JP4054981B2 - エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた真空用機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空下で使用されるエポキシ樹脂およびそのエポキシ樹脂を用いた真空用機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空用機器では、電子回路の基板や電磁コイルの含浸モールド材などの電気絶縁部材や、表面のコーティング材には、その混合・成形の容易さから、エポキシ樹脂に触媒または硬化剤や、必要に応じて希釈剤や無機充填材を混合し、硬化させたエポキシ樹脂組成物が主に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−317031号公報(第1―3頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エポキシ樹脂組成物を用いた真空用機器では、真空下におけるガス放出速度が大きく、目標の到達圧力を得る事が出来ないといった問題が有った。この放出ガスは、樹脂表面に吸着された水の脱離や、樹脂内部に吸蔵された水の表面への拡散により放出された水が主成分である。ガス放出を抑制するため、吸水性が小さい無機充填材を高充填して、吸水性の高いエポキシ樹脂部分の体積分率を低減させる手段は、充填材の体積分率に対して水分ガス放出抑制効果はきわめて小さかった。
そこで、本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、真空環境に暴露されてもガス放出速度が小さいエポキシ樹脂組成物およびこれを用いた真空用機器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明のエポキシ樹脂組成物および真空用機器は、つぎの構成にしている。
(1)機器の少なくとも真空雰囲気と接触する表面を覆うために使用されるエポキシ樹脂組成物であって、化学構造中にエポキシ基を2個以上持つエポキシ樹脂と触媒または硬化剤との混合物に、熱可塑性樹脂を添加したエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、熱可塑性樹脂の配合比に応じて親水基が減少するので、吸水性が小さなり、ガス放出も小さくなる。
(2)希釈剤として、化学構造式中にエポキシ基を1個以上持つ反応性のエポキシ系樹脂を含ませたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、希釈剤によってエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂の相溶性が高まり熱可塑性樹脂の配合比を高めることができるので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(3)前記熱可塑性樹脂の配合比は、前記エポキシ樹脂と前記触媒または前記硬化剤と前記希釈剤との合計100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下としたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、吸水率の小さい熱可塑性樹脂を高い割合で配合するので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(4)前記熱可塑性樹脂は、室温での吸水率が0.05%以下としたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、吸水率が小さい熱可塑性樹脂を配合するので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(5)前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィドのいずれか一つとしたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、吸水率が小さい熱可塑性樹脂を配合するので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(6)前記熱可塑性樹脂は、前記エポキシ樹脂と前記触媒または前記硬化剤との未硬化混合物と混合された後、前記エポキシ樹脂を硬化させたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、エポキシ樹脂と分子レベルで配合、相互溶解するので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(7)前記希釈剤は、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、3級カルボン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、クレジルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルのいずれか一つとしたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、希釈剤によってエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂の相溶性が高まり熱可塑性樹脂の配合比を高めることができるので、吸水性が小さくなくなり、ガス放出も小さくなる。
