JP4045797B2 - ポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミド樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、非強化ポリアミドと同等の表面外観、靭性を有し、寸法安定性や強度、剛性に優れるポリアミド樹脂組成物を製造するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン6やナイロン66等のポリアミドの耐熱性や寸法安定性を向上させるためにガラス繊維などの繊維状強化材や炭酸カルシウム、タルクなどの鉱物系強化材を配合する技術は広く知られている。しかし、これらの強化材を配合したポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂中に分散している強化材が成形品表面に浮き出し光線が乱反射されるため、通常、成形品の表面外観が悪化することは避けられない。また、無機物である強化材を含有するため、引張伸度などの靭性が低下することも避けられない。
【0003】
針状や板状の形態を有するアルミナやベーマイトを強化材として用いる試みも行われており、例えば特開2001−261976号公報には、板状ベーマイトと板状アルミナのうち少なくとも一方をフィラーとして含有する樹脂組成物が開示されている。これらの技術を用いて、成形品の表面外観に影響を与えず、また、靭性の低下も極力小さくして樹脂を強化するためには、用いるフィラーのサイズを小さくすれば良いことが一般的に知られているが、樹脂に添加するベーマイトやアルミナなどのフィラーのサイズが小さくなるほど、樹脂中で均一に分散させることが困難になっていくという課題があった。さらに、外径サイズが0.5μm未満となるような微小フィラーではフィラー自身の嵩比重が小さくなり、通常のコンパウンド設備ではフィラーを供給したり配合することが困難になるなどハンドリングの面での課題も生じていた。よって、外径サイズが0.5μm未満となるようなベーマイトやアルミナによって強化されたポリアミド樹脂を製造することは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は少量の無機充填材添加量で、高い補強効果を示し、低比重で表面外観に優れ、寸法安定性や強度、剛性にも優れる強化ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド形成性モノマー、水、および水酸化アルミニウムを加圧下で重合することにより、ポリアミド樹脂中に微小サイズのアルミニウム化合物の板状結晶が分散した組成物を得ることができ、これによって上記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)(A)ポリアミド形成性モノマー、(B)水、(C)水酸化アルミニウムを加圧条件下で加熱し、ポリアミドの重合反応と板状アルミニウム化合物の水熱合成反応を同一反応容器内で進行させることを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(2)ポリアミド形成性モノマーの組成がアミン過剰であることを特徴とする前記(1)記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(3)得られるポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド樹脂に板状アルミニウム化合物が分散して存在しているポリアミド樹脂組成物であって、板状アルミニウム化合物がポリアミド樹脂組成物中に平均粒径20〜300nm、平均厚み1〜10nmで分散して存在していることを特徴とする前記(1)1または(2)記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(4)アルミニウム化合物がベーマイトであることを特徴とする前記(3)記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、(2,2,4−または2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0008】
本発明において、とくに好適なポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂である。かかるポリアミドを用いることにより、得られる成形体としても優れた耐熱性や強度を持つものを得ることができる。具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2ーメチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/610/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0009】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン610およびナイロン66/6I/6コポリマー、ならびにナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン6T/12/66コポリマー、ナイロン6T/12/6Iコポリマーなどのヘキサメチレテレフタラミド単位を有する共重合体から選ばれる少なくとも一種のポリアミドである。これらのポリアミド樹脂は成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0010】
