JP2005128010A - インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法 - Google Patents

インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法 Download PDF

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英明 東條
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Abstract

【課題】インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩および(b)該蛋白質と特異的に結合する能力を有する複合糖質を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法/スクリーニング用キット、該スクリーニングによって得られる化合物またはその塩、該化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、糖尿病の予防・治療剤など。
【選択図】なし

Description

本発明は、インスリン抵抗性の改善剤、糖尿病の予防・治療剤などのスクリーニングなどに関する。
インスリン抵抗性は、組織でのインスリンの感受性が低下する病態で、特にII型糖尿病では、インスリン分泌不全に加え、糖尿病の発症や進展に関わる主な病因となっている。一般的に肥満を伴う糖尿病患者の多くがインスリン抵抗性を呈していることから、インスリン抵抗性は肥満と深く関わっていると考えられている。さらに、糖尿病のみならず動脈硬化等の脂質代謝異常に起因する疾病にもインスリン抵抗性が見られることが知られている(Saltiel, A.R., Cell, 104巻, 517-529頁, 2001年)。
インスリン抵抗性の作用機序には未だ不明の点が多いが、ひとつの考え方として、動物実験または培養細胞系を用いた実験レベルでは炎症のメカニズムとの類似が示唆されている。例えば、妊娠ラットにリポ多糖 (LPS)を投与した場合、子が生育した後に肥満およびインスリン抵抗性を示すようになること(Nilsson et al, Endocrinol, 142巻, 2622-2630頁, 2001年)、また、炎症性サイトカインの一つであるTNF-αが肥満の脂肪細胞において、より多く産生・分泌され、インスリン作用を阻害すること(Hotamisligil G.S. et al., Science, 259巻, 87-91頁, 1993年)、さらに、インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン誘導体が抗炎症作用を持つこと(Pasceri, V. et al., Circulation, 101巻, 235-238頁, 2000年)などが報告されている。また、肥満モデルマウスであるob/obマウスでもLPS-binding proteinをはじめとするいくつかの炎症反応に関与する蛋白質の発現変動が認められている (Soukas, A. et al, Genes Develop, 14巻, 963-980頁, 2000年)。
Triggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM-2)は、炎症反応に関与していると考えられているTREM-1のホモログ蛋白質として見いだされた免疫グロブリンスーパーファミリーに属する一回膜貫通型膜蛋白質である (非特許文献1 Bauchon, A. et al., J. Immunol., 164巻, 4991-4995頁, 2000年、Daws M.R. et al, Eur J Immunol, 31巻, 783-791頁, 2001年)。TREM-1は、好中球、単球で多量に発現しており、その発現はリポ多糖で誘導されるTNF-αやインターロイキン-1βの分泌を促すことにより炎症の増幅作用を持つこと、さらに、これを阻害することによりマウスで急性炎症応答を抑えることができること (Bauchon, A. et al., Nature, 410巻, 1103-1107頁, 2001年)が知られている。TREM-2は、TREM-1と同様にDAP12と相互作用することによりシグナル伝達を行うこと(Daws M.R. et al, Eur J Immunol, 31巻, 783-791頁, 2001年)、樹状細胞またはマクロファージではCC chemokine receptor 7(CCR7)の発現誘導を引き起こし樹状細胞の成熟に関与していること (Bouchon, A. et al., J. Exp. Med. 194巻, 1111-1122頁, 2001年)、NOの産生に関与していること(Daws M.R. et al, Eur J Immunol, 31巻, 783-791頁, 2001年)が報告されている。また、TREM-2のリガンドとして、リポ多糖(LPS)、リポテイコ酸(LTA)、デキストラン硫酸が示唆されている(非特許文献2 Daws, M.R. et al., J Immunol, 171巻, 594-599頁, 2003年)。
本発明者らは、既に、肥満およびインスリン抵抗性を呈するモデル動物であるKKAyマウス (Nishimura, M., Exp Animal, 18巻, 147-157頁, 1969年)の脂肪細胞において、発現の亢進している遺伝子群の中から、TREM-2を見出し、TREM-2の機能を抑制することにより糖尿病病態が改善されることを報告している(特許文献1 特願2003-144204)。
J Immunol, 164巻, 4991-4995頁, 2000年 J Immunol, 171巻, 594-599頁, 2003年 特願2003-144204号
インスリン抵抗性を改善する安全で優れた医薬が切望されている。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガングリオシドがTREM-2のリガンドであることを見出し、この知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(1a)(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(2)(a)複合糖質を、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合と、(b)複合糖質および試験化合物を、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合における、該複合糖質の該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する結合量を測定し、比較する、上記(1)記載のスクリーニング方法、
(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載のスクリーニング方法、
(4) 複合糖質が、標識した複合糖質である上記(1)記載のスクリーニング方法、
(5)(a)複合糖質を、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合と、(b)複合糖質および試験化合物を、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合における、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を介した細胞刺激活性を測定し、比較する、上記(1)記載のスクリーニング方法、
(6)複合糖質が、ガングリオシド、シアリルオリゴ糖、リポ多糖、リポテイコ酸またはデキストラン硫酸である上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(6a)複合糖質が、ガングリオシドまたはシアリルオリゴ糖である上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(7)複合糖質が、ガングリオシドである上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(7a)複合糖質が、GM1、GM2、GM3、GD3またはGD1aである上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(8)複合糖質が、GM3である上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(8a)複合糖質が、シアリルオリゴ糖である上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(8b)複合糖質が、3'-シアリルラクトース、5'-シアリルラクトース、シアリルルイスX、シアリルルイスA、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、シアリルラクト-N-テトラオースc、またはジシアリルラクト-N-テトラオースである上記(1)〜(5)記載のスクリーニング方法、
(9)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である上記(1)記載のスクリーニング方法、
(10)(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩および(b)複合糖質を含有することを特徴とする、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(11)複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(12)複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩を含有してなる耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤、
(13)複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を促進する化合物またはその塩を含有してなる低血糖の予防・治療剤、
(14)複合糖質を含有してなる低血糖の予防・治療剤、
(15)複合糖質が、ガングリオシド、シアリルオリゴ糖、リポ多糖、リポテイコ酸またはデキストラン硫酸である上記(14)記載の予防・治療剤、
(16)(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(17)(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(18)複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を阻害することを特徴とするインスリン抵抗性改善方法、
(19)上記(1)記載のスクリーニング方法または上記(10)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(20)化合物が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と複合糖質との結合を阻害する化合物またはその塩である上記(19)記載の化合物またはその塩、
(21)アンタゴニストである上記(20)記載の化合物またはその塩、
(22)アゴニストである上記(20)記載の化合物またはその塩、
(23)上記(21)記載の化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(24)上記(21)記載の化合物またはその塩を含有してなる耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤、
(25)上記(21)記載の化合物またはその塩を含有してなる糖尿病の予防・治療剤、
(26)上記(22)記載の化合物またはその塩を含有してなる低血糖の予防・治療剤などを提供する。
(a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いる、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合性を変化させる化合物またはその塩(好ましくは、該複合糖質の該蛋白質に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩)は、例えば、インスリン抵抗性改善剤として、さらには糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤として有用である。また、該蛋白質(例、ヒトTREM-2、マウスTREM-2など)および複合糖質(好ましくはガングリオシド、さらに好ましくはGM3)は、インスリン抵抗性改善作用、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療作用を有する化合物またはその塩のスクリーニングにとって有用である。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質(以下、本発明の受容体、本発明の蛋白質または本発明で用いられる蛋白質と称することもある)は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血(例 赤血球、白血球、血小板)、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋、白色脂肪組織、褐色脂肪組織などに由来する蛋白質であってもよく、合成蛋白質であってもよい。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と例えば約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、前記の配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質などが挙げられる。
実質的に同質の活性としては、例えば、シグナル伝達活性〔例、本発明の蛋白質(好ましくはTREM-2)の細胞内シグナル伝達活性など〕、リガンド結合活性〔例、本発明の蛋白質(好ましくはTREM-2)とリガンドまたは低分子との結合活性など〕などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、シグナル伝達活性、リガンド結合活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
シグナル伝達活性およびリガンド結合活性の測定は、自体公知の方法、例えばJ. Exp. Med. 194巻, 1111-1122頁, 2001年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
本発明の蛋白質(好ましくはTREM-2)のシグナルは、例えばTREM-2またはDAP12(DNAX adaptor protein 12)にリン酸化を生じさせ、ERK(extracellular signal-related protein)を活性化し、炎症性サイトカイン(例、TNF-α等)の分泌を促進する。従って、上記シグナル伝達活性は、例えば本発明の蛋白質発現細胞(例、TREM-2発現動物細胞)に対し、必要に応じ(a)微生物細胞破砕液、微生物培養上清、真核細胞破砕液、真核細胞培養上清などリガンドが含まれる液、(b)リガンド自身、(c)天然のリガンドと同等に本発明の蛋白質に結合活性を有する物質、または(d)本発明の蛋白質(例、TREM-2)を活性化する抗体を添加して、(1)リン酸化ERKの生成量、(2)細胞外に分泌生産されるTNF-αの生成量または(3)リン酸化TREM-2の生成量を測定する。
リガンドとしては、後述する複合糖質などが用いられる。
上記のリン酸化ERKまたはTNF-αの生成量は、抗リン酸化ERK抗体または抗TNF-α抗体を用いて、公知の方法(例、ウェスタンブロッティング法、EIA法など)により測定できる。リン酸化TREM-2の生成量は、抗TREM-2抗体および抗リン酸化チロシン抗体を用いて、またリン酸化DAP12の生成量は抗DAP12抗体および抗リン酸化チロシン抗体を用いて、公知の方法(例、免疫沈降法、ウェスタンブロット法など)により測定できる。TREM-2またはDAP12の免疫沈降は、それぞれの蛋白質を、例えばFLAG、His、V5、myc、HA等のタグを付けた組換え型蛋白質として動物細胞で発現し、それぞれの抗タグ抗体で行うこともできる。
リガンド結合活性は、本発明の蛋白質(好ましくはTREM-2)とリガンドを用いて、例えば、免疫沈降法、蛋白質アフィニティー精製法、酵母Two-hybrid法などにより測定できる。
また、本発明の受容体としては、(1)(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質などのいわゆるムテイン、(2)(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、とくに限定されない。
