JP2004115394A - 免疫疾患予防・治療剤 - Google Patents

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Hirokazu Matsumoto
松本 寛和
Yasuko Horikoshi
堀越 康子
Tetsuya Otaki
大瀧 徹也
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Abstract

【課題】免疫疾患または水・電解質代謝異常の予防・治療剤の提供。
【解決手段】配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化合物またはその塩を含有してなる免疫疾患の予防・治療剤など。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる免疫疾患の予防・治療剤、該ペプチドまたはその塩を用いる免疫疾患の予防・治療剤などのスクリーニング方法/キットなどに関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのホルモンや神経伝達物質は細胞膜に存在する特異的なレセプターを通じて生体機能を調節している。これらのレセプターの多くは共役しているグアニンヌクレオチド結合性蛋白質(guanine nucleotide−binding protein、以下G蛋白質と略称する場合がある)の活性化を通じて細胞内のシグナル伝達を行う。G蛋白質共役型レセプターであるガラニン・レセプター・サブタイプ(galanin receptor subtype)であるGALR2(J. Biol. Chem.、272巻、24612頁、1997年、FEBS Letter、471巻、225頁、1997年)に対するペプチド性リガンドは、ガラニン様ペプチド(Galanin−like Peptide(GALP))(特許文献1 WO 99/48920号公報)と命名され、GALPが血中LH濃度の特異的な上昇作用を有し、その反応性はレプチン受容体に異常が見られるZucker fattyラットにおいて亢進することが知られている(特許文献2 WO 02/066064号公報)。
【0003】
【特許文献1】
WO 99/48920号公報
【特許文献2】
WO 02/066064号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
安全で優れた免疫疾患などの予防・治療剤が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、GALPが免疫疾患予防・治療活性を有することを見出し、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化合物またはその塩を含有してなる免疫疾患の予防・治療剤、
(2)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(3)さらに、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いる上記(2)記載のスクリーニング方法、
(4)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット、
(5)さらに、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有する上記(4)記載のスクリーニング用キット、
(6)上記(2)記載のスクリーニング方法または上記(4)記載のスクリーニング用キットを用いて得られる免疫疾患の予防・治療剤、
(7)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる免疫疾患の予防・治療剤、
(8)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有してなる免疫疾患の診断薬、
(9)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(10)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット、
(11)上記(9)記載のスクリーニング方法または上記(10)記載のスクリーニング用キットを用いて得られる免疫疾患の予防・治療剤などを提供する。
【0007】
さらに、
(i)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化合物またはその塩を含有してなる水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(ii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする水・電解質代謝異常の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(iii)さらに、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いる上記(ii)記載のスクリーニング方法、
(iv)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする水・電解質代謝異常の予防・治療剤のスクリーニング用キット、
(v)さらに、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有する上記(iv)記載のスクリーニング用キット、
(vi)上記(ii)記載のスクリーニング方法または上記(iv)記載のスクリーニング用キットを用いて得られる水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(vii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(viii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有してなる水・電解質代謝異常の診断薬、
(ix)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする水・電解質代謝異常の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(x)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする水・電解質代謝異常の予防・治療剤のスクリーニング用キット、
(xi)上記(ix)記載のスクリーニング方法または上記(x)記載のスクリーニング用キットを用いて得られる水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(xii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる免疫疾患または水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(xiii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするDNAの塩基配列に相補的または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる免疫疾患または水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(xiv)配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするDNAの塩基配列に相補的または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる免疫疾患または水・電解質代謝異常の予防・治療剤、
(xv)免疫疾患が、膠原病、リウマチ性疾患、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群またはインスリン抵抗性糖尿病である上記(1)、(6)、(7)、(11)、(xii)または(xiv)記載の予防・治療剤、
(xvi)水・電解質代謝異常が、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症または代謝性アルカローシスである上記(i)、(vi)、(vii)、(xi)、(xii)または(xiv)記載の予防・治療剤なども提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはその塩(以下、本発明のポリペプチドと略記することがある)は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩(以下、本発明の蛋白質と略記することがある)と結合する能力を有するペプチドまたはその塩であり、本発明の蛋白質と結合し、本発明の蛋白質を活性化する能力を有するペプチドまたはその塩である。本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質と結合する能力および本発明の蛋白質を活性化する能力は後述の方法により測定することができる。
本発明のポリペプチドは、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞(例えば、MEL,M1,CTLL−2,HT−2,WEHI−3,HL−60,JOSK−1,K562,ML−1,MOLT−3,MOLT−4,MOLT−10,CCRF−CEM,TALL−1,Jurkat,CCRT−HSB−2,KE−37,SKW−3,HUT−78,HUT−102,H9,U937,THP−1,HEL,JK−1,CMK,KO−812,MEG−01など)、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)に由来するペプチドであってもよく、また合成ペプチドであってもよい。
本発明のポリペプチドがシグナル配列を有している場合は該ペプチドを効率良く細胞外に分泌させることができる。
【0009】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約85%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、例えば、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチドと実質的に同質の性質を有するペプチドなどが好ましい。
以下、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをヒト型GALP、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをラット型GALP、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをブタ型GALP、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをマウス型GALPと記載することがある。
具体的には、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、例えば、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドなどがあげられる。
以下、配列番号:17で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをヒト型GALP前駆体、配列番号:18で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをラット型GALP前駆体、配列番号:19で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドをマウス型GALP前駆体と記載することがある。
【0010】
実質的に同質の活性としては、例えば、本発明の蛋白質に対する結合活性、本発明の蛋白質を介するシグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、本発明の蛋白質に対する結合活性、本発明の蛋白質を介するシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
これらの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するスクリーニング方法などに従って測定することができる。
【0011】
また、本発明のポリペプチドとしては、(i)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜40個程度、より好ましくは1〜30個程度、なかでも好ましくは1〜20個程度)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜40個程度、より好ましくは1〜30個程度、なかでも好ましくは1〜20個程度)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜40個程度、より好ましくは1〜30個程度、なかでも好ましくは1〜20個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(iv)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するペプチドなども用いられる。
本発明のポリペプチドの具体例としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:17で表わされるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:18で表わされるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:19で表わされるアミノ酸配列を有するペプチドなどがあげられる。
【0012】
本発明のポリペプチドの部分ペプチドとしては、後述の医薬等のスクリーニング方法に用いることのできるものであれば、いかなるものであってもよく、本発明のポリペプチドと実質的に同質の活性を有していればよい。該部分ペプチドのアミノ酸の数は、本発明のポリペプチドの構成アミノ酸配列のうち少なくとも10個以上、好ましくは20個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
ここで、「実質的に同質の活性」とは、上記と同意義を示す。「実質的に同質の活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
該部分ペプチドとしては、(i)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜40個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜20個程度、好ましくは数個(1〜4個))のアミノ酸が欠失し、(ii)上記アミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜40個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜20個程度、好ましくは数個(1〜4個))のアミノ酸が付加し、または(iii)上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜40個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜20個程度、好ましくは数個(1〜4個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。具体的には、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表されるアミノ酸配列中、第9〜21番目のアミノ酸配列を有するペプチドなどが挙げられる。
以下、本発明のポリペプチドとの本発明のポリペプチドの部分ペプチドとをまとめて本発明のポリペプチドと称することがある。
【0013】
本発明の蛋白質は、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞(例えば、MEL,M1,CTLL−2,HT−2,WEHI−3,HL−60,JOSK−1,K562,ML−1,MOLT−3,MOLT−4,MOLT−10,CCRF−CEM,TALL−1,Jurkat,CCRT−HSB−2,KE−37,SKW−3,HUT−78,HUT−102,H9,U937,THP−1,HEL,JK−1,CMK,KO−812,MEG−01など)、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)に由来する蛋白質であってもよく、また合成蛋白質であってもよい。
本発明の蛋白質がシグナル配列を有している場合は該ペプチドまたは蛋白質を効率良く細胞外に分泌させることができる。
【0014】
配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。
以下、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質をヒト型GALR1、配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質をラット型GALR1、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質をヒト型GALR2、配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質をラット型GALR2と記載することがある。
【0015】
実質的に同質の活性としては、例えば、本発明のポリペプチドに対する結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、本発明のポリペプチドに対する結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができる。
【0016】
さらに、本発明の蛋白質としては、(i)配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(iv)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども用いられる。
本発明の蛋白質の具体例としては、例えば、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質、配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質、配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質などがあげられる。
【0017】
本発明の蛋白質の部分ペプチド(以下、本発明の部分ペプチドと略記する場合がある)としては、前記した本発明の蛋白質の部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、本発明の蛋白質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、実質的に同質のリガンド結合活性を有するものなどが用いられる。
具体例として、本発明の蛋白質の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
本発明の部分ペプチドのアミノ酸の数は、前記した本発明の蛋白質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
ここで、「実質的に同質のリガンド結合活性」とは、前記と同意義を示す。「実質的に同質のリガンド結合活性」の測定は自体公知の方法に準じて行なうことができる。
