JP4045774B2 - カルボン酸類の製造法とその触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボン酸類の製造法とその触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルボン酸類は、各種化学製品およびその合成中間体等として重要な化合物である。
【0003】
かかるカルボン酸類は、オレフィン類を酸化することにより得ることができ、種々の酸化剤が検討されている。なかでも、過酸化水素は、安価で、取り扱いが容易で、しかも反応後には無害な水となる、クリーンで優れた酸化剤として近年注目を集めている。
【0005】
内部二置換オレフィン類を過酸化水素で酸化して、カルボン酸類を製造する方法としては、例えば(1)タングステン酸および含窒素芳香族カルボン酸を触媒とする方法(特開平8−295649号公報)、(2)ヘテロポリ酸およびセチルピリジニウムクロリドを触媒とする方法(J.Org.Chem.,53,3587(1988))、(3)タングステン酸のジカルボン酸錯体を触媒とする方法(Green Chem.,275(1999))、(4)タングステン酸類および第四級アンモニウム硫酸水素塩を触媒とする方法(特開2000−86574号公報)、(5)tert−ブタノール中でヘテロポリ酸を触媒とする方法(Chem.Lett.,857(1989))等が知られているが、上記(1)〜(3)に示したカルボン酸類の製造方法は、タングステン酸とともに、比較的高価な含窒素芳香族カルボン酸、セチルピリジニウムクロリドまたはジカルボン酸を用いなければならず、経済的、工業的な観点からは、必ずしも十分満足し得るものではなかった。また、(4)の方法は、比較的高価な第四級アンモニウム硫酸水素塩を用いており、触媒リサイクルの際に、該第四級アンモニウム硫酸水素塩を追加する必要があり、且つ、反応時間が延びるため、工業的には、満足し得るものではなかった。さらに、(5)の方法も、反応時間が長く、カルボン酸の収率も満足の行くものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者は、内部二置換オレフィン類を過酸化水素で酸化して、カルボン酸類をより工業的に有利に製造する方法を開発すべく鋭意検討したところ、入手が容易なタングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン等のタングステン化合物、ホウ化モリブデン等のモリブデン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物が、内部二置換オレフィン類と過酸化水素の反応において、良好な触媒活性を示し、該金属酸化物触媒の存在下に、内部二置換オレフィン類と過酸化水素とを反応させることにより、カルボン酸類が得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、内部二置換オレフィン類と過酸化水素とを、タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデン、炭化タングステンおよび炭化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物触媒の存在下に、水溶媒中で反応させることを特徴とするカルボン酸類の製造法およびその触媒を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず最初に、内部二置換オレフィン類と過酸化水素とを反応させる際に用いる金属酸化物触媒について説明する。
触媒としては、タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデン、炭化タングステンおよび炭化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物が用いられる。
【0015】
かかる金属化合物のなかでも、タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデンが好ましい。また、かかる金属化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
かかる金属化合物と反応せしめる過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いが容易という点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水を用いる場合は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液を用いる場合は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に過酸化水素水を蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0017】
金属化合物と反応せしめる過酸化水素の使用量は、金属化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0018】
金属化合物と過酸化水素との反応は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、tert−ブタノール等アルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0019】
