JP4054152B2 - 電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は反り変形が生じにくい電子部品実装用フィルムキャリアテープ(TAB(Tape Automated Bonding)テープ、T-BGA(Tape Ball Grid Array)テープ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)テープなど)およびこのテープを製造する方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
半導体IC、LSIなどの電子部品を電子機器に組み込むために電子部品実装用のフィルムキャリアテープが使用されている。このような電子部品実装用フィルムキャリアテープは、長尺の絶縁性フィルムの表面に導電体箔を積層し、次いでこの導電体箔表面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストに所望の配線パターンを露光し、余剰のフォトレジストを除去した後、残存するフォトレジストをマスキング材として導電体箔をエッチングして絶縁性フィルムの表面に導電体箔からなる配線パターンを形成することにより製造されている。
【0003】
このような電子部品実装用フィルムキャリアテープには、電子部品の実装方法の差異などにより、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、T-BGA(Tape Ball Grid Array)テープなどがある。近時、電子部品の高集積化に伴って、こうした電子部品を実装するフィルムキャリアテープに形成される配線パターンも非常にファインピッチ化しており、従って、高集積化した電子部品のバンプとフィルムキャリアテープのリードとの位置合わせが非常に難しくなりつつある。例えば、フィルムキャリアテープに反り変形などが生じていると、リードの位置とバンプ位置とが一致せず、こうした場合には電子部品の実装不良となる。
【0004】
ところで、電子部品実装用フィルムキャリアテープは、ポリイミドフィルムのような可撓性を有する絶縁性フィルムの表面に積層された銅箔などの導電体金属箔によって配線パターンが形成されてなり、さらにこうして形成された配線パターンの表面にはリード部を除いて通常この配線パターンを保護するようにソルダーレジスト層が形成されている。
【0005】
このように電子部品実装用フィルムキャリアテープは、絶縁性フィルムと、導電体金属箔と、ソルダーレジストとが積層された構成を有しており、これらの物性は全く異なっているため、ソルダーレジストの反応収縮、テープの保存環境の温度および湿度などのわずかな環境の変化によって変形する。例えば、絶縁性フィルムがポリイミドフィルムであり、導電体金属箔が銅箔であるような電子部品実装用フィルムキャリアテープについてみると、ポリイミドは吸水性を有し、吸水により膨張するとの特性を有しているが、銅箔には吸水性はなく水分によっては寸法変化しない。従って、ポリイミド製の可撓性絶縁性フィルムの表面に銅箔からなる配線パターンが形成された電子部品実装用フィルムキャリアテープは、室内に放置すると、ポリイミドフィルムが吸水膨張し、配線パターンが形成された側を内側にして幅方向に反り変形しやすい。また、ソルダーレジストには、硬化する際に反応収縮するものが多く、従って、ソルダーレジストを塗布した後、硬化させる際にソルダーレジスト塗布面側を内側にするように反り変形応力が生ずることがある。従来のように絶縁性フィルムの厚さが80〜150μm程度である場合には、この絶縁性フィルム自体が有する自己形態保持性が上記のような変形応力にある程度抗し得るように作用していた。しかしながら、昨今の電子製品には軽量化および小型化の要請が高く、こうした要請から使用される電子部品実装用フィルムキャリアテープも次第に薄くなっており、最近では可撓性絶縁性フィルムであるポリイミドフィルムとして75μm以下の非常に薄い絶縁性フィルムが使用されつつある。そして、このような薄い絶縁性フィルムを使用することにより、電子部品実装用フィルムキャリアテープの反り変形は大きくなる傾向がある。
【0006】
電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、テープ製造直後において反り変形が少ないことが重要な特性であるが、電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する工程と、このテープにデバイスなどを実装する工程とは、一般には全く別の工程であり、上述のような反り変形は、テープの製造工程ではなく、このテープにデバイスを実装する工程においてデバイスの実装不良として表在化する。
【0007】