(8)前記熱可塑性樹脂は、前記エポキシ樹脂と前記触媒または前記硬化剤と前記希釈剤との未硬化混合物と混合された後、前記エポキシ樹脂と前記希釈剤が硬化させたエポキシ樹脂組成物である。
本構成によれば、エポキシ樹脂と分子レベルで配合、相互溶解するので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(9)請求項1から8に記載のエポキシ樹脂組成物によって、真空雰囲気と接触する表面を形成した真空用機器である。
本構成によれば、吸水率の小さい熱可塑性樹脂を高い割合で配合し、エポキシ樹脂と分子レベルで配合、相互溶解するので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(10)前記エポキシ樹脂組成物の形成方法が、塗布、二層注型、ゲルコート、粉体塗装、プリプレグ貼付のいずれかのコーティングである。
本構成によれば、真空雰囲気と接触する表面の吸水性が低下するので、ガス放出が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
一般的に、エポキシ樹脂組成物は疎水性の熱可塑性樹脂よりも真空中での水分ガス放出速度が大きい。それは化学構造中に親水基が多く存在し、大気中の水分を吸着、吸蔵しやすいためである。例えば、アミン系硬化剤を用いた硬化物は水酸基が、酸無水物硬化剤を用いた硬化物はカルボニル基が、エポキシ樹脂や反応性希釈剤のエポキシ基との架橋点に発生し、吸水性が大きくなる。また、これらの官能基が生じない触媒硬化エポキシ樹脂では、アミン硬化物や酸無水物硬化物よりも吸水性は小さくなるが、触媒分子の親水性が強いため、疎水性の熱可塑性樹脂と比較して、水分ガス放出速度や吸水率が10倍以上大きい。吸水性を抑制するため、エポキシ樹脂と触媒または硬化剤と希釈剤の体積分率を低減する手段として、吸水性が小さい無機充填材を高充填する手段もあるが、樹脂/充填材界面の吸湿が大きいため、抑制効果が小さかった。
本発明では、吸水性の大きいエポキシ樹脂と触媒または硬化剤と希釈剤の体積分率を低減し、しかも充填材との界面が生じない手段として、疎水性の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイを形成することで、エポキシ樹脂組成物からの水分ガス放出量を低減させた。疎水性の熱可塑性樹脂は、ASTM D570に規定された、室温浸漬における吸水率が0.05%以下の物を用いた。これは、一般的なエポキシ樹脂硬化物の吸水率は0.3〜1%であり、その1/10以下のものとした。
一般的に疎水性の熱可塑性樹脂とエポキシ樹脂とは相互溶解性が悪い。そこで、熱可塑性樹脂の配合比を高めるため、相溶化剤として、熱可塑性樹脂の化学構造と似た官能基とエポキシ基とをもつ希釈剤と熱硬化性樹脂とを混合した後、エポキシ樹脂と混合し、相互溶解させる手段をとった。ちなみに、エポキシ基を持たない希釈剤、いわゆる有機溶剤は、相互溶解の効果は有るが、硬化物の化学構造に取り込まれないため真空雰囲気では有機系ガスとして放出され、半導体製造装置や液晶製造装置では使用できない。
【0007】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態は、本発明のエポキシ樹脂組成物単体について、ガス放出速度を低減させたものである。試料とその作製方法、および評価方法はつぎのようにした。
(1)試料
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型(BPA型、エポキシ当量は190)
触媒:2エチル4メチルイミダゾール(2E4MZ)
アミン型硬化剤:4,4’ジアミノジフェニルメタンと誘導体の混合物(DDM)
充填材:溶融シリカ(SiO2、平均粒径15μm)
熱可塑性樹脂:ポリエチレン(PE、吸水率0.01%)、
ポリプロピレン(PP、吸水率0.02%)、
ポリスチレン(PS、吸水率0.03%)
希釈剤:3級カルボン酸グリシジルエステル(通称カージュラE(CaE)、PE,PP
と同じアルキル基を持つ1官能エポキシ)、
フェニルグリシジルエーテル(PGE、PSと同じフェニル基を持つ1官能エポキシ)
なお、エポキシ樹脂組成物の配合比を、触媒硬化型について表1に、アミン系硬化剤硬化型について表2に示す。
(2)試料の作製方法
試料寸法は、50mm×50mm、厚さ1mmの板状とした。全試料とも、硬化条件はすべて150℃、5時間とし、硬化後に25℃、60%RH、24時間の調湿をした。
(3)評価方法
150℃、6時間のベーキング後のガス放出速度と残留ガススペクトルを、室温にて測定した。
(4)評価結果
ガス放出速度の評価結果を、表1,2に示す。なお、残留ガススペクトルの測定結果より、いずれの試料も室温での放出ガスの主成分は水であり、全ガス放出速度は水の放出速度で決められていた。