金属化合物と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合、接触させることにより行われ、金属化合物と過酸化水素との接触効率をより向上させるため、金属酸化物調製液中で、金属化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。また、金属化合物と過酸化水素との接触効率を高め、金属酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状の金属化合物等粒径の小さな金属化合物を用いることが好ましい。
【0020】
金属酸化物調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0021】
金属化合物と過酸化水素とを水中、有機溶媒中もしくは有機溶媒と水との混合溶媒中で反応させることにより、金属化合物の全部もしくは一部が溶解して、金属酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該金属酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、触媒として用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。
【0022】
次に、上記金属酸化物を触媒とする内部二置換オレフィン類と過酸化水素との反応について説明する。
【0023】
内部二置換オレフィン類としては、オレフィン性の炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合を形成しているそれぞれの炭素原子に一つの水素原子と一つの置換基が結合しているオレフィンであればよい。該オレフィン類の炭素−炭素二重結合を形成しているそれぞれの炭素原子に結合している二つの置換基が一緒になって、前記炭素−炭素二重結合を含む環状オレフィンであってもよい。
【0024】
かかる内部二置換オレフィン類としては、例えば一般式(1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいカルボアルコキシ基、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基またはハロゲン原子を表わす。また、R1とR2が一緒になって環構造の一部を形成してもよい。)
で示されるオレフィン類が挙げられる。
【0025】
置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基およびこれらアルキル基が、後述するアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ基、カルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基等の置換基で置換された、例えばクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、カルボメトキシメチル基、1−カルボエトキシ−2,2−ジメチル−3−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0026】
置換されていてもよいアルコキシ基としては、前記置換されていてもよいアルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基およびこれらアルコキシ基が、例えばハロゲン原子、アルコキシ基等の置換基で置換された、例えばクロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0027】
置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等およびこれらフェニル基、ナフチル基等を構成する芳香環が、前記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、後述するアラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子等の置換基で置換された、例えば2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基等が挙げられる。置換されていてもよいアリールオキシ基としては、前記置換されていてもよいアリール基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0028】
置換されていてもよいアラルキル基としては、前記置換されていてもよいアリール基と前記置換されていてもよいアルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−フェノキシベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル基等が挙げられる。また、置換されていてもよいアラルキルオキシ基としては、前記置換されていてもよいアラルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0030】
置換されていてもよいアシル基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアルキル基、カルボニル基と前記置換されていてもよいアリール基およびカルボニル基と前記置換されていてもよいアラルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばカルボメチル基、カルボエチル基、カルボフェニル基、カルボベンジル基等が挙げられる。
【0031】