従って、電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造した直後における反り変形量が小さくても、このテープにデバイスを実装するまでの間に反り変形量が増大すれば、テープを製造する際に行う反り取り処理は全く無意味になってしまう。こうした実情にも拘わらず、以下に示すように、電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造する際のテープの反りを取り除くことを改善の主眼点にして種々の提案がなされているが、テープを製造した後デバイスを実装するまでの間の反り変化量の低減という観点では改善されていない。
【0008】
例えば、特開平6-283576号公報の請求項2には、樹脂を基材とするフィルム上にパターンを形成したフレキシブル回路基板製造において、回路保護の目的で塗布される熱硬化型ソルダーレジストを印刷後、ソルダーレジスト塗布側を外側にして巻き、コイルの状態で加熱硬化させることにより、反りの発生していない状態で実装できるフレキシブル回路基板製造方法の発明が開示されている。
【0009】
また、特開平11-111781号公報には、半導体IC用フィルムキャリアテープをその幅方向に逆反りを付与しながら加熱し、あるいは加熱しながらテープに幅方向の逆そりを付与するように拘束し、冷却後、前記逆反りを開放して該フィルムキャリアテープの幅方向の反りを低減する方法が開示されている。これらの公報に記載されている反り取り方法は、いずれもソルダーレジストが硬化する際の反応収縮によってフィルムキャリアテープに反りが生ずるので、ソルダーレジストが反応硬化する前、発生が予測される反りとは反対側にフィルムを変形させた状態でソルダーレジストを硬化させて、ソルダーレジストの硬化により生ずる反りと、テープに付与した逆反りとを相殺することにより、結果としてフィルムキャリアテープの反り量を低減する方法である。
【0010】
このようにソルダーレジストの硬化による反りと、付与した逆反りとを相殺することにより製造直後のフィルムキャリアテープの反り量は低減する。しかしながら、ソルダーレジストの硬化反応は硬化のための加熱時に完全に終了するわけではなく、加熱した後であってもわずかであるが進行する。そして、こうしたソルダーレジストの硬化反応の進行に伴って、わずかではあるがソルダーレジストは経時的に収縮し、従って、製造時に反り取りを行ったフィルムキャリアテープであっても、デバイスを実装するまでの間に新たな反り変形が生ずることがある。
【0011】
また、フィルムキャリアテープに生ずる反りの原因は、上記のようなソルダーレジストの硬化収縮だけではなく、こうしたフィルムキャリアテープの反りは、例えば、絶縁性フィルムとして広汎に使用されているポリイミドフィルムの吸湿膨張などによっても生じ、このような原因で生ずる反りは、従来の方法では解消されない。また、フィルム厚が50μm以下の場合には逆反りをかけるとソルダーレジストにクラックを生じるという新たな問題を生ずることがある。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、初期の反りが少なく、しかも経時的にその反り量が増大しないような電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する方法を提供することを目的としている。さらに本発明は、経時的に反り変化量の小さい電子部品実装用フィルムキャリアテープを提供することを目的としている。
【0013】
【発明の概要】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムの一方の面に積層された金属箔をエッチングして形成した配線パターンとを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープであって、該電子部品実装用フィルムキャリアテープについて焦点深度法により測定した初期反り量X(ただし、Xは0を超える量である)が該テープの幅に対して3%以下であり、かつ該電子部品実装用フィルムキャリアテープを温度25℃、湿度60%の条件で120時間保持した後に同様にして測定した反り量をYとしたときに下記式で表される反り変化量Wが2.5以下であることを特徴している。
【0014】
W=(Y−X)/X
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムの一方の面に積層された金属箔をエッチングして形成した配線パターンとを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープを、平坦な表裏面を有する樹脂フィルムからなるフラットスペーサーと共にリールに巻回し、該巻回された電子部品実装用フィルムキャリアテープを0.0001〜0.8気圧の減圧下に、0.1〜100時間減圧下に保持して、該ポリイミドフィルム中の水分を蒸散させて、該電子部品実装用フィルムキャリアテープを巻き締めること特徴としている。
