JP4056096B2 - 磁気記録ディスク - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高密度記録用の磁気記録ディスクに関するものであり、特に最短記録波長が1.5μm以下である信号をディジタルデータ記録するのに最適な磁気記録ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が可能であること、信号の電子化が容易であり周辺機器との組み合わせによるシステムの構築が可能であること、信号の修正も簡単にできること等の他の記録方式にはない優れた特長を有することから、ビデオ、オーディオ、コンピューター用途等を始めとして様々な分野で幅広く利用されてきた。そして、機器の小型化の動向、記録再生信号の質の向上の要求、記録の長時間化の要求、記録容量の増大の要求に対応するために、記録媒体に関しては、記録密度のより一層の向上が常に望まれてきた。
【0003】
そのために磁性層の表面性の改良、磁性層中における磁性体粒子の分散性の改良や磁性層の磁気特性を高めるために磁性体の改良がなされてきた。
マイコンやパソコンの外部記憶媒体である可撓性非磁性支持体上に磁性層を有するフロッピーディスクに対しても、近年のパソコンの普及、アプリケーション・ソフトの高度化、処理情報の増大の動向から10Mバイト以上の高容量化が強く要求されるようになってきた。
【0004】
そして、RLL信号などの従来の1.5倍以上もの広い周波数成分領域を有する高密度符号の記録システムが提案されており、フロッピーディスク上に記録される記録信号の最短記録波長が1.5μm以下、さらに1.0μm以下にもなろうとしている。
この記録密度を向上させるためには、当然、磁気ヘッドのギャップ長もさらに狭くなって、0.5μm以下になろうとしている。
【0005】
記録波長が短く記録密度の大きな記録を可能にするために、強磁性粒子にバリウムフェライト等に代表される六方晶系フェライトを使用することが、例えば、特公昭62−49656号公報、特公昭60−50323号公報に開示されている。
しかし、特公昭60−50323号公報は、六方晶フェライト強磁性粒子を垂直方向に配向させたものであり、この場合、短波長領域の再生出力は向上するが、現在使用されているリングヘッドでは孤立反転波形がダイパルス状になり、波形の対称性が悪く、フロッピーディスク等のコンピューター用途の磁気記録媒体において重要であるピークシフト特性が劣化した。
【0006】
特公昭62−49656号公報では、垂直方向の角形比を0.3〜0.7と低く設定することで、垂直配向媒体の欠点を補っている。しかし、実施例中の磁性層厚は3.0μmであり、同じくフロッピーディスクにおいて重要であるオーバーライト特性が十分な値を確保できなかった。
オーバーライトは先に記録されているより長い波長の記録信号の上により短い記録信号を重ね書きするため、短い記録信号の磁力線が磁性層の深いところまで達することができず、先に記録されたより長い波長の信号が消去できないのである。この問題を解決するためには、磁性層を薄くすることが最も有効である。
【0007】
そこで、これら短波長出力とオーバーライト特性を両立するために、特開平5−120676では、非磁性支持体上に非磁性層を設け、その非磁性層上に厚み0.5μm以下の六方晶フェライト強磁性粒子を含有した磁性層を設けた磁気記録ディスクについて開示されている。しかし、この場合も垂直方向の角形比は0.6以上であり、十分なピークシフト特性を確保するに至らなかった。また、実施例中の媒体抗磁力は1400Oeより小さく、高密度化を達成するために短波長記録が進んだ場合、十分な再生出力を確保できない。
【0008】
以上のように、フロッピーディスクなどの磁気記録ディスクとして大容量の媒体とするためには、上記の種々の課題に対処しなければならず、すべてを満足する手段は未だ提案されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、電磁変換特性、オーバーライト特性、ピークシフト特性が良好でディジタルデータ記録に最適な磁気記録ディスクを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的は、非磁性支持体上に六方晶フェライト磁性体を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録ディスクにおいて、前記磁性層は、配向度比が0.9以上、垂直反磁界補正角形比が0.3〜0.55、面内及び垂直方向の抗磁力が各々1400〜3000Oeであり、かつ乾燥厚みが0.8μm以下であることを特徴とする磁気記録ディスクによって達成される。
【0011】
本発明は、六方晶フェライト磁性体を含む磁性層からなる磁気記録ディスクにおいて、前記磁性層の、配向度比、垂直反磁界補正角形比(SQn)、面内方向の抗磁力(Hc)、垂直方向の抗磁力(Hcn)、および乾燥厚みを特定したことを特徴とし、これにより記録再生の波形の対称性と共に再生出力を確保し、かつオーバーライトおよびモジュレーションを適正化した磁気記録ディスクを提供するものである。
【0012】
本発明の効果を発揮する層構成は、第一に非磁性可撓性支持体上に六方晶フェライト磁性体が含まれる磁性層を設けた磁気記録媒体であり、第二に非磁性可撓性支持体上に主として無機質非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層と、その上に六方晶フェライト磁性体が含まれる磁性層を設けた磁気記録媒体である。本発明の前記磁気記録ディスクにおいては、磁性層の厚さは0.8μm以下とすることにより重ね書き特性が確保されるが、その厚さは好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。
【0013】
磁性層の厚さが厚くなるとディジタルデータ記録に要求される重ね書き特性が劣化し、特に記録波長が1.5μm以下の場合にその傾向が著しい。
磁性層の厚さの下限は特にないが、余り薄くなると再生出力が低下するので注意を要する。
本発明の磁気記録ディスクの磁性層の配向度比は0.9以上がこのましく望ましくは0.95以上である。配向度比はディスク状媒体の円周方向の最小角型比を最大角型比で除した値であり、その値が大きいほど円周方向における出力の変動が少なくなり、磁気記録ディスクとして好ましいものとなる。この配向度比を0.9以上と高くしたことによりモジュレーション適性が確保できる。
【0014】
また、SQn、すなわち、垂直方向の反磁界補正後の角形比は0.3〜0.55であり、好ましくは0.4〜0.5である。0.55より大きい場合、垂直磁化成分が大きく、リングヘッドによる記録再生では波形の対称性が悪化、即ち、孤立反転波形がダイパルス状になりピークシフトが大きく好ましくない。0.3未満では、磁化の垂直成分が小さすぎて、短波長領域での記録減磁が大きく再生出力が低下する。
【0015】
