JP4047695B2 - 工作機械における工具交換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械における工具交換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の工作機械における工具交換装置として、以下のものが提案されている。この工作機械においては、ベッドの上面に対しX軸サドル、Y軸サドル及びZ軸コラムを介して主軸ヘッドをX軸,Y軸,Z軸方向の3軸方向にそれぞれ位置制御可能に装着している。前記ベッドの上面に固着した取付フレームの上部左側には工具マガジンを水平方向に直列に配設し、取付フレームの主軸ヘッド上部には2個の工具を把持して互いに180°反対方向に延びる2本の工具交換アームを、Z軸方向と平行な旋回軸線を中心に旋回可能に装着している。さらに、前記工具マガジンと工具交換アームとの間に工具ホルダを保持した工具ポットを移動するための工具移動機構を設けている。(例えば特許文献1参照)
この工具移動機構は、前記工具マガジンから工具ポットをY軸上方に移動して抜き取った後、Z軸方向前方へ移動し、この前方端において工具ポットを水平面内で90度旋回させる。次に、工具ポットをY軸下方に移動して工具交換アームの先端部に設けた工具把持具に工具ホルダを把持させるように、工具交換アームの旋回と進退移動により、主軸ヘッドの工具ホルダを同時に交換するようになっている。
【0003】
又、従来の工作機械における工具交換装置として、円環状の工具マガジンを主軸ヘッドと同じ向きに装着し、工具マガジンと主軸ヘッドとの間に装設された工具交換アームにより工具交換するようにしたものも提案されている。(例えば特許文献2参照)
さらに、従来の工作機械における工具交換装置として、直線状の工具マガジンを主軸ヘッドの前方上方に配設し、主軸ヘッドと工具マガジンとの間に工具交換アームを装着し、該工具交換アームと工具マガジンとの間に工具を受け渡すためのシャトルアームを設けたものも提案されている。(例えば特許文献3参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平2000−280139号公報(1)
【特許文献2】
特開平10−225840号公報(2)
【特許文献3】
特開平2000−84779号公報(3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
第1の工具交換装置は、取付フレームの側部に工具マガジンを配設しているので、配置スペースがあり工具ポットの収容する個数に余裕がある反面、工具移動機構によって工具をZ軸前方へ移動した後、90°水平方向に旋回する動作が必要になる。このため、工具マガジンから工具ポットを工具交換アームの工具把持具と対応する位置へ移し替える動作時間が長くなるという問題があった。又、工具マガジンと工具交換アームとの工具交換位置までの距離が長くなるので、この点からも前記工具ポットの移し替え時間が長くなるという問題があった。
【0006】
又、第2の工具交換装置は、工具マガジンから工具ポットを工具交換アームの先端部の工具把持具に移し替える動作時間は長くならない。しかし、工具マガジンが円環状に構成されているので、工具を収容する効率が低下するという問題があった。
【0007】
一方、工具交換アームは2個の工具把持具が180°に反対方向にアームの先端に把持されて、工具交換時はアームの旋回と進退移動により行われるため、その動作時間が長くなるという問題があった。
【0008】
さらに、第3の工具交換装置は、工具マガジンが主軸ヘッドの前側に装着されているので、工具交換時間は第2の工具交換装置と同様に短縮することができる。しかし、シャトルアームを用いて、工具マガジンと工具交換アームとの間で、工具の受渡しを行うため、工具マガジンを複数列に装着することができず、工具の収容個数を多くすることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、工具の交換を迅速に行うことができるとともに、工具の収容個数を多くすることができる工作機械における工具交換装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ベッドの上面に対してX軸水平方向とY軸上下方向に直交するZ軸水平方向の往復動可能にした主軸ヘッドに工具チャックを介して装着された工具によりワークの加工を行うようにした工作機械において、前記ベッドに装着した取付フレームに対し上下複数の工具保持レールからなる工具マガジンを前記主軸ヘッドの上方かつ工具が前記主軸ヘッドと平行に位置するように装着し、前記各段の工具保持レールをX軸水平方向に配設し、前記取付フレームに対し前記Z軸水平方向と平行な旋回軸線を中心に旋回される工具交換アームを装着し、該工具交換アームの先端部に工具ホルダを把持する一対の工具把持具を設け、前記各段の工具保持レールのうち最下段に位置する工具保持レールの中間部に、前記工具交換アームの旋回動作時にその旋回を許容するための旋回許容空間を設け、前記工具マガジンと工具交換アームとの間に工具のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動を行う工具移動機構を装設し、前記各工具保持レールのうち最下段以外の工具保持レールの中間部に対し、前記工具移動機構により工具を把持する工具ポットがY軸上下方向に移動される際に、該工具ポットをY軸上下方向に案内する通路を設けたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記工具交換アームは、その基端部において、Z軸方向行な旋回軸の周りで旋回可能に支持され、該工具交換アームが上方に指向する位置に保持された状態で、該工具交換アームの先端部には前記工具把持具がX軸方向に所定の間隔をおいて上向きに並設されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記工具移動機構は、前記取付フレームに対しX軸方向の往復動可能に装着された工具移動用X軸サドルと、この工具移動用X軸サドルに対しZ軸方向の往復動可能に装着された工具移動用Z軸サドルと、この工具移動用Z軸サドルに対しY軸方向の上下動可能に装着された工具移動用Y軸サドルと、この工具移動用Y軸サドルに取り付けられ、かつ前記工具を保持する保持凹部に把持されている工具をY軸方向に昇降可能な工具昇降具とにより構成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記工具移動用Z軸サドルは、工具昇降具によりY軸上方に持ち上げられた工具を上方に案内移動して、該工具を所定位置に保持する左右一対の案内部材を備えていることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4において、前記工具交換アームの工具把持具が前記旋回許容空間に移動された状態で、前記工具把持具の高さは工具保持レールの保持凹部の高さと同じに設定されていることを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一項において、前記工具交換アームの一対の工具把持具は、該工具交換アームが上方又は下方に旋回された状態で、X軸方向の位置切り換え可能に配設されていることを要旨とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した工作機械における工具交換装置の一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
【0017】
図1及び図2に示すようにベッド11の上面には主軸用X軸コラム12がX軸案内機構13によってX軸(水平:左右)方向の往復動可能に装設され、X軸駆動機構14によって、X軸方向に数値制御移動されるようになっている。図1に示すように前記主軸用X軸コラム12にはY軸案内機構20を介して主軸用Y軸サドル21がY軸(鉛直:上下)方向の移動可能に装着され、Y軸駆動機構22によってY軸方向に数値制御移動されるようになっている。前記主軸用Y軸サドル21には主軸用Z軸サドル23がZ軸案内機構24によってZ軸(水平:前後)方向の往復動可能に装設され、Z軸駆動機構25によってZ軸方向に数値制御移動されるようになっている。前記主軸用Z軸サドル23には主軸26が固着され、この主軸26には主軸ヘッド27が装着されている。この主軸ヘッド27には図示しないが工具チャックが設けられていて、工具29を把持した工具ホルダ28を周知の脱着機構により装着可能になっている。
【0018】
以上の構成により主軸ヘッド27に装着された工具29は、X,Y,Zの3軸方向にそれぞれ数値制御移動され、図示しないワーク支持機構により支持されたワークに穿孔作業等の加工を行う。
