JP4045621B2 - フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料およびそれを用いた電子部品 - Google Patents

フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料およびそれを用いた電子部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料およびそれを用いた電子部品に関する。さらに詳しくは、耐熱性に優れるとともに誘電率が低いフッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料およびそれを用いた電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種電気・電子部品に用いられるLSI(大規模集積回路)等の半導体装置は、微細加工技術の進歩によって、高集積化、多機能化、高性能化の一途を辿っている。その結果、回路抵抗(以下、「寄生抵抗」と称する場合もある。)や配線間のコンデンサー容量(以下、「寄生容量」と称する場合もある。)が増大し、それに伴って消費電力が増すだけではなく、入力信号に対する遅延時間も増大し、デバイスの信号スピードが低下する大きな要因となっており、その解決が大きな課題となっている。
このような信号スピードの低下を抑える方策として、寄生抵抗や寄生容量を小さくすることが考えられ、その一つとして、配線周辺を低誘電率の層間絶縁膜で覆うことにより寄生容量を下げて、デバイスの高速化に対応しようとしている。そこで、従来の代表的な層間絶縁膜である無機膜の二酸化ケイ素(SiO2 )を、低誘電率の有機膜に代える試みがなされている。そして、この有機膜の材料としては、絶縁性・低誘電性の特性のほかに、実装基板製造時の薄膜化工程の際や、チップ接続あるいはピン付け等の際の熱処理(加熱工程)にも耐えられる耐熱性を有することが必要とされている。
ここで、代表的な低誘電性の電気絶縁有機材料としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂が知られている。かかるフッ素樹脂は溶媒に対して不溶であり、電子部品の多様な用途に展開するためには、特殊な組成物にする必要があるなど、加工性や取り扱い性に問題があり、非常に限られた範囲にその使用が限定されていた。
また、さらに耐熱性の高い有機材料としてポリイミド樹脂が知られており、特に耐熱性の高いポリイミド樹脂として、J.Polymer Sci.、Part A:Polymer Chemistry、Vol.31、2153-2163(1993) に記載されている、9、9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンと、ピロメリット酸二無水物、3、3'、4、4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3、3'、4、4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物および3、3'、4、4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等とを反応させて得られるものが知られている。しかしながら、かかるポリイミド樹脂の比誘電率の値は2.9〜3.5程度であり、信号スピードの高速化を図ったLSIの低誘電層間絶縁膜としては未だ満足しうるものではない。また、かかるポリイミド樹脂を溶解するための溶媒の種類が限定されてしまうという問題も見られた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、誘電率が低く、かつ高度の耐熱性を有し、しかも各種溶媒に対する溶解性にも優れたフッ素含有ポリイミド樹脂を少なくとも一部に含む電気絶縁材料、具体的にはワニス等の電気絶縁材料あるいは、かかる電気絶縁材料を用いた電子部品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料において、下記一般式(1)で表される繰り返し単位および下記一般式(2)で表される繰り返し単位あるいはいずれか一方で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【0004】
【化8】
Figure 0004045621
【0004】
〔一般式(1)において、AおよびBは、それぞれ2価の有機基(置換基と称する場合もある。以下、同様である。)であって、下記式(3)に示す有機基C、下記式(4)に示す有機基D、下記式(5)に示す有機基Eおよび下記式(6)に示す有機基Fからなる群から選ばれた有機基であり、AおよびBは、同一または異なったものであってもよく、さらに、下記(a)、(b)、(c)および(d)の条件を満たす。
(a)有機基Aと有機基Bの合計量を200モル%とした時に、有機基Cの量を50〜180モル%の範囲内の値とする。
(b)有機基Aと有機基Bの合計量を200モル%(有機基Aは100モル%、有機基Bは100モル%)とした時に、有機基D、E、およびFの、少なくとも一つの有機基の量を20〜150モル%の範囲内の値とする。
(c)フッ素含有ポリイミド樹脂におけるフッ素原子含有率を、0.1〜30重量%の範囲内の値とする。
(d)一般式(1)、(3)および(5)において、R1 〜R6 、R9 、R10は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、lは0または1〜3の整数、mは0または1〜4の整数であり、R7 およびR8 は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基および下記式(7)に示す基から選ばれ、nは0または1〜4の整数であり、pは0または1〜4の整数であり、下記式(7)においてR11は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、qは0または1〜5の整数である。〕
【0005】
【化9】
Figure 0004045621
【0006】
〔一般式(2)において、A、B、R1 、R2 、R3 、R4 、lおよびmは一般式(1)に示すものと同義である。〕
【0007】
