JP4052509B2 - 白色粉体の製造方法及び白色粉体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は白色粉体の製造方法及び白色粉体に関するものであり、さらに詳しくは、明度(白色度)が極めて高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができ、製造工程も簡易で低コストを実現できる白色粉体の製造方法及び白色粉体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、これまでに金属あるいは非金属基体粉体上に無電解メッキ法を利用し金属銀膜を被覆させ、白色粉体あるいはイエロー色系顔料を製造する方法を発明してきた(例えば、特許文献1及び2参照。)。これら方法では、基体粉体が金属である場合はもちろんであるが、非金属である場合にも金属銀膜の下地層として、シリカ膜などの金属酸化物膜を被覆し、それらを被覆後に500〜650℃での焼成を施し、その後に金属銀膜を無電解メッキ法により被覆させてきた。しかし、上記方法では、金属銀膜を被覆させるための下地層であるシリカ膜などの金属酸化物膜の被覆操作が必要であるばかりでなく、それら被覆後の焼成作業が必要であり、かなり手間暇の要する方法であった。
【0003】
一方、これまでに基体粉体あるいは基材上に金属銀膜を被覆させる方法として、基体粉体あるいは基材上に金属銀膜を被覆させるための前処理として、塩化第一錫塩酸酸性溶液の使用(従来例1;例えば、特許文献3及び4参照。)、ニッケルおよび銅の下地層を無電解メッキ法により施す(従来例2;例えば、特許文献5参照。)ことにより、無電解メッキ法により金属銀膜を基体粉体あるいは基材上に直接被覆させることが出来るとしている。
しかしながら、上記従来例1では、前処理液として塩化第一錫を塩酸酸性水溶液に溶解させたものを使用しており、作業性や廃液処理に問題がある。また、上記従来例2の前処理方法では、本発明者らが考案してきたシリカ膜などの金属酸化物膜による下地層を被覆するよりもより複雑な下地層を形成させており、容易な前処理方法というには難がある。
【0004】
更に、前処理としてアルコキシチタニウムエステルを含む前処理液を基材上に塗布乾燥させることにより下地層を形成させ、その上に金属銀膜を無電解メッキ法により被覆させる方法(例えば、特許文献6参照。)が発明されているが、このような方法により下地層を基体粉体上に均一に施すためには、有機溶媒中に基体粉体を懸濁させ、その反応系中でチタニア下地層を形成させなければならないなど、下地層を形成させるための装置を防爆構造としなければならないなど、容易な前処理方法といえない問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−313823号公報
【特許文献2】
特開平11−012488号公報
【特許文献3】
特開2000−8174号公報
【特許文献4】
特開平2−173272号公報
【特許文献5】
特開平11−61424号公報
【特許文献6】
特開2001−40486号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の金属銀膜被覆における前処理方法は、たとえ金属銀膜を平滑に施すことができ、結果として明度(白色度)の高い白色粉体を得ることができるとしても、一概には容易な前処理方法とは言えないものであった。
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、無電解メッキ法による金属銀膜被覆を形成する白色粉体の製造方法において、工業的に容易に、基体粉体上に金属銀膜を平滑に被覆することができる、明度(白色度)の高い白色粉体の製造方法を提供することである。
また、容易に製造することができ、明度(白色度)が高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができる白色粉体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、鋭意研究を行った結果、ペルオキソチタン水溶液中に基体粉体を浸漬させることにより、シリカ膜などの金属酸化物膜などの下地層を必要とせず、基体粉体上に直接無電解メッキ法による金属銀膜被覆ができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の白色粉体およびその製造方法は、以下の通りである。
【0008】
(1) 基体粉体上に無電解メッキ法により金属銀膜を形成する白色粉体の製造方法において、無電解メッキ法により金属銀膜を形成する前処理として、前記基体粉体のpH7〜12のアルカリ性緩衝溶液の懸濁液中に塩基性ペルオキソチタン溶液を投入して処理する工程を含むことを特徴とする白色粉体の製造方法。