このように、良好なピークシフト特性を確保するために垂直磁化成分を抑制しているため、自己減磁、記録減磁が大きくなり、短波長出力が低下する傾向にある。このため、面内方向だけでなく、垂直方向のHcも1400〜3000Oe、好ましくは1700〜2500Oeに設計する必要がある。1400Oe未満では記録減磁が大きく短波長出力が低下して好ましくない。Hcが3000Oeより大きい場合は、現行のヘッドでは十分に記録できず、再生出力は低下する。特公昭62−50888号公報では面内の抗磁力と垂直方向の抗磁力の比を規定しているが、実施例における抗磁力は1000Oe以下であり、短波長領域の出力向上には不十分であった。
【0016】
本発明において、主としてSQnおよび配向度比を制御する手段としては、特に制限はないが、好ましくは、以下の手段が挙げられる。
▲1▼二つの交流磁場発生装置の交流磁場の周波数、磁界強度を各々変更して、磁性層塗布層を該交流磁場発生装置中を通過させ、磁性粒子のランダム性を調整する方法。
【0017】
この場合の交流磁場の周波数としては、通常、30〜80Hz、好ましくは50〜60Hz、磁界強度としては、通常、100〜1000ガウス、好ましくは200〜600ガウスである。
▲2▼磁性層塗布面に対して垂直方向に、永久異極磁石を非磁性支持体を挟んで上下に設置した間を塗布面を通過させて垂直配向を行う際、2つの磁石間の距離を変更することで、磁場を調整し磁性体粒子の垂直配向性を制御する方法。
【0018】
この場合、磁石の磁界強度は通常、2000〜8000ガウス、好ましくは4000〜6000ガウスであり、磁石間距離は通常、5〜50mm、好ましくは10〜30mmの範囲で調整される。
▲3▼非磁性支持体の搬送速度、配向時の温度、配向前の塗布層乾燥度等を選定すること。搬送速度としては、通常、好ましくは0.5〜10m/秒、好ましくは2〜6m/秒、配向時の温度としては、通常、60〜120℃、好ましくは80〜100℃、配向前の塗布層の乾燥度としては、通常、使用有機溶剤量の60重量%以上、好ましくは80重量%以上が塗布層に残存することが好ましい。
【0019】
非磁性層に使用する非磁性粒子としては、無機質非磁性粉末、カーボンブラック、研磨剤等が挙げられるが、少なくとも非磁性粒子のうちの3〜20重量%がカーボンブラックであることが望ましく、カーボンブラックのうちでも平均粒子径が10〜40mμで、DBP吸油量が100〜400ml/100グラム以上の粒子サイズが小さく、吸油量の大きなカーボンブラックであると上層に形成する磁性層の表面性が平滑なものとすることができ、記録/再生ヘッドとのスペーシングロスが小さくなるので高い再生出力を得ることができる。そして、カーボンブラックが非磁性層中でストラクチャーを形成しやすく結果として低い表面電気抵抗を得る事ができ走行耐久性におけるドロップアウトの発生を低減することができる。
【0020】
更に、非磁性層中に潤滑剤として脂肪酸エステルを3〜20重量%含有させることにより、磁性層が薄いことによる磁性層での潤滑剤の含有量を多くできないという問題を補うことができる。即ち、記録/再生ヘッドとの摺動により潤滑剤が次第に消費され不足するため磁性層が削れたり、摩擦が大きくなってついには、停止を発生することがあるが、非磁性層から潤滑剤が磁性層中に移行することにより常に磁性層で消費される潤滑剤を補うことができるからである。
【0021】
本発明において、強磁性粉末を含む磁性層は非磁性支持体上に少なくとも一層設けられるのであれば、その構成は特に制限はないが、好ましくは構成層の最上層に六方晶フェライト磁性体を含む磁性層が設けられる。また、本発明においては、非磁性支持体と六方晶フェライト磁性体を含む磁性層の間に無機質非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を設けた構成が好ましいが、特に、これらの構成に限定されるものではない。例えば、該非磁性層に代えて六方晶フェライト磁性体以外の磁性体を用いた磁性層を設けてもよい。
【0022】
本発明において、非磁性支持体と六方晶フェライト磁性体含有層の間に非磁性層および六方晶フェライト磁性体以外の強磁性粉末を含む磁性層を設けてもよく、その場合は、それらの積層順序はどちらが上でも基本的に本発明の効果は得られる。
本発明において、六方晶フェライト磁性体含有層以外の非磁性層および/または磁性層を設ける場合、該六方晶フェライト磁性体含有層を上層または上層磁性層ともいい、それ以外の層を下層ともいい、下層の磁性、非磁性を区別する場合は下層磁性層、下層非磁性層ともいう。尚、単に磁性層という場合は、六方晶フェライト磁性体含有層を指す。
【0023】
本発明において、六方晶フェライト磁性体含有層、その他の磁性層、下層非磁性層等の構成層は、所望により各々複層構造とすることができ、所望の組成成分を選択使用できる。この場合、六方晶フェライト磁性体含有層を複層構造にした場合は、その複層全体を一層とみなす。
【0024】
上層は、所望により他の強磁性粉末を併用することができるが、強磁性粉末のうちに六方晶系フェライト磁性体が占める割合は、通常、50〜100重量%、好ましくは、80〜100重量%である。また、下層に使用される強磁性粉末は基本的には任意であり、六方晶フェライト磁性体をも使用し得る。ただし、下層の構成は上層と異なることが条件となる。以下、特に断らないかぎり、「強磁性粉末」と呼称する場合は、六方晶フェライト磁性体を含む任意の強磁性粉末を包含する意味で使用する。
【0025】
本発明は磁性層として六方晶フェライトを含む一層のみであっても構わないが、支持体との間に下層非磁性層を設けると表面性が向上し、また上層の薄層化も容易になり好ましい。また支持体との間に針状強磁性粉末などを含む他の下層磁性層を設けると長波長の特性が向上し好ましい。
磁性層の長手方向のSFDは0.5以下、好ましくは0.3以下にすると抗磁力の分布が小さくなり好ましい。
【0026】
下層磁性層を設ける場合、下層磁性層に含まれる強磁性粉末は鉄を主成分とする金属強磁性微粉末またはコバルト変性酸化鉄または酸化鉄であることが好ましい。下層非磁性層を設ける場合は、下層非磁性層に含まれる無機質非磁性粉末は、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、α酸化鉄の中の少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
下層および上層は、ウェットオンウェット塗布方式で形成されたものであることが好ましい。
【0028】
以下、本発明に使用される六方晶フェライト磁性体について説明する。