本発明の受容体の具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質(ヒトTREM-2)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質(マウスTREM-2)などがあげられる。
本発明の受容体の部分ペプチド(以下、本発明の部分ペプチドと称する場合がある)としては、後述の医薬等のスクリーニング方法に用いることのできる部分ペプチドであれば、いかなるものであってもよく、例えば、本発明の蛋白質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、実質的に同質のリガンド結合活性などを有するものなどが用いられる。
具体的には、後述する本発明の抗体を調製する目的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において第133〜147番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:2で表されるアミノ酸配列において第133〜147番目のアミノ酸配列を有するペプチドなどがあげられる。例えば、本発明で用いられる蛋白質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明の部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明の部分ペプチドには、本発明の受容体の細胞外ドメインも含む。該細胞外ドメインとしては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第14〜167番目または第19〜173番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の第14〜170番目または第19〜170番目のアミノ酸配列を有するペプチドなどが挙げられる。
本発明の受容体および本発明の部分ペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。C末端はカルボキシ(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)であってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキルもしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキルなどのC7-14アラルキルのほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチルなどが用いられる。
本発明の受容体および本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシ(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシがアミド化またはエステル化されているものも本発明の受容体および本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の受容体および本発明の部分ペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル、アセチルなどのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシルなど)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル、アセチルなどのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシルなど)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
本発明の受容体または本発明の部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
複合糖質(以下、本発明のリガンドと略記することもある)としては、本発明の受容体と特異的に結合するものであれば、何れの物であってもよい。また、複合糖質の糖鎖部分が本発明の受容体と特異的に結合する場合は、該複合糖質の糖鎖部分も、本発明のリガンドに含まれる。例えば、本発明の受容体との結合の解離定数が10μM以下、好ましくは2μM以下、さらに好ましくは1μM以下、特に好ましくは200nM以下、最も好ましくは100nM以下である物などが挙げられる。
本発明のリガンドとしては、例えば、ガングリオシド(例、GM1、GM2、GM3、GD3、GD1a等)、シアリルオリゴ糖(例、3'-シアリルラクトース、5'-シアリルラクトース、シアリルルイスX、シアリルルイスA、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、シアリルラクト-N-テトラオースc、ジシアリルラクト-N-テトラオース等)、リポ多糖(LPS)(例、大腸菌由来LPS、緑膿菌由来LPS等)、リポテイコ酸(LTA)(例、スタフィロコッカス・アウレウス由来LTA、枯草菌由来LTA等)、デキストラン硫酸などが挙げられる。
本発明のリガンドには、(a)ガングリオシド、シアリルオリゴ糖、リポ多糖、リポテイコ酸またはデキストラン硫酸を構成する部分構造、および(b)上記(a)の部分構造を含有する化合物なども含まれる。
本発明のリガンドとして好ましくは、例えばガングリオシド(例、GM1、GM2、GM3、GD3、 GD1a等)、シアリルオリゴ糖(例、3'-シアリルラクトース、5'-シアリルラクトース、シアリルルイスX、シアリルルイスA、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、シアリルラクト-N-テトラオースc、ジシアリルラクト-N-テトラオース等)などである。さらに好ましくはGM3などである。
標識された複合糖質も、本発明のリガンドに含まれる。
標識物質としては、放射性同位元素(例、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕など)、蛍光物質〔例、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート、NBD (7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol)など〕、酵素(例、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素など)、発光物質(例、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなど)、ビオチン、ランタニド元素などがあげられる。中でも、蛍光物質が好ましい。さらにNBDが好ましい。
標識したリガンドとして好ましくは、蛍光物質で標識されたガングリオシド、さらに好ましくは、NBDで標識されたGM3などが挙げられる。
本発明の受容体および本発明の部分ペプチドは、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のポリペプチドの精製方法によって製造することもできるし、ポリペプチドをコードするDNAで形質転換された形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、ペプチド合成法に準じて製造することもできる。例えば、Genomics、56巻、12-21頁、1999年、Biochim. Biophys. Acta、1446巻、57-70頁、1999年などに記載の方法またはこれに準じた方法により、製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明の受容体または部分ペプチドもしくはそれらの塩の合成には、通常、市販のポリペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするポリペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からポリペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチド、受容体、部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ポリペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ポリペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はポリペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
本発明の受容体または部分ペプチドを得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(ポリペプチド)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたポリペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したポリペプチドとを製造し、この両ポリペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ポリペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望の受容体またはその部分ペプチドのアミド体を得ることができる。
本発明の受容体または部分ペプチドもしくはそれらの塩のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、受容体またはその部分ペプチドのアミド体と同様にして、所望の受容体またはその部分ペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明の受容体または部分ペプチドは、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは受容体の部分ペプチドについては、受容体を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明受容体または部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法があげられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、The Peptide, Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 東京化学同人(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて本発明の受容体または部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる受容体または部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明の受容体または部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明の受容体または部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。このうちDNAが好ましく、該DNAは、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotal RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明の受容体をコードするDNAとしては、例えば配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する受容体をコードするDNAなどであれば何れのものでもよい。
配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列と例えば約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd Edition(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有する受容体をコードするDNAとしては、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する受容体をコードするDNAとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、本発明の受容体の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。具体的には、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:1または配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する受容体をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
本発明の受容体または部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(例、DNA)は、自体公知の方法で標識化されていてもよい。標識物質としては、放射性同位元素、蛍光物質(例、フルオレセインなど)、発光物質、酵素、ビオチン、ランタニド元素などがあげられる。
本発明の受容体または部分ペプチドを完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明の受容体または部分ペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて自体公知のPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明の受容体または部分ペプチドの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd Edition(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化された受容体をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明の受容体または部分ペプチドの発現ベクターは、例えば、(a)本発明の受容体または部分ペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(b)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウィルス,ワクシニアウィルス,バキュロウィルスなどの動物ウィルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどがあげられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウィルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明の受容体のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明の受容体または部分ペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウィルスがAcNPVの場合は、ヨトウガの幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウィルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7(COS7),Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182-187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263-267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、受容体または部分ペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller), Journal of Experiments in Molecular Genetics,431-433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外などに本発明の受容体または部分ペプチドを生成せしめることができる。
