JP2004073179A - 新規タンパク質、そのdnaおよび用途 - Google Patents

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Tsukasa Sugo
周郷 司
Masaaki Mori
森 正明
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Abstract

【課題】肥満症の予防・治療剤等のスクリーニング等に有用な新規受容体の提供。
【解決手段】サル、ネコおよびイヌ由来のタンパク質またはその塩、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該タンパク質に対する抗体、該タンパク質とMCHとの結合性を変化させる化合物のスクリーニング方法/スクリーニング用キット、該スクリーニングで得られる化合物またはその塩など。
【効果】本発明のタンパク質、ポリヌクレオチドおよび抗体などは、例えば食欲不振、微弱陣痛などの診断マーカー等として有用である。該タンパク質およびMCHなどを用いるスクリーニング法により得られる化合物は、食欲(摂食)増進剤、食欲不振などの予防・治療剤などとして使用することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なGタンパク質共役型レセプタータンパク質、それをコードするDNA、それらの用途などに関する。詳しくは、食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全もしくは乳汁うっ滞の予防・治療作用、または肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症もしくは変形性骨関節症の予防・治療作用を有する化合物のスクリーニングなどに関する。
【0002】
【従来の技術】
肥満は、糖尿病や心疾患など数多くの生活習慣病発症のリスクファクターとなることが知られている。食生活や生活様式の変化に伴い、特に先進国において肥満は増大しており、医療経済学的側面から社会的にも非常に大きな問題となっている。肥満は種々の要因に起因することが知られているが、最近、摂食中枢である視床下部に存在するいくつかのペプチドが哺乳動物において摂食行動の促進あるいは抑制に関与することが明らかとなり、これらのペプチドの肥満に対する寄与が特に注目を集めている。これらのペプチドの作用に対して阻害または活性化を示す薬剤は中枢性抗肥満薬としての可能性が考えられるからである。このような視床下部ペプチドの一つであるメラニン凝集ホルモン(Melanin Concentrating Hormone)(以下、MCHと記載することがある)は、もともと魚類の黒色素胞の色素顆粒を凝集する体色変化ホルモンとして見出されたペプチドであるが、その後、ヒト、ラットおよびマウスのような哺乳類にも存在することが明らかとなった。最近、MCHが哺乳類における摂食行動およびエネルギー代謝において重要な役割を果たすことを示す事実がいくつか報告されている。
哺乳類ではMCHは摂食中枢である視床下部外側野および不定帯に局在することより摂食および飲水行動への関与が予想されていれたが、QuらによってMCHの摂食行動への関与が最初に以下のように示された(Qu, D.ら、Nature、380巻, 243−247頁、1996年)。遺伝的肥満モデルであるob/obマウスと野生型マウスの視床下部において発現量が変化しているmRNAをdifferential display法で探索したところ、MCHの前駆体遺伝子の発現が顕著に増加していることが見出された。また、MCH遺伝子発現の増加は、24時間の絶食によって野生型およびob/obマウスのいずれにおいても認められた。これらの結果は、MCHが摂食刺激ペプチドとして機能していることを示唆したが、事実、MCHをラットの側脳室に直接投与することにより有意に摂食量が増加した。さらに、MCH遺伝子ノックアウトマウスが摂食量の減少および代謝の増加により顕著に体重が減少することが報告された(Nature、396巻, 670−674頁、1998年)。注目すべきことに、このマウスでは体重減少以外の行動あるいはその他の生化学パラメーターは、野生型に比べて何の変化も認められなかった。最近になってMCHを過剰産生する遺伝子改変マウスが肥満の表現型を示し、インスリン抵抗性を呈することも報告されている(J. Clin. Invest.、107巻, 3793−86頁、2001年)。以上の事実は、MCHが摂食行動およびエネルギー代謝において中心的な役割を担っていることを意味している。
視床下部にはMCH以外にも、ニューロペプチドY、ガラニンまたはオレキシンに代表される種々の摂食促進ペプチドが存在している。しかし、MCH遺伝子欠損マウスに認められた摂食行動の抑制や体重減少は、これらのペプチドの遺伝子ノックアウト動物では報告されておらず、MCHが摂食行動において特に重要な調節因子として機能していると考えられる。また、MCH遺伝子欠損マウスが体重減少以外に目立った表現型を示さないことから、MCHの作用を抑制することによって副作用の少ない抗肥満薬が開発される可能性が示唆された。
MCHの機能的受容体としてはこれまでにSLC−1(MCH1、MCHR1)が知られていた(Nature、400巻、26−1265頁、1999年、Nature、400巻、265−269頁、1999年、Biochem. Biophys. Res. Commun.、261巻、622−626頁、1999年、Nature Cell Biol.、1巻、267−271頁、1999年、FEBS Lett.、457巻、522−524頁、1999年、WO 00/40725号公報等)が、最近、さらに、MCHの第二の受容体サブタイプとしてSLT(MCH2、MCHR2)がクローニングされた(J. Biol. Chem.、276巻、20125−20129頁、2001年、Biochem. Biophys. Res. Commun.、283巻、1013−1018頁、2001年、Proc.Natl. Acad. Sci. USA、98巻、7564−7569頁、2001年、Proc. Natl. Acad. Sci.USA、98巻、7576−7581頁、2001年、J. Biol. Chem.、276巻、34664−34670頁、2001年、Mol. Pharmacol.、60巻、632−639頁、2001年、特許文献1 WO 02/03070号公報、特許文献2 WO 00/49046号公報等)。これら二つのMCH受容体についていずれの受容体がMCHの生理作用、特に摂食に対する作用に関与しているかは現時点において明らかではない。SLC−1受容体は、特に、摂食に関与する視床下部の領域(弓状核、腹内側核、背内側核、室傍核)や報酬系に関わるとされる側坐核に強く発現しているのに対し、SLTは海馬や扁桃に発現していて視床下部での発現が低いことから、MCHの摂食亢進作用には主としてSLC−1が関与し、SLTはそれ以外のMCHの作用である記憶や情動に関与している可能性が示唆されている。一方、SLTは視床下部においてSLC−1とは異なる領域(前核、外側核など)に分布し、また、小児肥満の原因遺伝子の近傍に配座していることから摂食に関与する可能性があるとする報告もある(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻、7564−7569頁、2001年)。しかし、SLC−1がヒト以外にラットなどにもその遺伝子が存在し、組織分布解析などが報告されているのに対し、SLTは現在までにヒト以外の適当な実験動物にその存在が報告されておらず、MCHの摂食亢進などの生理作用への関与の機構について必ずしも十分には明らかにされていない。
【特許文献1】
WO 02/03070号公報
【特許文献2】
WO 00/49046号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
MCHの摂食亢進などの生理作用に対するMCH受容体であるSLTの関与を明らかにし、医薬のスクリーニング系を利用することにより、全く新規な作用機序を有する抗肥満薬などの医薬の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒトSLTに相同性を示すサル、イヌおよびネコSLTをコードする遺伝子を、サル、イヌおよびネコ脳cDNAより見出してクローニングすることに成功した。さらに、これらの受容体はMCHと結合する。これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 配列番号:4、配列番号:14または配列番号:24で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、
(2) 配列番号:4で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩、
(3) 配列番号:14で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩、
(4) 配列番号:24で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩、
(5) 上記(1)記載のタンパク質の部分ペプチドまたはその塩、
(6) 上記(1)記載のタンパク質または上記(5)記載の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(7) DNAである上記(6)記載のポリヌクレオチド、
(8) 配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表わされる塩基配列を含有する上記(7)記載のポリヌクレオチド、
(9) 上記(8)記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(10) 上記(9)記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(11) 上記(10)記載の形質転換体を培養し、上記(1)記載のタンパク質または上記(5)記載の部分ペプチドを生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする上記(1)記載のタンパク質もしくは上記(5)記載の部分ペプチドまたはその塩の製造法、
(12) 上記(1)記載のタンパク質もしくは上記(5)記載の部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
(13) 上記(6)記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
(14) 上記(6)記載のポリヌクレオチドを含有してなる診断薬、
(15) 上記(1)記載のタンパク質もしくは上記(5)記載の部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(16) 上記(1)記載のタンパク質のシグナル伝達を不活性化する中和抗体である上記(15)記載の抗体、
(17) 上記(1)記載のタンパク質のシグナル伝達を活性化する抗体である上記(15)記載の抗体、
(18) 上記(15)記載の抗体を含有してなる診断薬、
(19) 上記(16)記載の抗体を含有してなる医薬、
(20) 上記(17)記載の抗体を含有してなる医薬、
(21) 上記(1)記載のタンパク質または上記(5)記載の部分ペプチドまたはその塩および配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドと上記(1)記載のタンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(22) 上記(1)記載のタンパク質または上記(5)記載の部分ペプチドまたはその塩および配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドと上記(1)記載のタンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(23) 上記(21)記載のスクリーニング方法または上記(22)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩と上記(1)記載のタンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、
(24) アゴニストである上記(23)記載の化合物またはその塩、
(25) アンタゴニストである上記(23)記載の化合物またはその塩、
(26) 上記(24)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(27) 上記(25)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(28) 上記(6)記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチド、
(29) 上記(28)記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
(30) 上記(6)記載のポリヌクレオチドまたはその一部を用いることを特徴とする上記(1)記載のタンパク質のmRNAの定量方法、
(31) 上記(15)記載の抗体を用いることを特徴とする上記(1)記載のタンパク質の定量方法、
(32) 上記(30)または(31)記載の定量方法を用いることを特徴とする上記(1)記載のタンパク質の機能が関連する疾患の診断方法、
(33) 上記(30)記載の定量方法を用いることを特徴とする上記(1)記載のタンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(34) 上記(30)記載の定量方法を用いることを特徴とする細胞膜における上記(1)記載のタンパク質量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(35) 上記(33)記載のスクリーニング方法を用いて得られうる上記(1)記載のタンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩、
(36) 上記(34)記載のスクリーニング方法を用いて得られうる細胞膜における上記(1)記載のタンパク質量を変化させる化合物またはその塩、
(37) 上記(35)または(36)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(38) 上記(6)記載のポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
(39) 外来性の、上記(1)記載のタンパク質をコードするDNAまたはその変異DNAを有する非ヒトトランスジェニック動物、
(40) 食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全または乳汁うっ滞の予防・治療剤である上記(12)、(13)、(20)または(26)記載の医薬、
(41) 肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症または変形性骨関節症の予防・治療剤である、上記(19)、(27)または(29)記載の医薬、
(42) 哺乳動物に対して、上記(24)記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全または乳汁うっ滞の予防・治療方法、
(43) 哺乳動物に対して、上記(25)記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症または変形性骨関節症の予防・治療方法、
(44) 食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全または乳汁うっ滞の予防・治療剤を製造するための、上記(24)記載の化合物またはその塩の使用、
(45) 肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症または変形性骨関節症の予防・治療剤を製造するための、上記(25)記載の化合物またはその塩の使用などを提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
配列番号:4、配列番号:14または配列番号:24で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、本発明のタンパク質と称することもある)はGタンパク質共役型レセプタータンパク質であり、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル、イヌ、ネコなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0007】
配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と98%以上、好ましくは約99%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
配列番号:14で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:14で表わされるアミノ酸配列と92%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約97%以上、より好ましくは約99%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:14で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:14で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:14で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
配列番号:24で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:24で表わされるアミノ酸配列と92%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約97%以上、より好ましくは約99%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:24で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:24で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、MCHに対する結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、MCHに対する結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法またはそれに準じた方法に従って行なうことができる。
【0008】
また、本発明のタンパク質としては、例えば、(1)(i)配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜8個程度、好ましくは1〜5個程度、好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテイン、(2)(i)配列番号:14で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜25個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:14で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:14で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:14で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテイン、(3)(i)配列番号:24で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜25個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:24で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:24で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:24で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜200個程度、好ましくは1〜150個程度、好ましくは1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、とくに限定されない。
本発明のタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:24で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質などがあげられる。
【0009】
本発明のタンパク質の部分ペプチド(以下、本発明の部分ペプチドと略記する場合がある)としては、前記した本発明のタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明のタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
例えば、本発明のタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明の部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
本発明の部分ペプチドとしては、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列において例えば、第1番目〜41番目、第311番目〜340番目のアミノ酸配列、配列番号:14で表されるアミノ酸配列において例えば、第1番目〜41番目、第311番目〜340番目のアミノ酸配列、配列番号:24で表されるアミノ酸配列において例えば、第1番目〜41番目、第311番目〜330番目のアミノ酸配列などが好ましい。