【0018】
また、本発明の部分ペプチドは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
【0019】
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質もしくはその部分ペプチドの塩としては、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0020】
本明細書におけるペプチドおよび蛋白質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明のポリペプチドまたは蛋白質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)であってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のポリペプチドおよび本発明の蛋白質(本発明のポリペプチド・蛋白質と記載することもある)がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチド・蛋白質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のポリペプチド・蛋白質には、上記したペプチド・蛋白質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチド・糖蛋白質などの複合ペプチド・複合蛋白質なども含まれる。
また、本発明の部分ペプチドはC末端が、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)であってもよい。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、前記した本発明の蛋白質と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
【0021】
本発明のポリペプチドもしくは蛋白質またはその塩は、前述したヒトや哺乳動物の細胞または組織から公知のペプチドおよび蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19または配列番号:20で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドまたは蛋白質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチドおよび蛋白質合成法またはこれに準じて製造することもできる。例えば、WO 99/48920号公報、WO 02/066064号公報に記載の方法に準じて製造できる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0022】
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはそれらのアミド体またはそれらの塩の合成には、通常市販のペプチド・蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチド・蛋白質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチド・蛋白質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のペプチド・蛋白質またはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ペプチド・蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0023】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド・蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0024】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0025】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0026】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
ペプチド・蛋白質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチド・蛋白質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したペプチド・蛋白質とを製造し、この両ペプチド・両蛋白質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチド・保護蛋白質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチド・粗蛋白質を得ることができる。この粗ペプチド・粗蛋白質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチド・蛋白質のアミド体を得ることができる。
ペプチド・蛋白質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ペプチド・蛋白質のアミド体と同様にして、所望のペプチド・蛋白質のエステル体を得ることができる。
【0027】
本発明のポリペプチドおよび本発明の蛋白質は、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。また、本発明の蛋白質の部分ペプチドまたはその塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明の蛋白質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のポリペプチドもしくは本発明の蛋白質を構成し得る部分ペプチドまたはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドまたは部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0028】
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotal RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0029】
具体的には、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドと実質的に同質の活性(例、本発明の蛋白質に対する結合活性、本発明の蛋白質を介するシグナル情報伝達作用など)を有するペプチドをコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0030】
具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:9で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:10で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:11で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:20で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:18で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:21で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:19で表されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:22で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。
【0031】
また、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16で表わされる塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有する蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16で表わされる塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
具体的には、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:13で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:6で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:14で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:15で表わされる塩基配列を含有するDNA、配列番号:8で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:16で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。
【0032】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
【0033】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse TranscriptasePolymerase Chain Reactionによって増幅することもできる。
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば(i)配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を含有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または(ii)配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、本発明の蛋白質と実質的に同質の活性(例、本発明のポリペプチドまたは蛋白質に対する結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有する蛋白質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0034】
本発明のポリペプチド、蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAは、公知の方法で標識化されていてもよく、具体的にはアイソトープラベル化されたもの、蛍光標識されたもの(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたものまたは酵素標識されたものなどがあげられる。好ましくはアイソトープラベル化された本発明のポリペプチドが用いられる。
本発明のポリペプチド、蛋白質またはその部分ペプチド(以下、これらポリペプチド等をコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらポリペプチド等を単に本発明のポリペプチドと略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のポリペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて公知のPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のポリペプチドの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0035】
DNAの塩基配列の変換は、公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたポリペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0036】
本発明のポリペプチドの発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のポリペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどがあげられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のポリペプチドのN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
【0037】
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0038】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0039】
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology, 6, 47−55(1988))などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、ポリペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
【0040】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外などに本発明のポリペプチドを生成せしめることができる。
上記培養物から本発明のポリペプチドを分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
【0041】
本発明のポリペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にポリペプチドが分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるポリペプチドの精製は、公知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られるポリペプチドが遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するポリペプチドを、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
【0042】
本発明のポリペプチド・蛋白質に対する抗体(以下、単に本発明の抗体と称する場合がある)は、本発明のポリペプチド(その部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩も含む)・蛋白質(その部分ペプチドまたはその塩も含む)に対する抗体を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のの抗体は、本発明のポリペプチド・蛋白質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0043】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のポリペプチド・蛋白質等は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化した本発明のポリペプチド・蛋白質等と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、本発明のポリペプチド・蛋白質等抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した本発明のポリペプチド・蛋白質等を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0044】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0045】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(本発明のポリペプチド・蛋白質等の抗原)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のポリペプチド・蛋白質等に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0046】
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質をコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチド(以下、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドと記載することもある)としては、本発明のDNAの塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよく、アンチセンスDNAが好ましい。本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、本発明のタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが好適である。
具体的には、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、好ましくは例えば、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:21または配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾りん酸残基に置換されていてもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
本発明に従えば、本発明のポリペプチド・蛋白質の遺伝子の複製又は発現を阻害することのできるアンチセンスポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化したあるいは決定されたペプチドをコードするDNAの塩基配列の塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたヌクレオチド(核酸)は、本発明のポリペプチド・蛋白質の遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成又は機能を阻害することができるか、あるいは本発明のポリペプチド・蛋白質関連RNAとの相互作用を介して本発明のポリペプチド・蛋白質の遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明のポリペプチド・蛋白質関連RNAの選択された配列に相補的な(ポリ)ヌクレオチド、および本発明のポリペプチド・蛋白質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、生体内及び生体外で本発明のポリペプチド・蛋白質の遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療又は診断に有用である。本発明のポリペプチド・蛋白質の遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択でき、本発明のポリペプチド・蛋白質の遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的な(ポリ)ヌクレオチドとの関係、対象物とハイブリダイズすることができる(ポリ)ヌクレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス(ポリ)ヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、プリン又はピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸及び合成配列特異的な核酸ポリマー)又は特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリナグや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド又は非修飾オリゴヌクレオチド、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」及び「核酸」とは、プリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン及びピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチド及び修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0047】
