JP4043353B2 - 防風板付パンタグラフ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明に係る防風板付パンタグラフ装置は、架線から電力を取り入れる為、新幹線等、高速で運転する鉄道車両の屋根上に設置した状態で使用する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の屋根の上方にはパンタグラフ装置を介して集電舟を支持し、架線から電力を取り入れる様にしている。即ち、この集電舟の上面に支持した、燒結金属等の導電材製の摺り板を架線の下縁に向け弾性的に押し付け、この架線から車両に電気を取り入れる様にしている。この様なパンタグラフ装置のうち、新幹線等の高速鉄道車両に使用するものは、運転時に発生する気流騒音の低減を考慮して、在来線に使用していた菱形構造のものとは異なる構造の、所謂シングルアーム構造のものを使用している。
【0003】
この様に気流騒音の低減を考慮したシングルアーム構造のパンタグラフ装置として、特許文献1や非特許文献1に記載されたものが知られている。図5〜8は、これら特許文献1及び非特許文献1に記載されたパンタグラフ装置1を示している。このパンタグラフ装置1は、台枠2の上面に、請求項に記載した第一の横軸である揺動支持軸3を、車両の幅方向に亙って設けている。そして、この揺動支持軸3の中間部に、下枠4の基端部(下端部)を固定している。従ってこの下枠4は、この揺動支持軸3を中心として起伏する。又、この下枠4の先端部(上端部)に、請求項に記載した第二の横軸である連結軸5を、上記揺動支持軸3と平行に設けている。そして、この連結軸5により、上枠6の基端部(下端部)を上記下枠4の先端部に、揺動変位自在に結合している。更に、上記上枠6の先端部(上端部)に、集電舟装置7を支持している。そして、上記揺動支持軸3と上記台枠2との間に設けたばね8により、上記下枠4と上枠6とを、図5に鎖線で示す畳んだ状態から同図に実線で示す状態にまで起立させる方向の弾力を付与している。
【0004】
鉄道車両の走行時に上記集電舟装置7は、屋根面と架線との距離の変化に対応して、上記下枠4と上記上枠6との交差角度を変化させつつ、上記屋根面に対し昇降する。この場合でも、上記集電舟装置7の姿勢を一定として、この集電舟装置7の上面に支持した摺り板9、9と上記架線の下縁との摺接状態が適正に維持される様にしている。この為に、上記下枠4の先端部と上記上枠6の基端部との連結部、並びにこの上枠6の先端部と上記集電舟装置7との連結部には、適宜のリンク機構を設けて、上記下枠4及び上枠6の起伏に拘らず、上記集電舟装置7の姿勢が変化しない様にしている。
【0005】
具体的には、上記上枠6の基端部に釣り合い腕10の基端部を、この上枠6の基端部から下方に突出する状態で結合固定し、この釣り合い腕10をこの上枠6と共に、上記連結軸5を中心として揺動する様にしている。又、この釣り合い腕10の先端部に、請求項に記載した第三の横軸である釣り合い軸11を、上記揺動支持軸3及び連結軸5と平行に設け、この釣り合い軸11に、釣り合い棒12の先端部(上端部)を、揺動変位自在に支持している。又、この釣り合い棒12の基端部(下端部)を前記台枠2の上面に、請求項に記載した第四の横軸であって上記釣り合い軸11と平行に設けられた下部釣り合い軸13により、揺動変位自在に支持している。更に、上記集電舟装置7の下面に設けたリンク腕14の先端部と、上記下枠4の先端部に固定された部分とに、ロッド15の両端部を揺動変位自在に連結している。
【0006】
上述の様な構成により、上記下枠4及び上枠6の起伏に拘らず、上記集電舟装置7の姿勢が変化しない様にしている。尚、これら下枠4及び上枠6は、何れも中空管状としており、上記釣り合い棒12はこのうちの下枠4の内側に、上記ロッド15は上枠6の内側に、それぞれ配設している。
この様な構造を有するパンタグラフ装置1を構成する、上記下枠4の長さL4 (揺動支持軸3の中心と連結軸5の中心との距離)と、上記上枠6の長さL6 (連結軸5の中心と集電舟装置7の揺動支持軸の中心との距離)とは従来、ほぼ等しくしていた。より具体的には、上記下枠4の長さL4 を上記上枠6の長さL6 の0.5〜1.5倍程度(L4 =0.5L6 〜1.5L6 )としていた。
