JP4051787B2 - 固形粉末化粧料 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粉末と結合剤を固形状に成型した皮膚用の固形粉末化粧料に関し、さらに詳しくは、成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせる固形粉末化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファンデーション、頬紅、アイシャドー等の固形粉末化粧料において粉体結合性を強化し、成型性、耐衝撃性を向上させる為には金属石鹸を配合していた。ここで、本発明でいう固形粉末化粧料とは、無機または有機粉末が主成分で、結合剤として油分や界面活性剤を適量混合して圧縮成型等を行なうことにより固形状に成型した化粧料であり、具体的な商品形態は中皿成形粉末状、塊状、ペンシル状、スティック状等である。しかし、一般に金属石鹸を配合すると、使用時のとれや使用時ののび(延展性)が悪くなるだけでなくざらつき感を有することがあり、使用感が悪くなるという欠点があった。
【0003】
そこで、特開昭59−93013号公報、特開昭60−126210号公報および特開平2−88512号公報には、球状粉体やポリ四フッ化エチレン粉末を使用した、延展性を改善するとともに粉体結合性を向上させた化粧料、特開平6−305935号公報には、金属石鹸と窒化ホウ素を組み合わせた化粧料、特開平7−89825号公報には、アルキル変性シリコーンまたはグリセロール変性シリコーンで被覆処理したタルクとシリコーン油を組み合わせた化粧料等が開示されているが、これらの化粧料は皮膚への付着性が十分でなく、長時間の使用により化粧崩れを生じ易くなり使用初期状態を維持することができないだけでなく、しわをより自然に目立たなくさせることが困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決し、成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせる固形粉末化粧料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に研究を重ねたところ、特定の粒度分布を有する金属石鹸微粒子を特定量使用することで目的の固形粉末化粧料を得るに至った。すなわち本発明は、10μmよりも大きな粒径粒子の全体に対する含有率が4%以下であり、かつ、平均粒径が0.8〜2.0μmであり、かつ、30%粒径RAと70%粒径RCとの差RC−RAが3μm以下または50%粒径RBと95%粒径RDとの差RD−RBが6μm以下である金属石鹸微粒子1〜70重量%含有することを特徴とする固形粉末化粧料である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる金属石鹸微粒子は脂肪酸の多価金属塩であり、脂肪酸としては例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、好ましくはパルミチン酸およびステアリン酸である。多価金属原子としてはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄等が挙げられ、好ましくはマグネシウム、カルシウムおよび亜鉛である。
そして、30%粒径RAと、70%粒径RCとの差RC−RAが3μm以下または50%粒径RBと95%粒径RDとの差RD−RBが6μm以下であり、好ましくはRC−RAが2μm以下またはRD−RBが3μm以下である。RC−RAが3μmより大きいかまたは差RD−RBが6μmより大きいと使用時のとれ、延展性および持続性が悪くなるともにしわの隠蔽効果も弱くなる。
【0007】
ここで、30%粒径RAとは、金属石鹸粒子全重量中の30%の粒子がその粒径以下であることを示し、例えば図1の一般的な金属石鹸であるステアリン酸亜鉛の粒度累積グラフ中の累積(%)における30%での粒径である3.2μmをRAと定義する。RB、RC、RDも同様に定義され、それぞれ5.3μm、8.3μm、19.6μmである。従ってRC−RAおよびRD−RBは、それぞれ5.1μm、14.3μmとなる。すなわち、RC−RAおよびRD−RBの各々の値が低い程、粒度分布の範囲が狭いことを示す。
【0008】
なお、粒度分布の測定には一般的な粒度分布測定法を用いる。例えば、フルイ分け法、沈殿法、顕微鏡法、光走査法、レーザー回折散乱法等が挙げられるが、本発明に使用する金属石鹸微粒子の測定法においては、より微細な粒子に対して精度良く測定が可能な光走査法、レーザー回折散乱法等が好適に使用される。
本発明に用いられる金属石鹸微粒子においては10μmよりも大きな粒径粒子の全体に対する含有率が4%以下であることが好ましく、実質的に10μmよりも大きな粒径粒子を含まないことが更に好ましい。
【0009】
本発明の金属石鹸微粒子は通常次のようにして調製される。すなわち、脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩0.001〜20重量%を含有する水溶液と、無機金属塩0.001〜20重量%を含有する水溶液または分散液とを、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で混合して金属石鹸スラリーを調製し、次いでこのスラリーを金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で乾燥処理する。ここで、結晶転移開始温度とは、金属石鹸の結晶構造が変化し始める温度のことであり、例えば図2の一般的なステアリン酸亜鉛の示差熱分析による熱吸収グラフにおいて、吸熱開始前の勾配の延長線Aと吸熱開始後の勾配の延長線Bとの交点Cの温度を結晶転移開始温度とする。例えば、ステアリン酸亜鉛で100℃、ステアリン酸カルシウムで94℃、ステアリン酸マグネシウムで73℃である。
