JP4050895B2 - 加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法及び加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法 - Google Patents

加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法及び加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭や石油コークス等の燃料を燃焼させる加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法及び加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、圧力容器内に設置した加圧流動層ボイラで石炭や石油コークス等を高圧条件で燃焼させ、加圧流動層ボイラ内に配設した熱交換器から発生する蒸気で駆動する蒸気タービン発電と、加圧流動層ボイラの燃焼ガスを利用するガスタービン発電と、を組み合わせることによって、熱効率を向上させた複合発電方式を構成することができる加圧流動層燃焼装置がある。加圧流動層燃焼装置は、流動層内に石灰石(CaCO3)やドロマイト〔CaMg(CO32〕等の脱硫剤を混合させ、流動層内で石灰石−石膏反応によりSO2をCaSO4の形で捕捉する炉内脱硫を行うとともに、850℃程度の比較的低温で燃焼させるため、硫黄酸化物(SOX)や窒素酸化物(NOX)の発生も低く低公害発電が可能となる等の特徴を有している。また、加圧燃焼により燃焼装置が大幅にコンパクト化できるため省スペース性にも優れるとともに複合発電による高い発電効率を得ることができるという特徴を有している。
【0003】
このような加圧流動層燃焼装置の加圧流動層ボイラ内に存在する流動粒子(脱硫剤)は、脱硫剤として働くだけでなく、流動媒体としてボイラ内の円滑な流動を維持するとともに燃料が発生した熱を熱交換器に伝える伝熱媒体として働き、流動化されて磨耗して粒径が減少することが知られていた。また加圧流動層ボイラ内に新たに供給される脱硫剤は、ボイラ内に導入されたときに内部に含む水分が急激に膨張したり熱勾配ができたりして破砕されて微細化されることが知られていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の加圧流動層燃焼装置においては、加圧流動層ボイラ内での流動粒子が磨耗して粒径が変動する挙動や、加圧流動層ボイラ内に供給される脱硫剤が破砕する挙動の検討はなされていなかった。そのため、以下のような課題を有していた。
(1)10気圧以上に加圧した加圧流動層ボイラ内では、炉内に供給された脱硫剤としてのCaCO3はCaCO3或いは脱硫反応後のCaSO4として存在し、熱分解生成物であるCaOの存在量は極めて少ないことが「Ljungstorm, E., Lindqvist, O., Proc. 7th Int. Conf. On Fluidized Bed Combustion(Philadelphia, U.S.A), P.465, 1982」に記載されている。また、加圧焼成条件下でのCaCO3の脱硫反応は、未反応核モデルで進行し、生成物(CaSO4)と未反応核(CaCO3)の界面の反応速度と、生成物層内SO2拡散の両方が反応速度に影響を与えることが、「K. Qui, O. Lindqvist, Chem. Eng. Sci., 55, 3091-3100, 2000」に記載されており、石灰石の外部表面、特に生成物層の厚みの薄い清浄な表面がボイラ内の脱硫性能に大きな影響を与えると推察される。
清浄な表面を有するボイラ内に存在する脱硫剤としては、ボイラの外部から新たに供給された生成物(CaSO4)層の薄い清浄な脱硫剤と、この脱硫剤が破砕して新たな表面が形成された脱硫剤と、ボイラ内に存在する流動粒子(脱硫剤)の表面に形成された生成物(CaSO4)層が磨耗して未反応面が露出した脱硫剤と、が考えられる。脱硫剤の破砕や磨耗によって、脱硫剤の外部表面積が変動すれば、脱硫剤の外部表面の影響を受ける脱硫性能も変動すると推察される。
しかし、脱硫剤の外部表面の磨耗や破砕の挙動の予測がなされていなかったために、加圧流動層燃焼装置における脱硫率の予測が非常に困難であるという課題を有していた。
(2)また、流動粒子の粒度分布等に影響を受ける加圧流動層ボイラ内に配設された熱交換器への伝熱係数の推定も困難であったため、プラント出力制御の予測が困難であるという課題を有していた。
(3)加圧流動層ボイラ内で磨耗や破砕によって粒径が減少する脱硫剤の粒径分布が予測できないため、脱硫反応に大きな影響を与える流動層内の脱硫剤の表面積を把握できず、高い脱硫率を得ようとするあまり必要以上の量の脱硫剤を過剰に供給してしまうことが多く、生産性に劣るという課題を有していた。
(4)また、磨耗や破砕によって脱硫剤の粒径が減少し飛び出し粒径(終末速度が流動層の空塔速度と同じである粒子の粒径)よりも小さくなると、加圧流動層ボイラ内の流動層からフリーボードへ飛び出して脱塵装置で捕集される。捕集されたフライアッシュのうち、系外へ排出される排出灰の最大粒径である最大排出灰粒径以下の粒径を有するフライアッシュは加圧流動層燃焼装置の系外に排出されるため、流動層内に存在する脱硫剤の量が減少する。そのため、流動層の高さが変化して熱交換器を浸している割合が変化し、加圧流動層燃焼装置の出力が変化してしまうことが予測できず、プラント出力の制御性に劣るという課題を有していた。
(5)また、磨耗や破砕によって減少する脱硫剤の粒径が予測できないため、加圧流動層ボイラ内に供給する脱硫剤の適切な粒度が推定できないので、供給する脱硫剤の粉砕及び分級等に過度の作業工数を割くことがあり、作業性に劣るという課題を有していた。
(6)加圧流動層ボイラ内の脱硫剤を流動化に最適な粒径に予測して調整することができないので、脱硫剤が微細化する傾向が強まり、炉底部から吹き込まれた流動用流体が上昇するに従って凝集し、流動層界面において急激に膨張するスラッギングが発生し易い状態になり、流動粒子が間欠的な流れ(脈動流)となり制御性が悪化するという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、磨耗による流動粒子の粒径変化を把握するための加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、脱硫性能(脱硫率)の予測や加圧流動層ボイラ内に配設された熱交換器への伝熱係数の推定も可能にするとともに、供給する脱硫剤の粉砕及び分級等に過度の作業工数を割くのを防止でき作業性に優れ、流動層の安定性と制御性の向上に優れる加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法及び加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法は、以下の構成を有している。
【0007】
本発明の請求項1に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法は、加圧流動層燃焼装置において、脱塵装置で捕集され前記加圧流動層燃焼装置の系外に排出される単位時間あたりの排出灰中のカルシウム量と、前記加圧流動層ボイラ内に単位時間あたりに供給する脱硫剤の内前記排出灰の最大粒径である最大排出灰粒径以下の粒径を有する前記脱硫剤中のカルシウム量と、前記加圧流動層ボイラ内に単位時間あたりに供給する燃料から生成される燃焼灰中のカルシウム量と、によって、前記加圧流動層ボイラ内の流動粒子が磨耗して単位時間に生成される磨耗流動粒子中のカルシウム量を(数6)の演算式を用いて求める工程と、前記磨耗流動粒子中のカルシウム量を前記脱硫剤のカルシウム密度で除して前記磨耗流動粒子の磨耗体積速度(a)を求める工程と、前記加圧流動層ボイラ内に存在する前記流動粒子の粒度分布を測定し、(数7)の演算式を用いて前記流動粒子の外部表面積(b)を求める工程と、前記磨耗体積速度(a)を前記外部表面積(b)で除して前記流動粒子の磨耗線速度を求める工程と、を備えた構成を有している。
【数6】
Figure 0004050895
【数7】
Figure 0004050895