上記の本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸が構成単位である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうして修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピッド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンスポリヌクレオチドの阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいは蛋白質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0048】
本発明のポリペプチドもしくは本発明の蛋白質、それをコードするポリヌクレオチドまたはそれに対する抗体は、免疫疾患または水・電解質代謝異常の予防・治療剤を得るための簡便なスクリーニングに有用である。また、本発明のポリペプチドもしくは本発明の蛋白質、それらをコードするポリヌクレオチド自体も、優れた、免疫疾患または水・電解質代謝異常の予防・治療剤として有用である。特に、本発明の組換え蛋白質の発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることにより、ヒトや哺乳動物に特異的な本発明の蛋白質に対するリガンドの結合性を変化させる化合物(例、アゴニスト、アンタゴニストなど)をスクリーニングすることができる。
これら用途について、以下に具体的に説明する。
(1)本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質が関与する各種疾病の予防・治療剤
本発明のポリペプチドは、本発明の蛋白質を含有する細胞の細胞刺激活性を有する本発明のリガンドである。
従って本発明のポリペプチドもしくは本発明の蛋白質またはそれをコードするDNAに異常があったり、欠損している場合には、例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)となる可能性が高い。従って、本発明のポリペプチドもしくは本発明の蛋白質またはそれをコードするポリヌクレオチド(例、DNA)は、例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤として使用することができる。
【0049】
本発明のポリペプチドもしくは本発明の蛋白質またはそれをコードするポリヌクレオチド(例、DNA)は、例えば、生体内において本発明のポリペプチドまたは蛋白質が減少あるいは欠損している患者がいる場合に、(イ)上記DNAを該患者に投与し、生体内で本発明のポリペプチドまたは蛋白質を発現させることによって、(ロ)細胞に上記DNAを挿入し、本発明のポリペプチドまたは蛋白質を発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、または(ハ)本発明のポリペプチドまたは蛋白質を該患者に投与することなどによって、該患者における本発明のポリペプチドまたは蛋白質の役割を十分に、あるいは正常に発揮させることができる。
上記ポリペプチド(例、DNA)を上記の予防・治療剤として使用する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
本発明のポリペプチドまたは蛋白質を上記の予防・治療剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のポリペプチドまたは蛋白質は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的(好ましくは皮下投与)に使用できる。例えば、本発明のポリペプチドまたは蛋白質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0050】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
上記DNAが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)に対して投与することができる。
本発明のポリペプチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、慢性関節リウマチの治療の目的で本発明のポリペプチドを皮下投与する場合、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき該ポリペプチドを約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0051】
(2)疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のポリペプチドは本発明の蛋白質のリガンドとしての機能などを有するため、本発明のポリペプチドの活性を調節(促進または阻害)する化合物またはその塩は、例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤などとして使用できる。
好ましくは、本発明のポリペプチドの活性を促進する化合物またはその塩が、例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤などとして使用できる。
本発明のポリペプチドの活性を阻害する化合物またはその塩は、例えばリウマチ熱、炎症などの予防・治療剤などとして有用である。
【0052】
本発明のスクリーニング方法または本発明のスクリーニング用キットについて、以下に詳述する。
本発明の蛋白質を用いるか、または組換え型本発明の蛋白質の発現系を構築し、該発現系を用いた本発明のポリペプチドとの結合アッセイ系(リガンド・レセプターアッセイ系)を用いることによって、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩をスクリーニングすることができる。
このような化合物には、本発明の蛋白質を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP産生抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(アゴニスト)と該細胞刺激活性を有しない化合物(アンタゴニスト)などが含まれる。「本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる」とは、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合を阻害する場合と促進する場合の両方を包含するものである。
本発明は、(i)本発明の蛋白質に、本発明のポリペプチドを接触させた場合と(ii)上記した本発明の蛋白質に、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)上記した本発明の蛋白質に本発明のポリペプチドを接触させた場合と(ii)上記した本発明の蛋白質に本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させた場合における、例えば該本発明の蛋白質に対する本発明のポリペプチドの結合量、細胞刺激活性などを測定して比較する。
【0053】
本発明のスクリーニング方法としての具体例としては、例えば、
(a)本発明のポリペプチドを本発明の蛋白質に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質に接触させた場合における、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(b)本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、本発明のポリペプチドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(c)本発明の蛋白質が、本発明の蛋白質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の蛋白質である上記(b)記載のスクリーニング方法、
(d)本発明のポリペプチドが、標識したペプチドである上記(a)〜(c)のスクリーニング方法などのレセプター結合アッセイ系、
(e)本発明のポリペプチドを本発明の蛋白質に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質に接触させた場合における、本発明の蛋白質を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とする、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(f)本発明のポリペプチドを本発明の蛋白質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、本発明の蛋白質を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とする、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(g)本発明の蛋白質が、本発明の蛋白質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明の蛋白質である上記(f)のスクリーニング方法などの細胞刺激アッセイ系などが挙げられる。
【0054】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いる本発明の蛋白質としては、上記の本発明の蛋白質を含有するものであれば何れのものであってもよい。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させた本発明の蛋白質などが適している。
本発明の蛋白質を製造するには、前述の方法などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、本発明の蛋白質を含有する細胞あるいは該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
本発明の蛋白質を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行うことができる。
本発明の蛋白質を含有する細胞としては、本発明の蛋白質を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などがあげられる。
膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などがあげられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した本発明の蛋白質と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
該本発明の蛋白質を含有する細胞や膜画分中の本発明の蛋白質の量は、1細胞当たり10〜10分子であるのが好ましく、10〜10分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0055】
前記のレセプター結合アッセイ系や細胞刺激アッセイ系などのスクリーニング方法を実施するためには、例えば、本発明の蛋白質画分と、本発明のポリペプチド(例、標識した本発明のポリペプチド)などが用いられる。本発明の蛋白質画分としては、天然型の本発明の蛋白質画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型本発明の蛋白質画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性などを示す。標識した本発明のポリペプチドとしては、例えば〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔32P〕、〔33P〕、〔35S〕などで標識されたポリペプチドなどを用いることができる。特に、ボルトン−ハンター試薬を用いて公知の方法で調製した本発明のポリペプチドの標識体を利用することもできる。
具体的には、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行うには、まず本発明の蛋白質を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプターとの結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによる本発明の蛋白質や本発明のポリペプチドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識した本発明のポリペプチドを添加し、同時に10−4〜10−1μMの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のポリペプチドを加えた反応チューブも用意する。反応は0℃〜50℃、望ましくは4℃〜37℃で20分〜24時間、望ましくは30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0056】
また、本発明の蛋白質と本発明のポリペプチドとの結合を測定する方法として、BIAcore(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いることもできる。この方法では、本発明のポリペプチドを装置に添付のプロトコールに従ったアミノカップリング法によってセンサーチップに固定し、本発明の蛋白質を含有する細胞または本発明の蛋白質をコードするDNAを含有する形質変換体から精製した本発明の蛋白質または本発明の蛋白質を含む膜画分、あるいは精製した本発明の蛋白質または本発明の蛋白質を含む膜画分および試験化合物を含むリン酸バッファーまたはトリスバッファーなどの緩衝液をセンサーチップ上を毎分2〜20μlの流量で通過させる。 センサーチップ上の本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質とが結合することによって生じる表面プラズモン共鳴の変化を共存する試験化合物が変化させることを観察することによって本発明の蛋白質と本発明のポリペプチドとの結合を変化させる化合物のスクリーニングを行なうことができる。この方法は、本発明の蛋白質をセンサーチップに固定し、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を含むリン酸バッファーまたはトリスバッファーなどの緩衝液をセンサーチップ上を通過させる方法を用いても同様に測定することができる。試験化合物としては、上記と同様のものなどがあげられる。
【0057】
前記の細胞刺激アッセイ系のスクリーニング方法を実施するためには、本発明の蛋白質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP産生抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、本発明の蛋白質を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
【0058】
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当な本発明の蛋白質を発現した細胞が用いられる。本発明の蛋白質を発現した細胞としては、前述の組換え型本発明の蛋白質発現細胞株などが望ましい。形質転換体である本発明の蛋白質発現細胞は安定発現株でも一過性発現株でも構わない。また、動物細胞の種類は上記と同様のものが用いられる。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられる。
【0059】
上記細胞刺激アッセイ系のスクリーニング方法について、さらに具体的に以下〔1〕〜〔12〕に記載する。
〔1〕受容体発現細胞が受容体アゴニストによって刺激されると細胞内のG蛋白質が活性化されてGTPが結合する。この現象は受容体発現細胞の膜画分においても観察される。通常、GTPは加水分解されてGDPへと変化するが、このとき反応液中にGTPγSを添加しておくと、GTPγSはGTPと同様にGタンパクに結合するが、加水分解されずにGタンパクを含む細胞膜に結合した状態が維持される。標識したGTPγSを用いると細胞膜に残存した標識されたGTPγSを測定することにより、受容体アゴニストの受容体発現細胞刺激活性を測定することができる。
この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
この方法は、本発明の蛋白質を含む膜画分を用いて行う。本測定法において本発明の蛋白質膜画分へのGTPγS結合促進活性を示す物質はアゴニストである。
具体的には、標識したGTPγSの存在下、本発明のポリペプチドを本発明の蛋白質細胞膜画分に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質細胞膜画分に接触させた場合における、本発明の蛋白質細胞膜画分へのGTPγS結合促進活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のポリペプチドによる本発明の蛋白質細胞膜画分へのGTPγS結合促進活性を抑制する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質細胞膜画分に接触させ、本発明の蛋白質細胞膜画分へのGTPγS結合促進活性を測定することにより、アゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0060】
スクリーニング法の一例についてより具体的に以下に述べる。
公知の方法に準じて調製した本発明の蛋白質を含む細胞膜画分を、膜希釈緩衝液(50mM Tris、5mM MgCl、150mM NaCl、1μM GDP、0.1% BSA;pH7.4)で希釈する。希釈率は、受容体の発現量により異なる。これをFalcon2053に0.2mlずつ分注し、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を加え、さらに終濃度200pMとなるように[35S]GTPγSを加える。25℃で1時間保温した後、氷冷した洗浄用緩衝液(50mM Tris,5mM MgCl,150mM NaCl,0.1% BSA,0.05% CHAPS;pH7.4)1.5mlを加えて、ガラス繊維ろ紙GF/Fでろ過する。65℃、30分保温して乾燥後、液体シンチレーションカウンターでろ紙上に残った膜画分に結合した[35S]GTPγSの放射活性を測定する。本発明のポリペプチドのみを加えた実験区の放射活性を100%、本発明のポリペプチドを加えなかった実験区の放射活性を0%とし、本発明のポリペプチドによるGTPγS結合促進活性に対する試験化合物の影響を算出する。GTPγS結合促進活性が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0061】
