JP4048553B2 - フラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイのアレイ基板材料や、その対向基板材料として用いられるガラス基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりフラットパネルディスプレイ用ガラス基板として、0.3〜3.0mm程度の厚みを有する矩形状の板ガラスが大量に用いられている。特に近年になって、α−Si TFT(Amorphous−Si Thin Film Trasistor)液晶ディスプレイ等の薄膜電気回路を用いたフラットパネルディスプレイ市場が急速に拡大している。
【0003】
また最近では、α−Si TFT液晶ディスプレイに比べ、高精細化、低消費電力化、低コスト化の点で優れた低温poly−Si TFT液晶ディスプレイの技術が開発され、実用化され始めている。
【0004】
ところで最近のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板には、大板化が求められている。すなわち最終製品であるディスプレイの大きさは、対角12インチ程度のものが主流であるが、ディスプレイ基板の製造コストの低減と、スループットの向上を目的として大きなガラス基板から複数のディスプレイ基板を作製するマルチ方式が採用されている。つまりガラスメーカーで成形された大型のガラス基板(ガラス素板)上に、複数分の回路パターンを形成した後、回路パターン毎にガラス基板を分割切断して複数のディスプレイ基板を作製する方式が採用されており、これらの基板は、ディスプレイの背面基板となるアレイ基板として使用されている。また同様に、アレイ基板の対向基板(前面基板)についても大型のガラス基板に複数のパターンを形成した後、分割切断する生産方式が採られている。
【0005】
そのため従来のガラス基板の大きさ(縦横寸法)は、300×400mmサイズや370×470mmサイズであったが、最近では、550×650mmサイズや、それ以上のサイズのガラス基板が必要とされるようになってきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように最近になって、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、大板化が進められているが、これに伴ってガラス基板を分割切断した後に、ガラス基板が変形するという問題が発生している。
【0007】
例えば液晶ディスプレイのアレイ基板として用いられるガラス基板上には、薄膜電気回路や、その他の各種金属膜、絶縁膜等を組み合わせた回路パターンが形成され、その対向基板であるカラーフィルター基板には、RGBパターンが形成されるが、このような回路パターンが形成されたガラス基板が分割切断された後に変形すると、互いの画素パターンが所期の設計からずれてしまい、アレイ基板の回路パターンとカラーフィルター基板のパターンとが一致せず、最終製品である液晶ディスプレイの表示不良という致命的な欠陥につながることがあるため大きな問題となっている。特にα−Si TFTに比べて、低温poly−Si TFTの方が、パターンがより高精細であるため、ガラス基板のわずかな変形も許されないのが現実である。
【0008】
本発明の目的は、大板ガラスであっても、分割切断後の変形が少なく、パターンが所期の設計からずれてディスプレイの表示不良が発生するということがないフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々の実験を繰り返した結果、ガラス基板が分割切断された後に変形する原因が、ガラス基板の平面方向に大きな残留応力が発生するからであり、ガラス基板をアニールした後、その周縁部を切り落とし、平面方向の残留応力を一定値以下に抑えることによって、ガラス基板の分割切断後の変形が抑えられることを見いだし、本発明を提案するに至った。
【0010】
すなわち本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法は、予め所定寸法より大きいガラス基板を作製し、これをアニールした後、所定寸法となるように周縁部を切り落とすことによって、平面方向の残留応力が5kg/cm2 以下のガラス基板とすることを特徴とする。
【0011】
また本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法は、好ましくは、ガラス基板の周縁部を10mm以上の幅で切り落とすことを特徴とし、さらに周縁部を切り落とした後のガラス基板の縦寸法が400mm以上、横寸法が500mm以上であることを特徴とし、またガラス基板が、低温poly−Si
TFT用ガラス基板であることを特徴とする。
【0012】
【作用】
フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に残留応力が発生するメカニズムは、次のとおりである。
【0013】
この種のガラス基板を成形するための一般の工業的な方法としては、フロート法、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法等が知られているが、いずれの成形法を採用しても、成形した板ガラスを冷却する時に、その肉厚方向に温度分布が発生すると共に、平面方向にもいくらかの温度分布が発生し、その結果、不均一な残留応力が発生することになる。
【0014】
切断後の変形に影響を与えるのは、主にガラス基板の平面方向に発生する残留応力であり、ガラス基板の中央付近に比べて、周縁部の冷却速度が速い場合や、逆にガラス基板の中央付近に比べて周縁部の冷却速度が遅い場合に、周縁部付近に残留応力が発生する。このような平面方向に残留応力を有するガラス基板が分割切断されると、変形することによって応力を解放しようとする。
【0015】
本発明者等の知見によると、平面方向の残留応力は、ガラス基板の大きさに比例して大きくなり、例えば、縦寸法400mm以上、横寸法500mm以上のガラス基板の場合、周縁部の残留応力は、20kg/cm2 以上となることがあった。しかしながらガラス基板をアニールした後、その周縁部を切り落とし、平面方向の残留応力を5kg/cm2 以下にすると、これを分割切断しても、問題となるような変形は生じない。