置換されていてもよいカルボアルコキシ基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアルコキシ基とから構成されるものが、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアリールオキシ基とから構成されるものが、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアラルキルオキシ基とから構成されるものがそれぞれ挙げられ、例えばカルボメトキシ基、カルボエトキシ基、カルボフェノキシ基、カルボベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
また、R1とR2が一緒になって環構造の一部を形成する場合の、環構造としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0033】
かかる内部二置換オレフィン類(以下、オレフィン類と略記する)としては、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3,4,5−トリメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3,5−ジメチルシクロヘキセン、3,4,5−トリメチルシクロヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、5−ドデセン、ノルボルネン、フェナントレン、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ジシクロペンタジエン、インデン、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル等が挙げられる。
【0034】
オレフィン類の中には、その分子内に不斉炭素を有しており、光学異性体が存在するものがあるが、本発明には、光学異性体の単独または混合物のいずれも用いることができる。
【0035】
本反応は、前記した金属酸化物触媒の存在下に、オレフィン類と過酸化水素を反応させるものであり、オレフィン類の炭素−炭素二重結合が酸化開裂したカルボン酸類が生成する。
【0036】
オレフィン類として、上記一般式(1)で示されるオレフィン類を用いた場合には、炭素−炭素二重結合が酸化開裂した一般式(5)
(式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるカルボン酸類および一般式(6)
(式中、R2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるカルボン酸類が生成する。なお、本反応においては、オレフィン類の別の酸化生成物であるジオール類やβ−ヒドロキシヒドロペルオキシド類が分解したアルデヒド類が副生成物として生成することがある。上記一般式(1)で示されるオレフィン類を用いた場合には、一般式(4)
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるジオール類や一般式(7)
(式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアルデヒド類および一般式(8)
(式中、R2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアルデヒド類が副生物として生成する。
【0037】
具体的なオレフィン類を例とし、さらに具体的に説明すると、例えば原料オレフィン類としてシクロペンテンを用いた場合には、グルタル酸が得られ、原料オレフィン類として2−ヘキセンを用いた場合には、酢酸およびブタン酸が得られる。
【0038】
オレフィン類と過酸化水素との反応における金属酸化物触媒の使用量は、オレフィン類に対して、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、オレフィン類に対して、1モル倍以下である。
【0039】
過酸化水素は、通常水溶液として用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水もしくは有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行なった後用いられる。過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に過酸化水素水を蒸留処理する等の手段により、調製することができる。
【0040】
過酸化水素の使用量は、オレフィン類に対して、通常1モル倍以上であり、その使用量の上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、オレフィン類に対して、10モル倍以下である。なお、触媒として、金属酸化物を含む調製液を用いる場合は、該調製液中の過酸化水素量を含めて、過酸化水素の使用量を設定してもよい。
【0041】
本反応は、通常水溶媒、もしくは有機溶媒と水の混合溶媒中で実施される。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。水または有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、オレフィン類に対して、100重量倍以下である。
【0043】
反応温度があまり低いと反応が進行しにくく、また反応温度があまり高いと、原料のオレフィン類の重合等副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、0〜200℃の範囲である。
【0045】
本反応は、通常オレフィン類、過酸化水素および金属酸化物触媒を接触、混合することにより実施されるが、その混合順序は特に制限されない。また、例えば金属化合物、過酸化水素およびオレフィン類を接触、混合させて、金属酸化物触媒の調製操作と、オレフィン類と過酸化水素との反応を、同時に行ってもよい。