【0010】
配列番号:25で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(以下、本発明で用いられるペプチドまたは本発明のペプチドと称することもある)は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル、イヌ、ネコなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0011】
配列番号:25で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、例えば、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:25で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと実質的に同質の活性を有するペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、SLTに対する結合活性などが挙げられる。実質的に同質とは、その活性が性質的に同質であることを示す。したがって、SLTに対する結合活性が同等(例、約0.5〜2倍)であることが好ましいが、この活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
結合活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができる。
本発明のペプチドとしては、配列番号:25で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドなどが好ましく用いられる。
【0012】
また、本発明のペプチドとしては、例えば、(i)配列番号:25で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:25で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:25で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:25で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するペプチドも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、とくに限定されない。
具体的には、配列番号:25で表されるアミノ酸配列のN末端から第5番目〜第19番目の部分配列を含有するペプチドなどがあげられる。より具体的には、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30または配列番号:31で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドなどがあげられる。好ましくは配列番号:28で表されるアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換物としては、たとえばそのアミノ酸が属するところのクラスのうち他のアミノ酸類から選ぶことができうる。非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンなどがあげられる。極性(中性)アミノ酸としてはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどがあげられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としてはアルギニン、リジン、ヒスチジンなどがあげられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などがあげられる。
上記する他のアミノ酸が欠失、置換する位置としては、本発明のペプチドの構成アミノ酸中、Cys以外の位置であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のペプチドは標識化されていてもよい。具体例としては、自体公知の方法でアイソトープラベル化されたペプチド、蛍光標識されたペプチド(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたペプチド、酵素標識されたペプチドなどがあげられる。
具体的には、例えば公知の方法によって、〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識された本発明のペプチドなどを利用することができる。また、ボルトン−ハンター試薬を用いて公知の方法で調製した本発明のペプチドの標識体を用いてもよい。
標識化された本発明のペプチドの具体例としては、例えば、
(1)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Asp]−MCH、
(2)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Phe]−MCH(2−19)、
(3)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Asp]−MCH(3−19)、
(4)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Met]−MCH(4−19)、
(5)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Leu]−MCH(5−19)、
(6)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Arg]−MCH(6−19)、
(7)[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Cys]−MCH(7−19) などがあげられる。
なかでも、[125I]−[N−(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Met]−MCH(4−19)が好ましく用いられる。
【0014】
本明細書におけるタンパク質およびペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明のタンパク質およびペプチドは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明のタンパク質およびペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のタンパク質およびペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のタンパク質およびペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
【0015】
また、本発明の部分ペプチドは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
さらに、本発明の部分ペプチドには、前記した本発明のタンパク質と同様に、C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有しているもの、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
【0016】
本発明のタンパク質または部分ペプチド、本発明のペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0017】
本発明のタンパク質もしくはその部分ペプチド、本発明のペプチドまたはそれらの塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0018】
本発明のペプチドまたは本発明のタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはそれらのアミド体またはそれらの塩の合成には、通常市販のタンパク質・ペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質・ペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質・ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質・ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質・ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0019】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質・ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0020】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0021】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0022】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質・ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質・ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質・ペプチドとを製造し、この両ペプチド・両タンパク質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチド・保護タンパク質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチド・粗タンパク質を得ることができる。この粗ペプチド・粗タンパク質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質・ペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質・ペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質・ペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質・ペプチドのエステル体を得ることができる。
【0023】
本発明のペプチドおよび本発明のタンパク質は、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。また、本発明のタンパク質の部分ペプチドまたはその塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のペプチドもしくは本発明のタンパク質を構成し得る部分ペプチドまたはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のペプチドまたは本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドまたは部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0024】
本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明のタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明のタンパク質をコードするDNAとしては、例えば(i)配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNA、(ii)配列番号:13で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:13で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNA、(iii)配列番号:23で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:23で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:24で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
【0025】
配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:3で表される塩基配列と98%以上、好ましくは約99%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:13で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:13で表される塩基配列と92%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約97%以上、より好ましくは約99%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:23で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:23で表される塩基配列と92%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約97%以上、より好ましくは約99%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNA、配列番号:38で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:13で表される塩基配列を含有するDNA、配列番号:39で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:24で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:23で表される塩基配列を含有するDNA、配列番号:40で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0026】
本発明の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。DNAが好ましい。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表される塩基配列を有するDNAの一部分を有するDNA、または配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
【0027】
本発明のタンパク質、部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法やGapped duplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0028】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0029】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0030】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻, 160(1968)),JM103(Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)),JA221(Journalof Molecular Biology,120巻,517(1978)),HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600(Genetics,39巻,440(1954))などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114(Gene,24巻,255(1983)),207−21(Journal of Biochemistry,95巻,87(1984))などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0031】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0032】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6, 47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0033】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American MedicalAssociation 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のタンパク質を生成せしめることができる。
【0034】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0035】
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより測定することができる。
【0036】
本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0037】
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0038】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0039】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0040】
本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするDNA(以下、アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、これらのDNAを本発明のDNAと略記する場合がある)の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチドとしては、本発明のDNAの塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよいが、アンチセンスDNAが好ましい。
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、本発明のタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが好適である。
具体的には、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表わされる塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、好ましくは例えば、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表わされる塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾りん酸残基に置換されていてもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
【0041】
本発明に従えば、本発明のタンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することのできる該遺伝子に対応するアンチセンスポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたタンパク質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは本発明のタンパク質関連RNAとの相互作用を介して本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明のタンパク質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、および本発明のタンパク質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外で本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とタンパク質との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される(指令にある)タンパク質のアミノ酸を通常指している。タンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどは、好ましい対象領域として選択しうるが、タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
【0042】