この構成によって、以下のような作用が得られる。
(1)これまで定量的に示されていなかった流動粒子(脱硫剤)の磨耗速度を定量的に示すことができるので、磨耗による流動粒子の粒径変化を把握することができ、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径等を予測することができ作業性や流動層の安定性に優れる。
(2)測定可能な石炭供給量、脱硫剤供給量と粒度分布、フライアッシュ中のカルシウム量等を用いて、脱硫剤の単位体積当りのカルシウム密度を基に求めるので、脱硫剤のカルシウム純度等に影響されずに一般化して流動粒子(脱硫剤)の磨耗速度を求めることができ、また流動層燃焼装置に適用することができ汎用性に優れる。
【0008】
ここで、流動粒子(脱硫剤)の磨耗速度としては、流動粒子の半径の減少速度である磨耗線速度が用いられる。流動粒子は、加圧流動層ボイラ内で流動化している脱硫剤であり、脱硫剤としては、CaCO3(又は石灰石),MgCO3(又はドロマイト)の他、CaO,Ca(OH)2,K2CO3,貝殻等のカルシウムを含む水産廃棄物,セメントスラッジ,加圧・常圧流動層ボイラの炉底部から取り出された流動粒子等が用いられる。これらの脱硫剤は、燃料や脱塩剤等と水と混合され燃料スラリーに調整されて加圧流動層ボイラの流動層内へ供給される。また、スラリーに調整せずにロックホッパ等によってドライフィードすることもできる。
【0009】
燃料としては、石炭,亜炭,褐炭,瀝青炭,コークス,石油コークス,オイルコークス,オイルサンド,重質油,石炭液化残渣,ゴム,古タイヤ,廃油,一般ゴミ,一般廃棄物,木質物,炭化物,RDFやその他の炭化物,木屑,産業廃棄物,食品工場や農業等で排出される有機残渣物,下水汚泥,し尿処理汚泥,工業廃水処理汚泥等や、これらの混合物が用いられる。
【0010】
排出灰としては、加圧流動層ボイラ内で燃料が燃焼して生じた燃焼灰及び流動層からフリーボードへ飛び出した脱硫剤からなるフライアッシュの内、脱塵装置で捕集され加圧流動層燃焼装置の系外へ排出されるフライアッシュが用いられる。加圧流動層燃焼装置は、脱塵装置で捕集したフライアッシュの全部を系外に排出するもの、脱塵装置で捕集したフライアッシュの一部を系外に排出し残部を加圧流動層ボイラに戻して再循環するもの等を選択して用いることができる。
脱塵装置としては、サイクロン,重力沈降装置,ラビリンス等の粗脱塵装置、セラミックチューブフィルタ等の精密脱塵装置、これらを複数段組み合わせたもの等が用いられる。
【0011】
最大排出灰粒径は、脱塵装置で捕集されるフライアッシュのうち系外へ排出される排出灰の最大粒径である。脱塵装置で捕集したフライアッシュの全部を系外に排出する加圧流動層燃焼装置の場合は、フリーボードへ飛び出した脱硫剤等が全て脱塵装置で捕集されるため、最大排出灰粒径は、飛び出し粒径(終末速度が流動層の空塔速度と同じである粒子の粒径)が用いられる。また、サイクロン等の粗脱塵装置で捕集したフライアッシュの一部を加圧流動層ボイラに戻して再循環する加圧流動層燃焼装置の場合は、最大排出灰粒径は、粗脱塵装置で捕集されるフライアッシュの最小粒径(又は、粗脱塵装置を通過して精密脱塵装置で捕集されるフライアッシュの最大粒径)が用いられる。
【0012】
排出灰には、脱硫剤に由来するものと石炭等の燃料の燃焼灰に由来するものとが含まれている。脱硫剤に由来するものとしては、供給される最大排出灰粒径以下の脱硫剤と、加圧流動層ボイラ内での磨耗による微粉化で生成する脱硫剤とがある。これらのうち、燃料供給量、脱硫剤供給量等は設定可能であり、脱硫剤の粒度分布等は粒度分布測定器等によって測定可能であり、排出灰量等は質量計等によって測定可能であり、排出灰のカルシウム濃度、燃料から生成される燃焼灰のカルシウム濃度等は蛍光X線分析等や燃料の試験成績証明書等で検知可能である。従って、脱硫剤の磨耗による磨耗流動粒子の生成量は、排出灰の量から、最大排出灰粒径以下の粒径を有する脱硫剤の量及び燃焼灰の量を減じることにより求めることができる。
【0013】
流動粒子(脱硫剤)の粒度分布の測定方法としては、篩い分け法や粉体の沈降速度を利用して測定する水ひ等の重量沈降法,遠心力沈降法等や、粉体の慣性力を利用して測定するカスケードインパクタ法,サイクロン分級法,画像解析法,光透過法,X線透過法,レーザー回折・散乱法,電気的検知等が用いられる。
なお、粒度分布を測定するための流動粒子は、加圧流動層ボイラの炉底部から抜き出すことができる。以下、炉底部から抜き出す流動粒子を抜出粒子という。加圧流動層ボイラ内が完全混合していると仮定するので、流動粒子の粒度分布と抜出粒子の粒度分布とは同じであるとみなすことができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法であって、前記排出灰が、前記加圧流動層ボイラで発生するフライアッシュの一部であり、前記フライアッシュの残部が前記加圧流動層ボイラに再循環される構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)フライアッシュの残部を加圧流動層ボイラに再循環する加圧流動層燃焼装置においては、フライアッシュが循環されることで流動層内の密度が低下し流動層が活発化する。このような活発化した流動層を形成する流動層ボイラにおける流動粒子の磨耗速度を推定することができるので、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径等を予測することができ作業性や流動層の安定性に優れるとともに汎用性に優れる。
【0015】
ここで、フライアッシュとしては、加圧流動層ボイラ内で燃料が燃焼して生じた燃焼灰、及び流動層からフリーボードへ飛び出した脱硫剤が用いられる。フライアッシュの一部(粗脱塵装置の捕集不可能な細粒)は、サイクロン等の粗脱塵装置を通過して下流側に配設されたセラミックチューブフィルタ等の精密脱塵装置で捕集されて系外に排出され、残部(粗脱塵装置で捕集可能な粗粒)は粗脱塵装置で捕集されて加圧流動層ボイラに戻して再循環される。
【0016】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法であって、前記排出灰が、前記加圧流動層ボイラで発生するフライアッシュの全部である構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)フライアッシュの全部を系外に排出する加圧流動層燃焼装置においては、流動層内の密度の低下が起こらず流動層は不活発である。このような流動層ボイラにおける流動粒子の磨耗速度を推定することができるので、流動粒子の磨耗速度を推定することができ流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径等を予測することができ作業性や流動層の安定性に優れるとともに汎用性に優れる。
【0017】
ここで、フライアッシュとしては、加圧流動層ボイラ内で燃料が燃焼して生じた燃焼灰、及び流動層からフリーボードへ飛び出した脱硫剤が用いられる。フライアッシュの全部は、サイクロン等の粗脱塵装置やセラミックチューブフィルタ等の精密脱塵装置等で捕集されて系外に排出される。
【0018】
本発明の請求項4に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法は、加圧流動層燃焼装置において、加圧流動層ボイラ内に供給する脱硫剤の粒度分布を測定し、前記脱硫剤の内の粒径Dp,j-1の重量分率fj-1を求める工程と、前記重量分率fj-1と、前記加圧流動層ボイラ内に供給する前記脱硫剤の供給質量速度Fと、前記加圧流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒子重量Wと、前記脱硫剤の供給量が前記流動粒子が前記加圧流動層ボイラ内で磨耗によって減少する量よりも多い場合に前記加圧流動層ボイラの炉底部から抜き出す抜出粒子の抜出重量Bと、によって、時刻tから時間Δtが経過した後に前記流動層ボイラ内に存在する前記粒径Dp,j-1を有する前記流動粒子の重量W・wj-1(t+Δt)を(数8)によって求める工程と、(数8)の演算を各々の粒径毎及び時間毎に定常状態になるまで繰り返し行い各絶対量を求め、前記各絶対量の合計から各々の粒径毎の重量分率を演算して粒度分布を求める工程と、を備えた構成を有している。
