JP4051714B2 - 固体高分子型燃料電池の電極基材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、固体高分子型燃料電池の電極基材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池の電極基材に使用される多孔質炭素板には、導電性が高いこと、機械的強度が高いこと、気体透過性が高いこと、耐食性が高いことなどリン酸型燃料電池用電極基材と同様の特性が要求される。
【0003】
なかでも、固体高分子型燃料電池は、電極の電流密度がリン酸型の4〜20倍と高いので、水素、酸素の供給量や、反応により生成した水の除去量が多くなること、また作動温度が100℃前後と低いので、水によりガス供給路がふさがり、ガス供給路が狭くなる可能性があることから、特に気体透過性が高いことが要求される。
【0004】
導電性についても高い方が望ましいが、多孔質炭素板をフッ素系樹脂で撥水処理することにより抵抗が増大するうえ、多孔質炭素板と他の材料との間の接触抵抗が大きいため、多少多孔質板の抵抗が増大しても気体透過性を上げることが望まれる。
【0005】
曲げ強さも高い方が望ましいが、一般に電極面積がリン酸型燃料電池より小さいため取り扱いやすく、多少の強度低下は許容される。
【0006】
このような固体高分子型燃料電池の電極基材には、従来はリン酸型燃料電池用に作られた材料がそのまま用いられた。たとえば、特公昭53−18603号公報に記載されているように、炭素短繊維とポリビニルアルコール等の有機質バインダーを含む抄造媒体との混合物を抄造してシート状中間基材を得た後、その中間基材を加熱すると炭素化する樹脂、たとえば、自己硬化型のフェノール樹脂を含浸し、さらにフェノール樹脂を含浸した上記中間基材を加熱してフェノール樹脂を炭素化し、炭素短繊維同士をフェノール樹脂の炭化物で結着した基材が用いられた。ところがこのような方法によって製造した基材は、導電性、曲げ強さの面で十分であるとはいえない。
【0007】
また、この問題を解決するために特開平1−160867号公報には、上記中間基材に含浸する自己硬化型のフェノール樹脂に変えてレゾール型のフェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の混合樹脂を用いる方法が示されている。しかしながら、そこに示された条件は固体高分子型燃料電池の電極基材用として十分な気体透過性を与えるものではなかった。
【0008】
また、特開平7−105957号公報には、炭素繊維からなる織物やペーパー、フェルトを用いた電極が示されている。この場合は気体透過性は十分であるが比抵抗が高い、平滑性、ハンドリング性が悪いという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、機械的強度と厚さ方向の比抵抗を比較的高く保ったまま、厚さ方向の気体透過性を高くした多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は下記の構成からなる。
【0011】
(1)実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散せしめられた炭素短繊維を炭素によって互いに結着してなる多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材であって、曲げ強さが14.7MPa以上、厚さ方向の比抵抗が0.01Ωm以下であり、かつ密度が0.25〜0.32g/cm 3 であって、空気による厚さ方向の気体透過性が3000ml・mm/cm2/hr/mmAq以上であることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極基材。
【0012】
(2)炭素短繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維であることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子型燃料電池の電極基材。
(3)厚さが0.21〜0.45mmであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の固体高分子型燃料電池の電極基材。
(4)下記の式で定義する結着炭素と炭素の結着した炭素繊維による表層被覆率が20%以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の電極基材。
【0013】
ただし、RSC=SSC/STotal
RSC:表層被覆率
SSC:表層を覆っている結着炭素と炭素繊維の結着されている部分の面積
STotal :覆われている部分と覆われていない部分をあわせた全面積
【0015】
(5)実質的に二次元ランダムな方向に分散した炭素短繊維集合体に、レゾール型フェノール樹脂Rとノボラック型フェノール樹脂Nを、R:N=2:1〜1:3の比率で混合した樹脂を炭素繊維100重量部に対してフェノール樹脂が40〜75重量部になるように含浸して中間基材を得る工程と、前記混合樹脂が含浸された前記中間基材を加熱して前記混合樹脂を炭素化する工程とを含むことにより、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の電極基材を得ることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極基材の製造方法。
【0016】