【0019】
図1及び図2に示すように、前記ベッド11には取付フレーム31が設けられ、この取付フレーム31には、前記主軸ヘッド27に装着された使用済工具29を工具ホルダ28とともに新工具29aと交換するための工具交換装置32が装着されている。この工具交換装置32は前記取付フレーム31の前端部の所定位置に装着された工具マガジン33と、前記主軸ヘッド27と対応して取付フレーム31に装着された工具交換アーム34とを備えている。又、工具交換装置32は、前記工具マガジン33と工具交換アーム34との間に装設され、かつ工具マガジン33と工具交換アーム34との間で工具ポット36を工具ホルダ28及び工具29とともに交互に移動するための工具移動機構35を備えている。
【0020】
そこで、上記工具マガジン33、工具交換アーム34及び工具移動機構35の各構成について順次説明する。
(工具マガジン33)
前記工具マガジン33は図4に示すように構成されている。板材をプレス成形した工具保持レール41はボルト42によって前記取付フレーム31の前端面に締め付け固定されている。工具保持レール41の上部には前記工具ホルダ28を把持する工具ポット36の外周面に形成された環状溝36aに係合されて、該工具ポット36を保持するための保持凹部41aがX軸方向に等ピッチで数箇所に形成されている。前記工具保持レール41の下部には取付板43が前記ボルト42によって取付フレーム31に固定され、この取付板43には支持アーム44を介して別の取付板45が連結されている。前記取付板45の取付面には工具保持レール46がボルト47によって取り付けられている。この工具保持レール46にも前記保持凹部41aと同様に保持凹部46aがX軸方向に等ピッチで数箇所に形成されている。前記工具保持レール46のX軸方向中間部には前記工具ホルダ28が上下方向に移動できる通路48が2カ所に形成されている。前記工具保持レール41の中間部には前記工具交換アーム34の旋回動作を許容するための旋回許容空間49が形成されている。
【0021】
(工具交換アーム34)
次に、図1,2及び図5〜図7に基づいて前記工具交換アーム34の構成について説明すると、前記取付フレーム31の上部には旋回駆動機構51が固着され、この旋回駆動機構51の旋回軸52には交換アーム本体53の基端部が取り付けられている。この交換アーム本体53の先端部には第1,第2工具把持具54,55が取り付けられ、それらの先端部には前記工具ホルダ28の外周面に形成された環状溝28aに係合されて工具ホルダ28を把持するための把持凹部54a,55aが形成されている。
【0022】
上記工具交換アーム34は図6及び図7に示すように第1及び第2工具把持具54,55が上側に位置した状態で、それらの把持凹部54a,55aが上向きになるように保持されている。又、第1工具把持具54が工具保持レール46のほぼ中央に位置する前記通路48の下方の所定位置に保持されるようにしている。さらに、第2工具把持具55が第1工具把持具54の左方近傍に保持されるようにしている。
【0023】
(工具移動機構35)
次に、図1〜3及び図5〜図7に基づいて前記工具移動機構35の構成について説明する。
【0024】
図5,6に示すように、前記取付フレーム31の上面には工具移動用X軸サドル61がX軸案内機構62によってX軸方向の往復動可能に装着されている。前記工具移動用X軸サドル61はX軸駆動モータ63、ボールねじ64及びボールねじナット65によってX軸方向に数値制御移動されるようになっている。前記工具移動用X軸サドル61の上面には工具移動用Z軸サドル66がZ軸案内機構67によってZ軸方向の往復動可能に装着されている。前記工具移動用Z軸サドル66は前記工具移動用X軸サドル61の上面に配設されたZ軸駆動機構68によってZ軸方向に数値制御移動されるようになっている。
【0025】
前記工具移動用Z軸サドル66の前面にはY軸案内レール69がY軸方向に敷設され、このY軸案内レール69にY軸リニアガイド70がY軸方向の往復動可能に装着されている。このY軸リニアガイド70には工具移動用Y軸サドル71を介してボールねじナット72が取り付けられている。前記工具移動用Z軸サドル66の上端部に固着されたブラケット73の上面に支持されたY軸駆動モータ74のY軸ボールねじ75によって前記Y軸リニアガイド70、工具移動用Y軸サドル71及びボールねじナット72がY軸方向に数値制御移動されるようになっている。前記ボールねじナット72の下面にはブラケット76が固着され、このブラケット76の下端部には工具昇降具77が固着され、その工具昇降具77の前端部には前記工具ポット36の後端部に形成された係合突起36bを上下両側部から把持する把持凹部77aが形成されている。
