JP4055541B2 - 車両用エンジンのトルク推定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータおよび/またはジェネレータとして作動可能な回転電機を備えた過給機を有するエンジンの出力トルクを推定するための車両用エンジンのトルク推定方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両において、エンジンに連結された動力伝達装置の油圧式摩擦係合装置のトルク伝達容量を必要かつ十分に制御するために、エンジンの出力トルクが推定されることが行われる。これによれば、推定されたエンジンの出力トルクに基づく入力トルクに対して、油圧式摩擦係合装置のトルク伝達容量を必要かつ十分な大きさのトルク伝達容量とすることにより、燃費が良好とされる。過給機を吸気配管に備えたエンジンを有する車両では、たとえば特許文献1に記載されているように、過給圧センサにより検出された吸気配管内の過給圧に基づいてエンジンの出力トルクを推定することが提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−152025号公報
【特許文献2】
特開平9−096242号公報
【特許文献3】
特開2000−45812号公報
【特許文献4】
特開平8−182382号公報
【特許文献5】
特開平11−125121号公報
【特許文献6】
特開平8−218883号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の車両用エンジンの出力トルク推定装置では、過給圧センサにより検出された結果に基づいてエンジンの出力トルクが推定されることから、過給圧が変動した場合にはその変動が検出してから出力トルクの推定演算が行われて時間がかかるので、出力トルクの推定精度が十分に得られなかった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの出力トルクの推定精度が十分に得られる車両用エンジンのトルク推定方法および装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
かかる目的を達成するための方法発明の要旨とするところは、モータおよび/またはジェネレータとして作動可能な回転電機を備えた過給機を有するエンジンの出力トルクを推定するための車両用エンジントルク推定方法であって、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいてエンジン背圧を推定し、その背圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定することにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、過給機に備えられた回転電機の運転状態はエンジンの吸気管内の過給圧或いはエンジンの背圧(排気圧)の変化の原因となるパラメータであることから、その回転電機の運転状態を表す信号に基づいて前記エンジンの出力トルクが推定されることにより実際のトルクが変化する前にそのトルク変化が推定されるので、トルク推定の精度が高められる。また、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいてエンジン背圧を推定し、その背圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定するものであるため、回転電機が発電機として作動するときには、その作動によりエンジン背圧すなわちの排気管内の排気圧が増加するので、その排気圧の増加すなわちそれによるトルク低下に対応する補正値に基づいてエンジンの出力トルクが正確に推定される。
【0008】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいて過給圧を推定し、その過給圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定するものである。このようにすれば、回転電機がモータとして作動するときには、その作動によりエンジンの吸気配管内の過給圧が増加するので、その過給圧の増加すなわちそれによるトルク増加に対応する補正値に基づいてエンジンの出力トルクが正確に推定される。
【0010】
また、好適には、前記回転電機の運転状態を表す信号は、その回転電機を制御するために用いられる制御電流および/またはその制御電流の変化速度、その回転電機を駆動するための駆動電流および/または駆動電流の変化速度、その回転電機の発電によって出力される発電電流のいずれかである。このようにすれば、前記回転電機の運転状態を表すために、制御電流、制御電流の変化速度、駆動電流、駆動電流の変化速度または発電電流が用いられることにより、回転電機の運転状態を検出するためのセンサなどが不要となる。
【0011】
また、好適には、前記エンジンの出力トルクは、そのエンジンに連結された動力伝達装置の摩擦係合装置の伝達トルク容量の制御に用いられるものである。このようにすれば、補正値を用いて高精度で推定された出力トルクに基づいて、上記摩擦係合装置の伝達トルク容量が必要かつ十分に高い精度で制御される。
【0012】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記方法発明を好適に実施するための装置発明の要旨とするところは、モータおよび/またはジェネレータとして作動可能な回転電機を備えた過給機を有するエンジンの出力トルクを推定するための車両用エンジンのトルク推定装置であって、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいて、前記エンジンの出力トルクを推定するエンジントルク推定手段を、含み、前記エンジントルク推定手段は、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいてエンジン背圧を推定し、その背圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定するものである。
【0013】
【第2発明の効果】
このようにすれば、過給機に備えられた回転電機の運転状態はエンジンの吸気管内の過給圧或いはエンジンの背圧(排気圧)の変化の原因となるパラメータである。このため、エンジントルク推定手段によってその回転電機の運転状態を表す信号に基づいて前記エンジンの出力トルクが推定されることにより、実際のトルクが変化する前にそのトルク変化が推定されるので、トルク推定の精度が高められる。また、前記エンジントルク推定手段は、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいてエンジン背圧を推定し、その背圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定するものであるため、回転電機が発電機として作動するときには、その作動によりエンジン背圧すなわちの排気管内の排気圧が増加するので、その排気圧の増加に対応する補正値に基づいてエンジンの出力トルクが正確に推定される。
