JP4043342B2 - リン青銅 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間加工性に優れ熱間圧延が可能なリン青銅(Snリン青銅)に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン青銅は、鋳造時にSn、Pの成分偏析、すなわちミクロ的には粒内偏析、マクロ的には鋳塊表層部に逆偏析を起こす。この成分偏析は特に中高Snリン青銅において著しく、一方、この成分偏析は熱処理によって容易に解消せず、かつ高Sn、P相の融点は熱間圧延温度より低いため、中高Snリン青銅の鋳塊を熱間圧延した場合、熱延材には割れが発生する。割れ発生の程度はSn含有量により異なり、Sn含有量が4.5〜6.5%の中Snリン青銅では、成分偏析が特に著しい両エッジをトリミングすることで熱間圧延が可能である。しかし、Sn含有量が6.5%以上の高Snリン青銅では割れが多発し熱間圧延が不可能であった。
【0003】
従って、高Snリン青銅は、一般に、水平連続鋳造により10〜20mm厚の板に鋳造してコイル状に巻き取り、続いてその表面を面削して表層部の逆偏析相を除去した後、熱処理(ソーキング)及び冷間圧延を繰り返して所定厚の薄板製品に仕上げている。なお、このようなコイルを面削後熱間圧延するケースも一部に報告されているが、成分偏析が著しい両エッジにおいて大きく耳割れが発生し、そこをかなりの幅でトリミングする必要がある。
なお、高Sn領域のリン青銅に関する文献として、特開平6−207233号公報、特開平6−207232号公報、特開平5−59467号公報、特開昭63−266052号公報、特開昭63−45336号公報、特開昭63−45337号公報、特開昭57−89449号公報がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Sn含有量が中低レベルのリン青銅では、これまでも竪型半連続鋳造により厚板状のインゴットを鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延により薄板製品を製造することが可能であり、低コストでリン青銅の薄板製品を提供できている。
一方、Sn含有量が高レベルのリン青銅でも、低コスト化のため、同様に厚板状のインゴットを熱間圧延及び冷間圧延により薄板製品に仕上げることが望まれている。また、Sn含有量が中レベルのリン青銅では、熱間圧延時の割れを防止することが望まれている。
従って、本発明は、上記のようなインゴットであっても、割れを抑えて熱間圧延が可能な中高Snリン青銅を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリン青銅は、Sn:4.5〜15.0%、P:0.01〜0.2%と、Zr、Cr、Ti、Mg、Al、Ca、Siのうち1種以上を0.001〜0.1%含み、残留酸素量が0.0016〜0.05%、残部Cu及び不純物からなることを特徴とする。
この組成のリン青銅で形成されたインゴットは、熱間圧延時の割れが防止され、熱間圧延が可能である。割れが防止されるメカニズムは、Zr等の元素の酸化物が合金中に分散して合金の組織が微細化され、その結果、低融点のCu−Sn−P化合物が合金中に微細に分散し、熱間圧延前の加熱処理により当該化合物のSn、Pが拡散して成分偏析が緩和されるためであると推測される。
【0006】
【発明の実施の形態】
続いて、上記リン青銅を構成する各成分について説明する。
Sn;
Sn含有量はこれまで熱間圧延で割れが発生するとされていた4.5%を下限とし、本発明によっても熱間圧延が難しい15%を上限とする。本発明は、特にこれまで熱間圧延が不可能とされていたSn6.5%以上の高Snリン青銅において利用価値が高い。
P;
Pはリン青銅の機械的性質を向上させるもので、0.01%未満では効果がなく、一方、0.2%を超えるとSnリッチで低融点のCu−Sn−P化合物が大量に生成して熱間加工が難しくなる。従って、P含有量は0.01〜0.2%とする。
【0007】
Zr、Cr、Ti、Mg、Al、Ca、Si
これらの元素は、先に述べたように、溶湯中の酸素と結合し、酸化物として合金中に分散して、合金の組織を微細化する。しかし、これらの元素の1種以上が0.001%未満では、生成する酸化物の量が少ないため、Sn、Pを拡散により合金中に分散させて成分偏析を緩和する作用が小さく、一方、0.1%を超えると、酸化物が凝集粗大化し、合金組織の微細化に寄与する酸化物がかえって減少する。従って、Zr、Cr、Ti、Mg、Al、Ca、Siの1種以上の含有量は0.001〜0.1%とする。望ましくは0.005〜0.03%である。
【0008】
残留酸素量;
酸素はZr等の元素と酸化物を形成する。なお、残留酸素とは、酸化物を形成している酸素及びわずかだが合金中に酸化物以外の形態で分散している酸素の双方を意味する。従来のリン青銅では、水蒸気気泡を減らすため溶湯を十分に脱酸し、残留酸素量は通常0.0015%以下であるが、熱間圧延を可能とするためには、0.0016%以上残留させて材料中の酸化物を増加させる必要がある。しかし、残留酸素量が0.05%を超えると、表面に引っかきキズのような欠陥ができるなど、健全な鋳塊ができない。従って、残留酸素量は0.0016〜0.05%とする。望ましくは0.002〜0.02%である。なお、残留酸素量を0.0016%以上とするには、例えば、大気溶解にて必然的に酸素濃度が高くなった溶湯にZr等の活性金属元素を添加し、酸素を酸化物として固定するとともに、そのまま大気中で鋳込む。
【0009】
前記リン青銅は、Sn含有量が6.5%以上の高Snリン青銅であっても、これまでのようなコイル状の鋳塊ではなく、例えば竪型半連続鋳造により鋳造した厚板状の鋳塊を、割れの発生を抑制して、熱間圧延をすることができる。熱間圧延後は、これまでのコイル状の鋳塊と同様に、冷間圧延を行い、製品薄板を製造することができる。この方法でリン青銅製品の低コスト化を図るには、鋳塊の厚さは50mm以上とするのが望ましく、これ未満では従来法より低コストとならない。
なお、鋳塊の厚さが厚くなると、それだけ表面の逆偏析相の厚さも厚くなるが、組織が微細化されているため熱間圧延前の加熱処理により逆偏析相の拡散も速やかに進行するので、熱間圧延が可能となるものと考えられる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
各種組成のリン青銅溶湯を調整し、厚さ140mm、幅600mmの鋳塊を竪型半連続鋳造により製造し、この鋳塊を750℃で2時間加熱(ソーキング)し、厚さ20mmまで熱間圧延を行い、各熱延材について、耳割れ発生の有無を調べた。各熱延材の組成と耳割れ発生の有無を表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
表1に示すように、成分組成が本発明の規定範囲内にあるリン青銅は、熱延材に耳割れが発生せず、また他の部位にも割れの発生がなかった。ただし、残留酸素量の多いNo.10は鋳肌がやや悪かった。一方、成分組成が本発明の規定範囲外のリン青銅は、耳割れが顕著であった。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、熱間圧延性に優れたリン青銅を得ることができ、竪型半連続鋳造により厚板状のインゴットを鋳造し、これを熱間圧延及び冷間圧延して、リン青銅製品を低コストで製造することが可能となる。
Claims (2)
- Sn:4.5〜15.0%(質量%、以下同じ)、P:0.01〜0.2%と、Zr、Cr、Ti、Mg、Al、Ca、Siのうち1種以上を0.001〜0.03%含み、残留酸素量が0.0016〜0.05%、残部Cu及び不純物からなることを特徴とするリン青銅。
- 請求項1に記載された組成を有し、厚さ50mm以上であることを特徴とする熱間加工性に優れたリン青銅鋳塊。
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