JP4042250B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用交流発電機に用いられる固定子として、複数の導体セグメントを接合することにより形成された巻線を有するものが従来から知られている。例えば、WO92/06527には、U字状の複数の導体セグメントを固定子鉄心の一方の端面側から挿入した後に、反挿入側の端部同士を接合することにより巻線が形成された固定子が開示されている。この固定子は、連続した導体巻線を巻いて巻線を構成する場合に比べて、規則的に配置された巻線が形成しやすいという特長がある。また、同じようにU字状の導体セグメントを用いて巻線が形成されているものとして、WO98/54823に開示された車両用交流発電機が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したWO92/06527に開示された車両用交流発電機においては、固定子の各スロットには、内層に2本、外層に2本の合計4本の導体が収容されており、固定子端面からはこれら内層側の2本の導体が所定の回転周方向に斜行し、外層側の2本の導体が内層側の導体とは反対側に斜行している。したがって、内層及び外層のそれぞれにおいて、2本を単位として導体が折り曲げられているため、これら同方向に折り曲げられた2本の導体の間にわずかな隙間しか形成されず、この隙間部分を通って冷却風が流れにくいとともに、このわずかな隙間部分に電解液等が滞留しやすいという問題があった。
【0004】
特に近年、車両走行抵抗の低減や視界向上のためのスラントノーズ化によってエンジンおよび電装品全体が路面に近づき、走行時のタイヤからの跳ね上げ水による被水条件が厳しくなってきた。また、寒冷地域においては、冬季の道路凍結防止を目的として塩類が多量に散布されるため、走行時に塩または塩を含む水を巻き込むこととなり、エンジンルーム内は、更に厳しい腐食環境条件となっている。加えて、エンジンルーム内のスチーム洗浄において使われるカーシャンプーなども電解液である。以上のように、車両用発電機は上記の厳しい環境にさらされているので、被水や塩などの電解液による腐食により、発電停止に陥りやすくなってきた。
【0005】
発電停止へのプロセスは、以下の通りである。すなわち、水や塩などの電解物質が固定子のコイルエンドに繰り返し到達することにより、コイル皮膜が加水分解などの腐食劣化を起こし、コイル相互間の電気短絡を生じ、局部的な発熱による銅線の溶損が起こって最終的にコイル断線に至る。特に、冷却ファンをフレーム内に持つ内扇式の車両用交流発電機においては、冷却風と一緒に取り込まれた水や塩などの電解液がコイルエンド内周へたたきつけられるように到達すること、および冷却風の排出通風路がコイルエンド近くのフレームに設けられるので、エンジン停止、つまり車両用交流発電機が回転停止している状態でエンジンルーム内を洗浄する時に、この排出通風路を通ってカーシャンプーなどの電解液が容易にコイルエンド外周に到達するので、上記の不具合が起こりやすい。
【0006】
一方、車両に搭載される安全制御機器等の電気負荷の増加に伴い、車両用発電機にはますます出力の向上が求められている。また、コストの低減要求は言うまでもない。
【0007】
これに対し、特開平3−235644号公報に記載された車両用交流発電機のように、防滴カバーを冷却風取り込み側に取り付け、外部からの水などの進入路を遮断しようとする従来技術がある。この公報に開示されている防滴カバーを用いることにより、冷却ファンの回転によって内部に取り込まれる冷却風に電解液が混じることはある程度防止できるが、コイルエンドはフレームの径方向に設けられた通風窓の近くに位置しているので、回転停止時には発電機の径方向外部から水や塩水などが容易にコイルエンドに到達し、この部分に滞留するおそれがある。これを防止するために、フレームの径方向に設けた通風窓の外側にも防滴カバーを取り付けることが考えられるが、この場合、通風抵抗が増えて冷却風量が減るとともに、冷却後の熱風の逃がしが阻害され、発電機全体の温度が大幅に上昇するという問題が新たに生ずるため、高出力化、耐久性向上の要求を考慮すると、有効な対策とはいえない。また、防滴カバーの追加により、部品および組み付けのための製造コストが増加するため好ましくない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、固定子巻線の冷却性を向上させることができるとともに、固定子巻線における電解液等の滞留を防止することができる車両用交流発電機を提供することにある。
【0009】