【0014】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記エンジントルク推定手段は、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいて過給圧を推定し、その過給圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定するものである。このようにすれば、回転電機がモータとして作動するときには、その作動によりエンジンの吸気配管内の過給圧が増加するので、その過給圧の増加に対応する補正値に基づいてエンジンの出力トルクが正確に推定される。
【0016】
また、好適には、前記回転電機の運転状態を表す信号は、その回転電機を制御するために用いられる制御電流および/またはその制御電流の変化速度、その回転電機を駆動するための駆動電流および/または駆動電流の変化速度、その回転電機の発電によって出力される発電電流のいずれかである。このようにすれば、前記回転電機の運転状態を表すために、制御電流、制御電流の変化速度、駆動電流、駆動電流の変化速度または発電電流が用いられることにより、回転電機の運転状態を検出するためのセンサなどが不要となる。
【0017】
また、好適には、(a) 前記回転電機がモータとして作動しているか判定する運転状態判定手段と、(b) その運転状態判定手段により前記回転電機がモータとして作動していると判定された場合には、過給圧の増加に伴う出力トルクの増加を補正するための駆動時補正値を決定する駆動時補正値決定手段とを、含み、(c) 前記エンジントルク推定手段は、予め記憶された関係から実際のエンジン回転速度および要求負荷に基づいて基本出力トルク推定値を算出し、前記駆動時補正値決定手段により決定された駆動時補正値に基づいてその基本出力トルク推定値を補正することにより前記出力トルクを推定するものである。このようにすれば、前記回転電機がモータとして作動している場合には、その回転電機のアシスト駆動力によって過給圧が増加することに起因する出力トルクの増加分を補正するための補正値が求められ、その補正値によって基本出力トルク推定値が補正されるので、トルク推定の精度が高められる。
【0018】
また、好適には、(a) 前記回転電機が発電機として作動しているか判定する運転状態判定手段と、(b) その運転状態判定手段により前記回転電機が発電機として作動していると判定された場合には、前記エンジンの背圧の増加に伴う出力トルクの低下を補正するための発電時補正値を決定する発電時補正値決定手段とを、含み、(c) 前記エンジントルク推定手段は、予め記憶された関係から実際のエンジン回転速度および要求負荷に基づいて基本出力トルク推定値を算出し、前記発電時補正値決定手段により決定された発電時補正値に基づいてその基本出力トルク推定値を補正することにより前記出力トルクを推定するものである。このようにすれば、前記回転電機が発電機として作動している場合には、その発電機として機能する回転電機を駆動するためにエンジンの排気圧が増加することに起因する出力トルクの低下分を補正するための補正値が求められ、その補正値によって基本出力トルク推定値が補正されるので、トルク推定の精度が高められる。
【0019】
また、好適には、(a) 前記エンジンに連結された動力伝達装置の摩擦係合装置の伝達トルク容量を制御する伝達トルク容量制御手段を含み、(b) その伝達トルク容量制御手段は、前記エンジントルク推定手段により推定された出力トルクに基づいてその摩擦係合装置の伝達トルク容量を制御するものである。このようにすれば、エンジントルク推定手段により補正値を用いて高精度で推定された出力トルクに基づいて、上記摩擦係合装置の伝達トルク容量が必要かつ十分に高い精度で制御される。
【0020】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例のエンジン制御装置が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。図において、動力源としてのエンジン10の出力は、振動減衰装置(ダンパ)12を順次介して、副変速部14および無段変速部16を含む無段変速機17に入力され、差動歯車装置18および車軸19を介して一対の駆動輪(たとえば前輪)21へ伝達されるようになっている。また、第2の動力源および発電機として機能するモータジェネレータMG2が上記副変速部14の入力軸に連結されている。無段変速機17は、エンジン10の後段に連結、配置されて駆動輪21へ動力を伝達するための動力伝達装置として機能している。
【0022】
上記エンジン10は、好適には、燃料消費を減少させるために、燃料が筒内噴射されることにより軽負荷時においては空燃比A/Fが理論空燃比よりも高い燃焼である希薄燃焼が行われるリーンバーンエンジンから構成される。このエンジン10は、たとえば3気筒ずつから構成される左右1対のバンクを備え、その1対のバンクは単独で或いは同時に作動させられるようになっており、作動気筒数の変更が可能とされている。このエンジン10の吸気配管45には、図示しないスロットルアクチュエータによって操作されるスロットル弁とが設けられている。このスロットル弁は、基本的には図示しないアクセルペダルの操作量すなわちアクセル開度θACCに対応する大きさのスロットル開度θTHとなるように制御されるが、エンジン10の出力を調節するために変速過渡時などの種々の車両状態に応じた開度となるように制御されるようになっている。また、上記吸気配管45と排気配管46とには、吸気配管45内に位置するポンプ翼車47と排気配管46内に位置するタービン翼車48とを軸端に備えたタービン式過給機49が設けられており、その過給機49には、過給機49により回転駆動されて発電を行う発電機および過給機49を回転駆動する電動機として機能するモータジェネレータMGTが備えられている。
【0023】
上記エンジン10には、エンジン10の起動、補機の駆動、回転エネルギの回収などのために、駆動用電動モータおよび発電機などとして機能するモータジェネレータMG1が直接的に連結されている。
【0024】