【化10】
Figure 0004045621
【0008】
【化11】
Figure 0004045621
【0009】
【化12】
Figure 0004045621
【0010】
【化13】
Figure 0004045621
【0011】
【化14】
Figure 0004045621
【0012】
なお、ここで、一般式(2)で表される繰り返し単位からなる樹脂は、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)であるが、本発明では、これを含めてポリイミド樹脂と称する。この点につき、以下同様である。
また、上述した電気絶縁材料およびそれを用いた電子部品において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含むという場合には、それぞれ電気絶縁材料等の構成成分の全てまたは一部が、本発明のフッ素含有ポリイミドから構成されていることを意味する。したがって、本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂が「一部」に含まれる(使用)とされる場合には、残りの構成成分はその他の電気絶縁材料、たとえばその他の樹脂あるいは無機フィラー等からなる電気絶縁材料を意味する。
【0013】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、当該電気絶縁材料が下記特性(i)〜(iv)を有することが好ましい。
(i)対数粘度(N−メチル−2−ピロリドン溶媒中、濃度0.5g/dl、30℃で測定)が、0.05〜10dl/gの範囲内の値である。
(ii)ガラス転移温度が、230℃以上の値である。
(iii) 5重量%熱分解温度(窒素ガス中、10℃/分昇温)が400℃以上の値である。
(iV)誘電率(1MHz)が、2.9以下の値である。
【0014】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、当該電気絶縁材料中のフッ素含有率を1〜25重量%の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0015】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、当該電気絶縁材料の熱重量変化(窒素ガス中、400℃、3時間)が0〜3重量%(但し、0は含まない。)の範囲内の値であるのが好ましい。
【0016】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、当該電気絶縁材料がさらに溶媒を含みワニス状であるのが好ましい。
【0017】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料をワニス状に構成するに当たり、前記溶媒を、フッ素含有ポリイミド樹脂100重量部に対して150〜3000重量部の範囲内の値とするのが好ましい。
【0018】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料をワニス状に構成するに当たり、前記溶媒を、N−メチルピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、メトキシメチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選択された少なくとも一つとするのが好ましい。
【0019】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、当該電気絶縁材料の粘度を、10〜100,000cps(測定温度25℃条件)の範囲内の値とするのが好ましい。
【0020】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、フッ素含有ポリイミド樹脂100重量部に対して、シランカップリング剤を0.1〜30重量部の範囲内でさらに含むことが好ましい。
【0021】
また、この発明において、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を構成するに当たり、前記シランカップリング剤が、アミノシランカップリング剤およびエポキシシランカップリング剤あるいはいずれか一方であることが好ましい。
【0022】
また、この発明における別な態様は、電子部品であって、上述したフッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を、少なくとも一部に含むことを特徴とする。
【0023】
また、この発明において、電子部品を構成するに当たり、当該電子部品が、半導体における層間絶縁膜、平坦化膜、電気絶縁膜、キャパシタ絶縁膜、高周波基板用基材、フレキシブルプリント配線基板用基材、TABテープ用基材およびフィルムキャリア用基材のいずれか一つであることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
1.電気絶縁材料
本発明の電気絶縁材料は、所定の構造と、所定の好ましい特性とを有するフッ素含有ポリイミド樹脂を、少なくともその構成の一部として含むものである。
このフッ素含有ポリイミド樹脂として、以下に示すフッ素含有ポリイミド樹脂および/またはその前駆体としてのフッ素含有ポリアミック酸を挙げることができる。
【0025】
(1)フッ素含有ポリイミド樹脂
▲1▼構造
本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂の構造は、上記一般式(1)に示す繰り返し単位を、ポリイミドの分子鎖中にランダム状およびブロック状あるいはいずれか一方の形態で以て結合して含むことができる。
【0026】
ここで、一般式(1)において、AおよびBは、それぞれ2価の有機基であって、上述した一般式(3)に示す有機基C、同様に上述した一般式(4)に示す有機基D、同様に上述した一般式(5)に示す有機基Eおよび同様に上述した一般式(6)に示す有機基Fからなる群から選ばれた2価の有機基である。
AおよびBがこのような有機基であれば、誘電率が低く、かつ優れた耐熱性を有し、しかも各種溶媒に対する溶解性にも優れたフッ素含有ポリイミド樹脂を提供することができる。そして、AおよびBは、同一または異なったものであってもよい。