さらにスロット内の固定子巻線の占積率を高めて高出力化を実現するとともに、製造コストを低減することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明によれば、車両用交流発電機の固定子は、複数のスロットを有する固定子鉄心と、前記スロットに収納される複数の導体セグメントとを有し、さらに前記導体セグメントは、それぞれが回転子のNS磁極ピッチに対応して離間した前記スロット内に収納される直線部と、前記直線部を前記スロットの外部にて連結する斜行部とを有し、前記スロット内において、互いに周方向に隣接する複数の前記直線部のそれぞれにつながる前記斜行部を同じ周方向に傾斜させるとともに、回転軸方向に沿ってこれらの斜行部を互いに離間して配置すると共に、同じ周方向に傾斜した前記複数の斜行部は、前記固定子鉄心の端面から回転軸方向に沿って異なる高さにおいて、対応する前記直線部とつながっている。
【0011】
これにより、塩などを含んだ電解質の水滴が斜行部によって構成されるコイルエンドに到達しても、互いに離間している導体セグメント間の隙間を通過する冷却風と共に外部へ排出されるので、電解質の水滴が滞留することを防止することができ、皮膜の腐食や最終的な断線不具合を抑止できる。また、この隙間部分を冷却風が通過することによる冷却性の向上が可能になる。
【0012】
直線部をスロット内に収容しているため、高い占積率を保持することができ、しかも、この直線部と斜行部とがつながる位置を、隣接する導体セグメントにおいて異ならせているため、コイルエンドの導体セグメントの隙間を確実に設けることができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、上述した導体セグメントを、前記スロット内に位置する複数の前記直線部のそれぞれが前記スロットの形状に沿ったほぼ矩形の断面形状を有するように形成している。これにより、スロットに沿って導体セグメントを挿入、収容することができ、高い占積率を容易に実現することができる。上述した導体セグメントを2本の直線部を有するほぼU字状導体とし、前記固定子鉄心の一方の端面側に前記U字状導体のターン部を、他方の端面側に前記U字状導体の端部をそれぞれ配置するとともに、前記NS磁極ピッチに対応して離間した2つの前記スロットに収容された2本の前記導体セグメントの前記端部を接合している。これにより、導体セグメントの挿入を固定子鉄心の一方の端部側のみから行い、他方を接合処理するだけで固定子巻線を形成することができ、巻線形成工程をより効率的に実施して、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、上述した導体セグメントを2本の直線部を有するほぼU字状導体とし、前記固定子鉄心の一方の端面側に前記U字状導体のターン部を、他方の端面側に前記U字状導体の端部をそれぞれ配置するとともに、前記NS磁極ピッチに対応して離間した2つの前記スロットに収容された2本の前記導体セグメントの前記端部を接合している。これにより、導体セグメントの挿入を固定子鉄心の一方の端部側のみから行い、他方を接合処理するだけで固定子巻線を形成することができ、巻線形成工程をより効率的に実施して、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、上述した導体セグメントを前記スロットの両側から突出する2つの端部を有するように、ターン部を有しない形状に形成し、前記固定子鉄心の両方の端面側において、前記NS磁極ピッチに対応して離間した2つの前記スロットに収容された2本の前記導体セグメントの前記端部を接合している。これにより、導体セグメントの形状を単純化できるので、導体セグメント自身の製造工程を簡略化して、製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す図である。図1に示す車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、フレーム4、整流器5等を含んで構成されている。
【0018】
固定子2は、固定子鉄心22と、固定子巻線21を構成する2種類の導体セグメント23、123と、固定子鉄心22と各導体セグメント23、123との間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。固定子2の詳細な構造については後述する。
【0019】