本発明に使用される六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体、六方晶Co粉末等が挙げられる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Ti,Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn,Ni−Ti−Zn,Ir−Zn等の元素を添加した物を使用することができるが、特に好ましいものはバリウムフェライト、ストロンチウムフェライトの各Co置換体である。抗磁力を制御するためには、粒子径、粒子厚を均一にする、六方晶フェライトのスピネル相の厚みを一定にする、スピネル相の置換元素の量を一定にする、スピネル相の置換サイトの場所を一定にする、などの方法がある。
【0029】
本発明に用いられる六方晶フェライト磁性体は通常六角板状の粒子であり、その板の幅を電子顕微鏡を使用して測定し、板径とし、その厚味を板厚とする。
本発明では板径は通常、0.01〜0.1μm、好ましくは0.02〜0.08μm、特に好ましくは0.03〜0.05μmの範囲である。また、該板厚は通常、0.001〜0.05μm、好ましくは0.005〜0.03μm、特に好ましくは0.01〜0.02μmである。更に板状比(板径/板厚)は通常、1〜8、好ましくは2〜6、更に好ましくは、3〜5である。また、BET法による比表面積(SBET)は20〜100m2 /g、好ましくは30〜80m2 /gである。20m2 /gより小さいとノイズが高くなり、100m2 /gより大きいと表面性が得にくく好ましくない。含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって該磁性体の含水率は最適化するのが好ましい。該磁性体のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。該磁性体は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。好ましくはAl2O3またはSiO2による表面処理であり、用いる結合剤によってその量と比率を変えることが好ましい。その量は該磁性体に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。該磁性体には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。σsは50emu/g以上、好ましくは60emu/g以上である。タップ密度は0.5g/cc以上が好ましく0.8g/cc以上がさらに好ましい。六方晶フェライトの製法としてはガラス結晶化法・共沈法・水熱反応法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0030】
次に、本発明の下層磁性層に使用される強磁性粉末としてはγ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、FeまたはNiまたはCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金微粉末、針状バリウムフェライト、など公知の強磁性粉末を使用できるが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末、またはCo変性γ−FeOxが好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。
【0031】
これらの強磁性粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号報、特公昭47−22513号報、特公昭46−28466号報、特公昭46−38755号報、特公昭47−4286号報、特公昭47−12422号報、特公昭47−17284号報、特公昭47−18509号報、特公昭47−18573号報、特公昭39−10307号報、特公昭48−39639号報、米国特許3026215号報、同3031341号報、同3100194号報、同3242005号報、同3389014号報などに記載されている。
【0032】
上記強磁性粉末の中で強磁性合金微粉末については少量の水酸化物、または酸化物を含んでもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。強磁性粉末粒子をBET法による比表面積で表せば25〜80m2/gであり、好ましくは40〜70m2/gである。25m2/g以下ではノイズが高くなり、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。酸化鉄磁性粉末のσsは50emu/g以上、好ましくは70emu/g以上、であり、強磁性金属微粉末の場合は100emu/g以上が好ましく、さらに好ましくは110emu/g〜170emu/gである。抗磁力は500Oe以上、2500Oe以下が好ましく、更に好ましくは800Oe以上2000Oe以下である。
【0033】
γ酸化鉄のタップ密度は0.5g/cc以上が好ましく、0.8g/cc以上がさらに好ましい。合金粉末の場合は0.2〜0.8g/ccが好ましく、0.8g/cc以上に使用とすると強磁性粉末の圧密過程で酸化が進みやすく、充分なσSを得ることが困難になる。0.2g/cc以下では分散が不十分になりやすい。γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20%でありさらに好ましくは5〜10%である。また鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。
【0034】
本発明の六方晶フェライトを含む上層磁性層の下に設ける下層磁性層は長手方向の配向性が垂直方向の配向性より高いことが好ましい。抗磁力は500Oe以上、2500Oe以下、Brは1000G以上、4000G以下、SFDは0.6以下が好ましい。
本発明の下層および上層は、それ単独(各々複層の場合も含む)で塗布した場合中心線平均表面粗さが0.006μm以下であることが好ましい。
【0035】
次に下層非磁性層について説明する。
本発明の下層非磁性層に用いられる無機質非磁性粉末は、例えば金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。無機質化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、2硫化モリブデンなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、α−酸化鉄、硫酸バリウムである。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜2μが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる無機質非磁性粉末を組み合わせたり、単独の無機質非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。取分け好ましいのは0.01μm〜0.2μmである。タップ密度は0.05〜2g/cc、好ましくは0.2〜1.5g/ccである。含水率は0.1〜5%好ましくは0.2〜3%である。