JP5071292B2 - 真空機器 - Google Patents
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Description
図3において、111は高電位導体であり、正の高電圧が印加される。112は低電位導体であり、通常接地される。113は絶縁体であり、高電位導体111の支持および高電位導体111と低電位導体112の電気絶縁を確保するために設けられる。低電位導体112には凹部が形成され、絶縁体113との間にクリアランスが設けられている。絶縁体113は、一般的に、アルミナや繊維強化プラスチック(以下、FRPという)が用いられ、その沿面における絶縁破壊を防止するのに十分な長さが設けられている。
このような絶縁構造体では、低電位導体112に凹部を形成し、低電位導体112と絶縁体113との間にクリアランスが設けられている。これにより絶縁体113の沿面における絶縁破壊の原因の一つであるトリプルジャンクション(真空中の低電位導体112と絶縁体113との接合部)における電子の放出を抑制する。
真空中で図4の高電位導体111に高電圧が印加されると、真空と絶縁体113と低電位導体112とが成す3重点(トリプルジャンクション114)における電界が非常に大きくなり低電位導体112から電子が放出される。放出された一部の電子は絶縁体113に衝突する。このとき、絶縁体113から電子(二次電子)が放出され、この電子が絶縁体113に衝突することでさらに電子が放出される。このように、二次電子が次から次へと増殖される現象(二次電子なだれ現象)が電界によって高電位導体111に向かって進行する。二次電子の放出量が多いと絶縁体113の帯電量が大きくなり、絶縁破壊(沿面放電)しやすくなる。二次電子の放出量は絶縁体113の二次電子放出係数に依存し、この値が大きいほど二次電子放出量が多い。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、真空中における絶縁構造体の沿面での絶縁耐力を向上させた真空機器を提供するとことを目的とする。本発明により、真空機器の小型化を実現することができ、また、絶縁信頼性の高い絶縁構造体を提供することができる。
また、本願の他の代表的な発明は、高電圧が印加される第1および第2の導体間に絶縁体が配置された絶縁構造体を備え、5×10−2Pa以下の圧力下で使用される真空機器であって、前記絶縁体の最表面の一部のみが、米国材料試験協会(ASTM)の規格D570に規定された23℃吸水率が0.3%以下のエポキシ樹脂組成物であり、前記エポキシ樹脂組成物は、少なくとも主剤と反応性希釈剤と触媒型硬化剤とから構成され、前記主剤は、ビスフェノール型、または、芳香族環、五員環、脂肪族六員環、ジシクロペンタジエン構造、ノボラック構造、メソゲン基のいずれかを含む環状の化学構造より選ばれる1つ、またはそれらの混合物であり、前記反応性希釈剤の化学構造は、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能型、または直鎖脂肪族、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリチオールなどの2官能型、またはそれらの混合物であり、前記触媒型硬化剤はイミダゾール化合物、または、3フッ化ホウ素アミン錯体である真空機器である。
さらに、本願の他の代表的な発明は、エポキシ樹脂組成物と絶縁体との間に、縮合型硬化剤を用いたエポキシ樹脂層を形成したものである。
さらに、本願の他の代表的な発明は、上記発明で用いられるイミダゾール化合物を2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール、nウンデシルイミダゾール、1ベンジル2メチルイミダゾール、または、それらの混合物とし、その配合比を前記主剤と前記反応性希釈剤との合計100重量部に対して前記触媒型硬化剤が0.5重量部以上7重量部以下としたものである。
本願の他の発明については、本願明細書および図面の開示を参照すれば理解できるであろう。
本願の他の代表的な発明によれば、エポキシ樹脂組成物と絶縁体との間に、縮合型硬化剤を用いたエポキシ樹脂層を形成したので、絶縁体とその最表面のエポキシ樹脂組成物との密着性が高くなり、さらにガス放出量を低減することができる。その結果、絶縁体の沿面における絶縁耐力がより高まる。