回転子3は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁巻線31を、それぞれが6個の爪部を有するポールコア32によって、回転軸33を通して両側から挟み込んだ構造を有している。また、フロント側のポールコア32の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すための冷却ファン35が溶接等によって取り付けられている。同様に、リヤ側のポールコア32の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための冷却ファン36が溶接等によって取り付けられている。また、回転軸33のリヤ側端部近傍には、界磁巻線31の両端に電気的に接続された2つのスリップリング37、38が形成されており、これらのスリップリング37、38を介してブラシ装置7から界磁巻線31に対して給電が行われる。
【0020】
フレーム4は、固定子2および回転子3を収容しており、回転子3が回転軸33を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子3のポールコア32の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子2が固定されている。また、フレーム4は、固定子鉄心22の軸方向端面から突出した固定子巻線21のコイルエンドに対向した部分に冷却風の吐出窓41を有し、軸方向端面に吸入窓42を有している。
【0021】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の界磁巻線31に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア32のそれぞれの爪部が励磁されて回転子3の回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成されるため、固定子巻線21に三相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子からは所定の直流電流が取り出される。
【0022】
次に、固定子2の詳細について説明する。図2は、固定子2の部分的な断面図である。図2に示すように、固定子鉄心22は複数のスロット25を有しており、各スロット25には多相の固定子巻線21が収容されている。本実施形態では、回転子3の磁極数に対応して、三相の固定子巻線21を収容するように、36個のスロット25が回転周方向に等間隔に配置されている。また、複数のスロット25のそれぞれには、4本の電気導体が収容される。一のスロット25内の4本の電気導体は、固定子鉄心22の径方向(奥行き方向)と周方向のそれぞれに二列ずつ配置されている。
【0023】
図3は、固定子巻線21を構成する一方の導体セグメント23の詳細形状を示す斜視図である。また、図4は固定子巻線21を構成する他方の導体セグメント123の詳細形状を示す斜視図である。
【0024】
図3に示す一方の導体セグメント23は、ターン部28において導体が折り返されたほぼ矩形断面を有するU字状に形成されており、スロット25内に収容される直線部23a、23bと、スロット25の外部に配置されて回転周方向に沿って傾斜した斜行部26とを有している。また、この導体セグメント23において、ターン部28と反対側の端部は、回転子3のNS磁極ピッチに対応して離間した他のスロット25に収納されている導体セグメント23の端部同士を溶接等によって接合するために用いる接合部27となる。このように、導体セグメント23には、2つの直線部23a、23bが含まれており、一方の直線部23aがスロット25の内層側に配置されて、図2に示したスロット25内の内層側の反時計回り方向側に配置された一方の電気導体となる。また、他方の直線部23bがスロット25の外層側に配置されて、図2に示したスロット25内の外層側の反時計回り方向側に配置された一方の電気導体となる。
【0025】
なお、図2において、一のスロット25内に収納される2つの直線部23a、23bは、回転子3のNS磁極ピッチに対応して離間した各スロット25に収納された2つの異なる導体セグメント23に対応したものであるため、一方の直線部には23b′の符号を付して表している。また、図3において、「X」は各直線部23a、23bの回転軸方向の長さである。「Y1」は内層側の直線部23aから接合部27に至るまでの斜行部26の回転軸方向に沿った長さであり、「Y2」は外層側の直線部23bから接合部27に至るまでの斜行部26の回転軸方向に沿った長さである。「Z1」は内層側の直線部23aからターン部28に至るまでの斜行部26の回転軸方向に沿った長さであり、「Z2」は外層側の直線部23bからターン部28に至るまでの斜行部26の回転軸方向に沿った長さである。
