JP4051103B2 - 防汚性を有する新規セスキテルペン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中有害付着生物に対して付着防止作用を有する新規化合物、及びそれを利用した防汚剤に関するものである。この物質を利用することにより、船舶の船底、火力発電所等の冷却水取水路、定置用漁網に有害な水中生物が付着し、繁殖することを防止することができる。
【0002】
【従来の技術】
船舶の船底、火力発電所等の冷却水取水路等の海中構造物、定置用漁網等の海水に接している部分には、フジツボ、ムラサキイガイ、カキ、コケムシ類、ヒドラ、ホヤ、アオノリ、アオサ等の有害な水中生物が付着し、繁殖する。このような付着生物は流体抵抗の増加、熱交換、熱伝導性能の低下や漁網の潮通しの悪化等の産業上多大な被害を及ぼす。
従来、このような海水及び淡水に生息する有害付着生物の付着、繁殖を防ぐために種々の防汚剤が使用されてきた。このような防汚剤は、有機スズ化合物、亜酸化銅、窒素硫黄系化合物等の重金属や有害物質を含むものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
重金属や有害物質は、河川等の環境を汚染するだけでなく、魚介類を介して人体に直接害を及ぼすため、これらの物質の使用は近年社会問題化している。防汚剤についても、このような観点から規制の対象となっている物質も少なくない。このため、これら従来の防汚剤に代わる安全で有効な防汚剤の開発が強く望まれている。本発明はかかる要求に応えるべくなされたものであり、その目的とするところは十分な防汚活性を有し、かつ環境を汚染しない新規な防汚剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況に鑑み、本発明者らは、安全性が高く優れた効果を有する化合物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、セスキテルペンの一種である新規化合物が、水中付着生物に対して付着阻害性を有することを見い出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記の式(I)又は(II)
【0005】
【化3】
【0006】
【化4】
で表されるセスキテルペン化合物である。
また、本発明は、上記記載のセスキテルペン化合物を有効成分として含有することを特徴とする防汚剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の新規化合物は、以下の式(I)又は(II)により表される。
【0008】
【化5】
【0009】
【化6】
このような構造の化合物は従来知られておらず、上記の式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」という」)及び上記の式(II)で表される化合物(以下、「化合物(II)」という」)は、いずれも新規な化合物である。
以下、この二つの化合物の理化学的性質を示す。
【0010】
(1) 化合物( I )
1. 物質の色:無色オイル状
2. 分子量:266
3. 分子式:C15H22O4
4. 質量分析:高分解能MAS 266.1526[M]
8. 溶解性: ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに易溶、水に難溶。
【0011】
(2) 化合物(II)
1. 物質の色:無色オイル状
2. 分子量:250
3. 分子式:C15H22O3
4. 質量分析:250[M]
7. 溶解性: ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに易溶、水に難溶。
【0012】
化合物(I)及び化合物(II)は、化学的に合成することも可能であるが、これらの化合物を含む動物、植物、微生物の抽出物から得ることもできる。これらの化合物を含む生物としては、ウミトサカ( Lemnalia africana)を例示することができる。
化合物(I)及び化合物(II)は、いずれも水中付着生物に対する付着阻害性を有するので、塗料、溶液、乳剤等のかたちに調製して防汚剤として使用することができる。これらの調製は通常行われる一般的な処方を採用して問題なく実施できる。
【0013】
例えば塗料として使用する場合は、本発明の化合物を塗料調製剤に配合して防汚塗料を調製し、これを船底、水中構造物、冷却水用水路等に塗布することができる。この際使用される塗膜形成剤としては、たとえば、油ワニス、合成樹脂、人造ゴム等が挙げられる。防汚塗料は所望に応じ更に溶剤、顔料等を加えることができる。この場合、本発明の化合物は、塗料の重量に基づき100 ppm 〜5%、好ましくは 500 ppm〜1%の割合で配合される。
【0014】
溶液として使用する場合は、例えば、本発明の化合物を塗膜形成剤に配合し、溶媒に溶解した溶液とし、これを水中生物の付着繁殖を防止する目的で養殖魚網、定置魚網等に塗布することができる。塗膜形成剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メタノール等が使用される。この溶液には必要に応じて、可塑剤等の添加剤を加えることができる。この場合、本発明の化合物は、溶液の重量に基づき100 ppm 〜5%、好ましくは500 ppm 〜1%の割合で配合される。
