JP3627908B2 - 青色粉体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、青色粉体およびその製造方法に関するものであり、詳細には、高価な原料や危険な有機溶媒を用いずとも、安価かつ安全な方法により製造することができ、インキ、プラスチック・紙用フィラー、トナー、インクジェットプリンター用インク等多種の目的に用いられる青色粉体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは先に、ある粉体粒子だけが備える性質のほかに別の性質を合わせ持ち、複合した機能を有する粉体を提供するために、該粉体粒子を基体として、その表面に、均一な0.01〜20μmの厚みの、金属酸化物膜等を有する粉体を発明した(特開平6−228604号公報)。また、本発明者らは前記の粉体をさらに改良し、金属酸化物膜単独ではなく、金属酸化物膜と金属膜とを交互に複数層有するようにした粉体も発明した(特開平7−90310号公報)。
【0003】
これらの粉体を製造するには、基体の表面に均一な厚さの金属酸化物膜を複数層設けることが必要であって、そのためには金属塩水溶液から金属酸化物又はその前駆体である金属化合物を沈殿させることが難しいので、本発明者らは、金属アルコキシド溶液中に前記の基体を分散し、該金属アルコキシドを加水分解することにより、前記基体上に金属酸化物膜を生成させる方法を開発し、この方法によって薄くてかつ均一な厚さの金属酸化物膜を形成することができるようになり、特に多層の金属酸化物膜を形成することが可能になった。
また、本発明者らは粉体粒子を基体として、その表面に金属酸化物膜等の多層膜被膜を有する前記粉体は、その多層膜の物質の組み合わせ、屈折率および膜厚を制御することにより、多層膜の反射光干渉波形を調整し、顔料等の着色粉体となり得ることを見い出した(WO96/28269)。
【0004】
さらに本発明者らは、上記の技術を基に、目的とする特定の色調を有する着色粉体を得る技術、詳細には鮮やかな青色系の色を呈する膜被膜粉体の色を発色させるための条件範囲を確立することを試みた。
例えば、青色は、光の3原色の一つであり、また人に対して心理的に清潔感、清涼感、安心感を与える重要な色素である。このような青色系の色調を有し、かつ特定の機能を有する顔料粉体を得ることは産業上大いに意義のあることである。
本発明者らは、このような観点から検討を行った結果、基体粒子の表面に屈折率の大きい被膜と小さい被膜とが隣合って積層する複数の被覆膜を形成し、380〜500nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す様に該基体粒子及び被覆膜の条件を設定することにより、青色系の粉体が得られることを見い出した(特開平10−330644号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平10−330644号公報に記載の青色粉体は、その基体粒子の表面に有する被膜層が金属アルコキシドの加水分解反応によって製膜されたものであった。金属アルコキシドの加水分解反応による製膜方法は、溶媒として、引火性の高い有機系のものを使用し、原料として、高価な金属アルコキシドを使用しなければならない。引火性の高い有機溶媒を用いるためには、製造施設を防爆設備としたり、温度、湿度の管理が厳しく、それを用いて製造した製品の価格も総合的に当然高価なものとなる。
また、上記特開平10−330644号公報に記載の青色粉体は、十分な明度を有しておらず、くすんだ色調のものであった。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、金属アルコキシドの加水分解による方法を用いずに、高価な金属アルコキシドや引火性の高い有機溶媒を用いることなく、製造施設も防爆設備を必要とせず、温度、湿度の管理も容易であり、総合的に製品の価格も安価に得られる機能性の高い、青色粉体およびその製造方法を提供することにある。
また本発明のさらなる目的は、十分な明度を有する鮮やかな青色粉体およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意研究の結果、多層膜被覆粉体を製造する際、基体粒子の表面に有する被覆膜の少なくとも1層が水系溶媒中での金属塩の反応により形成し、膜の組合せ、それぞれの膜の厚さ、また、それらを制御する方法および反応条件(pH、分散条件等)を改良した。さらに被覆膜の少なくとも1層が、結晶化微粒子からなる空隙を有する被覆膜とすることにより、散乱反射による明度向上を計り、特に、膜設計において、極大値の波長の範囲を、特定の範囲に限定した時、鮮やかな青色系の粉体が得られ、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の膜被覆粉体およびその製造方法は、
(1)基体粒子の表面に被覆膜を有し、該被覆膜の少なくとも1層が水系溶媒中での金属塩の反応により反応溶液中で固相微粒子を形成させ、該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませることによって形成され、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成されたものであり、380〜500nmの間にピークを有する反射スペクトルを示すことを特徴とする青色粉体。
(2)水系溶媒中での金属塩の反応により形成された前記被覆膜が、下記式の条件を満たすものであることを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
(3)基体粒子の表面に有する被覆膜が多層膜であることを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
(4)前記多層膜の各膜が、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成されたものであることを特徴とする前記(3)記載の青色粉体。
(5)前記多層膜の各膜が、全て下記式の条件を満たすものであることを特徴とする前記(3)記載の青色粉体。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
【0008】
(6)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与することができるものであることを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
(7)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で構成された緻密な被覆膜を有することを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
(8)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が高屈折率膜であることを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
(9)前記緻密膜がシリカ膜であることを特徴とする前記(7)記載の青色粉体。
【0009】
(10)固相微粒子を該被覆膜中に取込ませた後に焼成することによって形成されたものであることを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
(11)前記反応溶液が水溶液であることを特徴とする前記(1)記載の青色粉体。
(12)前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆したことを特徴とする前記(10)記載の青色粉体。
【0010】