(6)実質的に二次元ランダムな方向に分散した炭素短繊維集合体に炭素繊維100重量部に対してメラミン樹脂が70〜220重量部になるように含浸して中間基材を得る工程と、メラミン樹脂が含浸された前記中間基材とを加熱してメラミン樹脂を炭素化する工程を含むことにより、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の電極基材を得ることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極基材の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
炭素短繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができるが、基材の曲げ強さを高くするために、PAN系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維を用いるのが好ましく、PAN系炭素繊維を用いることがさらに好ましい。
【0019】
炭素繊維の繊維径は4〜20μm程度とすることが好ましく、4〜13μmとすること、特に4〜10μmとすることが基材強度を高くするためにより好ましい。偏平な断面の炭素繊維の場合は、長径と短径の平均を繊維径とする。短繊維の長さは3〜20mm程度とすることが好ましく、5〜15mm程度とするのが製造の容易さおよび基材の強度を高くするためにさらに好ましい。
【0020】
本発明は、実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散せしめられた上記の炭素短繊維を炭素によって互いに結着してなる多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材である。
【0021】
炭素短繊維を実質的に二次元ランダムな方向に分散させる方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中で炭素短繊維を分散させて降り積もらせる乾式法などが適用できる。
【0022】
炭素短繊維を互いに結着させる炭素としては、たとえば樹脂の加熱による炭素化によって得られる。用いられる樹脂としては加熱により炭素化するもの、たとえばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ピッチなどである。
【0023】
炭素短繊維と樹脂の複合体の製造方法としては、炭素短繊維の集合体に樹脂を混合、含浸する方法や、炭素短繊維と樹脂を一緒に抄造する方法があるが、樹脂を液状で含浸するか、後の工程で溶融する樹脂を用いることが基材の強度を高くするため、比抵抗を低くするために好ましい。
【0024】
また、含浸時に樹脂を溶媒に溶かし、含浸後に溶媒を除くこともよく用いられる方法である。炭素短繊維と樹脂の混合体は、加熱による炭素化の前に加熱加圧による成形が行なわれることが好ましい。
【0025】
成形により、炭素短繊維と樹脂との接着性向上、表面平滑性の向上が達成される。
【0026】
成形時の温度は樹脂により異なるが、圧力は0.0098〜1.96MPa程度が好ましく、0.098〜0.98MPaとすることがより好ましい。成形時の圧力により基材密度を制御できるが、圧力が低すぎると接着性が悪くなり、圧力が高すぎると過剰な流れを起こし、材料がつぶれてしまうことがある。
【0027】
炭素短繊維と樹脂との混合体の加熱による炭素化の温度は、曲げ強さを上げ、比抵抗を低くし、不純物を減らし、耐食性を高めるために1300℃以上であることが好ましく、2000℃以上とすることがさらに好ましい。
【0028】
本発明では、上記の多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材は、曲げ強さが14.7MPa以上、厚さ方向の圧縮強さが0.49MPa以上であり、かつ密度が0.25〜0.32g/cm 3 であって、空気による厚さ方向の気体透過性が3000ml・mm/cm2/hr/mmAq以上であることを特徴とする。また、本発明の電極基材では、厚さが0.21〜0.45mmであることが好ましい。
【0029】
以下、これらの特性値について説明する。
【0030】
まず、本発明の多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材の曲げ強さは14.7MPa以上であり、好ましくは19.6MPa以上、さらに好ましくは24.5MPa以上である。
【0031】
曲げ強さが14.7MPaより小さいと、ハンドリング性が悪く、好ましくない。
【0032】
曲げ強さはJIS K6911に準拠した3点曲げ試験で測定する。
【0033】
ただし、試験片の幅(W)は13mm、長さ(L)は60mm以上とする。支点間距離(Lv)と試験片の厚さ(h)の関係は次のとおり。
【0034】
Lv/hは、厚さ約0.1mmのとき、Lv/hは約200とし、厚さの増加とともにLv/hを小さくし、厚さ約0.5mmのとき、Lv/hは約100とする。また支点と加圧くさびのRは3mm、荷重速度は2mm/minとする。
【0035】
本発明の電極基材では、厚さ方向の圧縮強さは、電極基材を電極に加工するときと燃料電池として使用する際の加圧力に耐える強さであればよく、0.49MPa以上、好ましくは0.98MPa以上、さらに好ましくは1.47MPa以上とするのがよい。
【0036】
また、本発明の電極基材では、厚さ方向の圧縮弾性率は、燃料電池を積層して組んだ時に重ねられるセパレータ表面の凹凸や多孔質基材自身の凹凸を吸収して接触抵抗を小さくするためには低い方がよいが、あまり低いと加圧が加わった時の変形量が大きくなり、加工が行ないにくくなるため、11.8MPa以下、好ましくは1.96〜11.8MPa、さらに好ましくは3.92〜9.8MPaとするのがよい。
【0037】
厚さ方向の圧縮強さと圧縮弾性率は、荷重を増やしていくと、図1の様な変位−荷重曲線が得られる。これが途中で直線的に変化し、直線からそれ始める点を破壊点とする。基材の厚さをh、基材の面積をA、破壊点の荷重をP、破壊点までの変位をΔhとして、次式により算出する。