〔2〕本発明の蛋白質発現細胞は、本発明のポリペプチドの刺激により、細胞内cAMPの産生が抑制される。この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、細胞内cAMP量を増加させる物質の存在下、本発明のポリペプチドを本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、該細胞の細胞内cAMPの産生抑制活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞内cAMP量を増加させる物質としては、例えば、フォルスコリン、カルシトニンなどが用いられる。
本発明の蛋白質発現細胞内のcAMP産生量は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウシなどを免疫して得られた抗cAMP抗体と〔125I〕標識cAMP(ともに市販品)を使用することによるRIA系、または抗cAMP抗体と標識cAMPとを組み合わせたEIA系で測定することができる。また、抗cAMP抗体を、protein Aまたは抗cAMP抗体産生に用いた動物のIgGなどに対する抗体などを使用して固定したシンチラントを含むビーズと〔125I〕標識cAMPとを使用するSPA(Scintillation Proximity Assay)法による定量も可能である(アマシャムファルマシアバイオテク社製のキットを使用する)。
本方法において、本発明のポリペプチドによる本発明の蛋白質発現細胞のcAMP産生抑制活性を阻害する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させて、cAMP産生抑制活性を調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうことができる。
【0062】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞(例、CHO細胞などの動物細胞)を24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3−イソブチル−メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後、0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のポリペプチドまたは1μMの本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加した2μM フォルスコリンを含む0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で24分間反応させる。100μlの20%過塩素酸を加えて反応を停止させ、その後氷上で1時間置くことにより細胞内cAMPを抽出する。抽出液中のcAMP量を、cAMP EIAキット(アマシャムファルマシアバイオテク)を用いて測定する。フォルスコリンの刺激によって産生されたcAMP量を100%とし、1μMの本発明のポリペプチドの添加によって抑制されたcAMP量を0%として、本発明のポリペプチドによるcAMP産生抑制活性に対する試験化合物の影響を算出する。本発明のポリペプチドの活性を阻害して、cAMP産生活性が例えば50%以上になる試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
また、本発明のポリペプチドの刺激により、細胞内cAMP量が増加する性質を示す本発明の蛋白質発現細胞を使用する場合、本発明のポリペプチドを本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、該細胞の細胞内cAMPの産生促進活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
本方法において、本発明のポリペプチドによる本発明の蛋白質発現細胞のcAMP産生促進活性を阻害する活性を示す試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させてcAMP産生促進活性を調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうことができる。
cAMP産生促進活性は、上記のスクリーニング法においてフォルスコリンを添加せずに本発明の蛋白質発現細胞(例、CHO細胞などの動物細胞)に本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加して産生されたcAMPを上記の方法で定量して測定する。
【0063】
〔3〕CRE−レポーター遺伝子ベクターを用いて、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
CRE(cAMP response element)を含むDNAを、ベクターのレポーター遺伝子上流に挿入し、CRE−レポーター遺伝子ベクターを得る。CRE−レポーター遺伝子ベクターを導入した本発明の蛋白質発現細胞において、cAMPの上昇を伴う刺激は、CREを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(タンパク質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定することにより、CRE−レポーター遺伝子ベクター導入細胞内のcAMP量の変動を検出することができる。
具体的には、細胞内cAMP量を増加させる物質の存在下、本発明のポリペプチドを、CRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、CRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞内cAMP量を増加させる物質としては、例えば、フォルスコリン、カルシトニンなどが用いられる。
ベクターとしては、例えば、ピッカジーン ベイシックベクター、ピッカジーン エンハンサーベクター(東洋インキ製造(株))などが用いられる。CREを含むDNAを、上記ベクターのレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、CRE−レポーター遺伝子ベクターとする。
本方法において、本発明のポリペプチドによるレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性抑制を回復させる試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させて、フォルスコリン刺激によって上昇した発光量の本発明のポリペプチドと同様な抑制を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0064】
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
CRE−レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を導入した本発明の蛋白質発現細胞を、24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.2mM 3−イソブチル−メチルキサンチン、0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄する(以下、反応用バッファーと略記する)。その後0.5mlの反応用バッファーを加えて30分間培養器で保温する。反応用バッファーを除き、新たに0.25mlの反応用バッファーを細胞に加えた後、1μMの本発明のポリペプチドまたは1μMの本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加した2μM フォルスコリンを含む0.25mlの反応用バッファーを、細胞に加え、37℃で24分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のポリペプチド単独を添加した場合と、1μMの本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加した場合のルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
本発明のポリペプチドは、フォルスコリン刺激に基づくルシフェラーゼによる発光量の増加を抑制する。該抑制を回復させる化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0065】
レポーター遺伝子として、例えば、アルカリフォスファターゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase)、β−ガラクトシダーゼなどの遺伝子を用いてもよい。これらのレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性は、公知の方法に従い、または市販の測定キットを用いて測定する。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば和光純薬製Lumi−Phos 530を用いて、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば和光純薬製FAST CAT chrolamphenicol Acetyltransferase Assay KiTを用いて、β−ガラクトシダーゼ活性は、例えば和光純薬製Aurora Gal−XEを用いて測定する。
【0066】
〔4〕本発明の蛋白質発現細胞は、本発明のポリペプチドの刺激により、アラキドン酸代謝物を細胞外に放出する。この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
あらかじめ、標識したアラキドン酸を、本発明の蛋白質発現細胞に取り込ませておくことによって、アラキドン酸代謝物放出活性を、細胞外に放出された標識されたアラキドン酸代謝物を測定することによって測定することができる。
具体的には、本発明のポリペプチドを、標識したアラキドン酸を含有する本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、標識したアラキドン酸を含有する本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、アラキドン酸代謝物の放出活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のポリペプチドによるアラキドン酸代謝物放出活性を阻害する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
また、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させ、本発明の蛋白質発現細胞のアラキドン酸代謝物放出活性を公知の方法で調べることによりアゴニスト活性を示す化合物のスクリーニングを行なうこともできる。
【0067】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞を24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、24時間培養後、[H]アラキドン酸を0.25μCi/wellとなるよう添加し、16時間後、細胞を0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)(以下、反応用バッファーと略記する)で洗浄する。終濃度10μMの本発明のポリペプチドまたは終濃度10μMの本発明のポリペプチドおよび試験化合物を含む反応用バッファー 500μlを、各wellに添加する。37℃で60分間インキュベートした後、反応液400μlをシンチレーターに加え、反応液中に遊離した[H]アラキドン酸代謝物の量をシンチレーションカウンターにより測定する。
反応用バッファー 500μlのみを添加した場合(本発明のポリペプチド非添加・試験化合物非添加)の遊離[H]アラキドン酸代謝物の量を0%、10μMの本発明のポリペプチドを含む反応用バッファーを添加した場合(試験化合物非添加)の遊離[H]アラキドン酸代謝物の量を100%として、試験化合物を添加した場合の遊離[H]アラキドン酸代謝物の量を算出する。
アラキドン酸代謝物放出活性が、例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0068】
〔5〕本発明の蛋白質発現細胞は、本発明のポリペプチドの刺激により、細胞内のCa濃度が上昇する。この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、細胞内カルシウム濃度上昇活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。測定は公知の方法に従って行う。
本方法において、本発明のポリペプチドによる細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみの添加による蛍光強度の上昇を測定することによってアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞を、滅菌した顕微鏡用カバーグラス上に播き、2日後、培養液を、4mM Fura−2 AM(同仁化学研究所)を縣濁したHBSSに置換し、室温で2時間30分おく。HBSSで洗浄した後、キュベットにカバーグラスをセットし、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加し、励起波長340nmおよび380nmでの、505nmの蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
また、FLIPR(モレキュラーデバイス社製)を使って行ってもよい。本発明の蛋白質発現細胞縣濁液にFluo−3 AM(同仁化学研究所製)を添加し、細胞に取り込ませた後、上清を遠心により数度洗浄後、96穴プレートに細胞を播く。FLIPR装置にセットし、Fura−2の場合と同様に、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加し、蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
さらに、本発明の蛋白質発現細胞に、細胞内Caイオンの上昇によって発光するようなタンパク質の遺伝子(例、aequorinなど)を共発現させておき、細胞内Caイオン濃度の上昇によって、該遺伝子タンパク質(例、aequorinなど)がCa結合型となり発光することを利用して、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることもできる。
細胞内Caイオンの上昇によって発光するようなタンパク質の遺伝子を共発現させた本発明の蛋白質発現細胞を、96穴プレートに播き、上記と同様に、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加し、蛍光強度の比の上昇を蛍光測定器で測定し、比較する。
本発明のポリペプチドによる蛍光強度の上昇を、抑制する試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0069】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
対照としてETA(エンドセリンAレセプター)発現CHO細胞24番クローン(以後ETA24細胞と略称する。Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 279巻、675−685頁、1996年参照)を用い、アッセイ用サンプルについて、本発明の蛋白質発現細胞およびETA24細胞における細胞内Caイオン濃度上昇活性の測定をFLIPR(モレキュラーデバイス社製)を用いて行う。本発明の蛋白質発現細胞、ETA24細胞共に10%透析処理済ウシ胎児血清(以後d FBSとする)を加えたDMEMで継代培養しているものを用いる。本発明の蛋白質発現細胞、ETA24細胞をそれぞれ15×10cells/mlとなるように培地(10% d FBS−DMEM)に懸濁し、FLIPR用96穴プレート(Black plate clear bottom、Coster社)に分注器を用いて各ウェルに200 μlずつ植え込み(3.0×10cells/200μl/ウェル)、5% COインキュベーター中にて37℃で一晩培養した後用いる(以後、細胞プレートとする)。H/HBSS(ニッスイハンクス2(日水製薬株式会社) 9.8g、炭酸水素ナトリウム 0.35g、HEPES 4.77 g 、水酸化ナトリウム溶液で pH7.4に合わせた後、フィルター滅菌処理)20 ml、250mM Probenecid  200 μl、ウシ胎児血清(FBS) 200 μlを混合する。また、Fluo3−AM(同仁化学研究所) 2バイアル(50 μg)をジメチルスルフォキサイド 40 μl、20% Pluronic acid(Molecular Probes社) 40 μlに溶解し、これを上記H/HBSS−Probenecid−FBS に加え、混和後、8連ピペットを用いて培養液を除いた細胞プレートに各ウェル 100 μlずつ分注し、5% COインキュベーター中にて37℃で1時間インキュベートする(色素ローディング)。アッセイ用サンプル(各フラクション)に、2.5 mM Probenecid、0.1% CHAPSを含むH/HBSS 150 μlを加えて希釈し、FLIPR用96穴プレート(V−Bottomプレート、Coster社)へ移す(以後、サンプルプレートとする)。細胞プレートの色素ローディング終了後、H/HBSSに2.5 mM Probenecidを加えた洗浄バッファーでプレートウォッシャー(Molecular Devices社)を用いて細胞プレートを4回洗浄し、洗浄後100 μlの洗浄バッファーを残す。この細胞プレートとサンプルプレートをFLIPRにセットしアッセイを行う(FLIPRにより、サンプルプレートから50 μlのサンプルが細胞プレートへと移される)。
【0070】
〔6〕受容体を発現する細胞に、受容体アゴニストを添加すると、細胞内イノシトール三リン酸濃度は上昇する。本発明のポリペプチドの、本発明の蛋白質発現細胞における細胞内イノシトール三リン酸産生活性を利用することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、標識したイノシトールの存在下、本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、イノシトール三リン酸産生活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。測定は公知の方法に従って行う。