上記培養物から本発明の受容体または部分ペプチドを分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明の受容体または部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にポリペプチドが分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる受容体または部分ペプチドの精製は、自体公知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる受容体または部分ペプチドが遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する受容体または部分ペプチドを、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
本発明のリガンドは、市販されている場合には市販品をそのまま用いることもでき、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って抽出または製造することもできる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体(以下、単に本発明の抗体と称する場合がある)は、本発明の受容体に対する抗体を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。本発明の受容体に対する抗体としては、受容体のシグナル伝達を不活性化する抗体、受容体のシグナル伝達を活性化する抗体などが挙げられる。
本発明の受容体に対する抗体は、本発明の受容体を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明の受容体は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリがあげられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化ポリペプチドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどがあげられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞があげられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、ポリペプチド(蛋白質)抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したポリペプチドを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(ポリペプチド抗原)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行い、該免疫動物から本発明の受容体に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチド(例、DNA)に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド(例、DNA)としては、該ポリヌクレオチドに相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該ポリヌクレオチドの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのポリヌクレオチド(アンチセンスポリヌクレオチド)であってもよい。
具体的には、本発明の受容体をコードするポリヌクレオチド(例、DNA)(以下、これらのDNAを本発明のDNAと略記する場合がある)に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスDNA(以下、これらのDNAをアンチセンスDNAと略記する場合がある)が挙げられ、本発明のDNAに相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などがあげられる。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、本発明の受容体のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAが好適である。これらのアンチセンスDNAは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
具体的には、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。好ましくは例えば、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾りん酸残基に置換されていてもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
以下に、本発明の受容体および本発明のリガンドなどの用途を説明する。
〔1〕疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のリガンドは、DAP12リン酸化促進活性、ERKリン酸化促進活性、インスリンシグナル伝達抑制活性、TNFα産生促進活性、グルコース取り込み阻害活性などを有する。
本発明の受容体を用い、または組換え型本発明の受容体の発現系を用いたリガンドレセプターアッセイ系を用いることにより、本発明の受容体と、本発明のリガンドとの結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血清など)またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
該化合物またはその塩には、(i)本発明の受容体を介して細胞刺激活性(例、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP産生抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性化、cGMP依存性プロテインキナーゼの活性化、リン脂質依存性プロテインキナーゼの活性化、微小管結合蛋白質リン酸化酵素(MAPキナーゼ)の活性化などを促進する活性など)を有する化合物(アゴニスト)、(ii)上記細胞刺激活性を有しない化合物(アンタゴニスト)、(iii)本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合力を促進する化合物、(iv)本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合力を阻害する化合物などが含まれる。
具体的には、(i)本発明の受容体に、本発明のリガンドを接触させた場合と(ii)本発明の受容体に、本発明のリガンドおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なう。比較は、例えば、本発明の受容体に対する本発明のリガンドの結合量、細胞刺激活性などを測定して行う。
本発明のスクリーニング方法としての具体例としては、例えば、
(a)本発明のリガンドを本発明の受容体に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体に接触させた場合における、本発明のリガンドの本発明の受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(b)本発明のリガンドを、本発明の受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、本発明のリガンドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(c)本発明の受容体が、本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の受容体である上記(b)記載のスクリーニング方法、
(d)本発明のリガンドが、標識したリガンドである上記(a)〜(c)のスクリーニング方法などのレセプター結合アッセイ系、
(e)本発明のリガンドを本発明の受容体に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体に接触させた場合における、本発明の受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とする、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(f)本発明のリガンドを本発明の受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、本発明の受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とする、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(g)本発明の受容体が、本発明の受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の受容体である上記(f)のスクリーニング方法などの細胞刺激アッセイ系などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
本発明の受容体としては、ヒトや温血動物の臓器の膜画分などが好適に用いられる。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させた本発明の受容体などが適している。
本発明の受容体を製造するには、前述の本発明の受容体の製造方法などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、本発明の受容体を含有する細胞あるいは該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
本発明の受容体を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行うことができる。
本発明の受容体を含有する細胞としては、本発明の受容体を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。製造方法は前述と同様である。
膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などがあげられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した本発明の受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
該本発明の受容体を含有する細胞や膜画分中の本発明の受容体の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
前記のレセプター結合アッセイ系や細胞刺激アッセイ系などのスクリーニング方法を実施するためには、例えば、本発明の受容体画分と、本発明のリガンド(例、標識した本発明のリガンド)などが用いられる。本発明の受容体画分としては、天然型の本発明の受容体画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型本発明の受容体画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性などを示す。標識したリガンドとしては、例えば、放射性同位元素(例、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕など)、蛍光物質〔例、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート、NBDなど〕、酵素(例、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素など)、発光物質(例、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなど)、ビオチン、ランタニド元素などで標識されたリガンドなどを用いることができる。
具体的には、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行うには、本発明の受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドと受容体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween-80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによる本発明の受容体の分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E-64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000〜500000cpm)の標識した本発明のリガンドを添加し、同時に10-10〜10-7Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のリガンドを加えた反応チューブも用意する。反応は0℃〜50℃、望ましくは4℃〜37℃で20分〜24時間、望ましくは30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0-NSB)を100%とした時、特異的結合量(B-NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
さらに、表面プラズモンセンサー技術を利用することによって、本発明の受容体に結合する化合物をスクリーニングすることもできる。
具体的には、ビアコア3000(ビアコア社)のセンサーチップ表面に、本発明の受容体を固定化後、チップ表面にリン酸緩衝液(PBS)などに溶解した試験化合物を流したときの表面プラズモンの変化を測定することにより、本発明の受容体に結合する試験化合物を選択する。例えば、表面プラズモンの変化の測定値が5レゾナンスユニット以上与える試験化合物を本発明の受容体に結合性を有する物質として選択する。
さらに、蛍光物質で標識されたリガンドを用いた場合、蛍光強度、蛍光偏光の増減を測定して、本発明の受容体に結合する化合物をスクリーニングすることもできる。
前記の細胞刺激アッセイ系のスクリーニング方法を実施するためには、本発明の受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP産生抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、GTPγS結合活性、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性化、cGMP依存性プロテインキナーゼの活性化、リン脂質依存性プロテインキナーゼの活性化、微小管結合蛋白質リン酸化酵素(MAPキナーゼ)の活性化などを促進する活性または抑制する活性など)を、自体公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、本発明の受容体を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当な本発明の受容体を発現した細胞が必要である。本発明の受容体を発現した細胞としては、前述の本発明の受容体発現細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えばペプチド、蛋白質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血清などがあげられる。
上記細胞刺激アッセイ系のスクリーニング方法について、さらに具体的に以下(1)〜(12)に記載する。
(1)本発明の受容体発現細胞が受容体アゴニストにより刺激されると、細胞内のDAP12(DNAX adaptor protein 12)のチロシン残基がリン酸化される。
この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを、本発明の受容体およびDAP12共発現細胞に接触した場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体およびDAP12共発現細胞に接触した場合における、DAP12リン酸化の程度を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。DAP12のリン酸化の程度は、公知の方法、例えば抗リン酸化チロシン抗体を用いたウェスタンブロット法で測定する。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体およびV5タグ付きDAP12共発現(例、CHOなどの動物細胞)を公知の手法により作製する。該細胞を、24穴プレートに5x104cell/wellで播種し、48時間培養する。この細胞に、本発明のリガンドおよび試験化合物を添加し、10分間培養する。細胞を、細胞溶解液〔30 mM Tris-HCl (pH7.4), 150 mM NaCl, 10 mM EDTA, 1% NP-40, 50 mM NaF, 1 mM Na-Vanadate〕で溶解し、さらにソニケーションにより膜を破砕する。細胞破砕液を公知の方法に従い抗V5抗体で免疫沈降し、免疫沈降された試料をウェスタンブロット法で解析する。まず、抗V5抗体(インビトロジェン)を用いて試料中のDAP12総蛋白質をデンシトメーターで検出する。抗リン酸化チロシン抗体(シグマ)を用いてリン酸化されたDAP12を同様の手法で検出する。両者を比較することによりDAP12蛋白質あたりのチロシンリン酸化の程度が検出される。
