JP4044514B2 - オフセット印刷機用のゴム胴スリーブ - Google Patents

Description

本発明は、請求項１の前提部分おいて書き部に記載のゴム胴スリーブに関する。

ゴム・コーティング付きの保持スリーブが設けられたゴム胴スリーブが知られている。ここで、ゴム・コーティングは、３層もしくはそれより多い層から形成されている。これに関しては、例えば、特許文献１としての欧州特許第０４２１１４５号明細書を参照されたい。

オフセット輪転印刷機において、印刷像は、周知のように、プレート胴もしくは版胴からゴム胴へ、さらには、このゴム胴から、印刷胴上を走行する紙の上へと転写される。印刷版からゴムスリーブへのインキの転写だけでなく、同じくゴムスリーブから紙の上への転写もまた、ゴムブランケット胴とプレート胴ないし版胴との間、あるいはゴムブランケット胴と対向圧胴との間の線圧と呼ばれる所定の最小限度の圧力が存在して初めて可能になる。

ここで、常に大きくなる生産性への要求から、あるいは、出来るだけ軽くてコストのかからない印刷版胴を作製する努力によって、品質保証に関わる問題が生じてくる。いわゆる溝無し印刷、それも、スリーブ上に溝無しで着設された印刷版、および／または溝無しで着設されたゴムブランケットによって代表されるスリーブ技術の場合にはまさに、胴溝が無いおかげで振動が励起されることが少なくなる分、剛性を低くすることができる。そのために、印刷胴の長さ／厚さ比、もしくは、たわみに対する自身の相対的な剛性は、常に不利になり続けている。この結果、印刷運転中に、不本意にも印刷胴同志の形や姿勢が互いに変化する、すなわち、印刷胴がたわんでしまうことになるのである。

たわみによる位置や姿勢の変化（本明細書中、位置姿勢変化と呼ぶこともある）は、押し当て方、言い換えれば、印刷装置内で協働する印刷胴同志の間の当接圧力を、胴幅に亙って不均一なものに変えてしまう。この押し当て方は、通常いわゆる押し付け跡の幅を測定することによって数値的に読み取れる。押し付け跡幅というのは、互いに当接された、つまり押圧状態に持来された胴同志において、胴の接触領域を決めるゾーンの幅のことである。この測定は、オフセット印刷の場合には、とりわけ簡単である。というのも、この場合、胴の対のうち一方の胴が圧縮可能な（柔らかい）表面を有しているからである。

機械的な調整がこのように欠けたままになっていることで、本明細書において上述した位置姿勢変化により紙ウェブが幅方向に亙って不均一な速度プロファイルで動くと、周知のように、ゴム胴の印刷間隙において、搬送される紙ウェブに皺が発生する。この場合、紙ウェブの中心は、ウェブの外側よりも早く動き、これが皺を発生させることになる。輪転オフセット印刷機におけるウェブ移送特性は、ゴムブランケットの搬送特性によって大きく左右される。特にスリーブ式の印刷機では、ページの見当合わせ（Seitenpasser）に悪い影響を及ぼすような皺が同じくウェブ幅に亙って形成されることがある。この問題を解消するには、例えば、特許文献２としての独国特許出願公開第４４３６９７３号明細書におけるように、予めゴムスリーブを、ウェブ幅に亙って自身の表面形状において凹型もしくは凸型に形成する、つまり、外周面が胴の軸線方向においてゴムブランケット胴上で凸型もしくは凹型の形をなすように、厚さプロファイルを変化させることである。

上記明細書中には、剛性もしくは圧縮性が軸線方向において異なるようにすることも提案されている。この場合、上記明細書では、いずれも半径方向の大きさが問題とされている。つまり、久しく従来技術とされているように、半径方向の圧縮性と半径方向の剛性が注目されるのである。しかしながら、上記明細書によれば、圧縮性と剛性は、いずれも既に述べたように半径方向、つまり、ゴムブランケットの面を横切る方向に関するものが、軸線方向に沿って異なるようにしなければならないというものである。

ゴムブランケット胴表面の凸型のプロファイルにより、確かに、ゴムブランケット胴とプレート胴ないし版胴との間のたわみは解消できるが、しかしその一方で、両面印刷用印刷装置内の２つのゴムブランケット胴同志の間の接触が悪くなってしまう。そのため、ウェブの搬送だけでなく、紙ウェブへのインキ転写にも悪い影響が及ぶ。凹型のゴムブランケット胴表面により、確かに、印刷間隙における両ゴムブランケット胴の接触は良くなるが、しかし今度は、プレート胴ないし版胴からゴムブランケット胴へのインキ移りが悪くなってしまう。（半径方向に関する）圧縮性もしくは剛性を軸線方向に変化させる場合にもよく似たことが起こる。