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係については、目的核酸が対象領域とハイブリダイズすることができる場合は、その目的核酸は、当該対象領域のポリヌクレオチドに対して「アンチセンス」であるということができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0043】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体、チオホスフェート誘導体、ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものなどが挙げられる。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、以下のように設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンスポリヌクレオチドをより安定なものにする、アンチセンスポリヌクレオチドの細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、また、もし毒性があるような場合はアンチセンスポリヌクレオチドの毒性をより小さなものにする。このような修飾は、例えばPharm Tech Japan, 8巻, 247頁または395頁, 1992年、Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993年などで数多く報告されている。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンスポリヌクレオチドの阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、または本発明のタンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。
【0044】
以下に、本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のタンパク質と略記する場合がある)、本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)、本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、および本発明のDNAのアンチセンスポリヌクレオチド(以下、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドと略記する場合がある)の用途などを説明する。
【0045】
〔1〕本発明のタンパク質が関与する各種疾病の予防・治療剤
本発明のタンパク質はGタンパク質共役型レセプタータンパク質であり、MCHと結合するため、食欲(摂食)増進作用、オキシトシン分泌促進作用などの重要な役割を果たしている。
したがって、本発明のタンパク質をコードするDNAに異常があったり、欠損している場合あるいは本発明のタンパク質の発現量が減少している場合には、例えば、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などの種々の疾患が発症する。
したがって、本発明のタンパク質および本発明のDNAは、例えば、食欲(摂食)増進剤、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などの予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内において本発明のタンパク質が減少あるいは欠損しているために、MCHの食欲(摂食)増進またはオキシトシン分泌促進活性が十分に、あるいは正常に発揮されない患者がいる場合に、(イ)本発明のDNAを該患者に投与し、生体内で本発明のタンパク質を発現させることによって、(ロ)細胞に本発明のDNAを挿入し、本発明のタンパク質を発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、または(ハ)本発明のタンパク質を該患者に投与することなどによって、該患者における本発明のタンパク質の役割を十分に、あるいは正常に発揮させることができる。
本発明のDNAを上記の予防・治療剤として使用する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
本発明のタンパク質を上記の予防・治療剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
【0046】
本発明のタンパク質は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のタンパク質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
本発明のDNAが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。
【0047】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明のタンパク質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、腎不全の治療目的で本発明のタンパク質を経口投与する場合、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき該タンパク質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該タンパク質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、神経性食欲不振症の治療目的で本発明のタンパク質を注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該タンパク質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0048】
〔2〕疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のタンパク質は、本発明のペプチド(例、MCH)と本発明のタンパク質との結合を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
本発明のペプチドおよび本発明のタンパク質(本発明のタンパク質の部分ペプチドも含む)を用いることを特徴とする、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、または本発明のペプチドおよび本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット(以下、本発明のスクリーニング方法、本発明のスクリーニング用キットと略記する)について以下に詳述する。
【0049】
本発明のタンパク質を用いるか、または組換え型本発明のタンパク質の発現系を構築し、該発現系を用いた本発明のペプチドとの結合アッセイ系(リガンド・レセプターアッセイ系)を用いることによって、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩をスクリーニングすることができる。
このような化合物には、本発明のタンパク質を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP産生抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性化、cGMP依存性プロテインキナーゼの活性化、リン脂質依存性プロテインキナーゼの活性化、微小管結合蛋白質リン酸化酵素(MAPキナーゼ)の活性化などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(アゴニスト)と該細胞刺激活性を有しない化合物(アンタゴニスト)などが含まれる。「本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる」とは、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合を阻害する場合と促進する場合の両方を包含するものである。
すなわち、本発明は、(i)本発明のタンパク質に、本発明のペプチドを接触させた場合と(ii)上記した本発明のタンパク質に、本発明のペプチドおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)上記した本発明のタンパク質に本発明のペプチドを接触させた場合と(ii)上記した本発明のタンパク質に本発明のペプチドおよび試験化合物を接触させた場合における、例えば該本発明のタンパク質に対する本発明のペプチドの結合量、細胞刺激活性などを測定して比較する。
【0050】
本発明のスクリーニング方法としての具体例としては、例えば、
(a)本発明のペプチドを本発明のタンパク質に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質に接触させた場合における、本発明のペプチドの本発明のタンパク質に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(b)本発明のペプチドを、本発明のタンパク質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、本発明のペプチドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(c)本発明のタンパク質が、本発明のタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のタンパク質である上記(b)記載のスクリーニング方法、
(d)本発明のペプチドが、標識したペプチドである上記(a)〜(c)のスクリーニング方法などのレセプター結合アッセイ系、
(e)本発明のペプチドを本発明のタンパク質に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質に接触させた場合における、本発明のタンパク質を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とする、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(f)本発明のペプチドを本発明のタンパク質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、本発明のタンパク質を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とする、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(g)本発明のタンパク質が、本発明のタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のタンパク質である上記(f)のスクリーニング方法などの細胞刺激アッセイ系などが挙げられる。
【0051】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いる本発明のタンパク質としては、上記の本発明のタンパク質を含有するものであれば何れのものであってもよい。例えば、組換え体を用いて大量発現させた本発明のタンパク質などが適している。
本発明のタンパク質の製造には、前述の方法などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、本発明のタンパク質を含有する細胞あるいは該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
本発明のタンパク質を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行うことができる。
本発明のタンパク質を含有する細胞としては、本発明のタンパク質を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などがあげられる。
膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などがあげられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した本発明のタンパク質と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
該本発明のタンパク質を含有する細胞や膜画分中の本発明のタンパク質の量は、1細胞当たり10〜10分子であるのが好ましく、10〜10分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0052】
前記のレセプター結合アッセイ系や細胞刺激アッセイ系などのスクリーニング方法を実施するためには、例えば、本発明のタンパク質画分と、本発明のペプチド(例、標識した本発明のペプチド)などが用いられる。本発明のタンパク質画分としては、天然型の本発明のタンパク質画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型本発明のタンパク質画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性などを示す。標識したペプチドとしては、例えば放射性同位元素(例、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕など)、蛍光物質〔例、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなど〕、酵素(例、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素など)、発光物質(例、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなど)、ビオチン、ランタニド元素などで標識された本発明のペプチドなどを用いることができる。特に、ボルトン−ハンター試薬を用いて公知の方法で調製した本発明のペプチドの標識体を利用することもできる。
具体的には、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行うには、まず本発明のタンパク質を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプターとの結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによる本発明のタンパク質や本発明のペプチドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000〜500000 cpm)の標識した本発明のペプチドを添加し、同時に10−4〜10−1μMの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のペプチドを加えた反応チューブも用意する。反応は0〜50℃、望ましくは4〜37℃で20分〜24時間、望ましくは30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
また、本発明のタンパク質と本発明のペプチドとの結合を測定する方法として、BIAcore(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いることもできる。この方法では、本発明のペプチドを装置に添付のプロトコールに従ったアミノカップリング法によってセンサーチップに固定し、本発明のタンパク質を含有する細胞または本発明のタンパク質をコードするDNAを含有する形質変換体から精製した本発明のタンパク質または本発明のタンパク質を含む膜画分、あるいは精製した本発明のタンパク質または本発明のタンパク質を含む膜画分および試験化合物を含むリン酸バッファーまたはトリスバッファーなどの緩衝液をセンサーチップ上を毎分2〜20μlの流量で通過させる。 センサーチップ上の本発明のペプチドと本発明のタンパク質とが結合することによって生じる表面プラズモン共鳴の変化を共存する試験化合物が変化させることを観察することによって本発明のタンパク質と本発明のペプチドとの結合を変化させる化合物のスクリーニングを行なうことができる。この方法は、本発明のタンパク質をセンサーチップに固定し、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を含むリン酸バッファーまたはトリスバッファーなどの緩衝液をセンサーチップ上を通過させる方法を用いても同様に測定することができる。試験化合物としては、上記と同様のものなどがあげられる。
前記の細胞刺激アッセイ系のスクリーニング方法を実施するためには、本発明のタンパク質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP産生抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性化、cGMP依存性プロテインキナーゼの活性化、リン脂質依存性プロテインキナーゼの活性化、微小管結合蛋白質リン酸化酵素(MAPキナーゼ)の活性化などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、本発明のタンパク質を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
【0053】
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当な本発明のタンパク質を発現した細胞が用いられる。本発明のタンパク質を発現した細胞としては、前述の組換え型本発明のタンパク質発現細胞株などが望ましい。形質転換体である本発明のタンパク質発現細胞は安定発現株でも一過性発現株でも構わない。また、動物細胞の種類は上記と同様のものが用いられる。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられる。
【0054】
上記細胞刺激アッセイ系のスクリーニング方法について、さらに具体的に以下(1)〜(12)に記載する。
(1)レセプター発現細胞がレセプターアゴニストによって刺激されると細胞内のGタンパク質が活性化されてGTPが結合する。この現象はレセプター発現細胞の膜画分においても観察される。通常、GTPは加水分解されてGDPへと変化するが、このとき反応液中にGTPγSを添加しておくと、GTPγSはGTPと同様にGタンパク質に結合するが、加水分解されずにGタンパク質を含む細胞膜に結合した状態が維持される。標識したGTPγSを用いると細胞膜に残存した標識されたGTPγSを測定することにより、レセプターアゴニストのレセプター発現細胞刺激活性を測定することができる。
この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
この方法は、本発明のタンパク質を含む膜画分を用いて行う。本測定法において本発明のタンパク質膜画分へのGTPγS結合促進活性を示す物質はアゴニストである。
具体的には、標識したGTPγSの存在下、本発明のペプチドを本発明のタンパク質細胞膜画分に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質細胞膜画分に接触させた場合における、本発明のタンパク質細胞膜画分へのGTPγS結合促進活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のペプチドによる本発明のタンパク質細胞膜画分へのGTPγS結合促進活性を抑制する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質細胞膜画分に接触させ、本発明のタンパク質細胞膜画分へのGTPγS結合促進活性を測定することにより、アゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0055】
スクリーニング法の一例についてより具体的に以下に述べる。
公知の方法に準じて調製した本発明のタンパク質を含む細胞膜画分を、膜希釈緩衝液(50mM Tris、5mM MgCl、150mM NaCl、1μM GDP、0.1% BSA;pH7.4)で希釈する。希釈率は、レセプターの発現量により異なる。これをFalcon2053に0.2mlずつ分注し、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を加え、さらに終濃度200pMとなるように[35S]GTPγSを加える。25℃で1時間保温した後、氷冷した洗浄用緩衝液(50mM Tris,5mM MgCl,150mM NaCl,0.1% BSA,0.05% CHAPS;pH7.4)1.5mlを加えて、ガラス繊維ろ紙GF/Fでろ過する。65℃、30分保温して乾燥後、液体シンチレーションカウンターでろ紙上に残った膜画分に結合した[35S]GTPγSの放射活性を測定する。本発明のペプチドのみを加えた実験区の放射活性を100%、本発明のペプチドを加えなかった実験区の放射活性を0%とし、本発明のペプチドによるGTPγS結合促進活性に対する試験化合物の影響を算出する。GTPγS結合促進活性が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0056】
(2)本発明のタンパク質発現細胞は、本発明のペプチドの刺激により、細胞内cAMPの産生が抑制される。この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、細胞内cAMP量を増加させる物質の存在下、本発明のペプチドを本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、該細胞の細胞内cAMPの産生抑制活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞内cAMP量を増加させる物質としては、例えば、フォルスコリン、カルシトニンなどが用いられる。
本発明のタンパク質発現細胞内のcAMP産生量は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウシなどを免疫して得られた抗cAMP抗体と〔125I〕標識cAMP(ともに市販品)を使用することによるRIA系、または抗cAMP抗体と標識cAMPとを組み合わせたEIA系で測定することができる。また、抗cAMP抗体を、protein Aまたは抗cAMP抗体産生に用いた動物のIgGなどに対する抗体などを使用して固定したシンチラントを含むビーズと〔125I〕標識cAMPとを使用するSPA(Scintillation Proximity Assay)法による定量も可能である(アマシャムファルマシアバイオテク社製のキットを使用する)。
本方法において、本発明のペプチドによる本発明のタンパク質発現細胞のcAMP産生抑制活性を阻害する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させて、cAMP産生抑制活性を調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうことができる。