【数8】
Figure 0004050895
この構成によって、以下のような作用が得られる。
(1)これまで予測をすることが困難であった磨耗による流動粒子(脱硫剤)の粒度分布の変化が、定量化が可能な因子を用いた演算によって予測できるので、流動粒子の粒度分布や外部表面積に起因している脱硫率の予測や伝熱係数の推定等が可能となり、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径や最適供給量を予測することができ作業性及び流動層の安定性に優れ、またプラント出力等を予測することができ生産性に優れる。
【0019】
ここで、演算式(数8)は以下のようにして導かれる。
加圧流動層ボイラ内には流動粒子として、石灰石等の脱硫剤の他に燃料の燃焼灰が存在していることが考えられるが、脱硫剤のみが存在していると仮定する。燃焼灰はすぐに粉化して流動層から飛び出し、また、仮にいくらかが粉化しなかったとしても、加圧流動層ボイラ内への燃焼灰に由来するカルシウムの供給量が脱硫剤に由来するカルシウムの供給量に比べて非常に少ないので影響を与えないからである。
脱硫剤磨耗線速度(脱硫剤の半径の減少速度)をa〔μm/hr〕とし、粒径には依存せず一定であると仮定する。加圧流動層ボイラ内には粒子重量W〔t〕の流動粒子が存在しており、ある時刻tにおける粒径Dp,jの流動粒子の重量分率がwj(t)であるとする。
粒径Dp,jの流動粒子が、時間Δtの間に2a・Δtだけ磨耗して粒径Dp,j-1の流動粒子になったとすると、粒径Dp,jの流動粒子の1個あたりの重量πρDp,j 3/6は、Δt後にπρDp,j-1 3/6に減少すると表すことができる。また、脱硫剤磨耗線速度aは粒径には依存せず一定であると仮定したので、粒径Dp,j-1の流動粒子は時間Δtの間に全部が2a・Δtだけ磨耗して粒径Dp,j-2となると表すことができる。ここで、ρは流動粒子の粒子密度〔kg/m3〕である。
【0020】
この時間Δtの間に加圧流動層ボイラ内に脱硫剤がFΔt〔t〕供給されるとする。ここで、Fは脱硫剤の加圧流動層ボイラ内への供給質量速度(単位時間あたりに加圧流動層ボイラへ供給される脱硫剤の供給量)〔t/hr〕である。加圧流動層ボイラ内に供給される粒径Dp,j-1の脱硫剤の重量分率をfj-1とすると、粒径Dp,j-1の脱硫剤が時間Δtの間に加圧流動層ボイラに供給される重量は、Ffj-1Δt〔t〕である。従って、加圧流動層ボイラの炉底部からの流動粒子の抜き出しがない場合には、時間Δt後にボイラ内に存在する粒径Dp,j-1の流動粒子の重量xj-1(t+Δt)は、磨耗と供給のバランスから(数9)で表すことができる。
【数9】
Figure 0004050895
【0021】
ボイラ内への脱硫剤の供給量が磨耗によって失われた量より多い場合には、加圧流動層燃焼装置の出力を一定にするために、炉底部から抜出粒子を抜き出してボイラ内の流動粒子の量を一定にする。炉底部から抜き出す抜出粒子の抜出重量をBとすると、Bは時間Δt後に流動層ボイラ内に存在する粒径Dp,j-1の流動粒子の重量の総和から流動層ボイラ内に存在する流動粒子の重量を減じて(数10)で表すことができる。
【数10】
Figure 0004050895
ここで、和をとる流動粒子の粒径範囲の下限は、飛び出し粒径(終末速度が流動層の空塔速度と同じである粒子の粒径)とする。飛び出し粒径より小さな粒径を有する流動粒子は、流動層からフリーボードへ飛び出して流動層内での存在確率が低いからである。なお、空塔速度としては、粒子が底部に充填された加圧流動層ボイラの底部から流される気体の流量を粒子を取り除いた空塔容器の断面積で除したものが用いられ、流動層に流れる見掛けの燃焼ガスの流速が用いられる。
流動粒子が完全に混合していると仮定すると、ボイラ内に残る流動粒子の割合はW/(W+B)で表される。従って、時間Δtが経過した後にボイラ内に残存する粒径Dp,j-1の流動粒子の重量W・wj-1(t+Δt)は、(数8)で表すことができる。
(数8)により、各粒径範囲毎に磨耗と供給及びボイラ内の残存率を考慮して、各粒径範囲の質量を各時間毎に計算し、定常になるまで演算を進め、その絶対量の和を取ることによって各粒径範囲毎の重量分布が演算されるので、流動層内の流動粒子の粒度分布を予測することができる。
【0022】
本発明の請求項5に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法は、請求項4に記載の流動粒子の粒度分布の予測方法によって磨耗によって粒度が変化した流動粒子の粒度分布を予測する磨耗粒度分布測定工程と、前記加圧流動層ボイラから抜き出した前記抜出粒子の粒度分布を測定する抜出粒度分布測定工程と、前記磨耗粒度分布測定工程で予測された磨耗粒度分布と、前記抜出粒度分布測定工程で測定された抜出粒度分布と、を用いて、前記加圧流動層ボイラ内に供給され破砕によって粒度が変化した流動粒子の粒度分布を予測する破砕粒度分布予測工程と、前記加圧流動層ボイラ内に供給する以前の脱硫剤の粒度分布を測定する脱硫剤粒度分布測定工程と、前記破砕粒度分布予測工程で予測された破砕粒度分布から粒径範囲x〜yの粒径を有する流動粒子の重量分率e(x−y)を求める工程と、前記脱硫剤粒度分布測定工程で測定された脱硫剤粒度分布から粒径範囲x〜yの粒径を有する脱硫剤の重量分率f(x−y)を求める工程と、前記e(x−y)及び前記f(x−y)を用いて、粒径範囲x〜yの粒径を有する前記脱硫剤の残存率R(x−y)を(数11)の演算式で演算する工程と、を備えた構成を有している。
【数11】
Figure 0004050895
この構成によって、以下のような作用が得られる。
(1)粒径範囲x〜yの脱硫剤の残存率R(x−y)>1のときは供給された脱硫剤のうち、yよりも粒径の大きな脱硫剤が破砕されて微細化され、それによって粒径範囲x〜yの脱硫剤の重量分率が増加していることを示している。
(2)また、R(x−y)<1のときは供給された粒径範囲x〜yの脱硫剤が破砕されて、その範囲の脱硫剤の重量分率が減少していることを示している。
(3)また、R(x−y)=1のときは粒径範囲x〜yの脱硫剤の重量分率が変化していないことを示している。
(4)以上のように残存率を求めることによって、重量分率が減少・増加している脱硫剤の粒径範囲、その減少率及び増加率が明確になる。そのため、加圧流動層ボイラ内に供給される脱硫剤の内、破砕されて減少する粒径範囲及びその減少率、破砕されて生成される粒径範囲及びその増加率の予測が可能になり、破砕によって粒径が著しく変化する場合でも、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径や最適供給量を予測することができ作業性及び流動層の安定性に優れ、またプラント出力等を予測することができ生産性に優れる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法であって、前記残存率R(x−y)=1となる前記脱硫剤の粒径DRを求める工程と、前記抜出粒度分布から、前記加圧流動層ボイラ内に存在する前記流動粒子の最大粒径DMAXを求める工程と、前記加圧流動層ボイラ内で破砕によって粒径が変動した粒径範囲x〜yの粒径を有する前記脱硫剤の増加率F(x−y)を(数12)の演算式で演算する工程と、前記増加率F(x−y)に応じて、請求項4に記載の予測方法で予測された前記粒度分布を補正する工程と、を備えた構成を有している。
【数12】
Figure 0004050895
この構成によって、請求項5に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)破砕されて生成し増加した微細な流動粒子の重量分率が明確になり、増加する流動粒子の粒径範囲の予測が可能になる。
(2)磨耗によって変動する粒度分布だけでなく、脱硫剤の破砕によって変動する流動粒子の粒度分布の予測も可能になるため、流動粒子の外部表面の影響を受ける脱硫性能(脱硫率)の予測が可能になる。
(3)脱硫率の予測が可能になるので、高い脱硫率を得ようとするあまり必要以上の量の脱硫剤を過剰に供給するのを防止することができ、生産性に優れる。
(4)また、流動粒子の粒度分布等に影響を受ける加圧流動層ボイラ内に配設された熱交換器への伝熱係数の推定も可能となり、プラント出力制御の予測も可能になる。