【0007】
【特許文献1】
特許第3297355号公報
【非特許文献】
「鉄道車両と技術」、レール アンド テック出版、平成13年11月20日、第7巻第5号、通巻第70号、第15〜19頁
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した様な特許文献1及び非特許文献1に記載されたパンタグラフ装置1の場合、鉄道車両の屋根面上への設置状態で、連結軸5及び釣り合い軸11部分で気流騒音が生じ易くなる為、改良が望まれている。この点に就いて、図9〜10により説明する。
【0009】
図9に略示する様に、下枠4の長さL4 と上枠6の長さL6 とがほぼ等しい従来のパンタグラフ装置1の場合には、走行時に起立させた状態では、連結軸5及び釣り合い軸11部分の高さ位置が高くなる。パンタグラフ装置1を鉄道車両の屋根面に設置する場合には、図10に略示する様に、台枠2を屋根面16上に、碍子17、17を介して支持する。又、この屋根面16でこの台枠2を前後から挟む2個所位置には、パンタカバーと呼ばれる防風板18、18を設置する。
【0010】
上記連結軸5及び釣り合い軸11部分の高さ位置が高くなると、これら両軸5、11が上記防風板18、18よりも上方に露出し、走行時にこれら両軸5、11部分に風が当り、高速走行時には気流騒音が発生する。実際の場合には、上記両軸5、11の設置部分はカバー19(図5〜8)により覆っているが、このカバー19が気流騒音の原因となる。上記防風板18、18の高さH18を大きくする事は、鉄道車両の高速走行時の空気抵抗を増大させる原因となる為、採用する事は難しい。
本発明の防風板付パンタグラフ装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の防風板付パンタグラフ装置は、台枠と、防風板と、第一の横軸と、下枠と、第二の横軸と、上枠と、釣り合い腕と、第三の横軸と、釣り合い棒と、第四の横軸とを備える。
このうちの台枠は、鉄道車両の屋根面上に支持される。
又、上記防風板は、この屋根面上で上記台枠を前後から挟む2個所位置に設置される。
又、上記第一の横軸は、上記台枠上に設けられている。
又、上記下枠は、この第一の横軸によりその基端部を揺動自在に支持されている。
又、上記第二の横軸は、上記下枠の先端部に、上記第一の横軸と平行に設けられている。
又、上記上枠は、上記第二の横軸によりその基端部を揺動自在に支持されている。
又、上記釣り合い腕は、上記上枠の基端部から突出する状態で、この上枠に対しその基端部を結合固定され、この上枠と共に上記第二の横軸を中心として揺動する。
又、上記第三の横軸は、上記釣り合い腕の先端部に、上記第一、第二の横軸と平行に設けられている。
又、上記釣り合い棒は、上記第三の横軸により、その先端部を揺動自在に支持されている。
更に、上記第四の横軸は、上記釣り合い棒の基端部と上記台枠との間に、上記第一〜第三の横軸と平行に設けられて、この釣り合い棒の基端部をこの台枠に対し揺動自在に支持している。
特に、本発明の防風板付パンタグラフ装置に於いては、上記下枠の長さを、上記上枠の長さの1/6〜1/3倍としている。そして、これら下枠及び上枠の起立状態でも、上記第二、第三の横軸の設置部分を、上記防風板により覆われて走行時に風が当たらない部分に位置させている。
【0012】
【作用】
上述の様に構成する本発明の防風板付パンタグラフ装置の場合には、下枠の長さを短くした分、第二、第三の横軸の設置部分を低くできる。この為、下枠及び上枠の起立状態でも、これら第二、第三の横軸の設置部分を、防風板により覆われて風が当たらない部分に位置させて、この設置部分での気流騒音の発生を抑える事ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1〜4は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の防風板を備えたパンタグラフ装置1a(防風板付パンタグラフ装置)のうち、防風板18、18を除く部分は、前述の図5〜8に示した様な従来から知られているパンタグラフ装置1と同様に、台枠2の上面に、請求項に記載した第一の横軸である揺動支持軸3aを、車両の幅方向に亙って設けている。