JP4046321B2 - 安全ブーツの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブーツの爪先胛部分を硬質素材の先芯(トウキャップ)で補強した安全ブーツの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば長靴等のブーツの爪先部に硬質素材の先芯を設けて、重量物等が足の上に落下しても爪先が保護されるような安全ブーツが知られており、このような安全ブーツを射出成形で製造する際に先芯を定位置に保持する技術として、例えば特公昭58−32962号や、特開平2−109502号のような技術が知られており、前者の特公昭58−32962号では、ラストモールドの爪先部に空隙形成用のプロテクター押え柱部を設け、このプロテクター押え柱部の上から硬質素材であるプロテクター(先芯)を木槌等で叩いて嵌め込んだ後、このラストモールドを使用して画成したキャビティ内に射出成形材料を射出するようにしている。
【0003】
また、後者の特開平2−109502号では、ラストモールドの爪先部に形成される穴に、出没自在な杆を内装して圧縮バネにより外側に向けて付勢する一方、防災片(先芯)に透孔を設け、この透孔に杆を挿通させて防災片を位置決めした後、このラストモールドを使用して画成したキャビティ内に射出成形材料を射出するようにしている。
更に、先芯が鋼材等の金属製である場合、ラストモールドの突起に磁石を用い、磁力の作用によって先芯を位置決めするような技術も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前者の特公昭58−32962号のように、プロテクター(先芯)を木槌等で叩いて嵌め込む方法は、ラストモールドの形状に合わせてプロテクターの寸法を正確に形成する必要があるばかりでなく、位置決めする作業が煩雑になるという問題がある。
また、後者の特開平2−109502号のように、ラストモールド内に圧縮バネで付勢される杆を内装するような技術は、設備が複雑化したり、設備費がかかったりするような問題がある。
更に、磁石を用いて先芯を位置決めするような技術は、先芯が磁性を有さない素材の場合は適用出来ないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、先芯をラストモールドの爪先部に保持しておくにあたり、極めて簡単な方法でしかも設備費等もかからず、更に、先芯が磁性を有さない場合でも適切に保持できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、爪先部がキャップ状の先芯によって保護される安全ブーツを製造する方法において、爪先部の周囲に複数の空隙形成用突起を設けたラストモールドの爪先部に、先芯を装着した後、この先芯装着のラストモールドに、靴下形状の裏布を吊り込むことにより裏布で先芯を位置決め保持するとともに、先芯とラストモールド間に第1の空隙を形成し、次に先芯装着のラストモールドと外側モールドを型組みすることによりモールド間に第2の空隙を形成し、その後、射出成形材料を第2の空隙に射出することにより、第2の空隙を充填するとともに、ラストモールドと先芯の縁部との間をまたがる裏布を透過して第1の空隙も充填して前記先芯が爪先部に埋め込まれたブーツを製造するようにした。
【0007】
このように、ラストモールドの爪先部に、予め先芯を装着した後、靴下形状の裏布を吊り込んで先芯を包み込むように保持すれば、格別の位置決め機構等を設けなくても先芯を所望の位置に設定でき、簡便である。
ここで、先芯は、硬質素材であれば金属製でも樹脂製でもその他の素材でも良い。
【0008】
そして、このような製造方法で製造したブーツは、先芯の内側が射出成形材料によって覆われ、また爪先部の内側には、ラストモールドに設けた突起の脱型跡が射出成形材料に形成された形態となる。
【0009】
ここで、前記先芯を繊維強化樹脂製にすれば、軽量化が図られて好適であり、この際、繊維強化樹脂として、例えばガラス繊維等に熱可塑性ポリウレタンを含浸させたような素材は、機械的強度や成形性や軽量化等の点から好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る安全ブーツの縦断面図、図2は先芯の斜視図、図3は安全ブーツの製造方法の説明図、図4はモールドを型組みした状態の説明図である。
【0011】
本発明に係る安全ブーツの製造方法は、爪先部に硬質素材の先芯(トウキャップ)が設けられるブーツを射出成形するにあたり、ラストモールドの爪先部に簡易な方法で先芯を保持出来るようにされ、ラストモールドに裏布を吊りこむ前に先芯を装着することを特徴としている。
【0012】
このような先芯2は、ブーツなどの爪先胛部を部分的に補強して、重量物等が足に落下した場合でも爪先を保護できるようにされ、例えば、図2に示すように、爪先の上部を覆うことが出来るような形態にされるとともに、作業区分等に応じて耐圧迫性や耐衝撃性などの規定値が定められており、通常、金属製または繊維強化樹脂製等の機械的強度に優れた素材から構成されている。
【0013】