(5)破砕によって微細化する脱硫剤の粒径を予測することにより、加圧流動層ボイラ内に供給する脱硫剤の適切な粒度の推定ができるので、供給する脱硫剤の粉砕及び分級等に過度の作業工数を割くのを防止でき、作業性に優れる。
(6)加圧流動層ボイラ内の脱硫剤を流動化に最適な粒径に予測して調整することができるので、流動粒子が微細化すると発生し易いスラッギングの未然防止が可能となり加圧流動層ボイラの流動層の安定性と制御性に優れる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における加圧流動層燃焼装置のシステム構成図である。
図1において、1は本実施の形態1における加圧流動層燃焼装置、2はコンプレッサ16(後述する)からの空気で加圧することにより酸素分圧を高めた状態のもとで燃料を流動化させて燃焼させる加圧流動層ボイラ、2aは加圧流動層ボイラ2の下部から注入された気体によって燃料と脱硫剤とを有する流動粒子が流動化されている流動層、2bは加圧流動層ボイラ2内の流動層2aの上部の空間であるフリーボード、2cは加圧流動層ボイラ2に一端部が連通し加圧流動層ボイラ2内で流動化された燃料が燃焼して発生した含塵排ガスをサイクロン3内に導く排ガス導入管、3は排ガス導入管2cの他端部が連通し排ガス導入管2cによって導かれた含塵排ガスから粗粒灰を分離する粗脱塵装置としてのサイクロン、4は加圧流動層ボイラ2及びサイクロン3を内設しコンプレッサ16からの空気により内部を高圧状態に保つ圧力容器、5はサイクロン3で分離された粗粒灰を加圧流動層ボイラ2へ戻すための返流管、5aはサイクロン3で粗粒灰が分離された排ガス及び微粒灰を圧力容器4の外部へ排出してセラミックチューブフィルタ8へ導く排ガス排出管、5bは加圧流動層ボイラ2の炉底部に配設され流動層2aの高さを調節するために流動層2aを構成する流動粒子や灰を抜き出す炉底抜出口である。6は粒径6mm程度以下に調整された石油コークスや石炭等の燃料と、粒径10mm程度以下に調整された石灰石やドロマイト、炭酸カリウムや水酸化カリウム等の脱硫剤又は脱塩剤と、水と、を混合しスラリー状に調整し燃料スラリーを作成するスラリータンク、7はスラリータンク6で作成された燃料スラリーを加圧流動層ボイラ2内に供給するスラリーポンプ、8はサイクロン3から排出され排ガス排出管5aを通過した高温の排ガスが流入され排ガス中の微粒灰の脱塵を行う精密脱塵装置としてのセラミックチューブフィルタ、9はセラミックチューブフィルタ8で捕集された微粒灰を受け入れる微粒灰タンク、10はセラミックチューブフィルタ8の排ガス流路、11は排ガス流路10の下流側に連通して配設され排ガス流路10からの排ガスにより回転するガスタービン、11aはガスタービン11により回転駆動される発電機、12はガスタービン11の下流側に連通して配設され選択的触媒還元法(SCR)により排ガス中のNOxを触媒により接触還元する脱硝反応塔、12aはガスタービン11と脱硝反応塔12とを連通する排ガス管、12bは排ガス管12aを流れる排ガス中のSOx濃度を測定する非分散型赤外法等によるSOx検出器、13は脱硝反応塔12の下流側に連通して配設され排ガスの有する熱により給水を予熱するエコノマイザ、14はエコノマイザ13の下流側に連通して配設され排ガスに残留する灰塵を除塵するバグフィルタ、15はバグフィルタ14の下流側に連通して配設され排ガスを大気に放出する煙突、16はガスタービン11により回転駆動され圧力容器4内の気圧を昇圧するための空気を圧縮するコンプレッサである。
17は加圧流動層ボイラ2内に配設された熱交換器、17aは熱交換器17により発生する蒸気が通気する蒸気管、18は蒸気管17aから送気される蒸気により回転駆動される蒸気タービン、18aは蒸気タービン18により回転駆動される発電機、19は蒸気タービン18から排出される蒸気を冷却し復水する復水器、20は復水器19で復水された水を循環させる復水ポンプ、21は復水ポンプ20からエコノマイザ13へ送水する送水管、22はエコノマイザ13で加熱された水を熱交換器17へ給水する給水管である。
【0025】
以上のように構成された本実施の形態1の加圧流動層燃焼装置1について、流動粒子の粒度分布の予測方法を、以下説明する。
脱硫剤を所望の粒度に粉砕した後に、重量沈降法,遠心力沈降法,篩い分け法,画像解析法,光透過法,X線透過法,レーザー回折・散乱法,電気的検知等の粒度分布測定方法にて、スラリータンク6へ投入する前の脱硫剤の粒度分布を予め測定しておく。これによって、加圧流動層ボイラ2の流動層2a内に供給する粒径Dp,j-1の脱硫剤の重量分率fj-1を求めることができる。重量分率fj-1、スラリータンク6から加圧流動層ボイラ2内に供給される脱硫剤の供給質量速度F、流動層2aに存在する流動粒子の粒子重量W、及び流動層2aから炉底抜出口5bを介して抜き出す抜出粒子の抜出重量Bを用いて、演算式(数8)で演算を行って、時刻tから時間Δtが経過した後に流動層ボイラ内に存在する粒径Dp,j-1を有する流動粒子の重量W・wj-1(t+Δt)について、各々の粒径毎及び時間毎に定常状態になるまで繰り返し行い各絶対量を求め、各絶対量の合計から各々の粒径毎の重量分率を演算することにより、加圧流動層ボイラ内の流動粒子の粒度分布を予測することができる。
なお、本実施の形態においては、脱硫剤は、石油コークスや石炭等の燃料等と水とを混合しスラリータンク6でスラリー状に調整した燃料スラリーに混合して加圧流動層ボイラ2内に供給したが、燃料スラリーを供給する配管とは別の配管を加圧流動層ボイラ2の底部に連通して、燃料スラリーとは別の配管から加圧流動層ボイラ2へ供給する場合もある。また、スラリーに調整せずにロックホッパ等によってドライフィードすることもできる。
【0026】
以上のように構成された実施の形態1の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)これまで予測をすることが困難であった磨耗による流動粒子(脱硫剤)の粒度分布の変化が、定量化が可能な因子を用いた演算によって予測できるので、流動粒子の粒度分布や脱硫剤の外部表面積に起因している脱硫率の予測や伝熱係数の推定等が可能となる。
【0027】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における加圧流動層燃焼装置のシステム構成図である。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同一の符号を付して説明を省略する。
図中、30は本実施の形態2における加圧流動層燃焼装置、31は排ガス導入管2cの他端部が連通し排ガス導入管2cによって導かれた含塵排ガスから粗粒灰を分離する粗脱塵装置としてのサイクロン、32はサイクロン31で分離された粗粒灰が輸送される粗粒灰流路、33は粗粒灰流路32に接続され粗粒灰流路32で輸送される粗粒灰と熱交換を行い冷却する粗粒灰用熱交換器である。
実施の形態2の加圧流動層燃焼装置が実施の形態1と異なる点は、含塵排ガスからサイクロン31で分離された粗粒灰が加圧流動層ボイラ2に返流されずに、セラミックチューブフィルタ8で捕集された微粒灰とともに系外へ排出される点である。
【0028】
以上のように構成された実施の形態2の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法は、実施の形態1で説明したものと同様なので、説明を省略する。
また、以上のように構成された実施の形態2の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法によれば、実施の形態1に記載の作用と同様の作用が得られる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
加圧流動層燃焼装置としては、実施の形態1に示す71MW加圧流動層燃焼装置(脱塵装置で捕集されたフライアッシュの一部を加圧流動層ボイラに循環するもの)を用いた。燃料としては(表1)に示す5種の石炭及び1種の石油コークス(PC)を単独、若しくは混合して用いた。脱硫剤としては(表2)に示す組成を有する津久見産石灰石及び船尾産石灰石を単独、若しくは混合して粉砕し種々の粒度分布にしたものを用いた。(表3)に混合粉砕した脱硫剤の粒径と混合比を示した。