本実施形態における絶縁構造体と図3に示した構造体との間で最も異なる部分は、絶縁体113の表面に形成されたエポキシ樹脂組成物1の有無である。なお、本実施形態においては、絶縁体113の表面にエポキシ樹脂組成物1を形成した例が示されているが、絶縁構造体を全てエポキシ樹脂組成物により構成することも可能である。すなわち、絶縁体をエポキシ樹脂組成物で構成すれば、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
このような構成によれば、絶縁体からのガス放出量が少なく、かつ2次電子放出係数も小さくできる。これにより真空中での絶縁体の沿面における絶縁耐力が向上する。結果として小型化の真空機器を実現することができる。
なお、本実施形態においては、高電位導体111には正の高電位が印加され、低電位導体112には基準電位である接地電位が与えられているが、高電位導体111と低電位導体112との間に所定の電位差(電圧)を生じさせるものであれば本実施形態の態様に限らない。すなわち、所定の電圧が確保できるものであれば、正負の電圧を含めて適宜設定できる。
以下、本実施形態に係る種々の実施例を説明する。
(a)ナフタレン型エポキシ樹脂
(b)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
(c)メソゲン基を持つエポキシ樹脂
(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂
(e)フェニルグリシジルエーテル(反応性希釈剤の一例)
(f)2エチル4メチルイミダゾール
(g)2メチルイミダゾール
(h)3フッ化ホウ素アニリン錯体
(i)ジアミノジフェニルメタン系硬化剤
(j)シリカ(充填材の一例)
絶縁耐力を調べる場合、雰囲気圧力を約1×10−4Paとし、絶縁体113の沿面距離つまり高電位導体111と低電位導体112(接地)との距離を2mmとして高電位導体111に電圧を印加した。また、絶縁耐力には表面の清浄度などが影響することが知られているので、この影響を低減するために、放電20回のコンディショニング後のデータで試料間の比較を行った。
一方、ガス放出速度を調べる場合、絶縁耐力を調べる試料とは別に、絶縁体113と同一材質の平板全面にエポキシ樹脂組成物1を被覆した試料を用いた。ガス放出速度はスループット法で調べ、室温排気10時間時点での試料の単位面積当たりのデータを用いた。
なお、絶縁耐力の従来例には図3の構造の絶縁構造体を用い、図3中x、hはいずれも0.2mmとした。ガス放出速度の従来例にはアルミナおよびFRPの平板試料を用いた。
表2に評価結果を示す。ガス放出速度と絶縁耐力はいずれも相対値である。表1に示した全てのエポキシ樹脂組成物において、絶縁体113がアルミナの場合もFRPの場合も絶縁耐力は5倍以上に向上していることがわかる。表1に示すエポキシ樹脂組成物が最表面に存在することにより、絶縁体113がアルミナの場合は二次電子放出係数の高いアルミナが表面に露出しないようになり、絶縁体113がFRPの場合は、ガス放出速度が低減される。これらに起因して絶縁耐力が向上している。
なお、本実施例の雰囲気圧力は約1×10−4Paとしたが、沿面放電は、絶縁体の表面近傍における絶縁体のガス放出速度が多いほど絶縁破壊しやすくなり、この現象は、雰囲気圧力が5×10−2Pa以下において特に影響が大きくなる。
表3において、絶縁体113がアルミナの場合もFRPの場合も厚みが0.005mmから2.0mmの範囲で絶縁耐力は5倍以上向上していることがわかる。厚みが0.004mm以下において、絶縁体113がアルミナの場合は、二次電子放出係数の高いアルミナが一部表面に露出するために絶縁耐力が低下している。一方、絶縁体113がFRPの場合は、FRPが一部表面に露出することやFRPから放出されたガスがエポキシ樹脂組成物1を透過する割合が増大することによって、ガス放出速度が大きくなる。このために厚みが0.004mm以下において絶縁耐力が低下している。
以上の結果から、エポキシ樹脂組成物の厚みは0.005mm以上2.0mm以下が望ましい。
2 縮合型硬化剤で硬化させたエポキシ樹脂層
111 高電位導体(正の高電圧印加部)
112 低電位導体(接地部)
113 絶縁体
Claims (12)
- 高電位が与えられる高電位導体と、
低電位が与えられる低電位導体と、
前記高電位導体と前記低電位導体との間に配置された絶縁体と、
前記絶縁体上に形成され、米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials) の規格D570に規定された23℃の吸水率が0.3%以下であり、かつ、膜厚が0.005mm以上、2.0mm以下であり、かつ、前記絶縁体とは異なるエポキシ樹脂組成物とを備えたことを特徴とする真空雰囲気で用いられる真空機器。 - 前記真空雰囲気は1×10−2Pa以下であることを特徴とする請求項1記載の真空機器。