ポリアミド樹脂の重合度は、通常の成形加工が施せる程度であれば、とくに制限がないが、ポリアミド樹脂1重量%の98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0011】
本発明のポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度にはとくに制限はないが、2×10-5〜15×10-5mol/gであることが好ましく、より好ましくは3×10-5〜12×10-5、mol/g、特に好ましくは5×10-5〜10×10-5mol/gである。
【0012】
本発明の製造方法で得られるポリアミド樹脂組成物はポリアミド樹脂中に板状アルミニウム化合物が分散していることが特徴である。ここでアルミニウム化合物とは、水酸化アルミニウムの水熱合成反応で得られる、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイトなど、アルミニウムの酸化物、水酸化物などから選ばれる化合物であればよい。なかでもベーマイトが好ましい。
【0013】
板状アルミニウム化合物の形状は、本発明の製造方法で得られるポリアミド樹脂組成物中において平均粒径20〜300nm、好ましくは50〜250nm、平均厚み1〜10nm、好ましくは1〜5nmの板状で分散して存在していることが必要である。ここで、分散して存在しているとは、板状アルミニウム化合物が凝集することなく、単独で、あるいは2次粒子径が0.5μm以下の2次粒子としてポリアミド樹脂中に分散している状態である。上記の分散状態の定量方法は、ポリアミド樹脂組成物から超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡を用いて同一視野内に100個以上の板状アルミニウム化合物が存在するような写真を撮影し、同一視野中の全ての板状アルミニウム化合物それぞれの形状を四角形に近似し、その長辺方向の長さの重量平均をもって平均粒径とし、また、その短辺方向の長さの重量平均をもって平均厚みとする。
【0014】
平均粒径が、20nm未満では寸法安定性や耐熱性の改良効果が小さくなり、逆に300nmを超えると、靭性が低下する傾向になり共に好ましくない。また平均厚みが1nm未満では、成形加工時に破損し易くなるために寸法安定性や耐熱性の改良効果が劣り、逆に10nmを超えると靭性が低下する傾向になり好ましくない。
【0015】
本発明の製造方法で得られるポリアミド樹脂組成物中に含まれる板状アルミニウム化合物の含有量には、特に制限がないが、押出成形、射出成形など塑性加工に供するためには0.01〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜15重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。ポリアミド樹脂組成物中の板状アルミニウム化合物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物を600℃の電気炉で5時間以上加熱して灰化させ、その灰分量から求めることができる。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、(A)ポリアミド形成性モノマー、(B)水、(C)水酸化アルミニウムを加圧条件下で加熱し、ポリアミドの重合反応と板状アルミニウム化合物の水熱合成反応を同一反応容器内で進行させる方法である。これによって、従来技術では達成が不可能であった、微小な板状アルミニウム化合物がポリアミド樹脂中に均一に分散した組成物が達成される。また、原料として用いる水酸化アルミニウムは水熱合成により形状やサイズが変化して、最終的なポリアミド樹脂組成物中に分散するので、原料の段階では必ずしも微細な粒径にした水酸化アルミニウムを用いる必要が無い。
【0017】
(A)ポリアミド形成性モノマーとしては、本発明のポリアミド樹脂の詳細な説明の項で述べたように、ε−カプロラクタムなどのラクタム類、あるいはヘキサメチレンジアミンなどのジアミン類とアジピン酸などのジカルボン酸類を用いることができる。ジアミンとジカルボン酸を原料とする場合は、等モル塩として用いることが好ましい。例えば、ナイロン66の原料であるヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩であるAH塩などが挙げられる。また、モノカルボン酸やモノアミンあるいは、過剰のジアミンやジカルボン酸など公知の分子量調節剤や末端封鎖剤を用いることも可能である。
【0018】
モノマー組成はアミンが過剰であることが好ましい。過剰のアミンはモノマー成分であるジアミンが過剰であっても良いし、ジアミンとジカルボン酸の量は当量にし、モノアミンが過剰であっても良い。アミンが過剰に存在することによって本発明の特徴である板状アルミニウム化合物の微細な分散状態の形成が促進される。重合開始時点でのアミンの過剰割合は、全モノマー単位に対するアミノ末端基の過剰量として、0.1〜1.0モル%であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.5モル%である。
【0019】