【表1】
Figure 0004050895
(表1)に示すBA,WB,NT,AD,DRは炭種を示し、例えばBAはブレアゾール炭を示している。
【表2】
Figure 0004050895
【表3】
Figure 0004050895
なお、(表3)において、例えば、試料名の欄に記載された「F1(5)+T1.5(5)」は、粒子径1mm未満に粉砕された船尾産(F)の石灰石50wt%と粒子径1.5mm未満に粉砕された津久見産(T)の石灰石50wt%とを混合したものであることを示しており、「F1(8)+T1.5(2)」は、粒子径1mm未満に粉砕された船尾産(F)の石灰石80wt%と粒子径1.5mm未満に粉砕された津久見産(T)の石灰石20wt%とを混合したものであることを示している。また、「1.5(T3+F1)」は、粒子径3mm未満に粉砕された津久見産(T)の石灰石50wt%と粒子径1mm未満に粉砕された船尾産(F)の石灰石50wt%とを混合した後さらに粒子径1.5mm未満に粉砕したものであることを示している。
燃料にBA石炭と石油コークスとの混合物を用いた場合には、脱硫剤は(表3)に示す津久見産石灰石と船尾産石灰石とを種々の割合で混合し粉砕したものを用いた。その場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を(図3)に示した。図3は、燃料にBA石炭と石油コークスとを用いた場合の、脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図である。
また、燃料に種々の石炭を混合又は単独で用いた場合には、脱硫剤は(表2)に示す津久見産石灰石を単独で用いた。この場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)と石炭種との関係を(図4)に示した。図4(a)は燃料にBA炭,WB炭を用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図であり、図4(b)は燃料にNT炭,BA炭とAD炭の混炭を用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図であり、図4(c)は燃料にDA炭,BA炭,BA炭とDR炭の混炭を用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図である。(図4)において、例えば「BA」は、BA石炭を単独で用いたものであることを示しており、「BA(7)+AD(3)」は、BA石炭70wt%とAD石炭30wt%とを混合したものであることを示している。
図3及び図4から、燃料に石炭同士を混合又は単独で用いた場合の図4に示す脱硫剤は、粒径が1mm以上のものを多く含み、燃料にBA石炭と石油コークスを混合して用いた場合の図3に示す脱硫剤は、粒径が1mm以上のものをほとんど含んでいないことが明らかである。
【0030】
(図3)及び(図4)に示す脱硫剤と燃料とを水と混合してペースト状にして加圧流動層ボイラ内に供給した。流動層に供給する脱硫剤の量と炉底抜出口から抜き出す抜出粒子の量を調整して流動層の高さを調節することで、熱交換器が流動層に浸されている割合を制御して出力を制御するとともに、流動層温度を825〜865℃の間に制御した。また、圧力は空塔速度(流動層内に流れる見掛けの燃焼ガスの流速)が0.8±0.4m/sになるように一定に保った。
【0031】
流動層内が完全混合していると仮定すると、炉底部から抜き出した抜出粒子の粒度分布はボイラ内の流動粒子(脱硫剤)の粒度分布と同じであるとみなすことができる。その仮定に基づき、流動層ボイラ内に存在する流動粒子(脱硫剤)の外部表面積を(数7)の演算式に基づいて演算した。
一方、脱硫剤の磨耗による磨耗流動粒子中のカルシウム量を、燃料供給量、脱硫剤供給量、脱硫剤の粒度分布、排出灰量、排出灰のカルシウム濃度、燃料から生成される燃焼灰のカルシウム濃度等を用いて、(数6)の演算式に基づき、排出灰中のカルシウム量から最大排出灰粒径以下の粒径を有する脱硫剤中のカルシウム量及び燃焼灰中のカルシウム量を減じることにより求めた。
(数6)で得られた磨耗流動粒子中のカルシウム量を脱硫剤のカルシウム密度で除して得られた流動粒子の磨耗による磨耗体積速度を、(数7)によって得られた流動粒子の外部表面積で除して流動粒子の平均磨耗線速度を求めた。図5は流動粒子の平均磨耗線速度とプラント出力との関係を示す図である。
図5から、流動粒子の平均磨耗線速度は、燃料種類やプラント出力にかかわらず約1±0.5μm/hrとほぼ一定であることがわかった。
【0032】
次に、加圧流動層ボイラの炉底部から抜き出した抜出粒子(流動粒子)の粒度分布を測定した。図6は燃料にBA石炭と石油コークスとを用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)であり、図7(a)は燃料にBA石炭,WB石炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図であり、図7(b)は燃料にNT石炭,BA石炭とAD石炭との混炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図であり、図7(c)は燃料にDR石炭,BA石炭,BA石炭とDR石炭との混炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図である。
次いで、流動層ボイラに供給する前の脱硫剤の実測の粒度分布を基にして(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布と、抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布との関係を調べた。図8は燃料にBA石炭と石油コークスとを用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布と(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子との粒度分布の関係を示す図であり、図9は燃料にBA石炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布と(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布との関係を示す図である。
図8において、破線で示したものは、図6(b)のBA石炭50wt%と石油コークス(PC)50wt%とを混合した燃料「BA(5)+PC(5)」と、1mm未満に粉砕された船尾産石灰石80wt%と1.5mm未満に粉砕された津久見産石灰石20wt%とを混合した脱硫剤「F1(8)+T1.5(2)」と、を用いた場合の炉底部から抜き出した抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)であり、実線で示したものは、(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布(累積重量曲線)である。
図9において、破線で示したものは、図7(a)のBA石炭単独の燃料「BA」と、5mm未満に粉砕された津久見産石灰石単独の脱硫剤「T5」と、を用いた場合の炉底部から抜き出した抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)であり、実線で示したものは、(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布(累積重量曲線)である。
図8に示すように、燃料にBA石炭と石油コークス(PC)とを用いた場合、抜出粒子の実測の粒度分布と(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布とがほぼ一致することがわかった。これにより、(数8)の演算式は、磨耗によって粒径が減少する脱硫剤の粒度分布を予測する演算式として適していることが明らかになった。
一方、(図9)に示すように、燃料にBA石炭を用い石灰石T5(粒径5mm未満の津久見産の石灰石)を脱硫剤として用いた場合、抜出粒子の実測の粒度分布と(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布とが一致せず、実測の粒度分布の方が、予測された粒径分布より小さい粒径を有する流動粒子の重量比率が高くなる傾向がみられた。