【0015】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープには、通常は、形成された配線パターン上にリード部を残してソルダーレジスト層が塗設されている。本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、ポリイミドフィルムの表面に配線パターンを形成した後、この配線パターンの上にリード部を残してソルダーレジストを塗布し、硬化させて形成されたフィルムキャリアテープを表裏面が平坦な樹脂フィルムからなるフラットスペーサーと共にリールに巻回して、このリールにフラットスペーサーと共に巻回されたフィルムキャリアテープを、減圧下に所定時間保持することにより製造される。こうして減圧下に保持された後、この電子部品実装用フィルムキャリアテープは、通常は、巻回状態のまま常圧に戻され使用に供される。こうした減圧下に保持した後に常圧に戻す過程においてこの電子部品実装用フィルムキャリアテープは、常湿環境に戻され、絶縁フィルムは吸湿するが、このような吸湿によっても、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープに反り変形は生じにくい。
【0016】
即ち、こうして製造された電子部品実装用フィルムキャリアテープについて焦点深度法により初期反り量を測定すると、テープ幅に対する初期反り量が小さく、しかもこの初期反り量に対する経時的な反り変化量が非常に小さい。
【0017】
【発明の具体的な説明】
次に本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープおよびその製造方法について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープ1は図1および図2に示すように、ポリイミドフィルム10と、このポリイミドフィルム10の一方の面に形成された配線パターン14を有しており、さらにこの配線パターン14の表面にはデバイスなどと接続されるリード部を残してソルダーレジスト18が塗布されている。
【0018】
本発明で使用されるポリイミドフィルム10は可撓性を有する絶縁性の樹脂フィルムである。また、このポリイミドフィルム10は、エッチングする際に酸などと接触することからこうした薬品に侵されない耐薬品性、および、ボンディングする際の加熱によっても変質しないような耐熱性を有している。
【0019】
ポリイミドフィルム10を構成するポリイミドフィルムの例としては、ピロメリット酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成される全芳香族ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成されるビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミドを挙げることができる。特に本発明ではビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミド(例;商品名:ユーピレックス、宇部興産(株)製)が好ましく使用される。このようなポリイミドフィルム10の厚さは、通常は25〜125μm、好ましくは75μm以下、特に好ましくは25〜75μmの範囲内、さらに好ましくは50μm以下である。このようなポリイミドを使用する場合、このポリイミドは3%程度以下ではあるが、吸水性を有しており、ポリイミドは吸水することにより膨張するとの特性を有している。
【0020】
本発明で使用するポリイミドフィルム10には、デバイスホール20、スプロケットホール21、アウターリードホール22、さらに屈曲部を有する場合には、屈曲位置にフレックススリット(図示なし)等がパンチングにより形成されている。配線パターン14は、上記のような所定の穴20、21、22・・・が形成されたポリイミドフィルム10の少なくとも一方の面に積層された金属箔をエッチングすることにより形成される。金属箔は、接着剤を用いて或いは用いることなくポリイミドフィルム10の少なくとも一方の面に積層される。ここで接着剤を用いて金属箔を貼着する場合には、絶縁性の接着剤を使用して接着剤層12を形成する。
【0021】
ここで使用される接着剤には、耐熱性、耐薬品性、接着力、可撓性等の特性が必要になる。このような特性を有する接着剤の例としては、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤およびフェノール系接着剤を挙げることができる。このような接着剤は、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などで変性されていてもよく、またエポキシ樹脂自体がゴム変性されていてもよい。このような接着剤は通常は熱硬化性である。
【0022】
接着剤層12の厚さは、通常は8〜23μm、好ましくは10〜21μmの範囲内にある。接着剤を使用する場合、接着剤層12は、ポリイミドフィルム10の表面に接着剤を塗布して設けても良いし、また金属箔の表面に接着剤を塗布して設けても良い。
【0023】
本発明において、ポリイミドフィルム10に金属箔を積層する際に、接着剤を用いることなく積層することもできる。また、上記のような金属箔を用いる方法とは別に、例えば蒸着法あるいはメッキ法等によっても金属層を形成することができる。さらに、このような蒸着法あるいはメッキ法などにより金属層を形成する場合に、予め極薄金属箔を用いて極薄金属層を形成し、この極薄金属層上に、上記蒸着法あるいはメッキ法などにより金属を析出させて所望の厚さの金属層を形成しても良い。