本方法において、イノシトール三リン酸産生活性を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させ、イノシトール三リン酸産生上昇を測定することによってアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0071】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞を24穴プレートに播き、1日間培養する。その後、myo−[2−H]inositol(2.5μCi/well)を添加した培地で1日間培養し、細胞を放射活性を有するイノシトールを無添加の培地でよく洗浄する。本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加後、10%過塩素酸を加え、反応を止める。1.5M 水酸化カリウムおよび60mM HEPES溶液で中和し、0.5mlのAG1x8樹脂(Bio−Rad)を詰めたカラムに通し、5mM 四ホウ酸ナトリウム(Na)および60mM ギ酸アンモニウムで洗浄した後、1M ギ酸アンモニウムおよび0.1M ギ酸で溶出した放射活性を、液体シンチレーションカウンターで測定する。本発明のポリペプチドを添加しない場合の放射活性を0%、本発明のポリペプチドを添加した場合の放射活性を100%とし、試験化合物の、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質の結合に対する影響を算出する。
イノシトール三リン酸産生活性が、例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0072】
〔7〕TRE−レポーター遺伝子ベクターを用いて、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
TRE(TPA response element)を含むDNAを、ベクターのレポーター遺伝子上流に挿入し、TRE−レポーター遺伝子ベクターを得る。TRE−レポーター遺伝子ベクターを導入した本発明の蛋白質発現細胞において、細胞内カルシウム濃度の上昇を伴う刺激は、TREを介したレポーター遺伝子発現と、それに引き続くレポーター遺伝子の遺伝子産物(タンパク質)の産生を誘導する。つまり、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定することにより、TRE−レポーター遺伝子ベクター導入細胞内のカルシウム量の変動を検出することができる。
具体的には、本発明のポリペプチドを、TRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、TRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、レポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
ベクターとしては、例えば、ピッカジーン ベイシックベクター、ピッカジーン エンハンサーベクター(東洋インキ製造(株))などが用いられる。TREを含むDNAを、上記ベクターのレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ遺伝子上流のマルチクローニングサイトに挿入し、TRE−レポーター遺伝子ベクターとする。
本方法において、本発明のポリペプチドによるレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみをTRE−レポーター遺伝子ベクター導入本発明の蛋白質発現細胞に接触させ、本発明のポリペプチドと同様な発光量の増加を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0073】
レポーター遺伝子として、ルシフェラーゼを利用する例を用いて、このスクリーニング方法の具体例を以下に述べる。
TRE−レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を導入した本発明の蛋白質発現細胞を、24穴プレートに5x10cell/wellで播種し、48時間培養する。細胞を0.05% BSAおよび20mM HEPESを含むハンクスバッファー(pH7.4)で洗浄した後、10nMの本発明のポリペプチドまたは10nMの本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加し、37℃で60分間反応させる。細胞をピッカジーン用細胞溶解剤(東洋インキ製造(株))で溶かし、溶解液に発光基質(東洋インキ製造(株))を添加する。ルシフェラーゼによる発光は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンターまたはトップカウンターにより測定する。本発明のポリペプチドを添加した場合と、10nMの本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加した場合のルシフェラーゼによる発光量を測定して、比較する。
本発明のポリペプチドによる細胞内カルシウムの上昇によって、ルシフェラーゼによる発光量が増加する。この増加を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0074】
レポーター遺伝子として、例えば、アルカリフォスファターゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase)、β−ガラクトシダーゼなどの遺伝子を用いてもよい。これらのレポーター遺伝子タンパク質の酵素活性は、公知の方法に従い、または市販の測定キットを用いて測定する。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば和光純薬製Lumi−Phos 530を用いて、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば和光純薬製FAST CAT chrolamphenicol Acetyltransferase Assay KiTを用いて、β−ガラクトシダーゼ活性は、例えば和光純薬製Aurora Gal−XEを用いて測定する。
【0075】
〔8〕本発明の蛋白質発現細胞は、本発明のポリペプチドの刺激により、MAPキナーゼが活性化され、増殖する。この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、細胞増殖を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本発明の蛋白質発現細胞の増殖は、例えば、MAPキナーゼ活性、チミジン取り込み活性、細胞数などを測定すればよい。
具体例としては、MAPキナーゼ活性については、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質発現細胞に添加した後、細胞溶解液から抗MAPキナーゼ抗体を用いた免疫沈降によりMAPキナーゼ分画を得た後、公知の方法、例えば和光純薬製MAP Kinase Assay Kitおよびγ−[32P]−ATPを使用してMAPキナーゼ活性を測定し、比較する。
チミジン取り込み活性については、本発明の蛋白質発現細胞を24穴プレートに播種し、培養し、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加した後、放射活性により標識したチミジン(例、[methyl−H]−チミジンなど)を加え、その後、細胞を溶解し、細胞内に取り込まれたチミジンの放射活性を、液体シンチレーションカウンターで計数することにより、チミジン取り込み活性を測定し、比較する。
細胞数の測定については、本発明の蛋白質発現細胞を24穴プレートに播種し、培養し、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を添加した後、MTT(3−(4,5−dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium bromide)を添加する。細胞内に取り込まれてMTTが変化したMTTホルマザンを、塩酸にて酸性としたイソプロパノール水溶液で細胞を溶解した後、570nmの吸収によって測定し、比較する。
本方法において、本発明の蛋白質発現細胞の増殖を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させ、本発明のポリペプチドと同様な細胞増殖活性を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0076】
チミジン取り込み活性を利用するスクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞を24穴プレートに5000個/ウェル播き、1日間培養する。次に血清を含まない培地で2日間培養し、細胞を飢餓状態にする。本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、細胞に添加して24時間培養した後、[methyl−H]−チミジンをウェル当たり0.015MBq添加し、6時間培養する。細胞をPBSで洗った後、メタノールを添加して10分間放置する。次に5%トリクロロ酢酸を添加して15分間放置後、固定された細胞を蒸留水で4回洗う。0.3N水酸化ナトリウム溶液で細胞を溶解し、溶解液中の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定する。
本発明のポリペプチドを添加した場合の放射活性の増加を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0077】
〔9〕本発明の蛋白質発現細胞は、本発明のポリペプチドの刺激により、カリウムチャネルが活性化し、細胞内にあるKイオンが、細胞外に流出する。この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
Kイオンと同族元素であるRbイオン(ルビジウムイオン)は、Kイオンと区別無く、カリウムチャネルを通って細胞外に流出する。よって、本発明の蛋白質発現細胞に、放射活性同位体であるRb([86Rb])を取り込ませておいた後、本発明のポリペプチドの刺激によって流出する86Rbの流れ(流出活性)を測定することにより、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定する。
具体的には、86Rbの存在下、本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、86Rbの流出活性を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、本発明のポリペプチド刺激による86Rbの流出活性の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させ、本発明のポリペプチドと同様な86Rbの流出活性の上昇を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0078】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞を24穴プレートに播き、2日間培養する。その後、1mCi/mlの86RbClを含む培地中で2時間保温する。細胞を培地でよく洗浄し、外液中の86RbClを完全に除く。本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を細胞に添加し、30分後外液を回収し、γカウンターで放射活性を測定し、比較する。
本発明のポリペプチド刺激による86Rbの流出活性の上昇を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0079】
〔10〕本発明の蛋白質発現細胞が本発明のポリペプチドに反応し、細胞外のpHが変化する。この反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。具体的には、本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質発現細胞に接触させた場合における、細胞外のpH変化を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
細胞外pH変化は、例えば、Cytosensor装置(モレキュラーデバイス社)を使用して測定する。
本方法において、本発明のポリペプチドによる細胞外pH変化を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質発現細胞に接触させ、本発明のポリペプチドと同様な細胞外pH変化を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0080】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
本発明の蛋白質発現細胞をCytosensor装置用のカプセル内で終夜培養し、装置のチャンバーにセットして細胞外pHが安定するまで約2時間、0.1% BSAを含むRPMI1640培地(モレキュラーデバイス社製)を灌流させる。pHが安定した後、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を含む培地を細胞上に灌流させる。灌流によって生じた培地のpH変化を測定し、比較する。
本発明のポリペプチドによる細胞外pH変化を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0081】
〔11〕酵母(Saccharomyces cerevisiae)のhaploidα−mating Type (MATα) の性フェロモン受容体STe2は、Gタンパク質Gpa1と共役しており、性フェロモンα−mating factorに応答してMAPキナーゼを活性化し、これに引き続き、Far1(cell−cycle arrest)および転写活性化因子Ste12が活性化される。Ste12は、種々のタンパク質(例えば、接合に関与するFUS1)の発現を誘導する。一方、制御因子Sst2は上記の過程に抑制的に機能する。この系において、受容体遺伝子を導入した酵母を作製し、受容体アゴニストの刺激により酵母細胞内のシグナル伝達系を活性化し、その結果生じる増殖などを指標として用いる、受容体アゴニストと受容体との反応の測定系の試みが行なわれている(Trends in Biotechnology, 15巻, 487−494頁, 1997年)。上記の受容体遺伝子導入酵母の系を利用して、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
【0082】
具体例を以下に示す。
MATα酵母のSte2およびGpa1をコードする遺伝子を除去し、代わりに、本発明の蛋白質遺伝子およびGpa1−Gai2融合タンパク質をコードする遺伝子を導入する。Farをコードする遺伝子を除去してcell−cycle arrestが生じないようにし、また、Sstをコードする遺伝子を除去して本発明のポリペプチドに対する応答の感度を向上させておく。さらに、FUS1にヒスチジン生合成遺伝子HIS3を結合したFUS1−HIS3遺伝子を導入する。この遺伝子組換え操作は、例えば、Molecular and Cellular Biology, 15巻, 6188−6195頁, 1995年に記載の方法において、ソマトスタチン受容体タイプ2(SSTR2)遺伝子を、本発明の蛋白質に置き換えて実施することができる。
このように構築された形質変換酵母は、本発明のポリペプチドに高感度で反応し、その結果、MAPキナーゼの活性化が起き、ヒスチジン生合成酵素が合成されるようになり、ヒスチジン欠乏培地で生育可能になる。
従って、上記の本発明の蛋白質発現酵母(Ste2遺伝子およびGpa1遺伝子が除去され、本発明の蛋白質遺伝子およびGpa1−Gai2融合タンパク質コード遺伝子が導入され、Far遺伝子およびSst遺伝子が除去され、FUS1−HIS3遺伝子が導入されたMATα酵母)を、ヒスチジン欠乏培地で培養し、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させ、該酵母の生育を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
本方法において、該酵母の生育を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを上記の本発明の蛋白質発現酵母に接触させ、本発明のポリペプチドと同様な酵母の生育を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0083】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
上記の本発明の蛋白質発現酵母を完全合成培地の液体培地で終夜培養し、その後、ヒスチジンを除去した溶解寒天培地に、2x10cell/mlの濃度になるように加える。ついで、9x9cmの角形シャーレに播く。寒天が固化した後、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物をしみこませた滅菌濾紙を寒天表面におき、30℃で3日間培養する。試験化合物の影響は、濾紙の周囲の酵母の生育を、本発明のポリペプチドのみをしみこませた滅菌濾紙を用いた場合と比較する。また、あらかじめ、ヒスチジンを除去した寒天培地に本発明のポリペプチドを添加しておき、滅菌濾紙に試験化合物のみをしみこませて酵母を培養し、シャーレ全面での酵母の生育が濾紙の周囲で影響を受けることを観察してもよい。
酵母の生育を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0084】
〔12〕本発明の蛋白質遺伝子RNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入し、本発明のポリペプチドによって刺激すると細胞カルシウム濃度が上昇して、calcium−activated chloride currentが生じる。これは、膜電位の変化としてとらえることができる(Kイオン濃度勾配に変化がある場合も同様)。本発明のポリペプチドによって生じる本発明の蛋白質導入アフリカツメガエル卵母細胞における上記反応を利用して、本発明のポリペプチドの本発明の蛋白質発現細胞に対する刺激活性を測定することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のポリペプチドを、本発明の蛋白質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を、本発明の蛋白質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させた場合における、細胞膜電位の変化を測定し、比較することにより、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする。
本方法において、細胞膜電位変化を抑制する試験化合物を、拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
一方、試験化合物のみを本発明の蛋白質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞に接触させ、本発明のポリペプチドと同様な細胞膜電位変化を測定することによりアゴニストのスクリーニングを行なうこともできる。
【0085】
スクリーニング法の一具体例を以下に述べる。
氷冷して動けなくなった雌のアフリカツメガエルから取り出した、卵母細胞塊を、MBS液(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.41mM CaCl, 0.33mM Ca(NO, 0.82mM MgSO, 2.4mM NaHCO, 10mM HEPES; pH7.4)に溶かしたコラーゲナーゼ(0.5mg/ml)で卵塊がほぐれるまで19℃、1〜6時間、150rpmで処理する。外液をMBS液に置換することで3度洗浄し、マイクロマニピュレーターで本発明の蛋白質遺伝子poly A付加cRNA(50ng/50nl)を卵母細胞にマイクロインジェクションする。