以上のことから、粒径の大きな脱硫剤が加圧流動層ボイラ内に供給された場合、磨耗による細粒化だけでなく、破砕による細粒化が起こっていると推察された。また、この場合には、(数8)の演算式だけでは流動粒子の粒度分布を予測できないことが明らかになった。
【0033】
次に、燃料に種々の石炭を用いた場合の粒径範囲x〜yの脱硫剤のうち、破砕して細粒化した脱硫剤の粒径範囲と破砕せずに残存している脱硫剤の粒径範囲とを調べるために、(数11)を用いて脱硫剤の粒径範囲(x−y)毎の残存率R(x−y)を計算した。図10は燃料に石炭を用いた場合の粒径範囲x〜yの脱硫剤の残存率R(x−y)を示す図である。
図10において、横軸には脱硫剤の粒径(d)を示し、縦軸には残存率(R)を示した。
図10から、残存率R(−)と粒径d(μm)との関係はR=2×106・d-2.046で示され、残存率R(x−y)=1となる粒径は、1.2mm(DR=1.2mm)であり、粒径範囲が1.2〜2mmの脱硫剤の残存率は、石炭種によって異なるが0.29〜0.94(平均0.61)であり、粒径範囲が2〜5.7mm(DMAX=5.7mm)の脱硫剤の残存率は石炭種によって異なるが0.09〜0.43(平均0.25)であることが確認された。これにより、平均すると、粒径範囲が1.2〜2mmの脱硫剤の39%が破砕されて失われ(残存したものは残存率0.61より61%)、粒径範囲が2〜5.7mmの脱硫剤の75%が破砕されて失われている(残存したものは残存率0.25より25%)と推察された。
【0034】
次いで、残存率R(x−y)を計算した脱硫剤において、破砕によって粒径が変動した粒径範囲(x−y)における流動粒子の増加率F(x−y)を(数12)で示す演算式によって演算した。この結果、粒径範囲が0.25mm〜0.5mmの流動粒子の増加率は、石炭種によって異なるが平均0.97であり、粒径範囲が0.5mm〜1.2mmの流動粒子の増加率は、石炭種によって異なるが平均0.03であった。これにより、粒径DR〜DMAX(1.2mm〜5.7mm)の脱硫剤のうち、粒径1.2〜2mmの脱硫剤の39%及び粒径2〜5.7mmの脱硫剤の75%が破砕されて失われ、この破砕された脱硫剤の97%が0.25〜0.5mmの粒径を有する流動粒子になり、3%が0.5〜1.2mmの粒径を有する流動粒子になったことが推察された。なお、流動粒子の磨耗線速度は1μm/hrとして計算した。磨耗線速度は、燃料種類やプラント出力にかかわらず、ほぼ一定の約1±0.5μm/hrであることが算出されたからである。
以上のようにして算出された残存率と増加率とを用いて、(図9)に太実線で示した予測値の補正を行った。その結果を(図11)に示した。(図11)において、太実線で示したものが補正された流動粒子の粒度分布の予測値である。太実線で示される補正された流動粒子の粒度分布の予測値は、破線で示される実測値とほぼ一致することが確認された。
以上のことから、本発明の流動粒子の粒度分布の予測方法によれば、磨耗による流動粒子の粒度分布の変動予測だけでなく、破砕による流動粒子の粒度分布の変動予測も可能となることが明らかになった。
【0035】
(実施例2)
加圧流動層燃焼装置としては、実施の形態2に示す71MW加圧流動層燃焼装置(脱塵装置で捕集されたフライアッシュを加圧流動層ボイラに循環しないもの)を用いた。燃料には(表1)に示すBA石炭を用い、脱硫剤には(表2)に示す組成を有する粒径5mm未満に調整された津久見産の石灰石(T5)を用いた。
実施例1と同様にして、流動粒子の平均磨耗線速度を求めた。この流動粒子の平均磨耗線速度とプラント出力との関係を(図12)に示した。(図12)から、流動粒子の平均磨耗線速度は、プラント出力にかかわらず約2±0.5μm/hrとほぼ一定であることがわかった。
【0036】
次に、流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布を(数8)の演算式を用いて推定した。図13は推定された50%粒径Dp50,calと、抜出粒子の実測の50%粒径Dp50,Expとの関係を示す図である。
図13において、横軸は実測の50%粒径Dp50,Expを示し、縦軸は推定した50%粒径Dp50,calを示し、図中の直線は実測値と推定値とが一致していることを示している。
図13から、実測の50%粒径Dp50,Expは、推定した50%粒径Dp50,calより著しく小さいことが明らかになった。以上のことから、粒径の大きな脱硫剤が加圧流動層ボイラ内に供給された場合、磨耗による細粒化だけでなく、破砕による細粒化が起こっていると推察された。また、この場合にも実施例1と同様に、(数8)の演算式だけでは流動粒子の粒度分布を予測できないことが明らかになった。
【0037】
次に、破砕して細粒化した脱硫剤の粒径範囲と破砕せずに残存している脱硫剤の粒径範囲とを調べるために、(数11)を用いて脱硫剤の粒径範囲(x−y)毎の残存率R(x−y)を計算した。図14は粒径1.2〜2mmの脱硫剤の残存率を示した図であり、図15は粒径2〜3.36mmの脱硫剤の残存率を示した図であり、図16は粒径3.36〜5.7mmの脱硫剤の残存率を示した図である。
図中、横軸はプラント出力を示し、縦軸は残存率を示した。
図14から、粒径範囲が1.2〜2mm(DMAX=2mm)の脱硫剤の残存率は0.6〜1.55(平均0.89)であり、図15から、粒径範囲が2〜3.36mm(DMAX=3.36mm)の脱硫剤の残存率は0〜0.8(平均0.46)であり、図16から、粒径範囲が3.36〜5.7mm(DMAX=5.7mm)の脱硫剤の残存率は0〜0.4(平均0.19)であることが確認された。これにより、平均すると、粒径範囲が1.2〜2mmの脱硫剤の残存率が0.89であることから11%が破砕されて失われ、2〜3.36mmの脱硫剤の残存率が0.46であることから54%が破砕されて失われ、粒径範囲が3.36〜5.7mmの脱硫剤の残存率が0.19であることから81%が破砕されて失われていると推察された。また、脱硫剤の残存率はプラント出力に依存しないことが確認された。
【0038】
次いで、残存率R(x−y)を計算した脱硫剤において、破砕によって粒径が変動した粒径範囲(x−y)における流動粒子の増加率F(x−y)を(数12)で示す演算式によって演算した。図17は粒径0.25〜0.5mmの流動粒子の増加率を示した図であり、図18は粒径0.5〜1.2mmの流動粒子の増加率を示した図である。
図中、横軸はプラント出力を示し、縦軸は増加率を示した。
図17及び図18から、粒径範囲が0.25〜0.5mmの流動粒子の増加率は平均0.1であり、粒径範囲が0.5〜1.2mmの流動粒子の増加率は平均0.9であることがわかった。
以上の結果から、粒径DR〜DMAX(1.2mm〜5.7mm)の脱硫剤のうち、粒径1.2〜2mmの脱硫剤の11%、粒径2〜3.36mmの脱硫剤の54%及び粒径3.36〜5.7mmの脱硫剤の81%が破砕されて失われたことが推定された。また、0.25〜0.5mmの脱硫剤の増加率が0.1であることから、破砕された脱硫剤の10%が0.25〜0.5mmの粒径を有する流動粒子になり、0.5〜1.2mmの脱硫剤の増加率が0.9であることから、破砕された脱硫剤の90%が0.5〜1.2mmの粒径を有する流動粒子になったことが推察された。また、流動粒子の増加率はプラント出力に依存しないことも確認された。但し、流動粒子の磨耗線速度は2μm/hrとして計算した。
【0039】
なお、実施例2の場合にはフライアッシュは全て脱塵装置で捕集し加圧流動層ボイラに循環しないので、磨耗によって微細化された流動粒子だけでなく、破砕によって微細化され流動層からフリーボードへ飛び出した飛び出し粒径以下の流動粒子(実施例1の場合にはこれらは加圧流動層ボイラに循環されるため、磨耗線速度の計算においては考慮していない)も、磨耗線速度の計算において考慮していることになる。そのために、実施例2の場合の磨耗線速度は、実施例1の場合の磨耗線速度より大きくなったとも考えられる。
