。
  8. 以下の(a)または(b)のタンパク質もしくはその塩とX11Lとの複合体またはその塩。
    (a)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質
    (b)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されたアミノ酸配列を含有し、かつ、X11LのPDドメインとの結合活性を有するタンパク質
  9. 以下の(a)または(b)のタンパク質もしくはその塩とX11Lとアミロイドβタンパク質(Aβ)の前駆体タンパク質(βAPP)との複合体またはその塩。
    (a)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質
    (b)配列番号:1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されたアミノ酸配列を含有し、かつ、X11LのPDドメインとの結合活性を有するタンパク質
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