(2) 前記基体粉体の懸濁液中に塩基性ペルオキソチタン溶液を投入した後、90〜180分間攪拌することにより、前記前処理を行うことを特徴とする前記(1)に記載の白色粉体の製造方法。
(3) 前記前処理における基体粉体の懸濁液の温度が、40℃〜60℃であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の白色粉体の製造方法。
(4) 前記塩基性ペルオキソチタン溶液がpH8以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
(5) 前記塩基性ペルオキソチタン溶液の酸化チタンモル数が、基体粉体1gに対して5.00×10 −5 モル〜5.00×10 −4 モルであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
(6) 前記(1)〜(5)の製造方法により製造された白色粉体。
【0009】
本発明の白色粉体の製造方法は、基体粉体上の金属銀膜被覆において、工業的容易な前処理により、基体粉体上に直接に金属銀膜を平滑に被覆することができ、明度(白色度)の高い白色粉体およびその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明の白色粉体の製造方法において、上記作用が発現される作用機構としては、原料となる基体粉体が塩基性ペルオキソチタン溶液中に浸漬前処理されることにより、その表面が活性化され、この結果として活性化された基体粉体表面上において、還元析出した銀微粒子が基体粉体表面上に付着しやすくなるようである。また、基体粉体表面が活性化されたことにより、還元析出した銀微粒子が、基体粉体上を緻密、平滑に被覆するので、銀被膜後の粉体の明度L*が前処理を施さなかった時よりも高くなるものと考えられる。
【0011】
また、本発明の白色粉体の製造方法に用いられる塩基性ペルオキソチタン溶液は、pH8以上のアルカリ性であることが好ましい。これにより、酸性条件下では溶解してしまう基体粉体も用いることができ、より広範囲の基体粉体に対して本発明の製造方法を適用することができる。
【0012】
上記の製造方法により得られた本発明の白色粉体は、基体として磁性体を活用すると、基体粉体の特性(例えば、磁気特性)を高レベルに保持した機能性粉体、例えば、1成分系現像方式でも優れた複合した機能を果たし得る磁性トナーや、優れた磁気特性を発揮することができる。
また、本発明の白色粉体は、明度(白色度)が高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
上記のように、本発明の白色粉体およびその製造方法は、基体粉体上に無電解メッキ法により金属銀膜を形成する白色粉体の製造において、無電解メッキ法により金属銀膜を形成する前処理として、該基体粉体を塩基性ペルオキソチタン溶液に処理する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
具体的には、本発明において、前記前処理は、基体粉体の懸濁液中に塩基性ペルオキソチタン溶液を短時間で投入した後、90〜180分間攪拌することにより行うことが好ましく、より好ましくは、100〜140分間である。
上記浸漬時間が90分に満たない場合には、塩基性ペルオキソチタン溶液による前処理が十分でないことがあり、所望の明度(白色度)を有する白色粉体を得ることができないことがある。また、浸漬時間が180分を超える場合、前処理工程が金属銀膜被膜工程に比べて著しく長くなるため、容易に製造するという観点から好ましくない。
【0015】
また、塩基性ペルオキソチタン溶液の浸漬による前記前処理工程における温度は、40℃〜60℃であることが好ましい。40℃より低い場合には、塩基性ペルオキソチタン溶液の反応が進まないことがあり、60℃を超える場合には、塩基性ペルオキソチタン溶液による反応が非常に速く進行することがあるために、遊離の酸化チタン粒子が生成して、どちらの場合も前処理が十分行われない可能性があるために好ましくない。
【0016】
本発明の白色粉体の製造方法において、無電解メッキ法の前処理工程で用いられる塩基性ペルオキソチタン溶液は、上記の様にpH8以上であることが好ましい。塩基性ペルオキソチタン溶液のpHは9〜11であることがより好ましい。
【0017】
本発明において、ペルオキソチタン溶液は公知の技術を用いて作製することができる。例えば、以下のようにしてペルオキソチタン溶液を得ることができる。まず、塩化チタン(III)溶液や塩化チタン(IV)溶液(以下、これらを総称して『塩化チタン溶液』という)をイオン交換水で適当に希釈し、そこにアンモニア水などの塩基性物質を添加して水酸化チタンゲルの沈殿物を形成する。次いで、水酸化チタンゲルの沈殿物に過酸化水素水などの過酸化物を徐々に添加していくことにより、この沈殿物が溶解してペルオキソ錯体となり、黄色透明のペルオキソチタン溶液を得ることができる。