本発明のリガンドのみで細胞を刺激した場合のDAP12のリン酸化の程度と、試験化合物および本発明のリガンドを添加した場合のDAP12のリン酸化の程度を比較し、本発明のリガンドによるDAP12のリン酸化亢進を妨げる試験化合物をアンタゴニストとして選択する。
(2)本発明の受容体発現細胞は、本発明のリガンドの刺激により、細胞内cAMPの産生が抑制される。この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、細胞内cAMP量を増加させる物質の存在下、本発明のリガンドを本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、該細胞の細胞内cAMPの産生抑制活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞内cAMP量を増加させる物質としては、例えば、フォルスコリン、カルシトニンなどが用いられる。
本発明の受容体発現細胞内のcAMP産生量は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウシなどを免疫して得られた抗cAMP抗体と〔125I〕標識cAMP(ともに市販品)を使用することによるRIA系、または抗cAMP抗体と標識cAMPとを組み合わせたEIA系で測定することができる。また、抗cAMP抗体を、protein Aまたは抗cAMP抗体産生に用いた動物のIgGなどに対する抗体などを使用して固定したシンチラントを含むビーズと〔125I〕標識cAMPとを使用するSPA(Scintillation Proximity Assay)法による定量も可能である(アマシャムファルマシアバイオテク社製のキットを使用する)。
本方法において、本発明のリガンドによる本発明の受容体発現細胞のcAMP産生抑制活性を阻害する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させて、cAMP産生抑制活性を調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうことができる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞(例、CHO細胞などの動物細胞)を24穴プレートに5x104cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3-イソブチル-メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後、0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のリガンドまたは1μMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した2μM フォルスコリンを含む0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で24分間反応させる。100μlの20%過塩素酸を加えて反応を停止させ、その後氷上で1時間置くことにより細胞内cAMPを抽出する。抽出液中のcAMP量を、cAMP EIAキット(アマシャムファルマシアバイオテク)を用いて測定する。フォルスコリンの刺激によって産生されたcAMP量を100%とし、1μMの本発明のリガンドの添加によって抑制されたcAMP量を0%として、本発明のリガンドによるcAMP産生抑制活性に対する試験化合物の影響を算出する。本発明のリガンドの活性を阻害して、cAMP産生活性が例えば50%以上になる試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
また、本発明のリガンドの刺激により、細胞内cAMP量が増加する性質を示す本発明の受容体発現細胞を使用する場合、本発明のリガンドを本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、該細胞の細胞内cAMPの産生促進活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
本方法において、本発明のリガンドによる本発明の受容体発現細胞のcAMP産生促進活性を阻害する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させてcAMP産生促進活性を調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうことができる。
cAMP産生促進活性は、上記のスクリーニング法においてフォルスコリンを添加せずに本発明の受容体発現細胞(例、CHO細胞などの動物細胞)に本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加して産生されたcAMPを上記の方法で定量して測定する。
(3)CRE-レポーター遺伝子ベクターを用いて、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
CRE(cAMP response element)を含むDNAを、ベクターのレポーター遺伝子上流に挿入し、CRE-レポーター遺伝子ベクターを得る。CRE-レポーター遺伝子ベクターを導入した本発明の受容体発現細胞において、cAMPの上昇を伴う刺激は、CREを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(蛋白質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子蛋白質の酵素活性を測定することにより、CRE-レポーター遺伝子ベクター導入細胞内のcAMP量の変動を検出することができる。
具体的には、細胞内cAMP量を増加させる物質の存在下、本発明のリガンドを、CRE-レポーター遺伝子ベクター導入本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、CRE-レポーター遺伝子ベクター導入本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、レポーター遺伝子蛋白質の酵素活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞内cAMP量を増加させる物質としては、例えば、フォルスコリン、カルシトニンなどが用いられる。
ベクターとしては、例えば、ピッカジーン ベイシックベクター、ピッカジーン エンハンサーベクター(東洋インキ製造(株))などが用いられる。CREを含むDNAを、上記ベクターのレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、CRE-レポーター遺伝子ベクターとする。
本方法において、本発明のリガンドによるレポーター遺伝子蛋白質の酵素活性抑制を回復させる試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させて、フォルスコリン刺激によって上昇した発光量の本発明のリガンドと同様な抑制を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
CRE-レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を導入した本発明の受容体発現細胞を、24穴プレートに5x103cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3-イソブチル-メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のリガンドまたは1μMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した2μM フォルスコリンを含む0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で24分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のリガンド単独を添加した場合と、1μMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した場合のルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
本発明のリガンドは、フォルスコリン刺激に基づくルシフェラーゼによる発光量の増加を抑制する。該抑制を回復させる化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
レポーター遺伝子として、例えば、アルカリフォスファターゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase)、β−ガラクトシダーゼなどの遺伝子を用いてもよい。これらのレポーター遺伝子蛋白質の酵素活性は、公知の方法に従い、または市販の測定キットを用いて測定する。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば和光純薬製Lumi-Phos 530を用いて、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば和光純薬製FAST CAT chrolamphenicol Acetyltransferase Assay KiTを用いて、β−ガラクトシダーゼ活性は、例えば和光純薬製Aurora Gal-XEを用いて測定する。
(4)本発明の受容体発現細胞は、本発明のリガンドの刺激により、TNFαを細胞外に放出する。この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、TNFαの放出活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のリガンドによるTNFα放出活性を阻害する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
また、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させ、本発明の受容体発現細胞のTNFα放出活性を公知の方法で調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞を24穴プレートに5x104cell/wellで播種し、24時間培養後、終濃度10μMの本発明のリガンドまたは終濃度10μMの本発明のリガンドおよび試験化合物を各wellに添加する。37℃で10分間インキュベートした後、細胞を細胞溶解液〔30 mM Tris-HCl (pH7.4), 150 mM NaCl, 10 mM EDTA, 1% NP-40, 50 mM NaF, 1 mM Na-Vanadate〕で溶解し、さらにソニケーションにより膜を破砕する。細胞破砕液に対し、公知のEIA法に準じ、含有するTNFα量を測定する。
反応用バッファー 500μlのみを添加した場合(本発明のリガンド非添加・試験化合物非添加)のTNFαの量を0%、10μMの本発明のリガンドを含む反応用バッファーを添加した場合(試験化合物非添加)のTNFαの量を100%として、試験化合物を添加した場合のTNFαの量を算出する。
TNFα放出活性が、例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
(5)本発明の受容体発現細胞は、本発明のリガンドの刺激により、細胞内のCa濃度が上昇する。この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、細胞内カルシウム濃度上昇活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。測定は公知の方法に従って行う。
本方法において、本発明のリガンドによる細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみの添加による蛍光強度の上昇を測定することによってアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞を、滅菌した顕微鏡用カバーグラス上に播き、2日後、培養液を、4mM Fura-2 AM(同仁化学研究所)を縣濁したHBSSに置換し、室温で2時間30分おく。HBSSで洗浄した後、キュベットにカバーグラスをセットし、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加し、励起波長340nmおよび380nmでの、505nmの蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
また、FLIPR(モレキュラーデバイス社製)を使って行ってもよい。本発明の受容体発現細胞縣濁液にFluo-3 AM(同仁化学研究所製)を添加し、細胞に取り込ませた後、上清を遠心により数度洗浄後、96穴プレートに細胞を播く。FLIPR装置にセットし、Fura-2の場合と同様に、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加し、蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
さらに、本発明の受容体発現細胞に、細胞内Caイオンの上昇によって発光するような蛋白質の遺伝子(例、aequorinなど)を共発現させておき、細胞内Caイオン濃度の上昇によって、該遺伝子蛋白質(例、aequorinなど)がCa結合型となり発光することを利用して、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることもできる。
細胞内Caイオンの上昇によって発光するような蛋白質の遺伝子を共発現させた本発明の受容体発現細胞を、96穴プレートに播き、上記と同様に、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加し、蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
本発明のリガンドによる蛍光強度の上昇を、抑制する試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
(6)受容体を発現する細胞に、受容体アゴニストを添加すると、細胞内イノシトール三リン酸濃度は上昇する。本発明のリガンドの、本発明の受容体発現細胞における細胞内イノシトール三リン酸産生活性を利用することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、標識したイノシトールの存在下、本発明のリガンドを、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、イノシトール三リン酸産生活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。測定は公知の方法に従って行う。
本方法において、イノシトール三リン酸産生活性を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させ、イノシトール三リン酸産生上昇を測定することによってアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞を24穴プレートに播き、1日間培養する。その後、myo-[2-3H]inositol(2.5μCi/well)を添加した培地で1日間培養し、細胞を放射活性を有するイノシトールを無添加の培地でよく洗浄する。本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加後、10%過塩素酸を加え、反応を止める。1.5M 水酸化カリウムおよび60mM HEPES溶液で中和し、0.5mlのAG1x8樹脂(Bio-Rad)を詰めたカラムに通し、5mM 四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)および60mM ギ酸アンモニウムで洗浄した後、1M ギ酸アンモニウムおよび0.1M ギ酸で溶出した放射活性を、液体シンチレーションカウンターで測定する。本発明のリガンドを添加しない場合の放射活性を0%、本発明のリガンドを添加した場合の放射活性を100%とし、試験化合物の、本発明のリガンドと本発明の受容体の結合に対する影響を算出する。