本発明の蛋白質遺伝子mRNAは、組織や細胞から調製してもよく、プラスミドからin vitroで転写してもよい。本発明の蛋白質遺伝子mRNAをMBS液中で20℃で3日培養し、これをRinger液を流しているvoltage clamp装置のくぼみに置き、電位固定用ガラス微小電極および電位測定用ガラス微小電極を細胞内に刺入し、(−)極は細胞外に置く。電位が安定したら、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドおよび試験化合物を含むRinger液を流して電位変化を記録する。試験化合物の影響は、本発明の蛋白質遺伝子RNA導入アフリカツメガエル卵母細胞の細胞膜電位変化を、本発明のポリペプチドのみ含むRinger液を流した場合と比較することによって測定することができる。
細胞膜電位変化を抑制する化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
上記の系において、電位の変化量を増大させると、測定しやすくなるため、各種のGタンパク質遺伝子のpoly A付加RNAを導入してもよい。また、カルシウム存在下で発光を生じるようなタンパク質(例、aequorinなど)の遺伝子のpoly A付加RNAを共インジェクションすることにより、膜電位変化ではなく発光量を測定することもできる。
合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられる。
【0086】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明の蛋白質、本発明の蛋白質を含有する細胞または本発明の蛋白質を含有する細胞の膜画分および本発明のペプチドを含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものがあげられる。
1.スクリーニング用試薬
(a)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
(b)本発明の蛋白質標品
本発明の蛋白質を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×10個/穴で継代し、37℃、5%CO、95%airで2日間培養したもの。
(c)標識リガンド
H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識された本発明のポリペプチドを適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(d)リガンド標準液
本発明のポリペプチドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
2.測定法
(a)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明の蛋白質を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(b)10−3〜10−10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識された本発明のポリペプチドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10−3Mの本発明のポリペプチドを5μl加えておく。
(c)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識された本発明のポリペプチドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(d)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式〔数1〕で求める。
〔数1〕
PMB=[(B−NSB)/(B−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B  :検体を加えた時の値
NSB:Non−specific Binding(非特異的結合量)
  :最大結合量
【0087】
上記スクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合を変化させる(結合を阻害あるいは促進する)化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)であり、具体的には本発明の蛋白質を介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(いわゆる本発明の蛋白質アゴニスト)、あるいは該刺激活性を有しない化合物(いわゆる本発明の蛋白質アンタゴニスト)である。該化合物としては、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記の化合物が、本発明の蛋白質のアゴニストであるか、アンタゴニストであるかの具体的な評価方法は、例えば以下の(A)または(B)に従えばよい。
(A)前記のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、本発明のペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記した本発明の蛋白質を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明の蛋白質のアゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩は本発明の蛋白質のアンタゴニストである。
(B)(a)試験化合物を本発明の蛋白質を含有する細胞に接触させ、上記本発明の蛋白質を介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明の蛋白質のアゴニストである。
(b) 本発明の蛋白質を活性化する化合物を本発明の蛋白質を含有する細胞に接触させた場合と、本発明の蛋白質を活性化する化合物および試験化合物を本発明の蛋白質を含有する細胞に接触させた場合における、本発明の蛋白質を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。本発明の蛋白質を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩は本発明の蛋白質のアンタゴニストである。
該本発明の蛋白質のアゴニストは、本発明の蛋白質に対する本発明のペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のペプチドと同様に安全で低毒性な医薬として有用である。
上記本発明の蛋白質アゴニストは、本発明の蛋白質に対する本発明のポリペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のポリペプチドと同様に、例えば免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤として有用であり、安全で低毒性な医薬として使用することができる。
上記本発明の蛋白質アンタゴニストは、本発明の蛋白質に対する本発明のポリペプチドが有する活性を抑制することができるので、リウマチ熱、炎症などの予防・治療剤などとして有用であり、安全で低毒性な医薬として使用することができる。
【0088】
上記化合物の塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記した本発明のポリペプチドを含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、慢性関節リウマチの治療の目的で本発明のポリペプチドの活性を促進する化合物を皮下投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0089】
(3)本発明のポリペプチドの定量
本発明の抗体は、本発明のポリペプチド・蛋白質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のポリペプチド・蛋白質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のポリペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のポリペプチドの割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明のポリペプチドのN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のポリペプチドのC端部に反応する抗体であることが望ましい。
また、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を用いて本発明のポリペプチドの定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの定量法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、ポリペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常ポリペプチドあるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のポリペプチド量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0090】
本発明のサンドイッチ法による本発明のポリペプチドの測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のポリペプチドの結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のポリペプチドのC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のポリペプチドの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のポリペプチド・蛋白質を感度良く定量することができる。
【0091】
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のポリペプチドの濃度を定量することによって、本発明のポリペプチドの濃度の減少が検出された場合、例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明のポリペプチドの濃度の増加が検出された場合には、例えば、リウマチ熱、炎症などの疾病である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のポリペプチドを検出するために使用することができる。また、本発明のポリペプチドを精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のポリペプチドの検出、被検細胞内における本発明のポリペプチドの挙動の分析などのために使用することができる。
【0092】
(4)遺伝子診断薬
本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)は、例えば、プローブとして使用することにより、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)における本発明のポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断薬として有用である。
本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of theNational Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現低下が検出された場合は、 例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などである可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現過多が検出された場合は、例えば、体重減少などである可能性が高いまたは将来体重減少する可能性が高いと診断することができる。
【0093】
(5)アンチセンスポリヌクレオチドを含有する医薬
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド(好ましくはアンチセンスDNA)は、例えば、リウマチ熱、炎症などの予防・治療剤などとして使用することができる。
例えば、該アンチセンスポリヌクレオチドを用いる場合、該アンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0094】
(6)本発明の抗体を含有する医薬
本発明の抗体は、例えば、リウマチ熱、炎症などの予防・治療剤などとして使用することができる。
本発明の抗体を含有する上記疾患の予防・治療剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、炎症の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
【0095】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0096】
(7)DNA転移動物
外来性の本発明のポリペプチドをコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物も、体重増加抑制剤、体重減少剤、脂肪量増加抑制剤、摂食抑制剤などをスクリーニングするために用いられる。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F系統,BDF系統,B6D2F系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のポリペプチドを発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のポリペプチドの機能を抑制するポリペプチドを発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
本発明のポリペプチドの発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、(a)ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、(b)各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存蛋白質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎蛋白質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0097】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のポリペプチドの翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なポリペプチドの翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のポリペプチドの機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能亢進症や、本発明のポリペプチドが関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のポリペプチドの増加症状を有することから、本発明のポリペプチドに関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0098】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症における本発明の異常ポリペプチドによる正常ポリペプチドの機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のポリペプチドの増加症状を有することから、本発明のポリペプチドまたはの機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
(a)組織培養のための細胞源としての使用、
(b)本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたポリペプチド組織を分析することによる、本発明のポリペプチドにより特異的に発現あるいは活性化するポリペプチドとの関連性についての解析、
(c)DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
(d)上記(c)記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
(e)本発明の変異ポリペプチドを単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症などを含む、本発明のポリペプチドに関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のポリペプチドに関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどの蛋白質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のポリペプチド産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のポリペプチドおよびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症を含む、本発明のポリペプチドに関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のポリペプチドが関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0099】
(8)ノックアウト動物
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物も、例えば免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤をスクリーニングするために用いられる。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のポリペプチドの活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のポリペプチドの発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0100】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDFマウス(C57BL/6とDBA/2とのF)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDFマウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0101】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約10個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質の細胞生物学的検討において有用である。
【0102】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体であり、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質のホモ発現不全個体を得ることができる。