pHは2〜11であるが、6〜9の間が特に好ましい。比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。結晶子サイズは0.01μ〜2μが好ましい。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状、六角板状のいずれでも良い。強熱減量は20%以下であることが好ましい。本発明に用いられる上記無機質非磁性粉末のモ−ス硬度は4〜10のものが好ましい。これらの粉体表面のラフネスファクターは0.8〜1.5が好ましく、更に好ましいのは0.9〜1.2である。ステアリン酸(SA)吸着量は1〜20μmol/m2 、更に好ましくは2〜15μmol/m2 である。無機質非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は200erg/cm2 〜600erg/cm2がの範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは3〜6の間にあることが好ましい。これらの粉体の表面はAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2,SnO2、Sb2O3,ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、であるが、更に好ましいのはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する構造、その逆の構造を取ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0036】
本発明に用いられる無機質非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製UA5600、UA5605、ナノタイト、住友化学製AKP−20,AKP−30,AKP−50,HIT−55,HIT−100,ZA−G1、日本化学工業社製、G5,G7,S−1,戸田工業社製、TF−100,TF−120,TF−140,R516,DPN250、石原産業製TTO−51B、TTO−55A,TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、FT−1000、FT−2000、FTL−100、FTL−200、M−1,S−1,SN−100,R−820、R−830,R−930,R−550,CR−50,CR−80,R−680,TY−50,チタン工業製ECT−52、STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、三菱マテリアル製T−1、日本触媒NS−O、NS−3Y,NS−8Y、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、堺化学製FINEX−25,BF−1,BF−10,BF−20,BF−1L,BF−10P、同和鉱業製DEFIC−Y,DEFIC−R、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成した物等が挙げられる。
【0037】
特に好ましい無機質非磁性粉末は二酸化チタンであるので、二酸化チタンを例に製法を詳しく記す。これらの酸化チタンの製法は主に硫酸法と塩素法がある。硫酸法はイルミナイトの源鉱石を硫酸で溶解し、Ti,Feなどを硫酸塩として抽出する。硫酸鉄を晶析分離して除き、残りの硫酸チタニル溶液を濾過精製後、熱加水分解を行なって、含水酸化チタンを沈澱させる。これを濾過洗浄後、夾雑不純物を洗浄除去し、粒径調節剤などを添加した後、80〜1000℃で焼成すれば粗酸化チタンとなる。ルチル型とアナターゼ型は加水分解の時に添加される核剤の種類によりわけられる。この粗酸化チタンを粉砕、整粒、表面処理などを施して作成する。塩素法は原鉱石は天然ルチルや合成ルチルが用いられる。鉱石は高温還元状態で塩素化され、TiはTiCl4にFeはFeCl2となり、冷却により固体となった酸化鉄は液体のTiCl4と分離される。得られた粗TiCl4は精留により精製した後核生成剤を添加し、1000℃以上の温度で酸素と瞬間的に反応させ、粗酸化チタンを得る。この酸化分解工程で生成した粗酸化チタンに顔料的性質を与えるための仕上げ方法は硫酸法と同じである。表面処理は上記酸化チタン素材を乾式粉砕後、水と分散剤を加え、湿式粉砕、遠心分離により粗粒分級が行なわれる。その後、微粒スラリーは表面処理槽に移され、ここで金属水酸化物の表面被覆が行なわれる。まず、所定量のAl,Si,Ti,Zr,Sb,Sn,Znなどの塩類水溶液を加え、これを中和する酸、またはアルカリを加えて、生成する含水酸化物で酸化チタン粒子表面を被覆する。副生する水溶性塩類はデカンテーション、濾過、洗浄により除去し、最終的にスラリーpHを調節して濾過し、純水により洗浄する。洗浄済みケーキはスプレードライヤーまたはバンドドライヤーで乾燥される。最後にこの乾燥物はジェットミルで粉砕され、製品になる。また、水系ばかりでなく酸化チタン粉体にAlCl3,SiCl4の蒸気を通じその後水蒸気を流入してAl,Si表面処理を施すことも可能である。その他の顔料の製法については”Characterizationof Powder Surfaces”Academic Pressを参考にすることができる。
【0038】
また、下層にカ−ボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができる。このためにはゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。粒子径は5mμ〜80mμ、好ましく10〜50mμ、さらに好ましくは10〜40mμである。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/cc、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製、#3050B,3150B,3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、下層非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカ−ボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。本発明で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編」を参考にすることができる。
【0039】
本発明に用いられる有機質無機粉末はアクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂が使用される。その製法は特開昭62−18564号、特開昭60−255827号に記されているようなものが使用できる。
【0040】