本発明に係る安全ブーツ1は、図1に示すように、上記のような先芯2が射出成形材料3の爪先内部に埋め込まれるとともに、ブーツ1内には、感触性や保温性等を良くするための裏布4が一体化されている。
【0014】
ここで、先芯2の繊維強化樹脂としては、例えばガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、金属繊維等の強化繊維にポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリウレタン等のマトリックスレジンを含浸させたような素材が使用可能であり、特にガラス繊維に熱可塑性ポリウレタンを含浸させた素材は、軽量で且つ機械的強度にも優れて好適である。
また、射出成形材料3としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、EVA、オレフィン系コポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー等の常用されるエラストマーや熱可塑性ゴム等が使用できる。
また、裏布4としては、繊維材料または繊維以外の材料を用いた織布、編布、不織布等が使用可能であり、伸び性や引張り強度や引裂き強さ等に優れた素材が好ましい。
【0015】
次に、本安全ブーツ1の製造方法について図3、図4に基づき説明する。
本安全ブーツ1は、図3に示すようなモールド5を使用して射出成形するようにされ、このモールド5は、足型形状をしたラストモールド6と、左右一対のサイドモールド7、ボトムモールド8等の外型モールドを備えるとともに、前記ラストモールド6の爪先部には、複数の空隙形成用突起6tが設けられている。
【0016】
このようなモールド5において、まず、図3(a)(b)に示すように、ラストモールド6の爪先部の先端から先芯2を被せ、空隙形成用突起6t上に装着する。すると、空隙形成用突起6tによって先芯2とラストモールド6との間には、図4に示すような第1空隙eが形成される。次いで、図3(b)(c)に示すように、その上から靴下形状の裏布4をラストモールド6に吊り込むことにより、先芯2を包み込むようにしてラストモールド6の爪先部の所定位置に位置決め保持する。
【0017】
次いで、図4に示すように、このラストモールド6とサイドモールド7とボトムモールド8を型組みして第2空隙Cを画成する。
すると、この第2空隙Cは、先芯2の縁部とラストモールド6との間をまたがる裏布4を通して前記第1空隙eと連通した状態になる。
【0018】
そしてこの第2空隙C内に射出成形材料3を射出すると、射出成形材料3は第2空隙C内と第1空隙e内に充填され、図1に示すように、先芯2が射出成形材料3内の所定位置に埋め込まれた状態にされる。また、これと同時に、先芯2部分の裏布4も射出成形材料3に一体化された状態になる。
【0019】
以上のような製造方法において、裏布4を吊り込む前に先芯2を装着するという極めて簡単な操作で先芯2を所定の位置に保持するようにしたため、先芯2を保持するための格別な設備構成等が不要である。
【0020】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えばブーツ1の形状や先芯2の形状等は例示である。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る安全ブーツの製造方法は、爪先部に空隙形成用突起が形成されるラストモールドの爪先部に先芯を装着し、このラストモールドの上から靴下状の裏布を嵌装して先芯を包み込むように保持して射出成形するようにしたため、格別の位置決め機構等を設けなくても先芯を所望の位置に設定でき、簡便である。
また、ラストモールドに先芯を装着してから裏布を吊り込むので、突起に裏布が引っ掛かり、破損したり作業性を悪化させる心配もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る安全ブーツの縦断面図
【図2】先芯の斜視図
【図3】安全ブーツの製造方法の説明図
【図4】モールドを型閉めした状態の説明図
【符号の説明】
1…安全ブーツ、2…先芯、3…射出成形材料、4…裏布、6…ラストモールド、6t…空隙形成用突起、e…第1空隙、C…第2空隙。

Claims (1)

  1. 爪先部がキャップ状の先芯によって保護される安全ブーツを製造する方法であって、爪先部の周囲に複数の空隙形成用突起を設けたラストモールドの爪先部に、先芯を装着した後、この先芯装着のラストモールドに、靴下形状の裏布を吊り込むことにより裏布で先芯を位置決め保持するとともに、先芯とラストモールド間に第1の空隙を形成し、次に先芯装着のラストモールドと外側モールドを型組みすることによりモールド間に第2の空隙を形成し、その後、射出成形材料を第2の空隙に射出することにより、第2の空隙を充填するとともに、ラストモールドと先芯の縁部との間をまたがる裏布を透過して第1の空隙も充填して前記先芯が爪先部に埋め込まれたブーツを製造することを特徴とする安全ブーツの製造方法。
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