【0024】
本発明で使用される金属箔は導電性を有する金属からなり、このような金属箔としては、銅箔およびアルミニウム箔を挙げることができる。特に本発明では金属箔として銅箔を使用することが好ましい。銅箔には、電解銅箔および圧延銅箔があり、本発明ではいずれの銅箔を使用することも可能であるが、ファインピッチの電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造するに際しては、金属箔として電解銅箔を使用することが好ましい。
【0025】
ここで使用される電解銅箔としては電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造に通常使用されている厚さの電解銅箔を使用することができるが、ファインピッチの電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造するためには、平均厚さが通常は6〜150μm、好ましくは6〜75μmの範囲内、特に好ましく8〜75μm、さらに好ましくは8〜50μmの範囲内にある電解銅箔を使用する。このような平均厚さを有する電解銅箔を使用することにより、狭ピッチ幅のインナーリードを容易に形成することができる。
【0026】
本発明では、上記のようなポリイミドフィルムに金属からなる層(金属箔層、金属メッキ層、金属蒸着層あるいはこれらの複合金属層など)を積層してベースフィルムを製造する。次いで、このベースフィルムの金属層表面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストに所定の配線パターンを焼き付けて、不要のフォトレジストを除去してベースフィルムの金属層表面に所定のパターンを形成し、このパターンをマスキング材として、金属層をエッチングする。
【0027】
即ち、ベースフィルムの金属層表面に、フィトレジストを塗布し、所定の配線パターンを露光して焼き付けして、水性媒体に可溶な部分と不溶な部分とを形成し、可溶部を水性媒体などで除去することにより、不溶性フォトレジストからなるマスキング材を金属層表面に形成することができる。なお、ここで不溶性フォトレジストからなるマスキング材は、露光することにより硬化するフォトレジストから形成されていてもよいし、また、逆に、露光することにより水性媒体などの特定の溶媒に溶解可能となるフォトレジストを用いて露光した後、特定の溶媒により可溶化された部分のフォトレジストを除去することによって形成することもできる。
【0028】
こうしてフォトレジストによりマスキングされたベースフィルムを、エッチング液と接触させることにより、マスキングされていない部分の金属は溶出して、マスキングされた部分の金属がポリイミドフィルム上に残り、ポリイミドフィルム上に溶出しなかった金属箔(あるいは金属層)からなる配線パターンが形成される。ここで使用されるエッチング液としては通常使用されている酸性のエッチング液を用いることができる。
【0029】
こうして形成される配線パターンにおいて、インナーリードの各ピッチ幅は、通常は20〜500μm、好ましくは25〜100μmであり、本発明は、特に30〜80μmのファインピッチの電子部品実装用フィルムキャリアテープに対して有用性が高い。なお、このようにしてエッチングした後のマスキング材(不溶性フォトレジスト)は、例えばアルカリ洗浄液で洗浄することにより除去することができる。
【0030】
本発明では、通常は、このように所定の配線パターンを形成した後、次の工程でメッキするインナーリード15の先端部およびアウターリード16の先端部を除いてソルダーレジスト18を塗布する。本発明で使用されるソルダーレジスト塗布液は、硬化性樹脂が有機溶媒に溶解若しくは分散された比較的高粘度の塗布液である。
【0031】
このようなソルダーレジスト塗布液中に含有される硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、エポキシ系樹脂のエラストマー変性物、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂のエラストマー変性物、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂のエラストマー変性物およびアクリル樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の樹脂成分を含有するものであることが好ましい。特にエラストマー変性物を使用することが好ましい。
【0032】
また、本発明において、ソルダーレジスト塗布液中には、上記のような樹脂成分の他に、硬化促進剤、充填剤、添加剤、チキソ剤および溶剤等、通常ソルダーレジスト塗布液に添加される物質を添加することができる。さらに、ソルダーレジスト層の可撓性等の特性を向上させるために、ゴム微粒子のような弾性を有する微粒子などを配合することも可能である。
【0033】