そして、この揺動支持軸3aの中間部に、下枠4aの基端部(下端部)を固定している。従ってこの下枠4aは、この揺動支持軸3aを中心として起伏する。又、この下枠4aの先端部(上端部)に、請求項に記載した第二の横軸である連結軸5aを、上記揺動支持軸3aと平行に設けている。そして、この連結軸5aにより、上枠6aの基端部(下端部)を上記下枠4aの先端部に、揺動変位自在に結合している。更に、上記上枠6aの先端部(上端部)に、集電舟装置7を支持している。そして、上記揺動支持軸3aと上記台枠2との間に設けたばね8(図5、6参照)により、上記下枠4aと上枠6aとを、図3に示す畳んだ状態から図2に示す状態にまで起立させる方向の弾力を付与している。
【0014】
鉄道車両の走行時に上記集電舟装置7は、屋根面16と架線との距離の変化に対応して、上記下枠4aと上記上枠6aとの交差角度を変化させつつ、上記屋根面16に対し昇降する。この場合でも、上記集電舟装置7の姿勢を一定として、この集電舟装置7の上面に支持した摺り板9、9(図5〜8参照)と上記架線の下縁との摺接状態が適正に維持される様にしている。この為に、上記下枠4aの先端部と上記上枠6aの基端部との連結部、並びにこの上枠6aの先端部と上記集電舟装置7との連結部には、適宜のリンク機構を設けて、上記下枠4a及び上枠6aの起伏に拘らず、上記集電舟装置7の姿勢が変化しない様にしている。
【0015】
具体的には、上記上枠6aの基端部に釣り合い腕10aの基端部を、この上枠6aの基端部から、この上枠6aの先端部とは逆方向に突出する状態で結合固定し、この釣り合い腕10aをこの上枠6aと共に、上記連結軸5aを中心として揺動する様にしている。又、この釣り合い腕10aの先端部に、請求項に記載した第三の横軸である釣り合い軸11aを、上記揺動支持軸3a及び連結軸5aと平行に設け、この釣り合い軸11aに、釣り合い棒12aの先端部(上端部)を、揺動変位自在に支持している。又、この釣り合い棒12aの基端部(下端部)を前記台枠2の上面に、請求項に記載した第四の横軸であって上記釣り合い軸11aと平行に設けられた下部釣り合い軸13aにより、揺動変位自在に支持している。更に、上記集電舟装置7の下面に設けたリンク腕14の基端部と、上記下枠4aの先端部に固定された部分(この下枠4aの起伏に伴って揺動変位する部分)とに、ロッド15の両端部を揺動変位自在に連結している。
【0016】
上述の様な構成により、上記下枠4a及び上枠6aの起伏に拘らず、上記集電舟装置7の姿勢が変化しない様にしている。尚、本例の場合、上記上枠6aは中空管状としており、上記ロッド15は上枠6aの内側に配設している。これに対して上記釣り合い棒12aは、上記下枠4a外に配置している。従って、上記下枠4aは、特に中空管状とする必要はない(する事は自由である)。又、本例の場合、前記屋根面16で前記台枠2を前後から挟む2個所位置には、前記防風板18、18を設置している。
【0017】
この様な構造を有する本例の防風板を備えたパンタグラフ装置1aを構成する、上記下枠4aの長さL4a(揺動支持軸3aの中心と連結軸5aの中心との距離)は、上記上枠6の長さL6a(連結軸5aの中心と集電舟装置7の揺動支持軸の中心との距離)に比べて十分に小さく(L4a≪L6a)している。より具体的には、上記下枠4aの長さL4aを、上記上枠6の長さL6aの1/6〜1/3倍(L4a=L6a/6〜L6a/3)としている。
【0018】
上述の様に構成する本例の防風板を備えたパンタグラフ装置1aの場合には、上記下枠4aの長さL4aを短くした分、連結軸5a及び釣り合い軸11aの設置部分を低くできる。この為、下枠4a及び上枠6aの起立状態でも、これら連結軸5a及び釣り合い軸11aの設置部分を防風板18、18により覆われて風が当たらない部分に位置させて、この設置部分での気流騒音の発生を抑える事ができる。
【0019】
尚、上記下枠4aの長さL4aが上記上枠6aの長さL6aの1/6未満(L4a<L6a/6)の場合には、上記釣り合い棒12aを設置する事による上記上枠6aの支持剛性の確保が不十分となる。これに対して、上記下枠4aの長さL4aが上記上枠6aの長さL6aの1/3を越える(L4a>L6a/3)場合には、上記連結軸5a及び釣り合い軸11aの設置部分を十分に低くできず、気流騒音の低減効果が不十分となる。この為、上記下枠4aの長さL4aを、上記上枠6の長さL6aの1/6〜1/3倍とした。
