JP4054751B2 - 酸性水中油型乳化物の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、十分な粘度を有し、長期間乳化系の安定な酸性水中油型乳化物の製造法に関する。
マヨネーズ類、ドレッシング等の酸性水中油型乳化物は、卵黄を乳化剤として使用し、通常卵黄を含有する水相を調製した後、これに油相を添加し乳化させることにより製造されている。そして近年、健康志向から配合する油相の種類が検討され、また油分が少ない配合等が提案されている。特に、ジグリセリドが肥満防止作用、体重増加抑制作用等を有することが明らかにされるに至り(特許文献1参照)、これを各種食品に配合する試みがなされている(特許文献2参照)。しかし、マヨネーズ類等の酸性水中油型乳化物は乳化安定性が必要であるところ、油相にジグリセリドを配合することが、結果として乳化を不安定化させる要因となっている。
工業化レベルの大量処理では、水相と油相を混合し予備乳化を行った後、精乳化工程を経て製造されている。しかし、精乳化工程で粘度を上げる負荷が高いと、せん断エネルギーが高くなりすぎ、O/W乳化物からW/O乳化物に転相してしまうことがあり、長期間の安定生産が困難となる。油相として通常の油脂(トリグリセリド)を用いた場合には、O/W乳化物を形成し易い性質があるため、転相現象は現れにくい。しかし、油脂にジグリセリドを含有する場合、ジグリセリドがW/O乳化物を形成し易いことから、転相が起こり易いという問題点がある。
また、マヨネーズは、ボトルから絞り出すという使用形態のため、適度な粘度も必要である。ところが、こういった配合において、乳化安定性や粘度を向上させるべく単に卵黄添加量を増加させると風味が損なわれるという問題がある。
そこで、風味と乳化安定性を向上させるため、乳化剤として酵素処理卵黄を使用する技術が開発されている(特許文献2参照)。また、通常の卵黄を使用した場合の粘度を向上させる技術として、卵黄を加熱処理する方法や、配合中の全量の酢を最初に卵黄と混合する方法(特許文献3〜5参照)がある。しかし、酵素処理卵黄を使用した場合や乳化物中の油分を減少させた場合等は、極端に粘度が低下するため、卵黄の加熱処理や全量の酢を卵黄と混合する方法では解決できない。
一方、ジグリセリドを高濃度に含むグリセリド混合物を油相に用いれば、脂肪量を低減した場合においても豊かな脂肪感を有し、風味が良好な食用水中油型乳化物が得られることが報告されている(特許文献6参照)。
しかしながら、ジグリセリドを高濃度で含有する油相を卵黄で乳化したマヨネーズ等の酸性水中油型乳化物を保存すると、亀裂の発生、離水の発生、更に光沢の減少等、外観で問題が生じることが判明した。これを解決する技術として、例えば酸性水中油型乳化物中の全リン脂質に対しその15%(リン量基準)以上をリゾリン脂質とすることにより、これらの問題が解決することが報告されている(特許文献7参照)。
特開平4−300828号公報 特開昭62−29950号公報 特公平1−44309号公報 特開平9−172951号公報 特開2001−120221号公報 特許第2848849号公報 特開2001−138号公報
マヨネーズ等の酸性水中油型乳化物を製造する場合、工業化レベルの大量処理では、水相と油相を配合混合し予備乳化を行った後、精乳化工程を経て製造されている。しかし、精乳化工程で粘度を上げる負荷が高いと、せん断エネルギーが高くなりすぎ、O/W乳化物からW/O乳化物に転相してしまうことがあり、長期間の安定生産が困難となる。油相として通常の油脂(トリグリセリド)を用いた場合には、O/W乳化物を形成し易い性質があるため、転相現象は現れにくい。しかし、油脂にジグリセリドを含有する場合、油−水の界面張力が低くW/O乳化物を形成し易いことから、転相が起こり易い。
この転相を防止するため、単に精乳化工程においてシェアを低減させただけでは、製品の粘度を十分なものとすることができないという問題がある。また、乳化安定化のために酵素処理卵黄を使用した場合、又は更に乳化物中の油分を減少させた場合等は、粘度が低下するため、これを防止すべく増粘剤を添加する場合がある。しかし、増粘剤の添加量を増加させると風味や食感を損ない、商品の品質を低下させてしまうという問題もある。