【0018】
なお、公知のように、ペルオキソチタン溶液は、塩化チタン(IV)溶液に過酸化水素水などの過酸化物を添加することによっても得ることができる。しかしながら、このようにして得られるペルオキソチタン溶液は、pH2以下の強酸性を示す橙赤色透明液体となるため、酸化チタン膜を形成するための前処理液とすることは好ましくない。
【0019】
上記塩化チタン溶液に添加する塩基性物質としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液等を用いることができる。塩基性物質の添加量としては、アンモニア水を例にすると、塩化チタン溶液中の酸化チタンに対して、4倍モル数以上のアンモニアを含む量のアンモニア水を添加することが好ましく、より好ましくは、8倍モル数以上のアンモニアを含む量のアンモニア水を添加することが好ましい。
上記塩基性物質の添加量が少ない場合、生成される水酸化チタンゲルのpHが低くなり、上記過酸化物を添加した後に得られる塩基性ペルオキソチタン溶液のpHが低くなってしまうために好ましくない。
【0020】
また、上記過酸化物としては、過酸化水素水、ペルオキソ硝酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ一炭酸ナトリウム、ペルオキソ二炭酸カリウム、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、ペルオキソホウ酸等を用いることができる。過酸化物の添加量としては、過酸化水素水を例にすると、塩化チタン溶液中の酸化チタンに対して、5〜10倍モル数の過酸化水素を含む量の過酸化水素水を添加することが好ましい。過酸化水素水の添加量がこれより少ないと、水酸化チタンゲルが十分に溶解しないことがあり好ましくない。また、過酸化水素水の添加量が上記の範囲より過剰であると、添加した過酸化水素の過剰分が分解されて、発生する泡により液が発砲してしまうことがあり、ペルオキソチタンの水和物の沈殿物を生成するため、好ましくない。
【0021】
過酸化物の添加後、塩基性ペルオキソチタン溶液のpHを調整するために、さらにアンモニア水などの塩基性物質を添加してもよい。例えば、過酸化物を添加した後の塩基性ペルオキソチタン溶液のpHが8.6から9.0前後になるため、これを9・3から9.4にすることが好ましい。ここで、過酸化物の添加後の塩基性物質の添加量は、pHを上記範囲にできればどの程度でもよい。
【0022】
次に、基体粉体を浸漬させる塩基性ペルオキソチタン溶液中の酸化チタン数は、基体粉体1gに対して5.00×10-5モル〜5.00×10-4モルであることが好ましい。5.00×10-5モルより小さい場合、基体粉体に対する酸化チタンモル数量が僅少となるために、前処理としては不十分であることがあり、続いて行われる金属銀膜の被覆工程を行った時に所望の明度(白色度)を有する白色粉体が得られないことがある。一方、基体粉体1gに対する酸化チタンモル数が5.00×10-4モルよりも大きい場合には、被覆された金属銀膜の性状は平滑であるが、金属銀膜が被覆された白色粉体の色彩計算値CIE(1976)L*a*b*表色系のb*の値が大きくなることがあり、黄色味が強くなって白色粉体としては好ましくない。
【0023】
本発明の白色粉体の製造方法に用いられる基体粉体としては、特に限定されず、金属を含む無機物でも、有機物でもよく磁性体、誘電体、導電体および絶縁体等でもよい。基体が金属の場合、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、その磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるものが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁性を有するものであるときには、強磁性合金を使用することが好ましい。また、その粉体の基体が金属化合物の場合には、その代表的なものとして前記した金属の酸化物が挙げられるが、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素等の外、カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物でも良い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩などを挙げることができる。
【0024】