表1(No.1〜11)は、イミダゾール系触媒硬化エポキシ樹脂組成物の結果であり、そのうち、No.1〜2は比較例、No.3〜11は実施例である。比較例No.1は、充填材と熱可塑性樹脂を含まないもので、ガス放出速度を1としている。比較例No.2は、充填材を含むが熱可塑性樹脂は含まないものである。実施例No.3〜11および比較例No.2のガス放出速度は、比較例No.1のガス放出速度に対する比率を示している。
表2(No.12〜22)は、アミン硬化エポキシ樹脂組成物の結果であり、そのうち、No.12〜13は比較例、No.14〜22は実施例である。
比較例No.12は、充填材と熱可塑性樹脂を含まないもので、ガス放出速度を1としている。比較例No.13は、充填材を含むが熱可塑性樹脂は含まないものである。実施例No.14〜22および比較例No.13のガス放出速度は、比較例No.12のガス放出速度に対する比率を示している。
表1、表2とも、充填材を含む比較例はその充填材の体積分率が約50%であるにもかかわらず、ガス放出速度の低下幅は小さなものであった。
これに対して、本実施例の熱可塑性樹脂を含むものは、比較例よりもガス放出速度が小さく、その低下幅は、概ね熱可塑性樹脂の配合比に近い値となり、吸水率の小さい熱可塑性樹脂を含むことで、エポキシ樹脂組成物のガス放出速度が大幅に抑制されることが確認された。
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
なお、本実施例で用いた熱可塑性樹脂以外にも、吸水率が極めて小さい熱可塑性樹脂であるポリフェニレンオキサイド、メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィドを用いても良い。また、希釈剤についても、フェニルグリシジルエーテルの代わりに、フェニル基を持つスチレンオキサイドやクレジルグリシジルエーテルを用いても良く、または3級カルボン酸グリシジルエステルの代わりに、アルキル基を持つブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルを用いても良い。
【0011】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態は、ガス放出速度が大きなエポキシ樹脂組成物の表面を、本発明のエポキシ樹脂組成物にてコーティングすることによるガス放出を抑制したものである。試料とその作製方法、および評価方法はつぎのようにした。
(1)試料
本実施例で用いた材料ならびに配合比は、第一の実施形態で用いたものの中から選択した。その配合比を表3に示す。
(2)試料の作製方法
試料の形状を図1に示す。図において、1はアルミニウム製の容器、2は内層樹脂組成物、3はコーティング層である。試料は、50mm×50mm×2.5mmの容積を持つ容器1にガス放出速度の大きいエポキシ樹脂組成物を内層樹脂組成物2として2mmの深さで容器に注入・硬化させ、コーティング層3を施して作製した。
比較例No.23は、第一の実施形態のNo.1のエポキシ樹脂組成物を内層樹脂組成物2としたものである。
実施例No.24〜33は、比較例No.23と同じ条件で作製した内層樹脂組成物2の表面に触媒硬化エポキシ樹脂組成物を後述の方法にて厚さ0.2mmのコーティング層3を施したものである。
内層樹脂組成物2およびコーティング層3とも硬化条件は、150℃、5時間とし、コーティング層3の硬化後に25℃、60%RH、24時間の調湿をした。
次に、コーティング層3の形成方法について説明する。
塗布については、通常のはけ塗りで形成した。
ゲルコート法については、容器3の蓋(図示しない)に未硬化のコーティング層3を施した後、内層樹脂組成物2を容器3に注型・硬化し、蓋を外すことでコーティング層3を形成した。なお、これらの未硬化コーティング層3は熱可塑性樹脂の配合比が高いため室温では固形であり、加熱溶融させて塗布した後、室温に冷却した。
プリプレグ法については、コーティング層3に用いる未硬化のエポキシ樹脂/触媒/熱可塑性樹脂/希釈剤混合物にてプリプレグシートを作製し、硬化した内層樹脂組成物2の表面に貼付・硬化させてコーティングした。このプリプレグシート作製について、コーティング層3に用いる未硬化樹脂は室温では固形であり、プリプレグ成型治具上に加熱溶融させた後、冷却することで形成した。
粉体塗装については、通常の塗装方法をとった。塗装用の粉末は、コーティング層3に用いる未硬化のエポキシ樹脂/触媒/熱可塑性樹脂/希釈剤混合物を、ドライアイスにて冷却しながら、ミルにて粉砕することで作製した。
(3)評価方法
第一の実施形態と同様にした。
(4)評価結果
ガス放出速度の比較結果を表3に示す。コーティングを施さない比較例であるNo.23のガス放出速度を1として、実施例であるNo.24〜33のガス放出速度の比率を示した。ちなみに、残留ガススペクトルの測定結果より、いずれの試料も室温での放出ガスの主成分は水であり、全ガス放出速度は水の放出速度で決められていた。
熱可塑性樹脂を含む実施例No.24〜33は、その比較例となるNo.23よりもガス放出速度が小さく、その低下幅は、概ね熱可塑性樹脂の配合比に近い値となり、吸水率の小さな熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物をコーティングすることでガス放出速度は小さくなることがわかった。よって、表面に本発明のエポキシ樹脂組成物をコーティングすることによるガス放出速度抑制の効果と、本実施例に用いたコーティング方法の有効性が確認された。