(B)水は、本発明の特徴である板状アルミニウム化合物の微細な分散状態を形成するために必須な成分であり、通常はイオン交換水や蒸留水が用いられる。
【0020】
(C)アルミニウム源としては、水酸化アルミニウムを使用する。
【0021】
これらの原料を、通常のポリアミドの加圧重合に用いる反応容器に投入し加圧条件下で加熱する。なお、ポリアミドの重合時に添加する公知の添加剤、リン酸系化合物に代表される重合触媒、酸化防止剤、染色性改良剤、酸化チタンやタルク等の無機添加剤などは本発明の特徴である板状アルミニウム化合物の分散構造形成を阻害しない範囲において自由に使用することができる。
【0022】
加圧重合反応を開始する段階において、仕込み原料は均一な溶液あるいはスラリーの状態であることが好ましい。このため、原料を重合反応容器とは別の調整槽で加温したり、ホモジナイザーによる攪拌や超音波照射を行った後、重合反応容器に移行させることが好んで行われる。
【0023】
仕込み組成は、(A)ポリアミド形成性モノマーを100重量部とした場合、(B)水は5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜100重量部、(C)水酸化アルミニウムは0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜15重量部である。
【0024】
反応は、仕込み組成物を加熱し、圧力が1.5〜3MPa、好ましくは1.7〜2.0MPaとなるように水蒸気を反応容器から放出することで反応容器内の圧力を一定に保つ工程を経た後、さらに系中から水蒸気を放出して圧力を徐々に低下させると共に、最高到達温度が220〜330℃、好ましくは250〜300℃となるように加熱温度を調整する。さらに、必要に応じてポリアミドの重合度を調整する目的で、220〜330℃、好ましくは250〜300℃の温度を保った状態で、常圧下で窒素などの不活性ガスを流通させるあるいは減圧にする工程を付加することも可能である。上記重合反応は単一の反応容器内で実施しても良いし、複数の反応容器を連結して実施しても良い。
【0025】
最終的にポリアミド樹脂組成物は反応容器から払い出される。この際の、ポリアミド樹脂組成物の形状は特に制限されないが、通常その後の加工の便が良いように、ストランドカッターなど公知のペレタイズ装置でペレット状にする。
【0026】
こうして得られたポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて、未反応モノマーや低重合物を熱水などの溶媒で抽出したり、溶融状態で減圧にすることによって未反応モノマーなどの低分子量物を除去するなどの後処理や、さらにポリアミドの重合度を高めるために、固相重合やあるいはフィニッシャーなどと呼ばれる溶融状態で重合度を高める装置に供することも可能である。
【0027】
本発明のポリアミド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、メタリック顔料等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化PPO、臭素化PC、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、無機充填材、他の重合体(ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBS、SEBS、各種エラストマー等)を添加することができる。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は押出成形、射出成形など通常の加工方法で容易に成形品とすることができる。得られた成形品は非強化ポリアミド樹脂と同等の表面外観および引張伸度を有し、寸法安定性や剛性に優れるため種々のエンジニアリング部品、構造材料に適している。
【0029】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
評価項目と測定方法
ポリアミド樹脂の重合度:98%濃硫酸中、25℃、濃度1重量%で測定した相対粘度として求めた。
【0031】
フィラーの成分:引張試験に用いる成形片の広角X線回折測定を行い、回折ピークパターンからフィラーを同定した。
【0032】
フィラーの灰分量:ポリアミド樹脂組成物を600℃の電気炉で5時間かけて灰化させ、その無機灰分量で定量した。
【0033】
フィラーの形状:引張試験に用いる成形片から超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡でフィラーが同一視野に100個以上存在するような写真を撮影した。その写真を画像解析装置を用い、写真に写っている全てのフィラーの、粒径および厚みの重量平均を算出した。
【0034】
フィラーの分散状態:フィラーの形状測定に用いた写真を用い、フィラーの凝集物の有無を観察し下記のとおり評価した。
【0035】
◎:凝集物は見られず、分散して存在する。
【0036】
○:直径0.5μm以下の2次粒子として分散して存在する。
【0037】
△:一部に直径0.5μmの凝集物が存在する。
【0038】
×:大部分が凝集して存在する。
引張試験:ASTM D638に準じて測定した。用いた試験片は厚さ1/8インチのASTM1号試験片である。測定は23℃で実施した。
【0039】
曲げ試験:ASTM D790に準じて測定した。用いた試験片は1/2インチ×5インチ×1/4インチの棒状試験片である。測定は23℃と90℃で実施した。