【0010】
本発明の成分である金属石鹸微粒子は固形粉末化粧料全量中に1〜70重量%であり、好ましくは3〜60重量%、更に好ましくは5〜50重量%である。1重量%未満では成形性および耐衝撃性が悪くなるだけでなく、しわを目立たなくさせる効果が弱くしかも持続性が悪くなり易くなり、70重量%を超えると使用時のとれや延展性が悪くなる。
【0011】
本発明の固形粉末化粧料には化粧料に使用される従来公知の成分を配合することができる。例えば、タルク、カオリン、セリサイト、雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸ストロンチウム、硫酸バリウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、セラミックスパウダー等の無機粉末、結晶セルロース、ポリエチレン粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末等の有機粉末、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料、赤色酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄色酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒色酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料、酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビヒマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビヒマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料、クロロフィル、β−カロチン等の天然色素、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール等の多価アルコール、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の水溶性高分子、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィン等の炭化水素系油、ホホバ油、オリーブ油、ヒマシ油、ひまわり油等の天然油脂、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等の合成トリグリセライド、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル油、ミツロウ、カルナバロウ等のロウ、直鎖および環状のジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン誘導体、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチン等その他油性成分、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤、石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、アシルグリシン塩、アシルザルコシン塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルベタイン、アミドプロピルベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩等の両性界面活性剤、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキシド等の半極性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤、アルキルアミンやアミドアミンの塩酸塩や酢酸塩等の有機アミンの塩類、pH調製剤である酸およびアルカリ、殺菌剤、キレート剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、動植物由来の天然エキス、香料等を配合できる。
【0012】
【実施例】
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜7および比較例1〜5
表1に示す金属石鹸微粒子を使用して表3に示すパウダーファンデーションである固形粉末化粧料を調整して中皿に成形し、下記の方法により評価を行なった。但し、添加成分として表2に示す7成分を共通添加成分として使用した。結果を表3に示す。
なお、表1の金属石鹸微粒子の粒度分布は以下のようにして測定した。すなわち、金属石鹸微粒子0.5gに10mlのエタノールを加え、日本精機株式会社製の超音波分散器を用いて5分間超音波分散を行った。次に測定溶媒としてエタノールを循環している日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置(SPA型)に得られた金属石鹸分散液をDV値が0.6〜0.8になるまで添加し、この状態における各サンプルの粒度分布を測定した。
【0013】
【表1】
Figure 0004051787
【0014】
【表2】
Figure 0004051787
【0015】
【表3】
Figure 0004051787
【0016】