【0026】
同様に、図4に示す一方の導体セグメント123は、ターン部128において導体が折り返されたほぼ矩形断面を有するU字状に形成されており、スロット25内に収容される直線部123a、123bと、スロット25の外部に配置されて回転周方向に沿って傾斜した斜行部126とを有している。また、この導体セグメント123において、ターン部128と反対側の端部は、異なるスロット25に収納されている導体セグメント123の端部同士を溶接等によって接合するために用いる接合部127となる。このように、導体セグメント123には、2つの直線部123a、123bが含まれており、一方の直線部123aがスロット25の内層側に配置されて、図2に示したスロット25内の内層側の時計回り方向側に配置された他方の電気導体となる。また、他方の直線部123bがスロット25の外層側に配置されて、図2に示したスロット25内の外層側の時計回り方向側に配置された他方の電気導体となる。
【0027】
なお、図2において、一のスロット25内に収納される2つの直線部123a、123bは、異なる導体セグメント123に対応したものであるため、一方の直線部には123b′の符号を付して表している。また、図4において、「X」は直線部123a、123bの回転軸方向の長さである。「Y1」は外層側の直線部123bから接合部127に至るまでの斜行部126の回転軸方向に沿った長さであり、「Y2」は内層側の直線部123aから接合部127に至るまでの斜行部126の回転軸方向に沿った長さである。「Z1」は外層側の直線部123bからターン部128に至るまでの斜行部126の回転軸方向に沿った長さであり、「Z2」は内層側の直線部123aからターン部128に至るまでの斜行部126の回転軸方向に沿った長さである。
【0028】
このように、この実施形態では、ひとつのスロット内において周方向に並べて配置される2本の導体セグメント23、123は、一のスロット25の一方の軸方向開口端から延び出す部分において異なる形状を持っている。任意の一のスロット25の軸方向開口端における導体セグメントの形状に着目して説明する。一方の導体セグメントは、固定子鉄心22の端面から延び出した直後に曲げられて斜行部に接続されている。他方の導体セグメントは、固定子鉄心22の端面から所定長さPだけ直線状に延在した後に曲げられて斜行部に接続されている。しかも、他方の導体セグメントは、2本の導体セグメントの斜行部26、126が傾斜して延びる周方向に関して、一方の導体セグメントよりも、傾斜方向の後方に位置している。このため、2本の導体セグメントで形成される2本の斜行部26、126の間には、突出量Pと、斜行部26、126の傾斜角とによって決まる隙間S1、S2が形成される。
【0029】
この実施形態では、一のスロット25内において周方向に並べて配置される2本の導体セグメント23、123は、固定子鉄心22の一方の端面と、他方の端面とにおいて、それぞれ周方向に関して逆方向に傾斜している。このため、一のスロット25内において周方向に並べて配置される2本の導体セグメント23、123のうちの一方の導体セグメント23は、一のスロット25の一方の軸方向端面開口ではスロット25から出た直後に斜行部26に接続されるが、一のスロット25の他方の軸方向端面開口ではスロット25から所定長さPだけ直線状に延び出した後に斜行部26に接続される。また、残る他方の導体セグメント123は、一のスロット25の一方の軸方向端面開口ではスロット25から所定長さPだけ直線状に延び出した後に斜行部126に接続されるが、一のスロット25の他方の軸方向端面開口ではスロット25から出た直後に斜行部126に接続される。このため、一方の導体セグメント23は一のスロット25の一方の軸方向開口端において軸方向の位置決めがなされ、他方の導体セグメント123は一のスロット25の他方の軸方向開口端において軸方向の位置決めがなされて、両方の導体セグメント23、123が、ともに一のスロット25において軸方向に位置決めされる。
【0030】
さらにこの実施形態では、1本の導体セグメントがU字状に形成されているため、1本の導体セグメントは、2つのスロット25の4箇所の軸方向開口端のそれぞれから延び出す。このため、これら4箇所において、上述のごとき突出量Pを持つよう、導体セグメントが形成されている。その結果、この実施形態では、すべてのスロット25の軸方向開口端において、上述のごとき突出量Pをもって2本の導体セグメントが延び出している。
【0031】