【0103】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0104】
(8a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、免疫疾患(例、慢性関節リウマチなど)に対して予防・治療効果を有する化合物をスクリーニングする場合、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の関節や軟骨などを経時的に観察し、上記疾患の症状を観察する。
【0105】
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の血糖値が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上低下した場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のポリペプチドの欠損や損傷などによって引き起こされる疾患に対して治療・予防効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性な予防・治療剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のポリペプチドを含有する医薬と同様にして製造することができる。このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を慢性関節リウマチ患者に皮下投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)の慢性関節リウマチ患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0106】
(8b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、本発明のポリペプチドをコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のポリペプチドの発現する組織で、本発明のポリペプチドの代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のポリペプチドの動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のポリペプチド欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0107】
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドの発現を促進し、該ポリペプチドの機能を促進することができるので、例えば、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤などとして使用することができる。
また、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドの発現を阻害し、該ポリペプチドの機能を阻害することができるので、例えばリウマチ熱、炎症などの予防・治療剤などとして使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0108】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のポリペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の慢性関節リウマチ患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)の慢性関節リウマチ患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のポリペプチドのプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパク質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのポリペプチドを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、本発明のポリペプチドそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0109】
(9)本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドを用いる血管新生阻害薬のスクリーニング方法
具体的には、例えば、(a)本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質を産生する能力を有する細胞を培養した場合と(iv)本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質を産生する能力を有する細胞と試験化合物の混合物を培養した場合との比較を行い、血管新生阻害剤をスクリーニングする。
上記スクリーニング方法においては、例えば、(a)と(b)の場合における、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質の遺伝子の発現量(具体的には、蛋白質量または該蛋白質をコードするmRNA量)を測定して、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
本スクリーニング方法を実施するには、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質を産生する能力を有する細胞をスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどが用いられる。
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質を産生する能力を有する細胞としては、例えば、前述した本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質をコードするDNAを含有するベクターで形質転換された宿主(形質転換体)が用いられる。宿主としては、例えば、CHO細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。該スクリーニングには、例えば、前述の方法で培養することによって、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質を発現させた形質転換体が好ましく用いられる。
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質の蛋白量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記蛋白質を、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質の遺伝子発現量は、自体公知の方法、例えば、ノーザンブロッティングやReverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)、リアルタイムPCR解析システム(ABI社製、TaqMan polymerase chain reaction)などの方法あるいはそれに準じる方法にしたがって測定することができる。
例えば、上記(b)の場合における蛋白質の遺伝子発現量を、上記(a)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上調節する試験化合物を選択することができる。
【0110】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA     :デオキシリボ核酸
cDNA    :相補的デオキシリボ核酸
A      :アデニン
T      :チミン
G      :グアニン
C      :シトシン
Y      :チミンまたはシトシン
N      :チミン、シトシン、アデニンまたはグアニン
R      :アデニンまたはグアニン
M      :シトシンまたはアデニン
W      :チミンまたはアデニン
S      :シトシンまたはグアニン
B             :グアニン、チミンまたはシトシン
RNA     :リボ核酸
mRNA    :メッセンジャーリボ核酸
dATP    :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP    :デオキシチミジン三リン酸
dGTP    :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP    :デオキシシチジン三リン酸
ATP     :アデノシン三リン酸
GlyまたはG :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI  :イソロイシン
SerまたはS  :セリン
ThrまたはT  :スレオニン
CysまたはC  :システイン
MetまたはM   :メチオニン
GluまたはE  :グルタミン酸
AspまたはD  :アスパラギン酸
LysまたはK  :リジン
ArgまたはR  :アルギニン
HisまたはH  :ヒスチジン
PheまたはF  :フェニルアラニン
TyrまたはY  :チロシン
TrpまたはW  :トリプトファン
ProまたはP  :プロリン
AsnまたはN  :アスパラギン
GlnまたはQ  :グルタミン
pGlu    :ピログルタミン酸
Xaa     :未同定アミノ酸残基
【0111】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬等を下記の記号で表記する。
Me       :メチル基
Et        :エチル基
Bu       :ブチル基
Ph       :フェニル基
Ac       :アセチル基
TC       :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Bom      :ベンジルオキシメチル
Bzl      :ベンジル
Z        :ベンジルオキシカルボニル
Br−Z     :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Cl−Z     :2−クロルベンジルオキシカルボニル
ClBzl    :2,6−ジクロロベンジル
Boc      :t−ブチルオキシカルボニル
HOBt      :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt    :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
PAM      :フェニルアセトアミドメチル
Tos      :p−トルエンスルフォニル
Fmoc     :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
DNP      :ジニトロフェニル
Bum      :ターシャリーブトキシメチル
Trt       :トリチル
Bom      :ベンジルオキシメチル
Z        :ベンジルオキシカルボニル
MeBzl    :4−メチルベンジル
DCC      :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
HONB     :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
NMP      :N−メチルピロリドン
HONB     :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネンー2,3−ジカルボキシイミド
NMP      :N−メチルピロリドン
TFA      :トリフルオロ酢酸
CHAPS    :3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート
PMSF     :フェニルメチルスルホニルフルオリド
GDP      :グアノシン−5’−二リン酸
HEPES    :2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸
EDTA     :エチレンジアミン四酢酸
SDS      :ドデシル硫酸ナトリウム
BSA      :ウシ血清アルブミン
HBSS     :ハンクス平衡塩液
EIA      :エンザイムイムノアッセイ
CHAPS    :3−[(3−cholamidopropyl)dimethylamino]−1−propanesulfate
【0112】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒト型GALPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
ラット型GALPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ブタ型GALPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
マウス型GALPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒト型GALR1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
ラット型GALR1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
ヒト型GALR2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ラット型GALR2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
ヒト型GALPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
ラット型GALPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
ブタ型GALPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
マウス型GALPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
ヒト型GALR1をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
ラット型GALR1をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒト型GALR2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
ラット型GALR2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
ヒト型GALP前駆体のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:18〕
ラット型GALP前駆体のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:19〕
マウス型GALP前駆体のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:20〕
ヒト型GALP前駆体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
ラット型GALP前駆体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
マウス型GALP前駆体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:23〕
免疫原ペプチドのアミノ酸配列(ラット型GALP(43−60)の43番目のアミノ酸残基をシステインに変えたもの。[Cys43]ラット型GALP(43−60)とも記載する。)を表す。
【0113】
後述の参考例で得られたハイブリドーマ細胞のうち、GR−1Cは、平成13(2001)年7月31日から、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号 305−8566)、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM BP−7682として寄託されている。抗GALP抗体を産生するハイブリドーマ細胞のうち、GR2−1Nは、平成11(1999)年3月17日から独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(旧NIBH)に、受託番号FERM BP−6682として寄託されている。
なお、各ハイブリドーマ細胞から得られる抗体については細胞名の後に「a」を付けた形で表す。
【0114】
【実施例】
以下に実施例および参考例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
以下の参考例および実施例で使用したペプチドである[Cys43]ラット型GALP(43−60)は、アメリカンペプチド社において定法により合成されたものを購入した。ラット型GALPは、既報に基づき、リコンビナントGALPを作製した(JOURNAL OFTHE CHEMICAL SOCIETY−PERKIN TRANSACTIONS、1号、1333〜1335頁、2000年)。
【0115】
参考例1
配列番号:23で表されるラット型GALP (44−60)を含む免疫原[Cys43]ラット型GALP(43−60)の作製
[Cys43]ラット型GALP(43−60)とKLH(keyhole limpet hemocyanin)との複合体を作製し、免疫原とした。
すなわち、KLH 20 mgを、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)1.4 mlに溶解させ、N−(γ−マレイミドブチリロキシ)サクシニミド(GMBS)2.2 mg(8μmol)を含むDMF溶液100μlと混合し、室温で40分反応させた。反応後、セファデックスG−25カラムで分画したのち、マレイミド基の導入されたKLH 15 mgと[Cys43]ラット型GALP(43−60) 3.9 mgとを混合し、4℃で1日間反応させた。反応後、生理食塩水に対し、4℃で2日間透析した。
【0116】
参考例2
免疫
6〜8週令のBALB/C雌マウスに、実験例1で得られた[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を、約60μg/匹となるよう、完全フロイントアジュバントとともに皮下免疫した。以後3週間おきに同量の免疫原を不完全フロイントアジュバントとともに2〜3回追加免疫した。
【0117】
参考例3
西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識化[Cys43]ラット型GALP(43−60)の作製
[Cys43]ラット型GALP(43−60)とHRP(酵素免疫測定法用、ベーリンガーマンハイム社製)とを架橋し、酵素免疫測定法(EIA)の標識体とした。すなわち、HRP 6.7 mg(168nmol)を0.95 mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解させ、GMBS0.47 mg(1.65μmol)を含むDMF溶液50μlと混合し、室温で30分間反応させたのち、セファデックスG−25カラムで分画した。このようにして作製した、マレイミド基の導入されたHRP 5.0 mg(117nmol)と[Cys43]ラット型GALP(43−60) 0.74 mg(352nmol)とを混合し、4℃で1日反応させた。反応後ウルトロゲルAcA44(LKB−ファルマシア社製)カラムで分画し、HRP標識化ラット型GALP(43−60)を得た。