(1)使用時のとれ
20名の女性(20才〜35才)をパネラーとし、固形粉末化粧料を使用した時のとれについて下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を使用時のとれの良好な化粧料であると評価した。
2点:使用時に一回で十分量の化粧料を取ることが出来、とれが良いと感じた場合。
1点:使用時に一回で取れる量がやや少なく、とれがやや悪いと感じた場合。
0点:使用時に一回で取れる量が少なく、とれが悪いと感じた場合。
【0017】
(2)延展性
20名の女性(20才〜35才)をパネラーとし、固形粉末化粧料を使用した時ののびについて下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を使用時ののび(延展性)が良好な化粧料であると評価した。
2点:使用時ののびが良いと感じた場合。
1点:使用時ののびがやや悪いと感じた場合。
0点:使用時ののびが悪いと感じた場合。
【0018】
(3)持続性
20名の女性(20才〜35才)をパネラーとし、固形粉末化粧料を使用してから4時間後の肌の状態について下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を化粧崩れし難く化粧もち(持続性)の良い化粧料であると評価した。
2点:化粧崩れを生じていないと感じた場合。
1点:やや化粧崩れを生じていると感じた場合。
0点:明らかに化粧崩れが生じていると感じた場合。
【0019】
(4)しわ隠蔽効果
20名の女性(20才〜35才)をパネラーとし、固形粉末化粧料を使用した時の肌の状態について下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上をしわ隠蔽効果の高い化粧料であると評価した。
2点:明らかにしわが目立たなくなると感じた場合。
1点:ややしわが目立たなくなると感じた場合。
0点:しわ隠蔽効果が弱いと感じた場合。
【0020】
実施例1〜7より、本発明のパウダーファンデーションはいずれも成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせていた。
一方、比較例1〜5では十分な性能が得られていない。つまり、比較例1では本発明の成分である金属石鹸微粒子が配合されていないことから持続性が悪くしかもしわ隠蔽効果が弱くなっており、比較例2では本発明の成分である金属石鹸微粒子が本発明の範囲を超えて配合されいることから使用時のとれおよび延展性が悪くなっている。そして、比較例3、比較例4、比較例5では本発明の成分である金属石鹸微粒子に変えて本発明の範囲外である金属石鹸粒子または有機樹脂粉末が配合されていることから、使用時のとれおよび延展性が悪くなるだけでなく、持続性が悪くしかもしわ隠蔽効果が弱くなっている。
【0021】
実施例8
表1に示す金属石鹸微粒子を使用して表4に示すケーキ状ファンデーションである固形粉末化粧料を調整して中皿に成形し、実施例1の説明で示した方法により評価を行なった。
【0022】
【表4】
Figure 0004051787
【0023】
実施例8より、本発明のケーキ状ファンデーションは成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせていた。
【0024】
実施例9
表1に示す金属石鹸微粒子を使用して表5に示すボディパウダーである固形粉末化粧料を調整して中皿に成形し、実施例1の説明で示した方法により評価を行なった。
【0025】
【表5】
Figure 0004051787
【0026】
実施例9より、本発明のボディパウダーは成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせていた。
【0027】
実施例10
表1に示す金属石鹸微粒子を使用して表6に示す頬紅である固形粉末化粧料を調整して中皿に成形し、実施例1の説明で示した方法により評価を行なった。
【0028】
【表6】
Figure 0004051787
【0029】
実施例10より、本発明の頬紅は成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせていた。
【0030】
実施例11
表1に示す金属石鹸微粒子を使用して表7に示すアイシャドーである固形粉末化粧料を調整して中皿に成形し、実施例1で示した方法により評価を行なった。
【0031】
【表7】
Figure 0004051787
【0032】
実施例11より、本発明のアイシャドーは成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせていた。
【0033】
【発明の効果】
本発明の固形粉末化粧料は成型性、耐衝撃性に優れ、使用時のとれおよび延展性が良好であり、持続性に優れるとともにしわを目立たなくさせる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属石鹸の一般品であるステアリン酸亜鉛の粒度分布および粒度累積グラフを示す。
【図2】金属石鹸の一般品であるステアリン酸亜鉛の示差熱分析結果を示す。

Claims (1)

  1. 10μmよりも大きな粒径粒子の全体に対する含有率が4%以下であり、かつ、平均粒径が0.8〜2.0μmであり、かつ、30%粒径RAと70%粒径RCとの差RC−RAが3μm以下または50%粒径RBと95%粒径RDとの差RD−RBが6μm以下である金属石鹸微粒子1〜70重量%含有することを特徴とする固形粉末化粧料。
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