【0027】
さらに、下記(a)、(b)、(c)および(d)の条件を満たすことが必要である。
(a)有機基Aと有機基Bの合計量を200モル%、すなわち、フッ素含有ポリイミドの有機基Aの量を100モル%および有機基Bの量を100モル%とそれぞれした時に、有機基Cの量を50〜180モル%の範囲内の値とする。
(b)有機基Aと有機基Bの合計量を200モル%とした時に、有機基D、E、およびFの、少なくとも一つの有機基の量を20〜150モル%の範囲内の値とする。
(c)フッ素含有ポリイミド樹脂におけるフッ素原子含有率を、0.1〜30重量%の範囲内の値とする。
(d)上述した一般式(1)、(3)および(5)において、R1 〜R3 、R9 、R10は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれたものであり、lは0または1〜3の整数であり、mは0または1〜4の整数であり、R7 およびR8 は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基および下記式(7)に示す基から選ばれたものであり、nは0または1〜4の整数であり、pは0または1〜4の整数であり、上述した一般式(7)においてR11は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれたものであり、qは0または1〜5の整数である。〕
【0028】
ここで、有機基Aと有機基Bの合計量を200モル%とした時に、有機基Cの量を50〜180モル%の範囲内の値とするのは、有機基Cの量が50モル%未満となると、フッ素含有ポリイミド樹脂の耐熱性(例えば、5重量%熱分解温度)が低下するためであり、又、一方で、有機基Cの量が180モル%を超えると、フッ素含有ポリイミド樹脂の比誘電率が高くなるためである。
【0029】
また、有機基Aと有機基Bの合計量を200モル%とした時に、有機基D、E、およびFの、少なくとも一つの有機基の量を20〜150モル%の範囲内の値とするのは、有機基D等の量が20モル%未満となると、フッ素含有ポリイミド樹脂の比誘電率が高くなるためであり、一方、有機基D等の量が150モル%を超えると、フッ素含有ポリイミド樹脂の耐熱性(例えば、5重量%熱分解温度)が低下するためである。
【0030】
また、この発明のフッ素含有ポリイミド樹脂は、下記一般式(8)および一般式(9)に示す有機基Gを、有機基Aおよび有機基Bの合計量(200モル%)に対して、0〜80モル%(但し、0モル%は含まない。)の範囲内の値となるように含むことが好ましい。
このような範囲で有機基Gを含むことにより、フッ素含有ポリイミド樹脂の耐熱性をよりきめ細かく調整することができるが、含有量に関して、添加量の80モル%を超えると、フッ素含有ポリイミド樹脂の比誘電率が高くなるおそれがあるためである。
【0031】
【化15】
Figure 0004045621
【0032】
【化16】
Figure 0004045621
【0033】
〔式(9)中、nは1〜10の整数、mは1〜50の整数をそれぞれ示す。〕
【0034】
▲2▼特性
本発明に用いられるフッ素含有ポリイミド樹脂は、下記に示す特性を有するものであることが好ましい。なお、本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂は、そのイミド化率が50%以上であることが好ましい。
(i)対数粘度
N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略すことがある)溶媒中、濃度0.5g/dl、30℃で測定した対数粘度を0.05〜10dl/gの範囲内の値とするのが好ましい。対数粘度の値が0.05dl/g未満であると、分子量が低すぎて、耐熱性(熱分解温度)が低下し、またフィルム形成性に乏しく、塗布膜形成が困難となるおそれが生じるためである。一方、対数粘度の値が10dl/gを超えると高分子量体となり、高粘度となる。したがって、加工性や使用性が低下するおそれが生じるためである。
【0035】
したがって、フッ素含有ポリイミド樹脂における耐熱性等と、加工性等とのバランスがより良好な観点から、フッ素含有ポリイミド樹脂の対数粘度の値を0.1〜4dl/gの範囲内の値とするのがより好ましい。
【0036】
(ii)フッ素含有率
本発明のフッ素含有ポリイミドのフッ素含有率(フッ素原子含有率と称する場合もある。)を、0.1〜30重量%の範囲内の値とするのが好ましい。フッ素含有ポリイミドのフッ素含有率が0.1重量%未満となると、比誘電率が高くなるおそれがあるためである。一方、フッ素含有ポリイミドのフッ素含有率が30重量%を超えると耐熱性が低下したり、加熱時にフッ素やフッ化水素が発生したりするおそれがあり、さらには、下地(積層面)に対する密着性や塗工性などの加工性が低下するおそれが生じるためである。
【0037】
したがって、フッ素含有ポリイミド樹脂における比誘電率の値等と、耐熱性等とのバランスがより良好な観点から、フッ素含有ポリイミド樹脂のフッ素含有率の値を、1〜25重量%の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0038】
(iii) ガラス転移温度(Tg)
フッ素含有ポリイミド樹脂におけるガラス転移温度は、230℃以上の値が好ましく、さらに好ましくは240〜600℃の範囲内の値である。
ガラス転移温度が230℃未満であると、高温プロセス(たとえば耐ハンダ性を要するプロセス)時に熱変形を引き起すおそれがあるためである。
なお、ガラス転移温度は、DSC(Differential Scan-ning Calorimeter)を用いて、フッ素含有ポリイミド樹脂の比熱の変化点から求めることができる。
【0039】
(iv)5重量%熱分解温度
フッ素含有ポリイミド樹脂の5重量%熱分解温度の値は、400℃以上が好ましく、さらに好ましくは430℃以上である。フッ素含有ポリイミド樹脂の5重量%熱分解温度が400℃未満となると、半田付け等の高温プロセス時に分解ガスが発生するおそれが生じ、また、半田付け箇所において、半田のはがれやふくれなどが生じる原因となるおそれがあるためである。そして、さらには、配線加工時の高温加工条件(400℃以上)で、熱分解を生じるおそれがあるためである。