【0118】
参考例4
[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウスの抗血清中の抗体価の測定
[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を3週間間隔で2回免疫を行い、その1週間後に眼底採血を行い血液を採取した。さらに血液を、4℃で12,000rpmで15分遠心した後、上清を回収し抗血清を得た。抗血清中の抗体価を下記の方法により測定した。抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートを作製するため、まず、抗マウスイムノグロブリン抗体(IgG画分、カッペル社製)を100μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。次に、プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄したのち、ウェルの余剰の結合部位をふさぐため25%ブロックエース(雪印乳業社製)を含むPBSを300μlずつ分注し、4℃で少なくとも24時間処理した。
このようにして得られた抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートの各ウェルにバッファーC〔1% BSA、0.4M NaCl、0.05% 2 mM EDTA・Na〔エチレンジアミン四酢酸塩二水和物:Ethylenediamine−N,N,N’,N’−tetraacetic acid, disodium salt, dihydrate, DOJINDO社〕を含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7.0〕50μl、およびバッファーCで希釈した複合体に対する抗血清100μlを加え、4℃で16時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、参考例3で作製したHRP標識化[Cys43]ラット型GALP(43−60)(バッファーCで300倍希釈)100μlを加え、室温で1日反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性をTMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD&PERRY LAB, INC、フナコシ薬品取り扱い)100μlを加え室温で10分間反応させた。反応を1Mリン酸100μlを加え停止させたのち、450nmの吸収をプレートリーダー(BICHROMATIC、大日本製薬社製)で測定した。
得られた吸収スペクトルを図1に示す。図1中、(−◇−)は、マウスNo.1(1a)、(−□−)は、マウスNo.2(2a)、(−△−)は、マウスNo.3(3a)、(−○−)は、マウスNo.4(4a)、(−◆−)は、マウスNo.5(5a)、(−■−)は、マウスNo.6(6a)、(−▲−)は、マウスNo.7(7a)、(−●−)は、マウスNo.8(8a)を表す。1a〜8aは、8匹のマウス由来の抗体を表す。図1によれば、免疫した8匹のマウスの全ての複合体に対する抗血清中に[Cys43]ラット型GALP(43−60)に対する抗体価の上昇が認められたことがわかる。
【0119】
参考例5
抗[Cys43]ラット型GALP(43−60)モノクローナル抗体の作製
図1を参照し、[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウス由来のハイブリドーマの抗体産生細胞株の選択の例として、抗体6aと抗体7aを与えるマウスNo.6とNo.7を選択した。
抗体6aと抗体7aを与えるマウスに対して100〜150μgの免疫原を生理食塩水0.1mlに溶解させたものを静脈内に接種することにより最終免疫を行なった。最終免疫3〜4日後のマウスから脾臓を摘出し、ステンレスメッシュで圧迫、ろ過し、イーグルズ・ミニマム・エッセンシャルメディウム(MEM)に浮遊させ、脾臓細胞浮遊液を得た。細胞融合に用いる細胞として、BALB/Cマウス由来ミエローマ細胞P3−X63.Ag8.U1(P3U1)を用いた(Current Topics in Microbiology and Imnology、81巻、1頁、1978年)。
細胞融合は、原法(Nature、256巻、495頁、1975年)に準じて行なった。すなわち、脾臓細胞およびP3U1をそれぞれ、血清を含有しないMEMで3度洗浄し、脾臓細胞とP3U1数の比率を5:1になるよう混合して、800回転で15分間遠心分離を行ない、細胞を沈澱させた。上清を充分に除去した後、沈殿を軽くほぐし、45%ポリエチレングリコール(PEG)6000(コッホライト社製)を0.3 ml加え、37℃温水槽中で7分間静置して融合を行なった。融合後、細胞に毎分2 mlの割合でMEMを添加し、合計15 mlのMEMを加えた後600回転15分間遠心分離して上清を除去した。この細胞沈殿物を10%牛胎児血清を含有するGITメデイウム(和光純薬)(GIT−10% FCS)に、P3U1が1 ml当り2×10個になるように浮遊し、24穴マルチディッシュ(リンブロ社製)に1ウェルあたり1 mlずつ192ウェルに播種した。播種後、細胞を37℃、5%炭酸ガスインキュベーター中で培養した。24時間後、HAT(ヒポキサンチン 1×10−4M、アミノプテリン 4×10−7M、チミジン 1.6×10−3M)を含んだGIT−10% FCS培地(HAT培地)を1ウェル当り1mlずつ添加することにより、HAT選択培養を開始した。HAT選択培養は、培養開始3、6および9日後に旧液を1ml捨てた後、1mlのHAT培地を添加することにより継続した。ハイブリドーマの増殖は、細胞融合後9〜14日で認められ、培養液が黄変したとき(約1×10セル/ml)、上清を採取し、参考例4に記載の方法に従って抗体価を測定した。
抗体6aと抗体7aを与える[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウス由来のハイブリドーマが、抗体を産生している状態を図2、図3および図4に示した。得られた抗体産生ハイブリドーマの中から下記の計5種類のハイブリドーマを選択した〔表1〕。これらのうちでも、特に大きな抗体価を与えた(吸光度が大きかった)ハイブリードーマNo.1およびNo.2を、それぞれGR−1CおよびGR−2Cと命名した。
【0120】
【表1】
Figure 2004115394
【0121】
次に、これらのハイブリドーマを限界希釈法によるクローニングに付した。クローニングに際しては、フィーダー細胞としてBALB/Cマウスの胸腺細胞をウェル当り5×10個になるように加えた。クローニング後、ハイブリドーマを、あらかじめミネラルオイル0.5 mlを腹腔内投与されたマウス(BALB/C)に1〜3×10セル/匹を腹腔内投与したのち、6〜20日後に抗体含有腹水を採取した。
モノクローナル抗体は、得られた腹水よりプロテイン−Aカラムにより精製した。即ち、腹水6〜20 mlを等量の結合緩衝液〔3.5M NaCl、0.05% NaNを含む1.5Mグリシン(pH9.0)〕で希釈したのち、あらかじめ結合緩衝液で平衡化したプロテイン−A−アガロース(生化学工業社製)カラムに供し、特異抗体を溶離緩衝液〔(0.05% NaNを含む0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)〕で溶出した。溶出液をPBSに対して4℃、2日間透析したのち、0.22μmのフィルター(ミリポア社製)により除菌濾過し、4℃あるいは−80℃で保存した。
モノクローナル抗体のクラス・サブクラスの決定に際しては、精製モノクローナル抗体結合固相を用いる酵素標識免疫測定法(エンザイム−リンクトイムノソーベントアッセイ:ELISA)を行った。すなわち、抗体2μg/mlを含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。参考例4に記載の方法に従って、ウェルの余剰の結合部位をブロックエースでふさいだのち、アイソタイプタイピングキット(Mouse−TyperTMSub−Isotyping Kit バイオラッド社製)を用いるELISAによって固相化抗体のクラス、サブクラスを調べた。
【0122】
参考例6
HRP標識化抗GALPモノクローナル抗体(GR2−1Na−HRP)の作製
特開2000−157273号公報記載のGALPのN端部(1−9)を認識するモノクローナル抗体GR2−1N精製画分9.25 mg(61.7nmol)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に、GMBS 0.74μmolを含むDMF50μlを加え、室温で40分反応させた。反応液をセファデックスG−25カラム(溶離液、0.1Mリン酸緩衝液、pH6.7)で分離し、マレイミド基の導入された抗体画分7.17 mgを得た。 次に、HRP 17.8 mg(445nmol)を含む0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaClも含む)(pH6.8)1.4 mlに、N−スクシニミジル−3−(2−ピリミジルジチオ)プロピオネート(SPDP)6.67μmolを含むDMF60μlを加え、室温で40分反応させた。次に、66μmolのジチオスレイトールを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)0.4 mlを加え、室温で20分反応させた後、セファデックスG−25カラム(溶離液、2 mM EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液、pH6.0)で分離し、SH基の導入されたHRP 9.8 mgを得た。次に、SH基の導入されたHRP 8 mgとマレイミド基の導入された抗体画分3 mgとを混合し、コロジオンバッグ(ザルトリウス社製)で約0.5 mlにまで濃縮したのち、4℃で16時間放置した。反応液を溶離液に0.1Mリン酸緩衝液、pH6.5を用いるSephacrylS−300HRカラム(Pharmacia社製)に供し、GR2−1Na−HRP複合体画分を精製した。
【0123】
実施例1
マウスリンパ球細胞RAW264.7(ATTC社より購入)を10% ウシ胎児血清(FBS)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM, GIBCO BRL社)に溶解し、10個/wellの割合で96 wellプレート(ヌンク社)に播種した。一晩、37℃、5%炭酸ガス存在下で培養後、1% FBSを含むDMEMで細胞を2回洗浄した。1% FBSおよび0.05% CHAPSを含むDMEMで希釈したラット型GALを100μl添加し、終濃度が10 nMとなるようにした。37℃、5% 炭酸ガス存在下で1時間培養後、リポ多糖(lipopolysacchareide, LPS)を100μl添加し、終濃度が1および10 ng/mlとなるようにし、37℃、5% 炭酸ガス存在下で4時間培養した。培養上清を回収し、上清中のtumor necrosis factor alpha(TNF)量を、Tumor necrosis factor alpha[(m)TNFα]mouse, ELISA system(Amersham Pharmacia Biotech社)にて測定した。
結果を図5に示す。
LPS を1 ng/ml濃度で刺激した場合、培養上清中のTNFα濃度は69.5 pg/mlであり、非刺激下(35.7 pg/ml)に比較して33.8 pg/mlの濃度の上昇がみられた。一方、GALPを同時に添加した場合、培養上清中のTNFα濃度は40.8 pg/mlであり、非刺激下(35.7 pg/ml)に比較して5.1 pg/mlの濃度の上昇がみられた。これより、GALPは1 ng/ml濃度のLPSにより誘導されるTNFαを85%抑制したことがわかる。
また、LPS 10 ng/ml濃度で刺激した場合、培養上清中のTNFα濃度は、424 pg/mlであり、非刺激下(35.7 pg/ml)に比較して388.3 pg/mlの濃度の上昇がみられた。一方、GALPを同時に添加した場合、培養上清中のTNFα濃度は、250 pg/mlであり、非刺激下(35.7 pg/ml)に比較して214 pg/mlの濃度の上昇がみられた。これより、GALPは10 ng/ml濃度のLPSにより誘導されるTNFαを45%抑制したことがわかる。
以上のことより、GALPは、リンパ球細胞に対し免疫系の過剰反応を抑制する作用を有すると考えられる。
【0124】
実施例2
上記実施例1と同様に、マウスリンパ球細胞RAW264.7(ATTC社より購入)をLPSで刺激し、LPS添加4および6時間後の培養上清中に存在するGALP量をサンドウィッチEIA法により測定した。サンドウィッチEIA法を用いたGALPの定量は、以下の方法で行った。
参考例5で作成したモノクローナル抗体GR−1Caを15μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6溶液)を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した後、ウェルの余剰の結合部位をPBSで4倍希釈したブロックエース400μlを加え不活化したプレートを作製した。上記調製済みプレートに、バッファーCで希釈したラット型GALPおよび培養上清をそれぞれ100μlずつ加え、4℃で24時間反応させた。PBSで洗浄したのち、参考例6で作製したGR2−1Na−HRP(バッファーCで2,000倍希釈)100μlを加え、4℃で24時間反応させた。PBSで洗浄したのち、参考例4記載の方法によりTMBを用いて固相上の酵素活性を測定した(酵素反応20分)。
結果を図6に示す。
LPS投与4時間後および6時間後のいずれも、添加したLPS濃度依存的に、培養上清中のGALP濃度が増加した。GALPは、LPS刺激によって、マウスリンパ球細胞RAW264.7より分泌が促進されたことから、GALPは炎症の急性期の症状を抑制するように働くことが推測される。
【0125】
【発明の効果】
本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質、それらに対する抗体、および本発明のポリペプチドまたは本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドは、免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤を得るための簡便な探索法(スクリーニング)に有用である。特に、本発明の蛋白質のアゴニストは、優れた免疫疾患〔例、膠原病(例、全身性エリテマトーデス、強皮症(全身性硬化症)、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、結節性多発動脈炎など)、リウマチ性疾患(例、変形性関節症、外傷性関節炎、痛風、偽痛風、潰瘍性大腸炎、血友病など)、炎症、重症筋無力症、糸球体腎炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性糖尿病など〕、水・電解質代謝異常(例、頻尿、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アルカローシスなど)などの予防・治療剤として有用である。
さらに、本発明の蛋白質、本発明のDNA、本発明のアンチセンスDNAおよび本発明の抗体は、(i)本発明の蛋白質が関与する各種疾病の予防・治療剤、(ii)本発明のポリペプチドと本発明の蛋白質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング、(iii)本発明の蛋白質の定量、(iv)遺伝子診断薬、(v)アンチセンスDNAを含有する医薬、(vi)本発明の抗体を含有する医薬および診断薬、(vii)本発明のDNAを有する非ヒト動物の作製、(viii)構造的に類似したリガンド・レセプターとの比較にもとづいたドラッグデザインなどの実施のために有用である。特に、本発明の組換え蛋白質の発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、ヒトや哺乳動物に特異的な本発明の蛋白質に対するリガンドの結合性を変化させる化合物をスクリーニングすることができ、該アゴニストまたはアンタゴニストを各種疾病の予防・治療剤などとして使用することができる。
【0126】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウスの抗血清中の抗体価の測定結果を表す。
【図2】[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウス由来のハイブリドーマが、抗体を産生している状態(吸光分析の結果)を表す。(図3へ続く)
【図3】[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウス由来のハイブリドーマが、抗体を産生している状態(吸光分析の結果)を表す。(図2の続き。図4へ続く)
【図4】[Cys43]ラット型GALP(43−60)−KLH複合体を免疫したマウス由来のハイブリドーマが、抗体を産生している状態(吸光分析の結果)を表す。(図3の続き)
【図5】マウスリンパ球細胞RAW264.7におけるLPS刺激時のTNFα分泌に対するGALPの影響を表す。
【図6】マウスリンパ球細胞RAW264.7に対するLPS刺激4時間後および6時間後の培養中のGALP濃度を表す。

Claims (11)

  1. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化合物またはその塩を含有してなる免疫疾患の予防・治療剤。
  2. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法。
  3. さらに、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いる請求項2記載のスクリーニング方法。
  4. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
  5. さらに、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有する請求項4記載のスクリーニング用キット。
  6. 請求項2記載のスクリーニング方法または請求項4記載のスクリーニング用キットを用いて得られる免疫疾患の予防・治療剤。
  7. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる免疫疾患の予防・治療剤。
  8. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有してなる免疫疾患の診断薬。
  9. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法。
  10. 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩をコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする免疫疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
  11. 請求項9記載のスクリーニング方法または請求項10記載のスクリーニング用キットを用いて得られる免疫疾患の予防・治療剤。
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