【0026】
前記工具移動用Z軸サドル66の左右両側面には案内部材78,79がZ軸前方向に延びるように片持ち支持されている。案内部材78,79の先端部には前記工具ポット36の環状溝36aをY軸方向に案内移動するための案内レール部78a,79aが互いに対向するように折り曲げ形成されている。この案内レール部78a,79aの間には工具ポット36の案内通路80が形成されている。前記案内レール部78a,79aは、Y軸方向に関して所定位置に固定されている。前記案内レール部78a,79aの上下方向の高さ寸法Hは、前記両工具保持レール41,46の間の隙間Gの幅寸法よりも若干短く形成されている。そして、図7に示すように上記隙間Gに対し前記案内レール部78a,79aがZ軸方向から進入し得るようにしている。
【0027】
従って、前記工具保持レール41の保持凹部41aに把持されている工具ポット36を保持凹部41aから取り出す場合には、前記工具昇降具77を工具ポット36の係合突起36bと同じ高さに移動する。又、工具移動用Z軸サドル66をZ軸前方に移動して前記案内部材78,79の案内レール部78a,79aを前記隙間Gと対応する位置まで移動する。この移動によって、工具昇降具77の把持凹部77aが工具ポット36の係合突起36bに係合される。この状態で、工具昇降具77をY軸上方に移動することによって、工具ポット36が保持凹部41aから上方に持ち上げられて、案内レール部78a,79aに案内されて、案内通路80の所定高さに保持される。このようにして、工具ホルダ28を保持した工具ポット36の保持凹部41aからの取り出しが行われる。
【0028】
前記Z軸サドル66の左右両側面には前記案内部材78,79の上方において、前記工具保持レール46の保持凹部46aに把持された工具ポット36を保持凹部46aから工具昇降具77と協働して上方に取り出すための案内部材81,82が設けられている。この案内部材81,82の先端部には案内レール部81a,82aが互いに対向するように折り曲げ形成され、前記工具保持レール46の直上に移動配置された状態で、工具ポット36の環状溝36aを案内レール部81a,82aに沿って上方に案内移動するようになっている。前記案内部材81,82により保持凹部46aから工具ポット36を取り出す動作も上記保持凹部41aに保持された工具ポット36の取り出し動作と同様に行われる。
【0029】
なお、前記案内レール部78a,79a及び工具昇降具77によって把持されている工具ポット36の前記保持凹部41aへの収容動作は、前記取り出し動作と逆の動作により行われる。
【0030】
(工具交換装置32の動作)
次に、前記のように構成された工作機械における工具交換装置の動作について説明する。
【0031】
工作機械の主軸ヘッド27に把持されていた工具29によってワークの加工が行われ、工具29による加工が終了すると、この使用済工具29は工具マガジン33側の新工具29aと交換される。この交換動作は図10のフローチャートに示すように行われる。
【0032】
最初に、工具交換装置32の工具昇降具77の原点位置P1について説明する。新工具29aを取り出す場合は工具昇降具77は図7に実線で示すようにZ軸方向から見て第1工具把持具54と対応している。又、工具昇降具77が前記工具保持レール41の保持凹部41aに収納された工具ポット36の係合突起36bと同じ高さに保持され、X軸方向からみて係合突起36bと対応している状態を工具昇降具77の原点位置P1とする。
【0033】
図7において、工具交換アーム34の前記第2工具把持具55の位置を、工具受取位置P2、第1工具把持具54の位置を工具受渡位置P3としている。又、図8に示すように工具交換アーム34が180°旋回された状態における第1工具把持具54の位置を工具受渡位置P4、第2工具把持具55の位置を工具装着位置P5とする。
【0034】
次に、工具29の交換動作について説明する。図10及び以下の説明においては、第1,第2工具把持具54,55を、第1,第2把持具54,55と簡略化している。