【0057】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞(例、CHO細胞などの動物細胞)を24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3−イソブチル−メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後、0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のペプチドまたは1μMの本発明のペプチドおよび試験化合物を添加した2μM フォルスコリンを含む0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で24分間反応させる。100μlの20%過塩素酸を加えて反応を停止させ、その後氷上で1時間置くことにより細胞内cAMPを抽出する。抽出液中のcAMP量を、cAMP EIAキット(アマシャムファルマシアバイオテク)を用いて測定する。フォルスコリンの刺激によって産生されたcAMP量を100%とし、1μMの本発明のペプチドの添加によって抑制されたcAMP量を0%として、本発明のペプチドによるcAMP産生抑制活性に対する試験化合物の影響を算出する。本発明のペプチドの活性を阻害して、cAMP産生活性が例えば50%以上になる試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
また、本発明のペプチドの刺激により、細胞内cAMP量が増加する性質を示す本発明のタンパク質発現細胞を使用する場合、本発明のペプチドを本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、該細胞の細胞内cAMPの産生促進活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
本方法において、本発明のペプチドによる本発明のタンパク質発現細胞のcAMP産生促進活性を阻害する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させてcAMP産生促進活性を調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうことができる。
cAMP産生促進活性は、上記のスクリーニング法においてフォルスコリンを添加せずに本発明のタンパク質発現細胞(例、CHO細胞などの動物細胞)に本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加して産生されたcAMPを上記の方法で定量して測定する。
【0058】
(3)CRE−レポーター遺伝子ベクターを用いて、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
CRE(cAMP response element)を含むDNAを、ベクターのレポーター遺伝子上流に挿入し、CRE−レポーター遺伝子ベクターを得る。CRE−レポーター遺伝子ベクターを導入した本発明のタンパク質発現細胞において、cAMPの上昇を伴う刺激は、CREを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(タンパク質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定することにより、CRE−レポーター遺伝子ベクター導入細胞内のcAMP量の変動を検出することができる。
具体的には、細胞内cAMP量を増加させる物質の存在下、本発明のペプチドを、CRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、CRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞内cAMP量を増加させる物質としては、例えば、フォルスコリン、カルシトニンなどが用いられる。
ベクターとしては、例えば、ピッカジーン ベイシックベクター、ピッカジーン エンハンサーベクター(東洋インキ製造(株))などが用いられる。CREを含むDNAを、上記ベクターのレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、CRE−レポーター遺伝子ベクターとする。
本方法において、本発明のペプチドによるレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性抑制を回復させる試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させて、フォルスコリン刺激によって上昇した発光量の本発明のペプチドと同様な抑制を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0059】
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
CRE−レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を導入した本発明のタンパク質発現細胞を、24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3−イソブチル−メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のペプチドまたは1μMの本発明のペプチドおよび試験化合物を添加した2μM フォルスコリンを含む0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で24分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のペプチド単独を添加した場合と、1μMの本発明のペプチドおよび試験化合物を添加した場合のルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
本発明のペプチドは、フォルスコリン刺激に基づくルシフェラーゼによる発光量の増加を抑制する。該抑制を回復させる化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0060】
レポーター遺伝子として、例えば、アルカリフォスファターゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase)、β−ガラクトシダーゼなどの遺伝子を用いてもよい。これらのレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性は、公知の方法に従い、または市販の測定キットを用いて測定する。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば和光純薬製Lumi−Phos 530を用いて、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば和光純薬製FAST CAT chrolamphenicol Acetyltransferase Assay KiTを用いて、β−ガラクトシダーゼ活性は、例えば和光純薬製Aurora Gal−XEを用いて測定する。
【0061】
(4)本発明のタンパク質発現細胞は、本発明のペプチドの刺激により、アラキドン酸代謝物を細胞外に放出する。この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
あらかじめ、標識したアラキドン酸を、本発明のタンパク質発現細胞に取り込ませておくことによって、アラキドン酸代謝物放出活性を、細胞外に放出された標識されたアラキドン酸代謝物を測定することによって測定することができる。具体的には、本発明のペプチドを、標識したアラキドン酸を含有する本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、標識したアラキドン酸を含有する本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、アラキドン酸代謝物の放出活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のペプチドによるアラキドン酸代謝物放出活性を阻害する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。また、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させ、本発明のタンパク質発現細胞のアラキドン酸代謝物放出活性を公知の方法で調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうこともできる。
【0062】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞を24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、24時間培養後、[H]アラキドン酸を0.25μCi/wellとなるよう添加し、16時間後、細胞を0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)(以下、反応用バッファーと略記する)で洗浄する。終濃度10μMの本発明のペプチドまたは終濃度10μMの本発明のペプチドおよび試験化合物を含む反応用バッファー 500μlを、各wellに添加する。37℃で60分間インキュベートした後、反応液400μlをシンチレーターに加え、反応液中に遊離した[H]アラキドン酸代謝物の量をシンチレーションカウンターにより測定する。
反応用バッファー 500μlのみを添加した場合(本発明のペプチド非添加・試験化合物非添加)の遊離[H]アラキドン酸代謝物の量を0%、10μMの本発明のペプチドを含む反応用バッファーを添加した場合(試験化合物非添加)の遊離[H]アラキドン酸代謝物の量を100%として、試験化合物を添加した場合の遊離[H]アラキドン酸代謝物の量を算出する。
アラキドン酸代謝物放出活性が、例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0063】
(5)本発明のタンパク質発現細胞は、本発明のペプチドの刺激により、細胞内のCa濃度が上昇する。この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のペプチドを、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、細胞内カルシウム濃度上昇活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。測定は公知の方法に従って行う。
本方法において、本発明のペプチドによる細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。一方、試験化合物のみの添加による蛍光強度の上昇を測定することによってアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞を、滅菌した顕微鏡用カバーグラス上に播き、2日後、培養液を、4mM Fura−2 AM(同仁化学研究所)を縣濁したHBSSに置換し、室温で2時間30分おく。HBSSで洗浄した後、キュベットにカバーグラスをセットし、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加し、励起波長340nmおよび380nmでの、505nmの蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
また、FLIPR(モレキュラーデバイス社製)を使って行ってもよい。本発明のタンパク質発現細胞縣濁液にFluo−3 AM(同仁化学研究所製)を添加し、細胞に取り込ませた後、上清を遠心により数度洗浄後、96穴プレートに細胞を播く。FLIPR装置にセットし、Fura−2の場合と同様に、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加し、蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
さらに、本発明のタンパク質発現細胞に、細胞内Caイオンの上昇によって発光するようなタンパク質の遺伝子(例、aequorinなど)を共発現させておき、細胞内Caイオン濃度の上昇によって、該遺伝子タンパク質(例、aequorinなど)がCa結合型となり発光することを利用して、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることもできる。
細胞内Caイオンの上昇によって発光するようなタンパク質の遺伝子を共発現させた本発明のタンパク質発現細胞を、96穴プレートに播き、上記と同様に、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加し、蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
本発明のペプチドによる蛍光強度の上昇を、抑制する試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0064】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
対照としてETA(エンドセリンAレセプター)発現CHO細胞24番クローン(以後ETA24細胞と略称する。Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 279巻、675−685頁、1996年参照)を用い、アッセイ用サンプルについて、本発明のタンパク質発現細胞およびETA24細胞における細胞内Caイオン濃度上昇活性の測定をFLIPR(モレキュラーデバイス社製)を用いて行う。本発明のタンパク質発現細胞細胞、ETA24細胞共に10%透析処理済ウシ胎児血清(以後dFBSとする)を加えたDMEMで継代培養しているものを用いる。本発明のタンパク質発現細胞、ETA24細胞をそれぞれ15×10cells/mlとなるように培地(10% d FBS−DMEM)に懸濁し、FLIPR用96穴プレート(Black plate clear bottom、Coster社)に分注器を用いて各ウェルに200μlずつ植え込み(3.0×10cells/200μl/ウェル)、5% COインキュベーター中にて37℃で一晩培養した後用いる(以後、細胞プレートとする)。H/HBSS(ニッスイハンクス2(日水製薬株式会社) 9.8g、炭酸水素ナトリウム 0.35g、HEPES 4.77 g 、水酸化ナトリウム溶液で pH7.4に合わせた後、フィルター滅菌処理)20 ml、250 mM Probenecid 200 μl、ウシ胎児血清(FBS) 200 μlを混合する。また、Fluo 3−AM(同仁化学研究所) 2バイアル(50 μg)をジメチルスルフォキサイド 40 μl、20% Pluronic acid(MolecularProbes社)40 μlに溶解し、これを上記H/HBSS−Probenecid−FBS に加え、混和後、8連ピペットを用いて培養液を除いた細胞プレートに各ウェル 100 μlずつ分注し、5% COインキュベーター中にて37℃で1時間インキュベートする(色素ローディング)。アッセイ用サンプル(各フラクション)に、2.5 mM Probenecid、0.1% CHAPSを含むH/HBSS 150μlを加えて希釈し、FLIPR用96穴プレート(V−Bottomプレート、Coster社)へ移す(以後、サンプルプレートとする)。細胞プレートの色素ローディング終了後、H/HBSSに2.5 mM Probenecidを加えた洗浄バッファーでプレートウォッシャー(Molecular Devices社)を用いて細胞プレートを4回洗浄し、洗浄後100μlの洗浄バッファーを残す。この細胞プレートとサンプルプレートをFLIPRにセットしアッセイを行う(FLIPRにより、サンプルプレートから50μlのサンプルが細胞プレートへと移される)。
【0065】
(6)レセプターを発現する細胞に、レセプターアゴニストを添加すると、細胞内イノシトール三リン酸濃度は上昇する。本発明のペプチドの、本発明のタンパク質発現細胞における細胞内イノシトール三リン酸産生活性を利用することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、標識したイノシトールの存在下、本発明のペプチドを、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、イノシトール三リン酸産生活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。測定は公知の方法に従って行う。
本方法において、イノシトール三リン酸産生活性を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させ、イノシトール三リン酸産生上昇を測定することによってアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0066】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞を24穴プレートに播き、1日間培養する。その後、myo−[2−H]inositol(2.5μCi/well)を添加した培地で1日間培養し、細胞を放射活性を有するイノシトールを無添加の培地でよく洗浄する。本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加後、10%過塩素酸を加え、反応を止める。1.5M 水酸化カリウムおよび60mM HEPES溶液で中和し、0.5mlのAG1x8樹脂(Bio−Rad)を詰めたカラムに通し、5mM 四ホウ酸ナトリウム(Na)および60mM ギ酸アンモニウムで洗浄した後、1M ギ酸アンモニウムおよび0.1M ギ酸で溶出した放射活性を、液体シンチレーションカウンターで測定する。本発明のペプチドを添加しない場合の放射活性を0%、本発明のペプチドを添加した場合の放射活性を100%とし、試験化合物の、本発明のペプチドと本発明のタンパク質の結合に対する影響を算出する。
イノシトール三リン酸産生活性が、例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0067】
(7)TRE−レポーター遺伝子ベクターを用いて、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
TRE(TPA response element)を含むDNAを、ベクターのレポーター遺伝子上流に挿入し、TRE−レポーター遺伝子ベクターを得る。TRE−レポーター遺伝子ベクターを導入した本発明のタンパク質発現細胞において、細胞内カルシウム濃度の上昇を伴う刺激は、TREを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(タンパク質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定することにより、TRE−レポーター遺伝子ベクター導入細胞内のカルシウム量の変動を検出することができる。
具体的には、本発明のペプチドを、TRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、TRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
ベクターとしては、例えば、ピッカジーン ベイシックベクター、ピッカジーン エンハンサーベクター(東洋インキ製造(株))などが用いられる。TREを含むDNAを、上記ベクターのレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、TRE−レポーター遺伝子ベクターとする。
本方法において、本発明のペプチドによるレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみをTRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明のタンパク質発現細胞に接触させ、本発明のペプチドと同様な発光量の増加を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0068】
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
TRE−レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を導入した本発明のタンパク質発現細胞を、24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄した後、10nMの本発明のペプチドまたは10nMの本発明のペプチドおよび試験化合物を添加し、37℃で60分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のペプチドを添加した場合と、10nMの本発明のペプチドおよび試験化合物を添加した場合のルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
本発明のペプチドによる細胞内カルシウムの上昇によって、ルシフェラーゼによる発光量が増加する。この増加を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0069】
レポーター遺伝子として、例えば、アルカリフォスファターゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase)、β−ガラクトシダーゼなどの遺伝子を用いてもよい。これらのレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性は、公知の方法に従い、または市販の測定キットを用いて測定する。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば和光純薬製Lumi−Phos 530を用いて、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば和光純薬製FAST CAT chrolamphenicol Acetyltransferase Assay KiTを用いて、β−ガラクトシダーゼ活性は、例えば和光純薬製Aurora Gal−XEを用いて測定する。
