JP4041221B2 - ポリベンザゾール成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度、高弾性率のポリベンザゾール繊維、ポリベンザゾールフィルム等のポリベンザゾール成形体を工業的に低コストで生産する方法に関するものである。特に、捲縮性に優れたポリベンザゾール繊維、ひいては紡績性に優れたポリベンザゾール短繊維に好適な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在市販されている代表的なスーパー繊維として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維があるが、ポリパラフェニレンテレフタルアミドよりも強度及び耐熱性が優れているポリベンザゾール繊維は、次世代のスーパー繊維として期待されている。また、ポリベンザゾールの優れた耐熱性や力学的特性を、繊維としてだけでなく、 ロッドやフィルム等の連続成形体として利用することも考えられている。
【0003】
ここで、ポリベンザゾール繊維は、一般に、図3のようにして製造される。まず、ポリベンザゾールを溶媒(例えば、ポリリン酸)に溶解してドープを調製し、このドープ21を紡糸口金22から糸条体24として引き出し、エアギャップ23を経て凝固浴25中の凝固液によって凝固させた後、水洗部26で水洗することにより製造される。凝固液は、通常、溶媒の希薄水溶液であり、凝固浴25及び水洗部26を通過する間に、ドープ糸条体から溶媒が抽出されて水と置換されるとともにポリマーが相分離し、ポリベンザゾールからなる糸条体が形成される。水洗により水を含んだポリマーの糸条体(完成糸)は乾燥用オーブン27を通して乾燥した後、巻取ローラ28で巻き取られる。ポリベンザゾールフィルム等の連続成形体も同様に製造される。
【0004】
ここで、ポリベンザゾールはライオトロピックポリマーに属し、その構造が緻密であるため、ドープ成形体内部での溶媒及び水の拡散が遅くなり、溶媒抽出に時間がかかり、通常20〜40秒程度の水洗が必要とされる。従って、例えば、紡糸速度500m/分で生産しようとすれば、30秒の水洗時間を確保するために250mの長い走行距離が必要となる。この場合、隣接ローラ間の長さを3mに設定しようとすれば全体で約80個以上のローラが必要となるが、隣接ローラの配置を図3のようなジグザグ配列にしてローラピッチpを15cmとなるようにしたとしても、全体で12mの設備が必要となる。このように、水洗のための設備の大型化が、ポリベンザゾール繊維の製造コストダウンの障害となっている。
【0005】
大型の水洗設備を用いないポリベンザゾール繊維の製造方法としては、例えば、WO94/04726号公報に、長繊維をプラスチック管に巻き取ったチーズをリン酸濃度が極めて低い凝固液に長時間浸漬する方法が開示されている。しかし、チーズの状態で水洗を行なうと、巻芯側の繊維が水と十分接触できないために、溶媒抽出が不十分となるおそれがあり、また、長時間の浸漬は、凝固浴及び水洗槽からの溶媒回収、循環使用が面倒でハンドリングコストが大きくなる。
【0006】
また、糸条体に高圧水を吹き当てるという水洗方法も考えられているが、この方法を用いても太いデニールのトウの製造においては、繊維内部への水の侵入及びそれに伴う溶媒抽出を十分に行なうことができない。
【0007】
一方、溶媒抽出が不完全なままポリマーの融合が進むと繊維中に残存していた溶媒が乾燥中にポリマーの分解触媒として働き、繊維の強度低下をもたらす。
【0008】