このようなソルダーレジスト塗布液は、スクリーン印刷技術を利用して塗布することができる。ソルダーレジスト塗布液は、インナーリード部およびアウターリード部など、次の工程で通常メッキ処理される部分を除いて塗布される。このようなソルダーレジスト18の塗布平均厚さは、通常は1〜80μm、好ましくは5〜50μmの範囲内にある。
【0034】
こうしてソルダーレジストを塗布した後、通常は加熱することによりソルダーレジストは硬化し、この硬化反応に伴って通常は収縮する。こうしてリード部を残してソルダーレジストを塗布した後、ソルダーレジストから露出しているリード部などにメッキ処理をする。このようなメッキ処理には、スズメッキ処理、金メッキ処理、ニッケル下地金メッキ処理、ニッケルメッキ処理、銀メッキ処理、半田メッキ処理などがあり、本発明ではこれらの処理を単独であるいは組み合わせて採用することができる。特に本発明では、スズメッキ処理が好ましい。こうして形成されるメッキ層の平均厚さは、0.01〜0.6μmの範囲内にあることが好ましい。
【0035】
上記のようにして製造された電子部品実装用フィルムキャリアテープは、ソルダーレジストの反応硬化に伴う収縮、および/または、ポリイミドフィルムの吸水による膨張などの種々の要因によって、図2に矢印で示したように、ソルダーレジスト18塗布面を内側にして反り変形する。本発明ではこうして製造された電子部品実装用フィルムキャリアテープをフラットスペーサーと共にリールに巻回して減圧条件下で所定時間保持する。
【0036】
本発明で使用するフラットスペーサーは、通常は樹脂フィルムなどから形成されている。ここでフラットスペーサーを形成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル:ポリエチレン、ポリプロピレンおよびLLDPE等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂(テフロンTM)含浸ガラスクロスおよびフッ素樹脂(テフロン TM )含浸紙紙などを挙げることができる。このような樹脂で形成されるフラットスペーサーの厚さは、通常は50μm以上であり、好ましくは50〜200μm、特に好ましくは75〜150μmの範囲内にある。このような厚さのフラットスペーサーを使用することにより、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープの初期反り量が小さくなると共に、経時的な反り量変化(反り変化量)も小さくなる。このようなフラットスペーサーとしては、巻回される電子部品実装用フィルムキャリアテープの幅と同等あるいはこのテープ幅に対して±4mmの幅のテープ幅を有する樹脂フィルムが好ましく使用される。電子部品実装用フィルムキャリアテープは、30〜120mmの幅を有しており、通常は35mm、48mm、70mmのような規格で形成されており、例えば、70mmの電子部品実装用フィルムキャリアテープと共に巻回されるフラットスペーサーとしては66〜74mmの範囲内のテープ幅を有する樹脂フィルムを使用することができる。
【0037】
このようなフラットスペーサーは、平坦な表裏面を有しており、従来から電子部品実装用フィルムキャリアテープをリールに巻回する際に使用されていた側縁部に凹凸を有するスペーサーとは異なるものである。本発明で上記のようなフラットスペーサーおよび電子部品実装用フィルムキャリアテープは、リール、好ましくは金属リールに巻回され、この金属リールにフラットスペーサーを介して巻回された状態で減圧下に保持される。この場合、電子部品実装用フィルムキャリアテープの配線パターンが形成された面がリールのコア側を向くように内側にしてフラットスペーサーと共に巻回することもできるし、配線パターンが形成された側を外側を向くようにして巻回することもできる。
【0038】
上記のように金属リールにフラットスペーサーと共に巻回された電子部品実装用フィルムキャリアテープを、通常は0.0001〜0.8気圧、好ましくは0.005〜0.5気圧の減圧下に、通常は0.1〜100時間、好ましくは0.5〜48時間保持する。上記のように金属リールにフラットスペーサーと共に巻回された電子部品実装用フィルムキャリアテープは、通常はデシケーター(減圧庫)内に所定時間保持される。このようなデシケーターは、内部を上記のような減圧下に保持できるものであればよいが、このデシケーターが加温あるいは加熱手段などを有していてもよい。
【0039】
上記のようにして所定時間減圧下に保持して製造された本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープについて焦点深度法により測定した反り量(初期反り量X)は、テープ幅に対して3%以下、好ましくは0を超え1%以下の範囲内にある。即ち、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは製造直後の反りが非常に少ない。ただし、通常製造されている電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて減圧下に保存し、その後巻回状態のまま常圧まで復帰させた時のテープの反り量(初期反り量)は0よりも幾分大きい値を示す。