そこで、実施例2の場合の磨耗線速度を、実施例1の場合の磨耗線速度と同じ1μm/hrとした場合と、2μm/hrとした場合の2通りの場合について、破砕による細粒化を考慮して流動粒子の粒度分布50%粒径Dp50,calを計算し、抜出粒子の実測の50%粒径Dp50,Expとの関係を調べた。図19は抜出粒子の実測の50%粒径Dp50,Expと破砕による細粒化を考慮して推定した流動粒子の粒度分布50%粒径Dp50,calとの関係を示す図である。
図19において、直線は実測値と推定値とが一致していることを示しており、破線は±20%の誤差範囲を示している。
図19に示すように、破砕による細粒化を考慮して補正された流動粒子の粒度分布の予測値は磨耗速度の影響を受けず、実測値と±20%の誤算範囲で50%粒径を推定できることが確認された。
以上のことから、本発明の流動粒子の粒度分布の予測方法によれば、脱塵装置で捕集されたフライアッシュを加圧流動層ボイラに循環しない方式の加圧流動層燃焼装置においても、磨耗による流動粒子の粒度分布の変動予測だけでなく、破砕による流動粒子の粒度分布の変動予測が可能となることが明らかになった。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)これまで定量的に示されていなかった流動粒子(脱硫剤)の磨耗速度を定量的に示すことができるので、磨耗による流動粒子の粒径変化を把握することができ、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径等を予測することができ作業性や流動層の安定性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法を提供することができる。
(2)測定可能な石炭供給量、脱硫剤供給量と粒度分布、フライアッシュ中のカルシウム量等を用いて、脱硫剤の単位体積当りのカルシウム密度を基に求めるので、脱硫剤のカルシウム純度等に影響されずに、一般化された流動粒子(脱硫剤)の磨耗速度を求めることができ汎用性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法を提供することができる。
【0041】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)フライアッシュの残部を加圧流動層ボイラに再循環する加圧流動層燃焼装置においては、フライアッシュが循環されることで流動層内の密度が低下し流動層が活発化する。このような活発化した流動層を形成する流動層ボイラにおける流動粒子の磨耗速度を推定することができるので、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径等を予測することができ作業性や流動層の安定性に優れるとともに汎用性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法を提供することができる。
【0042】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)フライアッシュの全部を系外に排出する加圧流動層燃焼装置においては、流動層内の密度の低下が起こらず流動層は不活発である。このような流動層ボイラにおける流動粒子の磨耗速度を推定することができるので、流動粒子の磨耗速度を推定することができ流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径等を予測することができ作業性や流動層の安定性に優れるとともに汎用性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法を提供することができる。
【0043】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)これまで予測をすることが困難であった磨耗による流動粒子(脱硫剤)の粒度分布の変化が、定量化が可能な因子を用いた演算によって予測できるので、流動粒子の粒度分布や外部表面積に起因している脱硫率の予測や伝熱係数の推定等が可能となり、流動層ボイラに供給する脱硫剤の最適粒径や最適供給量を予測することができ作業性及び流動層の安定性に優れ、またプラント出力等を予測することができ生産性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
【0044】
請求項5に記載の発明によれば、
(1)残存率を求めることによって、重量分率が減少・増加している脱硫剤の粒径範囲、その減少率及び増加率が明確になる。そのため、破砕されて減少する脱硫剤の粒径範囲及びその減少率、破砕されて生成される粒径範囲及びその増加率の予測が可能な加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
【0045】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、
(1)破砕されて生成し増加した微細な流動粒子の重量分率が明確になり、増加する流動粒子の粒径範囲の予測が可能な加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
(2)磨耗によって変動する粒度分布だけでなく、脱硫剤の破砕によって変動する流動粒子の粒度分布の予測も可能になるため、流動粒子の外部表面の影響を受ける脱硫性能(脱硫率)の予測が可能な加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
(3)脱硫率の予測が可能になるので、高い脱硫率を得ようとするあまり必要以上の量の脱硫剤を過剰に供給するのを防止することができ、生産性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
(4)また、流動粒子の粒度分布等に影響を受ける加圧流動層ボイラ内に配設された熱交換器への伝熱係数の推定も可能となり、プラント出力制御の予測も可能な加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
(5)破砕によって微細化する脱硫剤の粒径を予測することにより、加圧流動層ボイラ内に供給する脱硫剤の適切な粒度の推定ができるので、供給する脱硫剤の粉砕及び分級等に過度の作業工数を割くのを防止でき、作業性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
(6)加圧流動層ボイラ内の脱硫剤を流動化に最適な粒径に予測して調整することができるので、流動粒子が微細化すると発生し易いスラッギングの未然防止が可能となり加圧流動層ボイラの流動層の安定性と制御性に優れた加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における加圧流動層燃焼装置のシステム構成図
【図2】本発明の実施の形態2における加圧流動層燃焼装置のシステム構成図
【図3】燃料にBA石炭と石油コークスとを用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
【図4】(a)燃料にBA炭,WB炭を用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
(b)燃料にNT炭,BA炭とAD炭の混炭を用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
(c)燃料にDA炭,BA炭,BA炭とDR炭の混炭を用いた場合の脱硫剤の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
【図5】(a)燃料にBA炭,WB炭,NT炭を用いた場合の流動粒子の平均磨耗線速度とプラント出力との関係を示す図
(b)燃料にDR炭,BA炭とAD炭の混炭,Ba炭とDR炭との混炭を用いた場合の流動粒子の平均磨耗線速度とプラント出力との関係を示す図
(c)燃料にBA炭と石油コークスを混合したものを用いた場合の流動粒子の平均磨耗線速度とプラント出力との関係を示す図
【図6】燃料にBA石炭と石油コークスとを用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
【図7】(a)燃料にBA石炭,WB石炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