(13)基体粒子の表面に被覆膜を形成して青色粉体を製造する方法において、得られる粉体が380〜500nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す様に、該被覆膜の少なくとも1層を、水系溶媒中での金属塩の反応により固相微粒子を形成させ該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませ、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成することを特徴とする青色粉体の製造方法。
(14)水系溶媒中での金属塩の反応により形成する前記被覆膜を、下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする前記(13)記載の青色粉体の製造方法。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
(15)基体粒子の表面に形成する被覆膜を多層膜とすることを特徴とする前記(13)記載の青色粉体の製造方法。
(16)前記多層膜の各膜を、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成することを特徴とする前記(15)記載の青色粉体の製造方法。
(17)前記多層膜の各膜を、全て下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする前記(15)記載の青色粉体の製造方法。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
【0011】
(18)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与できるように形成することを特徴とする前記(13)記載の青色粉体の製造方法。
(19)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で緻密な膜を形成することを特徴とする前記(13)記載の青色粉体の製造方法。
(20)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を高屈折率膜とすることを特徴とする前記(13)記載の青色粉体の製造方法。
【0012】
(21)前記緻密膜をシリカ膜とすることを特徴とする前記(19)記載の青色粉体の製造方法。
(22)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜は、被覆膜中に固相微粒子を取込ませた後に焼成することによって形成することを特徴とする前記(13)記載の青色粉体の製造方法。
(23)前記反応溶液を水溶液とすることを特徴とする前記(22)記載の青色粉体の製造方法。
(24)前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆することを特徴とする前記(22)記載の青色粉体の製造方法。
【0013】
本発明の青色粉体は製膜反応の際に、以下の操作および作用により、被膜にならない固相の析出が抑えられ、基体粒子の表面に均一な厚さの被膜を、所望の厚さで形成することができると推測する。▲1▼反応溶媒として、緩衡溶液を用い、ある一定のpHとすることにより、酸またはアルカリの影響が和らげられ、基体表面の侵食が防止される;▲2▼超音波分散により、基体粒子、特にマグネタイト粉等の磁性体の分散性を良くするばかりでなく、被膜成分の拡散性を良くし、更に、被膜同志の付着を防止し、被覆製膜された磁性体粒子の分散性をも良好にする;▲3▼適当な反応の速さで被膜成分を析出させ、被膜にならない固相の析出を抑制する。
上記の総合的作用により、膜被覆粉体の表面の電荷を一定に維持することができ、電気2重層の働きにより、膜被覆粉体の凝集がなく、分散粒子が得られる。電気2重層の働きを生かすためにpHは、基体の物質と製膜反応により液中で形成される金属化合物の種類の組み合わせにより異なり、また、両者の等電点を避けることが好ましい。
また、基体粒子の表面に有する被覆膜の少なくとも1層を、結晶化微粒子と該結晶化微粒子相互間に空隙を有する結晶化微粒子の集合体からなる膜(以下、単に結晶化微粒子構成膜ともいう)とすることにより、結晶化微粒子表面と空隙との屈折率差を大きくして、光の散乱反射を起こし、反射効果を高め、優れた明度を有する青色色調の機能性粉体を提供することが可能となった。
【0014】
本発明は上記の作用機構により、水溶性原料を用いるにも係わらず、基体として磁性体を用いた場合でも膜被覆粉体同志が凝集したり固着することがなく、好ましい膜厚制御ができる膜被覆粉体を容易に製造することを可能とすることが
できた。
また、水を溶媒として用いることにより、アルコキシド法に比べ安価な製造コストで製膜できるという効果が得られる。
【0015】
図1は、基体粒子1の表面に結晶化微粒子構成膜2を有する本発明の青色粉体の一例の断面図であり、図2は、図1の青色粉体が有する結晶化微粒子構成膜2の断面拡大図である。
図1および図2に示す様に、上記結晶化微粒子構成膜2は結晶化微粒子3の間に空隙を有することにより、前記結晶化微粒子3の表面と空隙との屈折率差を大きくし、光の散乱反射を起こさせ、これにより明度の高い粉体とすることができる。上記の散乱反射が強いほど、粉体の明度が増す。
膜2の中に含まれる結晶化微粒子3は、屈折率が高い方が好ましく、また、粒径が揃っていない方が好ましい。
明度の調整は、上記膜内の結晶化微粒子の量および粒子径により調整することができる。
但し、粒子径によっては、散乱と干渉が同時に起こり、その干渉によって白色以外の色相を呈することがあるので、その設計には注意を要する。
特に、得られた膜被覆粉体がオパールの様に単色スペクトル色の強い場合には、膜中の結晶化粒子径がある大きさ(光の波長の4分の1から1波長程度)で均一になって該結晶化微粒子による干渉が発生していると考えられる。
【0016】
この場合、膜内の結晶化微粒子の粒子径は、1〜500nmが好ましく、より好ましくは1〜200nmであり、さらに好ましくは1〜100nmの範囲である。粒子径が1nm未満では、膜になっても、光を透過するため下地の基体粒子の色がそのまま出ることがある。逆に500nmより大きい場合には複数の粒子の反射光により前記干渉着色が起こったり、膜が脆くなって、剥離しやすく好ましくない。
また膜内の結晶化微粒子は、他の微粒子や膜と接触していても、粒界など形状で区別できるものである。
【0017】
一方、上記結晶化微粒子構成膜の1層の、好ましい厚さ範囲は、基体となる粒子の大きさによって異なる。基体粒子が0.1μm〜1μmでは0.05μm〜0.5μm、基体粒子が1μm〜10μmでは0.05μm〜2μm、基体粒子が10μm以上では0.05μm〜3μmであることが好ましい。
また、上記結晶化微粒子構成膜の総膜厚の好ましい厚さ範囲も、基体となる粒子の大きさによって異なる。基体粒子が0.1μm〜1μmでは0.1μm〜3μm、基体粒子が1μm〜10μmでは0.1μm〜5μm、基体粒子が10μm以上では0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0018】
更に本発明の青色粉体は、図2に示されるように、空隙を有する結晶化微粒子3で構成された膜2の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子4で構成された緻密な被覆膜(以下単に、緻密膜ともいう)を有することが好ましい。例えば、前述のような結晶化微粒子構成膜を最外層として有する青色粉体をトナーあるいは塗料等の顔料粉体として用いた場合、トナーの樹脂または塗料のビヒクルがその空隙に入り込み、結晶化微粒子3の表面と空隙との間の屈折率差を小さくして光の散乱反射を弱くし、その結果、明度も低下させる。
前述の緻密膜は上記のような明度の低下を防止するために好適である。
【0019】