【0070】
(8)本発明のタンパク質発現細胞は、本発明のペプチドの刺激により、MAPキナーゼが活性化され、増殖する。この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のペプチドを、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、細胞増殖を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本発明のタンパク質発現細胞の増殖は、例えば、MAPキナーゼ活性、チミジン取り込み活性、細胞数などを測定すればよい。
具体例としては、MAPキナーゼ活性については、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質発現細胞に添加した後、細胞溶解液から抗MAPキナーゼ抗体を用いた免疫沈降によりMAPキナーゼ分画を得た後、公知の方法、例えば和光純薬製MAP Kinase Assay Kitおよびγ−[32P]−ATPを使用してMAPキナーゼ活性を測定し、比較する。
チミジン取り込み活性については、本発明のタンパク質発現細胞を24穴プレートに播種し、培養し、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加した後、放射活性により標識したチミジン(例、[methyl−H]−チミジンなど)を加え、その後、細胞を溶解し、細胞内に取り込まれたチミジンの放射活性を、液体シンチレーションカウンターで計数することにより、チミジン取り込み活性を測定し、比較する。
細胞数の測定については、本発明のタンパク質発現細胞を24穴プレートに播種し、培養し、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を添加した後、MTT(3−(4,5−dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium bromide)を添加する。細胞内に取り込まれてMTTが変化したMTTホルマザンを、塩酸にて酸性としたイソプロパノール水溶液で細胞を溶解した後、570nmの吸収によって測定し、比較する。
本方法において、本発明のタンパク質発現細胞の増殖を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させ、本発明のペプチドと同様な細胞増殖活性を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0071】
チミジン取り込み活性を利用するスクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞を24穴プレートに5000個/ウェル播き、1日間培養する。次に血清を含まない培地で2日間培養し、細胞を飢餓状態にする。本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を、細胞に添加して24時間培養した後、[methyl−H]−チミジンをウェル当たり0.015MBq添加し、6時間培養する。細胞をPBSで洗った後、メタノールを添加して10分間放置する。次に5%トリクロロ酢酸を添加して15分間放置後、固定された細胞を蒸留水で4回洗う。0.3N水酸化ナトリウム溶液で細胞を溶解し、溶解液中の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定する。
本発明のペプチドを添加した場合の放射活性の増加を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0072】
(9)本発明のタンパク質発現細胞は、本発明のペプチドの刺激により、カリウムチャネルが活性化し、細胞内にあるKイオンが、細胞外に流出する。この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
Kイオンと同族元素であるRbイオン(ルビジウムイオン)は、Kイオンと区別無く、カリウムチャネルを通って細胞外に流出する。よって、本発明のタンパク質発現細胞に、放射活性同位体であるRb([86Rb])を取り込ませておいた後、本発明のペプチドの刺激によって流出する86Rbの流れ(流出活性)を測定することにより、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定する。
具体的には、86Rbの存在下、本発明のペプチドを、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、86Rbの流出活性を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のペプチド刺激による86Rbの流出活性の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させ、本発明のペプチドと同様な86Rbの流出活性の上昇を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0073】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞を24穴プレートに播き、2日間培養する。その後、1mCi/mlの86RbClを含む培地中で2時間保温する。細胞を培地でよく洗浄し、外液中の86RbClを完全に除く。本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を細胞に添加し、30分後外液を回収し、γカウンターで放射活性を測定し、比較する。
本発明のペプチド刺激による86Rbの流出活性の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0074】
(10)本発明のタンパク質発現細胞が本発明のペプチドに反応し、細胞外のpHが変化する。この反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のペプチドを、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質発現細胞に接触させた場合における、細胞外のpH変化を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞外pH変化は、例えば、Cytosensor装置(モレキュラーデバイス社)を使用して測定する。
本方法において、本発明のペプチドによる細胞外pH変化を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質発現細胞に接触させ、本発明のペプチドと同様な細胞外pH変化を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0075】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明のタンパク質発現細胞をCytosensor装置用のカプセル内で終夜培養し、装置のチャンバーにセットして細胞外pHが安定するまで約2時間、0.1% BSAを含むRPMI1640培地(モレキュラーデバイス社製)を灌流させる。pHが安定した後、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を含む培地を細胞上に灌流させる。灌流によって生じた培地のpH変化を測定し、比較する。
本発明のペプチドによる細胞外pH変化を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0076】
(11)酵母(Saccharomyces cerevisiae)のhaploidα−mating Type (MATα)の性フェロモンレセプターSTe2は、Gタンパク質Gpa1と共役しており、性フェロモンα−mating factorに応答してMAPキナーゼを活性化し、これに引き続き、Far1(cell−cycle arrest)および転写活性化因子Ste12が活性化される。Ste12は、種々のタンパク質(例えば、接合に関与するFUS1)の発現を誘導する。一方、制御因子Sst2は上記の過程に抑制的に機能する。この系において、レセプター遺伝子を導入した酵母を作製し、レセプターアゴニストの刺激により酵母細胞内のシグナル伝達系を活性化し、その結果生じる増殖などを指標として用いる、レセプターアゴニストとレセプターとの反応の測定系の試みが行なわれている(Trends in Biotechnology, 15巻, 487−494頁, 1997年)。上記のレセプター遺伝子導入酵母の系を利用して、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
【0077】
具体例を以下に示す。
MATα酵母のSte2およびGpa1をコードする遺伝子を除去し、代わりに、本発明のタンパク質遺伝子およびGpa1−Gai2融合タンパク質をコードする遺伝子を導入する。Farをコードする遺伝子を除去してcell−cycle arrestが生じないようにし、また、Sstをコードする遺伝子を除去して本発明のペプチドに対する応答の感度を向上させておく。さらに、FUS1にヒスチジン生合成遺伝子HIS3を結合したFUS1−HIS3遺伝子を導入する。この遺伝子組換え操作は、例えば、Molecular and Cellular Biology, 15巻, 6188−6195頁, 1995年に記載の方法において、ソマトスタチンレセプタータイプ2(SSTR2)遺伝子を、本発明のタンパク質に置き換えて実施することができる。
このように構築された形質変換酵母は、本発明のペプチドに高感度で反応し、その結果、MAPキナーゼの活性化が起き、ヒスチジン生合成酵素が合成されるようになり、ヒスチジン欠乏培地で生育可能になる。
従って、上記の本発明のタンパク質発現酵母(Ste2遺伝子およびGpa1遺伝子が除去され、本発明のタンパク質遺伝子およびGpa1−Gai2融合タンパク質コード遺伝子が導入され、Far遺伝子およびSst遺伝子が除去され、FUS1−HIS3遺伝子が導入されたMATα酵母)を、ヒスチジン欠乏培地で培養し、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を接触させ、該酵母の生育を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
本方法において、該酵母の生育を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを上記の本発明のタンパク質発現酵母に接触させ、本発明のペプチドと同様な酵母の生育を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0078】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
上記の本発明のタンパク質発現酵母を完全合成培地の液体培地で終夜培養し、その後、ヒスチジンを除去した溶解寒天培地に、2x10cell/mlの濃度になるように加える。ついで、9x9cmの角形シャーレに播く。寒天が固化した後、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物をしみこませた滅菌濾紙を寒天表面におき、30℃で3日間培養する。試験化合物の影響は、濾紙の周囲の酵母の生育を、本発明のペプチドのみをしみこませた滅菌濾紙を用いた場合と比較する。また、あらかじめ、ヒスチジンを除去した寒天培地に本発明のペプチドを添加しておき、滅菌濾紙に試験化合物のみをしみこませて酵母を培養し、シャーレ全面での酵母の生育が濾紙の周囲で影響を受けることを観察してもよい。
酵母の生育を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0079】
(12)本発明のタンパク質遺伝子RNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入し、本発明のペプチドによって刺激すると細胞カルシウム濃度が上昇して、calcium−activated chloride currentが生じる。これは、膜電位の変化としてとらえることができる(Kイオン濃度勾配に変化がある場合も同様)。本発明のペプチドによって生じる本発明のタンパク質導入アフリカツメガエル卵母細胞における上記反応を利用して、本発明のペプチドの本発明のタンパク質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のペプチドを、本発明のタンパク質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させた場合と、本発明のペプチドおよび試験化合物を、本発明のタンパク質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させた場合における、細胞膜電位の変化を測定し、比較することにより、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、細胞膜電位変化を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明のタンパク質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させ、本発明のペプチドと同様な細胞膜電位変化を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0080】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
氷冷して動けなくなった雌のアフリカツメガエルから取り出した、卵母細胞塊を、MBS液(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.41mM CaCl, 0.33mM Ca(NO, 0.82mM MgSO, 2.4mM NaHCO, 10mM HEPES; pH7.4)に溶かしたコラーゲナーゼ(0.5mg/ml)で卵塊がほぐれるまで19℃、1〜6時間、150rpmで処理する。外液をMBS液に置換することで3度洗浄し、マイクロマニピュレーターで本発明のタンパク質遺伝子poly A付加cRNA(50ng/50nl)を卵母細胞にマイクロインジェクションする。
本発明のタンパク質遺伝子mRNAは、組織や細胞から調製してもよく、プラスミドからin vitroで転写してもよい。本発明のタンパク質遺伝子mRNAをMBS液中で20℃で3日培養し、これをRinger液を流しているvoltage clamp装置のくぼみに置き、電位固定用ガラス微小電極および電位測定用ガラス微小電極を細胞内に刺入し、(−)極は細胞外に置く。電位が安定したら、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドおよび試験化合物を含むRinger液を流して電位変化を記録する。試験化合物の影響は、本発明のタンパク質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞の細胞膜電位変化を、本発明のペプチドのみ含むRinger液を流した場合と比較することによって測定することができる。
細胞膜電位変化を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
上記の系において、電位の変化量を増大させると、測定しやすくなるため、各種のGタンパク質遺伝子のpoly A付加RNAを導入してもよい。また、カルシウム存在下で発光を生じるようなタンパク質(例、aequorinなど)の遺伝子のpoly A付加RNAを共インジェクションすることにより、膜電位変化ではなく発光量を測定することもできる。
【0081】
本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、本発明のタンパク質、本発明のタンパク質を含有する細胞、あるいは本発明のタンパク質を含有する細胞の膜画分、および本発明のペプチドを含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものがあげられる。
1.スクリーニング用試薬
(i)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製してもよい。
(ii)本発明のタンパク質の標品
本発明のタンパク質を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×10個/穴で継代し、37℃、5% CO、95% airで2日間培養したもの。
(iii)標識リガンド
H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した本発明のペプチド。
適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(iv)リガンド標準液
本発明のペプチドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
2.測定法
(i)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明のタンパク質を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(ii)10−3〜10−10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識した本発明のペプチドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物のかわりに10−3Mの本発明のペプチドを5μl加えておく。
(iii)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識した本発明のペプチドを0.2N NaOH−1% SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(iv)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式〔数1〕で求める。
〔数1〕
PMB=[(B−NSB)/(B−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B  :検体を加えた時の値
NSB:Non−specific Binding(非特異的結合量)
  :最大結合量
【0082】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合を変化させる(結合を阻害または促進する)化合物であり、具体的には本発明のタンパク質を介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(いわゆる本発明のタンパク質のアゴニスト)、または該刺激活性を有しない化合物(いわゆる本発明のタンパク質のアンタゴニスト)である。該化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記本発明のタンパク質のアゴニストであるかアンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(A)または(B)に従えばよい。
(A)前記のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、本発明のペプチドと本発明のタンパク質との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記した本発明のタンパク質を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明のタンパク質のアゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩は本発明のタンパク質のアンタゴニストである。
(B)(a)試験化合物を本発明のタンパク質を含有する細胞に接触させ、上記本発明のタンパク質を介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明のタンパク質のアゴニストである。
(b) 本発明のタンパク質を活性化する化合物(例えば、本発明のペプチドまたは本発明のタンパク質のアゴニストなど)を本発明のタンパク質を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のタンパク質を活性化する化合物および試験化合物を本発明のタンパク質を含有する細胞に接触させた場合における、本発明のタンパク質を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。本発明のタンパク質を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩は本発明のタンパク質のアンタゴニストである。
該本発明のタンパク質のアゴニストは、本発明のタンパク質に対する本発明のペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のペプチドと同様に安全で低毒性な医薬として有用である。
逆に、本発明のタンパク質アンタゴニストは、 本発明のタンパク質に対する本発明のペプチドが有する生理活性を抑制することができるので、該レセプター活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
【0083】