また、ポリベンザゾール繊維に捲縮を付与しようとしても、ポリベンザゾール繊維は緻密構造を有するリジッドな高分子成形体であるために、通常の熱可塑性繊維のようにフィラメントを加撚した後熱固定したり、ギヤ等により賦型した後熱固定するという方法では十分な捲縮が与えられない。このため、凝固前であるエアギャップ部分でクリンプを与え、該付与されたクリンプを凝固工程で固定する方法を試みたが、フィラメントを捲縮加工したものに比べて強度が低下するという問題が生じた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水洗工程を改良することにより溶媒抽出効率を高め、それによって強度低下がない優れた品質のポリベンザゾール成形体を安価な設備投資で生産できる製造方法を提供することにある。また、捲縮性に優れたポリベンザゾール繊維を製造できる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリベンザゾール成形体の製造方法は、ポリベンザゾールを溶媒に溶解してなるポリベンザゾールドープから得られるドープ成形体を、凝固浴に通した後水洗することにより、該ドープ成形体から該溶媒を抽出してポリベンザゾール成形体を製造する方法において、0.05〜5g/dの張力下で、ドープ成形体の中心部の溶媒濃度が85重量%以下で且つドープ成形体中のポリベンザゾールに対する溶媒含有率が10重量%以上となるまで行なう第1の水洗工程と、該第1水洗工程後に、実質的に無張力下で行なう第2の水洗工程とを有することを特徴とする。
【0011】
前記第1水洗工程は、水洗液の濃度を段階的に低下させた複数の第1水洗部を通過することによって行われ、前記凝固浴は、前記複数の第1水洗部の少なくとも1つであってもよい。
【0012】
また前記製造方法において、溶媒としてポリリン酸を用いることが好ましく、前記第2水洗工程は、第1水洗工程後のドープ成形体を水洗槽に振り落とすことにより行なうことが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において、第1水洗工程と第2水洗工程との間に、賦型処理工程を行なうことにより、捲縮性に優れたポリベンザゾールフィラメントを製造することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明にかかるポリベンザゾール(PBZ)とは、ベンゾオキサゾール(PBO)ホモポリマー、ベンゾチアゾール(PBT)ホモポリマー、及びこれらのランダムコポリマー、シーケンシャルコポリマー、ブロックコポリマーを言い、ポリベンザゾール成形体とは、ポリベンザゾールで構成される繊維(以下、「ポリベンザゾール繊維」という)やフィルム等を言う。
【0015】
PBOは下記構造式(a)〜(d)から選択される構造単位からなり、PBTは下記構造式(e)〜(h)から選択される構造単位からなる。これらの構造単位を有するポリマーは、ライオトロピック液晶性を示す。
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
PBO、PBTのランダムコポリマー、シーケンシャルコポリマー、ブロックコポリマーは、上記(a)〜(h)に示される構造単位を、ブロックとして、あるいはランダムに含むポリマーで、Wolfe等の「Liquid Crystalline Polymer Compositions, Process and Products」(米国特許第4703103号:1987年10月27日)、「Liquid Crystalline Polymer Compositions, Process and Products」(米国特許4533692号:1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Poly(2,6-Benzothiazole) Composition, Process and Products」(米国特許第4533724号:1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Polymer Compositions, Process and Products」(米国特許4533693号:1985年8月6日)、Evers の「Thermooxidatively Stable Articulated p-Benzobisoxazole and p-Benzobisthiazole polymers」(米国特許4539567号:1982年11月16日)、Tasi等の「Method for making Heterocyclic Block Copolymer」(米国特許第4578432号:1986年3月25日)等に記載されている。