なお、特開平4−269804号公報には、表面に無機顔料粒子の被覆層を有する着色粉体が記載されているが、この着色粉体は顔料粒子間の空隙が、表面処理剤と樹脂の混合物によって充填されたものであり、本発明の青色粉体のように、散乱反射が発生するものではなく、顔料粒子そのものの色によって所望の色に着色されるものである。またこの特開平4−269804号公報に記載の着色粉体は、基体粒子表面に顔料粒子が十分に固定されていないことがある。その場合には、基体に付着していた顔料粒子が溶媒と樹脂の混合液中で分離するため、塗料等に適用できないこともある。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の青色粉体について詳細に説明する。
本発明の青色粉体は、基体粒子の表面上に前述の結晶化微粒子構成膜のみならず、光を透過し得る他の構成からなる膜をさらに有する多層膜被覆粉体である。該低屈折率の光透過性の被覆膜として、金属塩等の反応により、金属水酸化物膜あるいは金属酸化物膜等を複数層とする場合において、前記被覆膜(基体粒子を被覆し、光干渉に関与する膜の層)の各層の厚さを調整することにより特別の機能を与えることができる。例えば、基体粒子の表面に、屈折率の異なる交互被覆膜を、次の式(1)を満たすように、被膜を形成する物質の屈折率nと380〜500nmの間にある可視光の波長の4分の1の整数m倍に相当する厚さdを有する交互膜を適当な厚さと膜数設けると、380〜500nmの間にある波長λの光(フレネルの干渉反射を利用したもの)が反射または吸収される。
nd=mλ/4 (1)
【0021】
この作用を利用して、基体粒子の表面に目標とする380〜500nmの間の波長に対し、式(1)を満たすような膜の厚みと屈折率を有する被膜を製膜し、さらにその上に屈折率の異なる膜を被覆することを1度あるいはそれ以上交互に繰り返すことにより380〜500nmの間に反射ピークを有する膜が形成される。このとき製膜する物質の順序は次のように決める。まず核となる基体の屈折率が高いときには第1層目が屈折率の低い膜、逆の関係の場合には第1層目が屈折率の高い膜とすることが好ましい。
【0022】
膜厚は、膜屈折率と膜厚の積である光学膜厚の変化を分光光度計などで反射波形として測定、制御するが、反射波形が最終的に必要な波形になるように各層の膜厚を設計する。例えば、多層膜を構成する各単位被膜の反射波形のピーク位置を380〜500nmの範囲に精密に合わせると、染料や顔料を用いずともブルー色系の単色の着色粉体とすることができる。
【0023】
ただし、実際の基体の場合、基体の粒径、形状、膜物質および基体粒子物質の相互の界面での位相ずれ及び屈折率の波長依存性によるピークシフトなどを考慮して設計する必要がある。例えば、基体粒子の形状が平行平板状である場合には、粒子平面に形成される平行膜によるフレネル干渉は上記式(1)のnを次の式(2)のNに置き換えた条件で設計する。特に、基体の形状が平行平板状である場合でも金属膜が含まれる場合には、式(2)の金属の屈折率Nに減衰係数κが含まれる。なお、透明酸化物(誘電体)の場合にはκは非常に小さく無視できる。
N=n+iκ(iは複素数を表す) (2)
この減衰係数κが大きいと、膜物質および基体物質の相互の界面での位相ずれが大きくなり、さらに多層膜のすべての層に位相ずれによる干渉最適膜厚に影響を及ぼす。
【0024】
これにより幾何学的な膜厚だけを合わせてもピーク位置がずれるため、特にブルー色系に着色する際に色が淡くなる。これを防ぐためには、すべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるように設計する。
さらに、基体表面にある酸化物層のための位相ずれや、屈折率の波長依存性によるピークシフトがある。これらを補正するためには、分光光度計などで、反射ピークが最終目的膜数で目標波長である380〜500nmの範囲になるよう最適の条件を見出すことが必要である。
【0025】
球状粉体などの曲面に形成された膜の干渉は平板と同様に起こり、基本的にはフレネルの干渉原理に従う。したがって、着色方法も青色系に設計することができる。ただし曲面の場合には、粉体に入射し反射された光が複雑に干渉を起こす。これらの干渉波形は膜数が少ない場合には平板とほぼ同じである。しかし、総数が増えると多層膜内部での干渉がより複雑になる。多層膜の場合もフレネル干渉に基づいて、反射分光曲線をコンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計することができる。特に基体粒子表面への被膜形成の場合、基体粒子表面とすべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計する。さらに、基体粒子表面にある酸化物層のためのピークシフトや屈折率の波長依存性によるピークシフトも加味する。実際のサンプル製造では設計した分光曲線を参考にし、実際の膜においてこれらを補正するために、分光光度計などで反射ピークが最終目的膜数で380〜500nmの範囲の目標波長になるよう膜厚を変えながら最適の条件を見出さねばならない。
【0026】
不定形状の粉末に着色する場合も多層膜による干渉が起こり、球状粉体の干渉多層膜の条件を参考にし基本的な膜設計を行う。上記の多層膜を構成する各単位被膜のピーク位置は各層の膜厚により調整することができ、膜厚は基体粒子の表面に金属酸化物等の固相成分を形成させる被覆形成条件中、原料組成、固相析出速度および基体量などを制御することにより、精度良く膜厚を制御でき、均一な厚さの被膜を形成することができ、所望の青色系に着色することができる。
以上のように、反射ピークや吸収ボトムが最終目的膜数で380〜500nmの範囲の目標波長になるよう膜形成溶液などの製膜条件を変えながら最適の条件を見出すことにより、青色系の粉体を得ることができる。また、多層膜を構成する物質の組合せおよび各単位被膜の膜厚を制御することにより多層膜干渉による発色を調整することができる。これにより、染料や顔料を用いなくても粉体を所望の青色系に鮮やかに着色することができる。
【0027】
以下、本発明の青色粉体およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明の青色粉体およびその製造方法において、その金属酸化物膜等を形成させる対象となる基体粒子は、特に限定されず、金属を含む無機物でも、有機物でもよく磁性体、誘電体、導電体および絶縁体等でもよい。
基体が金属の場合、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、その磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるものが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁性を有するものであるときには、強磁性合金を使用することが好ましい。
また、その粉体の基体が金属化合物の場合には、その代表的なものとして前記した金属の酸化物が挙げられるが、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素等の外、カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物でも良い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩などを挙げることができる。
【0028】
さらに、基体粒子として、金属以外では、半金属、非金属の化合物、特に酸化物、炭化物、窒化物であり、シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。その他の無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、合成雲母、白雲母など雲母類、カオリン等を用いることができる。
【0029】
有機物としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。
【0030】
基体の形状としては、球体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。
これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
また、基体粒子の比重としては、0.1〜10.5の範囲のものが用いられるが、流動性、浮遊性の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2.8の範囲である。基体の比重が0.1未満では液体中の浮力が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があり、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊させるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
【0031】
本発明においては、前記のように、上記粉体基体粒子を屈折率が互いに異なる複数の被膜層を用い、各被膜層の屈折率および層厚を適宜選択して被覆することにより、その干渉色により青色に着色しかつ可視光域以外にも特異的な干渉反射ピークを発現する粉体とすることができる。
前記したように、基体粒子の表面上に金属塩の反応により金属水酸化物膜あるいは金属酸化物膜を析出させるが、固相析出反応の溶媒として、緩衡溶液を用い、ある一定のpHで適当な速さで析出させる。
【0032】
本発明において、金属塩として使用される金属は、鉄、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛、アルミニウム、カドミウム、ジルコニウム、ケイ素、錫、鉛、リチウム、インジウム、ネオジウム、ビスマス、セリウム、アンチモン等の他、カルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。また、これら金属の塩としては、硫酸、硝酸、塩酸、シュウ酸、炭酸やカルボン酸の塩が挙げられる。さらにまた、前記金属のキレート錯体も含まれる。本発明において使用される金属塩の種類は、その基体の表面に付与しようとする性質や製造に際して適用する手段に応じてそれに適するものが選択される。
【0033】
これらの金属塩による金属酸化物等の膜は、複数層形成してもよく、またそれらの金属酸化物等の膜の上に、必要により金属アルコキシドの加水分解による金属酸化物等、また他の製膜方法による膜を形成することもできる。
このようにして、基体粒子の上に多層の膜を形成することができ、しかもその際、各層の厚さが所定の厚さをもつように形成条件を設定することにより、目的とする特性を得ることができるようにすることができ、また簡単な操作でかつ安価な原料である金属塩を用いて金属酸化物等の膜を多層に形成することができる。特に、高価な金属アルコキシドを原料とすることなく、多重層膜被覆粉体とすることができる点は重要な利点である。
【0034】
本発明の青色粉体を製造する方法では、多層被覆膜を連続した工程として製作しても良く、また、各被覆膜を1層ずつ製作、あるいは単層製作と複層連続製作を組み合わせるなど種々の方法で製作することができる。
本発明に係わる膜被覆粉体の粒径は、特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、通常は0.01μm〜数mmの範囲である。
【0035】
本発明において、その1回に形成させる金属酸化物膜の膜の厚さとしては、5nm〜10μmの範囲とすることが可能であり、従来の形成法より厚くすることができる。
複数回に分けて形成する金属酸化物膜の合計の厚さとしては、前記したカラー磁性粉体の場合、その干渉による反射率が良い金属酸化物膜を形成するためには、10nm〜20μmの範囲が好ましい、さらに好ましくは20nm〜5μmの範囲とすることである。粒径が制限されるなど特に薄い膜厚で可視光を干渉反射させるためには0.02〜2.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0036】
本発明の青色粉体は上記のように、製膜反応溶媒としてpH一定条件の水系溶媒を用い、同時に膜被覆反応を超音波分散条件下で、基体の表面への被膜形成反応により形成される。
本願発明では製膜反応を一定にするために、水系溶媒に緩衝剤を添加し緩衝溶液とするかあるいはあらかじめ用意された緩衝溶液が用いられる。また製膜反応の際には緩衝溶液以外の膜原料を添加し製膜する。製膜原料添加により製膜を行う際に、pHが大きく変動する場合には、これを防ぐため、緩衝溶液を追加することが望ましい。
本発明で言うところのpH一定とは、pHが所定のpHの±2以内、好ましくは±1以内、より好ましくは±0.5以内を言う。
【0037】
緩衡溶液は種々の系が用いられ、特に限定されないが、まず基体粒子が十分に分散できることが重要であり、同時に基体の表面に析出した金属水酸化物あるいは金属酸化物の膜被覆粉体も電気2重層の働きで分散でき、かつ上記の緩やかな滴下反応により緻密な被膜が製膜ができる条件を満足するように選択する必要がある。
従って、本発明の膜被覆粉体の製造法は従来の金属塩溶液の反応による中和や等電点による析出、または加熱により分解して析出させる方法とは異なるものである。
【0038】
次に、超音波分散条件としては、種々の超音波発振装置が使用でき、例えば、超音波洗浄機の水槽を利用することができ、特に限定されない。しかし本発明の超音波分散の条件としては、発振装置の大きさ、反応容器の形状および大きさ、反応溶液の量、体積、基体粒子の量等によって変化してくるので、それぞれの場合において、適切な条件を選択すればよい。
本発明に使用される緩衡溶液としては、析出させる固相成分に依存し、特に限定されないが、Tris系、ホウ酸系、グリシン系、コハク酸系、乳酸系、酢酸系、酒石酸系、塩酸系等が挙げられる。
【0039】
次に一例として、高屈折率の金属酸化物と低屈折率の金属酸化物の交互多層膜を形成する方法について具体的に説明する。まず、酸化チタンあるいは酸化ジルコニウムなどの被膜を形成する場合、酢酸/酢酸ナトリウム系等の緩衡溶液中に基体粒子を浸漬し超音波発振により分散し、チタンあるいはジルコニウムなどの金属塩である硫酸チタン、硫酸ジルコニウム等を原料とし、これら金属塩の水溶液を反応系に緩やかに滴下し、生成する金属水酸化物あるいは金属酸化物を基体粒子のまわりに析出させることにより行うことができる。この滴下反応の間、pHは上記緩衡溶液のpH(5.4)に保持される。
反応終了後、この粉体を固液分離し、洗浄・乾燥後、熱処理を施す。乾燥手段としては真空乾燥、自然乾燥のいずれでもよい。また、不活性雰囲気中で噴霧乾燥機などの装置を用いることも可能である。
なお、この場合の被覆膜である酸化チタンの形成は下記の反応式で示される。
Ti(SO+2HO→TiO+4H(SO
【0040】
続いて、二酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウムなどの被膜を形成する場合、KCl/HBO系等にNaOHを加えた緩衡溶液中に上記のチタニアコート粒子を浸漬し分散し、ケイ素あるいはアルミニウムなどの金属塩であるケイ酸ナトリウム、塩化アルミニウム等を原料とし、これら金属塩の水溶液を反応系に緩やかに滴下し、生成する金属水酸化物あるいは金属酸化物を基体粒子のまわりに析出させることにより行うことができる。この滴下反応の間、pHは上記緩衡溶液のpH(9.0)に保持される。
反応終了後、この粉体を固液分離し、洗浄・乾燥後、熱処理を施す。この操作により、基体粒子の表面に屈折率の異なる2層の、金属酸化物膜を形成する操作を繰り返すことにより、多層の金属酸化物膜をその表面上に有する粉体が得られる。
なお、この場合の被覆膜である二酸化ケイ素の形成は下記の反応式で示される。
NaSi2X+1+HO→XSiO+2Na+2OH
【0041】
次に、本発明の青色粉体が有する、結晶化微粒子構成膜は、光を散乱反射し、白色を発することができるものであれば、どのような物質からなるものでも構わないが、高屈折率を有する物質からなるものが好ましい。