本発明のタンパク質は食欲(摂食)増進作用およびオキシトシン分泌促進作用などに関与している。よって、上記のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物のうち、本発明のタンパク質のアゴニストは、例えば、食欲(摂食)増進剤、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などの予防・治療剤などの医薬として用いることができる。また、本発明のタンパク質のアンタゴニストは、例えば、肥満症〔例、悪性肥満細胞症(malignant mastocytosis)、外因性肥満(exogenous obesity)、過インシュリン性肥満症(hyperinsulinar obesity)、過血漿性肥満(hyperplasmic obesity)、下垂体性肥満(hypophyseal adiposity)、減血漿性肥満症(hypoplasmic obesity)、甲状腺機能低下肥満症(hypothyroid obesity)、視床下部性肥満(hypothalamic obesity)、症候性肥満症(symptomatic obesity)、小児肥満 (infantile obesity)、上半身肥満(upper body obesity)、食事性肥満症 (alimentary obesity)、性機能低下性肥満(hypogonadal obesity)、全身性肥満細胞症(systemic mastocytosis)、単純性肥満(simple obesity)、中心性肥満(central obesity)など〕、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症など(特に抗肥満剤、食欲(摂食)調節剤など)などの予防・治療剤などの医薬として用いることができる。
【0084】
上記のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物の塩としては、例えば、薬学的に許容可能な塩などが用いられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などがあげられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩などがあげられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬として使用する場合、上記の本発明のペプチドを医薬として実施する場合と同様にして実施することができる。
【0085】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
【0086】
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩の投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜1000mg、好ましくは約1.0〜300mg、より好ましくは約3.0〜50mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の肥満症患者(体重60kgとして)への投与においては、アンタゴニストを一日につき約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0087】
〔3〕本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の定量
本発明の抗体は、本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のタンパク質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のタンパク質とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のタンパク質の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明のタンパク質のN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のタンパク質のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
【0088】
また、本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて本発明のタンパク質の定量を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’) 、Fab’またはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のタンパク質の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、タンパク質量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素(例、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕など)、蛍光物質〔例、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなど〕、酵素(例、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素など)、発光物質(例、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなど)、ビオチン、ランタニド元素などが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0089】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が挙げられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のタンパク質量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のタンパク質のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0090】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0091】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のタンパク質の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のタンパク質を感度良く定量することができる。
【0092】
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のタンパク質の濃度を定量することによって、本発明のタンパク質の濃度の減少が検出された場合、例えば、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などが発症している可能性が高いと診断することができる。反対に、例えば、本発明のタンパク質の濃度の上昇が検出された場合、例えば、肥満症(例、悪性肥満細胞症、外因性肥満、過インシュリン性肥満症、過血漿性肥満、下垂体性肥満、減血漿性肥満症、甲状腺機能低下肥満症、視床下部性肥満、症候性肥満症、小児肥満、上半身肥満、食事性肥満症、性機能低下性肥満、全身性肥満細胞症、単純性肥満、中心性肥満など)、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症などが発症している可能性が高いと診断することが出来る。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタンパク質を検出するために使用することができる。また、本発明のタンパク質を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のタンパク質の検出、被検細胞内における本発明のタンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
【0093】
〔4〕遺伝子診断剤
本発明のDNAは、例えば、プローブとして使用することにより、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)における本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(Genomics,第5巻,874〜879頁(1989年)、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現増加が検出された場合、例えば、肥満症(例、悪性肥満細胞症、外因性肥満、過インシュリン性肥満症、過血漿性肥満、下垂体性肥満、減血漿性肥満症、甲状腺機能低下肥満症、視床下部性肥満、症候性肥満症、小児肥満、上半身肥満、食事性肥満症、性機能低下性肥満、全身性肥満細胞症、単純性肥満、中心性肥満など)、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症などである可能性が高いと診断することが出来る。反対に、発現低下が検出された場合やPCR−SSCP法によりDNAの突然変異が検出された場合は、例えば、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などである可能性が高いと診断することができる。
【0094】
〔5〕アンチセンスポリヌクレオチドを含有する医薬
本発明のDNAに相補的に結合し、該DNAの発現を抑制することができる本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは低毒性であり、生体内における本発明のタンパク質または本発明のDNAの機能(例、摂食(食欲)増進活性)を抑制することができるので、例えば、肥満症(例、悪性肥満細胞症、外因性肥満、過インシュリン性肥満症、過血漿性肥満、下垂体性肥満、減血漿性肥満症、甲状腺機能低下肥満症、視床下部性肥満、症候性肥満症、小児肥満、上半身肥満、食事性肥満症、性機能低下性肥満、全身性肥満細胞症、単純性肥満、中心性肥満など)、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症など(特に抗肥満剤、食欲(摂食)調節剤など)などの予防・治療剤などとして使用することができる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドを上記の予防・治療剤として使用する場合、公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。
例えば、該アンチセンスポリヌクレオチドを用いる場合、該アンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
該アンチセンスポリヌクレオチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、肥満症の治療の目的で本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを経静脈投与する場合、一般的に成人(体重60kg)においては、一日につき該アンチセンスポリヌクレオチドを約0.1〜100mg投与する。
さらに、該アンチセンスポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0095】
さらに、本発明は、
(i)本発明のタンパク質をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する二重鎖RNA、
(ii)前記二重鎖RNAを含有してなる医薬、
(iii)本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有するリボザイム、
(iv)前記リボザイムを含有してなる医薬、
(v)前記リボザイムをコードする遺伝子(DNA)を含有する発現ベクターなども提供する。
上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様に、二重鎖RNA、リボザイムなども、本発明のDNAから転写されるRNAを破壊またはその機能を抑制することができ、生体内における本発明のタンパク質またはそれをコードするDNAの機能を抑制することができるので、例えば、肥満症(例、悪性肥満細胞症、外因性肥満、過インシュリン性肥満症、過血漿性肥満、下垂体性肥満、減血漿性肥満症、甲状腺機能低下肥満症、視床下部性肥満、症候性肥満症、小児肥満、上半身肥満、食事性肥満症、性機能低下性肥満、全身性肥満細胞症、単純性肥満、中心性肥満など)、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症など(特に抗肥満剤、食欲(摂食)調節剤など)などの予防・治療剤などとして使用することができる。
二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、公知のリボザイムの配列の一部を本発明のタンパク質をコードするRNAの一部に置換することによって製造することができる。本発明のタンパク質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るコンセンサス配列NUX(式中、Nはすべての塩基を、XはG以外の塩基を示す)の近傍の配列などが挙げられる。
上記の二重鎖RNAまたはリボザイムを上記予防・治療剤として使用する場合、アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。また、前記(v)の発現ベクターは、公知の遺伝子治療法などと同様に用い、上記予防・治療剤として使用する。
【0096】
〔6〕本発明の抗体を含有する医薬
本発明のタンパク質の活性を中和する作用を有する本発明の抗体は、本発明のタンパク質の機能を抑制(例、シグナル伝達を不活性化)することができるので、例えば、肥満症(例、悪性肥満細胞症、外因性肥満、過インシュリン性肥満症、過血漿性肥満、下垂体性肥満、減血漿性肥満症、甲状腺機能低下肥満症、視床下部性肥満、症候性肥満症、小児肥満、上半身肥満、食事性肥満症、性機能低下性肥満、全身性肥満細胞症、単純性肥満、中心性肥満など)、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症など(特に抗肥満剤、食欲(摂食)調節剤など)などの予防・治療剤などとして使用することができる。
本発明のタンパク質の活性を活性化する作用を有する本発明の抗体は、本発明のタンパク質の機能を促進(例、シグナル伝達を活性化)することができるので、例えば、食欲(摂食)増進剤、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などの予防・治療剤などとして用いることができる。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
本発明の抗体を含有する上記疾患の予防・治療剤は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、静脈投与)に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人の肥満症の治療のために使用する場合には、本発明の中和抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、注射剤として投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
また、本発明の抗体は、例えば、上記疾患などの診断薬としても有用である。
【0097】
〔7〕本発明のDNAを有する動物の作出
本発明は、外来性の本発明のタンパク質をコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
(2)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(1)記載の動物、
(3)ゲッ歯動物がマウスまたはラットである上記(2)記載の動物、および
(4)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターなどを提供する。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA導入動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを導入することによって作出することができる。また、該DNA導入方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを導入し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA導入動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F系統,BDF系統,B6D2F系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のタンパク質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に導入するにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを導入する場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA導入哺乳動物を作出することができる。
【0098】
本発明のタンパク質の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、(i)ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、(ii)各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA導入哺乳動物において目的とするmRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0099】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のタンパク質の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なポリペプチドの翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は導入動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを導入した非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0100】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のタンパク質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA導入動物を用いて、本発明のタンパク質の機能亢進症や、本発明のタンパク質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを導入した哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原料として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0101】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のタンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA導入動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパク質による正常タンパク質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを導入した哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質またはその機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の本発明のDNA導入動物のその他の利用可能性として、例えば、
(i)組織培養のための細胞源としての使用、
(ii)本発明のDNA導入動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析する、またはDNAにより発現されたポリペプチド組織を分析することによる、本発明のタンパク質により特異的に発現あるいは活性化するタンパク質との関連性についての解析、
(iii)DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
(iv)上記(iii)記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
(v)本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症などを含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のタンパク質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA導入動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA導入細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のタンパク質産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のタンパク質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症を含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA導入動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のタンパク質が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0102】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA     :デオキシリボ核酸