また、上記エンジン10は、その運転サイクル数が変更可能となるように構成されている。たとえば図2に示すように、各気筒の電磁駆動弁すなわち吸気弁20および排気弁22と、それらをそれぞれ開閉駆動する電磁アクチュエータ24および26とを含む可変動弁機構28と、クランク軸30の回転角を検出する回転センサ32からの信号に従って上記吸気弁20および排気弁22の作動時期(タイミング)を制御する弁駆動制御装置34とを備えている。この弁駆動制御装置34は、エンジン負荷に応じて作動タイミングを最適時期に変更するだけでなく、加速操作時などの運転サイクル切り換え指令に従って、4サイクル運転を実現する開閉時期および2サイクル運転を実現する開閉時期となるように制御したり、たとえばモータ走行からエンジン走行への切換過渡期間において、エンジン10から出力される動力を駆動輪21へ伝達するためのクラッチC1の入出力回転を同期させるためにエンジン回転速度NEを制御する。上記電磁アクチュエータ24および26は、たとえば図3に示すように、吸気弁20または排気弁22に連結されてその吸気弁20または排気弁22の軸心方向に移動可能に支持された磁性体製の円盤状の可動部材36と、その可動部材36を択一的に吸着するためにそれを挟む位置に設けられた一対の電磁石38、40と、可動部材36をその中立位置に向かって付勢する一対のスプリング42、44とを備えている。
【0025】
前記無段変速機17の副変速部14は、ギヤ比(変速比)γA[=エンジン回転速度(入力軸回転速度)/入力軸56の回転速度(出力軸回転速度)]が1である高速側ギヤ段とギヤ比が1/ρ1である低速側ギヤ段との前進2段、およびギヤ比が−1/ρ2である高速側ギヤ段とギヤ比が−1/ρ1である低速側ギヤ段との後進2段を有するラビニヨ型遊星歯車装置を有する有段変速機である。この副変速部14は、第1クラッチC1を介してエンジン10と連結される第1入力軸50と、第1クラッチC1および第2クラッチC2を介してエンジン10と連結される第2入力軸52と、それら第1入力軸50および第2入力軸52に設けられた第1サンギヤS1および第2サンギヤS2と、ブレーキB1を介して非回転のハウジング54と選択的に連結されるキャリヤKと、副変速部14の出力軸すなわち無段変速部16の入力軸56に連結されたリングギヤRと、キャリヤKによって回転可能に支持されるとともに第1サンギヤS1およびリングギヤRと噛み合う軸長の大きい第1遊星歯車P1と、同様にキャリヤKによって回転可能に支持されるとともに第2サンギヤS2および第1遊星歯車P1と噛み合う軸長の短い第2遊星歯車P2とを備えている。前記モータジェネレータMG2は、上記第2入力軸52に連結されている。
【0026】
図4は、上記副変速部14における各油圧式摩擦係合装置の係合作動の組み合わせによって得られる変速ギヤ段を,よく知られたP、R、N、D、2、Lなどのシフトレバーの操作位置(シフトポジション)毎に示す係合表である。図4において、○は係合、×は解放、△はスリップ係合を示している。前記副変速部14では、シフトレバーのDレンジ位置において、たとえば第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられるとともにブレーキB1が解放されることにより変速比γAが「1」である高速側ギヤ段(前進2nd)が成立させられ、たとえば第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されるとともにブレーキB1が係合されることにより変速比γAが「1/ρ1」である低速側ギヤ段(前進1st)が成立させられる。また、シフトレバーのRレンジ位置において、たとえば第1クラッチC1およびブレーキB1が係合させられるとともに第2クラッチC2が解放されることにより変速比γAが「−1/ρ2」である後進高速側ギヤ段が成立させられ、たとえば第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されるとともにブレーキB1が係合されることにより変速比γAが「−1/ρ1」である後進低速側ギヤ段が成立させられる。上記クラッチC1、C2およびブレーキB1は何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0027】
上記車両のモータ走行による後進時には、モータジェネレータMG2の回転が反転させられて第2サンギヤS2へ入力される。車両停止中は、基本的には、前進および後進のいずれにおいても上記モータジェネレータMG2によりクリープ力が確保される。このため、二次電池68の充電残量が不足しても、エンジン10を始動することによりモータジェネレータMG1から発電された電力が充電のために二次電池68に供給されるので、故障時以外は、モータジェネレータMG2によるモータ発進走行が常時可能とされている。また、前進走行においては、モータジェネレータMG2でクリープトルクを確保しつつ、モータ発進走行が行われる。また、モータジェネレータMG1でエンジン10を始動させ、同期回転に到達したらクラッチC1が係合させられて、エンジン10によりセカンド(2nd)走行が行われる。エンジン10でも発進可能とされており、低速ではクラッチC1をスリップさせつつ徐々に車速Vを上昇させる。比較的高速となると、クラッチC1を完全に係合させる。後進走行においては、モータジェネレータMG2が反転駆動されてクリープ力が確保され、トルクが必要なときはさらにエンジン10が始動される。低速では上記と同様にクラッチC1がスリップ係合させられる。このように、上記副変速部14は、少ない回転要素の数ですべての機能が達成される特徴がある。後進走行時のモータジェネレータMG2からエンジン10への駆動源切換時においてブレーキB1がそのままであり、摩擦係合装置の作動を切り換える必要がない。
【0028】
図1に戻って、前記無段変速機17の無段変速部16は、入力軸56に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ60と、出力軸62に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ64と、それら入力側可変プーリ60および出力側可変プーリ64に巻き掛けられた伝動ベルト66とを備えたベルト式無段変速機である。この伝動ベルト66は、一対の入力側可変プーリ60および出力側可変プーリ64にそれぞれ挟圧された状態で摩擦により動力を伝達する動力伝達部材として機能している。上記入力側可変プーリ60は、入力軸56に固定された固定回転体60aとその入力軸56に軸方向に移動可能且つ軸周りに回転不能に設けられた可動回転体60bとを備え、図示しない入力側油圧シリンダにより挟圧力が付与されるようになっている。また、出力側可変プーリ64も、出力軸62に固定された固定回転体64aとその出力軸62に軸方向に移動可能且つ軸周りに回転不能に設けられた可動回転体64bとを備え、図示しない出力側油圧シリンダにより挟圧力が付与されるようになっている。一般に、上記入力側油圧シリンダは、無段変速部16の変速比γCVT(=入力軸56の回転速度NIN/出力軸62の回転速度NOUT)を変化させるために用いられ、上記出力側油圧シリンダは伝動ベルト66の張力を最適に制御するために用いられる。