高屈折率を有する物質としては、特に限定されないが、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム等の酸化物を用いることができ、屈折率が高く、汎用である酸化チタン(チタニア)が最も好ましい。
【0042】
上記のような結晶化微粒子構成膜を製膜する方法としては、製膜反応液相中での固相析出による方法等が用いられる。
具体的には、本発明者らが先に提案した特開平6−228604号公報、特開平7−90310号公報、国際公開WO96/28269号公報に記載されている有機溶媒中での金属アルコキシドの加水分解による固相析出法(金属アルコキシド法)や、特願平9−298717号に添付の明細書に記載の水溶液中での金属塩からの反応による固相析出法(水系法)等が挙げられる。
この場合、製膜反応液中で、基体粒子の表面に析出物の膜が成長する速度(線成長速度)よりも、反応液中で固相微粒子が析出する速度が速くなるように、反応溶液濃度、添加触媒量、基体粒子分散量を調整する。
上記のようにして、製膜反応液中に析出した固相微粒子を、基体粒子表面に付着させ、固相微粒子で構成された被覆膜を形成する。
【0043】
なお、この時点で膜にとりこまれた固相微粒子は非晶質であり、該固相微粒子間の空隙も未形成であり、光の散乱反射が生じず、また膜の機械的強度も非常に低いものである。そのため、この固相微粒子で構成された被覆膜を焼成する。この焼成により前記非晶質の固相微粒子は結晶化し、該結晶化微粒子間には空隙も形成され、前述の光を散乱反射する結晶化微粒子構成膜となる。
【0044】
該結晶化微粒子構成膜を形成するためには、前述の金属アルコキシド法よりも、水系法の方が線成長速度と固相析出速度の関係を好適なものとするのに簡易であるため好ましい。
また金属アルコキシド法は原料として高価な金属アルコキシドや、反応溶媒として比較的高価で危険性のある有機溶媒を必要とする。このため、製造装置または設備等も防爆仕様にしなければならず、更に、コストパーフォマンスが悪くなる。この点からも金属アルコキシド法に比べ水系法が好ましい。
【0045】
なお、前記焼成は前記固相微粒子で構成された被覆膜を形成した後に行ってもよいが、更に該被覆膜の上に、その被覆膜が結晶化微粒子構成膜となった場合その表面の空隙を塞ぐための緻密膜を形成することができる超微粒子で被覆した後に行うことが、得られる青色粉体の膜強度の点から望ましい。
焼成は300〜1200℃で行うことが好ましい。
【0046】
本発明の青色粉体において、上記の結晶化微粒子構成膜は2層以上であってもよい。その場合、2層の結晶化微粒子構成膜の間には、低屈折率の光透過性の被覆膜が存在することが好ましい。該低屈折率の光透過性の被覆膜としては特に限定されないが、金属化合物、有機物等からなるものが挙げられる。
【0047】
前記金属化合物としては、金属酸化物や金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属フッ化物を挙げることができる。より具体的には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化珪素、酸化アンチモン、酸化ネオジウム、酸化ランタン、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化アンチモン、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化アルミニウム3ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等を好適に使用できる。
【0048】
以下に、前記金属化合物膜の製膜方法について説明する。
製膜方法としては、PVD法、CVD法あるいはスプレードライ法等の気相蒸着法により、基体粒子の表面に直接、蒸着する方法が可能である。
しかしながら、本発明者らが先に提案した前記特開平6−228604号公報、特開平7−90310号公報あるいは国際公開WO96/28269号公報に記載されている金属アルコキシド法や、特願平9−298717号明細書に記載の水系法が好ましい。
この場合、前述の結晶化微粒子構成膜の製膜と異なり、線成長速度は固相析出速度よりも高くして、非晶質の均一膜が形成されるように反応条件を調整する。
【0049】
前記有機物としては、特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂である。樹脂の具体例としては、セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体または共重合体などが挙げられる。
(1)有機物膜(樹脂膜)を形成する場合、
a.液相中、基体粒子を分散させて乳化重合させることにより、その粒子の上に樹脂膜を形成させる方法(液相中での重合法)や、b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)等が採られる。
【0050】
本発明を青色粉体として、基体粒子上に多層膜を有するものを製造する場合の例を以下に示す。
例えば、前記の基体粒子が高屈折率の物質からなるものであれば、その上に低屈折率の光透過性膜を設け、さらにその上に高屈折率の粒子構成膜、またさらに、その上に低屈折率の光透過性膜と、順次交互に設ける。また、基体粒子が低屈折率のものならば、その上に高屈折率の粒子構成膜、さらにその上に低屈折率の光透過性膜、またさらにその上に、高屈折率の粒子構成膜と、順次設ける。
【0051】
次に、本発明において使用する原料、特に金属塩について説明する。
高屈折率の膜を製膜するのに使用する原料としては、酸化チタン膜用には、チタンのハロゲン化物、硫酸塩等、酸化ジルコニウム膜用には、ジルコニウムのハロゲン化物、硫酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩、キレート錯体等、酸化セリウム膜用には、セリウムのハロゲン化物、硫酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩等、酸化ビスマス膜用には、ビスマスのハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩等、酸化インジゥム膜用には、インジウムのハロゲン化物、硫酸塩等が好ましい。
また、低屈折率の膜を製膜するのに使用する原料としては、酸化ケイ素膜用には、ケイ酸ソーダ、水ガラス、ケイ素のハロゲン化物、アルキルシリケート等の有機ケイ素化合物とその重合体等、酸化アルミニウム膜用には、アルミニウムのハロゲン化物、硫酸塩、キレート錯体等、酸化マグネシウム膜用には、マグネシウムの硫酸塩、ハロゲン化物等が好ましい。
また、例えば酸化チタン膜の場合には、塩化チタンに硫酸チタンを混合すると、より低温で屈折率の高いルチル型の酸化チタン膜になる等の効果がある。
【0052】
また、被覆の際の反応温度は各金属塩の種類に適した温度に管理して被覆することにより、より完全な酸化物膜を製作することができる。
水系溶媒中での基体の表面への被膜形成反応(固層析出反応)が遅すぎる場合には、反応系を加熱して固層析出反応を促進することもできる。但し、加熱の熱処理が過剰であると、該反応速度が速すぎて、過飽和な固層が膜にならず、水溶液中に析出し、ゲルあるいは微粒子を形成し、膜厚制御が困難になる。
【0053】
被覆膜は製作後、蒸留水を加えながら傾斜洗浄を繰り返して、電解質を除去した後、乾燥・焼成等の熱処理を施し、固相中に含まれた水を除去して、完全に酸化物膜とすることが好ましい。また、製膜後の粉体を回転式チューブ炉などで熱処理することにより、固着を防ぐことができ、分散された粒子を得ることができる。
水酸化物膜あるいは酸化物膜を形成し、それを熱処理するには、各層を被覆する毎に熱処理しても良く、また、目的の多層膜を完成後最後に熱処理しても良い。