従って、本発明は、油相にジグリセリドを使用した場合、更に乳化安定化のために酵素処理卵黄を使用した場合でも、増粘剤を増量することなく、十分な粘度を有し、更に長期間乳化安定性の良好な酸性水中油型乳化物の製造法を提供することを目的とする。
ところで、マヨネーズ類の酸性水中油型乳化物の長期保存安定性を向上させたり、商品として必要な粘度を得るためには増粘剤等の増量や新たな添加剤の添加も考えられ、ジグリセリドを高濃度で含有する油相を用いた場合にも、同様の効果を得ることはできる。しかし、風味や食感が損なわれる等の問題がある。
従って、本発明は、ジグリセリドを高濃度で含有する油相を用いた場合にも、増粘剤等の増量や新たな添加剤の添加なしに、長期間乳化系の安定で、十分な粘度を有する酸性水中油型乳化物の製造法を提供することを目的とする。
そこで本発明者は、卵黄を用いた乳化系のさらなる安定化について種々検討したところ、卵黄を含有する水相を調製した後であって油相を添加する前に機械的処理し、粘度を一定範囲以上に上昇させるか又は卵黄蛋白の溶解度を低下させる処理を行えば、その後乳化させて得られた酸性水中油型乳化物の粘度が増大し、安定性が更に向上することを見出した。
すなわち本発明は、卵黄を含有する水相を、機械的処理して当該処理前に比べて粘度を50%以上上昇させるか又は卵黄蛋白溶解度を5〜60%低下させた後、油相を添加する酸性水中油型乳化物の製造法を提供するものである。
また本発明者は、前記のジグリセリド含有酸性水中油型乳化物特有の問題を解決すべく種々検討したところ、通常は酸性物質の全量を水相中に添加した後に油相と混合するが、油相と混合する前の水相成分中の酸性物質の添加量を一定量以下に抑え、水相成分と油相とを混合した後に残りの食酢等の酸性物質を添加し、pHを1以上低下させて乳化すると、更に安定性と粘度が顕著に向上することを見出した。また、酸性物質の多くを最後に添加することによる安定性と粘度の向上効果は、トリグリセリドを油相とする酸性水中油型乳化物ではほとんど得られず、ジグリセリドを含有する油相とする酸性水中油型乳化物特有の効果であることも見出した。
すなわち、本発明は、卵黄を含有する水相を、機械的処理して当該処理前に比べて粘度を50%以上上昇させるか又は卵黄蛋白溶解度を5〜60%低下させ、得られた水相とジグリセリドを20重量%以上含む油相を混合した後、酸性物質を添加し、pHを1以上低下させる酸性水中油型乳化物の製造法を提供するものである。
本発明の処理を行うことにより、乳化前の水相、及び予備乳化物の粘度を上昇させることが可能となるため、精乳化工程で粘度を上げる負荷を低減でき、転相を起こすことなく、十分な粘度を付与した乳化物の安定生産が可能となる。また、酵素処理卵黄を使用する等、粘度が低下するような配合の場合でも、増粘剤を使用することなく、十分な粘度を有し、更に長期間乳化安定性の良好な酸性水中油型乳化物が製造できる。
本発明方法においては、乳化剤として卵黄を使用するが、乳化安定性を更に向上させるために、酵素処理卵黄を使用することもできる。当該卵黄の酵素処理に用いる酵素としては、エステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼが好ましく、リパーゼ、ホスホリパーゼがより好ましく、ホスホリパーゼが特に好ましい。ホスホリパーゼの中でも、ホスホリパーゼA、すなわちホスホリパーゼA1及び/又はA2が最も好ましい。
酵素処理条件は、卵黄の全部に酵素処理卵黄を用いる場合、リゾ比率(全リン脂質中のリゾリン脂質の比率)がリン量基準で15%以上となるような条件を適宜選択すればよい。具体的には、酵素添加量は、酵素活性が10000IU/mLの場合、卵黄に対して0.0001〜0.1重量%、特に0.001〜0.01重量%が好ましく、反応温度は20〜60℃、特に30〜55℃が好ましく、反応時間は1時間〜30時間、特に5時間〜25時間が好ましい。なお、反応時には、加塩、加糖等任意の物質が配合されていてもよい。また卵黄の一部に酵素処理卵黄を用いる場合、酵素未処理卵黄と酵素処理卵黄の合計のリゾ比率が上記範囲となるように酵素処理条件を選択すればよい。かかる酵素処理は、各原料を混合して乳化処理する以前の段階で行うことが好ましい。