【0046】
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0047】
また、本反応は、例えば無水ホウ酸等のホウ素化合物の共存下に実施してもよい。ホウ素化合物としては、例えば無水ホウ酸、メタホウ酸、正ホウ酸、メタホウ酸アルカリ金属塩、メタホウ酸アルカリ土類金属塩、正ホウ酸アルカリ金属塩、正ホウ酸アルカリ土類金属塩等が挙げられ、その使用量は特に制限されないが、あまり多すぎても経済的に不利になるため、実用的には、オレフィン類に対して、通常1モル倍以下である。
【0048】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするカルボン酸類を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、カルボン酸類を取り出すこともできる。取り出したカルボン酸類は、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の手段によりさらに精製してもよい。
【0049】
水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0050】
また、目的とするカルボン酸類を晶析処理により取り出した後の濾液や反応液を抽出処理して得られる水層は、本反応の金属酸化物触媒を含んでおり、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に使用することができる。
【0051】
また、用いたオレフィン類の種類によっては、生成するカルボン酸が不安定である場合があり、その場合には、反応系中で、例えば該カルボン酸の脱炭酸反応等が起こり、例えば炭素数が1つ少ないカルボン酸が得られることもある。
【0052】
また、オレフィン類として、光学活性体を用いた場合には、光学活性な生成物が得られる。
【0054】
カルボン酸類としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−クロログルタル酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、2,3−ジメチルアジピン酸、2,4−ジメチルアジピン酸、3,4−ジメチルアジピン酸、2,3,4−トリメチルグルタル酸、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、安息香酸、1−(カルボキシメチル)シクロペンタン−2,3,4−トリカルボン酸、ホモフタル酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、3,3−ジメチル−2−カルボメトキシシクロプロパンカルボン酸、3,3−ジメチル−2−カルボエトキシシクロプロパンカルボン酸等が挙げられる。
【0069】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0070】
なお、ガスクロマトグラフィ分析(以下、GC分析と略記する。)および高速液体クロマトグラフィ分析(以下、LC分析と略記する。)の各条件は、以下のとおりである。
【0071】
<GC分析条件>
カラム:DB−1(φ0.25μm×30m、膜厚1.0μm)
キャリアガス:ヘリウム(流速:1m/分)
スプリット比:1/10、試料注入量:1μL
カラム温度:100℃(0分)→180℃(昇温速度:2℃/分、180℃での保持時間:0分)→300℃(昇温速度:10℃/分、300℃での保持時間:15分)
注入口温度:200℃、検出器温度:250℃
【0072】
<LC分析条件>
カラム:SUMIPAX ODS A−212(5μm,φ6mm×15cm)
移動相:A液;0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液
B液;0.1体積%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液
A液/B液=90/10(体積比)から40分で直線的に、A液/B液=10/90(体積比)に組成変化させ、A液/B液=10/90(体積比)の組成比で、20分保持。
流量:1.0mL/分、試料注入量:10μL、検出波長:220nm
【0073】
実施例1 <タングステン金属と過酸化水素との反応による酸化物の調製と活性評価>
ビーカーに、タングステン金属粉末4gを加え、さらに15重量%過酸化水素水溶液50gを加え、室温で攪拌させた。酸素ガスを発生しながら、タングステン金属粉末が溶解していき(内温は60℃まで上昇した)、薄い黄褐色に着色した均一の透明液が得られた。この溶液を室温まで冷却し、白金網を用いて残存する過酸化水素を分解した後、室温でロータリーエバポレーターを用いて、前記溶液から水を留去し、淡黄色の固体(タングステン酸化物)を得た。この固体を常温、空気開放系で恒量になるまで乾燥し、5.8gの固体を得た。
【0074】
濃縮前の均一透明液のUVスペクトル
λH2O max:204,238nm
濃縮前の均一透明液のIRスペクトル(水溶液;4000〜750cm-1)
νmax:3342,1275,1030,967,837cm-1
得られた固体のIRスペクトル(KBr)
νmax:3531,3452,2945,1653,1619,973,906,638,551cm-1
元素分析値;W:63.9,O:31.2,H:1.6
【0075】