【0029】
車両には、充電可能な鉛蓄電池などの二次電池68と、水素などの燃料に基づいて発電を行う燃料電池70とが設けられている。これら二次電池68および又は燃料電池70は、切換装置72によってモータジェネレータMG1および/またはモータジェネレータMG2の電源として選択的に利用され得るようになっている。
【0030】
図5は、電子制御装置80に入力される信号およびその電子制御装置80から出力される信号を例示している。たとえば、電子制御装置80には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θACCを表すアクセル開度信号、無段変速部16の出力軸62の回転速度NOUTに対応する車速信号、エンジン回転速度NEを表す信号、吸気配管45内の過給圧Paを表す信号、空燃比A/Fを表す信号、シフトレバーSHの操作位置SHを表す信号などが図示しないセンサから供給されている。また、電子制御装置80からは、燃料噴射弁からエンジン10の気筒内へ噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、無段変速部16の変速比γCVTを変更するための油圧制御回路内のシフト弁を駆動するシフトソレノイドを制御する変速指令信号、無段変速部16の伝動ベルト66の張力を制御するための張力指令信号、エンジン10のサイクル数を指令する信号などが出力される。
【0031】
上記電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、無段変速部16のギヤ比γCVTを最適値に自動的に切り換える変速制御、無段変速部16の伝動ベルト66の張力を最適値に制御する張力制御、駆動源切換(ハイブリッド駆動)制御などを実行する。たとえば、上記変速制御では、予め記憶されたよく知られた関係(変速線図)からアクセル開度θACC(%)および車速Vに基づいて目標変速比γCVT *を決定し、実際の変速比γCVTがその目標変速比γCVT *と一致するように前記入力側油圧シリンダを作動させる。上記張力制御では、予め記憶された関係から実際のスロットル弁開度θTH、エンジン回転速度NE、および副変速部14のギヤ比γAに基づいて基本挟圧力を算出し、実際の作動油温度TOIL、トルク振動幅或いはエンジン10のサイクル数に基づいてその基本挟圧力を補正し、その補正後の挟圧力で伝動ベルト66を挟圧してその張力を制御するために出力側油圧シリンダを作動させる。また、駆動源切換制御では、たとえば図6および図7に示す予め記憶された関係から車速Vおよび出力軸トルクTOUTに基づいて、駆動源および副変速部14のギヤ段の判定を行い、判定された駆動源および副変速部14のギヤ段に切り換えて走行させる。
【0032】
上記の駆動源切換制御により、図4に示されるように、図示しないシフトレバーが前進(ドライブ:D)ポジションへ操作された前進走行では、モータ走行領域であるので、ブレーキB1が係合されて副変速部14が第1速状態(ギヤ比が1/ρ1の減速状態)とされた状態で、モータジェネレータMG2でクリープトルクを確保しながら、モータ発進が行われる。車速Vが増加してエンジン走行領域となると、エンジン10が起動され且つクラッチC1の入出力回転速度が同期するようにエンジン回転速度NEが制御され、同期が完了するとそのクラッチC1が係合されてエンジン走行が行われる。二次電池68の充電残量が不足でもエンジン10を起動してモータジェネレータMG1で発電させてその二次電池68に充電することが可能であるので、故障時以外は上記のモータ発進が可能とされている。大きな駆動力を必要とするような場合にはエンジンで発進することも可能であり、この場合には、低車速ではクラッチC1をスリップ係合させながら車速を増加させ、比較的高車速となるとクラッチC1を完全係合させる。シフトレバーが後進(リバース:R)ポジションへ操作された後進走行では、モータジェネレータMG2の回転が反転させられてクリープ力が確保されつつ、上記と同様に、ブレーキB1が係合されて副変速部14が第1速状態(ギヤ比が−1/ρ1の減速状態)とされた状態で、モータ発進が行われる。この後進走行においてモータ走行からエンジン走行への切換時には、ブレーキB1は係合状態のままであり、切換が不要とされている。そして、車速増加などにより更に駆動トルクが必要となると、上記エンジン発進と同様に、エンジン10が起動され且つクラッチC1がスリップ係合される。
【0033】
図8は、上記電子制御装置80の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図8において、作動状態判定手段90は、運転状態判定手段としても機能するものであり過給機49と一体回転する回転電機として機能するモータジェネレータMGTが加速応答性を高めるために過給機49を回転駆動するモータとして作動しているか或いは減速走行時のエネルギを回収するために過給機49により回転駆動される発電機として作動しているかの作動状態およびその回転状態、すなわち運転状態を、そのモータジェネレータMGTへ電力が供給されているか或いはモータジェネレータMGTから発電電力が出力されているかに基づいて判定する。
【0034】
駆動時補正値決定手段92は、その作動状態判定手段90によりモータジェネレータMGT(回転電機)がモータとして作動していると判定された場合には、吸気配管45内の過給圧の増加に伴う出力トルクの増加を反映させる補正をするための駆動時補正値たとえば1よりも大きい補正係数K1をたとえば図9に示す予め実験的に求められ且つ記憶された関係から実際のモータジェネレータMGTの運転状態とその回転トルク或いは回転速度に対応する駆動電流値すなわちモータジェネレータMGTを回転駆動するためにそれに供給される駆動電流値および/または駆動電流値の変化速度(変化率すなわち増加速度)とに基づいて逐次決定する。モータジェネレータMGTを駆動することによって過給機49の回転がアシストされて回転速度が上昇し、過給圧がそのアシスト量および/またはアシスト量増加速度すなわち駆動電流値および/またはその変化速度(変化率)に応じて高められる。上記図9に示す関係において、実線から破線に示すように駆動電流値の増加速度が変化すると、それに応じてトルク推定補正係数K1の増加率が増加させられている。また、図9に示す関係では、モータジェネレータMGTの駆動電流値の大きさに対応する大きさの補正係数K1を決定するためだけでなく、その補正係数K1には遅れ時間Dが付与されている。この遅れ時間Dは、過給機49に対するアシスト(過給機49の回転増加)が開始されてからエンジン10のトルク増加が発生するまでの時間差に対応するものであり、予め実験的に求められたものである。
【0035】