卵黄は、卵黄液をそのまま用いてもよいし、殺菌、凍結、粉末化、加塩、加糖など任意の処理や任意の形態で用いてもよい。また、卵白や全卵を配合してもよい。なお、酵素処理卵黄の場合も同様に、任意の形態で用いることができる。
本発明方法においては、まず卵黄を含有する水相を調製する。水相中の卵黄の含量は、風味及び乳化安定性の観点から液状卵黄換算で15〜75重量%、更に24〜55重量%、特に30〜45重量%が好ましい。なお、酵素処理卵黄、全卵、卵白を適宜混合添加してもよい。
この水相には、水;米酢、酒粕酢、リンゴ酢、ブドウ酢、穀物酢、合成酢等の食酢;食塩;グルタミン酸ソーダ等の調味料;砂糖、水飴等の糖類;酒、みりん等の呈味料;各種ビタミン;クエン酸等の有機酸及びその塩;香辛料;レモン果汁等の各種野菜又は果実の搾汁液;キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、大豆食物繊維、トラガントガム等の増粘多糖類;馬鈴薯澱粉等の澱粉類、それらの分解物及びそれらの化工澱粉類;水溶性多糖類;ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の合成乳化剤、大豆タンパク質、乳タンパク質、小麦タンパク質等、あるいはこれらタンパク質の分離物や分解物等のタンパク質系乳化剤、レシチン又はその酵素分解物等の天然系乳化剤;牛乳等の乳製品;各種リン酸塩等を配合することができる。本発明においては、目的とする組成物の粘度、物性等に応じて、これらを適宜配合できる。
本発明方法は、当該水相を機械的処理して、当該処理前に比べて粘度を50%以上上昇させるか又は卵黄蛋白溶解度を5〜60%低下させることを特徴とする。機械的処理は、攪拌、せん断、混合、均質、混練などが挙げられる。このうち、簡便性の点から、攪拌処理、特に強攪拌処理が好ましい。攪拌処理の強度はせん断エネルギーで表され、35000〜2000000m/sが好ましく、特に70000〜1000000m/sが好ましい。尚、ここでいうせん断エネルギーは、攪拌による水相仕込み容量当りの循環容量(=攪拌により水相が槽内で循環した回数、以下「循環回数」という。)と「撹拌翼の最外周速」の積にて定義する(技術情報協会発行「新しい攪拌技術の実際」(1989))。
また、生産性を考慮すると、攪拌槽で攪拌処理する場合に、毎回槽を洗浄する必要はなく前バッチの乳化物が残存した状態で、卵黄等の原料を添加してよい。
この処理により、当該処理前に比べて粘度を50%以上上昇させるか、卵黄蛋白溶解度を5〜60%低下させることが必要である。粘度上昇が50%未満、又は、卵黄蛋白溶解度の低下が5%未満では、十分な粘度と長期の乳化安定化効果は得られない。また、卵黄蛋白溶解度の低下が60%以上になると、同様に十分な粘度と乳化安定化効果が得られない。
好ましい粘度上昇率は100〜500%であり、より好ましくは150〜300%である。また好ましい卵黄蛋白溶解度の低下率は10〜30%である。
機械的処理によると、上記粘度上昇と卵黄蛋白溶解度低下の両者が同時に得られ、かつ風味も保持されるので特に好ましい。従って、機械的処理条件を操作することにより得られる酸性水中油型乳化物の物性(粘度、長期乳化安定性及び風味)を制御できる。当該機械的処理としては、強攪拌処理、特に各種の攪拌翼を備えた攪拌槽によるのが好ましい。攪拌翼の回転方向は問わない。また、他の機械としては、例えばマウンテンゴウリン、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、超音波式乳化機、コロイドミル、ラインミル、ホモミキサー、アジホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。なお、機械的処理により、せん断力で発熱する場合があってもよい。