熱処理条件は反応系により異なるが、上記の熱処理温度としては200〜1300℃であり、好ましくは400〜1100℃である。200℃以下では塩類や水分が残ってしまう事あり、1300℃を超えて高くなると、膜と基体が反応し別の物質となることがあり、共に不適である。熱処理時間としては0.1〜100時間であり、好ましくは0.5〜50時間である。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕(マグネタイト粉末粒子の青色化、水系2層被覆)
(第1層シリカ膜の製膜)
(1)緩衡液の調整
1リットルの水に対し、0.4Mの塩化カリウム試薬と0.4Mのほう酸を溶解し、緩衡溶液1とした。
1リットルの水に対し、0.4Mの水酸化ナトリウムを溶解し、緩衡溶液2とした。
250mlの上記緩衡溶液1と115mlの上記緩衡溶液2とを混合均一化し、緩衡溶液3とした。
(2)ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)
ケイ酸ナトリウム試薬を純水で希釈し、Na SiO 含有量が10wt%になるように濃度調整した。
【0055】
(3)シリカ製膜
球状マグネタイト粉(平均粒径2.3ミクロン)50gを、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、1460mlと純水500mlの混合溶液に入れ、28kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液400ml(40ml/分)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、シリカ被覆マグネタイト粉A を得た。
【0056】
(第2層チタニア膜の製膜)
(1)緩衡液の調整
1リットルの脱イオン水に対し、0.3Mの酢酸、0.9Mの酢酸ナトリウムを溶解し、緩衡溶液4とした。
(2)硫酸チタン水溶液
水溶液中のTiO の濃度が12g/リットルになるように硫酸チタンに水を添加し、溶解調製し、硫酸チタン水溶液とした。
【0057】
(3)チタニア製膜
得られたA 、4.0gに対し、緩衝溶液4、400mlを用意し、溶液中にAlを超音波分散しながら、超音波分散槽中で、十分に分散後、液の温度を50℃〜55℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、硫酸チタン水溶液1.8mlを0.5(ml/min)で徐々に滴下した。滴下後、3時間反応を継続し、未反応チタニア原料を析出させた。すると、液中に析出していた固相微粒子が基体粒子表面A に固定され、またさらに、基体粒子表面に固定された固相微粒子よりも粒径が小さい超微粒子により、その表面が覆われた。
【0058】
(4)洗浄乾燥
製膜反応終了後、純水でデカンテーションして、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥器で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、500℃で30分過熱処理(焼成)を行い、表面が平滑なシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉A を得た。
この2層膜被覆粉体A は青色帯白色であり、その1kOeでの磁化は38emu/gであった。
この2層膜被覆の反射ピークは410nmであり、L、a、b標準表色系での測定値を表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003627908
【0060】
〔実施例2〕(マグネタイト粉末粒子の青白色化、水系3層被覆)
(第1層シリカ膜製膜)
実施例1と同様に、緩衝溶液1、2およびケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)の調製を行った。
(1)シリカ製膜
球状マグネタイト粉(平均粒径2.3μm)15gを、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、365mlに入れ、26kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液23ml(40ml/分)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。
ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、窒素雰囲気中で300℃で30分熱処理しシリカ被覆マグネタイト粉B を得た。
【0061】
(第2層チタニア膜製膜)
(1)チタニア製膜
実施例1と同様に、緩衝溶液4および硫酸チタン水溶液を調製し、あらかじめ準備しておいた。
得られたB 、4.0gに対し、緩衝溶液4、250mlを用意し、純水中にB を超音波分散しながら、超音波分散槽中で、十分に分散後、液の温度を60℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、硫酸チタン水溶液1.8gを一定速度1.5ml/minで徐々に滴下する。
滴下時に、初期は液中の微粒子が析出したが、核粉体表面に固定され、また、さらに析出したより粒径の大きな0.01〜0.5ミクロンの微粒子によりその表面が覆れたB を得た。得られたB の色は青であり、この2層膜被覆の反射ピークは420nmであり、L,a,b標準表色系での測定値を表1に示す。
このB の表面はわずかに凹凸があり、部分的にチタニア微粒子の凸部もみられた。
【0062】
(第3層シリカ膜製膜)(シリカ薄膜により膜表面を閉じこめた場合)
実施例1と同様に、緩衝溶液1、2およびケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)の調製をあらかじめ行った。
(1)シリカ製膜
チタニア/シリカ被覆粉B にシリカ製膜を行った。緩衝溶液量は、上記第1層被覆と同様であったが、シリカ原料溶液の滴下速度は同じにして滴下量を8mlとして製膜を行い、未反応物がなくなるまで、2時間反応させ、同様に十分な水を用いて、洗浄後、回転式チューブ炉で窒素雰囲気中で600℃で30分熱処理し、青白色のシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉B を得た。
【0063】
〔実施例3〕(マグネタイト粉末粒子の青色化、水系4層被覆)
(第1層シリカ膜製膜)
実施例1と同様、に緩衝溶液1、2、3およびケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)の調製を行った。
(1)シリカ製膜
粒状(八面体様)マグネタイト粉(平均粒径0.7ミクロン)40gを、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、1460mlと純水500mlの混合溶液に入れ、28kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液400ml(40ml/分)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、シリカ被覆マグネタイト粉C を得た。
【0064】
(第2層チタニア膜製膜)
実施例1と同様に、緩衝溶液4および硫酸チタン水溶液を調製し、あらかじめ準備しておいた。
(1)チタニア製膜
得られたC 、4.0gに対し、緩衝溶液4、150mlを用意し、溶液中にC を超音波分散しながら、超音波分散槽中で、十分に分散後、液の温度を40℃〜50℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、硫酸チタン水溶液2.8mlを0.5(ml/min)で徐々に滴下した。
同時にあらかじめ用意した1.0mol/リットルの溶液32mlも滴下速度(0.5ml/min)で徐々に滴下した。
滴下後、3時間反応を継続し、未反応チタニア原料を析出させた。
(2)洗浄乾燥