なお、一般の磁気記録媒体において下塗層を設けることが行われているが、これは支持体と磁性層等の接着力を向上させるために設けられるものであって、厚さも0.5μ以下で本発明の下層とは異なるものである。本発明においても下層と支持体との接着性を向上させるために下塗層を設けることが好ましい。
下層非磁性層のバインダー、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は上層磁性層のそれが適用できる。特に、バインダー量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。このような下層非磁性層の厚みは0.2〜5μm、好ましくは1〜3μmである。
【0041】
本発明の上層および下層に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビニルアセタ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
【0042】
また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネ−トプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリオ−ルとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。
【0043】
以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコ−ル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネ−トを組み合わせたものがあげられる。
【0044】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエ−テルポリウレタン、ポリエ−テルポリエステルポリウレタン、ポリカ−ボネ−トポリウレタン、ポリエステルポリカ−ボネ−トポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。
ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM,−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+R3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものををもちいることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0045】
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカ−バイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD,VROH,VYES,VYNC,VMCC,XYHL,XYSG,PKHH,PKHJ,PKHC,PKFE,日信化学工業社製、MPR−TA、MPR−TA5,MPR−TAL,MPR−TSN,MPR−TMF,MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80,DX81,DX82,DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−105、MR110、MR100、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バ−ノックD−400、D−210−80、クリスボン6109,7209,東洋紡社製バイロンUR8200,UR8300、UR−8600、UR−5500、UR−4300、RV530,RV280、大日精化社製、ダイフェラミン4020,5020,5100,5300,9020,9022,7020,三菱化成社製、MX5004,三洋化成社製サンプレンSP−150,TIM−3003、TIM−3005、旭化成社製サランF310,F210などが挙げられる。
【0046】
本発明の下層非磁性層に用いられる結合剤は、非磁性粉末に対し、また下層磁性層または上層磁性層に用いられる結合剤は、各々の強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30重量%、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネ−トは2〜20重量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000重量%、破断応力は0.05〜10Kg/cm2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。
【0047】
本発明の磁気記録媒体は一層以上からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネ−ト、あるいはそれ以外の樹脂の量、上層磁性層、下層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ下層非磁性層、各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー量を変更する場合、上層磁性層表面の擦傷を減らすためには上層磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にする為には、上層磁性層か下層非磁性層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることにより達成される。
【0048】
本発明の構成層に用いるポリイソシアネ−トとしては、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、o−トルイジンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等のイソシアネ−ト類、また、これらのイソシアネ−ト類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネ−ト等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネ−トHL,コロネ−ト2030、コロネ−ト2031、ミリオネ−トMR、ミリオネ−トMTL、武田薬品社製、タケネ−トD−102,タケネ−トD−110N、タケネ−トD−200、タケネ−トD−202、住友バイエル社製、デスモジュ−ルL,デスモジュ−ルIL、デスモジュ−ルN、デスモジュ−ルHL,等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とももちいることができる。
【0049】