なお、5重量%熱分解温度は、TGAを用いて窒素中、10℃/分の昇温条件で測定することができる。そして、5重量%熱分解温度とは、測定開始時における測定試料の重量を100重量%としたときに、この測定試料の重量が5重量%減少した時の温度、すなわち、測定試料の重量が95重量%になった時のその温度をいう。
【0040】
(v)比誘電率(1MHz)
フッ素含有ポリイミド樹脂の比誘電率(1MHz)の値は、2.9以下が好ましく、さらに好ましくは2.85以下である。
フッ素含有ポリイミド樹脂の比誘電率の値が2.9を超えると、高周波に対する電気絶縁性に乏しくなり、誘電性に基づく効果、たとえば配線遅延や発熱等に対する課題を解決することができないおそれが生じるためである。
【0041】
(2)フッ素含有ポリアミック酸
本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂の合成に用いられるフッ素含有ポリアミック酸は、上述した一般式(2)に示す繰り返し単位を含むものである。そして、一般式(2)において、A、B、R1 、R2 、R3 、R4 、lおよびmは、上述した一般式(1)に示すものと同義である。
このフッ素含有ポリアミック酸は、イミド化率が、50%を超えない範囲内で、部分的にイミド化されていてもよい。フッ素含有ポリアミック酸は、フッ素含有ポリイミド樹脂に比べて有機溶媒に溶解しやすいので、溶液濃度を高くしやすいという利点がある。
そして、フッ素含有ポリアミック酸を、溶液状態で基材上に塗布し、乾燥させて塗膜とした後、この塗膜を所定温度に加熱することにより、脱水反応を生じさせて、フッ素含有ポリイミド樹脂とすることができる。
【0042】
なお、このようにフッ素含有ポリアミック酸を、塗布し、所定温度に加熱することにより作成したフッ素含有ポリイミド樹脂と、フッ素含有ポリイミド樹脂溶液を基材に塗布し、乾燥させることにより作成したフッ素含有ポリイミド樹脂とを比較して、5重量%熱分解温度や比誘電率等の特性において、顕著な差がないことが確認されている。
【0043】
(3)材料の調製
本発明の電気絶縁材料は、上述したフッ素含有ポリイミド樹脂あるいはその前駆体としてのフッ素含有ポリアミック酸を用いて、たとえば下記のように調製し、作成することができる。
重合して得られたフッ素含有ポリイミド樹脂の重合溶液(塗布液)から、または重合溶媒よりも沸点の高い溶媒を加え、低沸点溶媒を留去させて得られるポリマー溶液(いわゆるワニス)から、それぞれ溶液流延法によってフィルムやシートを得ることができる。
また、重合溶液またはワニスをポリマーに対する貧溶媒を添加して、ポリマー(フッ素含有ポリイミド樹脂)を析出させた後、これを乾燥することにより、固体または粉末状のフッ素含有ポリイミド樹脂のポリマーが得られる。これらを粉末状で、あるいは熱成形してペレットとし、フッ素含有ポリイミド樹脂からなる成形材料とすることもできる。
【0044】
なお、本発明の電気絶縁材料の外形形状は、フィルム状、シート状、固形ペレット状、ペースト状、液状等のいずれであってもよい。
【0045】
本発明の電気絶縁材料は、上述したフッ素含有ポリイミド樹脂を少なくともその構成の一部として含んでいればよいが、その構成全体の5重量%以上含むことが前記ポリイミドの特性を十分に発揮させる上で好ましい。フッ素含有ポリイミド樹脂の含有量が5重量%未満となると、誘電率が高くなったり、耐熱性が低下するおそれが生じるためである。
したがって、かかる誘電率や耐熱性がより良好となる観点から、上述したフッ素含有ポリイミド樹脂を10重量%以上含むことがさらに好ましい。そして、全ポリマー中の50重量%以上が上述したフッ素含有ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0046】
2.ワニス(ワニス状フッ素含有ポリイミド樹脂)
本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料はワニス状であっても良く(以下、ワニス状フッ素含有ポリイミド樹脂あるいは単に、ワニスと称する場合がある。)、上述したフッ素含有ポリイミド樹脂および溶媒(有機溶剤)を少なくともその構成の一部として含むものである。
【0047】
そして、前述したように、このワニスの固形分や粘度を、溶媒を用いて調製することができる。用いる溶媒の種類としては、特に制限はないが、たとえば、NMP(N−メチルピロリドン)、DMF(N、N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N、N−ジメチルアセトアミド)などのアミド系溶媒、γ−ブチロラクトン等のポリアミック酸やポリイミド樹脂に対して用いられる双極子溶媒、乳酸エチル、メトキシメチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
なお、本発明の電気絶縁材料は、このように幅広い種類の溶媒に溶解可能であり、かかる点も本発明の特徴の一つである。
【0048】
また、本発明のワニスにおいて、溶媒の添加量を、フッ素含有ポリイミド樹脂100重量部に対して、150〜3000重量部(固形分濃度約3〜40重量%)の範囲内の値とするのが好ましい。溶媒の添加量が150重量部未満となると、ワニスの粘度が著しく高くなり、気泡を巻き込んだり、あるいは均一な製膜が困難となるおそれがあるためである。一方、溶媒の添加量が3000重量部を超えると、ワニスの粘度が著しく低くなり、溶媒の除去に手間がかかったりあるいは使い勝手が悪くなって、電子部品に適した膜厚の塗工が困難となるおそれがあるためである。
したがって、ワニスの粘度や使い勝手のバランスがより良好な観点から、溶媒の添加量を、フッ素含有ポリイミド樹脂100重量部に対して、250〜2000重量部(固形分濃度約5〜30重量%)の範囲内の値とするのが好ましい。
【0049】
また、本発明のワニスには、基質との密着性改良のためにカップリング剤などの接着助剤や、加工時に均一に塗膜を形成するための界面活性剤を加えるのも好ましい。
【0050】
3.電子部品