【0040】
線膨張係数:引張試験に用いる成形片の中央長手方向から3×3×10mmの大きさの試験片を切り出し、TMAを用い30℃から100℃まで2℃/minの速度で昇温させたときの寸法変化を測定した。
【0041】
表面外観::80×80×3(mm)の鏡面磨き角板を射出成形し、得られた角板の表面で蛍光灯の反射像の鮮明度を目視観察し、下記とおり評価した。
【0042】
◎:光沢があり、蛍光灯の反射像が明瞭に観察される。
【0043】
○:光沢はあるが、蛍光灯の反射像はやや不鮮明に観察される。
【0044】
△:光沢はわずかにあるが、蛍光灯の反射像は観察できない。
【0045】
×:光沢は無く、蛍光灯の反射像は全く観察できない。
実施例1
AH塩100重量部、ヘキサメチレンジアミン0.22重量部、イオン交換水70重量部、水酸化アルミニウム(試薬1級)0.4重量部を調整槽で80℃に加熱しホモジナイザーで攪拌して、均一なスラリー状にした後、オートクレーブに仕込んだ。仕込み時のアミノ末端基の過剰割合は、AH塩に対し0.5モル%であった。ヒーター温度を295℃として加熱し、缶内圧力が1.7MPaに到達したで一定圧力に保った。この状態で2時間保持した後、1時間かけて徐々に常圧に戻し、さらに絶対圧600mmHgの減圧下280℃で5分間反応させ重合を完了した。
【0046】
重合後のポリアミド樹脂組成物はオートクレーブからガット状に吐出し、ペレット化した。得られたペレットは乾燥後、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の射出成形機で成形し、評価を行った。X線回折により、2θ=14.56degと28.28degに回折ピークが出現し、ベーマイトの生成が確認された。その他の評価結果を表1に示す。
実施例2〜4
水酸化アルミニウムの添加量を変える以外は実施例1と同様に重合、成形、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例5、6
仕込み水分量を変える以外は実施例3と同様に重合、成形、評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
比較例1
ηr2.7のナイロン66樹脂97重量部に、平均粒径1.5μmの板状ベーマイトを配合し、シリンダ温度を280℃に設定した、同方向回転2軸押出機で溶融混練を行った。得られたポリアミド樹脂組成物のX線回折から、組成物中には原料として用いたベーマイトがそのまま存在していることがわかった。実施例1と同様に、成形評価を行い結果を表2に示す。無機灰分量が同一の実施例3と比較して、引張強度・伸度、曲げ弾性率が小さく、線膨張係数は大きい。さらに表面外観も劣っている。
【0048】
比較例2
原料として平均粒径2μmの板状ベーマイトを用いる以外は比較例1と同様にして溶融混練、成形、評価を行った。結果を表2に示す。やはり、無機灰分量が同一の実施例3と比較して、引張強度・伸度、弾性率が低く、線膨張係数が大きい。さらに表面外観も劣っている。
【0049】
比較例3
配合組成をナイロン66樹脂88重量部、ベーマイト12重量部とする以外は比較例1と同様に溶融混練、成形、評価を行った。結果を表2に示す。室温での弾性率は実施例3と同等になったが、同じ弾性率を得るために必要なベーマイトの配合量が多くなり、曲げ弾性率以外の機械物性および表面外観が劣っている。
【0050】
比較例4
比較例1で用いたナイロン66樹脂自身を成形、評価した。結果を表2に示す。表面外観や引張伸度には優れるが、曲げ弾性率が実施例に比較して低く、線膨張係数は大きく、寸法安定性の面で劣る。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は、非強化ポリアミド樹脂と同等の表面外観および引張伸度を有していながら、引張強度や曲げ弾性率、線膨張係数に優れていることから、表面外観や靭性が要求され、かつ強度や寸法安定性が必要な用途、例えば自動車部品、建材、家具部品、電機部品の材料として広く使用することができる。
Claims (4)
- (A)ポリアミド形成性モノマー、(B)水、(C)水酸化アルミニウムを加圧条件下で加熱し、ポリアミドの重合反応と板状アルミニウム化合物の水熱合成反応を同一反応容器内で進行させることを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- ポリアミド形成性モノマーの組成がアミン過剰であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- 得られるポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド樹脂に板状アルミニウム化合物が分散して存在しているポリアミド樹脂組成物であって、板状アルミニウム化合物がポリアミド樹脂組成物中に平均粒径20〜300nm、平均厚み1〜10nmで分散して存在していることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- アルミニウム化合物がベーマイトであることを特徴とする請求項3記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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