イノシトール三リン酸産生活性が、例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
(7)TRE-レポーター遺伝子ベクターを用いて、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
TRE(TPA response element)を含むDNAを、ベクターのレポーター遺伝子上流に挿入し、TRE-レポーター遺伝子ベクターを得る。TRE-レポーター遺伝子ベクターを導入した本発明の受容体発現細胞において、細胞内カルシウム濃度の上昇を伴う刺激は、TREを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(蛋白質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子蛋白質の酵素活性を測定することにより、TRE-レポーター遺伝子ベクター導入細胞内のカルシウム量の変動を検出することができる。
具体的には、本発明のリガンドを、TRE-レポーター遺伝子ベクター導入本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、TRE-レポーター遺伝子ベクター導入本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、レポーター遺伝子蛋白質の酵素活性を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
ベクターとしては、例えば、ピッカジーン ベイシックベクター、ピッカジーン エンハンサーベクター(東洋インキ製造(株))などが用いられる。TREを含むDNAを、上記ベクターのレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、TRE-レポーター遺伝子ベクターとする。
本方法において、本発明のリガンドによるレポーター遺伝子蛋白質の酵素活性を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみをTRE-レポーター遺伝子ベクター導入本発明の受容体発現細胞に接触させ、本発明のリガンドと同様な発光量の増加を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
TRE-レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を導入した本発明の受容体発現細胞を、24穴プレートに5x103cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄した後、10nMの本発明のリガンドまたは10nMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加し、37℃で60分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のリガンドを添加した場合と、10nMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した場合のルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
本発明のリガンドによる細胞内カルシウムの上昇によって、ルシフェラーゼによる発光量が増加する。この増加を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
レポーター遺伝子として、例えば、アルカリフォスファターゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase)、β−ガラクトシダーゼなどの遺伝子を用いてもよい。これらのレポーター遺伝子蛋白質の酵素活性は、公知の方法に従い、または市販の測定キットを用いて測定する。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば和光純薬製Lumi-Phos 530を用いて、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば和光純薬製FAST CAT chrolamphenicol Acetyltransferase Assay KiTを用いて、β−ガラクトシダーゼ活性は、例えば和光純薬製Aurora Gal-XEを用いて測定する。
(8)本発明の受容体発現細胞は、本発明のリガンドの刺激により、MAPキナーゼが活性化され、増殖する。この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、細胞増殖を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本発明の受容体発現細胞の増殖は、例えば、MAPキナーゼ活性、チミジン取り込み活性、細胞数などを測定すればよい。
具体例としては、MAPキナーゼ活性については、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体発現細胞に添加した後、細胞溶解液から抗MAPキナーゼ抗体を用いた免疫沈降によりMAPキナーゼ分画を得た後、公知の方法、例えば和光純薬製MAP Kinase Assay Kitおよびγ-[32P]-ATPを使用してMAPキナーゼ活性を測定し、比較する。
チミジン取り込み活性については、本発明の受容体発現細胞を24穴プレートに播種し、培養し、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した後、放射活性により標識したチミジン(例、[methyl-3H]-チミジンなど)を加え、その後、細胞を溶解し、細胞内に取り込まれたチミジンの放射活性を、液体シンチレーションカウンターで計数することにより、チミジン取り込み活性を測定し、比較する。
細胞数の測定については、本発明の受容体発現細胞を24穴プレートに播種し、培養し、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した後、MTT(3-(4,5-dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)を添加する。細胞内に取り込まれてMTTが変化したMTTホルマザンを、塩酸にて酸性としたイソプロパノール水溶液で細胞を溶解した後、570nmの吸収によって測定し、比較する。
本方法において、本発明の受容体発現細胞の増殖を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させ、本発明のリガンドと同様な細胞増殖活性を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
チミジン取り込み活性を利用するスクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞を24穴プレートに5000個/ウェル播き、1日間培養する。次に血清を含まない培地で2日間培養し、細胞を飢餓状態にする。本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を、細胞に添加して24時間培養した後、[methyl-3H]-チミジンをウェル当たり0.015MBq添加し、6時間培養する。細胞をPBSで洗った後、メタノールを添加して10分間放置する。次に5%トリクロロ酢酸を添加して15分間放置後、固定された細胞を蒸留水で4回洗う。0.3N水酸化ナトリウム溶液で細胞を溶解し、溶解液中の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定する。
本発明のリガンドを添加した場合の放射活性の増加を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
(9)本発明の受容体発現細胞が受容体アゴニストによって刺激されると、細胞内のERK (extracellular signal-regulated kinase)1/2のチロシン残基がリン酸化される。
この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを本発明の受容体発現細胞に接触した場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体発現細胞に接触した場合における、ERK1/2リン酸化の程度を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
ERK1/2のリン酸化の程度は、公知の方法、例えば抗リン酸化ERK抗体を用いたウェスタンブロット法で測定する。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞(例、CHOなどの動物細胞)を公知の手法で作製する。該細胞を、24穴プレートに5x104cell/wellで播種し、48時間培養する。この細胞に本発明のリガンドおよび試験化合物を添加し、10分間培養する。細胞を細胞溶解液〔30 mM Tris-HCl (pH7.4), 150 mM NaCl, 10 mM EDTA, 1% NP-40, 50 mM NaF, 1 mM Na-Vanadate〕で溶解し、さらにソニケーションにより膜を破砕する。細胞破砕液を公知の方法に従い抗V5抗体で免疫沈降し、免疫沈降された試料をウェスタンブロット法で解析する。抗ERK1/2抗体(シグマ)を用いて試料中のERK1/2総蛋白質をデンシトメーターを用いた公知の手法で検出する。一方抗リン酸化ERK抗体(シグマ)を用いてリン酸化されたERK1/2を同様の手法で検出する。両者を比較することにより、ERK1/2蛋白質あたりのチロシンリン酸化の程度が検出される。本発明のリガンドのみで細胞を刺激した場合のERK1/2のリン酸化の程度と、試験化合物および本発明のリガンドを添加した場合のERK1/2のリン酸化の程度を比較し、本発明のリガンドによるERK1/2のリン酸化亢進を妨げる試験化合物をアンタゴニストとして選択する。
(10)本発明の受容体発現細胞が本発明のリガンドに反応し、細胞外のpHが変化する。この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体発現細胞に接触させた場合における、細胞外のpH変化を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞外pH変化は、例えば、Cytosensor装置(モレキュラーデバイス社)を使用して測定する。
本方法において、本発明のリガンドによる細胞外pH変化を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体発現細胞に接触させ、本発明のリガンドと同様な細胞外pH変化を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の受容体発現細胞をCytosensor装置用のカプセル内で終夜培養し、装置のチャンバーにセットして細胞外pHが安定するまで約2時間、0.1% BSAを含むRPMI1640培地(モレキュラーデバイス社製)を灌流させる。pHが安定した後、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を含む培地を細胞上に灌流させる。灌流によって生じた培地のpH変化を測定し、比較する。
本発明のリガンドによる細胞外pH変化を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
(11)本発明の受容体(例、TREM-2)の細胞外ドメインおよびCD3zetaの融合蛋白質発現ベクターとNFAT−レポーター遺伝子とを組み合わせて、本発明の受容体(例、TREM-2)シグナルをCD3シグナルと置き換えて検出することができる。この反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
本発明の受容体(例、TREM-2)の細胞外ドメインおよびCD3zetaの融合蛋白質発現ベクターとNFAT−レポーター遺伝子(例、ルシフェラーゼなど)とを導入した発現細胞において、本発明の受容体(例、TREM-2)の活性化は、同時にCD3zetaの活性化となり、NFATを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(蛋白質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子蛋白質の酵素活性を測定することにより、NFAT−レポーター遺伝子ベクター導入細胞の本発明の受容体(例、TREM-2)シグナル強度を検出することができる。
具体的には、本発明の受容体(例、TREM-2)の細胞外ドメインおよびCD3zetaの融合蛋白質発現ベクターとNFAT−レポーター遺伝子を導入した発現細胞に本発明のリガンドを接触させた場合と、本発明の受容体(例、TREM-2)の細胞外ドメインおよびCD3zetaの融合蛋白質発現ベクターとNFAT−レポーター遺伝子を導入した発現細胞に本発明のリガンドおよび試験化合物を接触させた場合における、レポーター遺伝子の蛋白質活性をそれぞれ測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体(例、TREM-2)との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
本発明の受容体(例、TREM-2)の細胞外ドメインおよびCD3zetaの融合蛋白質発現ベクターとNFAT−レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)とを導入した発現細胞を、24穴プレートに5x104cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3-イソブチル-メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のリガンドまたは1μMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で10分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のリガンドのみを添加した場合と、1μMの本発明のリガンドおよび試験化合物を添加した場合におけるルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
(12)本発明の受容体遺伝子RNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入し、本発明のリガンドによって刺激すると細胞カルシウム濃度が上昇して、calcium-activated chloride currentが生じる。これは、膜電位の変化としてとらえることができる(Kイオン濃度勾配に変化がある場合も同様)。本発明のリガンドによって生じる本発明の受容体導入アフリカツメガエル卵母細胞における上記反応を利用して、本発明のリガンドの本発明の受容体発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のリガンドを、本発明の受容体遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を、本発明の受容体遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させた場合における、細胞膜電位の変化を測定し、比較することにより、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、細胞膜電位変化を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の受容体遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させ、本発明のリガンドと同様な細胞膜電位変化を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
氷冷して動けなくなった雌のアフリカツメガエルから取り出した、卵母細胞塊を、MBS液(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.41mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 0.82mM MgSO4, 2.4mM NaHCO3, 10mM HEPES; pH7.4)に溶かしたコラーゲナーゼ(0.5mg/ml)で卵塊がほぐれるまで19℃、1〜6時間、150rpmで処理する。外液をMBS液に置換することで3度洗浄し、マイクロマニピュレーターで本発明の受容体遺伝子poly A付加cRNA(50ng/50nl)を卵母細胞にマイクロインジェクションする。