本発明の電子部品は、上述したフッ素含有ポリイミド樹脂を少なくともその構成の一部として含むものである。電子部品としては特に制限はないが、たとえば半導体やマルチチップモジュール(MCM)内部における、配線と配線との間の層間絶縁膜、あるいは絶縁膜(キャパシタ絶縁膜を含む)、さらには平坦化膜、表面保護膜およびフレキシブル回路用基材等を挙げることができる。そして、本発明の電子部品は比誘電率が低いため、低誘電性が要求される層間絶縁膜の用途が好ましい。
以下、具体的な電子部品への応用例を示す。
【0051】
(1)半導体用層間絶縁膜
半導体集積回路を搭載したシリコン基板、金属板あるいはセラミック基板などの半導体基板は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜で被覆され、露出した回路素子上にアルミニウム等からなる第1導体層が形成されている。
そして、この半導体基板上にフッ素含有ポリイミド樹脂をスピナー法(回転塗布法)などで塗布し、加熱熱処理することにより、溶媒の除去が行われ、層間絶縁膜としてのフッ素含有ポリイミド樹脂膜が形成される。
【0052】
次にフェノールノボラック系感光性樹脂等からなる感光性樹脂層を、層間絶縁膜上にスピナー法により形成し、公知のフォトリソグラフ技術によって所定部分の層間絶縁膜が露出するように窓(ビアホール部)が設けられる。そして、この窓部に露出した層間絶縁膜は、ドライエッチングにより選択的に除去され窓が開けられる。次いで感光性樹脂層を除去する。さらに公知の金属膜形成法、例えばスパッタリング法およびフォトリソグラフ技術を用いて第2導体層を層間絶縁膜上に形成するとともに、ビアホール部を介して、この第2導体層と第1導体層とを電気的に接続する。
【0053】
3層以上の多層配線構造体を作成する場合は、上記工程を繰り返して行う。
また、この発明のフッ素含有ポリイミド樹脂を用いて、多層配線構造体(半導体素子)の最上部に絶縁性材料からなる表面保護膜を形成することもできる。
さらに、本発明の電子部品においては、フッ素含有ポリイミド樹脂を絶縁材料および表面保護材料として使用することができる。特に半導体装置(半導体素子)においては、低誘電性の層間絶縁膜として好適に用いられる。
【0054】
(2)多層化フレキシブル回路基板
ステンレスベルト上に本発明のフッ素含有ポリイミドワニスを連続的にTダイなどを用いて塗布する。次に、所定の熱処理条件(通常200〜300℃)により、フッ素含有ポリイミドワニスに含まれる溶媒を蒸発除去し、フッ素含有ポリイミド樹脂からなるフィルム(通常、膜厚2〜100μm)を作成する。
それから、ドライプロセスを用いて、フッ素含有ポリイミドフィルム上にターゲットから銅を真空条件下でスパッタリング法によって析出させるか、あるいは、ウェットプロセスを用いて、メッキ浴中で行うメッキ法などから銅張フレキシブル基板を作成することができる。
そして、低誘電性の特性が要求される多層化フレキシブル基板においては、前記フッ素含有ポリイミド樹脂がその基材として好適に用いられる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
【0056】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管をそれぞれ備えた容器内に窒素ガスを流入し、N、N−ジメチルホルムアミド276.8gを仕込んだのち、9、9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−3−フェニル〕フルオレン26.633g(50ミリモル)を添加して十分溶解した。その後、2、2−ビス(3、4−ジカルボキシフェニルヘキサフルオロプロパン二無水物22.213g(50ミリモル)を添加した、さらに、攪拌機を用いて室温で5時間攪拌して、フッ素含有ポリアミック酸の溶液を得た。このフッ素含有ポリアミック酸の溶液の対数粘度を測定したところ(N、N−ジメチルホルムアミド溶媒、30℃、濃度0.5g/dl)、その値は0.80dl/gであった。
【0057】
そして、このフッ素含有ポリアミック酸の溶液に、キシレン80mlを加え、加熱、還流を3時間行い、フッ素含有ポリアミック酸からフッ素含有ポリイミド樹脂(溶液状態)を得た。
それから、この間に生成した水分を、共沸留法を用いて分離して除去した。次に、水分の留出がさらに無いことを確認の上、フッ素含有ポリイミド樹脂溶液から、過剰のキシレンを蒸留により除去した。
その後、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として添加し、フッ素含有ポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液の対数粘度を測定したところ(N、N−ジメチルホルムアミド溶媒、30℃、濃度0.5g/dl)、その値は、0.81dl/gであった。
【0058】
(コーティング膜の作成)
以下に示すとおり、第1〜第3のフッ素含有ポリイミド樹脂からなるポリイミドフィルムを作成した。
(1)上記フッ素含有ポリアミック酸の溶液をSUS304基板上に、スピンコート(回転塗布法)により塗布したのち、80℃、140℃、200℃、250℃、300℃の各温度に順次昇温させ、各温度で20分間加熱保持して、フッ素含有ポリイミド樹脂からなる第1のポリイミドフィルムを作成した。
【0059】
(2)上記フッ素含有ポリイミド溶液を、フッ素含有ポリアミック酸の溶液の場合と同様に、SUS304基板上に、スピンコートにより塗布したのち、80℃、140℃、200℃の各温度に順次昇温させ、各温度で20分間加熱保持して、フッ素含有ポリイミド樹脂からなる第2のポリイミドフィルムを作成した。
(3)上記フッ素含有ポリアミック酸の溶液をガラス板上に、流延した後、80℃、140℃、200℃、250℃、300℃の各温度に順次昇温させ、各温度で20分間加熱保持して、フッ素含有ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミドフィルムを作成した。
【0060】
(コーティング膜の評価)
(1)比誘電率(ε)の測定
この第1のポリイミドフィルム上に、マスク蒸着により金電極を形成して、比誘電率測定用試料とした。この試料を用い、比誘電率(ε)を以下に示す方法で測定した。
すなわち、フッ素含有ポリイミド樹脂からなるポリイミドフィルムの1MHzにおける静電容量を、横河ヒューレットパッカード社製のLCRメーター4284Aを用いて測定し、下記式により比誘電率(ε)を求めた。