【0040】
そして、この電子部品実装用フィルムキャリアテープを温度25℃、湿度60%の条件に120時間保持した後に同様にして測定した反り量をYとしたときに上記初期反り量Xと、このYとの関係(W=(Y−X)/X)で表される反り変化量Wが、2.5以下、好ましくは2.0以下、特に好ましくは1以下である。電子部品実装用フィルムキャリアテープは、製造した直後の反り量が小さくても、このテープにデバイスを実装する際の反り量が大きいと、デバイスを実装することができない。従って、電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて実際に問題になるのは、製造直後の反り量ではなく、実装時の反り量である。そして、本発明の電子部品実装フィルムキャリアテープは、初期反り量が非常に小さいだけでなく、経時的にこの小さい反り量が増大しにくいので、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープを用いることにより、デバイスを実装する際に、デバイスのバンプ電極の位置とリードの位置とが一致し、実装不良が生じにくい。また、実装時のテープ搬送不良が起きにくい。図3にテープ幅が70mmである電子部品実装用フィルムキャリアテープの経時的な反り変化量の例を示す。図3に示すように、フラットスペーサーと共に金属リールに巻回して減圧下に保持することにより、初期反り量が小さいと共にこの反り量が経時的に変化しにくく、温度25℃、湿度60%の条件、即ち電子部品実装用フィルムキャリアテープが保持される通常の条件に非常に近い条件で120時間保持しても、その反り量が非常に小さい。
【0041】
なお、本発明において、反り量を測定する焦点深度法とは、図4に示すように、焦点距離を測定可能な顕微鏡を備えた装置に、電子部品実装用フィルムキャリアテープの両側縁が接触するように載置し、電子部品実装用フィルムキャリアテープの最も高い位置の焦点距離(a)を測定し、この焦点距離(a)と測定基板上面に対する焦点距離(b)との差(b−a)を求め、この値を電子部品実装用フィルムキャリアテープの反り量(b−a)とする方法である。
【0042】
そして、初期反り量とは、上述のようにフラットスペーサーと共に金属リールに巻回して減圧下に所定時間保持し、その後巻回状態のまま常圧まで復帰させた直後の電子部品実装用フィルムキャリアテープの反り量である(この初期反り量をXとする)。通常の場合、反り量の測定には、減圧庫から常圧の室内にリールを取り出す操作を経て採取された測定試料が使用されるが、これに要する時間は数分以下であり、この測定試料採取の際に反り量は殆ど変化しない。
【0043】
こうして減圧庫から取り出され、リールに巻回された状態で室内に保持されることにより、この電子部品実装用フィルムキャリアテープは常圧常湿条件に復帰する。従って、上記のようにして減圧下に所定時間保持し、減圧庫から取り出した直後に測定した反り量が最も小さい反り量となる。ただし、この電子部品実装用フィルムキャリアテープはポリイミドフィルム、配線パターン、ソルダーレジストなど多数の素材が積層された積層体であり、こうした積層体の一般的な特性上、初期反り量が全くない状態には極めてなりにくい(即ち、下記式においてXが0にはならない)。
【0044】
そして、本発明で規定する反り変化量は、こうして減圧庫から取り出した電子部品実装用フィルムキャリアテープを温度25℃、湿度60%の条件で120時間保持した後に上記と同様にして反り量を測定し(この反り量をYとする)、下記式によって求めた反りの経時的な変化量(W)である。W=(Y−X)/Xそして、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、上記Wが2.5以下、好ましくは2.0以下、特に好ましくは0を超え1以下の範囲内にある。
【0045】
これに対してフラットスペーサーを使用せずに、従来の側縁に凹凸を有するスペーサーを介して巻回して同様に減圧下に保持した電子部品実装用フィルムキャリアテープの反り変化量Wは2.5を超え、多くの場合、4以上である。このように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、反り量の経時変化が小さい。図3に示す反り変化量Wが2.5を大幅に超える電子部品実装用フィルムキャリアテープ(例えば、W=5)では、例えばテープ幅が70mm、インナーリードの累積ピッチ長さが10mm、インナーリードピッチ幅が50μmであるとすると、120時間経過後では、バンプ電極の位置とインナーリードの位置とが、最大で70μm程度ずれることになるので、このようなずれ幅はインナーリードのピッチ幅を上回り、こうしたずれを是正しながらデバイスを実装することは極めて困難である。これに対して図3に示す反り変化量Wが2.5以下である本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、120時間経過後のバンプ電極の位置とインナーリードの位置とのずれが最大でも25μm程度であり、こうしたリードのずれは、デバイス実装の際に例えば機械的にテープを矯正することにより位置の是正が可能であり、良好にデバイスを実装することができる。