磁気回転子と還流冷却管を備えた50mLフラスコに、30重量%過酸化水素水2gおよび上記で得た固体140mgを仕込み、内温60℃に昇温した。同温度で0.5時間攪拌、保持した後、シクロヘキセン4gおよび30重量%過酸化水素水25.8gを20分かけて滴下した。滴下終了後、内温100℃のオイルバスで6時間加熱攪拌した。反応液の内温は72℃から95℃まで上昇した。反応終了後、内温5℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥し、白色結晶5.3gを得た。該結晶を1H−NMR分析し、高純度のアジピン酸であることを確認した。濾液をGC分析(内部標準法)したところ、該濾液中に含まれるアジピン酸は1.4gであった。トータルのアジピン酸の収率:94%。
【0076】
実施例2<ホウ化タングステンと過酸化水素との反応による酸化物の調製>
磁気回転子および還流冷却管を備えた100mLフラスコに、ホウ化タングステン粉末4.2gおよび水25gを加え、内温40℃で、攪拌しながら、60重量%過酸化水素水溶液18gを2時間かけて滴下した。同温度で2時間さらに保温し、白色の結晶がわずかに浮遊した無色溶液が得られた。この溶液を室温まで冷却し、白金網を用いて残存する過酸化水素を分解した後、室温でロータリーエバポレーターを用いて、前記溶液から水を留去し、白色の固体(酸化物)を得、これを常温、空気開放系で恒量になるまで乾燥し、5.8gの固体を得た。
【0077】
濃縮前の無色溶液のUVスペクトル
λH2O max:200,235(s)nm
濃縮前の無色溶液のIRスペクトル(水溶液;4000〜750cm-1)
νmax:3350,2836,1275,1158,965,836cm-1
得られた固体のIRスペクトル(KBr)
νmax:3527,3220,2360,2261,1622,1469,1196,973,904.5,884,791,640,549cm-1
元素分析値;W:51.2,O:39.0,H:2.2,B:3.98
【0078】
実施例3<硫化タングステンと過酸化水素との反応による酸化物の調製>
実施例2において、ホウ化タングステン粉末に代えて、硫化タングステン5.4gを用い、水の量を12gとした以外は実施例2と同様に実施して、淡黄色固体10.1gを得た。
【0079】
濃縮前の溶液のUVスペクトル
λH2O max:200,240(s)nm
濃縮前の無色溶液のIRスペクトル(水溶液;4000〜750cm-1)
νmax:3373,1187,1044,974,878,837cm-1
得られた固体のIRスペクトル(KBr)
νmax:3435,3359,1730,1632,1320,1285,1178,1103,1070,1008,981,887,839,851,660,615,578cm-1
元素分析値;W:35.3,O:47.7,H:3.0,S:12.4
【0080】
実施例4<モリブデン金属と過酸化水素との反応による酸化物の調製>
実施例2において、ホウ化タングステン粉末に代えて、モリブデン金属2.1gを用い、水の量を12gとし、60重量%過酸化水素水溶液の使用量を12gとした以外は実施例2と同様に実施して、黄色固体4.0gを得た。
【0081】
濃縮前の溶液のUVスペクトル
λH2O max:207,300nm
濃縮前の無色溶液のIRスペクトル(水溶液;4000〜750cm-1)
νmax:3359,2480,1372,974,866cm-1
得られた固体のIRスペクトル(KBr)
νmax:3530,1621,964,927,902,840,633,557,530,522cm-1
元素分析値;Mo:47.8,O:46.2,H:2.1
【0082】
実施例5<ホウ化モリブデンと過酸化水素との反応による酸化物の調製>
実施例2において、ホウ化タングステン粉末に代えて、ホウ化モリブデン2.3gを用い、水の量を12gとし、60重量%過酸化水素水溶液の使用量を12gとした以外は実施例2と同様に実施して、黄色固体5.2gを得た。
【0083】
濃縮前の溶液のUVスペクトル
λH2O max:200,310nm
得られた固体のIRスペクトル(KBr)
νmax:3221,2520,2361,2262,1620,1463,1439,1195,965,927,887,840,799,674,634,547,529cm-1
元素分析値;Mo:35.5,O:51.0,H:2.9,B:4.1
【0084】
比較例1<タングステン酸と過酸化水素との反応による酸化化合物の調製と活性評価>
ビーカーに、タングステン酸(H2WO4)5.4gを加え、さらに15重量%過酸化水素水溶液50gを加え、室温で攪拌させた。タングステン酸の結晶が完溶しなかったので、内温を55℃に昇温し、さらに2時間攪拌、保持した。冷却後、未反応結晶を濾別し、得られた溶液を白金網を用いて残存する過酸化水素を分解した後、室温でロータリーエバポレーターを用いて前記溶液から水を留去し、淡黄色の固体を得た。この固体を常温、空気開放系で恒量になるまで乾燥し、3.0gの固体を得た。
【0085】
濃縮前の溶液のUVスペクトル
λH2O max:210,250(s)nm
濃縮前の溶液のIRスペクトル(水溶液;4000〜750cm-1)
νmax:3400,2833,1355,967,836cm-1
得られた固体のIRスペクトル(KBr)
νmax:3416,1623,1385,975,880,839,749,700,643,625,550cm-1
元素分析値;W:63.9,O:31.2,H:1.6
これらのスペクトルデータを前記実施例1で得られたタングステン金属と過酸化水素との反応で得られた酸化物と比較したが、異なる酸化物であった。
【0086】
上記で得た固体140mgを用いる以外は実施例1と同様に活性評価を実施したが、反応後、シクロヘキセンが残存し、反応液は二層のままであった。5℃まで冷却したが、アジピン酸の析出はなかった。
【0087】
実施例6