ε=C・d/(ε0・S)
ただし、Cは静電容量、dは試料膜厚、ε0 は真空中の誘電率、Sは上部電極面積をそれぞれ表す。
その結果、フッ素含有ポリイミド樹脂からなる第1のポリイミドフィルムの比誘電率εの値は、2.82であり、十分低い値であることが確認された。
また、第2のポリイミドフィルムについても、第1のポリイミドフィルムと同様に比誘電率を測定したところ、比誘電率εの値は、第1のポリイミドフィルムと同じく2.82であり、十分低い値であることが確認された。
【0061】
(2)体積固有抵抗の測定
ガラス基板上に作成したフッ素含有ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミドフィルム(厚さ30μm)における体積固有抵抗を測定した。
すなわち、体積固有抵抗測定装置(アドバンテスト(株)製、R8340A、ウルトラハイレジスタンスメータ)を用いて、第3のポリイミドフィルムの体積固有抵抗を測定したところ、その値は、6×1016Ω・cmであった。
【0062】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス基板上に作成したフッ素含有ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミドフィルムにおけるガラス転移温度を測定した。
すなわち、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/分の条件でフッ素含有ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)を測定した。
その結果、フッ素含有ポリイミ樹脂フィルムにおける、Tgは293℃であった。したがって、この発明のフッ素含有ポリイミド樹脂からなるフィルムは、ガラス転移温度に関して高い耐熱性を有していることが確認された。
【0063】
(4)5重量%熱分解温度(Td5)の測定
ガラス基板上に作成したフッ素含有ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミドフィルムにおけるガラス転移温度を測定した。
すなわち、熱天秤(TGA)を用い、窒素中、昇温速度10℃/分の条件で加熱し、加熱開始前の試料重量を100重量%としたときに、5重量%の試料重量の減少指示温度を、5重量%熱分解温度(Td5)として測定した。
その結果、フッ素含有ポリイミド樹脂フィルムにおける、Td5は534℃であった。したがって、この発明のフッ素含有ポリイミド樹脂からなるフィルムは、5重量%熱分解温度に関して、高い耐熱性を有していることが確認された。
【0064】
(5)フッ素含有率の測定
この発明のフッ素含有ポリイミド樹脂をd6DMSOに溶解し、このフッ素含有ポリイミド樹脂溶液のフッ素含有率を、基準物質として、基準量のベンゾトリフルオライドを用いてNMR法により測定した。
その結果、フッ素含有ポリイミド樹脂におけるフッ素含有率は、12.1重量%であった。
【0065】
[実施例2〜12および比較例1、2]
芳香族ジアミン化合物およびテトラカルボン酸二無水物を表1および一部併用してIRチャート(図3〜図21)で表される化合物を用いたほかは実施例1と同様の条件において、フッ素含有ポリアミック酸の合成およびフッ素含有ポリイミドフィルムの作製をそれぞれ行った。そして、実施例1と同様の条件および手法により、フッ素含有ポリイミド溶液の対数粘度〔ηinh〕、フッ素含有ポリイミド樹脂からなるフィルムの比誘電率(ε)、ガラス転移温度(Tg)および5重量%熱分解温度(Td5)をそれぞれ測定した。これらの結果を表1に示す。
【0066】
[実施例13]
実施例1で得られたフッ素含有ポリイミド樹脂溶液の溶媒を、γ−ブチロラクトンに置換し、固形分濃度が5重量%のフッ素含有ポリイミド樹脂溶液とした。そして、この溶液におけるフッ素含有ポリイミド樹脂に対して、シランカップリング剤であるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを5重量%の濃度となるように添加した。
【0067】
次に、このシランカップリング剤を添加したフッ素含有ポリイミド樹脂溶液を、Al(アルミニウム)蒸着したシリコンウェハー上にスピンコーティング(回転塗布)法により塗布した。それから、このフッ素含有ポリイミド樹脂が表面に積層されたシリコンウェハーを、クリーンオーブンを用いて、100℃×10分、次いで150℃×10分、さらに引き続き200℃×10分の条件で熱処理し、3μmの膜厚のコーティング膜を形成し、以下の評価に供した。
【0068】
(1)比誘電率の測定
得られたコーティング膜の比誘電率(1MHz)を測定したところ、2.82という値が得られた。
さらに、温度制御可能なオーブンを用いて、300℃、1時間、窒素下の条件で以て加熱処理したコーティング膜の比誘電率を測定したところ、加熱処理前のコーティング膜の比誘電率と比較して、比誘電率の変化は3%以内と低いことが確認された。
【0069】
(2)膜厚測定
また、得られたコーティング膜について触針式の膜厚計を用いて膜厚を測定した。その結果、塗布面内における膜厚変化(差)は1%以下であり、このコーティング膜は優れた平坦性を有していることが確認された。
(3)密着性試験
さらに、得られたコーティング膜に対して、碁盤目試験による密着性試験を行った。その結果、剥離部分は観察されず(残存数100個/100個)、シリコンウェハーに対するコーティング膜の密着性が良好であることが確認された。
【0070】
(4)PCT試験(耐湿熱試験)
また、得られたコーティング膜に対して、温度121℃、圧力2気圧、湿度100%、時間24時間の条件で以てPCT(プレッシャークッカー試験)を行い、その後碁盤目試験による密着性試験を行った。
その結果、剥離部分(残存数100個/100個)やクラックの発生は特に見られなかった。また、PCT試験後のコーティング膜の比誘電率を測定したところ、試験前の誘電率と比較して、誘電率の変化率は3%以内と低いことが確認された。
【0071】
(5)エッチング特性の評価
上述したシランカップリング剤を添加したフッ素含有ポリイミド樹脂溶液を、シリコンウェハー上にスピンコーティングして乾燥、熱処理後(100℃×10分、次いで150℃×10分、さらに続いて200℃×10分)、3μmの膜厚のコーティング膜とした。