【0016】
従って本発明の方法は、大寸法のガラス基板、具体的には、周縁部を切り落とした後の縦寸法400mm以上、横寸法500mm以上のガラス基板に有用であり、またα−Si TFTに比べて、より高精細な回路パターンを有する低温poly−Si TFT用ガラス基板に有用である。
【0017】
通常、この種のガラス基板をアニールする場合、ガラス基板を平坦性に優れた耐熱性セッター上に載置してアニール炉に投入するが、生産性を向上するためには、セッター上に複数枚のガラス基板を重ねて載置しても良い。セッターの材質としては、低膨張結晶化ガラスやセラミックが使用可能である。またアニールは、連続式アニール炉やバッチ式電気炉を用いて行うことができるが、生産性を考えると、連続式アニール炉を用いることが望ましい。
【0018】
【実施例】
以下、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法を、実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施例)
まず重量%で、SiO2 55%、B2 O3 10%、Al2 O3 10%、RO 25%の組成となるようにガラス原料を調合し、1580℃で所定時間溶融した後、スロットダウンドロー法を用いて成形し、切断加工することによって、570×670×0.7mmの寸法を有する低温poly−Si TFT液晶ディスプレイ用無アルカリガラス基板を12枚作製した。
【0020】
次にこれらのガラス基板を、板状で平坦性に優れた耐熱性セッター(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN−0)上に1枚づつ載置し、アニール炉内に入れてアニールした後、その周縁部を切り落とすことによって、550×650×0.7mmの寸法を有するガラス基板とした。これらのガラス基板の平面方向の残留応力を測定したところ、いずれも4kg/cm2 以下であった。
【0021】
(比較例)
実施例と同じ条件で、550×650×0.7mmの寸法を有するガラス基板を12枚作製し、これらのガラス基板を、セッター(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN−0)上に1枚づつ載置し、アニール炉内に入れてアニールした。このアニール後のガラス基板の平面方向の残留応力を測定したところ、いずれも12〜16kg/cm2 であった。
【0022】
その後、図1に示すように、各ガラス基板10上に4つの回路パターン11を形成してから、回路パターン11毎にガラス基板10を2本の切断線12、12に沿って4枚のアレイ基板に分割切断し、これらのアレイ基板上の回路パターン11の正規位置からの最大ずれ量を測定し、その結果を表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1から明らかなように、比較例のアレイ基板は、回路パターンのずれ量が4〜7μmと大きかったが、実施例のアレイ基板の回路パターンのずれ量は、0〜2μmと小さく、このことから、アレイ基板の平面方向の残留応力の大きさと、切断後の寸法のずれ量の間に相関関係が認められた。
【0025】
尚、上記の残留応力は、東芝歪検査器SVP−100を用い、セナルモン法に基づいて測定した。
【0026】
またアレイ基板のずれ量は、その対向基板として、アレイ基板と同じサイズを有する未変形のカラーフィルター基板を準備し、図2に示すように、アレイ基板13をカラーフィルター基板14上に重ね合わせ、アレイ基板13上の回路パターン15と、カラーフィルター基板14上に形成されたパターン16の最もずれの大きい部分の長さ(L)を顕微鏡で測定したものである。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法によると、予め大きめのガラス基板をアニールした後、大きな残留応力の発生しやすい周縁部を切り落とすため、その平面方向の残留応力が5kg/cm2 以下のガラス基板が得られ、このガラス基板上にパターンを形成した後、パターン毎にガラス基板を分割切断しても変形が少ない。
【0028】
そのため、本発明は、特に周縁部の残留応力が大きくなりやすい縦寸法が400mm以上、横寸法が500mm以上のガラス基板や、パターンが非常に高精細であるため、わずかな変形も許されない低温poly−Si TFT用ガラス基板に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】4つの回路パターンが形成されたガラス基板を示す平面図である。
【図2】アレイ基板をカラーフィルター上に重ね合わせた状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
10 ガラス基板
11、15 回路パターン
12 切断線
13 アレイ基板
14 カラーフィルター基板
16 カラーフィルター基板上に形成されたパターン
Claims (4)
- 予め所定寸法より大きいガラス基板を作製し、これをアニールした後、所定寸法となるように周縁部を切り落とすことによって、平面方向の残留応力が5kg/cm2 以下のガラス基板とすることを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
- ガラス基板の周縁部を10mm以上の幅で切り落とすことを特徴とする請求項1記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
- 周縁部を切り落とした後のガラス基板の縦寸法が400mm以上、横寸法が500mm以上であることを特徴とする請求項1、2記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
- ガラス基板が、低温poly−Si TFT用ガラス基板であることを特徴とする請求項1〜3記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
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