しかも、1本のU字状導体セグメントが有する4箇所のスロット25からの延び出し部は、対角上に位置する延び出し部が同形状を持つように形成される。このため、1本のU字状導体セグメントが、固定子鉄心22に対して軸方向にずれることなく、位置決めされる。
【0032】
図5は、導体セグメントが固定子鉄心22に装備された状態を示す斜視図である。また、図6は固定子2の外観図である。上述したように、導体セグメント23の一方の直線部23aと導体セグメント123の一方の直線部123aは、同じスロット25内の内層側において回転周方向に沿って重ねて配置されており、これらの各直線部23a、123aからターン部28、128に向かって延びる斜行部26、126は、回転周方向に沿って同じ向きに形成されている。しかも、内径側からみた場合に周方向に沿って左側に配置された一方の導体セグメント23の斜行部26と直線部23aの連結位置は、右側に配置された他方の導体セグメント123の斜行部126と直線部123aの連結位置よりも、固定子鉄心22の端面から離れた位置に設定されている。図3および図4において、ハッチングを付した領域が固定子鉄心22の回転軸方向位置を示しており、導体セグメント123のターン部128側の斜行部126と直線部123aの連結位置が固定子鉄心22の軸方向の端面位置に一致しているのに対し、導体セグメント23のターン部28側の斜行部26と直線部23aの連結位置は固定子鉄心22の軸方向の端面位置から所定の距離隔たった位置となっている。したがって、固定子鉄心22の各スロット25内の内層側からターン部28、128に向かって延びて固定子鉄心22の端面に近い側に配置される一方の斜行部126と他方の斜行部26との間には、図6に示したように、大きな隙間S1が形成される。
【0033】
同様に、各直線部23a、123aから接合部27、127に向かって延びる斜行部26、126は、回転周方向に沿って同じ向きに形成されている。しかも、内径側からみて周方向に沿って右側に配置された一方の導体セグメント123の斜行部126と直線部123aの連結位置は、左側に配置された他方の導体セグメント23の斜行部26と直線部23aの連結位置よりも、固定子鉄心22の端面から離れた位置に設定されている。したがって、固定子鉄心22の各スロット25内の内層側から接合部27、127に向かって延びて固定子鉄心22の端面に近い側に配置される一方の斜行部26と他方の斜行部126との間には、図6に示したように、大きな隙間S2が形成される。
【0034】
なお、上述した説明では、各スロット25の内層側に収納された直線部23a、123aとこれらに連結される各斜行部26、126に着目したが、各スロット25内の外層側に収納された直線部23b、123bとこれらに連結される各斜行部26、126についても同様である。すなわち、固定子鉄心22の各スロット25内の外層側からターン部28、128に向かって延びて固定子鉄心22の端面に近い側に配置される一方の斜行部26と他方の斜行部126との間には、大きな隙間S1が形成される。また、固定子鉄心22の各スロット25内の外層側から接合部27、127に向かって延びて固定子鉄心22の端面に近い側に配置される一方の斜行部126と他方の斜行部26との間には、大きな隙間S2が形成される。
【0035】
上述した導体セグメント23、123を用いて固定子巻線21を形成する手順は以下のようになる。まず、図3および図4のそれぞれに点線で示したような接合部27、127側の斜行部26、126が形成されていない状態の2種類の導体セグメント23′、123′を用意する。そして、これらの導体セグメント23′、123′のターン部28、128と各直線部23a、23b、123a、123bを持ちながら、これらを周方向に重ねた状態で、回転軸方向から磁極ピッチだけ離れた固定子鉄心22の2つのスロット25に挿入する。このとき、導体セグメント23のターン部28側の斜行部26と、導体セグメント123のターン部128側の斜行部126の間には、図6に示す隙間S1が形成される。
【0036】
この挿入作業の後、固定子鉄心22の一方の端面から突出した導体セグメント23、123の外層側の端部を所定の周方向に折り曲げて、図6に示す隙間S2が形成されるように外層側の斜行部126、26を形成する。また、同時にあるいはこの工程と前後して、固定子鉄心22の一方の端面から突出した導体セグメント23、123の内層側の端部を外層側とは反対の周方向に折り曲げて、図6に示す隙間S2が形成されるように内層側の斜行部26、126を形成する。なお、この斜行部26、126の形成は、各導体セグメント23、123の間に、隙間S2に対応する整形用の治具を挿入して行われる。