さらに、基体粉体として、金属以外では、半金属、非金属の化合物、特に酸化物、炭化物、窒化物であり、シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。その他の無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、合成雲母、白雲母、など雲母類、カオリン等を用いることができる。
【0025】
有機物としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。但し、樹脂粒子を基体とする場合、乾燥における加熱温度は樹脂の融点以下でなければならない。
【0026】
基体粉体としては、pHが9.0から9.4のアルカリ性溶液中で安定であるものを用いることが好ましい。これらの例としては、マグネタイトなどの金属酸化物粉末、鉄粉などの金属粉末や有機化合物粉末を使用することができる。
【0027】
基体の形状としては、球体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
【0028】
また、基体粉体の比重としては、0.1〜10.5の範囲のものが用いられるが、得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合には、流動性、浮遊性の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2.8、更に、好ましくは0.5〜1.8の範囲である。得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合、基体の比重が0.1未満では液体中の浮力が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があり、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊させるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
【0029】
また、基体粉体の懸濁液のpHは7以上であることが好ましく、8〜10であることがより好ましい。pHが7より小さい場合、投入した塩基性ペルオキソチタン溶液が基体粉体表面において急激に反応し、遊離の酸化チタン粒子を析出させることがあるため、好ましくない。
【0030】
上記基体粉体の懸濁液のpHを7以上にするために、公知のアルカリ性維持緩衝液を使用することができるが、緩衝作用のpH領域が8.0から10.0であるホウ酸/塩化カリウム−水酸化ナトリウム系緩衝液が好ましい。
【0031】
本発明において、無電解メッキ法は公知の方法によって行うことができる。以下に、本発明の白色粉体の製造方法において、前記前処理した基体粉体表面に金属銀被覆膜を製膜する一例を説明する。
まず、水1000mlにブドウ糖20〜150gと酒石酸1.5〜14gを80〜100℃のウォーターバス中で湯浴させながら順次溶解し10分以上保持する。これを室温まで冷却したあとアルコール50〜2000mlを添加する。この際のアルコール添加量が50mlより少ないと還元反応が起こらないことがあり、2000mlより多すぎると銀を還元するのに必要なブドウ糖および酒石酸イオンの濃度を低くして反応が起こらないことがある。得られた混合物を還元液とする。アルコールはメタノールでもエタノールでも両者の混合物でも使用可能である。
【0032】
次に、硝酸銀100gにアンモニア水溶液(28%)を硝酸銀が完全に溶解するまで加え、その後水1〜4リットルを添加する。この際加える水の量が少ないとpHが下がって銀が再び錯体として沈殿することがあり、多すぎると銀の濃度が下がるため還元液と混ぜたときに充分な厚さの被膜を得られないことがある。このとき硝酸銀を先に水に溶解し、その後でアンモニア水を添加してもよい。次に0.5〜2規定の水酸化ナトリウム水溶液1〜4リットルを添加すると黒あるいは黒褐色の錯体が沈殿する。この黒色の沈殿が無くなるまで十分に撹拌しながらアンモニア水溶液(28%)を添加して銀液とする。
【0033】
上記により得られた銀液に、塩基性ペルオキソチタン溶液で前処理した基体粉体を加える。その添加量は形成する金属銀被覆膜の厚みおよび基体粉体の色や粒径に依存するので、硝酸銀100gに対し5〜500gが適当である。基体粉体の量が少なすぎると金属銀被覆膜が厚くなりすぎて基体粉体の特性を小さくしてしまう。逆に多すぎると金属銀被覆膜が薄くなりすぎて暗灰色の粉体となってしまう。
【0034】