本発明の磁性層あるいは所望により設けられる下層磁性層に使用されるカ−ボンブラックはゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμ〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/CC、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,700、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製、#80、#60,#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900,#1000、#30,#40、#10B、コロンビアカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカ−ボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カ−ボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30重量%でもちいることが好ましい。カ−ボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカ−ボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカ−ボンブラックは上層磁性層、下層非磁性層、または下層磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。本発明の磁性層で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0050】
本発明に用いられる研磨剤は、上層磁性層に用いられ、所望により下層の研磨剤としても用いられるが、具体的には、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、粒状、球状、サイコロ状のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。本発明に用いられる研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製:AKP−20,AKP−30,AKP−50,HIT−50、HIT100、日本化学工業社製:G5,G7,S−1、戸田工業社製:TF−100、TF−140などがあげられる。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。本発明の磁気記録媒体の磁性層表面および磁性層端面に存在する研磨剤は5個/100μm2 以上が好ましい。
【0051】
本発明の磁性層あるいは下層に使用されるその他の添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフエニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li,Na,K,Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、があげられる。
【0052】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0053】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は下層非磁性層、磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、下層非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を下層非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。
【0054】
また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性および非磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダ−した後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
【0055】
本発明で使用されるこれら潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製、NAA−102,NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NAA−171,NAA−122、NAA−142、NAA−160、NAA−173K,ヒマシ硬化脂肪酸、NAA−42,NAA−44、カチオンSA、カチオンMA、カチオンAB,カチオンBB,ナイミ−ンL−201,ナイミ−ンL−202,ナイミ−ンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオンS−4,ノニオンO−2、ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニオンSP−60R、ノニオンOP−80R、ノニオンOP−85R,ノニオンLT−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレ−ト、ブチルラウレ−ト、エルカ酸、関東化学社製、オレイン酸、竹本油脂社製、FAL−205、FAL−123、新日本理化社製、エヌジェルブLO、エヌジョルブIPM,サンソサイザ−E4030、信越化学社製、TA−3、KF−96、KF−96L、KF96H、KF410,KF420、KF965,KF54,KF50,KF56,KF907,KF851,X−22−819,X−22−822,KF905,KF700,KF393,KF−857,KF−860,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−103,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935,ライオンア−マ−社製、ア−マイドP、ア−マイドC,ア−モスリップCP、ライオン油脂社製、デユオミンTDO、日清製油社製、BA−41G、三洋化成社製、プロファン2012E、ニュ−ポ−ルPE61、イオネットMS−400,イオネットMO−200 イオネット、DL−200,イオネットDS−300、イオネットDS−1000イオネット、DO−200などがあげられる。
【0056】