【0019】
ポリベンザゾール(PBZ)は、公知の手法、例えば、Wolfe 等の米国特許第4533693号(1985年8月6日)、Sybert等の米国特許4772678号(1989年7月11日)に記載される方法で合成される。尚、PBZは、脱水性の酸溶媒中での比較的高温、高せん断条件下において高い反応速度で高分子量化が可能である( Gregory等の米国特許第5089591号参照)。
【0020】
以下、PBZ繊維の製造方法について図1に基づいて説明するが、本発明の方法は繊維に限らず、フィルム等の成形体の製造方法についても同様に適用できる。
【0021】
まず、紡糸原液となるPBZのドープを調製する。ここで、PBZのドープ調製に用いられる溶媒としては、当該ポリマーを溶解し得る非酸化性の酸、具体的には、ポリリン酸、メタンスルホン酸、クレゾール、高濃度の硫酸等の鉱酸又はこれらの混合物などが挙げられる。これらのうち、ポリリン酸とメタンスルホン酸の混合物が好ましく、ポリリン酸が最も好ましい。
【0022】
ドープ中のポリマー(PBZ)の含有率(ポリマー/ドープ)は、7重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上、最も好ましくは12重量%以上で、好ましくは18 重量%以下である。ドープ中のポリマーの含有率の上限は、ポリマーの溶解性、ドープ粘度といった実際上の取扱い性に依存し、通常30重量%を超えることはない。換言すると、通常、ドープ中の溶媒含有率は70重量%以上となる。
【0023】
このようにして調製されるドープは、PBZの特質に基づき液晶性を示す。一般に剛直性高分子溶液は、特定の濃度範囲でポリドメイン構造と呼ばれる不均質な微細構造を呈するが、せん断力を与えると分子が一方向に並んだ配向状態となる。尚、PBZをポリリン酸に溶解したドープでは、PBZの分子鎖が一旦配向すると15分程度の時間では容易には緩和せず、一方溶媒分子鎖は短い時間で緩和する挙動が観察されている(Journal of Polymer Science Part B、 31、pp141―155(1993):J.A.Odell )。
【0024】
次にドープ1を、通常100℃以上の温度で紡糸口金2から吐出する。紡糸口金にはドープフィラメントを紡出するための細孔(紡糸孔)2aが多数穿設されているが、口金の形状、特に細孔に到る流路を細く絞り込む部分の形状は、口金内でのドープ流動を安定化するために、特開平7―157918号公報に開示されているような形状とすることが好ましい。液晶性を示す流体は流動不安定を生じ易く、口金形状は安定最大吐き出し量への影響が大きいからである。
【0025】
紡糸口金2から吐き出したドープ糸条体3を凝固浴5に導き入れるが、通常、紡糸孔2aから凝固浴5に導き入れるまでの間にエアギャップが設けられ、これをドローゾーン4と称している。
【0026】
ドローゾーン4では、ドープ糸条体3を所望の太さ若しくは厚みにまで細くするために、ドラフトを与えることができる。ドローゾーン4でPBZのポリマー鎖及び溶媒の分子が流れ方向に配向することにより、紡糸口金2での配向状態よりもさらに高度に配向することになる。ドープ糸条体3の温度が約80℃以下になると、粘度が非常に高くなって引き伸ばすことが困難になり、また、PBZ繊維は凝固させた段階で既に高度に配向しているので、溶媒抽出後の延伸は困難である。よって、ドローゾーン4で延伸を95%以上終了しておくことが好ましい。また糸条体の冷却効率を高めるために、ドローゾーン4の通過中に冷却風を当てるなどして冷却することが、伸長流動を安定化させる上で有効である。
【0027】