誘導攪拌器と還流冷却管を備えた1Lフラスコに、30重量%過酸化水素水20gおよびタングステン金属粉末895mgを仕込み、内温60℃に昇温した。同温度で0.5時間攪拌、保持後、シクロヘキセン40gおよび30重量%過酸化水素水228gを、20分かけて滴下した。滴下終了後、内温100℃のオイルバスで8時間加熱攪拌した。反応液の内温は72℃から95℃まで上昇した。反応終了後、内温5℃まで冷却し、析出した結晶を濾取、乾燥し、白色結晶57.3gを得た。該結晶を1H−NMR分析し、高純度のアジピン酸であることを確認した。該結晶の融点を測定したところ、151〜152℃であった。濾液をGC分析(内部標準法)したところ、該濾液中に含まれるアジピン酸は9.6gであった。取得したアジピン酸結晶および濾液中のアジピン酸を合わせたトータルのアジピン酸の収率は、94%であった。
【0088】
実施例7
上記実施例6で得た濾液を188gになるまで濃縮した。誘導攪拌器と還流冷却管を備えた1Lフラスコに、該濃縮濾液を仕込み、さらに、シクロヘキセン40gおよび30重量%過酸化水素水250gを20分かけて滴下した。その後、内温100℃のオイルバスで9時間加熱攪拌した。反応液の内温は、72℃から95℃まで上昇した。反応終了後、内温0℃まで冷却し、析出した結晶を濾取、乾燥し、アジピン酸の白色結晶57.2gを得た。融点:151〜152℃。濾液を130gになるまで濃縮し、内温0℃に冷却し、析出した結晶を濾取、乾燥して、アジピン酸の白色結晶5.0gを得た。融点:151〜152℃。取得したアジピン酸結晶の収率は、87.5%であった。
【0089】
実施例8
誘導攪拌器と還流冷却管を備えた1Lフラスコに、上記実施例7で得た濾液122gを仕込み、さらに、シクロヘキセン40gおよび30重量%過酸化水素水250gを、20分かけて滴下した。滴下終了後、内温100℃のオイルバスで11.5時間加熱攪拌した。反応液の内温は72℃から95℃まで上昇した。反応終了後、内温0℃まで冷却し、析出した結晶を濾取、乾燥し、アジピン酸の白色結晶57.5gを得た。融点:151〜152℃。濾液を128gになるまで濃縮し、内温0℃まで冷却し、析出した結晶を濾取、乾燥し、アジピン酸の白色結晶5.2gを得た。融点:151〜152℃。取得したアジピン酸結晶の収率は、88.2%であった。
【0090】
実施例9
誘導攪拌器と還流冷却管を備えた1Lフラスコに、上記実施例8で得た濾液103gを仕込み、さらに、シクロヘキセン40gおよび30重量%過酸化水素水250gを20分かけて滴下した。その後、内温100℃のオイルバスで10.5時間加熱攪拌した。反応液の内温は、72℃から95℃まで上昇した。反応終了後、内温0℃に冷却し、析出した結晶を濾取、乾燥し、アジピン酸の白色結晶55.7gを得た。融点:151〜152℃。濾液をGC分析(内部標準法)したところ、該濾液中に含まれるアジピン酸は、11.6gであった。アジピン酸の収率は、88.9%であった(上記実施例8で得た濾液103g中に含まれるアジピン酸分を除く)。
【0091】
実施例10
磁気回転子と還流冷却管を備えた50mLフラスコに、30重量%過酸化水素水2gおよびタングステン金属粉末97mgを仕込み、内温60℃に昇温した。同温度で0.5時間攪拌、保持した後、シクロヘキセン4gおよび30重量%過酸化水素水25.8gを20分かけて滴下した。滴下終了後、内温100℃のオイルバスで6時間加熱攪拌した。反応液の内温は72℃から95℃まで上昇した。反応終了後、内温5℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥し、白色結晶5.3gを得た。該結晶を1H−NMR分析し、高純度のアジピン酸であることを確認した。濾液をGC分析(内部標準法)したところ、該濾液中に含まれるアジピン酸は1.4gであった。トータルのアジピン酸の収率:94%。
【0092】
実施例11
実施例10において、タングステン金属粉末97mgに代えて、炭化タングステン96mgを用いた以外は実施例10と同様に実施し、アジピン酸結晶4.5gを得た。濾液中に含まれるアジピン酸は、1.2gであり、トータルのアジピン酸の収率は、80%であった。
【0093】
実施例12
実施例10において、タングステン金属粉末97mgに代えて、ホウ化タングステン96mgを用いた以外は実施例10と同様に実施し、アジピン酸結晶3.6gを得た。収率:51%。
【0094】
実施例13
実施例10において、タングステン金属粉末97mgに代えて、硫化タングステン121mgを用いた以外は実施例10と同様に実施し、アジピン酸結晶5.0gを得た。また、濾液中に含まれるアジピン酸は、1.12gであった。
トータルのアジピン酸の収率:86%。
【0095】
実施例14
実施例10において、シクロヘキセン4gに代えて、シクロペンテン3.2gを用いた以外は実施例10と同様に実施し、グルタル酸結晶4.2gを得た。また、濾液中に含まれるグルタル酸は、0.93gであった。取得したグルタル酸結晶および濾液中に含まれるグルタル酸を合わせたトータルのグルタル酸の収率は、80%であった。
【0096】
実施例15
磁気回転子および還流冷却管を備えた50mLフラスコに、30重量%過酸化水素水1.1gおよびタングステン金属46mgを仕込み、内温60℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持した。これにオレイン酸7.1gおよび30重量%過酸化水素水13.1gを仕込んだ。その後、反応液を内温95℃のオイルバスで7時間加熱攪拌した。さらに30重量%過酸化水素水14.2gを追加して11時間95℃で加熱攪拌した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、LC分析(内部標準法)したところ、ペラルゴン酸1.43g(収率36.1%)、アゼライン酸1.71g(収率36.4%)が生成していた。