発電時補正値決定手段94は、上記作動状態判定手段90によりモータジェネレータMGT(回転電機)が発電機として作動していると判定された場合には、エンジン10の背圧すなわち排気配管46内の排気圧の増加に伴う出力トルクの低下を反映させる補正をするための発電時補正値たとえば補正係数K2をたとえば図10に示す予め実験的に求められ且つ記憶された関係から実際のモータジェネレータMGTの運転状態とその消費トルク或いは発電時回転速度に対応する発電電流値とに基づいて決定する。
【0036】
エンジントルク推定手段96は、モータジェネレータMGT(回転電機)の運転状態、すなわちモータ或いは発電機のいずれの状態で作動しているか否かを示す作動状態およびその回転状態を表す信号に基づいて、エンジン10の出力トルクTEを推定する。すなわち、エンジントルク推定手段96は、先ず、たとえば図11に示す予め記憶された関係から実際の要求負荷たとえばスロットル開度θおよびエンジン回転速度NEに基づいて基本出力トルク推定値TE0を算出し、作動状態判定手段90によりモータジェネレータMGT(回転電機)がモータとして作動していると判定された場合には、前記駆動時補正値決定手段92により決定された駆動時補正値たとえば補正係数K1に基づいて上記基本出力トルク推定値TE0を補正することにより出力トルクTE(=K1・TE0)を算出(推定)する。しかし、作動状態判定手段90によりモータジェネレータMGT(回転電機)が発電機として作動していると判定された場合には、発電時補正値決定手段94により決定された発電時補正値たとえば補正係数K2に基づいて上記基本出力トルク推定値TE0を補正することにより前記出力トルクTE(=K2・TE0)を算出(推定)する。
【0037】
油圧制御手段98は、無段変速機17の伝達トルク容量を制御する伝達トルク容量制御手段としても機能するものであり上記エンジントルク推定手段96により求められた出力トルクTEに基づいて、エンジン10に連結された動力伝達装置である無段変速機17の入力側に配置されたクラッチC1、C2、副変速部14のブレーキB1、無段変速部16において伝動ベルト66が巻き掛けられた一対の可変プーリ60および64に供給される係合圧をそれぞれ制御することにより、それらの伝達トルク容量を制御する。
【0038】
図12は、電子制御装置80による制御作動の要部すなわちエンジントルク推定制御ルーチンを説明するフローチャートであり、数msec 乃至数十msec 程度の極めて短い周期で繰り返し実行される。
【0039】
図12において、ステップ(以下、ステップを省略する)S1では、たとえば無段変速機(動力伝達装置)17の入力トルクTINを推定するために、エンジントルク10の出力トルクTEを推定中であるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記作動状態判定手段90に対応するS2において、モータジェネレータMGT(回転電機)が過給機49を回転駆動するモータとして作動している状態であるか否かが判断される。このS2の判断が肯定される場合は、モータジェネレータMGT(回転電機)がモータとして作動している状態であるので、前記駆動時補正値決定手段92に対応するS3において、吸気配管45内の過給圧の増加に伴う出力トルクの増加を反映させる補正をするための駆動時補正値である1よりも大きい補正係数K1がたとえば図9に示す予め記憶された関係から実際のモータジェネレータMGTの運転状態とその回転トルク或いは回転速度に対応する駆動電流値すなわちモータジェネレータMGTを回転駆動するためにそれに供給される駆動電流値とに基づいて決定される。次いで、前記エンジントルク推定手段96に対応するS6において、上記S3において決定された補正係数K1に基づいて上記基本出力トルク推定値TE0が補正されることにより出力トルクTE(=K1・TE0)が算出(推定)される。
【0040】
しかし、上記S2の判断が否定される場合は、作動状態判定手段90に対応するS4において、モータジェネレータMGT(回転電機)が発電機として作動している状態であるか否かが判断される。このS4の判断が否定される場合は、直接S6が実行されるが、肯定される場合は、モータジェネレータMGT(回転電機)が発電機として作動している状態であるので、前記発電時補正値決定手段94に対応するS5において、エンジン10の背圧すなわち排気配管46内の排気圧の増加に伴う出力トルクの低下を反映させる補正をするための発電時補正係数K2がたとえば図10に示す予め記憶された関係から実際のモータジェネレータMGTの運転状態とその消費トルク或いは発電時回転速度に対応する発電電流値とに基づいて決定される。そして、前記エンジントルク推定手段96に対応するS6において、上記発電時補正係数K2に基づいて上記基本出力トルク推定値TE0が補正されることにより前記出力トルクTE(=K2・TE0)が算出(推定)される。
【0041】
上述のように、本実施例によれば、過給機49に備えられたモータジェネレータMGT(回転電機)の運転状態はエンジンの吸気管内の過給圧或いはエンジンの背圧(排気圧)の変化の原因となるパラメータであることを利用して、エンジントルク推定手段96によってそのモータジェネレータMGTの運転状態を表す信号に基づいてエンジン10の出力トルクTEが推定されることにより実際の出力トルクが変化する前にそのトルク変化が推定されるので、トルク推定やそれを利用した係合油圧制御の精度が高められる。
【0042】
また、本実施例では、(a) 作動状態判定手段90(S2)によりモータジェネレータMGT(回転電機)がモータとして作動していると判定された場合には、過給圧の増加に伴う出力トルクの増加を補正するための駆動時補正係数K1を決定する駆動時補正値決定手段92(S3)と、(b) その駆動時補正値決定手段92により決定された駆動時補正係数K1に基づいて基本出力トルク推定値TE0を補正することにより出力トルクTEを推定するエンジントルク推定手段96とが備えられており、モータジェネレータMGT(回転電機)の運転状態を表す信号に基づいて過給圧増加分すなわちそれによるトルク増加分に対応する駆動時補正係数K1が決定されることにより実質的に過給圧が推定され、その駆動時補正係数K1すなわち過給圧に基づいてエンジン10の出力トルクTEが推定される。このため、モータジェネレータMGTがモータとして作動するときには、その作動によりエンジン10の吸気配管45内の過給圧が増加するので、その過給圧の増加すなわちそれによるトルク増加に対応する補正値K1に基づいてエンジン10の出力トルクTEが正確に推定される。
【0043】