本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブチルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール、などのアルコ−ル類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコ−ル等のエステル類、グリコ−ルジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は下層を設ける場合、上層と下層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。下層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が下層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメ−タは8〜11であることが好ましい。
【0057】
本発明に用いられる非磁性支持体はポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロ−ストリアセテ−ト、ポリカ−ボネ−ト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、などの公知のフィルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。
【0058】
本発明の磁気記録ディスクの非磁性支持体の厚さは、1〜100μm、望ましくは20〜85μmである。
また、非磁性支持体性とその上の下層非磁性層との間に密着性向上のためのポリエステル樹脂等からなる下塗り層を設けてもかまわない。これらの厚みは、通常、0.01〜2μ、望ましくは、0.05〜0.5μmである。
【0059】
本発明の磁気記録媒体の下層非磁性層及び磁性層は、非磁性支持体の片面もしくは両面に設けられる。
本発明の目的を有効に達成するには、非磁性支持体の表面粗さは、中心線平均表面粗さ(Ra)(カットオフ値0.25mm)で0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、さらに好ましくは0.01μmμ以下のものを使用するのが望ましい。また、これらの非磁性支持体は単に前記中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて非磁性支持体に添加されるフィラ−の大きさと量により自由にコントロ−ルされるものである。これらのフィラ−の一例としては、Ca,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機樹脂微粉末があげられる。本発明に用いられる非磁性支持体のウエブ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50kg/mm2、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30Kg/mm2であり、ウエブ長手方向のF−5値がウエブ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
【0060】
また、支持体のウエブ走行方向および幅方向の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに望ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2が望ましい。
【0061】
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する磁性体、非磁性粉体、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明は、従来の公知の製造技術のを一部の工程としてを用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニ−ダや加圧ニ−ダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338、特開昭64−79274に記載されている。また、下層非磁性層液を調整する場合には高比重の分散メディアを用いることが望ましく、ジルコニアビーズが好適である。 本発明のような重層構成の磁気記録媒体を塗布する装置、方法の例として以下のような構成を提案できる。
【0062】
1,磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態にのうちに特公平1−46186や特開昭60−238179,特開平2−265672に開示されている支持体加圧型エクストルージョ
ン塗布装置により上層を塗布する。
【0063】
2,特開昭63−88080、特開平2−17971,特開平2−265672に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘ
ッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
3,特開平2−174965に開示されているバックアップロール付きエクス
トルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する。
【0064】
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174や特開平1−236968に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号に開示されている数値範囲を満足する必要がある。
【0065】
配向装置は公知のものを用いることができるが、例えば、特公平3−41895号公報に開示されているような永久磁石を使用したランダム配向法、特開昭63−148417号公報、特開平1−300427号公報、特開平1−300428号公報などに開示されている交流磁場を印加する方法が使用できる。
さらに、磁性層の表面を平滑にする加圧成形処理で使用するカレンダロ−ルとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロ−ルを使用する。また、金属ロ−ル同志で加圧成形処理することもできる。加圧成形の処理温度は、望ましくは70℃以上、さらに望ましくは80℃以上である。線圧力は望ましくは200kg/cm、さらに好ましくは300kg/cm以上である。
【0066】
本発明の磁気記録媒体の磁性層面の表面固有抵抗は望ましくは105〜5×109オ−ム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率はウエブ塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜2000kg/mm2、破断強度は望ましくは1〜30kg/cm2、磁気記録媒体の弾性率はウエブ塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜1500kg/mm2、残留のびは望ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は望ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下、もっとも望ましくは0.1%以下である。