【0097】
実施例16
磁気回転子および還流冷却管を備えた50mLフラスコに、30重量%過酸化水素水2.4gおよびタングステン金属46mgを仕込み、内温60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌、保持した。これにインデン2.9gおよび水7.1gを仕込んだ後、30重量%過酸化水素水4.7gを仕込んだ。その後、反応液を内温100℃のオイルバスで8時間加熱攪拌した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、LC分析(内部標準法)したところ、ホモフタル酸3.2g(収率71%)が生成していた。
【0098】
実施例17
磁気回転子および還流冷却管を備えた50mLフラスコに、30重量%過酸化水素水1.1gおよびタングステン金属46mgを仕込み、内温60℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持した。これにシス−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸3.8gに水を添加して溶解した溶液と30重量%過酸化水素水13.1gを仕込んだ。その後、反応液を内温95℃のオイルバスで20時間加熱攪拌した。反応終了後、内温25℃まで冷却し、LC分析(内部標準法)したところ、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸3.4gが生成していた。収率:58%。
【0099】
実施例18
磁気回転子および還流冷却管を備えた50mLフラスコに、30重量%過酸化水素水2.4gおよびタングステン金属23mgを仕込み、内温60℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持した。これにシス−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物2.1gと30重量%過酸化水素水4.7gを仕込んだ。その後、反応液を室温まで冷却後、室温で12時間加熱攪拌した。反応終了後、LC分析(内部標準法)したところ、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸2.6gが生成していた。収率:81%。
【0113】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、入手が容易なタングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン等のタングステン化合物、ホウ化モリブデン等のモリブデン化合物の存在下に、内部二置換オレフィン類と安価な過酸化水素を反応させることにより、カルボン酸類を容易に得ることができるため、工業的に有利である。
Claims (7)
- 内部二置換オレフィン類と過酸化水素とを、タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデン、炭化タングステンおよび炭化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物触媒の存在下に、水溶媒中で反応させることを特徴とするカルボン酸類の製造法。
- 内部二置換オレフィン類が、一般式(1)
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいカルボアルコキシ基、置換されていてもよいカルボアリールオキシ基、置換されていてもよいカルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基またはハロゲン原子を表わす。また、R1とR2が一緒になって環構造の一部を形成してもよい。)
で示されるオレフィン類である請求項1に記載のカルボン酸類の製造法。 - 過酸化水素水を用いる請求項1に記載のカルボン酸類の製造法。
- タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデン、炭化タングステンおよび炭化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる、内部二置換オレフィン類を酸化して、カルボン酸類を製造するための金属酸化物触媒。
- タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデン、炭化タングステンおよび炭化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と過酸化水素とを、水中で反応せしめてなる、内部二置換オレフィン類を酸化して、カルボン酸類を製造するための金属酸化物触媒水溶液。
- 請求項5に記載の金属酸化物触媒水溶液と有機溶媒とからなる、内部二置換オレフィン類を酸化して、カルボン酸類を製造するための金属酸化物触媒溶液。
- タングステン金属、モリブデン金属、ホウ化タングステン、ホウ化モリブデン、硫化タングステン、硫化モリブデン、炭化タングステンおよび炭化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と過酸化水素とを、水中で、前記金属化合物が十分分散するよう攪拌しながら、反応せしめることを特徴とする、内部二置換オレフィン類を酸化して、カルボン酸類を製造するための金属酸化物触媒水溶液の調製方法。
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