JP4045880B2 - メタクリル樹脂材の再生方法および再生メタクリル樹脂材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成型品の成型過程で生じるトリミング端材やスプルー、ランナー、あるいは粉砕した不良品等、メタクリル樹脂製の端材を再生する方法および再生メタクリル樹脂材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル樹脂材は、透明なプラスチックとして知られており、その透明性を生かして看板、ディスプレイ、建築材料、電気製品の部品等に広く利用されているものである。例えば、自動販売機の構成部品である電照板もメタクリル樹脂材によって成型されたものである。
【0003】
ところで、近年においては環境問題意識が高まっており、特にプラスチック廃棄物については、埋め立て処分場の不足からも、プラスチック材としての再利用が強く求められている。こうした再利用の要求は、上述したメタクリル樹脂材に関しても例外ではない。例えば、樹脂成型品の成型過程で生じるトリミング端材やスプルー、ランナー、あるいは粉砕した不良品等々、今まで廃棄物として処理されていたこれらメタクリル樹脂製の端材を再生メタクリル樹脂材として再利用することが望まれている。
【0004】
しかしながら、プラスチックの再生材は、バージン材に比して機械的強度等の物性が落ちるのが一般的である。特に、上述したメタクリル樹脂材は、元々プラスチック材の中でも衝撃に弱いという性質を有しており、この衝撃に弱いということが再生メタクリル樹脂材の活用範囲を著しく狭める要因となっている。
【0005】
このため従来、メタクリル樹脂製の端材を再生メタクリル樹脂材として再生する場合、改質剤としてゴム系添加剤を混合し、再生メタクリル樹脂材の機械的強度を向上させる方法が知られていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようにして得られた再生メタクリル樹脂材は、ゴム系添加剤を用いるために製造コストが増大することになり、バージン材に比してコストデメリットが大きいものとなる。このため、再生メタクリル樹脂材を使用する意味が薄れ、今度はこのコストデメリットが活用範囲を狭める要因となる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストの増大を抑え、かつ機械的強度を向上させることのできるメタクリル樹脂材の再生方法および再生メタクリル樹脂材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係るメタクリル樹脂材の再生方法は、樹脂成型品の成型過程で生じるメタクリル樹脂製の端材を再生する方法であって、前記端材を塊状に粉砕したものと、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材を塊状に粉砕したものとを溶融混練して成形したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るメタクリル樹脂材の再生方法は、上記請求項1において、前記スクラップ材として、回収した自動販売機に用いられていた電照板を用いることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る再生メタクリル樹脂材は、樹脂成型品の成型過程で生じるメタクリル樹脂製の端材を再生して成る再生メタクリル樹脂材において、前記端材を塊状に粉砕したものと、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材を塊状に粉砕したものとを溶融混練して構成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る再生メタクリル樹脂材は、上記請求項3において、前記スクラップ材が、回収した自動販売機に用いられていた電照板であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るメタクリル樹脂材の再生方法および再生メタクリル樹脂材の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態であるメタクリル樹脂材の再生方法を示したものである。ここで例示する再生方法は、自動販売機の電照板を成型する過程で生じた短冊状のトリミング端材10を再生メタクリル樹脂材として再利用するもので、再生する際に添加するスクラップ材として、市場から回収した自動販売機20の電照板21を用いるようにしている。
【0014】
自動販売機20の電照板21は、メタクリル樹脂によって平板状に成型した後、その表面に、宣伝効果となる印刷、例えばシルク印刷を施して構成したものである。
【0015】