【0035】
図10のステップS1において、工具昇降具77が案内部材78,79とともに原点位置P1からX軸右方に移動され、指定された保持凹部41aに保持されている工具ポット36と対応する位置に移動されて工具ポット36の係合突起36bに工具昇降具77の把持凹部77aが係合される。その後、ステップS2において、工具昇降具77が上昇し、工具ポット36が保持凹部41aから取り出される。ステップS3において、工具昇降具77がX軸左方へ移動され、工具昇降具77が工具ポット36及び新工具29aとともに前記第2工具把持具55の上方近傍に配置される。
【0036】
次に、ステップS4において、工具昇降具77がZ軸前方へ移動され、次にY軸下方に移動されて、工具ホルダ28が図7に示す工具受取位置P2において工具交換アーム34の第2工具把持具55の把持凹部55aに係合される。次のステップS5において、工具昇降具77がZ軸後方に移動されて、工具ポット36が工具ホルダ28から分離される。なお、図7に示す工具受渡位置P3の第1工具把持具54の把持凹部54aには工具ホルダ28が存在しない空の状態である。
【0037】
次に、ステップS6において、工具交換アーム34が旋回駆動機構51によって旋回軸52を中心にして図7において時計周り方向に180度旋回される。すると、図8に示すように、空の第1工具把持具54が工具受渡位置P4に移動される。これと同期して新工具29aを把持した第2工具把持具55が工具装着位置P5に移動される。
【0038】
図8において、主軸ヘッド27に装着されている使用済工具29の工具受渡位置P4にある第1把持具54への受け渡し動作が行われる。すなわち、ステップS7において、主軸ヘッド27がワークの加工終了位置P6からX軸左方及びZ軸後方に移動されて、工具ホルダ28の環状溝28aが第1把持具54の把持凹部54aと対応する工具受渡位置P4の直下に移動される。次に、ステップS8において、主軸ヘッド27がY軸上方向に所定距離だけ移動されて、工具ホルダ28が把持凹部54aに係合される。この状態で、ステップS9において主軸ヘッド27がZ軸後方に移動されると、主軸ヘッド27から工具ホルダ28が抜き出されて、使用済工具29が第1把持具54へ受け渡され、主軸ヘッド27の使用済工具29の分離が行われる。
【0039】
次に、ステップS10において、前記主軸ヘッド27がX軸右方へ移動されて工具装着位置P5と対応する位置に停止される。その後、ステップS11において、主軸ヘッド27がZ軸前方に移動され、第2把持具55に把持されていた工具ホルダ28が主軸ヘッド27の工具チャックによって把持される。この状態でステップS12において、主軸ヘッド27がY軸下方に移動されて、新工具29aを保持した工具ホルダ28が把持凹部55aから取り出され、新工具29aが主軸ヘッド27に装着される。
【0040】
次に、ステップS13において、工具交換アーム34が時計周り方向へ180°回転される。この動作により空の第2把持具55が工具受取位置P2へ移動されるとともに、使用済工具29を把持した第1把持具54が工具受渡位置P3へ移動される。
【0041】
その後、工具受渡位置P3に保持されている第1把持具54の使用済工具29が工具保持レール41の空状態の保持凹部41aへ移動される(ステップS14〜S20)。即ち、ステップS14において、工具昇降具77が前述したステップS5の終了状態、つまり前記工具受取位置P2からZ軸後方に後退した後退位置からX軸右方に移動された後、Z軸前方に移動されて原点位置P1へ移動される。これにより工具ホルダ28に工具ポット36が係合される。次のステップS15において、工具昇降具77がY軸上方へ移動され、第2把持具55の把持凹部55aから使用済工具29を把持した工具ホルダ28が取り外される。その後、ステップS16において、工具昇降具77がX軸右方へ移動され、空状態の保持凹部41aと対応する位置に移動される。さらに、ステップS17において工具昇降具77がY軸下方に移動され、使用済工具29を把持した工具ポット36が工具保持レール41の保持凹部41aへ収容される。その後、ステップS18において工具昇降具77がZ軸後方に移動されて、工具ポット36が保持凹部41aに収納される。その後、ステップS19において、工具昇降具77がX軸左方に移動された後、Z軸前方に移動されて原点位置P1へ復帰される。
【0042】
以上の動作により一回の工具29の交換動作が完了する。