【0015】
乳剤として使用する場合は、溶媒中に本発明の化合物を溶解し、更に界面活性剤を添加して常法により乳剤を調製する。界面活性剤としては、普通一般のものを使用できる。この場合、本発明の化合物は、溶液の重量に基づき50ppm 〜1%、好ましくは100 ppm 〜0.1 %の割合で配合される。
また、本発明の化合物は養殖魚網、定置網等水中使用物素材の高分子樹脂に練り込んで使用することもできる。
以下に本発明の実施例を示す。
【0016】
【実施例】
〔実施例1〕
-20℃で保存されていたウミトサカ(Lemnalia africana )4.4 kgを室温で解凍し、細断した後3リットルのアセトンを加えて一昼夜放置した。このウミトサカからの抽出物を含むアセトンをろ過し、アセトンを減圧下で留去して抽出エキスを得た。この一回目の抽出では解凍の際に生じた海水を多く含むアセトンで抽出が行われたことになるので、一回目の抽出を終えたウミトサカに再び3リットルのアセトンを加えて一昼夜放置し、同様の操作を行って二回目の抽出エキスを得た。この操作をもう一度繰り返して三回目の抽出エキスを得、これらを合わせた。こうして得られたアセトン抽出エキスに酢酸エチルを加え、可溶分を充分に抽出した後、酢酸エチルを減圧下で留去して酢酸エチル抽出エキスを得た。さらにこの酢酸エチル抽出エキスにノルマルヘキサンを加え、分液ロ−トで充分に震盪した後、下層のヘキサン難溶分(6.7g)を分取した。このヘキサン難溶分をシリカゲルオープンカラムを用い、クロロホルム−メタノ−ル(5〜50%)で展開し、10のフラクションに分画した。こうした得られた5番目の画分をシリカゲルの分取用薄層クロマトグラフ(PLC、厚さ2mm)に塗布し、ベンゼン−酢酸エチル(20%)混合溶媒で繰り返し10回展開して、UV吸収のある隣接した2つの成分を掻き取った。化合物(I)は少しテーリングし、化合物(II)はかなりテーリングしていた。硫酸セリウム(1%)−硫酸(5%)水溶液では両化合物ともやや発色しにくく、薄い赤橙色に呈色した。両化合物ともシリカゲルPLCによる同様の操作によって精製し、6.5mgの化合物(I)と4mgの化合物(II)を得た。
【0017】
重クロロホルムを溶媒として各種NMR測定( 1H、13C、HSCQ、COSYおよびHMBC、NOESY)、質量分析(EIおよび高分解)さらに必要に応じて赤外吸収スペクトルを測定、解析して構造決定を行った。結果は先に示した通りである。ケミカル・アブストラクト(CAS)等の検索等によってこれらの化合物は新規物質であることが確認された。
観測されたおもな 1H NOESYの結果の内、立体構造を規定するNOE(核オーバーハウザー効果)を破線で示した。
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
〔実施例2〕
ムラサキイガイはフジツボと同様、代表的な海洋付着生物(汚損生物)のひとつである。以下に述べる「足刺激法」(Y.Hayashi, W.Miki, J Mar Biotechnol(1996)4:127-130)でこれらの新規セスキテルペン化合物がムラサキイガイに対して付着忌避活性(防汚性)を有することを見い出した。
【0021】
ムラサキイガイは自身の体長と同程度の長さに伸長することのできる一本の足を有し、この足を縦走する溝で足糸を作る。この足糸の先端は非常に接着性の強い蛋白質からできており、ムラサキイガイは約20から数十本の足糸によって船底などに付着する。この足の先端には付着に好適な基盤を判断、選択するための感覚器官が備わっていると考えられている。ムラサキイガイの足はその先端に硫酸銅等の付着忌避活性を有する物質を接触させると縮み上がるかのように収縮する。足刺激法はこの現象に基づいて様々な物質のムラサキイガイに対して付着忌避活性を評価する方法である。この方法が非常に有効であることは前記文献によって明らかにされている。
【0022】
体長約5cmのムラサキイガイの閉殻筋(貝柱)のみを外科手術用のメスを用いて切断し、2枚の貝殻を完全に開いたまま固定した。この状態ではムラサキイガイの足は弛緩した状態で、自身の体長に近い長さに伸長している。化合物(I)および(II)を100ppm又は10ppm含む人工海水溶液を作製し、マイクロピペットを用いてその5mlを足の先端に極めて穏やかに滴下し、その反応を観察、評価した。各々の試験液に対して10個体のムラサキイガイを用いた。収縮反応を示した個体の割合を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
代表的な防汚物質のひとつである硫酸銅がほぼ100%の反応を引き起こす濃度は1000ppmであり(Y.Hayashi, W.Miki, J Mar Biotechnol(1996)4:127-130)、この結果から、化合物(I)および化合物(II)はムラサキイガイに対して硫酸銅を上回る付着忌避活性を有することが明らかとなった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の化合物は従来公知の防汚性物質よりもその防汚性が高く、また、生物由来の化合物なので自然界での分解性も高いと考えられる。従って、本発明の化合物は、防汚剤の成分として非常に有用である。
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