機械的処理は、卵黄由来の成分だけを処理しても構わないが、処方上水を配合する場合には、卵黄由来の成分だけを機械的処理した後に水を添加すると、構築された構造が一部崩壊し、粘度向上効果が低下してしまう。従って、処方上水を配合する場合には、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウムなどの固形調味料を水に分散溶解させたものと卵黄由来の成分が混合された状態で機械的処理することが好ましい。
機械的処理後、油相を添加する。油相としては、常温で液状の油脂類であれば特に限定されず、例えば大豆油、コーン油、ヒマワリ油、ゴマ油、綿実油、なたね油、サフラワー油、パーム油、オリーブ油、グレープシード油などが挙げられる。また、肥満防止効果、体重抑制効果などの効果を得るためには、油相中にジグリセリドを20重量%以上、更に30重量%以上、特に35重量%以上含有する油脂類を使用するのが好ましい。また、本発明方法による乳化安定化効果は、油相がジグリセリドを20重量%以上含有する油脂類の場合に特に顕著である。
ジグリセリドも、低融点であることが好ましく、具体的には、構成脂肪酸残基の炭素数が8〜24、特に16〜22であることが好ましい。また不飽和脂肪酸残基の量は、全脂肪酸残基の55重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が特に好ましい。ジグリセリドは、植物油、動物油等とグリセリンとのエステル交換反応、又は上記油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応等任意の方法により得られる。反応方法は、アルカリ触媒等を用いた化学反応法、リパーゼ等の油脂加水分解酵素を用いた生化学反応法のいずれでもよい。本発明の酸性水中油型乳化物の油相中のジグリセリド含量は、脂質代謝改善食品(中性脂肪蓄積抑制)としての有効性の観点から20重量%以上、特に30重量%以上が好ましい。油相には、トリグリセリド、ジグリセリド以外に、モノグリセリド、遊離脂肪酸等を含有していてもよい。尚、乳化物の安定化等のため、油相中に高融点油脂、特に室温で固体である油脂を含有させてもよい。
また油相中には、更に血中コレステロール低下作用を有する植物ステロールを含有させてもよい。ジグリセリドと植物ステロールの併用により、血中コレステロール低下作用は、相乗的に高まり、脂質代謝改善食品としての有用性を更に高めることができる。植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、カンペステロール等が挙げられる。またこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、配糖体を用いることもできる。本発明においては、これらを一種以上用いることができる。酸性水中油型乳化物中の、植物ステロールの含有量は、1.2〜10重量%、特に2〜5重量%が好ましい。
油相と水相の重量比は、10〜80:90〜20が好ましく、35〜75:65〜25が特に好ましい。
油相添加後は、必要により予備乳化を行い、精乳化することにより、酸性水中油型乳化物を得ることができる。精乳化機としては、例えばマウンテンゴウリン、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、超音波式乳化機、コロイドミル、アジホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。
この精乳化の工程は乳化物に大きなシェアがかかるが、その流量の増大によってもシェアは増大する。よって、本発明は、製造スケールが大きい場合、例えば精乳化工程の流量が1kg/min以上、特に2kg/min以上の場合に効果的である。
一般に市販されているマヨネーズの粘度は約180Pa・s程度であるが、本発明方法により製造されたマヨネーズの粘度も、160から220Pa・sの範囲になることが好ましい。
本発明においては、卵黄を含有する水相を、機械的処理して当該処理前に比べて粘度を50%以上上昇させるか又は卵黄蛋白溶解度を5〜60%低下させ、得られた水相とジグリセリドを20重量%(以下、単に%で示す)以上含む油相を混合した後、酸性物質を添加し、pHを1以上低下させることにより、酸性水中油型乳化物を製造するのが好ましい。