凝固浴5に用いられる凝固液は、ドープ調製に用いた溶媒に水を非溶媒として加えたもの、即ち前記溶媒の希釈水溶液である。ドープの溶媒がポリリン酸(通常、リン酸濃度で110〜123重量%)の場合は、リン酸水溶液、特にリン酸濃度が5〜75重量%の水溶液が好ましく用いられる。また、凝固浴の温度は、ドープ糸条体の構造緩和を抑制する観点から、60℃以下が好ましい。凝固浴5中で凝固液と接触させることにより、液体状であったドープ糸状体の表面が凝固する。
【0028】
凝固浴5を通過したドープ糸条体3は、更に水洗工程へ導かれる。そして、凝固したドープ糸条体中の残存溶媒は、水洗によりほとんど抽出される。すなわち、凝固浴5及び水洗工程で、ドープ糸条体3から溶媒が抽出されて代わりに水分率が高まるとともに、溶媒とポリマー(PBZ)との相分離が進んで糸条体におけるポリマー鎖が緻密に配向してポリマー糸状体が形成される。形成されたポリマー糸条体は、昇温しても流動性を示さなくなる。ポリマーは、高配向な構造を保ったまま凝固するので、高結晶、高配向の繊維構造を有する繊維が得られる。
【0029】
本発明における水洗工程は、凝固浴5で凝固したドープ糸条体を水洗する第1水洗工程と、第1水洗部で水洗したドープ糸条体を実質的に無張力下で水洗する第2水洗工程とを有する。
【0030】
第1水洗工程は、繊維中心部の溶媒の一部を水で抽出(置換)する工程であり、0.05g/d、好ましくは0.1g/d以上で、5g/d、好ましくは4g/d以下の張力をかけながら行なう。このような工程張力をかけた状態での水洗は、図1に示すように、通常、複数の水洗ローラ6aからなる第1水洗部6で行なう。そして第1水洗は、各水洗ローラ6aを第1水洗液の入った水洗槽(図示せず)に浸漬したり、水洗ローラ6aに向けて第1水洗液をスプレー(図示せず)することにより行なう。第1水洗工程に用いる水洗液は、前記凝固液よりもさらに希薄な溶媒水溶液で、好ましくは1〜10重量%程度の溶媒水溶液(ドープの溶媒がポリリン酸の場合は、リン酸濃度が1〜10重量%程度のリン酸水溶液)を用いる。尚、図1に示す方法では第1水洗部とは別に凝固浴が備えられているが、凝固浴を第1水洗部で代用することも可能である。例えば、第1水洗工程が、段階的に濃度を低下させた水洗液を用いた複数の水洗部で実施される場合には、凝固浴を一部の第1水洗部で代用してもよい。
【0031】
このような第1水洗工程は、水洗で成形体内に水が浸透することにより、成形体中心部の溶媒濃度(溶媒がポリリン酸の場合にはリン酸濃度)が85重量%以下にまで減少し、且つドープ糸条体中のポリマーに対する溶媒含有率(〔溶媒/ポリマー〕で表され、溶媒としてポリリン酸を用いた場合には〔リン酸/ポリマー〕で求められる含有率となる)が10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは30重量%以上の時点まで行なう。
【0032】
第1水洗工程を上記のような張力下で行なうのは、溶媒の含有率が高いドープ糸条体について工程張力を0.05g/d未満にゆるめると、ポリマーと溶媒との相分離が不完全となって、残存溶媒による配向緩和が生じ、十分な繊維強度を確保できないからである。一方、工程張力が5g/dを超えると、過大な応力のために、糸条体内部の構造中に欠陥が成長し、繊維の強度低下が生じるからである。また、工程張力が高くなりすぎると、溶媒抽出が行われにくくなって、水洗時間を長くしても、水洗後に得られる糸条体中のポリマーに対する溶媒残存率が高くなる傾向にあるからである。
【0033】