純水でデカンテーションして、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥器で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、500℃で30分過熱処理を行い、表面がほぼ平滑なシリカチタニア被覆マグネタイト粉C を得た。
この2層膜被覆粉体C は濃青色であり、その1kOeでの磁化は38emu/gであった。この2層膜被覆の反射ピークは420nmであり、L、a、b標準表色系での測定値を、表2に示す。
【0065】
(第3層シリカ膜製膜)
上記粉体シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C 37gを、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、1460mlと純水500mlの混合溶液に入れ、28kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液400ml(40ml/分)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ/チタニア製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C を得た。
【0066】
(第4層チタニア膜製膜)
(1)チタニア製膜
得られたC 、4.0gに対し、緩衝溶液4、150mlを用意し、溶液中にC を超音波分散しながら、超音波分散槽中で、十分に分散後、液の温度を40℃〜50℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、硫酸チタン水溶液3.4mlを0.5(ml/min)で徐々に滴下した。
同時にあらかじめ用意した1.0mol/リットルの溶液36mlも(0.5ml/min)で徐々に滴下した。
滴下後、3時間反応を継続し、未反応チタニア原料を析出させた。
(洗浄乾燥)
純水でデカンテーションして、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥器で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、500℃で30分過熱処理を行い、表面がほぼ平滑なシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C を得た。
この4層膜被覆粉体C は青色であり、その1kOeでの磁化は21emu/gであった。この4層膜被覆粉体C の反射ピークは415nmであり、L、a、b標準表色系での測定値を、表2に示す。
【0067】
〔実施例4〕(マグネタイト粉末粒子の青白色化、水系5層被覆)
(第1層シリカ膜製膜)
実施例1と同様に緩衝溶液を調製した。
(1)シリカ製膜
粒状(八面体様)マグネタイト粉(平均粒径0.7ミクロン)40gを、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、1460mlと純水500mlの混合溶液に入れ、28kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液400ml(40ml/分)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、シリカ被覆マグネタイト粉D を得た。
【0068】
(第2層チタニア膜製膜)
実施例1と同様に、緩衝溶液4および硫酸チタン水溶液を調製し、あらかじめ準備しておいた。
(1)チタニア製膜
得られたD 、4.0gに対し、緩衝溶液4、150mlを用意し、溶液中にD を超音波分散しながら、超音波分散槽中で、十分に分散後、液の温度を55℃〜60℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、硫酸チタン水溶液2.8mlを0.5(ml/min)で徐々に滴下した。
同時にあらかじめ用意した1.0mol/リットルの溶液33mlも(0.5ml/min)で徐々に滴下した。
滴下後、3時間反応を継続し、D 表面に未反応シリカ原料を析出させた。
(2)洗浄乾燥
純水でデカンテーションして、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥器で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、500℃で30分過熱処理を行い、表面がほぼ平滑なシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉D を得た。
この2層膜被覆は青色帯白色であり、その1kOeでの磁化は36emu/gであった。この2層膜被覆の反射ピークは420nmであり、L、a、b標準表色系での測定値を、表1に示す。
【0069】
(第3層シリカ膜製膜)
シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉D 37gを、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、1460mlと純水500mlの混合溶液に入れ、28kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液400ml(40ml/分)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ/チタニア製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉D を得た。
【0070】
(第4層チタニア膜製膜)
得られたD 、4.0gに対し、緩衝溶液4、150mlを用意し、溶液中にD を超音波分散しながら、超音波分散槽中で、十分に分散後、液の温度を55℃〜60℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、硫酸チタン水溶液3.4mlを0.5(ml/min)で徐々に滴下した。
同時にあらかじめ用意した1.0mol/リットルの溶液36mlも(0.5ml/min)で徐々に滴下した。
滴下後、3時間反応を継続し、D 表面に未反応シリカ原料を析出させた。
(4)洗浄乾燥
純水でデカンテーションして、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥器で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、500℃で30分過熱処理を行い、表面がほぼ平滑なシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉D を得た。
【0071】
(第5層シリカ膜製膜)
シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉D 37gに対し、あらかじめ準備しておいた緩衝溶液3、1460mlと純水500mlの混合溶液に入れ、28kHz、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衝溶液中で攪拌しながら分散させる。
これに同じくあらかじめ用意しておいたケイ酸ナトリウム水溶液40ml(40ml/min)で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。 ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄する。
洗浄後、シリカ/チタニア製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃で8時間乾燥し、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉D を得た。
