JP4047029B2 - 4,4’−ジメチルビフェニルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はポリエステルや液晶ポリマーなどの原料前駆体として有用な4,4'−ジメチルビフェニルを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
4,4'−ジメチルビフェニルは、ポリエステルや液晶ポリマーなどの原料として有用な4,4'−ビフェニルジカルボン酸の合成における中間体である。4,4'−ジメチルビフェニルを製造するにあたって、塩化アルミニウム存在下で、ビフェニルをオレフィンやハロゲン化アルキルと反応させる方法(特開昭49−227529号公報)が知られている。しかし、上記方法では、反応転化率、4,4'−位に置換されたジメチルビフェニルの比率が低く、より高い方法が望まれている。
【0003】
一方、固体酸触媒を用いた研究も数多く報告されている。例えば、固体超強酸またはへテロポリ酸を含む固体酸触媒の存在下におけるポリメチルベンゼンまたはポリメチルナフタレンによるトランスアルキル化反応(特開平5−294853号公報)、あるいはフッ素処理したシリカアルミナまたはゼオライト存在下におけるポリメチルベンゼンまたはポリメチルナフタレンによるトランスアルキル化反応(特開平6−87768号公報)、有機シラン化合物を含む溶液で処理を行ったゼオライトの存在下におけるアルキル化剤との反応(特開平7−196543号公報)も知られている、しかしながら、これらの方法についても、4,4′−、4−置換体の選択率は低く、充分満足できるものではない。また、いずれもポリメチルベンゼン等によるトランスアルキル化により製造する方法であり、より安価なメチル化剤により、直接ビフェニルのメチル化を実施する方法が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は4,4'−ジメチルビフェニルの選択率が優れた4,4'−ジメチルビフェニル製造方法を提供することである。
【0005】
【発明が課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記方法を確立するため、鋭意研究を行なった結果、驚くべきことに、反応圧力を変化させ、メチル化剤の亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることにより、4,4'−ジメチルビフェニルの選択率を飛躍的に向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、ビフェニル及び4-メチルビフェニルから選択される少なくとも1種のビフェニル類を原料とし、細孔径の長径が5.8〜6.8Åの範囲である固体酸触媒の存在下、メタノール及びジメチルエーテルから選択される少なくとも1種のメチル化剤を反応させて4,4'−ジメチルビフェニルを製造するにあたり、反応温度が300〜500℃の範囲で、それに対応する反応圧力が5MPa〜50MPaの範囲となり、メチル化剤が亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることを特徴とする4,4'−ジメチルビフェニルの製造方法である。
【0007】
本発明で原料として使用するビフェニル類は、ビフェニル、4-メチルビフェニル又は両者の混合物である。これらは、新鮮な原料であっても、反応後の生成物から分離される回収未反応ビフェニルや、4-メチルビフェニルであってもよい。なお、ビフェニル類には多少の不純物を含むことができるが、3-メチルビフェニル等を多量に含むと4,4'−ジメチルビフェニルの選択率が低下する。
【0008】
本発明でメチル化剤として使用する化合物は、メタノール、ジメチルエーテル又はこれらの混合物であるが、メタノールが好ましい。このメチル化剤についても、新鮮な原料の他、反応後の生成物から分離される回収未反応メチル化剤が使用できる。メチル化剤と原料ビフェニル類の使用量は特に限定されるものではなく、原料ビフェニル類1モルに対してメチル化剤0.8モル以上、好ましくは1.0〜20モル添加することがよい。
【0009】
本発明で使用する固体酸触媒の種類としては、シリカアルミナ、ゼオライト、複合金属酸化物、固体リン酸、ヘテロポリ酸、イオン交換樹脂等の通常固体酸触媒として知られている触媒であるが、細孔径の長径が5.8〜6.8Åの範囲にある固体酸触媒である。この径が5.8Åより小さくなると、反応転化率が低下し、4,4'−ジメチルビフェニルの選択性も低下する。また、6.8Åより大きくなると、4,4'−ジメチルビフェニルの選択性が著しく低下する。なお、細孔径の長径とは、細孔形状が楕円形状の場合、その長径をいうが、真円の場合は、その直径をいう。
【0010】
固体酸触媒としては、細孔が制御されたゼオラオイト触媒が好ましく、12環構造又は10環構造のゼオラオイト触媒が挙げられる。このようなゼオライトを例示すれば、次のようなものがある。