また、本実施例によれば、(a) 作動状態判定手段90(S4)によりモータジェネレータMGT(回転電機)が発電機として作動していると判定された場合には、エンジン10の背圧(排気圧)の増加に伴う出力トルクの低下を補正するための発電時補正係数K2を決定する発電時補正値決定手段94(S5)と、(b) その発電時補正値決定手段94により決定された発電時補正係数K2に基づいて基本出力トルク推定値TE0を補正することにより出力トルクTEを推定するエンジントルク推定手段96とが備えられており、モータジェネレータMGT(回転電機)の運転状態を表す信号に基づいて背圧増加分すなわちそれによるトルク低下分に対応する発電時補正係数K2が決定されることにより実質的に排気管内の排気圧が推定され、その発電時補正係数K2すなわち背圧に基づいてエンジン10の出力トルクTEが推定される。このため、モータジェネレータMGTが発電機として作動するときには、その作動によりエンジン10の排気配管46内の排気圧が増加するので、その排気圧の増加すなわちそれによるトルク低下に対応する発電時補正値K2に基づいてエンジン10の出力トルクTEが正確に推定される。
【0044】
また、本実施例の車両には、エンジン10に連結された無段変速機(動力伝達装置)17の油圧式摩擦係合装置の伝達トルク容量を制御する油圧制御手段98が設けられ、その油圧制御手段98は、エンジントルク推定手段96により推定された出力トルクTEに基づいてその油圧式摩擦係合装置の伝達トルク容量を制御するものであるので、その油圧式摩擦係合装置の伝達トルク容量が必要かつ十分に高い精度で制御される。
【0045】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図13は、本発明の他の実施例の動力伝達装置を示す図であり、図14はその骨子図であり、図15はその油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせにより得られる変速段を示す図である。
【0047】
図13において、エンジン110の出力は、クラッチ112、トルクコンバータ114を有する自動変速機116に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。上記クラッチ112とトルクコンバータ114との間には、電動モータおよび発電機として機能する第1モータジェネレータMG1が配設されている。図14に示すように、上記トルクコンバータ114は、クラッチ112に連結されたポンプ翼車120と、自動変速機116の入力軸122に連結されたタービン翼車124と、それらポンプ翼車120およびタービン翼車124の間を直結するためのロックアップクラッチ126と、一方向クラッチ128によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車130とを備えている。
【0048】
上記自動変速機116は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機132と、後進変速段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機134とを備えている。第1変速機132は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置136と、サンギヤS0とキャリアK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング138間に設けられたブレーキB0とを備えている。第2変速機134は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置140と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置142と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置144とを備えている。
【0049】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸146に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3および中間軸148に一体的に連結されている。そして、リングギヤR0と中間軸148との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2とリングギヤR0との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング138に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング138との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸122と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。キャリアK1とハウジング138との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング138との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0050】
以上のように構成された自動変速機116では、例えば図15に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段の変速段のいずれかに切り換えられる。図15において「○」は係合状態を表し、空欄は解放状態を表し、「◎」はエンジンブレーキのときの係合状態を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。この図15から明らかなように、第2変速段(2nd)から第3変速段(3rd)へのアップシフトでは、ブレーキB3を解放すると同時にブレーキB2を係合させるクラッチツークラッチ変速が行われ、ブレーキB3の解放過程で係合トルクを持たせる期間とブレーキB2の係合過程で係合トルクを持たせる期間とがオーバラップして設けられる。それ以外の変速は、1つのクラッチまたはブレーキの係合或いは解放作動だけで行われるようになっている。上記クラッチおよびブレーキは何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0051】
前記エンジン110は、後述する過給機154を備えているとともに、燃料消費を減少させるために、燃料が筒内噴射されることにより軽負荷時においては空燃比A/Fが理論空燃比よりも高い燃焼である希薄燃焼が行われるリーンバーンエンジンである。このエンジン110は、3気筒ずつから構成される左右1対のバンクを備え、その1対のバンクは単独で或いは同時に作動させられるようになっている。すなわち、作動気筒数の変更が可能となっている。
【0052】