本発明の受容体遺伝子mRNAは、組織や細胞から調製してもよく、プラスミドからin vitroで転写してもよい。本発明の受容体遺伝子mRNAをMBS液中で20℃で3日培養し、これをRinger液を流しているvoltage clamp装置のくぼみに置き、電位固定用ガラス微小電極および電位測定用ガラス微小電極を細胞内に刺入し、(−)極は細胞外に置く。電位が安定したら、本発明のリガンドまたは本発明のリガンドおよび試験化合物を含むRinger液を流して電位変化を記録する。試験化合物の影響は、本発明の受容体遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞の細胞膜電位変化を、本発明のリガンドのみ含むRinger液を流した場合と比較することによって測定することができる。
細胞膜電位変化を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
上記の系において、電位の変化量を増大させると、測定しやすくなるため、各種のG蛋白質遺伝子のpoly A付加RNAを導入してもよい。また、カルシウム存在下で発光を生じるような蛋白質(例、aequorinなど)の遺伝子のpoly A付加RNAを共インジェクションすることにより、膜電位変化ではなく発光量を測定することもできる。
本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、本発明の受容体または本発明の受容体を含有する細胞もしくは細胞の膜画分、および本発明のリガンドを含有する。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
(i)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、または用時調製しても良い。
(ii)本発明の受容体標品
本発明の受容体を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
(iii)標識リガンド
3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕などの放射性同位元素で標識した本発明のリガンドを適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを、4℃または−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(iv)リガンド標準液
本発明のリガンドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
2.測定法
(i)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明の受容体を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(ii)10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識した本発明のリガンドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10-3Mの本発明のリガンドを5μl加えておく。
(iii)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識された本発明のリガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(iv)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩は、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合を変化させる化合物あるいは本発明の受容体の活性を促進または阻害する化合物であり、具体的には、(i)本発明の受容体を介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(本発明の受容体アゴニスト)、(ii)該刺激活性を有しない化合物(本発明の受容体アンタゴニスト)、(iii)本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合力を促進する化合物、(iv)本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合力を阻害する化合物などである。該化合物としては、ペプチド、蛋白質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血清などから選ばれた化合物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該化合物の塩としては、前記した本発明の受容体の塩と同様のものが用いられる。
上記本発明の受容体アゴニストであるか、またはアンタゴニストであるかの評価方法は、例えば、以下の(i)または(ii)に従えばよい。
(i)前記(a)〜(c)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、本発明のリガンドと本発明の受容体との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記した本発明の受容体を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明の受容体アゴニスト(アゴニスト)であり、該活性を有しない化合物またはその塩は本発明の受容体アンタゴニスト(アンタゴニスト)である。
(ii)(a)試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞に接触させ、本発明の受容体を介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明の受容体アゴニストである。
(b)本発明のリガンドを本発明の受容体を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のリガンドおよび試験化合物を本発明の受容体を含有する細胞に接触させた場合における、本発明の受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。本発明の受容体を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩は本発明の受容体アンタゴニストである。
前述したように、本発明のリガンドは、DAP12リン酸化促進活性、ERKリン酸化促進活性、インスリンシグナル伝達抑制活性、TNFα産生促進活性、グルコース取り込み阻害活性などを有する。
従って、本発明の受容体アゴニストは、本発明のリガンドが有する生理活性(例、DAP12リン酸化促進活性、ERKリン酸化促進活性、インスリンシグナル伝達抑制活性、TNFα産生促進活性、グルコース取り込み阻害活性など)と同様の作用を有しており、安全で低毒性な医薬、例えば、低血糖の予防・治療剤などとして有用である。
本発明の受容体アンタゴニストは、本発明のリガンドが有する生理活性(例、DAP12リン酸化促進活性、ERKリン酸化促進活性、インスリンシグナル伝達抑制活性、TNFα産生促進活性、グルコース取り込み阻害活性など)を抑制することができるので、安全で低毒性な医薬、例えば、インスリン抵抗性の改善剤、耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などとして有用である。
本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合力を促進する化合物は、安全で低毒性な医薬、例えば、低血糖の予防・治療剤などとして有用である。
本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合力を阻害する化合物は、安全で低毒性な医薬、例えばインスリン抵抗性の改善剤、耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などとして有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、蛋白質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血清などから選ばれた化合物であり、本発明の受容体と本発明のリガンドとの結合性を変化させる化合物、本発明の受容体の活性または機能を促進または阻害する化合物、本発明の受容体の遺伝子の発現を促進または阻害(発現量を増加または減少)する化合物などである。
該化合物の塩としては、前記した本発明の受容体の塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上記の医薬(予防・治療剤など)として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。
該化合物またはその塩は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、該化合物またはその塩を、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はある。
例えば、糖尿病患者(体重60kg当たり)に、一日につき本発明の受容体アンタゴニストを約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg経口投与する。非経口的に投与する場合、例えば、本発明の受容体アンタゴニストを注射剤の形で糖尿病患者(体重60kg当たり)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
〔2〕本発明の受容体の定量
本発明の抗体は、本発明の受容体を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明の受容体の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明の受容体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明の受容体の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明の受容体の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明の受容体の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明の受容体のN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明の受容体のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
また、本発明の受容体に対するモノクローナル抗体を用いて本発明の受容体の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明の受容体の定量法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、ポリペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常ポリペプチドあるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の受容体量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明の受容体の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明の受容体の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明の受容体のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明の受容体の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明の受容体を感度良く定量することができる。
さらには、本発明の抗体を用いて本発明の受容体の濃度を定量することによって、本発明の受容体の濃度の増加が検出された場合、例えば、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患などの疾病である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。また、本発明の受容体の濃度の減少が検出された場合には、例えば、低血糖などの疾病である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明の受容体を検出するために使用することができる。また、本発明の受容体を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明の受容体の検出、被検細胞内における本発明の受容体の挙動の分析などのために使用することができる。
〔3〕本発明のリガンドを含有してなる低血糖の予防・治療剤
本発明のリガンドは、DAP12リン酸化促進活性、ERKリン酸化促進活性、インスリンシグナル伝達抑制活性、TNFα産生促進活性、グルコース取り込み阻害活性などを有する。したがって、本発明のリガンドに異常があったり、欠損している場合には、例えば、低血糖などが発症する。
したがって、本発明のリガンドは、例えば低血糖などの予防・治療剤などの安全な医薬として使用することができる。
本発明のリガンドを上記の治療・予防剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のリガンドは、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のリガンドを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO-50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明のリガンドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、低血糖の治療目的で本発明のリガンドを経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該リガンドを約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該リガンドの1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、低血糖の治療目的で本発明のリガンドを注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該リガンドを約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
〔4a〕「本発明のリガンドの、本発明の蛋白質に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤」および「本発明のリガンドの、本発明の蛋白質にに対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩を含有してなる耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤」
「本発明のリガンドの、本発明の蛋白質に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩」としては、本発明のリガンドの、本発明の蛋白質に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩であればいずれでもよく、例えば、ペプチド、蛋白質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血清などから選ばれる。該化合物またはその塩を、上記の剤として使用する場合は、上記〔1〕と同様に使用すればよい。
〔4b〕「本発明のリガンドの、本発明の蛋白質に対する活性化作用を促進する化合物またはその塩を含有してなる低血糖の予防・治療剤」
「本発明のリガンドの、本発明の蛋白質に対する活性化作用を促進する化合物またはその塩」としては、本発明のリガンドの、本発明の蛋白質に対する活性化作用を促進する化合物またはその塩であればいずれでもよく、例えば、ペプチド、蛋白質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血清などから選ばれる。該化合物またはその塩を、上記の剤として使用する場合は、上記〔1〕と同様に使用すればよい。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
R :アデニン(A)またはグアニン(G)
Y :チミン(T)またはシトシン(C)
M :アデニン(A)またはシトシン(C)
K :グアニン(G)またはチミン(T)