加えて、上述した搬送特性を制御するための処置は、半径方向の圧縮性もしくは半径方向の剛性がスリーブ長に亙って変調されて、これが印刷品質、とりわけ階調値増加に悪影響を及ぼすという欠点を有している。
欧州特許第０４２１１４５号明細書 独国特許出願公開第４４３６９７３号明細書

こうして、本発明の課題は、輪転印刷における品質を保証することができ、その際、スリーブ長にわたる半径方向の圧縮性もしくは半径方向の剛性を損ねることなくゴムスリーブの搬送特性を制御することができる上記の類のゴム胴スリーブを提供することにある。

この課題は、本発明により、請求項１の特徴部分に記載の構成により解決される。

本発明により、ゴムスリーブの場合、周方向における弾性（この周方向には弾性は損なわれない）がウェブ幅に亙って変調されることで、紙ウェブ幅に亙る搬送特性が制御可能となる一方、それでもゴムスリーブの圧縮性が損なわれることがない。

この解決手段は、溝無しのゴムスリーブだけでなく、溝付きのゴムスリーブにも適用でき、同じように、ゴムブランケットにも適用できる。

以下、本発明を実施形態に基づき詳述する。唯一の図は、断面において層構造体を有するゴム胴スリーブと、弾性Ｓ（「周方向剛性」もしくは「周方向弾性」）の特徴を示している。

ゴム胴スリーブ１は、エアによって拡張可能な内側の保持スリーブＡを備えている。この保持スリーブＡ上に、圧縮性シート部材３、弾性シート部材４、ゴム材５からなるゴム・コーティングＢが被覆されている。保持スリーブＡは、本実施形態においては、例えば鋼等の金属から形成され、一枚のプレートから作られている。このプレートは、端部が互いに溶接されており、これによって突合せによる接続部が形成されている。保持スリーブＡは、接続部無しで無端に形成することもでき、例えば、電気鍍金によりニッケルから形成することができる。また、保持スリーブＡは、例えば、繊維強化エポキシ樹脂、例えばＣＦＫ、といったプラスチックから形成することもできる。いずれの場合も、保持スリーブＡは、圧搾空気によって弾性的に拡張可能とされ、このようにして、印刷装置胴上へと軸線方向にスライドさせることができる。

ゴム・コーティングＢは、通常、保持スリーブＡ上に、接着層７を形成することで接着もしくは加硫されている。このとき、突合せ接続部は、接着個所として形成されている。

複数シート構造は、空気が封印された構成の圧縮可能な圧縮性シート部材３と、線材／布材もしくは糸材からなる弾性に作用する弾性シート部材４とを備えている。上記線材は、上記ゴム胴スリーブの周方向に概ね揃えられており、好ましくは、１０〜３０ｍｍの長さを有している。空気を密閉する代わりに、圧縮可能な繊維を設けることもできる。上記層構造体は、さらに、普通ゴムブランケットに用いられているようなゴム材５を備えている。例えば、独国特許出願第１０２２８６８６．８号明細書に既に記載されているように、弾性シート部材４内の線材は、必ずしも均等に配分されていなければならないという必要性はない。半径方向において、保持スリーブＡの方に向かって次第により多くの空気が密閉され、より多くの気泡が設けられている一方で、線材は、半径方向において、外側表面の方に向かって次第に一層密に設けられている。これに対応して、弾性Ｓは、シートの厚さｄの部分で外側に向かって次第に増加する一方で、相対的な圧縮性Ｋが保持スリーブＡの方に向かって増加する。

とは言え、弾性シート部材４内に、外側表面の方に向かって線材を次第に密に設けて、この方向に向かって弾性Ｓが増加するようにし、さらに、気泡を一様に配分して、圧縮性シート部材３の全厚に亙って半径方向の圧縮性が同じになるようにすることも同じく可能である。

半径方向に圧縮可能な部材と線材を配置するさらに他の変形例も可能である。この場合、ゴム・コーティングＢが圧縮性シート部材３、弾性シート部材４、ゴム材５の任意の構成を有することができるという好適な実施形態だけが単に重要なのである。