【0067】
磁性層中に含まれる残留溶媒は望ましくは100mg/m2以下、さらに望ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が下層非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。
磁性層が有する空隙率は磁性層、下層非磁性層とも望ましくは30容量%以下、さらに望ましくは10容量%以下である。下層非磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが下層非磁性層の空隙率が5%以上であれば小さくてもかまはない。
【0068】
【実施例】
本発明の新規な特徴を以下の実施例及び比較例によって、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以上の非磁性層用塗布液及び磁性層用塗布液を、まず、連続ニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いてさらに混連分散処理した。得られた分散液に、ポリイソシアネ−ト(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)を非磁性層用の分散液中には、25重量部、磁性層用分散液中には12重量部を加えて、さらにそれぞれに酢酸ブチル20重量部を加えて混連攪拌した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを通して濾過し、非磁性層用塗布液及び磁性層用塗布液を調製した。
【0069】
〔磁性層単独構成の磁気記録媒体の作成〕
磁気特性の異なる磁性粉を含有する磁性塗料を乾燥後の磁性層の厚さが表2、3に記載された厚みになるように、厚さ62μmで中心線表面粗さが0.01μm(カットオフ値0.25mm)のポリエチレンナフタレ−ト支持体上に塗布速度200m/分で塗布を行った。
【0070】
磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに以下の2つの配向方法またはその組み合わせによって磁性粒子を配向し、表2、3の配向度比及びSQnを得た。
▲1▼2つの交流磁場発生装置中を通過させ、磁性粒子のランダム配向処理をした。その際の二つの交流磁場の周波数、磁界強度を変更して、磁性粒子のランダム性を調整した。
【0071】
▲2▼塗布面に対して垂直方向に、永久異極磁石を非磁性支持体を挟んで上下に設置した間を塗布面を通過させて垂直配向を行った。その際、2つの磁石間の距離を変更することで、磁場を調整し磁性体粒子の垂直配向性を変更した。
更に乾燥後、7段のカレンダ装置(線圧300kg/cm、温度90℃)にて処理を行い、3.5インチサイズに打ち抜き表面を研磨テープによりバーニッシュを施した後3.5インチフロッピーディスクの所定の機構部品を使用し、3.5インチフロッピーディスクのサンプル1〜20を作製した。
【0072】
なお、磁性層は前記非磁性体の他方の面にも同じ条件で形成し、非磁性支持体の両面に磁性層を有した磁気記録ディスクにした。
〔非磁性層上に薄層磁性層を設けた磁気記録媒体の作成〕
非磁性層用塗布液を乾燥後の厚さが2.0μmになるように、さらにその直後に磁気特性の異なる磁性粉を含有する磁性塗料を、その上に乾燥後の磁性層の厚さが表3記載の値になるように、厚さ62μmで中心線表面粗さが0.01μmのポリエチレンナフタレ−ト支持体上に同時重層塗布をおこなった以外はサンプル1〜20と同様にして得られたサンプルをそれぞれサンプル21〜31とした。
(特性の評価)
以上の様に得られたフロッピーディスクの各試料は下記の評価方法で測定しその特性を評価した。
<磁性層の抗磁力(Hc,Hco)及び配向度比>
振動試料型磁束計(東英工業製)を用い最大印加磁場10kOeで測定した。配向度比は、測定試料に沿って10度おきに0度〜360度まで磁場を回転させ角型比を求め、その角型比の最小値を最大値で割った値を算出し配向度とした。
<磁性層の厚さ>
層断面の切片試料を作成して、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−700型)による画像を撮影した断面写真から求めた。
<再生出力>
FD−1335(NEC製13.3MB ドライブ)を用い、JIS X6227に準じて2f信号の振幅を評価した。再生出力は、サンプル2の出力を100%とした相対値で示した。再生出力は90%以上が実用範囲である。
<オーバライト・ピークシフト>
FD−1335(NEC製13.3MB ドライブ)を用い、JIS X6227に準じて評価した。サンプル2の値を100%とした相対値で示した。オーバーライトは、300%以下が実用範囲である。また、ピークシフトは120%以下が実用範囲である。
<モジュレーション>
FD−1335(NEC製13.3MB ドライブ)を用い、JIS X6227に準じて2f信号のモジュレーションを評価した。モジュレーションの値は、10%以下が実用範囲である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表1〜3から本発明の実施例、即ち、磁性層のHcおよびHcnが1400〜3000Oe、配向度比が0.9以上、かつSQnが0.3〜0.55、そして磁性層厚が0.8μm以下である磁気記録ディスクは、再生出力、オーバーライト、モジュレーション、ピークシフトのいずれの特性も良好であったが、比較例ではそれら特性のいづれかが実用範囲外であることがわかる。
【0077】
【発明の効果】
本発明は、六方晶フェライト磁性体を含む磁性層からなる磁気記録ディスクにおいて、前記磁性層の、配向度比0.9以上、垂直反磁界補正角形比(SQn)0.3〜0.55、面内方向の抗磁力(Hc)1400〜3000Oe、垂直方向の抗磁力(Hcn)1400〜3000Oe、および乾燥厚み0.8μm以下を特定したことを特徴とし、これによりリング型ヘッドのシステムにおける記録再生の波形の対称性と共に再生出力を確保し、かつオーバーライトおよびモジュレーションを適正化した磁気記録ディスクを提供することができる。
Claims (2)
- 非磁性支持体上に六方晶フェライト磁性体を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録ディスクにおいて、前記磁性層は、配向度比が0.9以上、垂直反磁界補正角形比が0.3〜0.55、面内及び垂直方向の抗磁力が各々1400〜3000Oeであり、かつ乾燥厚みが0.8μm以下であることを特徴とする磁気記録ディスク。
- 前記非磁性支持体と前記磁性層の間に主として無機質非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録ディスク。
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