このとき、油相と混合する前の水相中に添加する酸性物質を一定量以下に抑えることがポイントである。特に、酸性物質の中でも食酢(10%酢酸含有)については、水相に添加する量は全系100%に対して2%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは0%とし、残りは油相と混合した後に添加するのが好ましい。ここで油相は、ジグリセリドを20%以上含有する油脂であり、低融点のものが好ましい。ここで用いられるジグリセリドは、前記と同様のものが好ましい。油相には、前記と同様に植物ステロールを含有させてもよい。ここで用いられる卵黄としては、前記と同様のものが挙げられる。
油相と水相の重量比は、前記と同様に、10〜80:90〜20が好ましく、35〜75:65〜25が特に好ましい。
水相と油相を混合した後に、酸性物質を添加してpHを1以上低下させる。ここに用いる酸性物質としては、米酢、酒粕酢、リンゴ酢、ブドウ酢、穀物酢、合成酢等の食酢;クエン酸、コハク酸等の有機酸及びその塩;レモン果汁等の各種野菜又は果実の搾汁液等が挙げられる。このうち、食酢を主成分とするのが特に好ましい。なお、酢を含有しない酸性物質は、油相と混合する前の水相に添加することが好ましい。
当該酸性物質は、pHを1以上低下させる量添加すればよく、例えば食酢(10%酢酸含有)の場合乳化物中に3〜10%、特に5〜8%となるように添加するのが好ましい。
酸性物質添加後の水相のpHは、風味と保存性のバランスの観点から2〜6、特に3〜5が好ましい。
酸性物質添加後は、均一混合乳化を行い予備乳化を完了し、精乳化することにより、酸性水中油型乳化物を得ることができる。精乳化機としては、前記と同様、例えばマウンテンゴウリン、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、超音波式乳化機、コロイドミル、アジホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。各種原料の混合乳化は、攪拌槽などで行うバッチ式の生産システムと連続的に各種原料を混合機に送る連続式生産システムがあるが、バッチ式システムのほうが効果は高い。また、一般の市販されているマヨネーズの粘度は約180Pa・s程度であることから、最終製品となるマヨネーズの粘度も、160から220Pa・sの範囲になるものが好ましい。
本発明方法によれば長期間乳化安定性が保持された酸性水中油型乳化物を得ることができる。当該酸性水中油型乳化物としては、例えば日本農林規格(JAS)で定義されるドレッシング、半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、マヨネーズ、サラダドレッシング、フレンチドレッシング等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、広くマヨネーズ類、ドレッシング類といわれるものが該当する。
実施例1
全量が4.7kgとなるように、表1に示す組成の油相及び水相を次の方法に従って調製した。まず、精製塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、からし粉、クエン酸を水に分散させたもの(「調味分散水」という。以下同じ。)と酵素処理卵黄を攪拌翼を有するミキサーに添加し、20℃に温度調整しながら減圧下(20kPa)、翼径0.144mの撹拌翼を用いて、回転数800r/minで15分撹拌し、強攪拌処理を行った。調味分散水仕込み量は1.23kgで、調味分散水の比重は1100kg/m3である。前述より、せん断エネルギーを「循環回数」×「撹拌翼の最外周速」と定義したが、よって本条件より、せん断エネルギーは、以下の式により算出される(技術情報協会発行「新しい攪拌技術の実際」(1989))。
・循環回数=循環容量/仕込み容量
循環容量(m3)=突出流量係数×翼径(m)3×回転数(r/min)×時間(min)
=1×0.1443×800×15=35.8
仕込み容量(m3)=仕込み重量(kg)/比重(kg/m3)=1.23/1100=0.00112