【0038】
圧縮強さ=P/A
圧縮弾性率=h/A×P/Δh
破壊点を決定するのが難しい場合には基材を何枚か重ねて測定するとよい。試験前の基材の厚さの測定には通常市販されているマイクロメータを用い、何枚か重ねて測定する場合には1枚ずつ測定した厚さの和を基材厚さとする。
【0039】
さらに、厚さ方向の比抵抗は0.01Ωm以下、好ましくは0.005Ωm以下である。
【0040】
厚さ方向の比抵抗は、基材を一定面積の水銀電極ではさみ、電極間に一定電流を流したときの電圧降下から次式によって算出する。
【0041】
比抵抗=(電圧降下×電極面積)/(電流×基材の厚み)
空気による厚さ方向の気体透過性は、3000ml・mm/cm 2 /hr/mmAq以上、好ましくは3600ml・mm/cm 2 /hr/mmAq以上である。
【0042】
空気による厚さ方向の気体透過性は次の方法により測定する。
【0043】
すなわち、基材に空気を14ml/cm 2 /sec(=50400ml/cm 2 /hr )透過させたときの圧力損失を測定し、次式によって算出する。
【0044】
気体透過性=(50400×基材厚さ)/(圧力損失)
次に、本発明における多孔質炭素板の結着炭素と炭素の結着した炭素繊維による表層被覆率は、気体透過性との関係から、20%以下であることが好ましく、より好ましくは13%以下である。
【0045】
表層被覆率(RSC)を求めるためには、電子顕微鏡などで基材を200倍以上に拡大して表層を覆っている結着炭素と炭素繊維のうち炭素に結着されている部分の面積、すなわち、被覆されている部分の面積(SSC)を求める。たとえば図2の場合、図3の斜線の範囲が被覆されている部分である。
【0046】
表層被覆率(RSC)=SSC/STotal で求める。
【0047】
ただし、STotal は、覆われている部分と覆われていない部分をあわせた全面積である。
【0048】
場所によるバラツキの影響を除くため、STotal は少なくとも0.5mm2 以上になる様にする。表層の判断が難しい場合には0.1mm×0.1mmのメッシュに区切り、それぞれのなかで表層から6本目までの炭素繊維に結着した炭素とその連なった炭素とする。
【0049】
次に、本発明の多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材を得るに好適な固体高分子型燃料電池の電極基材の製造方法について説明する。
【0050】
本発明の多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材の製造方法は、実質的に二次元ランダムな方向に分散した炭素短繊維集合体にレゾール型フェノール樹脂Rとノボラック型フェノール樹脂NをR:N=2:1〜1:3の比率で混合した樹脂を炭素繊維100重量部に対してフェノール樹脂が40〜75重量部になるように含浸して中間基材を得る工程と、前記混合樹脂が含浸された前記中間基材を加熱して前記混合樹脂を炭素化する工程とを含むことを特徴とする。
【0051】
炭素短繊維集合体は、取り扱い性、樹脂含浸時の形態保持のために有機質バインダを付着させることができる。有機質バインダとしては、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。また付着量は1〜30重量%程度でよい。
【0052】
レゾール型フェノール樹脂Rとノボラック型フェノール樹脂Nとの混合比率は、Rが多くなりすぎると曲げ強さが低くなり、厚さ方向の比抵抗が高くなること、Nが多くなりすぎると後の加熱工程において混合樹脂が十分固くならず扱いにくくなること、また樹脂の炭素化時に残る炭素分が少なくなってしまうことなどから、R:N=2:1〜1:3とし、好ましくは、R:N=3:2〜1:2とする。特に本発明のように、炭素短繊維に比べ樹脂量が少ない場合には、Rの量を抑えることが曲げ強さ、比抵抗のために重要になる。
【0053】
含浸するフェノール樹脂の量は多くし過ぎると基材の密度が高くなり、気体透過性が低くなって固体高分子型燃料電池の電極基材として適さなくなる。一方、少なくし過ぎると基材の密度が低くなり過ぎ、曲げ強さ、圧縮強さと弾性率が低く、比抵抗が高くなってしまうので、炭素繊維100重量部に対する樹脂の含浸量は40〜75重量部とし、好ましくは55〜75重量部とする。
【0054】
本発明の多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材の他の製造方法は、実質的に二次元ランダムな方向に分散した炭素短繊維集合体に炭素繊維100重量部に対してメラミン樹脂が70〜220重量部になるように含浸して中間基材を得る工程と、メラミン樹脂が含浸された前記中間基材とを加熱してメラミン樹脂を炭素化する工程を含むことを特徴とする。
【0055】
上記の工程におけるメラミン樹脂の含浸量は、炭素繊維100重量部に対して70〜220重量部であるが、好ましくは100〜200重量部、さらに好ましくは130〜180重量部であることが気体透過性と比抵抗のバランス上好ましい。
【0056】
また、残炭率30%以上の樹脂、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチなどがメラミン樹脂に混合されてもよい。ただし、混合樹脂中のメラミン樹脂の比率は60%以上、好ましくは80%以上である。またメラミン混合樹脂の含浸量は上記メラミン単独の場合と同じである。
【0057】
【実施例】
実施例1
東レ株式会社製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ”T300(平均短繊維径:7μm、単繊維数:6000本)を長さ12mmに切断し、よく解繊した後、それが0.04重量%になるように水中に分散させ、金網上に抄造し、さらにそれをポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、引き上げて乾燥し、炭素短繊維100重量部に対してバインダであるポリビニルアルコールが約30重量%付着したシート状中間基材を得た。