なお、本実施例で用いた熱可塑性樹脂以外にも、吸水率が極めて小さい熱可塑性樹脂であるポリプロピレン、ポリフェニレンオキサイド、メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィドを用いても良い。また、希釈剤についても、フェニルグリシジルエーテルの代わりに、フェニル基を持つスチレンオキサイドやクレジルグリシジルエーテルを用いても良く、または3級カルボン酸グリシジルエステルの代わりに、アルキル基を持つブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルを用いても良い。
【0012】
【表3】
【0013】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態は、ガス放出速度が大きなエポキシ樹脂組成物にて含浸したコイルの表面を、本発明のエポキシ樹脂組成物にてコーティングすることによりガス放出を抑制したものである。
本発明の第三の実施形態に係る実施例について述べる。試料とその作製方法、および評価方法はつぎのようにした。
(1)試料
本実施例で用いたエポキシ樹脂組成物の配合比は、実施例2と同じである。本実施例で用いた試料の断面図を図2に、比較例で用いた試料の断面図を図3に示す。図において、4はボビン、5はアミドイミド線、6はコイル、7は含浸材である。試料はガス放出速度の大きいNo.1のエポキシ樹脂組成物で作製したボビン4、アミドイミド線(0種φ0.5mm)2を巻回したコイル6、No.1のエポキシ樹脂組成物からなり、コイル6の素線間に含浸した含浸材7、実施例2にて用いた触媒硬化エポキシ樹脂組成物を用いたコーティング層3からなる。
(2)試料の作製方法
比較例No.34は、ボビン4に、アミドイミド線5を長さ50mm、幅30mm、厚さ4mmの外形寸法となるように整列巻きしたコイル6を、No.1のエポキシ樹脂組成物にて素線間含浸したものを用いた。実施例No.35〜44は、比較例の試料の表面に、熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を、表4に示した方法にて厚さ0.2mmのコーティング層3を施したものを用いた。コーティング層3を形成する条件は実施例2と同じであるが、ゲルコート法については蓋ではなく、金型(図示しない)に未硬化のコーティング層3を形成した。また、ボビン4、含浸材7、コーティング層3の硬化条件はすべて150℃、5時間とした。最後に25℃、60%RH、24時間の調湿をした。
(3)評価方法
実施例1と同様にした。
(4)評価結果
ガス放出速度の比較結果を表4中に、コーティングを施さない比較例であるNo.34のガス放出速度を1として、実施例であるNo.35〜44のガス放出速度の比率を示した。ちなみに、残留ガススペクトルの測定結果より、いずれの試料も室温での放出ガスの主成分は水であり、全ガス放出速度は水の放出速度で決められていた。
熱可塑性樹脂を含む実施例No.35〜44は、比較例No.34よりもガス放出速度が小さく、その低下幅は、概ね熱可塑性樹脂の配合比に近い値となり、吸水率の小さな熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物をコーティングすることでのガス放出速度は小さくなることがわかった。よって、表面に本発明のエポキシ樹脂組成物をコーティングすることによるガス放出速度抑制の効果と、本実施例に用いたコーティング方法の有効性が確認された。
なお、本実施例で用いた熱可塑性樹脂以外にも、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキサイド、メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィドを用いても良い。また、希釈剤についても、フェニルグリシジルエーテルの代わりに、フェニル基を持つスチレンオキサイドやクレジルグリシジルエーテルを用いても良く、または3級カルボン酸グリシジルエステルの代わりに、アルキル基を持つブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルを用いても良い。
【0014】
【表4】
【0015】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によればつぎの効果がある。
(1)少なくとも真空雰囲気と接触する表面が、化学構造中にエポキシ基を2個以上持つエポキシ樹脂と触媒または硬化剤との混合物に、熱可塑性樹脂を添加した組成物によってエポキシ樹脂組成物を形成したので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(2)希釈剤として、化学構造式中にエポキシ基を1個以上持つ反応性のエポキシ系樹脂を含ませたので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(3)熱可塑性樹脂の配合比を、エポキシ樹脂と触媒または硬化剤と希釈剤との合計100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下としたので、
吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(4)熱可塑性樹脂は、室温での吸水率が0.05%以下としたので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(5)熱可塑性樹脂を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィドのいずれか一つとしたので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(6)熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂と触媒または硬化剤との未硬化混合物と混合された後、エポキシ樹脂を硬化させたので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(7)希釈剤を、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、3級カルボン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、クレジルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルのいずれか一つとしたので、樹脂の吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(8)熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂と触媒または硬化剤と希釈剤との未硬化混合物と混合された後、エポキシ樹脂と希釈剤を硬化させたので、吸水性が小さくなり、ガス放出も小さくなる。
(9)真空雰囲気と接触する真空用機器の表面に、上記のエポキシ樹脂組成物を形成したので、ガス放出が小さい真空用機器が得られる。
(10)エポキシ樹脂組成物を、塗布、二層注型、ゲルコート、粉体塗装、プリプレグ貼付などのコーティングにより形成したので、ガス放出の小さな真空用機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第二の実施形態に用いた試料の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第三の実施形態に用いた試料の構造を示す断面図である。
【図3】 本発明の第三の実施形態に用いた比較例の試料の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 容器
2 内層樹脂組成物
3 コーティング層
4 ボビン
5 アミドイミド線
6 コイル
7 含浸材
Claims (10)
- 機器の少なくとも真空雰囲気と接触する表面を覆うために使用されるエポキシ樹脂組成物であって、
化学構造中にエポキシ基を2個以上持つエポキシ樹脂と触媒または硬化剤との混合物に、熱可塑性樹脂を添加したことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 - 希釈剤として、化学構造式中にエポキシ基を1個以上持つ反応性のエポキシ系樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂の配合比は、前記エポキシ樹脂と前記触媒または前記硬化剤と前記希釈剤との合計100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂は、室温での吸水率が0.05%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィドのいずれか一つであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂は、前記エポキシ樹脂と前記触媒または前記硬化剤との未硬化混合物と混合された後、前記エポキシ樹脂が硬化されたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記希釈剤は、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、3級カルボン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、クレジルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルのいずれか一つであることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂は、前記エポキシ樹脂と前記触媒または前記硬化剤と前記希釈剤との未硬化混合物と混合された後、前記エポキシ樹脂と前記希釈剤が硬化されたことを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1から8に記載のエポキシ樹脂組成物によって、真空雰囲気と接触する表面が形成されていることを特徴とする真空用機器。
- 前記エポキシ樹脂組成物の形成方法が、塗布、二層注型、ゲルコート、粉体塗装、プリプレグ貼付のいずれかのコーティングであることを特徴とする請求項9に記載の真空用機器。
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