まず、12環構造ゼオライトについて、構造:代表的なゼオライト:その細孔径(Å)の順に示す。AFS:MAPSO-46:6.3、AFY:CoAPO-50:6.1、BPH:Beryllophosphate-H:6.2 x 6.7、CAN:Cancrinite:5.9、MTW:ZSM-12:5.5 x 5.9、OSI:UiO-6:5.2 x 6.0、VET:VPI-8:5.9。次に、10環構造ゼオライトについて、同様に示す。AEL:AlPO4-11:3.9 x 6.3、NES:NU-87:4.7 x 6.0、STF:SSZ-35:5.4 x 6.0、STI:Stilbite:4.9 x 6.1。
【0011】
本発明で用いられる反応温度は280℃〜500℃、好ましくは350〜450℃の範囲である。この際の反応圧力は、5MPa〜50MPaの範囲、好ましくは6MPa〜40MPaの範囲である。ここで、メタノールの臨界温度は240℃、臨界圧力は8.0MPa、ジメチルエーテルの臨界温度は127℃、臨界圧力は5.3MPaであることが知られている。本発明でいう亜臨界状態とは、メチル化剤の臨界温度以上であり、5MPa〜50MPaの範囲の圧力を満足する条件をいう。
【0012】
本発明の製造方法は、連続的、半連続的、回分的に実施することができる。また、本発明では無溶剤で十分な効果を発現することができるが、必要に応じて溶剤を使用することができる。溶剤は、脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素いずれも使用することができる。しかし、反応速度の低下を抑制するためには、溶剤を実質的に使用しないか、使用してもメチル化剤の1重量倍以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは0.2重量倍以下とすることがよい。また、添加する場合、その臨界温度が反応温度を下回るものであることが好ましい。なお、ポリメチルベンゼン類等はメチル化剤としては計算されず、溶媒としては計算される。
【0013】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した固体酸触媒は次のとおりである。シリカアルミナは、日揮化学製N632Lを使用した。SAPO−11、モルデナイト及びZSM-5は公知の方法により合成したものを使用した。
【0014】
実施例1
容量12mlのステンレス製反応管に、ビフェニル0.58gとメタノール1.2g、並びに固体酸触媒0.11gを仕込み、反応を行なった。固体酸触媒としては、シリカアルミノフォスフェートSAPO−11を使用した。SAPO−11の細孔径の長径は6.3Åである。反応は、400℃に保った塩浴槽中で1時間行なった。反応混合物の各成分組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表1に示す。
【0015】
実施例2
ビフェニル0.29gとメタノール0.6g、並びにSAPO−11触媒0.006gを仕込み、350℃に保った塩浴槽中で実施例1と同様に反応を行なった。
【0016】
実施例3
ビフェニル0.87gとメタノール1.8g、並びにSAPO−11触媒0.17gを仕込み、450℃に保った塩浴槽中で実施例1と同様に反応を行なった。
【0017】
比較例1
ビフェニル0.87gとメタノール1.8g、並びにSAPO−11触媒0.17gを仕込み、400℃に保った塩浴槽中で実施例1と同様に反応を行なった。
【0018】
比較例2
ビフェニル0.065gとメタノール0.13g、並びにSAPO−11触媒0.013gを仕込み、280℃に保った塩浴槽中で実施例1と同様に反応を行なった。
【0019】
比較例3〜5
ビフェニル1.3gとメタノール2.8g、並びに表1に示す固体酸触媒0.26gを仕込み、400℃に保った塩浴槽中で実施例1と同様に反応を行なった。触媒として、比較例3はシリカアルミナ(日揮化学製N632L−細孔構造を有しない)を、比較例4はモルデナイト(細孔径の長径7.0Å)を、比較例5はMFI(ZSM−5、細孔径の長径5.6Å)を用いた。
実施例1〜3及び比較例1〜5の反応条件、反応転化率及び反応生成物中の4−メチルビフェニル、4,4'−ジメチルビフェニルの収率を表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004047029
【0021】
本発明は、高メタノール密度領域の反応であり、4,4'−ジメチルビフェニルの選択率を向上させる最適な細孔径および最適な反応圧力が存在し、従来の手法よりも良好な選択性を示すことがわかる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、固体酸触媒を用いて4,4'−ジメチルビフェニルを製造するにあたり、メチル化剤によるビフェニルの直接メチル化を選択性よく、効率的に製造することができる。

Claims (1)

  1. ビフェニル及び4-メチルビフェニルから選択される少なくとも1種のビフェニル類を原料とし、細孔径の長径が5.8〜6.8Åの範囲である固体酸触媒の存在下、メタノール及びジメチルエーテルから選択される少なくとも1種のメチル化剤を反応させて4,4'−ジメチルビフェニルを製造するにあたり、反応温度が300〜500℃の範囲で、それに対応する反応圧力が5〜50MPaの範囲となり、メチル化剤が亜臨界又は超臨界状態となる条件下で反応させることを特徴とする4,4'−ジメチルビフェニルの製造方法。
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