【0020】
【発明の効果】
本発明の防風板付パンタグラフ装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、鉄道車両の高速運転時に発生する気流騒音を低減して、沿線に於ける騒音環境の改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す略側面図。
【図2】同じく、要部を取り出して起立状態で示す側面図。
【図3】同じく畳んだ状態で示す側面図。
【図4】同じく屋根上への取付け状態を示す略側面図。
【図5】従来のパンタグラフ装置の1例を示す側面図。
【図6】同じく平面図。
【図7】図5の右方から見た図。
【図8】要部を取り出して示す側面図。
【図9】同じく略側面図。
【図10】屋根上への取付け状態を示す略側面図。
【符号の説明】
1、1a パンタグラフ装置
2 台枠
3、3a 揺動支持軸
4、4a 下枠
5、5a 連結軸
6、6a 上枠
7 集電舟装置
8 ばね
9 摺り板
10、10a 釣り合い腕
11、11a 釣り合い軸
12、12a 釣り合い棒
13、13a 下部釣り合い軸
14 リンク腕
15 ロッド
16 屋根面
17 碍子
18 防風板
19 カバー
Claims (1)
- 鉄道車両の屋根面上に支持される台枠と、この屋根面上でこの台枠を前後から挟む2個所位置に設置される防風板と、この台枠上に設けられた第一の横軸と、この第一の横軸によりその基端部を揺動自在に支持された下枠と、この下枠の先端部にこの第一の横軸と平行に設けられた第二の横軸と、この第二の横軸によりその基端部を揺動自在に支持された上枠と、この上枠の基端部から突出する状態で設けられてこの上枠に対しその基端部を結合固定され、この上枠と共に上記第二の横軸を中心として揺動する釣り合い腕と、この釣り合い腕の先端部に上記第一、第二の横軸と平行に設けられた第三の横軸と、この第三の横軸によりその先端部を揺動自在に支持された釣り合い棒と、この釣り合い棒の基端部と上記台枠との間に、上記第一〜第三の横軸と平行に設けられて、この釣り合い棒の基端部をこの台枠に対し揺動自在に支持する第四の横軸とを備えた防風板付パンタグラフ装置に於いて、上記下枠の長さを、上記上枠の長さの1/6〜1/3倍とし、これら下枠及び上枠の起立状態でも、上記第二、第三の横軸の設置部分を、上記防風板により覆われて走行時に風が当たらない部分に位置させた事を特徴とする防風板付パンタグラフ装置。
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---|---|---|---|
JP2002353852A JP4043353B2 (ja) | 2002-12-05 | 2002-12-05 | 防風板付パンタグラフ装置 |
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JP2004187449A JP2004187449A (ja) | 2004-07-02 |
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JP (1) | JP4043353B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108583289A (zh) * | 2018-04-26 | 2018-09-28 | 中国空气动力研究与发展中心低速空气动力研究所 | 一种基于空气幕的高铁受电弓气动噪声降噪方法 |
-
2002
- 2002-12-05 JP JP2002353852A patent/JP4043353B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN108583289A (zh) * | 2018-04-26 | 2018-09-28 | 中国空气动力研究与发展中心低速空气动力研究所 | 一种基于空气幕的高铁受电弓气动噪声降噪方法 |
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