S :グアニン(G)またはシトシン(C)
W :アデニン(A)またはチミン(T)
B :グアニン(G)、グアニン(G)またはチミン(T)
D :アデニン(A)、グアニン(G)またはチミン(T)
V :アデニン(A)、グアニン(G)またはシトシン(C)
N :アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)もしく
はチミン(T)または不明もしくは他の塩基
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos :p−トルエンスルフォニル
Bzl :ベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
DCM :ジクロロメタン
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC :N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
Gly又はG :グリシン
Ala又はA :アラニン
Val又はV :バリン
Leu又はL :ロイシン
Ile又はI :イソロイシン
Ser又はS :セリン
Thr又はT :スレオニン
Cys又はC :システイン
Met又はM :メチオニン
Glu又はE :グルタミン酸
Asp又はD :アスパラギン酸
Lys又はK :リジン
Arg又はR :アルギニン
His又はH :ヒスチジン
Phe又はF :フェニルアラニン
Tyr又はY :チロシン
Trp又はW :トリプトファン
Pro又はP :プロリン
Asn又はN :アスパラギン
Gln又はQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Tyr(I) :3−ヨードチロシン
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
Trt :トリチル
Pbf :2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾ
フラン−5−スルホニル
Clt :2−クロロトリチル
But :t−ブチル
Met(O) :メチオニンスルフォキシド
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトTREM-2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
マウスTREM-2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するヒトTREM-2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するマウスTREM-2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
参考例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
参考例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
参考例2および参考例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
参考例2および参考例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
以下に参考例および実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
参考例1
発現変動遺伝子の検索
KKAyマウス(14週齢、オス)およびコントロールとして用いたC57BL/6マウス(14週齢、オス)より副睾丸脂肪組織を摘出し、ISOGEN試薬(和光純薬)中でホモジナイゼーションした後、クロロホルム抽出、イソプロパノール沈殿によりそれぞれの組織よりTotal RNAを抽出し、さらにOligotex dT30(タカラバイオ)によりpoly (A)+ RNAを精製した。これらのpoly (A)+RNAを2 μgを出発材料としてReverse Transcriptase (Superscript RTII; インビトロジェン)によりcDNAを合成し、PCR-Select cDNA Subtraction Kit (クロンテック)を用いて、KKAyマウス脂肪組織で発現量の上昇あるいは低下しているcDNA群を選択的にPCR断片として増幅した。増幅されたcDNA群はクローニングベクターpT7Blue-Tにライゲーションした後、Escherichia coli DH5αを形質転換することによりクローニングした。それぞれの挿入配列をベクター配列であるM13 primer P7(配列番号:5)およびM13 primer P8(配列番号:6)(いずれも東洋紡)で増幅し、得られたPCR断片をガラススライド上にスポッティングしてマイクロアレイを作製した。検出プローブとしてそれぞれのマウス脂肪組織由来のpoly (A)+ RNAをランダムプライム法によりCy5またはCy3で蛍光ラベルしたものを作製し、これをマイクロアレイに対し15時間ハイブリダイズして発現量の差の顕著な遺伝子群を同定した。コントロールであるC57BL/6マウス発現遺伝子と比較してKKAyにおいて4倍以上の発現上昇遺伝子として29遺伝子、一方で4倍以下の発現低下遺伝子として69遺伝子が同定された。マウス型TREM-2は発現上昇遺伝子群の中から5.32倍上昇する遺伝子として同定された。
参考例2
TREM-2の脂肪細胞からのクローニング
TREM-2の発現変動の確認および機能解析のための実験材料獲得のためTREM-2の全長コード領域cDNAを、ヒト脂肪細胞およびマウス3T3-L1脂肪細胞cDNAライブラリーよりPCRでクローニングした。
ヒトTREM-2のクローニングには次の配列をプライマーとして用いた。
5’-ATGGAGCCTCTCCGGCTGCTCATC-3’(配列番号:7)
5’-TCACGTGTCTCTCAGCCCTGGCAG-3’ (配列番号:8)
反応はAdvantage-2 cDNA PCR Kit(クロンテック)を用い、98℃ 20秒、68℃ 1分30秒を35サイクルで行った。
マウスTREM-2のクローニングには次の配列をプライマーとして用いた。
5’-ATGGGACCTCTCCACCAGTTTCTCCTG-3’ (配列番号:9)
5’-TCACGTACCTCCGGGTCCAGTGAG-3’ (配列番号:10)
反応はPfu Turbo DNA polymerase(ストラタジーン)を用い、95℃ 20秒、65℃ 40秒、72℃ 1分を35サイクルで行った。
得られたcDNA断片はヒトTREM-2についてはそのまま、一方、マウスTREM-2についてはTAKARA Ex-Taq(タカラバイオ)で72℃、10分間反応してPCR断片の両側の3’-末端にAを付加した後、それぞれpCR2.1ベクター(インビトロジェン)にクローニングしてDNA sequencingを行った。ヒト脂肪細胞より単離したTREM-2は公知のヒトTREM-2(AF213457)と一致した。一方、マウスTREM-2は公知配列としてTREM-2a(AY024348)、TREM-2b(AY024349)およびTREM-2c(AF213458)の3種類のcDNAが存在するが、3T3-L1脂肪細胞より得られたTREM-2は6クローンのうちすべてがTREM-2aと一致した。
参考例3
RT-PCRによる発現変動の確認
KKAyマウス(14週齢、オス)およびC57BL/6マウス(14週齢、オス)の副睾丸脂肪組織より抽出したRNAに対してRT-PCRを行った。それぞれの組織より抽出した0.5 μgのTotal RNAについて、Oligo-dT-アダプタープライマー(タカラバイオ)を用いてAMV (Avian Myeloblastosis Virus)由来逆転写酵素(タカラバイオ)でcDNAを合成し、マウスTREM-2クローニングのためのプライマー(配列番号:9および配列番号:10)を用いてPCRを行った。反応はAdvantage-2 cDNA PCR Kit(クロンテック)を用い、98℃ 20秒、68℃ 1分30秒を25サイクルで行った。反応産物をアガロースゲル電気泳動で検出したところ、参考例1のマイクロアレイの結果と同様に、KKAyマウス脂肪組織のTREM-2発現量は、C57BL/6マウスのTREM-2発現量と比較して、5倍以上の差が確認できた。
参考例4
抗マウスTREM-2抗体の作製とマウス脂肪組織における蛋白質レベルでのTREM-2の発現解析
マウスTREM-2配列〔配列番号:2〕の133番目のLeu〜147番目のSerで構成されるペプチドを抗原としてウサギを免疫し、抗TREM-2ポリクローナル抗体を取得した。KKAyマウスならびにC57BL/6マウスの副睾丸脂肪組織を摘出しホモジナイズしたもの各20μgをこの抗体を用いてウェスタンブロッティングで解析したところ、KKAyマウス由来の組織からはTREM-2のバンドが検出されたが、C57BL/6マウス由来の組織からは検出されなかった。
参考例5
TREM-2のマウスにおける発現組織分布
KKAyマウスならびにC57BL/6マウスの副睾丸脂肪組織、腸間膜脂肪組織、骨格筋、肝臓、精巣、脾臓、脳、腎臓からそれぞれtotal RNAを抽出し、参考例3に記載のRT-PCR法でTREM-2の発現組織分布を検討したところKKAyマウスの副睾丸脂肪組織ならびに腸間膜脂肪組織で顕著な発現が認められた。一方、これら脂肪組織以外の組織での発現はほとんど認められなかった。
参考例6
TREM-2の糖尿病モデルマウスにおける発現の定量
(1)定量的RT-PCR法
Total RNA 1 ngあたりのTREM-2 mRNAのコピー数を定量的RT-PCR法で測定した。RT-PCRはSYBR Green RT-PCR試薬キット(アプライドバイオシステムズ)を用いて添付プロトコールに従って行い、PCRプロダクト自動検出・定量システムABI PRISM 7700(アプライドバイオシステムズ)で定量した。
マウスTREM-2の定量的RT-PCRには、以下のプライマーを用いた。
5'-ACACCCTTGCTGGAACCGTCAC-3’(配列番号:11)
5'-GTCCTCCAGCACCTCCACCAGTA-3’(配列番号:12)
ヒトTREM-2の定量的RT-PCRには、以下のプライマーを用いた。
5'-GAGTCTGAGAGCTTCGAGGATG-3’(配列番号:13)
5'-CTGGCTGCTAGAATCTTGATGA-3’(配列番号:14)、
マウス TNF-αの定量的RT-PCRには、以下のプライマーを用いた。
5'-AAGGGATGAGAAGTTCCCAAA-3’(配列番号:15)
5'-CTCCACTTGGTGGTTTGCTAC-3’(配列番号:16)
(2)糖尿病動物モデルにおける糖尿病病態の進行とTREM-2の発現の関連
参考例6(1)に記載の定量的RT-PCR法でTREM-2 mRNAの発現量を定量したところ、KKAyマウスの副睾丸脂肪組織および腸間膜脂肪組織ではC57BL/6マウスと比較して10倍以上の発現量亢進が認められた。さらに、7、14および28週齢のKKAyマウス副睾丸脂肪組織のTREM-2 mRNA発現量を同様の方法で測定したところ、週齢に伴う血糖値の上昇と比例して発現量が増大した。このとき、インスリン抵抗性の指標であるTNF-αのmRNA発現量はTREM-2と同様に増大し、TREM-2とTNF-αの発現量の相関係数(R2値)は0.8802であった。
一方、11、20、40週齢のdb/dbマウスの副睾丸脂肪組織でTREM-2 mRNAの発現を上記と同様の手法で定量した場合もKKAyマウスと同様に、週齢に伴う血糖値の上昇と比例して発現が増大した。
参考例7
インスリン抵抗性状態での3T3-L1脂肪細胞におけるTREM-2の発現解析
3T3-L1脂肪細胞に持続的にインスリンを作用させることにより実験的に組織培養レベルでのインスリン抵抗性状態を作り出すことができる (Diabetologia, 38巻, 1148-1156頁, 1995年;J. Biol. Chem., 272巻, 7759-7764頁, 1997年)。この手法でインスリン抵抗性状態にした3T3-L1細胞でのTREM-2発現量を参考例6(1)に記載の定量的RT-PCR法で測定した。
3T3-L1脂肪細胞にインスリンを100 nMで48時間添加した場合にTREM-2 mRNA発現量が3倍以上、またインスリンを2μMで48時間添加した場合はTREM-2 mRNA発現量が6倍以上増加した。
参考例8
正常ヒト組織におけるTREM-2の発現解析
正常ヒト由来の脳、大腸、心臓、腎臓、白血球、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、胎盤、骨格筋、小腸、脾臓、精巣および胸腺でTREM-2 mRNAの発現を参考例2に記載のcDNAクローニングに用いたプライマーで参考例3に記載の方法に準じてRT-PCRを行った。
いずれの組織でもTREM-2 mRNAの発現はほとんど確認できなかった。
参考例9
ヒト糖尿病患者脂肪組織におけるTREM-2の発現解析
ヒト糖尿病患者由来皮下脂肪組織よりtotal RNAを抽出し、これに含まれるTREM-2 mRNA量を、非糖尿病患者由来のものと参考例6(1)記載の定量的RT-PCR法で比較した。
非糖尿病患者6例では、いずれもほとんどTREM-2の発現が認められなかったが、糖尿病患者では8例中3例で非糖尿病患者と比較して10倍以上の顕著なTREM-2の発現亢進が認められた。
参考例10
TREM-2細胞外ドメインの糖尿病モデル動物における血糖低下作用の検討
TREM-2細胞外ドメイン(以下Sol TREM-2と略記)がTREM2リガンドを中和することによるTREM-2の機能抑制検討のため、KKAyマウスへの投与実験を行った。
Sol TREM-2はマウスTREM-2配列(配列番号:2)のうち細胞外ドメインに相当する18番目のAla〜164番目のGluの147アミノ酸からなるポリペプチドのN-末端に、組換え蛋白質発現ベクター構築の際に付加された4アミノ酸(Gly-Ser-His-Met)を持つものを大腸菌組換え型蛋白質として調製した。KKAyマウス(14週齢、オス)に対し、糖負荷試験の3日前、2日前、1日前および糖負荷試験当日の4回、それぞれ100μgずつ、合計400μgのSol TREM-2を腹腔内投与した。Sol TREM-2投与後、それぞれのマウスに1 g/kgのブドウ糖を腹腔内投与することにより糖負荷を行い、糖負荷後2時間までの血糖値を測定した。
Sol TREM-2投与マウスはコントロールマウスと比較して糖負荷後30分より顕著な血糖値低下が認められた。60分より120分にかけて約100 mg/dLの血糖値の低下が認められた。また、この実験で糖負荷直後から120分までの血糖値の変動曲線下面積(Area under glucose curve; AUC) 値を比較した場合、Sol TREM-2投与マウスはコントロールマウスと比較して約70%の有意なAUC値低下が認められた。
Sol TREM2投与後の副睾丸白色脂肪組織におけるTNF-αのmRNA発現量は参考例6(1)に記載の定量的RT-PCR法による測定の結果、50%以下に低下していた。
さらに、投与回数を、糖負荷試験の7日前から糖負荷試験当日までの8回に増加したことにより、血糖低下作用はさらに顕著になり、Sol TREM-2非投与群の空腹時血糖値が約250 mg/dLであったのに対し、Sol TREM-2投与群の空腹時血糖値は約140 mg/dLとほぼ正常レベルにまで低下した。
このとき、Sol TREM-2投与群の血中インスリン値は、Sol TREM-2非投与群の73%に低下した。
参考例11
TREM-2細胞外ドメインの糖尿病モデル動物における血中脂質低下作用の検討
参考例10に記載の方法でKKAyマウスにSol TREM2を8回投与した後、採血を行い、血中の脂質を測定した。
Sol TREM-2投与群のKKAyマウスでは、Sol TREM-2非投与群と比較して、血中トリグリセリドが63%に、血中遊離脂肪酸が68%に低下した。
LPSとTREM-2の結合試験およびGM3による競合阻害実験
TREM-2はマウスTREM-2のアミノ酸配列(配列番号:2)のうち、細胞外ドメインに相当する18番目のAla〜164番目のGluまでの147アミノ酸からなるポリペプチドのN-末端に、His-Tagを結合したものを、大腸菌でT7プロモーターの制御下で発現させた。目的蛋白質は細胞破砕液をニッケルキレートカラム(ファルマシア)を用いて精製した(以下、N-His-TREM2と略記する)。
LPSは大腸菌由来LPS (SIGMA L6529)をEZ-Link Biotin化試薬(PIERCE)でBiotinラベルしたものを調整し、用いた(以下Biotin-LPSと略記する)。
GM3はHytest社製(#8G16-4h)を用いた。