電照板の成型過程で生じるトリミング端材10は、このメタクリル樹脂そのものであり、これをそのまま再生した場合、衝撃に弱く、活用範囲が著しく狭いことは先に説明したとおりである。
【0016】
一方、電照板の印刷に用いるインクは、色材となる顔料の他に、ビヒクルを含むものである。このビヒクルは、本来、顔料を被印刷物に固着するための展色剤として機能するものである。しかしながら、このビヒクルは、トリミング端材10を構成するメタクリル樹脂に添加されると、メタクリル樹脂の分子間に分散してグラフト共重合体を形成するかのように物性を変化させ、後述の実施例で示すように再生メタクリル樹脂材の衝撃強さを向上させるように機能することになる。スクラップ材として添加する電照板21としては、メタクリル樹脂用のインクによる印刷を施したもの、より詳しくは、メタクリル樹脂と相溶性があり、かつメタクリル樹脂の分子量15000〜30000より一桁小さい分子量のビヒクルを適用したインクによる印刷を施したものを用いることが好ましい。具体的には、分子量が1000〜5000、より好ましくは1000〜2000であるビヒクルを適用したインクによる印刷を施した電照板21を用いることがよい。
【0017】
ここで、市場から回収した自動販売機20の電照板21もメタクリル樹脂を主成分として構成されたものであるため、これをスクラップ材としてトリミング端材10に添加した場合にも、再生メタクリル樹脂材の物性に大きな変化を与えることはなく、添加による悪影響を心配する必要がない。
【0018】
メタクリル樹脂の分子量より一桁小さい分子量のビヒクルを適用することで、トリミング端材10を構成するメタクリル樹脂の分子間に確実に分散することができ、これにより、再生メタクリル樹脂の物性を均一に変化させて衝撃強さを向上させることができるようになる。また、上記ビヒクルを適用することで、トリミング端材10を可塑化させることができるために加工し易くなる結果、良好な成型材料を得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
<実施例1>
まず、メタクリル樹脂よりなる電照板の成型過程で発生する短冊状のトリミング端材(10)を、樹脂粉砕機で2〜5mmの大きさの塊状に粉砕した。次に、市場から回収した印刷済みの電照板(21)を、同じく樹脂粉砕機で2〜5mmの大きさの塊状に粉砕した。そして、これらを等量ずつ混合して設定温度が約200℃であり、直径に対する長さの比が30以上である単軸押出成形機(以下、L/Dが30以上の単軸押出成形機ともいう)(30)にて溶融してペレット状に造粒し、本発明の再生メタクリル樹脂材(A)を得た。
【0021】
<比較例1>
メタクリル樹脂よりなる電照板の成型過程で発生する短冊状のトリミング端材(10)を、樹脂粉砕機で2〜5mmの大きさの塊状に粉砕した。そして、これを設定温度が約200℃であり、L/Dが30以上の単軸押出成形機(30)にて溶融してペレット状に造粒し、比較用の再生メタクリル樹脂材(a)を得た。
【0022】
<参考例1>
メタクリル樹脂よりなり、数年間使用されて市場から回収した電照板(21)を、樹脂粉砕機で2〜5mmの大きさの塊状に粉砕した。そして、これを設定温度が約200℃であり、L/Dが30以上の単軸押出成形機(30)にて溶融してペレット状に造粒し、参考用の再生メタクリル樹脂材(b)を得た。
【0023】
<試験項目>
上記の再生メタクリル樹脂材(A)、再生メタクリル樹脂材(a)および再生メタクリル樹脂材(b)のそれぞれよりJISに決められた物性試験用の試験片を成型し、室温21〜23℃、スパン間隔115mm、チャックスピード10mm/minにて、引張強さ(kgf/cm2)、伸び(%)を測定するとともに、アイゾット衝撃強さ(kg・cm/cm)のそれぞれを10回ずつ測定し、図2に示すような結果を得た。なお、図2において、「X」は平均値を示し、「R」は最大値と最小値との差を示している。また各試験項目には、比較例1の再生メタクリル樹脂材(a)の平均値を「100」とした場合における実施例1および参考例1のそれぞれの平均値について相対的な比率(物性維持率)の数値が示してある。そして、この物性維持率を試験項目毎に図3に示す。
【0024】
これらの結果からも明らかなように、本発明の実施例1である再生メタクリル樹脂材(A)は、引張強さについては、比較例1の再生メタクリル樹脂材(a)に僅かに劣るものの、その他の試験項目では比較例1の再生メタクリル樹脂材(a)より優れている。特に、衝撃強さについては比較例1の再生メタクリル樹脂材(a)に比べて大きく向上していることが理解される。
【0025】