たとえば図13に示すように、上記エンジン110の吸気配管150および排気管152には、排気タービン式過給機(以下、過給機という)154が設けられている。この過給機154は、排気管152内において排気の流れにより回転駆動されるタービン翼車156と、エンジン110への吸入空気を圧縮するために吸気配管150内に設けられ且つタービン翼車156に連結されたポンプ翼車158と、それらタービン翼車156とポンプ翼車158との間に位置してそれらタービン翼車156およびポンプ翼車158と共に回転させられるモータジェネレータMGTとを備え、そのポンプ翼車158がタービン翼車156によって回転駆動されるようになっている。上記排気管152には、ウエイストゲート弁159を備えてタービン翼車156をバイパスするバイパス管161が並列に設けられており、タービン翼車156を通過する排気ガス量とバイパス管161を通過する排気ガス量との比率が変化させられることにより、吸気配管150内の過給圧Paが調節されるようになっている。なお、このような排気タービン式過給機に換えて、エンジン或いは電動機によって回転駆動される機械ポンプ式の過給機が設けられていてもよい。
【0053】
上記エンジン110の吸気配管150には、スロットルアクチュエータ160によって操作されるスロットル弁162とが設けられている。このスロットル弁162は、基本的には図示しないアクセルペダルの操作量すなわちアクセル開度θACCに対応する開度θTHとなるように制御されるが、エンジン110の出力を調節するために変速過渡時などの種々の車両状態に応じた開度となるように制御されるようになっている。
【0054】
また、前記第1モータジェネレータMG1はエンジン110と自動変速機116との間に配置され、クラッチ112はエンジン110と第1モータジェネレータMG1との間に配置されている。上記自動変速機116の各油圧式摩擦係合装置およびロックアップクラッチ126は、電動油圧ポンプ164から発生する油圧を元圧とする油圧制御回路166により制御されるようになっている。また、エンジン110には第2モータジェネレータMG2が作動的に連結されている。そして、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2の電源として機能する燃料電池170および二次電池171と、それらから第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2へ供給される電流を制御したり或いは充電のために二次電池171へ供給される電流を制御するための切換スイッチ172および173とが設けられている。この切換スイッチ172および173は、スイッチ機能を有する装置を示すものであって、たとえばインバータ機能などを有する半導体スイッチング素子などから構成され得るものである。
【0055】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0056】
たとえば、前述の実施例において、過給機49に連結された回転電機としてモータジェネレータMGTが用いられていたが、モータとして機能する回転電機、或いは専らジェネレータ(発電機)として機能する回転電機が用いられていてもよい。要するに、モータおよび/またはジェネレータとして作動可能な回転電機であればよい。
【0057】
また、前述の実施例では、モータジェネレータMGT(回転電機)の運転状態を表す信号として、そのモータジェネレータMGTを駆動するための駆動電流および/または駆動電流の変化速度、そのモータジェネレータMGTの発電によって出力される発電電流が用いられていたが、そのモータジェネレータMGTを制御するために用いられる制御電流および/または制御電流の変化速度が用いられてもよい。このように、本実施例では、モータジェネレータMGTの運転状態を表すために、制御電流、制御電流の変化速度、駆動電流、駆動電流の変化速度または発電電流が用いられることにより、モータジェネレータMGTの運転状態を検出するためのセンサなどが不要となる。
【0058】
また、前述の実施例では、駆動時補正係数K1或いは発電時補正係数K2が基本出力トルク推定値TE0に乗算されることにより出力トルクTEが算出(推定)されていたが、基本出力トルク推定値TE0を加算補正或いは減算補正するように駆動時補正値或いは発電時補正値が求められてもよい。
【0059】
また、前述の実施例のエンジントルク推定手段96において、たとえば図11に示す予め記憶された関係から実際のエンジン回転速度NEおよびスロットル開度θに基づいて基本出力トルク推定値TE0が求められていたが、そのスロットル開度θに替えて、アクセルペダル操作量、吸入空気量、燃料噴射量などの要求負荷(要求出力)値が用いられてもよい。
【0060】
また、前記無段変速部16は、動力伝達部材として機能する伝動ベルト66が有効径が可変である一対の可変プーリ60および64に巻き掛けられた所謂ベルト式無段変速機であったが、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンと、その軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧され、そのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機などであってもよい。このトラクション型無段変速機では、一対のコーンの間で挟圧されるローラが動力伝達部材として機能している。
【0061】
また、前述の実施例では、モータジェネレータMG1およびMG2が備えられていたが、本発明の実施には必ずしもそれら2つのモータジェネレータが設けられる必要はない。
【0062】
また、前述の実施例において、クラッチC1、C2およびブレーキB1として油圧式摩擦係合装置が用いられていたが、電磁クラッチ、磁粉クラッチなどのように必ずしも油圧式摩擦係合装置でなくてもよい。
【0063】
その他、一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の車両用エンジンのトルク推定装置が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1のエンジンの各気筒に設けられた可変動弁機構を説明する図である。
【図3】図2の可変動弁機構に設けられて吸気弁或いは排気弁を開閉作動させる電磁アクチュエータの構成を説明する図である。
【図4】図1の副変速機におけるシフトレバーの操作位置および摩擦係合装置の作動の組み合わせによって得られる走行モード或いはギヤ段を説明する図である。
【図5】図1の実施例の車両に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図6】図5の電子制御装置による駆動源切換制御において用いられる予め記憶された関係であって、前進走行時に用いられる関係を示す図である。