いずれにしても、上述したゴムスリーブの場合、ゴム・コーティングＢ内には、周方向弾性Ｓに影響を与える線材／糸材もしくは布材の形態のシート部材が確かに周方向（つまり矢印方向Ｓ）において均一に、しかしながら、スリーブ軸線Ｘの方向においては様々な強さで予め引き伸ばされ（プレストレッチされ）た状態に処理され、これにより、スリーブ幅に亙って不均一な周方向弾性プロファイル６ａ，６ｂ，６ｃ（弾性分布）が生じるようになっている。

スリーブの弾性Ｓに影響を与える弾性シート部材４のプレストレッチ（弾性限界を超えた「ストレッチ」）は、好ましくは、適した工具を用いて、選択された弾性プロファイル６ａ，６ｂ，６ｃを生成するようにしながら厳密に規定されて行われ、上記弾性プロファイルが接着層７を介した接着により保持スリーブＡ上に保存される。このプレストレッチ（予備伸張）は、ゴムスリーブを胴上に張り付ける際にも可能であるが、ただし、もはやさほど厳密に決められない状態でしか、あるいは、さほど制御されない状態でしか剛性プロファイルを形成できないという欠点がある。

「プロファイル（分布）」という概念は、本明細書中、周方向弾性値Ｓが、該プロファイルがスリーブ幅の真中に対して対称に形成されるという条件付きで、層構造体内でスリーブの軸線方向に様々に変化することを意味する。

図中、符号６ａ，６ｂ，６ｃで様々なプロファイルの実例が示されている。これらの例は、確かに同時に存在するものではないが、それでも、一つ一つは、有効に用いることができる。

かくして、符号６ａは、紙ウェブに皺が出来る原因となる印刷間隙に沿った紙ウェブの速度差を修正できるような、ゴム・コーティングＢの「凸型」弾性プロファイルを示すものである。

符号６ｂは、逆に「凹型」弾性プロファイルを示し、その一方で、符号６ｃは、「二重凸型」剛性プロファイルを示している。

全てここに示されたプロファイル（とは言え、さらに他のものも）は、線材／糸材もしくは布材を予め伸ばす（予備伸張）によって思いのまま形成することが可能で、ゴムスリーブ内にそのまま保存することができ、これが本発明の中核をなしている。

ゴムスリーブのゴム・コーティングＢ内のプロファイル６ａ，６ｂ，６ｃの形を注意深く選択すれば、紙ウェブが通り抜ける印刷間隙に沿った表面速度が使用中に均一となるようなゴムブランケットが得られ、これにより、プロファイル６ａ，６ｂ，６ｃが変化するために皺ができてしまうようなことが避けられる。このとき、従来技術による様々な半径方向の剛性値ならびに圧縮性値は要らない。

スリーブ軸線方向に亙って単調に分布する剛性と比べ、スリーブの周方向の弾性が或る特定の軸線方向プロファイルを有している場合に、最も良い結果が得られるということが試験により示されていて、この特定のプロファイルの場合には、搬送される紙ウェブの速度プロファイルがウェブ幅に亙って変化して、ゴム胴スリーブの搬送特性がウェブ幅に亙って−０．５％＜０＜＋０．５％の範囲で制御されるようになっている。

断面において層構造体を有するゴム胴スリーブと、弾性Ｓの特徴を示す図である。

符号の説明

１ ゴム胴スリーブ
３ 圧縮性シート部材
４ 弾性シート部材
５ ゴム材
６ 弾性プロファイル
６ａ 弾性プロファイル
６ｂ 弾性プロファイル
６ｃ 弾性プロファイル
７ 接着層
Ａ 保持スリーブ
Ｂ ゴム・コーティング
Ｓ 弾性

Claims (1)

1. オフセット印刷機のための、転写胴スリーブとしてのゴム胴スリーブ（１）であって、空気で拡張可能な内側の保持スリーブ（Ａ）を有して、該保持スリーブ上にゴム・コーティング（Ｂ）が設けられてなるゴム胴スリーブにおいて、
   前記ゴム・コーティング（Ｂ）は、層構造体から成り、該層構造体は、外側表面から離間された圧縮可能な圧縮性シート部材（３）と、
   弾性（Ｓ）に影響を与える線材／糸材もしくは布材といった弾性シート部材（４）とを有し、
   前記弾性（Ｓ）に影響を与える前記弾性シート部材（４）は、周方向に引き伸ばすことによりプレストレッチされており、しかも前記プレストレッチは、前記弾性シート部材（４）のスリーブ軸線方向に対する位置に応じて定められた所定の力によりなされ、これにより、確立された弾性プロファイルが前記保持スリーブ（Ａ）の幅の中心線に関して対称に分布していることを特徴とするゴム胴スリーブ。

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