cDNA    :相補的デオキシリボ核酸
A      :アデニン
T      :チミン
G      :グアニン
C      :シトシン
RNA     :リボ核酸
mRNA    :メッセンジャーリボ核酸
dATP    :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP    :デオキシチミジン三リン酸
dGTP    :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP    :デオキシシチジン三リン酸
ATP     :アデノシン三リン酸
EDTA    :エチレンジアミン四酢酸
SDS     :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly  :グリシン
Ala  :アラニン
Val  :バリン
Leu  :ロイシン
Ile  :イソロイシン
Ser  :セリン
Thr :スレオニン
Cys  :システイン
Met  :メチオニン
Glu  :グルタミン酸
Asp  :アスパラギン酸
Lys  :リジン
Arg  :アルギニン
His  :ヒスチジン
Phe  :フェニルアラニン
Tyr  :チロシン
Trp  :トリプトファン
Pro  :プロリン
Asn  :アスパラギン
Gln  :グルタミン
pGlu:ピログルタミン酸
【0103】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Figure 2004073179
【0104】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
以下の実施例1におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
以下の実施例1におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
カニクイザルSLT受容体をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
カニクイザルSLT受容体のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
以下の実施例2におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
以下の実施例2におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
以下の実施例2で得られたネコSLT受容体のC末端領域をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
以下の実施例3におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
以下の実施例3におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
以下の実施例3で得られたネコSLT受容体のN末端領域をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
以下の実施例4におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
以下の実施例4におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
ネコSLT受容体をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
ネコSLT受容体のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:15〕
以下の実施例5におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
以下の実施例5におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
以下の実施例5で得られたイヌSLT受容体のC末端領域をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
以下の実施例6におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
以下の実施例6におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
以下の実施例6で得られたイヌSLT受容体のN末端領域をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
以下の実施例7におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
以下の実施例7におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:23〕
イヌSLT受容体をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕
イヌSLT受容体のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:25〕
MCHのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:26〕
Des−Asp−MCH (MCH(2−19))のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:27〕
Des−[Asp, Phe]−MCH (MCH(3−19))のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:28〕
Des−[Asp, Phe, Asp]−MCH (MCH(4−19))のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:29〕
Des−[Asp, Phe, Asp, Met]−MCH (MCH(5−19))のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:30〕
Des−[Asp, Phe, Asp, Met, Leu]−MCH (MCH(6−19))のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:31〕
Des−[Asp, Phe, Asp, Met, Leu, Arg]−MCH (MCH(7−19))のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:32〕
以下の実施例10で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:33〕
以下の実施例10で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
以下の実施例10で使用したプローブの塩基配列を示す〔5’末端にリポーター色素としてFAM(6−carboxy−fluorescein)を、3’末端にはクエンチャーとしてTAMRA(6−carboxy−tetramethyl−rhodamine)を標識した〕。
〔配列番号:35〕
以下の実施例10で使用したプライマー3の塩基配列を示す。
〔配列番号:36〕
以下の実施例10で使用したプライマー4の塩基配列を示す。
〔配列番号:37〕
以下の実施例10で使用したプローブの塩基配列を示す〔5’末端にリポーター色素としてFAM(6−carboxy−fluorescein)を、3’末端にはクエンチャーとしてTAMRA(6−carboxy−tetramethyl−rhodamine)を標識した〕。
〔配列番号:38〕
以下の実施例1で得られたカニクイザルSLT受容体の全長をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:39〕
以下の実施例4で得られたネコSLT受容体の全長をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:40〕
以下の実施例7で得られたイヌSLT受容体の全長をコードするcDNAの塩基配列を示す。
【0105】
後述の実施例1で取得されたEscherichia coli TOP10/pCR4−monSLTは、2002年6月4日から、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−8066として寄託されている。
後述の実施例4で取得されたEscherichia coli TOP10/pcDNA−catSLTは、2002年4月25日から、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−8030として、2002年4月16日から、大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85(郵便番号532−8686)の財団法人 発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16789としてそれぞれ寄託されている。
後述の実施例11で取得されたEscherichia coli TOP10/pAKKO−dogSLTは、2002年4月25日から、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−8031として、2002年4月16日から、大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85(郵便番号532−8686)の財団法人 発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16790としてそれぞれ寄託されている。
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0106】
実施例1
カニクイザルSLT遺伝子の取得
カニクイザル視床下部よりIsogen(ニッポンジーン社)を用いてtotal RNAを調製後、Oligotex (dT)30(宝酒造)を用いてpoly(A) RNA画分を調製した。カニクイザル視床下部poly(A)RNA 2.0μgからSuperScript reversetranscriptase(ギブコ BRL社)を用い、マニュアルにしたがってランダムプライマーを用いて逆転写を行なってcDNAを作成した。ヒトSLTの5’非翻訳領域を参考に作製したプライマー1(配列番号:1)およびヒト3’非翻訳領域の配列をもつプライマー2(配列番号:2)を用いてカニクイザル視床下部 cDNA を鋳型にPCR反応を行なった。反応は、mRNA 20 ng相当分のcDNAを鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、dNTP混合液0.2mM、Z−Taq(宝酒造)1/100 volume、10倍濃縮Buffer 1/10 volumeとした。増幅のためのサイクルは、94℃で120秒保温した後、98℃・1秒、72℃・30秒のサイクルを40回繰り返した。得られた反応液2μlをTOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcr4へサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle SequenceReady Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、配列番号:38に示す塩基配列が得られた。この配列には、カニクイザルSLTの全アミノ酸配列(配列番号:4)をコードする塩基配列(配列番号:3)が含まれていたので、このプラスミドで大腸菌TOP10を形質転換してEscherichia coli TOP10/pCR4−monSLTを得た。
【0107】
実施例2
3’−RACE法によるネコSLT遺伝子の3’側配列の取得
ネコ全脳よりIsogen(ニッポンジーン社)を用いてtotal RNAを調製後、Oligotex (dT)30 (宝酒造)を用いてpoly(A) RNA画分を調製した。3’−RACE用の鋳型はネコ全脳poly(A) RNAをもとにSMART RACE cDNA Amplification kitを用いて作製した。RACE PCR反応に用いたプライマーセットは、1回目のPCR反応ではkit添付のUniversal Primer Mixとプライマー1(配列番号:5)、2回目のPCR反応ではkit添付のNested Universal Primerとプライマー2(配列番号:6)を用いた。反応は、逆転写したcDNAのうちmRNA1−6 ng相当分を鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、 dNTP混合液0.2 mM、Advantage2 Polymerase Mix(クロンテック社)1/50 volume、10倍濃縮Buffer 1/10volumeとした。増幅のためのサイクルは、どちらのPCRも94℃・5秒、60℃・25秒、72℃・120秒のサイクルを40回繰り返した後、72℃で10分保温した。反応物を1.2% Seakem GTG Agarose(宝酒造)で電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した時に見える2000 bp付近のバンドをGeneClean Spin kit(バイオ101)で抽出し、TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcr4−TOPOへサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、ネコSLTのC末端領域を含む配列番号:7で表される塩基配列が得られた。
【0108】
実施例3
5’−RACE法によるネコSLT遺伝子の5’側配列の取得
5’−RACE用の鋳型はMarathon ready cDNA Amplification kitを用いてネコ全脳poly(A) RNAから作製した。RACE PCR反応に用いたプライマーセットは、1回目のPCR反応ではMarathon ready cDNA Amplification kit用adaptor primer 1とプライマー1(配列番号:8)、2回目のPCR反応ではMarathon ready cDNA Amplification kit用adaptor primer 2とプライマー2(配列番号:9)を用いた。反応は、逆転写したcDNAのうちmRNA 2 ng相当分を鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、dNTP混合液0.2 mM、Advantage2 Polymerase Mix(クロンテック社)1/50 volume、10倍濃縮Buffer 1/10 volumeとした。増幅のためのサイクルは、どちらのPCRも94℃・5秒、66℃・120秒のサイクルを10回、94℃・5秒、60℃・20秒、72℃・120秒のサイクルを25回繰り返した後、72℃で10分保温した。反応物を1.2% Seakem GTG Agarose(宝酒造)で、電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した時に見える500 bp付近のバンドをGeneClean Spin kit(バイオ101)で抽出し、TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcr4−TOPOへサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、ネコSLTのN末端領域を含む配列番号:10で表される塩基配列が得られた。
【0109】
実施例4
ネコSLT全長配列の取得
5’−および3’−RACE法の結果から予想されるネコSLTの全長を含む配列を得るためforward primerとして5’非翻訳領域にプライマー1(配列番号:11)、およびreverse primerとして3’非翻訳領域にプライマー2(配列番号:12)を設定してPCR反応を行なった。反応は、逆転写したcDNAのうちmRNA 2 ng相当分を鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、dNTP混合液0.2 mM、Z−Taq(TaKaRa)1/50 volume、10倍濃縮Buffer 1/10 volumeとした。増幅のためのサイクルは、94℃で15秒保温した後、98℃・1秒、64℃・15秒、72℃・20秒のサイクルを40回繰り返した後、72℃で2分保温した。反応物を1.2% Seakem GTG Agarose(宝酒造)で電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した時に見える1200 bp付近のバンドをGeneClean Spin kit(バイオ101)で抽出し、Eukaryotic TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcDNA3.1/V5/His−TOPOへサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、配列番号:39に示す塩基配列が得られた。この配列にはネコSLTの全アミノ酸配列(配列番号:14)をコードする塩基配列(配列番号:13)が含まれていたので、このプラスミドを用いて大腸菌TOP10を形質転換し、Escherichia coli TOP10/pcDNA−catSLTを得た。
【0110】
実施例5
3’−RACE法によるイヌSLT遺伝子の3’側配列の取得
イヌ前頭葉よりIsogen(ニッポンジーン社)によりtotal RNAを調製後、Oligotex (dT)30(宝酒造)を用いてpoly(A) RNA画分を調製した。3’−RACE用の鋳型はイヌ前頭葉poly(A) RNAをもとにSMART RACE cDNA Amplification kitを用いて作製した。RACE PCR反応に用いたプライマーセットは、1回目のPCR反応では、kit添付のUniversal Primer Mix とプライマー1(配列番号:15)、2回目のPCR反応では、kit添付のNested Universal Primerとプライマー2(配列番号:16)を用いた。反応は、逆転写したcDNAのうちmRNA 20 ng相当分を鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、dNTP混合液0.2mM、Advantage2 Polymerase Mix(クロンテック社)1/50 volume、10倍濃縮Buffer 1/10 volumeとした。増幅のためのサイクルは、どちらのPCRも94℃・5秒、72℃・90秒のサイクルを3回、94℃・5秒、70℃・90秒のサイクルを3回、94℃・5秒、68℃・90秒のサイクルを40回繰り返した後、72℃で10分保温した。反応物を1.2% Seakem GTG Agarose(宝酒造)で電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した時に見える900 bp付近のバンドをGeneClean Spin kit (バイオ101)で抽出し、TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcr4−TOPOへサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、イヌSLTのC末端領域を含む配列番号:17で表される塩基配列が得られた。
【0111】
実施例6
5’−RACE法によるイヌSLT遺伝子の5’側配列の取得
5’−RACE用の鋳型はMarathon ready cDNA Amplification kitを用いてイヌ前頭葉poly (A)+ RNAから作製した。RACE PCR反応に用いたプライマーセットは、1回目のPCR反応では、Marathon ready cDNA Amplification kit用adaptor primer 1とプライマー1(配列番号:18)、2回目のPCR反応では、Marathon ready cDNA Amplification kit用adaptor primer 2とプライマー2(配列番号:19)を用いた。反応は、逆転写したcDNAのうちmRNA 2 ng相当分を鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、dNTP混合液0.2 mM、Advantage2 Polymerase Mix(クロンテック社)1/50 volume、10倍濃縮Buffer 1/10 volumeとした。増幅のためのサイクルは、どちらのPCRも94℃・5秒、66℃・120秒のサイクルを10回、94℃・5秒、60℃・20秒、72℃・120秒のサイクルを25回繰り返した後、72℃で10分保温した。反応物を1.2% Seakem GTG Agarose(宝酒造)で電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した時に見える400 bp付近のバンドをGeneClean Spin kit(バイオ101)で抽出し、TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcr4−TOPOへサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、イヌSLTのN末端領域を含む配列番号:20で表される塩基配列が得られた。
【0112】
実施例7
イヌSLT全長配列の取得