【図7】図5の電子制御装置による駆動源切換制御において用いられる予め記憶された関係であって、後進走行時に用いられる関係を示す図である。
【図8】図5の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】図8の駆動時補正値決定手段において駆動時補正値を求めるために用いられる関係を示す図である。
【図10】図8の発電時補正値決定手段において発電時補正値を求めるために用いられる関係を示す図である。
【図11】図8のエンジントルク推定手段においてエンジンの基本出力トルク推定値を求めるために用いられる関係を示す図である。
【図12】図5の電子制御装置の制御作動の要部すなわちエンジントルク推定制御作動を説明するフローチャートである。
【図13】本発明の他の実施例の動力伝達装置を示す図である。
【図14】図13の自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図15】図13の自動変速機において、その油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせにより得られる変速段を示す図である。
【符号の説明】
10:エンジン
17:無段変速機(動力伝達装置)
49、154:過給機
80:電子制御装置(エンジンのトルク推定装置)
90:作動状態判定手段(運転状態判定手段)
92:駆動時補正値決定手段
94:発電時補正値決定手段
96:エンジントルク推定手段
98:油圧制御手段(伝達トルク容量制御手段)
Claims (16)
- モータおよび/またはジェネレータとして作動可能な回転電機を備えた過給機を有するエンジンの出力トルクを推定するための車両用エンジンのトルク推定方法であって、
前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいてエンジン背圧を推定し、該背圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定することを特徴とする車両用エンジンのトルク推定方法。 - 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を制御するために用いられる制御電流である請求項1の車両用エンジンのトルク推定方法。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を制御するために用いられる制御電流の変化速度である請求項2の車両用エンジンのトルク推定方法。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を駆動するための駆動電流である請求項1の車両用エンジンのトルク推定方法。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を駆動するための駆動電流の変化速度である請求項4の車両用エンジンのトルク推定方法。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機の発電によって出力される発電電流である請求項1の車両用エンジンのトルク推定方法。
- 前記エンジンの出力トルクは、該エンジンに連結された動力伝達装置に備えられた摩擦係合装置の伝達トルク容量の制御に用いられるものである請求項1乃至6のいずれか1の車両用エンジンのトルク推定方法。
- モータおよび/またはジェネレータとして作動可能な回転電機を備えた過給機を有するエンジンの出力トルクを推定するための車両用エンジンのトルク推定装置であって、
前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいて、前記エンジンの出力トルクを推定するエンジントルク推定手段を、含み、
前記エンジントルク推定手段は、前記回転電機の運転状態を表す信号に基づいてエンジン背圧を推定し、該背圧に基づいて前記エンジンの出力トルクを推定するものであることを特徴とする車両用エンジンのトルク推定装置。 - 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を制御するために用いられる制御電流である請求項8の車両用エンジンのトルク推定装置。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を制御するために用いられる制御電流の変化速度である請求項9の車両用エンジンのトルク推定装置。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を駆動するための駆動電流である請求項8の車両用エンジンのトルク推定装置。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機を駆動するための駆動電流の変化速度である請求項11の車両用エンジンのトルク推定装置。
- 前記回転電機の運転状態を表す信号は、該回転電機の発電によって出力される発電電流である請求項8の車両用エンジンのトルク推定装置。
- 前記回転電機がモータとして作動しているか判定する運転状態判定手段と、
該運転状態判定手段により前記回転電機がモータとして作動していると判定された場合には、過給圧の増加に伴う出力トルクの増加を補正するための駆動時補正値を決定する駆動時補正値決定手段と
を、含み、
前記エンジントルク推定手段は、予め記憶された関係から実際のエンジン回転速度および要求負荷に基づいて基本出力トルク推定値を算出し、前記駆動時補正値決定手段により決定された駆動時補正値に基づいて該基本出力トルク推定値を補正することにより前記出力トルクを推定するものである請求項8の車両用エンジンのトルク推定装置。 - 前記回転電機が発電機として作動しているか判定する運転状態判定手段と、
該運転状態判定手段により前記回転電機が発電機として作動していると判定された場合には、前記エンジンの背圧の増加に伴う出力トルクの低下を補正するための発電時補正値を決定する発電時補正値決定手段と
を、含み、
前記エンジントルク推定手段は、予め記憶された関係から実際のエンジン回転速度および要求負荷に基づいて基本出力トルク推定値を算出し、前記発電時補正値決定手段により決定された発電時補正値に基づいて該基本出力トルク推定値を補正することにより前記出力トルクを推定するものである請求項8の車両用エンジンのトルク推定装置。 - 前記エンジンに連結された動力伝達装置の摩擦係合装置の伝達トルク容量を制御する伝達トルク容量制御手段を含み、
該伝達トルク容量制御手段は、前記エンジントルク推定手段により推定された出力トルクに基づいて該摩擦係合装置の伝達トルク容量を制御するものである請求項8乃至15のいずれか1の車両用エンジンのトルク推定装置。
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