・撹拌翼の最外周速(m/s)=撹拌翼径(m)×3.14×回転数(r/min)/60
=0.144×3.14×800/60=6
・せん断エネルギー(m/s)=循環容量/仕込み容量×撹拌翼の最外周速
=35.8/0.00112×6=192000
(「突出流量係数」とは、羽形状、液体の種類、温度等によって異なる係数であるが、本願の場合、定義の明確化のため1とする。)
粘度、及び蛋白溶解度は、各工程において、以下に示す方法により測定した。次に、2%分の油相(ジグリセリド高含有油)に大豆多糖類を分散させたものをミキサーに添加し、同上の攪拌速度で3分攪拌し均一混合し、攪拌周速を3m/sにし残りの油相を攪拌しながら添加した。この時の乳化物のpHは5.5であった。その後10%醸造酢を添加混合し、pHが4.1の予備乳化物を得た。これを、コロイドミル(MZ80:FRYMA社製)を使用して4200r/min、クリアランス0.25mmで精乳化し、平均乳化粒子径2.1μmのマヨネーズ(精乳化物)を製造した。
実施例2
実施例1において、卵黄と調味分散水との強攪拌温度を40℃とし、その後の工程は20℃で調製して予備乳化を行った以外は実施例1と同一の条件でマヨネーズを調製した。なお、卵黄と調味分散水の分散物の粘度は、20℃に温度調整した後、測定した。
比較例1
実施例1において、卵黄と調味分散水との攪拌時間を1分とした以外は同一の条件でマヨネーズを調製した。この時のせん断エネルギーは13000m/sである。
Figure 0004054751
〔酵素処理卵黄の調製〕
食塩濃度10%の卵黄液750g、水150g、及び食塩15gを混合し、反応温度で十分予熱した後、卵黄液に対して表2に示す量のホスホリパーゼA2を添加し、酵素分解卵黄を得た。反応時間、反応温度、リゾ化率を表1に示す。尚、リゾ化率は以下の方法により算出した。まず反応物をクロロホルム/メタノール(3:1)混合溶媒により繰り返し抽出を行い、反応物中の全脂質を得た。得られた脂質混合物を薄層クロマトグラフィーに供し、一次元=クロロホルム:メタノール:水(65:25:49)、二次元=ブタノール:酢酸:水(60:20:20)による二次元薄層クロマトグラフィーにより、各種のリン脂質を分取したリン脂質のリン量を市販の測定キット(過マンガン酸塩灰化法、リン脂質テストワコー、和光純薬工業株式会社製)を用いて算出した。リゾ化率(%)は(リゾリン脂質画分リン合計量/全リン脂質画分リン合計量)×100により算出した。
Figure 0004054751
〔粘度測定法〕
粘度の測定は、各工程で行い、B型粘度計(BH型:東京計器)を使用し、
・予備乳化物と精乳化物は、ローターNo.6、2r/min、30秒後の測定値を用い、
・予備乳化物と精乳化物以外の油相が全量添加されていない分散物はローターNo.2、20r/min、30秒後の測定値を用いた。尚、初期値は、卵黄と調味水が均一化する時点として、攪拌15秒後にサンプリングした時の粘度値を採用した。
〔蛋白溶解度測定法〕
一般に卵黄の蛋白質は、リン脂質と結合したリポ蛋白質の形で存在しており、食塩水等に溶解分散させた後、遠心分離処理すると上澄部と沈殿部に分類され、それぞれ上澄部画分が低密度リポ蛋白、沈殿部画分が高密度リポ蛋白と呼ばれている。また一般の蛋白質は、加熱等の変性処理により、蛋白質が疎水化され、水への溶解度が低下すると言われている。そこで、本願では、卵黄蛋白質の変性の度合を、まず、水に溶解分散させて不溶物質を遠心分離により沈殿除去し、上澄部を再度飽和食塩水に溶解分散させて遠心分離を行うことにより、溶解している画分の蛋白質を未変性の蛋白質であると考え、蛋白溶解度と定義した。すなわち、蛋白変性が進行するに伴い、蛋白溶解度が低下する。実際の測定法を次に示す。