こうして得られたコーティング膜上に、さらに1.5μmの膜厚のノボラック型ポジレジストを塗布し、露光マスクを介して紫外線を照射した後、アルカリ現像液を用いて現像し、レジストパターンを形成させた。そして、エッチングガスとして、O2 /CF4 =75/25(ガス組成)の混合ガスを用い、コーティング膜のドライエッチングを行った。
その結果、L&S(ライン/スペース=50/50)が1μmのフッ素含有ポリイミド樹脂からなるコーティング膜のパターニングができたことを光学顕微鏡で確認した。
したがって、本発明のフッ素含有ポリイミドは、パターニングが要求される用途、例えば、フレキシブル回路基板等の電子材料用途に適していると言える。
【0072】
なお、シランカップリング剤を添加していない実施例1で得られたフッ素含有ポリイミド樹脂溶液についても、上述したように、エッチング特性を評価した。
すなわち、まず、フッ素含有ポリイミド樹脂溶液をシリコンウェハー上にスピンコーティングして3μmの膜厚のコーティング膜を製膜した。それから、このコーティング膜上に、1.5μmの膜厚のノボラック型ポジレジストからなるレジストパターンを形成させた。そして、エッチングガスとして、O2 /CF4 =75/25(ガス組成)の混合ガスを用い、コーティング膜のドライエッチングを行った。
その結果、L&S(ライン/スペース=50/50)が1μmのフッ素含有ポリイミド樹脂からなるコーティング膜のパターニングができたことを光学顕微鏡で確認した。
【0073】
以上のとおり、この発明の電気絶縁材料としてのフッ素含有ポリイミド樹脂からなるコーティング膜は、低い誘電率や優れた耐熱性や耐湿性を有し、下地に対する密着性に優れ、さらには表面平滑性にも優れていることが確認された。
したがって、この発明の電気絶縁材料としてのフッ素含有ポリイミド樹脂からなるコーティング膜は、電子材料用層間絶縁膜の用途(半導体装置、MCM−D)に特に適しているということができる。
【0074】
【表1】
Figure 0004045621
【0075】
【表2】
Figure 0004045621
【0076】
【発明の効果】
本発明の電気絶縁材料としてのフッ素含有ポリイミド樹脂は、上述した一般式(1)で表される繰り返し単位および一般式(2)で表される繰り返し単位あるいはいずれか一方で表される繰り返し単位を含むことにより、比誘電率が低く、耐熱性に優れており、しかも各種溶媒に対する溶解性にも優れている電気絶縁材料としてのフッ素含有ポリイミド樹脂を提供できるようになった。
また、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む本発明の電気絶縁材料は、各種溶媒における溶解性にも優れているため、使い勝手も良い。
また、フッ素含有ポリイミド樹脂を含む本発明の電気絶縁材料は、コーティング膜として製膜した場合に、表面平滑性にも優れている。
さらに、このフッ素含有ポリイミド樹脂からなるコーティング膜は、精度が高いエッチング特性を有していることも確認されている。
したがって、この電気絶縁材料をたとえばLSI(大規模集積回路)の層間絶縁膜として用いた場合に、信頼性が高く、かつ高速化に対応しうるデバイス(素子)、たとえば半導体装置をもたらすことができるようになった。
【0077】
また、本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂を含むワニスは、基材等に容易に塗布加工して、比誘電率が低く、耐熱性に優れており、しかも表面平滑性にも優れているコーティング膜を提供可能なため、使い勝手の良いポリマー溶液として好適に用いることができるようになった。
【0078】
さらに、本発明のフッ素含有ポリイミド樹脂を含む電子部品は、誘電率が低く、かつ優れた耐熱性を有しているため、LSIが内蔵されている家庭用電気機器および産業用機器の一部あるいは全部として好適に用いることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図2】実施例1により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図3】実施例2により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図4】実施例2により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図5】実施例3により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図6】実施例3により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図7】実施例4により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図8】実施例4により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図9】実施例5により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図10】実施例5により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図11】実施例6により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図12】実施例6により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図13】実施例8により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図14】実施例9により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図15】実施例9により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図16】実施例10により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図17】実施例10により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図18】実施例11により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図19】実施例11により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。