ニッケルキレートビーズ(Novagen)に0.36μgのN-His-TREM2を固定化したのち、Biotin-LPSを0-50μg加えると濃度依存的にN-His-TREM2への結合が認められた。次に、50μgのBiotin-LPSに対し、GM3を50μg、100μgおよび300μg添加し、4℃で一晩反応させた。ビーズをPBSで洗浄後、グリシン塩酸緩衝液(pH 2.8)で溶出し、溶出液中のLPS含量をHRP標識ストレプトアビジンで、またGM3含量を抗GM3抗体(生化学工業)でそれぞれ定量した。50μgのLPSに対し、GM3を50μg、100μgおよび150μg添加した場合の溶出液のLPS含量は、GM3を添加しない場合に対し、それぞれ約60%、30%および20%に低下した。一方、溶出液のGM3含量は492 nmの吸光度で約0.3、1.0および1.6と増加した。なお、GM3を添加しない場合の492 nmの吸光度は検出限界以下であった。
以上の結果より、TREM-2とLPSが結合すること、TREM-2とLPSの結合はGM3で阻害されること、およびTREM-2とLPSの結合を阻害したGM3はLPSと競合的にTREM-2に結合していることが示された。
TREM-2とLPSの結合に対するガングリオシド(GM1,GM2,GM3, GD3)、リポテイコ酸、デキストラン硫酸の競合阻害実験
実施例1に記載の方法でニッケルキレートビーズに、0.36μgのN-His-TREM2を固定化したのち、50μgのBiotin-LPSに対し、GM1、GM2、GM3およびGD3を、それぞれ100μg添加し、溶出液中のLPS含量がガングリオシド未添加の場合と比較してどの程度に減少するかを検討した。
GM3添加の時のLPS結合量が非添加の約30%であったのに対し、GD3が約38%、GM1が約35%、GM2が約20%と、いずれも同程度のTREM2とLPSの結合阻害作用を示した。同様の実験系でそれぞれ250μgのデキストラン硫酸(平均分子量5,000; SIGMA, D7037)、デキストラン硫酸(平均分子量500,000; SIGMA, D6001)、およびリポテイコ酸(SIGMA, L2515)を添加した場合も未添加と比較して、溶出液のLPS含量が、それぞれ約60%、約50%、約5%に低下した。
以上のことより、TREM-2とLPSの結合検出系を用いてTREM-2のアゴニストまたはアンタゴニストが検出できることが示された。
GM3とTREM-2の結合試験
結合試験に用いたTREM2蛋白質はマウスTREM-2のアミノ酸配列(配列番号:2)のうち、細胞外ドメインに相当する18番目のAlaから164番目のGluまでの147アミノ酸からなるポリペプチドのC-末端に、ヒト免疫グロブリンFcフラグメントを結合したものを、動物細胞(マウスミエローマ細胞)でCMVプロモーターの制御下で分泌型蛋白質として発現させた。目的蛋白質は培養液からプロテインAカラム(ファルマシア)を用いて精製した(以下mTREM2-Fcと略記する)。
GM3としては、O-(acetamido-3,5-dideoxy-D-glycero-α-D-galacto-2-nonulopyranosylonic acid)-(2→3)-O-β-D-galactopyranosyl-(1→4)-O-β-D-glucopyranosyl-(1→ 1)-(2S,3R,4E)-2-N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)aminooctanamido-4-octadecene-1,3-diol(株式会社ペプチド研究所;以下、蛍光ラベルGM3と略記する)を用いた。
100 mlのProtein G アガロース(PIERCE社)に10μgのmTREM2-Fcを添加し、4℃で3時間反応し固定化した。リン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄し、Protein Gに結合していないmTREM2-Fcを除去した後、蛍光ラベルGM3を0.2〜3.2μg添加し、4℃で一晩結合反応させた。PBSで4回洗浄し、未反応の蛍光ラベルGM3を除去した後、グリシン塩酸緩衝液(pH 2.8)でProtein GアガロースからmTREM2-Fcおよび蛍光ラベルGM3を溶出した。それぞれの溶出液について、485 nmの励起光に対する535 nmの蛍光強度を測定し、mTREM2-Fcに結合した蛍光ラベルGM3の定量を行った。なお、Protein G アガロースへの非特異的なGM3吸着量を測定するため、mTREM2-Fcを固定化していないProtein Gアガロースに対し、それぞれ同様の実験を行った。
結果を図1に示す。
これより、GM3は濃度依存的にTREM-2に結合することがわかった。
TREM-2アンタゴニストのスクリーニング
実施例3に記載したTREM-2とGM3の結合試験を利用して一次スクリーニングを行う。
固定化したTREM2-Fcに対し、GM3および試験化合物を混在した試料を添加し、PBSで洗浄後、固定化されたTREM-2に結合しているGM3を蛍光強度で測定する。GM3のみを添加した場合と比較して、蛍光強度を低下せしめる試験化合物を選択し、TREM-2とGM3の結合を阻害する化合物として一次選択する(一次選択化合物)。
一次選択化合物について、DAP12のリン酸化を指標にしてアンタゴニスト活性を保持する可能物を選択することにより、二次選択を行う。公知の手法で作製したTREM-2およびV5タグ付きDAP12共発現CHO細胞に、GM3および試験化合物を添加し、10分間培養する。細胞を細胞溶解液〔30 mM Tris-HCl (pH7.4), 150 mM NaCl, 10 mM EDTA, 1% NP-40, 50 mM NaF, 1 mM Na-Vanadate〕で溶解し、さらにソニケーションにより膜を破砕する。細胞破砕液を抗V5抗体で免疫沈降し、免疫沈降された試料をウェスタンブロット法で解析する。まず抗V5抗体(インビトロジェン)で試料中のDAP12総蛋白質をデンシトメーターで検出し、一方、抗リン酸化チロシン抗体(シグマ)でリン酸化されたDAP12を同様の手法で検出する。両者を比較することによりDAP12蛋白質あたりのチロシンリン酸化の程度を検出する。試験化合物を添加せずGM3のみで細胞を刺激した場合のDAP12のリン酸化の程度と、試験化合物およびGM3を添加した場合のDAP12のリン酸化の程度を比較し、GM3によるDAP12のリン酸化亢進を妨げる試験化合物をアンタゴニストとして二次選択する。
二次選択された試験化合物はKKAyマウス等の糖尿病モデルマウスに投与し、血糖値、耐糖能試験、血中インスリン量、血中脂質量等を測定しインスリン抵抗性等が改善されるかを確認する。
ヒトTREM-2、マウスTREM-2、ヒトTREM-1およびマウスTREM-1とGM3との結合試験
結合試験に用いたヒトTREM-2蛋白質はヒトTREM-2のアミノ酸配列(配列番号:1)のうち、細胞外ドメインに相当する14番目のGluから167番目のGluまでの154アミノ酸からなるポリペプチドのC-末端に、ヒト免疫グロブリンFcフラグメントを結合したものを、動物細胞(マウスミエローマ細胞)でCMVプロモーターの制御下で分泌型蛋白質として発現させた。目的蛋白質は培養液からプロテインAカラム(ファルマシア社)を用いて精製した(以下hTREM2-Fcと略記する)。マウスTREM-2蛋白質は実施例3に記載のものを使用した。
ヒトTREM-1蛋白質は、Recombinant Human TREM-1/Fc Chimera(R&Dシステム社;以下hTREM1-Fcと略記する)、マウスTREM-1蛋白質は、Recombinant Mouse TREM-1/Fc Chimera(R&Dシステム社;以下mTREM1-Fcと略記する)を用いた。
100μlのProtein Gアガロース(PIERCE社)に、それぞれ3μgのmTREM1-Fc、mTREM2-Fc、hTREM1-FcおよびhTREM2-Fcを添加し、4℃で3時間反応しProtein Gアガロースにそれぞれの蛋白質を固定化した。リン酸緩衝液(PBS)でProtein Gアガロースを3回洗浄し、Protein Gに結合していない蛋白質を除去した後、実施例3に記載の蛍光ラベルGM3を0.4〜1.6μg添加し、4℃で一晩結合反応させた。 PBSで4回洗浄し、未反応の蛍光ラベルGM3を除去した後、グリシン塩酸緩衝液(pH 2.8)でProtein Gアガロースから各蛋白質および蛍光ラベルGM3を溶出した。それぞれの溶出液について485 nmの励起光に対する535 nmの蛍光強度を測定し、各蛋白質に結合した蛍光ラベルGM3の定量を行なった。
結果を図2に示す。
これによりGM3はTREM-2特異的に濃度に依存して結合することがわかる。さらに、マウスTREM-2およびヒトTREM-2は、ほぼ同等のGM3への結合力を有することがわかる。
TREM2-Fcおよび蛍光ラベルGM3複合体に対する、非ラベルGM3によるGM3置換実験
100μlのProtein Gアガロース(PIERCE社)に3μgのhTREM2-Fcを添加し、4℃で3時間反応し固定化した。リン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄し、Protein Gに結合していない蛋白質を除去した後、蛍光ラベルGM3を1.6μg添加し、4℃で3時間反応させた。リン酸緩衝液(PBS)で4回洗浄し未反応の蛍光ラベルGM3を除去した後、0.8〜6.4μgのGM3(HyTest社;以下非ラベルGM3と記載する)を添加し4℃で一晩結合反応させた。 PBSで4回洗浄し、未反応の蛍光ラベルGM3および非ラベルGM3を除去した後、グリシン塩酸緩衝液(pH 2.8)でProtein GアガロースからhTREM2-Fc、蛍光ラベルGM3および非ラベルGM3を溶出した。それぞれの溶出液について485 nmの励起光に対する535 nmの蛍光強度を測定し、hTREM2-Fcに結合した蛍光ラベルGM3の定量を行なった。
非ラベルGM3を添加しない実験のTREM-2結合蛍光ラベルGM3量を100%としたとき、0.8μgの非ラベルGM3を添加した場合に約78%、1.6μgの場合に約57%、6.4μgの場合に約33%にTREM-2結合蛍光ラベルGM3量がそれぞれ低下した。
これより、この実験系の非ラベルGM3を試験化合物と置き換えて同様に実施することにより、TREM-2とGM3の結合を阻害する化合物のスクリーニングが蛍光強度の測定により簡便に行えることがわかる。
mTREM2-Fcに結合した蛍光ラベルGM3の定量結果を表す図である。図中、■はmTREM2-Fcが結合したProtein Gアガロースへの結合量を、□は、mTREM2-Fcを固定化していないProtein Gアガロースへの結合量を示す。横軸は、蛍光ラベルGM3の添加量を、縦軸は、溶出液に含まれるGM3の蛍光強度を示す。 mTREM1-Fc、mTREM2-Fc、hTREM1-FcおよびhTREM2-Fcに結合した蛍光ラベルGM3の定量結果を表す図である。図中、□はmTREM1-Fcへの結合量を、■はmTREM2-Fcへの結合量を、△はhTREM1-Fcへの結合量を、▲はhTREM2-Fcへの結合量を示す。横軸は、蛍光ラベルGM3の添加量を、縦軸は、溶出液に含まれる蛍光GM3の蛍光強度を示す。
〔配列番号:5〕 参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕 参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕 参考例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕 参考例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕 参考例2及び参考例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕 参考例2及び3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕 参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕 参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕 参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕 参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕 参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕 参考例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。

Claims (18)

  1. (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  2. (a)複合糖質を、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合と、(b)複合糖質および試験化合物を、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合における、該複合糖質の該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する結合量を測定し、比較する、請求項1記載のスクリーニング方法。
  3. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項1記載のスクリーニング方法。
  4. 複合糖質が、標識した複合糖質である請求項1記載のスクリーニング方法。
  5. (a)複合糖質を、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合と、(b)複合糖質および試験化合物を、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に接触させた場合における、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を介した細胞刺激活性を測定し、比較する、請求項1記載のスクリーニング方法。
  6. 複合糖質が、ガングリオシド、シアリルオリゴ糖、リポ多糖、リポテイコ酸またはデキストラン硫酸である請求項1〜5記載のスクリーニング方法。
  7. 複合糖質が、ガングリオシドである請求項1〜5記載のスクリーニング方法。
  8. 複合糖質が、GM3である請求項1〜5記載のスクリーニング方法。
  9. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である請求項1記載のスクリーニング方法。
  10. (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩および(b)複合糖質を含有することを特徴とする、該蛋白質またはその塩と該複合糖質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
  11. 複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  12. 複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を阻害する化合物またはその塩を含有してなる耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤。
  13. 複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する活性化作用を促進する化合物またはその塩を含有してなる低血糖の予防・治療剤。
  14. 複合糖質を含有してなる低血糖の予防・治療剤。
  15. 複合糖質が、ガングリオシド、シアリルオリゴ糖、リポ多糖、リポテイコ酸またはデキストラン硫酸である請求項14記載の予防・治療剤。
  16. (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  17. (a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、および(b)複合糖質を用いることを特徴とする、耐糖能異常、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療作用を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  18. 複合糖質の、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩への活性化作用を阻害することを特徴とするインスリン抵抗性改善方法。
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CN113302206A (zh) * 2018-11-26 2021-08-24 戴纳立制药公司 治疗脂质代谢失调的方法

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