5’−および3’−RACE法の結果から予想されるイヌSLTの全長を含む配列を得るためforward primerとして5’非翻訳領域にプライマー1(配列番号:21)、およびreverse primerとして3’非翻訳領域にプライマー2(配列番号:22)を設定してPCR反応を行なった。反応は、逆転写したcDNAのうちmRNA 2 ng相当分を鋳型に20μlの液量で行なった。反応液の組成は、プライマー濃度0.5μM、dNTP混合液0.2 mM、Z−Taq(TaKaRa)1/50 volume、10倍濃縮Buffer 1/10 volumeとした。増幅のためのサイクルは、94℃で15秒保温した後、98℃・1秒、64℃・15秒、72℃・20秒のサイクルを40回繰り返した後、72℃で2分保温した。反応物を1.2% Seakem GTG Agarose(宝酒造)で電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した時に見える1200 bp付近のバンドをGeneClean Spin kit(バイオ101)で抽出し、Eukaryotic TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcDNA3.1/V5/His−TOPOへサブクローニングした後、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行なった。蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した結果、配列番号:40 に示す塩基配列が得られた。この配列にはイヌSLTの全アミノ酸配列(配列番号:24)をコードする塩基配列(配列番号:23)が含まれていたので、このプラスミドで大腸菌TOP10を形質転換してEscherichia coli TOP10/pcDNA−dogSLTを得た。
【0113】
実施例8
ネコSLT発現CHO細胞の作製
実施例4で作製したネコSLTの全長アミノ酸配列をコードし、5’側にSal I認識配列が付加し、また3’側にSpe I認識配列を付加した遺伝子が導入されたプラスミドによって形質転換された大腸菌のクローンよりPlasmid Midi Kit(キアゲン)を用いてプラスミドを調製し、制限酵素Sal IおよびSpe Iで切断してインサート部分を切り出した。インサートDNAは電気泳動後、アガロースゲルからカミソリで切り出し、次に細片化、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行なって回収した。このインサートDNAをSal IおよびSpe Iで切断した動物細胞発現用ベクタープラスミドpAKKO−111H(Hinuma, S.ら、Biochim. Biophys. Acta、1219巻、251−259頁、1994年、記載のpAKKO1.11Hと同一のベクタープラスミド)に加え、T4ライゲース(宝酒造)を用いてライゲーションを行ない、タンパク発現用プラスミドpAKKO−catSLTを構築した。
pAKKO−catSLTで形質転換したEscherichia coli TOP10 competent cell(インビトロジェン社)を培養後、Plasmid Midi Kit(キアゲン)を用いてpAKKO−catSLTのプラスミドDNAを調製した。これをCHO dhfr細胞5000000 cells/ 150μl OptiMEM(ギブコ社)細胞懸濁液に50μg/mlになるように加え、ジーンパルサー(バイオラッド社)により240V 960μFのパルスをかけることで細胞に導入した。10%ウシ胎児血清を含むMEMα培地で1日間培養した後、継代し、選択培地である10%透析ウシ胎児血清を含む核酸不含MEMα培地で培養した。選択培地中で増殖してくるネコSLT発現CHO細胞である形質転換細胞を選択した。
【0114】
実施例9
FLIPRを用いたMCHによるネコSLT発現CHO細胞の細胞内Caイオン濃度上昇活性の測定
実施例8で得られたネコSLT発現CHO細胞の、MCH(配列番号:25、(株)ペプチド研究所)による細胞内Caイオン濃度上昇活性の測定を、FLIPR(モレキュラーデバイス社)を用いて行なった。
CHO/catSLT細胞を15 x 10 cells/mlとなるように10%透析ウシ胎児血清を含むDMEMに懸濁し、FLIPR用96穴プレート(Black plate clear bottom、コースター社)に分注器を用いて各ウェルに200μlずつ植え込み(3.0×10 cells/200μl/ウェル)、5% COインキュベーター中にて37℃で一晩培養した後、アッセイに用いた(以後このプレートを細胞プレートと言う)。HANKS’/HBSS(ニッスイハンクス2(日水製薬株式会社) 9.8 g、炭酸水素ナトリウム 0.35 g、HEPES 4.77 g 、6 M水酸化ナトリウム溶液で pH7.4に合わせた後、フィルター滅菌処理)20 ml、250 mM Probenecid  200μl、ウシ胎児血清(FBS) 200μlを混合したものに、Fluo 3−AM(同仁化学研究所) 2バイアル(50μg)をジメチルスルフォキサイド40μlおよび20% Pluronic acid(モレキュラープローブ社)40μlに溶解して加えて混和後、8連ピペットを用いて培養液を除いた細胞プレートに各ウェル 100μlずつ分注した後、5% COインキュベーター中にて37℃で1時間インキュベートし、細胞に色素をロードした。FLIPR用96穴プレート(V−Bottomプレート、コースター社)の各ウェルに2.5 mM Probenecid、0.05% BSAを含むHANKS’/HBSS 150μlを入れ、さらに種々の濃度のMCHを添加してサンプルプレートを調製した。細胞プレートの色素ローディング終了後、HANKS’/HBSSに2.5 mM Probenecidを加えた洗浄バッファーでプレートウォッシャー(モレキュラーデバイス社)を用いて細胞プレートを4回洗浄し、洗浄後100μlの洗浄バッファーを残した。この細胞プレートとサンプルプレートをFLIPRにセットしアッセイを行なった(FLIPRにより、サンプルプレートから50μlのサンプルが細胞プレートへと移される)。
その結果、MCHは濃度依存的にネコSLT発現CHO細胞の細胞内Caイオン濃度を上昇させることが示された(図1)。なお、細胞内Caイオン濃度の上昇は、Caによって生じる細胞にロードされた色素の蛍光の上昇によって示される。
【0115】
実施例10
ネコ脳各部位でのネコSLT遺伝子の発現分布およびTaqMan PCR法を用いた発現量の定量
ネコ全脳から、前頭葉、側頭葉、後頭葉、頭頂葉、橋、小脳、延髄、海馬、扁桃体、視床、脳梁、大脳脚、脊髄、黒質、尾状核、視床下部を取り出し、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いてtotal RNA画分を調製した。得られたRNAは、プロテイナーゼK (インビトロジェン社)消化によりRNaseを分解後、Message Clean Kit(GenHunter社)を用いてゲノムDNAをDNase I消化した後、各部位のtotal RNA 1μgを鋳型に、SuperScript II reversetranscriptase(インビトロジェン社)を用い、添付のマニュアルにしたがってランダムプライマーを用いて逆転写を行ない、cDNAを作製した。得られたtotal RNA 25 ng相当の逆転写産物または後に述べるようにして作製した標準cDNA、1 x Universsal PCR Master Mix(PEバイオシステムズ社)、配列番号:32で表されるプライマー1および配列番号:33で表されるプライマー2、各100 nM、および配列番号:34(Fam−acaggtacttggctctcgtccaaccatttc−Tamra;配列中、Famは6−carboxy−fluoresceinを、Tamraは6−carboxy−tetramethyl−rhodamine をそれぞれ示す)で表されるTaqManプローブ100 nMを含む反応混合液25μlについてABI PRISM 7700 Sequence Detector(PEバイオシステムズ社)を用いてPCRを行なった。PCRは、50℃・2分、95℃・10分で処理後、95℃・15秒、60℃・60秒のサイクルを40回繰り返すことにより行なった。
標準cDNAは、実施例4で得られたプラスミドpcDNA−catSLT 50 pgを鋳型に、プライマー1および2(配列番号:32および配列番号:33)を用いて200μlの液量で PCR反応を行ない、作成した。組成は、プライマー1および2、0.5μM、2.5 mM MgCl、dNTP 0.2 mM, AmpliTaq Gold(パーキンエルマー社)1/100 volume 、10倍濃縮AmpliTaq Gold Buffer 1/10 volumeで行った。反応は、95℃で10分保温した後、95℃・15秒、60℃・15秒、72℃・10秒のサイクルを40回繰り返した。反応液をPCR purification kit (キアゲン社) により、増幅産物を精製し、260 nmの吸光度を測定して濃度を算出して正確なコピー数を算出した後、蒸留水で希釈し、1コピーから1x10コピーの標準cDNA溶液を調製した。また、TaqMan PCR用プローブおよびプライマーはPrimer Express (Version1.0)(PEバイオシステムズ社)により設計した。
発現量はABI PRISM 7700 SDSソフトウェアによって算出した。リポーターの蛍光強度が設定された値に達した瞬間のサイクル数を縦軸にとり、また標準cDNAの初期濃度の対数値を横軸にとって標準曲線を作成した。標準曲線より各逆転写産物の初期濃度を算出し、各部位のtotal RNA 25 ng当たりのネコSLT遺伝子発現量を求めた。さらに各々のサンプルのネコGAPDH遺伝子発現量をプライマー3(配列番号:35)およびプライマー4(配列番号:36)および配列番号:37に示すプローブ(Fam−ccaggagcgagatcccgcca−Tamura)を用いてネコSLT遺伝子発現量の解析と同様にしてTaqMan PCR法により求め、ネコSLT遺伝子発現量の補正を行なった。
その結果、ネコGAPDH遺伝子に対するネコSLT遺伝子の発現量は、前頭葉では0.084%、側頭葉では0.32%、後頭葉では0.046%、頭頂葉では0.056%、橋では0.086%、小脳では0.012%、延髄では0.0075%、海馬では0.092%、扁桃体では0.15%、視床では0.020%、脳梁では0.035%、大脳脚では0.016%、脊髄では0.014%、黒質では0.018%、尾状核では0.039%、視床下部では0.012%であった。以上より、ネコSLT遺伝子は、ネコ脳において前頭葉、側頭葉、橋、海馬、扁桃体において特に多く発現していることがわかった。
ネコSLTのネコ脳各部位における発現量のグラフを〔図2〕に示す。
【0116】
実施例11
イヌSLT動物細胞発現用ベクターの作製
実施例7で配列が確認された、5’側にSal I認識配列が、また3’側にSpe I認識配列がそれぞれ付加されたイヌSLTの全長アミノ酸配列をコードする遺伝子を導入したプラスミドpcDNA−dogSLTによって大腸菌を形質転換した。この大腸菌のクローンよりPlasmid Midi Kit(キアゲン)を用いてプラスミドを調製し、制限酵素Sal IおよびSpe Iで切断してインサート部分を切り出した。インサートDNAは、電気泳動後、アガロースゲルからカミソリで切り出し、次に細片化、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行なって回収した。このインサートDNAをSal IおよびSpe Iで切断した動物細胞発現用ベクタープラスミドpAKKO−111H(Biochim. Biophys. Acta、1219巻、251−259 頁、1994年記載のpAKKO1.11Hと同一のベクタープラスミド)に加え、T4ライゲース(宝酒造)を用いてライゲーションを行ない、タンパク質発現用プラスミドpAKKO−dogSLTを構築した。このpAKKO−dogSLTで大腸菌TOP10 competent cell(インビトロジェン社)を形質転換し、Escherichia coli TOP10/pAKKO−dogSLTを得た。
【0117】
【発明の効果】
本発明のタンパク質、ポリヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチドおよび抗体などは、例えば食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などの診断マーカー等として有用である。該タンパク質および本発明のペプチドなどを用いるスクリーニング法により得られる該タンパク質のアゴニストは、食欲(摂食)増進剤、食欲不振(例、神経性食欲不振症など)、食欲不振に伴う貧血または低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全、乳汁うっ滞などの予防・治療剤などとして、アンタゴニストは、例えば、肥満症(例、悪性肥満細胞症、外因性肥満、過インシュリン性肥満症、過血漿性肥満、下垂体性肥満、減血漿性肥満症、甲状腺機能低下肥満症、視床下部性肥満、症候性肥満症、小児肥満、上半身肥満、食事性肥満症、性機能低下性肥満、全身性肥満細胞症、単純性肥満、中心性肥満など)、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、胎児仮死、子宮破裂、頚管裂傷、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症(例、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害など)、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患(Pickwick症候群、睡眠時無呼吸症候群)、脂肪肝、不妊症、変形性骨関節症など(特に抗肥満剤、食欲(摂食)調節剤など)などの予防・治療剤などとして使用することができる。
【0118】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】FLIPRを用いて測定した種々の濃度のMCHのネコSLT発現CHO細胞に対する細胞内Caイオン上昇活性を示す図を示す。
【図2】ネコSLT遺伝子のネコ脳各部位における発現量のグラフである。発現量は、同じ鋳型RNA量に対するネコSLT遺伝子の発現量をネコGAPDH遺伝子の発現量で除した値を1000倍にして示した。

Claims (45)

  1. 配列番号:4、配列番号:14または配列番号:24で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩。
  2. 配列番号:4で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩。
  3. 配列番号:14で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩。
  4. 配列番号:24で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩。
  5. 請求項1記載のタンパク質の部分ペプチドまたはその塩。
  6. 請求項1記載のタンパク質または請求項5記載の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  7. DNAである請求項6記載のポリヌクレオチド。
  8. 配列番号:3、配列番号:13または配列番号:23で表わされる塩基配列を含有する請求項7記載のポリヌクレオチド。
  9. 請求項8記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  10. 請求項9記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
  11. 請求項10記載の形質転換体を培養し、請求項1記載のタンパク質または請求項5記載の部分ペプチドを生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする請求項1記載のタンパク質もしくは請求項5記載の部分ペプチドまたはその塩の製造法。
  12. 請求項1記載のタンパク質もしくは請求項5記載の部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬。
  13. 請求項6記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬。
  14. 請求項6記載のポリヌクレオチドを含有してなる診断薬。
  15. 請求項1記載のタンパク質もしくは請求項5記載の部分ペプチドまたはその塩に対する抗体。
  16. 請求項1記載のタンパク質のシグナル伝達を不活性化する中和抗体である請求項15記載の抗体。
  17. 請求項1記載のタンパク質のシグナル伝達を活性化する抗体である請求項15記載の抗体。
  18. 請求項15記載の抗体を含有してなる診断薬。
  19. 請求項16記載の抗体を含有してなる医薬。
  20. 請求項17記載の抗体を含有してなる医薬。
  21. 請求項1記載のタンパク質または請求項5記載の部分ペプチドまたはその塩および配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドと請求項1記載のタンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  22. 請求項1記載のタンパク質または請求項5記載の部分ペプチドまたはその塩および配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドと請求項1記載のタンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
  23. 請求項21記載のスクリーニング方法または請求項22記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:25で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩と請求項1記載のタンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩。
  24. アゴニストである請求項23記載の化合物またはその塩。
  25. アンタゴニストである請求項23記載の化合物またはその塩。
  26. 請求項24記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
  27. 請求項25記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
  28. 請求項6記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチド。
  29. 請求項28記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる医薬。
  30. 請求項6記載のポリヌクレオチドまたはその一部を用いることを特徴とする請求項1記載のタンパク質のmRNAの定量方法。
  31. 請求項15記載の抗体を用いることを特徴とする請求項1記載のタンパク質の定量方法。
  32. 請求項30または請求項31記載の定量方法を用いることを特徴とする請求項1記載のタンパク質の機能が関連する疾患の診断方法。
  33. 請求項30記載の定量方法を用いることを特徴とする請求項1記載のタンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  34. 請求項30記載の定量方法を用いることを特徴とする細胞膜における請求項1記載のタンパク質量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  35. 請求項33記載のスクリーニング方法を用いて得られうる請求項1記載のタンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩。
  36. 請求項34記載のスクリーニング方法を用いて得られうる細胞膜における請求項1記載のタンパク質量を変化させる化合物またはその塩。
  37. 請求項35または請求項36記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
  38. 請求項6記載のポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
  39. 外来性の、請求項1記載のタンパク質をコードするDNAまたはその変異DNAを有する非ヒトトランスジェニック動物。
  40. 食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全または乳汁うっ滞の予防・治療剤である請求項12、請求項13、請求項20または請求項26記載の医薬。
  41. 肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症または変形性骨関節症の予防・治療剤である、請求項19、請求項27または請求項29記載の医薬。
  42. 哺乳動物に対して、請求項24記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全または乳汁うっ滞の予防・治療方法。
  43. 哺乳動物に対して、請求項25記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症または変形性骨関節症の予防・治療方法。
  44. 食欲不振、食欲不振に伴う貧血ならびに低蛋白症、微弱陣痛、弛緩出血、子宮復古不全または乳汁うっ滞の予防・治療剤を製造するための、請求項24記載の化合物またはその塩の使用。
  45. 肥満症、摂食亢進症、情動障害、性機能障害、過強陣痛、強直性子宮収縮、早産、Prader−Willi症候群、糖尿病およびその合併症、高血圧、高脂血症、冠状動脈硬化症、痛風、呼吸器疾患、脂肪肝、不妊症または変形性骨関節症の予防・治療剤を製造するための、請求項25記載の化合物またはその塩の使用。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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