【0037】
この結果、図6に示すように、固定子巻線21のコイルエンドを形成する内層の斜行部26、126と外層の斜行部26、126がそれぞれ周方向に沿った逆向きに傾斜するように配置される。その後、図7に示す巻線仕様図にしたがって、ターン部28、128側のコイルエンドに反転渡り線331を配置した後、内層側の接合部27、127あるいは外層側の接合部27、127を、溶接や半田付けなどによって電気的に接合し、スロット25当たり4本の電気導体を有する固定子巻線21が形成される。
【0038】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1では、図6に示すように、固定子巻線21の各コイルエンドにおいて、同一のスロットから延びる2つの導体セグメントの間には、回転軸方向に沿って所定の隙間を確保することができる。したがって、コイルエンドに塩水やカーシャンプーなどの電解液が到達しても、この隙間を通して内部の冷却ファン35、36によって遠心方向に冷却風とともに排出されるため、滞留を防止することができ、滞留したときに生じるコイルエンドの腐食による断線不良等を防止することができる。また、上述した隙間によって、コイルエンドを構成する各導体セグメントが互いに離間して配置されるため、コイルエンドの冷却性を向上させることができる。
【0039】
さらに、図2に示すように、各導体セグメント23、123の断面を矩形形状に形成することにより、スロット25内の占積率を高めることができるため、固定子巻線21の抵抗値を低減し、発電能力を向上させることができる。しかも、連続巻線を用いずに導体セグメント23、123を用いることにより、上述した高占積率化に加えて、コイルエンド間の隙間を形成する工程を簡略化でき、固定子2の製造コストを低減することができる。
【0040】
ところで、上述した実施形態では、スロット25内に収容された電気導体は、深さ方向に二列(内層、外層)および回転周方向に二列であり、合計で4本が一のスロット25に収容されている場合を説明したが、要求出力等に応じてスロット25の深さ方向や回転周方向のそれぞれの電気導体数を変更するようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、U字状の導体セグメント23、123を用いたが、図8に示すように、ターン部を有しないほぼJ字状の導体セグメント223を用い、これを固定子鉄心の軸方向から直線部223hをそろえて挿入し、挿入した先端部側を所定の周方向に傾斜させるようにしてもよい。この場合には、同一スロットに収容され、斜行部が同じ周方向に傾斜した複数の導体セグメントにおいて、直線部223hと斜行部との連結部分の回転軸方向の位置を互いにずらすことにより、図6に示したような隙間S1、S2を確保することができる。また、導体セグメント223の形状がU字状よりも単純化されるので、導体セグメント自体の製造工程が簡略化され、固定子の製造コストを低減することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、図2に示すような固定子鉄心22の各スロット25に、回転軸方向に沿って反ターン部側に斜行部を有しない導体セグメント23′、123′を挿入し、その後挿入の先端側を整形して図3および図4に示す導体セグメント23、123を完成させたが、図9および図10に示すように、固定子鉄心122の各歯先先端部124に径方向に沿った突起部130あるいは132を形成することにより、スロット125の内周側開口部の周方向の幅を、スロット125内部の周方向の幅と同じに設定してもよい。このような固定子鉄心122を用いた場合には、内径側からU字状あるいはJ字状の各導体セグメント23、123を挿入した後に、各歯先先端部124の突起部130、132を周方向に曲げればよいため、スロット125に収納する前に、図3および図4に示したようなターン部と反ターン部の両方に斜行部を有する導体セグメント23、123を製造することができ、固定子鉄心の各スロットに挿入した後に整形して隙間S1、S2を形成する場合に比べて製造工程の簡略化が可能になる。また、スロット125に導体セグメント23、123を挿入した後に、径方向から加圧して各導体セグメント23、123のスロット125内の直線部をスロット形状に合わせて変形することも可能になるため、さらにスロット125内の占積率を高めて出力向上を図ることができる。
【0043】
なお、上記突出量Pを持つセグメント形状は、固定子鉄心22に形成された複数のスロットの軸方向開口のうちの一部においてのみ形成されてもよい。