【0046】
このように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープが初期反り量が小さく、しかも経時的な反り変化量が小さくなる詳細な理由は不明であるが、フラットスペーサーを使用して電子部品実装用フィルムキャリアテープを巻回し、この状態で減圧下に所定時間保持することでポリイミドフィルム中の水分が蒸散してポリイミドフィルムが収縮し、その後、巻回状態のまま常圧までもどしても、ポリイミドフィルム中の水分の蒸散によりポリイミドフィルムが収縮した状態が維持されること、および、そのままの状態でテープを常圧下に戻すことでフラットスペーサーを介して巻回された電子部品実装用フィルムキャリアテープが巻きしまり、初期反り量が小さくなると共に、この巻きしまりによる応力が電子部品実装用フィルムキャリアテープに残存して経時的な反りの発生を抑制していることによるものであると考えられる。
【0047】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、図1に示すような形態の電子部品実装用フィルムキャリアテープであるTABテープに限定されるものではなく、T-BAGテープ、出力用アウターリードを有する例えば液晶用の電子部品実装用フィルムキャリアテープ、CSPテープ、ワイヤーボンディング用フィルムキャリアテープなどであってもよいことは勿論である。
【0048】
【発明の効果】
本発明の方法により製造された電子部品実装用フィルムキャリアテープは、フラットスペーサーと共に電子部品実装用フィルムキャリアテープを巻回して減圧下に所定時間保持することにより、初期反り量が小さく、しかもこの小さい反り量が経時的に増大しにくい。従って、本発明の方法により製造された電子部品実装用フィルムキャリアテープを使用することにより、デバイスの実装不良及び実装時のテープ搬送不良が生じにくくなる。
【0049】
【実施例】
次に本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープについて実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0050】
【実施例1】
幅70mm、厚さ50μmのポリイミドフィルムに、パンチングにより、デバイスホール、スプロケットホール、アウターリードの切断スリットを形成した。次いで、このポリイミドフィルム表面に、エポキシ系接着剤を塗布し、厚さ18μmの電解銅箔を貼着した。
【0051】
さらに、この銅箔上にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光し、さらにエッチングすることにより銅箔に配線パターンを形成した。形成した配線パターンにおけるリードのピッチ幅は50μmである。こうして形成された配線パターンにウレタン系ソルダーレジストを塗布した後、80〜140℃の温度に段階的に2.5時間かけて昇温して加熱してソルダーレジストを硬化させた。
【0052】
こうしてソルダーレジスト層を形成した後、このフィルムを無電解スズメッキ槽に移してソルダーレジストが塗工されていない配線パターン(インナーリードおよびアウターリード)表面に0.2μmの厚さでスズメッキ層を形成した。これとは別に、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このPETフィルムの幅はTABテープの幅と同じ70mmであり、その表面および裏面ともに平滑面である。
【0053】
上記のようなPETフィルムとTABテープとを重ね合わせながら、TABテープの配線パターおよびソルダーレジスト塗布面が金属リールのコア側を向くようにして金属リールに巻回した。こうしてPETフィルムと共に金属リールに巻回したTABテープを、デシケーターに入れ、このデシケーター内を0.01気圧に減圧した。
【0054】
このような減圧条件下で、TABテープを24時間保持した。24時間経過した後、TABテープをデシケーターから取り出し、一部を切り取り、この切り取ったサンプルを図4に示す装置の測定基板に配線パターンが測定基板面と対峙するように載置し、このTABテープの最も高い部分の焦点距離を測定したところ、この焦点距離は、2mmであった。なお、この装置における測定基板表面の焦点距離は、1mmであり、このTABテープの初期反り量(X)は1mmであり、この初期反り量は、テープ幅に対して1.4%に相当する。
【0055】
このTABテープのサンプルを25℃、湿度60%に調節された室内に放置して所定時間毎の反り量を測定し、この反り量を図3に示す。そして、120時間放置した後の反り量(Y)は3mmであり、これらの値から次式によって求めた反り変化量(W)は2であった。
W=(Y−X)/X
【0056】
〔参考例1〕
実施例1において、PETフィルム製のフラットスペーサーの変わりに、縁部に凹凸をつけた従来のスペーサー(エンボススペーサー)を介して金属リールに巻回した以外は同様にしてTABテープを製造した。このTABテープを実施例1と同様にしてデシケーターに入れ、このデシケーター内を上記実施例1と同様に0.01気圧に減圧した。