上段に位置する工具保持レール46の保持凹部46aに保持されている工具ポット36による工具ホルダ28及び工具29の交換動作は、工具保持レール46の中央部に形成された通路48によって工具ポット36を上下方向に案内移動することにより行われる。なお、図1,4に示す左側の通路48は手動により使用済工具29を新工具29aと交換する際に工具昇降具77を下方の交換位置に導くために利用される。
【0043】
上記実施形態の工作機械における工具交換装置によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)上記実施形態では、工作機械のフロント側に工具ホルダ28及び工具ポット36とともに工具19を収納する工具マガジン33を装着し、取付フレーム31の前側に取り付けられた工具交換アーム34と、前記工具マガジン33との間に工具移動機構35を装着した。このため、工具29を工具マガジン33から第2把持具55へ移動する距離が短くて済み、工具29を迅速に移動することができ、工具交換動作時間を短縮して、ワークの加工作業の能率を向上することができる。
【0044】
(2)上記実施形態では、工具マガジンをX軸サドルの側面に設けた構成に比べ機械幅が狭くできるため、工作機械を多数配置したライン構成ではライン全体の長さが短くて済む。
【0045】
(3)上記実施形態では、工具昇降具77をX,Y,Z軸の3軸方向に数値制御移動可能に装着したので、工具マガジン33を構成する工具保持レール41,46を複数段にすることができる。このため、円環状の工具マガジン又はシャトルアームを用いた従来の工具交換装置と比較して、工具保持レールを多段にして多数の工具を効率良く収容することができる。
【0046】
(4)上記実施形態では、工具交換アーム34の一端部に対し第1及び第2把持具54,55を並列に装着した。又、図7に示すように工具交換アーム34が上方に旋回された状態において、第1及び第2把持具54,55の把持凹部54a,55aが上方を指向し、かつ第1及び第2把持具54,55の高さを前記工具保持レール41の保持凹部41aの高さと同じにした。このため工具保持レール41の保持凹部41aに保持されている新工具29aを第2把持具55へ移動する動作と、図9に示すように第1把持具54に把持されている使用済工具の工具保持レール41の保持凹部41aへの移動を迅速に行うことができる。
【0047】
(5)上記実施形態では、上述の(4)の構成をとっているので、使用済工具29の第1把持具54への受渡動作と、第2把持具55の新工具29の受取動作とを短時間で行うことができる。
【0048】
(6)上記実施形態では、工具マガジン33を上下二段の工具保持レール41,46により構成し、下段の工具保持レール41に旋回許容空間49を設けた。このため、工具保持レール41,46のY軸方向の装着位置を下方に設定して、工具マガジン33のコンパクト化を図ることができる。又、保持凹部41a,46aと工具受取位置P2、工具受渡位置P3の距離を短縮して、工具交換動作を迅速に行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図11に示すように、工具交換アーム34の第1及び第2把持具54,55を交換アーム本体53に対しX軸方向に位置切り替えする位置切替機構85を設けても良い。この位置切替機構85は交換アーム本体53に対しX軸案内機構86を介してXサドル87を装着し、このXサドル87に前記第1及び第2把持具54,55を取り付けている。Xサドル87はシリンダ88によってX軸方向に移動される。
【0050】
上記の別例においては、工具受取位置P2及び工具受渡位置P3における第1及び第2把持具54,55の位置切替えができる。このため、図11に実線で示す位置から鎖線で示すように第1及び第2把持具54,55の位置を切り換えることにより、工具受渡位置P3において、第2把持具55に新工具29aを装着することができ、新工具29aの第2把持具55への装着を迅速に行うことができる。又、主軸ヘッド27側に交換アーム本体53を旋回させた状態で、使用済工具29と新工具29aの交換動作をより迅速に行うこともできる。
【0051】
○ 図示しないが工具交換アーム34に対し第1及び第2把持具54,55の反対側に工具収納部のマガジンと加工部との仕切りカバーを装着してもよい