(b)燃料にNT石炭,BA石炭とAD石炭との混炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
(c)燃料にDR石炭,BA石炭,BA石炭とDR石炭との混炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布(累積重量曲線)を示す図
【図8】燃料にBA石炭と石油コークスとを用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布と(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布との関係を示す図
【図9】燃料にBA石炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布と(数8)の演算式によって予測された流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布との関係を示す図
【図10】燃料に石炭を用いた場合の粒径範囲x〜yの脱硫剤の残存率R(x−y)を示す図
【図11】燃料にBA石炭を用いた場合の抜出粒子(流動粒子)の実測の粒度分布と補正後の流動粒子の粒度分布とを示す図
【図12】流動粒子の平均磨耗線速度とプラント出力との関係を示す図
【図13】流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布を破砕を考慮せずに推定した50%粒径Dp50,calと、抜出粒子の実測の50%粒径Dp50,Expとの関係を示す図
【図14】粒径1.2〜2mmの脱硫剤の残存率とプラント出力との関係を示す図
【図15】粒径2〜3.36mmの脱硫剤の残存率とプラント出力との関係を示す図
【図16】粒径3.36〜5.7mmの脱硫剤の残存率とプラント出力との関係を示す図
【図17】粒径0.25〜0.5mmの流動粒子の増加率とプラント出力との関係を示す図
【図18】粒径0.5〜1.2mmの流動粒子の増加率とプラント出力との関係を示す図
【図19】流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒度分布を破砕を考慮して推定した50%粒径Dp50,calと、抜出粒子の実測の50%粒径Dp50,Expとの関係を示す図
【符号の説明】
1 加圧流動層燃焼装置
2 加圧流動層ボイラ
2a 流動層
2b フリーボード
2c 排ガス導入管
3 サイクロン
4 圧力容器
5 返流管
5a 排ガス排出管
5b 炉底抜出口
6 スラリータンク
7 スラリーポンプ
8 セラミックチューブフィルタ
9 微粒灰タンク
10 排ガス流路
11 ガスタービン
11a,18a 発電機
12 脱硫反応塔
12a 排ガス管
12b SOx検出器
13 エコノマイザ
14 バグフィルタ
15 煙突
16 コンプレッサ
17 熱交換器
17a 蒸気管
18 蒸気タービン
19 復水器
20 復水ポンプ
21 送水管
22 給水管
30 加圧流動層燃焼装置
31 サイクロン
32 粗粒灰流路
33 粗粒灰用熱交換器

Claims (6)

  1. 加圧流動層燃焼装置において、脱塵装置で捕集され前記加圧流動層燃焼装置の系外に排出される単位時間あたりの排出灰中のカルシウム量と、前記加圧流動層ボイラ内に単位時間あたりに供給する脱硫剤の内前記排出灰の最大粒径である最大排出灰粒径以下の粒径を有する前記脱硫剤中のカルシウム量と、前記加圧流動層ボイラ内に単位時間あたりに供給する燃料から生成される燃焼灰中のカルシウム量と、によって、前記加圧流動層ボイラ内の流動粒子が磨耗して単位時間に生成される磨耗流動粒子中のカルシウム量を(数1)の演算式を用いて求める工程と、
    前記磨耗流動粒子中のカルシウム量を前記脱硫剤のカルシウム密度で除して前記磨耗流動粒子の磨耗体積速度(a)を求める工程と、
    前記加圧流動層ボイラ内に存在する前記流動粒子の粒度分布を測定し、(数2)の演算式を用いて前記流動粒子の外部表面積(b)を求める工程と、
    前記磨耗体積速度(a)を前記外部表面積(b)で除して前記流動粒子の磨耗線速度を求める工程と、
    を備えていることを特徴とする加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法。
    Figure 0004050895
    Figure 0004050895
  2. 前記排出灰が、前記加圧流動層ボイラで発生するフライアッシュの一部であり、前記フライアッシュの残部が前記加圧流動層ボイラに再循環されることを特徴とする請求項1に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法。
  3. 前記排出灰が、前記加圧流動層ボイラで発生するフライアッシュの全部であることを特徴とする請求項1に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の磨耗速度の推定方法。
  4. 加圧流動層燃焼装置において、
    加圧流動層ボイラ内に供給する脱硫剤の粒度分布を測定し、前記脱硫剤の内の粒径Dp,j-1の重量分率fj-1を求める工程と、
    前記重量分率fj-1と、前記加圧流動層ボイラ内に供給する前記脱硫剤の供給質量速度Fと、前記加圧流動層ボイラ内に存在する流動粒子の粒子重量Wと、前記脱硫剤の供給量が前記流動粒子が前記加圧流動層ボイラ内で磨耗によって減少する量よりも多い場合に前記加圧流動層ボイラの炉底部から抜き出す抜出粒子の抜出重量Bと、によって、時刻tから時間Δtが経過した後に前記流動層ボイラ内に存在する前記粒径Dp,j-1を有する前記流動粒子の重量W・wj-1(t+Δt)を(数3)によって求める工程と、
    (数3)の演算を各々の粒径毎及び時間毎に定常状態になるまで繰り返し行い各絶対量を求め、前記各絶対量の合計から各々の粒径毎の重量分率を演算して粒度分布を求める工程と、
    を備えていることを特徴とする加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法。
    Figure 0004050895
  5. 請求項4に記載の流動粒子の粒度分布の予測方法によって磨耗によって粒度が変化した流動粒子の粒度分布を予測する磨耗粒度分布測定工程と、
    前記加圧流動層ボイラから抜き出した前記抜出粒子の粒度分布を測定する抜出粒度分布測定工程と、
    前記磨耗粒度分布測定工程で予測された磨耗粒度分布と、前記抜出粒度分布測定工程で測定された抜出粒度分布と、を用いて、前記加圧流動層ボイラ内に供給され破砕によって粒度が変化した流動粒子の粒度分布を予測する破砕粒度分布予測工程と、
    前記加圧流動層ボイラ内に供給する以前の脱硫剤の粒度分布を測定する脱硫剤粒度分布測定工程と、
    前記破砕粒度分布予測工程で予測された破砕粒度分布から粒径範囲x〜yの粒径を有する流動粒子の重量分率e(x−y)を求める工程と、
    前記脱硫剤粒度分布測定工程で測定された脱硫剤粒度分布から粒径範囲x〜yの粒径を有する脱硫剤の重量分率f(x−y)を求める工程と、
    前記e(x−y)及び前記f(x−y)を用いて、粒径範囲x〜yの粒径を有する前記脱硫剤の残存率R(x−y)を(数4)の演算式で演算する工程と、
    を備えていることを特徴とする加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法。
    Figure 0004050895
  6. 前記残存率R(x−y)=1となる前記脱硫剤の粒径DRを求める工程と、
    前記抜出粒度分布から、前記加圧流動層ボイラ内に存在する前記流動粒子の最大粒径DMAXを求める工程と、
    前記加圧流動層ボイラ内で破砕によって粒径が変動した粒径範囲x〜yの粒径を有する前記脱硫剤の増加率F(x−y)を(数5)の演算式で演算する工程と、
    前記増加率F(x−y)に応じて、請求項4に記載の予測方法で予測された前記粒度分布を補正する工程と、
    を備えていることを特徴とする請求項5に記載の加圧流動層燃焼装置における流動粒子の粒度分布の予測方法。
    Figure 0004050895
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