酵素処理卵黄又は酵素処理卵黄と各調味料分散水を含む卵黄分散物(強攪拌初期と強攪拌後)をサンプル瓶に0.15g精秤し、蒸留水1)15g精秤添加混合した後、この溶液を2mL遠心管に1.5g取り15000r/min、30minの条件で1回目の遠心分離を行い、不溶物質を除去する。この遠心分離後の上層を2mL遠心管に0.15g精秤し、更に飽和食塩水1.5gを精秤添加混合した後、20000r/min、1時間の条件で2回目の遠心分離を行う。遠心分離機は、HIMAC遠心分離機 TYPE SCR20BB(日立製作所(株)製)ローターはRPR20−3−1169を使用した。この遠心分離後の上層(未変性蛋白部)をサンプル瓶に1mL精秤し、蒸留水2)1mL精秤し濃度調整したものを、窒素分析計(TN−05;三菱化成製)で、硫酸アンモニウムを検量線として、窒素濃度を測定し、これに、蛋白質濃度に換算するために、換算係数7.94を乗じ、蛋白質濃度を算出した。また、実施例1で使用した酵素処理卵黄中の蛋白質濃度は、強攪拌処理時に配合される調味分散水で希釈されており、窒素分析前処理用に2回の遠心分離処理前に蒸留水と飽和食塩水にそれぞれ希釈され、窒素分析時にも蒸留水で希釈されている。従って、窒素分析計から得られた蛋白質濃度は、これらの処理で希釈された濃度となるため、最終的に用いる蛋白溶解度は、これらの希釈処理を相殺させるために、濃度補正を考慮した次式を用いた。
蛋白溶解度[%]=((攪拌時の酵素処理卵黄配合量[%]+攪拌時の調味分散水配合量[%])/攪拌時の酵素処理卵黄配合量[%])×((酵素処理卵黄分散物量[g]+蒸留水量1)[g])/酵素処理卵黄分散物量[g])×((1回目の遠心分離後の上層サンプル量[g]+飽和食塩水添加量[g])/1回目の遠心分離後の上層サンプル量[g])×((2回目の遠心分離後の上層サンプル量[g]+蒸留水量2)[g])/2回目の遠心分離後の上層サンプル量[g])×(換算係数7.94)×(窒素濃度[%])
尚、初期値は、卵黄と調味水が均一化する時点として、攪拌15秒後にサンプリングした時の溶解度を採用した。
〔安定性評価法〕
マヨネーズ(精乳化物)の乳化安定性の評価は、製造後20℃で1ヶ月保存したマヨネーズを、50mL用の遠心管に30g精秤し15000r/min、30minの条件で遠心分離を行った後、上層に遊離した油量を計量し、次式に従ってオイルオフ量として算出した。
オイルオフ量(%)=遠心分離後の遊離油量(g)/(遠心管に精秤したマヨネーズ量(g)×油相量(67%))×100(%)
〔pH測定法〕
pHメーターに「PHコントローラー FD-02(東京ガラス機械社製)」を用い、20℃で通常の使用方法にて乳化物のpHを測定した。
結果を表3に示した。これから明らかなように、卵黄を含有する水相を粘度が50%以上上昇するまで、又は卵黄蛋白溶解度を5〜60%低下させるまで攪拌した後油相を添加して乳化した場合は、粘度と乳化安定性が特に優れていることがわかる。
Figure 0004054751

Claims (6)

  1. 卵黄を含有する水相を、せん断エネルギー35000〜2000000m/sの機械的処理して当該処理前に比べて粘度を150〜300%上昇させるか又は卵黄蛋白溶解度を10〜30%低下させた後、ジグリセリドを20重量%以上含有する油相を添加する酸性水中油型乳化物の製造法。
  2. 卵黄を含有する水相を、せん断エネルギー35000〜2000000m/sの機械的処理して当該処理前に比べて粘度を150〜300%上昇させるか又は卵黄蛋白溶解度を10〜20%低下させ、得られた水相とジグリセリドを20重量%以上含む油相を混合した後、酸性物質を添加し、pHを1以上低下させる酸性水中油型乳化物の製造法。
  3. 酸性物質が、食酢を主成分とするものである請求項記載の酸性水中油型乳化物の製造法。
  4. 卵黄が、酵素処理卵黄である請求項1〜のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化物の製造法。
  5. 酵素処理卵黄が、エステラーゼ、リパーゼ及びホスホリパーゼから選ばれる酵素により処理された卵黄である請求項記載の酸性水中油型乳化物の製造法。
  6. 酸性水中油型乳化物が、マヨネーズ類である請求項1〜のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化物の製造法。
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