【図20】実施例12により得られたポリアミック酸のIRチャートを示す図である。
【図21】実施例12により得られたポリイミド樹脂のIRチャートを示す図である。

Claims (16)

  1. 下記一般式(1)で表される繰り返し単位および下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むフッ素含有ポリイミド樹脂であって、イミド化率が50%以上であり、かつフッ素原子含有率が0.1〜30重量%の範囲内であることを特徴とするフッ素含有ポリイミド樹脂。
    Figure 0004045621
    Figure 0004045621
    〔一般式(1)及び(2)において、R〜Rは、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、lは0または1〜3の整数、mは0または1〜4の整数であり、基Aは、2価の有機基であって、下記式(3)に示す有機基C、下記式(4)に示す有機基D、下記式(5)に示す有機基Eおよび下記式(6)に示す有機基Fからなる群から選ばれた1種以上の有機基であり、基Bは、下記式(3)に示す有機基Cである。
    Figure 0004045621
    (一般式(3)中、RおよびRは、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、R及びRは、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基および下記式(7)に示す基から選ばれ、nは0または1〜4の整数であり、pは0または1〜4の整数である。)
    Figure 0004045621
    Figure 0004045621
    (一般式(5)中、R及びR10は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、mは0または1〜4の整数である。)
    Figure 0004045621
    Figure 0004045621
    (一般式(7)中、R11は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、qは0または1〜5の整数である。)〕
  2. フッ素原子含有率が1〜25重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有ポリイミド樹脂。
  3. 対数粘度(N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、濃度0.5g/dl、30℃で測定)が、0.05〜10dl/gの範囲内の値であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素含有ポリイミド樹脂。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素含有ポリイミド樹脂及び溶媒を含むワニス状電気絶縁材料。
  5. 前記溶媒を、フッ素含有ポリイミド樹脂100重量部に対して150〜3000重量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項4に記載のワニス状電気絶縁材料。
  6. 前記溶媒が、N−メチルピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、メトキシメチルプロピオネート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選択された少なくとも一つの溶媒であることを特徴とする請求項4又は5に記載のワニス状電気絶縁材料。
  7. 粘度が、10〜100,000cps(測定温度25℃条件)の範囲内の値であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のワニス状電気絶縁材料。
  8. ワニス状電気絶縁材料中のフッ素含有ポリイミド樹脂100重量部に対して、さらにシランカップリング剤を0.1〜30重量部の範囲内でさらに含むことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のワニス状電気絶縁材料。
  9. 前記シランカップリング剤が、アミノシランカップリング剤およびエポキシシランカップリング剤あるいはいずれか一方であることを特徴とする請求項8に記載のワニス状電気絶縁材料。
  10. 請求項4〜9のいずれか1項に記載のワニス状電気絶縁材料を固化させてなる電気絶縁材。
  11. ガラス転移温度が、230℃以上の値であることを特徴とする請求項10に記載の電気絶縁材。
  12. 5重量%熱分解温度(窒素ガス中、10℃/分昇温)が400℃以上の値であることを特徴とする請求項10又は11に記載の電気絶縁材。
  13. 比誘電率(1MHz)が、2.9以下の値であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の電気絶縁材。
  14. 窒素ガス中、400℃、3時間における熱重量変化が3%以内であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の電気絶縁材。
  15. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素含有ポリイミド樹脂を含む電気絶縁材料を、少なくとも一部に含むことを特徴とする電子部品。
  16. 電子部品が、半導体における層間絶縁膜、平坦化膜、電気絶縁膜、キャパシタ絶縁膜、高周波基板用基材、フレキシブルプリント配線基板用基材、TABテープ用基材およびフィルムキャリア用基材のいずれか一つであることを特徴とする請求項15に記載の電子部品。
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