【0044】
例えば、固定子鉄心22の一方の端面におけるスロット25の開口にのみ形成されてもよい。かかる構成は、固定子鉄心22の一方の端面に形成されるコイルエンドにおいて特に高い放熱性を実現したい場合に有効である。また、周方向に並んだスロットの開口のうち、ひとつおきの開口にのみ同形状を採用してもよい。かかる構成は、加工工程における加工容易化などの利点を得つつ、コイルエンドに所用の密度を持って通風路を形成し、全体としての放熱性を改善したい場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す図である。
【図2】固定子の部分的な断面図である。
【図3】固定子巻線を構成する一方の導体セグメントの詳細形状を示す斜視図である。
【図4】固定子巻線を構成する他方の導体セグメントの詳細形状を示す斜視図である。
【図5】導体セグメントが固定子鉄心に装備された状態を示す斜視図である。
【図6】固定子の外観図である。
【図7】固定子の巻線仕様図である。
【図8】導体セグメントの他の例を示す斜視図である。
【図9】固定子の変形例を示す部分的な断面図である。
【図10】固定子の他の変形例を示す部分的な断面図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
4 フレーム
21 固定子巻線
22 固定子鉄心
23、123 導体セグメント
24 インシュレータ
25 スロット
Claims (4)
- 回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成され軸方向両端部の少なくとも一方にファンを持つ回転子と、前記回転子と対向配置された固定子と、前記回転子と前記固定子とを支持するフレームとを有する車両用交流発電機において、
前記固定子は、複数のスロットを有する固定子鉄心と、前記スロットに収納される複数の導体セグメントとを有し、
前記導体セグメントは、それぞれが前記回転子の前記NS磁極ピッチに対応して離間した前記スロット内に収納される直線部と、前記直線部を前記スロットの外部にて連結する斜行部とを有し、
前記スロット内において、互いに周方向に隣接する複数の前記直線部のそれぞれにつながる前記斜行部を同じ周方向に傾斜させるとともに、回転軸方向に沿ってこれらの斜行部を互いに離間して配置すると共に、
同じ周方向に傾斜した前記複数の斜行部は、前記固定子鉄心の端面から回転軸方向に沿って異なる高さにおいて、対応する前記直線部とつながっており、かつ
前記複数の斜行部の先端側が互いに周方向に隙間を有していることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1において、
前記導体セグメントは、前記スロット内に位置する複数の前記直線部のそれぞれが前記スロットの形状に沿ったほぼ矩形の断面形状を有すると共に、
前記導体セグメントは、2本の直線部を有するほぼU字状導体であり、前記固定子鉄心の一方の端面側に前記U字状導体のターン部が配置され、他方の端面側に前記U字状導体の端部が配置されており、
前記NS磁極ピッチに対応して離間した2つの前記スロットに収容された2本の前記導体セグメントの前記端部を接合し、かつ
これら複数の接合された端部は、固定子の回転軸方向から同じ距離離れた位置にあることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1もしくは2において、
一方の導体セグメントは一のスロットの一方の軸方向開口端において軸方向の位置決めがなされ、他方の導体セグメントは一のスロットの他方の軸方向開口端において軸方向の位置決めがなされて、両方の導体セグメントがともに一のスロットにおいて軸方向に位置決めされていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1において、
前記導体セグメントは、前記スロット内に位置する複数の前記直線部のそれぞれが前記スロットの形状に沿ったほぼ矩形の断面形状を有すると共に、
前記導体セグメントは、前記スロットの両側から突出する2つの端部を有しており、
前記固定子鉄心の両方の端面側において、前記NS磁極ピッチに対応して離間した2つの前記スロットに収容された2本の前記導体セグメントの前記端部を接合し、かつ
これら複数の接合された端部は、固定子の回転軸方向から同じ距離離れた位置にあることを特徴とする車両用交流発電機。
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