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明は工具の交換を迅速に行うことができるとともに、工具の収容個数を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明を具体化した工作機械の工具交換装置の正面図。
【図2】 図1の工作機械の左側面図。
【図3】 工具交換装置の拡大平面図。
【図4】 工具マガジンの拡大斜視図。
【図5】 工具交換装置の拡大左側面図。
【図6】 工具移動機構の拡大斜視図。
【図7】 工具交換動作を説明するための略体正面図。
【図8】 工具交換動作を説明するための略体正面図。
【図9】 工具交換動作を説明するための略体正面図。
【図10】 工具の交換動作を示すフローチャート。
【図11】 この発明の別例を示す部分正面図。
【符号の説明】
11…ベッド、19,29…工具、27…主軸ヘッド、28…工具ホルダ、28a,36a…環状溝、31…取付フレーム、33…工具マガジン、34…工具交換アーム、35…工具移動機構、36…工具ポット、41,46…工具保持レール、41a,46a…保持凹部、48…通路、49…旋回許容空間、52…旋回軸、61…工具移動用X軸サドル、66…工具移動用Z軸サドル、71…工具移動用Y軸サドル、77…工具昇降具、78,79,81,82…案内部材。

Claims (6)

  1. ベッドの上面に対してX軸水平方向とY軸上下方向に直交するZ軸水平方向の往復動可能にした主軸ヘッドに工具チャックを介して装着された工具によりワークの加工を行うようにした工作機械において、
    前記ベッドに装着した取付フレームに対し上下複数の工具保持レールからなる工具マガジンを前記主軸ヘッドの上方かつ工具が前記主軸ヘッドと平行に位置するように装着し、前記各段の工具保持レールをX軸水平方向に配設し、前記取付フレームに対し前記Z軸水平方向と平行な旋回軸線を中心に旋回される工具交換アームを装着し、該工具交換アームの先端部に工具ホルダを把持する一対の工具把持具を設け、前記各段の工具保持レールのうち最下段に位置する工具保持レールの中間部に、前記工具交換アームの旋回動作時にその旋回を許容するための旋回許容空間を設け、前記工具マガジンと工具交換アームとの間に工具のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動を行う工具移動機構を装設し、前記各工具保持レールのうち最下段以外の工具保持レールの中間部に対し、前記工具移動機構により工具を把持する工具ポットがY軸上下方向に移動される際に、該工具ポットをY軸上下方向に案内する通路を設けた工作機械における工具交換装置。
  2. 請求項1において、前記工具交換アームは、その基端部において、Z軸方向行な旋回軸の周りで旋回可能に支持され、該工具交換アームが上方に指向する位置に保持された状態で、該工具交換アームの先端部には前記工具把持具がX軸方向に所定の間隔をおいて上向きに並設されている工作機械における工具交換装置。
  3. 請求項1又は2において、前記工具移動機構は、前記取付フレームに対しX軸方向の往復動可能に装着された工具移動用X軸サドルと、この工具移動用X軸サドルに対しZ軸方向の往復動可能に装着された工具移動用Z軸サドルと、この工具移動用Z軸サドルに対しY軸方向の上下動可能に装着された工具移動用Y軸サドルと、この工具移動用Y軸サドルに取り付けられ、かつ前記工具を保持する保持凹部に把持されている工具をY軸方向に昇降可能な工具昇降具とにより構成されている工作機械における工具交換装置。
  4. 請求項3において、前記工具移動用Z軸サドルは、工具昇降具によりY軸上方に持ち上げられた工具を上方に案内移動して、該工具を所定位置に保持する左右一対の案内部材を備えている工作機械における工具交換装置。
  5. 請求項3又は4において、前記工具交換アームの工具把持具が前記旋回許容空間に移動された状態で、前記工具把持具の高さは工具保持レールの保持凹部の高さと同じに設定されている工作機械における工具交換装置。
  6. 請求項2〜5のいずれか一項において、前記工具交換アームの一対の工具把持具は、該工具交換アームが上方又は下方に旋回された状態で、X軸方向の位置切り換え可能に配設されている工作機械における工具交換装置。
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