以上のように、本発明の再生メタクリル樹脂材によれば、市場から回収された自動販売機20の電照板21に含まれるビヒクルが、従来使用されてきたゴム系添加剤の代替として、トリミング端材10を構成するメタクリル樹脂材の物性を変化させ、十分に大きい衝撃強さを得ることができる。これにより、再生メタクリル樹脂材を汎用プラスチック材として活用することができるようになる。例えば、図1に示すように、射出成形機50を通じて再生メタクリル樹脂材を耐熱性や耐薬品性、耐加水分解性が必要とされる自動販売機の蒸発皿40(庫内の水滴を受け、その水滴を冷却ユニットの冷媒配管冷却に利用し、かつ同時に溜まった水滴の蒸発を促進する受け皿)等の付加価値の高い部品や、その他様々な分野の製品への用途が期待され、再生メタクリル樹脂材の活用範囲を大きく拡大することができる。
【0026】
また、ビヒクルは市場から回収された自動販売機20の電照板21に印刷として施されたインク成分であるので、メタクリル樹脂の衝撃強さを安価に向上させることができるようになる、しかも、回収した自動販売機20の電照板21を再利用するので、廃棄物を削減することが可能になり、近年の環境問題にも十分対応することが可能となる。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、添加するスクラップ材として、市場から回収した自動販売機20の電照板21を用いるようにしているが、必ずしもこれに限らず、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材であれば、その他のものを適用してももちろん構わない。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、端材に、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材を添加するようにしているため、印刷インク成分であるビヒクルによって再生メタクリル樹脂材の物性が変化し、衝撃強さを向上させることができる。しかも、ビヒクルはスクラップ材に印刷として施されたインクの成分であるため、再生メタクリル樹脂材の製造コストが増大する事態を抑えることが可能になる。これらの結果、再生メタクリル樹脂材の活用範囲を拡大することができ、例えば、耐熱性や耐薬品性、耐加水分解性が必要とされる自動販売機の蒸発皿等、付加価値の高い部品や、その他様々な分野の製品への用途も可能となる。
【0029】
また、請求項2に記載の発明によれば、スクラップ材として、回収した自動販売機に用いられていた電照板を用いるようにしているため、廃棄物を削減することが可能になり、近年の環境問題にも十分対応することが可能となる。
【0030】
また、請求項3に記載の発明によれば、端材に、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材を添加して再生メタクリル樹脂材を構成しているため、印刷インク成分であるビヒクルによって再生メタクリル樹脂材の物性が変化し、衝撃強さを向上させることができる。しかも、ビヒクルはスクラップ材に印刷として施されたインクの成分であるため、再生メタクリル樹脂材の製造コストが増大する事態を抑えることが可能になる。これらの結果、再生メタクリル樹脂材の活用範囲を拡大することができ、例えば、耐熱性や耐薬品性、耐加水分解性が必要とされる自動販売機の蒸発皿等、付加価値の高い部品や、その他様々な分野の製品への用途も可能となる。
【0031】
また、請求項4に記載の発明によれば、スクラップ材が、回収した自動販売機に用いられていた電照板であるため、廃棄物を削減することが可能になり、近年の環境問題にも十分対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態であるメタクリル樹脂材の再生方法を示した図である。
【図2】本発明の実施例における測定結果を示す図表である。
【図3】図2に示した表中の物性維持率を試験項目毎に示したグラフである。
【符号の説明】
10 トリミング端材
20 自動販売機
21 電照板
30 押出成形機
40 蒸発皿
50 射出成形機
Claims (4)
- 樹脂成型品の成型過程で生じるメタクリル樹脂製の端材を再生する方法であって、
前記端材を塊状に粉砕したものと、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材を塊状に粉砕したものとを溶融混練して成形したことを特徴とするメタクリル樹脂材の再生方法。 - 前記スクラップ材として、回収した自動販売機に用いられていた電照板を用いることを特徴とする請求項1に記載のメタクリル樹脂材の再生方法。
- 樹脂成型品の成型過程で生じるメタクリル樹脂製の端材を再生して成る再生メタクリル樹脂材において、
前記端材を塊状に粉砕したものと、印刷を施したメタクリル樹脂から成るスクラップ材を塊状に粉砕したものとを溶融混練して構成したことを特徴とする再生メタクリル樹脂材。 - 前記スクラップ材は、回収した自動販売機に用いられていた電照板であることを特徴とする請求項3に記載の再生メタクリル樹脂材。
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