基体粉体を添加後十分に撹拌するが、できだけ高速で行い、あるいは超音波洗浄機などを用いて十分に分散させるほうが望ましい。十分、分散させた後、撹拌および超音波印加を続けながら銀液と同容量の程度の還元液を添加し還元反応が終るまで1〜30分、好ましくは3〜15分撹拌し、基体粉体の表面に金属銀被覆膜を形成させる。この際の反応時間が1分より短いと十分な被覆膜が得られないことがあり、30分ぐらい経過すると金属銀の析出が完了してしまう。固形分を濾過し、洗浄を繰返して十分にアンモニアイオンを除去する。この際十分にアンモニアイオンを取除かなければアンモニアと銀が反応し金属銀被覆膜の色の悪化をまねくことがある。次にこの濾過ケーキを真空乾燥し白色粉体を得る。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、もちろん本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(原料基体粉体の前処理)
(1) 緩衝液の調整
イオン交換水300ミリリットルに塩化カリウム(関東化学社製試薬特級)の29.82g(0.4モル量)とホウ酸(関東化学社製試薬特級)の24.23g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてA溶液とした。
イオン交換水300ミリリットルに水酸化ナトリウム(関東化学社製試薬特級)の16.0g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてB溶液とした。
上記A溶液の250ミリリットルとB溶液の115ミリリットルを混合し、緩衝液Cとした。
【0036】
(2) 塩基性ペルオキソチタン溶液の調整
塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬)0.25ミリリットル(TiO2濃度0.10グラム(0.0013モル))を、イオン交換水にて10倍に希釈した。
次に、この塩化チタン(IV)水溶液にアンモニア水(関東化学社製試薬特級)0.61グラムを添加し、水酸化チタンスラリー液を作る。
次に、この水酸化チタンスラリー液に過酸化水素水(関東化学社製試薬特級)1.24グラムをゆっくりと添加し、十分に攪拌して水酸化チタンを溶解させ、黄色透明の塩基性ペルオキソチタン溶液を得る。この黄色透明の塩基性ペルオキソチタン溶液のpHは9.0程度であった。
最後に、pH調整としてアンモニア水(関東化学社製試薬特級)0.07グラムを添加してpHを9.3程度のアルカリ性とした、塩基性ペルオキソチタン溶液Dを得る。
【0037】
(3) 基体粉体の前処理
基体粉体として18gのマグネタイト粉末(平均粒径0.7μm、比表面積2.06m2/g)を使用した。この基体粉体を、360グラムの緩衝液Cを入れた1000ミリリットルセパラブルビーカーに投入し、攪拌速度700rpmで攪拌し、50℃に加温した。
50℃になった後に、塩基性ペルオキソチタン溶液Dを瞬時に添加した。この塩基性ペルオキソチタン溶液Dの酸化チタンモル数は、基体粉体1グラムに対して7.20×10-5モルであった。
添加後、同じ攪拌速度にて120分間攪拌を続け、所定時間経過後、イオン交換水500グラムにて置換洗浄を3回行った。このようにして、塩基性ペルオキソチタン溶液にて前処理された基体粉体スラリーを得た。
【0038】
(銀被膜操作)
(4) 銀液の調整
イオン交換水720グラムに硝酸銀30.0グラム(関東化学社製試薬)を溶解させた後、アンモニウム水21グラム(関東化学社製試薬一級)、アルカリ水375グラム(水酸化ナトリウム(関東化学社製試薬一級)15.0グラムをイオン交換水360グラムに溶解させたもの)、アンモニア水21グラム(関東化学社製試薬一級)の順に添加し、銀イオンを完全に銀アンモニウム錯イオンの形にした。
【0039】
(5) 還元液の調整
銀の無電解メッキに用いる還元剤としては、グルコースを使用した。この還元液の調整は以下のようにして行った。
まず、イオン交換水500グラムにグルコース(関東化学社製試薬一級)45.0グラムと酒石酸(関東化学社製試薬一級)5.0グラムを溶解し、加熱し、5分間沸騰させた。5分間の沸騰後、十分に冷却させた後、蒸発減量分のイオン交換水とアルコール(関東化学社製試薬一級)80グラムを添加した。上記薬品を投入後、室温にて一晩熟成させた。
【0040】
(6) 金属銀膜の被膜
(4)で得られた銀液に、(3)で前処理を行った基体粉体スラリーを投入し、800rpmにて攪拌を行った。攪拌開始5分経過した後、(3)で調整した還元液の360グラムを約20秒で、基体粉体懸濁銀液に投入した。還元液投入後、さらに10〜30分の間攪拌を続け、銀の析出反応を続行させた。