- 前記エポキシ樹脂組成物は、少なくとも主剤と反応性希釈剤と触媒型硬化剤とから構成され、前記主剤は、ビスフェノール型、または、芳香族環、五員環、脂肪族六員環、ジシクロペンタジエン構造、ノボラック構造、メソゲン基のいずれかを含む環状の化学構造より選ばれる1つ、またはそれらの混合物であり、前記反応性希釈剤の化学構造は、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能型、または直鎖脂肪族、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリチオールなどの2官能型、またはそれらの混合物であり、前記触媒型硬化剤はイミダゾール化合物、または、3フッ化ホウ素アミン錯体であることを特徴とする請求項1または2記載の真空機器。
- 前記イミダゾール化合物は2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール、nウンデシルイミダゾール、1ベンジル2メチルイミダゾール、または、それらの混合物であり、その配合比が前記主剤と前記反応性希釈剤との合計100重量部に対して前記触媒型硬化剤が0.5重量部以上7重量部以下であることを特徴とする請求項3記載の真空機器。
- 前記3フッ化ホウ素アミン錯体は3フッ化ホウ素アニリン錯体、3フッ化ホウ素クロロフェニルアミン錯体、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項3または4記載の真空機器。
- 前記エポキシ樹脂組成物と前記絶縁体との間に、縮合型硬化剤を用いたエポキシ樹脂層を形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の真空機器。
- 前記絶縁体はアルミナまたは繊維強化プラスチックであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の真空機器。
- 高電圧が印加される第1および第2の導体間に絶縁体が配置された絶縁構造体を備え、5×10−2Pa以下の圧力下で使用される真空機器であって、
前記絶縁体の最表面の一部のみが、米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)の規格D570に規定された23℃吸水率が0.3%以下のエポキシ樹脂組成物であり、
前記エポキシ樹脂組成物は、少なくとも主剤と反応性希釈剤と触媒型硬化剤とから構成され、前記主剤は、ビスフェノール型、または、芳香族環、五員環、脂肪族六員環、ジシクロペンタジエン構造、ノボラック構造、メソゲン基のいずれかを含む環状の化学構造より選ばれる1つ、またはそれらの混合物であり、前記反応性希釈剤の化学構造は、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能型、または直鎖脂肪族、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリチオールなどの2官能型、またはそれらの混合物であり、前記触媒型硬化剤はイミダゾール化合物、または、3フッ化ホウ素アミン錯体であることを特徴とする真空機器。 - 前記イミダゾール化合物は2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール、nウンデシルイミダゾール、1ベンジル2メチルイミダゾール、または、それらの混合物であり、その配合比が前記主剤と前記反応性希釈剤との合計100重量部に対して前記触媒型硬化剤が0.5重量部以上7重量部以下であることを特徴とする請求項8記載の真空機器。
- 前記3フッ化ホウ素アミン錯体は3フッ化ホウ素アニリン錯体、3フッ化ホウ素クロロフェニルアミン錯体、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項8または9記載の真空機器。
- 前記エポキシ樹脂組成物の厚みが、0.005mm以上、2.0mm以下であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の真空機器。
- 前記エポキシ樹脂組成物の下に縮合型硬化剤を用いたエポキシ樹脂層を設けることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の真空機器。
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