【0058】
次に、上記中間基材を、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して同重量部のノボラック型フェノール樹脂を含む混合樹脂の6重量%メタノール溶液に浸漬し、引き上げて炭素短繊維100重量部に対して混合樹脂を約69重量部付着させ、さらに90℃で3分間加熱して乾燥した後、2枚重ねて145℃の温度下に0.69MPaの圧力を15分間加えてレゾール型フェノール樹脂を硬化させた。
【0059】
次に、混合樹脂が固くなった中間基材を、窒素ガス雰囲気中にて2400℃で30分間加熱して混合樹脂を炭素化し、導電性基材を得た。
実施例2,3
混合樹脂濃度を変えて混合樹脂付着量を49,74重量部とした以外は実施例1と同様にして導電性基材を得た。
実施例4
混合樹脂を含浸したシート状中間基材を4枚重ねて加熱加圧により樹脂を硬化させた以外は、実施例3と同様にして導電性基材を得た。
比較例1
混合樹脂濃度を上げて混合樹脂付着量を124重量部とした以外は実施例1と同様にして導電性基材を得た。
比較例2
混合樹脂濃度を上げて混合樹脂付着量を150重量部としたシート状中間基材を4枚重ねて加熱加圧により樹脂を硬化させた以外は実施例1と同様にして導電性基材を得た。
実施例5
混合樹脂のメタノール溶液のかわりにメラミン樹脂の10重量%の水とメタノールの混合溶液を用い、樹脂付着量を180重量部とし、室温24時間で乾燥した以外は実施例1と同様にして導電性基材を得た。
比較例3
メラミン樹脂濃度を上げてメラミン樹脂付着量を240重量部とした以外は実施例5と同様にして導電性基材を得た。
【0060】
以上の基材の物性を表1にまとめる。
★
【0061】
【表1】
★
表1から分かる様に、本発明の多孔質炭素板は比較例の多孔質炭素板に比べて、曲げ強さ、比抵抗を多少低下させるが、大幅な気体透過性の改善を実現した。
【0062】
【発明の効果】
本発明の多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材は、曲げ強さ約14.7MPa以上、厚さ方向の比抵抗が0.01Ωm以下と実用可能なレベルに保ったまま気体透過性を大幅に改善した基材となり、電流密度が高く、多量の反応ガスの給排気の必要な固体高分子型燃料電池の電極として非常に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】厚さ方向の圧縮試験時の変位−荷重曲線
【図2】本発明に係る多孔質炭素板の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】図2における表層被覆率(RSC)を求めるための、被覆されている部分を示す(斜線部分)を示す電子顕微鏡写真である。
Claims (6)
- 実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散せしめられた炭素短繊維を炭素によって互いに結着してなる多孔質炭素板からなる固体高分子型燃料電池の電極基材であって、曲げ強さが14.7MPa以上、厚さ方向の比抵抗が0.01Ωm以下であり、かつ密度が0.25〜0.32g/cm 3 であって、空気による厚さ方向の気体透過性が3000ml・mm/cm2/hr/mmAq以上であることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極基材。
- 炭素短繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の電極基材。
- 厚さが0.21〜0.45mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池の電極基材。
- 下記の式で定義する結着炭素と炭素の結着した炭素繊維による表層被覆率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の電極基材。
ただし、RSC=SSC/STotal
RSC:表層被覆率
SSC:表層を覆っている結着炭素と炭素繊維の結着されている部分の面積
STotal :覆われている部分と覆われていない部分をあわせた全面積 - 実質的に二次元ランダムな方向に分散した炭素短繊維集合体にレゾール型フェノール樹脂Rとノボラック型フェノール樹脂NをR:N=2:1〜1:3の比率で混合した樹脂を炭素繊維100重量部に対してフェノール樹脂が40〜75重量部になるように含浸して中間基材を得る工程と、前記混合樹脂が含浸された前記中間基材を加熱して前記混合樹脂を炭素化する工程とを含むことにより、請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の電極基材を得ることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極基材の製造方法。
- 実質的に二次元ランダムな方向に分散した炭素短繊維集合体に炭素繊維100重量部に対してメラミン樹脂が70〜220重量部になるように含浸して中間基材を得る工程と、メラミン樹脂が含浸された前記中間基材とを加熱してメラミン樹脂を炭素化する工程を含むことにより、請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の電極基材を得ることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極基材の製造方法。
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