この5層膜被覆粉体D は青色帯白色であり、その1kOeでの磁化は20emu/gであった。この5層膜被覆粉体D の反射ピークは420nmであり、L、a、b標準表色系での測定値値を表1に示す。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の青色粉体は、その製造方法における製膜反応の際に、水を溶媒として用いることにより、アルコキシド法に比べ安価な製造コストで製膜できるという効果が得られる。
また、基体粒子の表面に有する被覆膜の少なくとも1層を、結晶化微粒子と該結晶化微粒子相互間に空隙を有する結晶化微粒子の集合体からなる膜(以下、単に結晶化微粒子構成膜ともいう)とすることにより、結晶化微粒子表面と空隙との屈折率差を大きくして、光の散乱反射を起こし、反射効果を高め、優れた明度を有する青色色調の機能性粉体を提供することが可能となった。
【0073】
上記のようにして得られた本発明の青色粉体は、顔料、粉末冶金、窯業原料、電子工業などの原料となる青色系複合原料粉体として、染料や顔料を用いずとも製造できるものであり、カラーインキ用顔料およびプラスチック・紙用フィラーに用いられている従来の顔料にとって代わる優れた性能を保持し、長期保存においても安定な色調のものとすることができる。
これらの優れた機能を有すると共に、基体として磁性体、導電体または誘電体を活用すると、電場、磁場などの外部要因により反応することにより移動力、回転、運動、発熱などの付加的な作用を発する機能をもち、例えば、基体として磁性体を適用すると、カラー磁性トナーやカラー磁性インキの顔料としても適用可能であり、産業界に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の青色粉体の一例の断面図である。
【図2】図1の青色粉体が有する結晶化微粒子構成膜2の断面拡大図である。
【符号の説明】
1 基体粒子
2 結晶化微粒子構成膜
3 結晶化微粒子
4 超微粒子

Claims (24)

  1. 基体粒子の表面に被覆膜を有し、該被覆膜の少なくとも1層が水系溶媒中での金属塩の反応により反応溶液中で固相微粒子を形成させ、該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませることによって形成され、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成されたものであり、380〜500nmの間にピークを有する反射スペクトルを示すことを特徴とする青色粉体。
  2. 水系溶媒中での金属塩の反応により形成された前記被覆膜が、下記式の条件を満たすものであることを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  3. 基体粒子の表面に有する被覆膜が多層膜であることを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
  4. 前記多層膜の各膜が、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成されたものであることを特徴とする請求項3記載の青色粉体。
  5. 前記多層膜の各膜が、全て下記式の条件を満たすものであることを特徴とする請求項3記載の青色粉体。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  6. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与することができるものであることを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
  7. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で構成された緻密な被覆膜を有することを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
  8. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が高屈折率膜であることを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
  9. 前記緻密膜がシリカ膜であることを特徴とする請求項7記載の青色粉体。
  10. 固相微粒子を該被覆膜中に取込ませた後に焼成することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
  11. 前記反応溶液が水溶液であることを特徴とする請求項1記載の青色粉体。
  12. 前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆したことを特徴とする請求項10記載の青色粉体。
  13. 基体粒子の表面に被覆膜を形成して青色粉体を製造する方法において、得られる粉体が380〜500nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す様に、該被覆膜の少なくとも1層を、水系溶媒中での金属塩の反応により固相微粒子を形成させ該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませ、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成することを特徴とする青色粉体の製造方法。
  14. 水系溶媒中での金属塩の反応により形成する前記被覆膜を、下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする請求項13記載の青色粉体の製造方法。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  15. 基体粒子の表面に形成する被覆膜を多層膜とすることを特徴とする請求項13記載の青色粉体の製造方法。
  16. 前記多層膜の各膜を、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成することを特徴とする請求項15記載の青色粉体の製造方法。
  17. 前記多層膜の各膜を、全て下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする請求項15記載の青色粉体の製造方法。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体が示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  18. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与できるように形成することを特徴とする請求項13記載の青色粉体の製造方法。
  19. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で緻密な膜を形成することを特徴とする請求項13記載の青色粉体の製造方法。
  20. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を高屈折率膜とすることを特徴とする請求項13記載の青色粉体の製造方法。
  21. 前記緻密膜をシリカ膜とすることを特徴とする請求項19記載の青色粉体の製造方法。
  22. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜は、被覆膜中に固相微粒子を取込ませた後に焼成することによって形成することを特徴とする請求項13記載の青色粉体の製造方法。
  23. 前記反応溶液を水溶液とすることを特徴とする請求項22記載の青色粉体の製造方法。
  24. 前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆することを特徴とする請求項22記載の青色粉体の製造方法。
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