【0057】
このような減圧条件下で、TABテープを24時間保持した。24時間経過後、TABテープをデシケーターから取り出し、実施例1と同様にして初期反り量(X)および実施例1と同様の条件(25℃、湿度60%に調節された室内)に放置し、このTABテープの経時的な反り量を測定した。このTABテープの初期反り量(X)は、1.0mmであり、この初期反り量はテープ幅に対して1.4%に相当し、上記実施例1で製造したTABテープとほぼ同等であった。
【0058】
また、上記のようにして測定した経時的な反り量を測定し、この結果を図3に併せて記載する。この測定結果から、このTABテープについて実施例1と同等の条件(25℃、湿度60%に調節された室内)で120時間経過後の反り量(Y)は8mmであった。これらの値から120時間後の反り変化量(W)を求めたところ、Wは、7であった。
【0059】
このようにフラットスペーサーを使用せずに、縁部に凹凸を有する従来のスペーサーを使用した以外は実施例1と同様にして製造したTABテープは、120時間経過後の反り変化量(W)が大きい。即ち、この参考例1と上記実施例1とで得られたTABテープを比較すると、フラットスペーサーを介してTABテープを巻回して減圧下に保持し、その後巻回状態のまま常圧まで復帰させることにより、初期反り量にはそれほど差はないが、経時的な反り変化量には大きな差が生ずることがわかる。
【0060】
〔比較例1〕
実施例1に示すTABテープの製造の際に特開平11-11178号公報の実施例1で使用した樽ロールを有する反り取り装置を用いて逆反りをかけてTABテープを製造した。このようにしてタルロールを有する反り取り装置を用いて逆反りをしたTABテープを詳細に観察したところ、硬化したソルダーレジスト層にクラックが生じていた。また、ここで製造したTABテープのリード幅は25μmであり、このような細線化されたリードを有するTABテープに樽ロールを用いて逆反りをかけて反り取りを行ったため、上記のように細線化されたインナーリードの変形が多数発生した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、電子部品実装用フィルムキャリアテープの一例を示す図である。
【図2】図2は、図1の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおけるX−X断面図である。
【図3】図3は、実施例1で製造した本発明のTABテープおよび参考例1で製造したTABテープの反り量を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明において採用されている反り量測定方法である焦点深度測定法についての説明図である。
【符号の説明】
10・・・ポリイミドフィルム
12・・・接着剤
14・・・配線パターン
15・・・インナーリード
16・・・アウターリード
18・・・ソルダーレジスト
20・・・デバイスホール
22・・・アウターリードホール
21・・・スプロケットホール
Claims (4)
- ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムの一方の面に積層された金属箔をエッチングして形成した配線パターンとを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープを、平坦な表裏面を有する樹脂フィルムからなるフラットスペーサーと共にリールに巻回し、該巻回された電子部品実装用フィルムキャリアテープを0.0001〜0.8気圧の減圧下に、0.1〜100時間減圧下に保持して、該ポリイミドフィルム中の水分を蒸散させて、該電子部品実装用フィルムキャリアテープを巻き締めること特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
- 上記配線パターンの上に、リード部を残してソルダーレジスト層が塗設されていることを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
- 上記ポリイミドフィルムの平均厚さが75μm以下であることを特徴とする請求項第3項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
- 上記電子部品実装用フィルムキャリアテープと共にリールに巻回される平坦な表裏面を有する樹脂フィルムからなるフラットスペーサーが、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂含浸ガラスクロス、フッ素樹脂含浸紙およびポリエチレンナフタレートよりなる群から選ばれる一種類の合成樹脂フィルムことを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
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