所定時間経過後、反応懸濁液を静置沈降させて粉体と反応液を分離させた後、沈降粉体にイオン交換水800グラムを投入して置換洗浄を5回繰り返し、所定回数の置換洗浄終了後、120℃に加温した恒温乾燥機内にて、金属銀膜被覆粉体スラリーを乾燥させ、金属銀膜被覆粉体E1を得た。得られた金属銀膜被覆体Aを分光光度計(日本分光社製 Ubest550)にて分光特性を測定した後に色彩計算を行い、CIE(1976)L*a*b*表色系で表示した。得られた金属銀膜被覆粉体E1のCIE(1976)L*a*b*表色系は、L*=68.7、a*=−0.2、b*=6.7と非常に明度(白色度)の高い白色粉体であった。
【0041】
(実施例2)
(実施例1)の前処理液に投入する塩基性ペルオキソチタン溶液を、塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬)0.75ミリリットル(TiO2濃度0.30グラム(0.0038モル))をイオン交換水6.75グラムで混合希釈した塩化チタン(IV)水溶液に変えた。この前処理液中の酸化チタンモル数は、基体粉体1グラムに対して酸化チタン2.10×10-4モルであった。
以上の前処理液中の酸化チタン濃度を変えた以外は、(実施例1)と同じ操作を行い、金属銀膜被覆体E2を得た。得られた金属銀膜被覆粉体E2のCIE(1976)L*a*b*表色系は、L*=66.9、a*=0.2、b*=8.7と非常に明度(白色度)の高い白色粉体であった。
【0042】
(比較例1)
(実施例1)の前処理液中に塩基性ペルオキソチタン溶液を加えずに、(実施例1)と同じ操作にて前処理を行った。この前処理液中の酸化チタンモル数は、基体粉体1グラムに対して酸化チタン0.00モル数であった。
以上の前処理液中の酸化チタン濃度を変えた以外は、(実施例1)と同じ操作を行い、金属銀膜被覆粉体E3を得た。得られた金属銀膜被覆粉体E3のCIE(1976)L*a*b*表色系は、L*=56.2、a*=−0.5、b*=−1.7と明度L*は60を下回っており、白色粉体からは遠いものであった。
【0043】
(比較例2)
(原料基体粉体の前処理)
(1) 基体粉体の前処理
基体粉体として18gのマグネタイト粉末(平均粒径0.7μm、比表面積2.06m2/g)を使用した。この基体粉体を、塩化第一錫(関東化学社製試薬特級)0.75グラムを、イオン交換水100グラムに濃塩酸(関東化学社製試薬特級)10ミリリットルを加えた塩酸酸性水溶液に懸濁させた。この前処理液中の塩化第一錫濃度は、基体粉体1グラムに対して塩化第一錫1.80×10-3モルであった。この懸濁液を攪拌速度700rpmで30分間攪拌を行い、前処理とした。所定時間経過後、懸濁させた基体粉体をイオン交換水300グラムで5回の置換洗浄を行った。このようにして、塩化第一錫塩酸酸性水溶液にて前処理された基体粉体スラリーを得た。
【0044】
以後、(実施例1)と同じ銀被膜操作を行い、金属銀膜被覆体E5を得た。得られた金属銀膜被覆粉体E5のCIE(1976)L*a*b*表色系は、L*=55.8、a*=−0.5、b*=−1.2と明度が上がらず、白色度も低い、暗灰色の粉体であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、工業的に容易に、基体粉体上に金属銀膜を平滑に被覆することができる、明度(白色度)の高い白色粉体の製造方法を提供できる。
また、容易に製造でき、明度(白色度)が高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができる白色粉体を提供できる。
Claims (6)
- 基体粉体上に無電解メッキ法により金属銀膜を形成する白色粉体の製造方法において、無電解メッキ法により金属銀膜を形成する前処理として、前記基体粉体のpH7〜12のアルカリ性緩衝溶液の懸濁液中に塩基性ペルオキソチタン溶液を投入して処理する工程を含むことを特徴とする白色粉体の製造方法。
- 前記基体粉体の懸濁液中に塩基性ペルオキソチタン溶液を投入した後、90〜180分間攪拌することにより、前記前処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の白色粉体の製造方法。
- 前記前処理における基体粉体の懸濁液の温度が、40℃〜60℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白色粉体の製造方法。
- 前記塩基性ペルオキソチタン溶液がpH8以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
- 前記塩基性ペルオキソチタン溶液の酸化チタンモル数が、基体粉体1gに対して5.00×10 −5 モル〜5.00×10 −4 モルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
- 請求項1〜5の製造方法により製造された白色粉体。
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