また、第1水洗工程を成形体中心部の溶媒濃度が85重量%以下まで行なうのは、85重量%超で第1水洗工程を終了して無張力下で行なう第2水洗工程に移行すると、ポリマーと溶媒との相分離が不完全なままで工程張力が開放されることとなって、最終的に得られる繊維強度が不十分となるからである。一方、張力下で行なう第1水洗工程が長くなる程、張力をかけるための水洗ローラが多数必要となって水洗設備が大型となり、張力をかけることによる繊維強度の向上も飽和してしまう。従って、繊維強度を確保しつつ、水洗設備の小型化を図るためには、遅くともドープ糸条体中のポリマーに対する溶媒含有率が10重量%以上の時点で第1水洗工程を終了する必要がある。水洗設備の小型化のためには、より速く第1水洗を終了することであり、好ましくはドープ糸条体中のポリマーに対する溶媒の含有率が15重量%以上、より好ましくは30重量%以上で、成形体中心部の溶媒濃度が85重量%以下という要件を満足する時点を、第1水洗工程の終了時点とすればよい。
【0034】
尚、第1水洗によるドープ成形体における水と溶媒との置換割合(ドープ成形体への水の浸透の程度)を、成形体中心部(糸条体の場合には糸条体の芯部)の溶媒濃度で規定し、ドープ成形体全体の溶媒濃度を規定しなかったのは、水洗初期は溶媒濃度が急激に変化しているためにドープ成形体全体の溶媒濃度を測定するのは困難であり、しかも使用する凝固液の濃度や凝固中の温度により成形体中に含まれる溶媒総量(溶媒がポリリン酸の場合にはリン酸総量)が変化するからである。
【0035】
成形体中心部(連続成形体の長手方向と直交する幅方向断面の中心部に該当)の溶媒濃度は、ドープ試料を第1水洗液と同じ温度の80RH%空気中で吸湿させ、時間経過時の重量増加を測定してドープ内への水分拡散量を算出し、当該水分拡散量のデータを基に、成形体内への水分浸透量を推定することにより求める。
【0036】
ここで、成形体への水分浸透量は、以下の条件の下記拡散方程式の解で定量化する。
【0037】
【数1】
【0038】
式中、Cは溶媒濃度(無水リン酸濃度)であり、Dは拡散係数、tは時間、rは糸条体の半径である。上記拡散方程式において、まず、水の浸透量が0の状態では、Cはドープのポリリン酸濃度とする。溶媒濃度は、いずれも無水リン酸に換算されることから、例えば、リン酸換算で116重量%のポリリン酸の無水リン酸濃度(P2 O5 の濃度)は84重量%であり、10重量%リン酸の無水リン酸の濃度は7重量%となる。拡散方程式では、ドープと第1水洗液との濃度差を1として水分濃度が高い方を1、水分濃度が低い方を0となるように無次元化する。リン酸濃度を順次小さくした水洗槽を多段に並設する場合は、低い濃度の第1水洗液濃度で無次元濃度が1になるように定義する。また繊維表面の境界条件は、第1水洗液と接触すると同時に繊維表面が第1水洗液の水濃度と等しくなると仮定する。拡散係数は、天秤に取り付けたドープに接触させる実験と拡散方程式数値解の対応操作で求めることができる。例えば、20℃では、拡散係数1.6×10-11 m2 /秒となる。以上のようにして、20℃、10重量%リン酸水溶液に浸漬させた場合のドープ成形体中心部のリン酸濃度を計算した結果を図2に示す。
【0039】
また、ドープ糸条体中のポリマーに対する溶媒濃度とは、糸条体中心部のような局所的濃度ではなく、成形体全体の溶媒濃度を言い、糸条体表面に付着する溶媒を拭き取った状態の糸条体の溶媒量を、蛍光X線測定装置で実測した濃度である。
【0040】
次に、第2水洗工程について説明する。第2水洗工程は、第1水洗工程の張力を開放して行なう、つまり実質的に無張力で水を用いて行なう水洗工程である。実質的に無張力の状態で行なう理由は、張力が加わった状態では、ポリマーのネットワーク間の空隙が狭められて、溶媒の拡散が遅くなるので、張力をゆるめて糸条体中の溶媒拡散を速やかにすることで溶媒抽出時間を短くすることができるからである。具体的には、張力を0に近づけることで、溶媒の拡散速度は2倍以上になり、溶媒抽出時間を短縮できる。
【0041】
実質無張力で行なう第2水洗工程は、例えば、図1に示すように、第1水洗工程においてローラ6aから引き取ったドープ糸条体を一旦コンベヤ7で搬送し、コンベヤ7から水洗槽8に振り落とすことによって容易に達成できる。図1では、第2水洗工程となる第2水洗部9は、1基のコンベヤ7と1槽の水洗槽8とから構成されているが、水洗槽8及びコンベヤ7を1組として、これを多段階的に設けてもよい。また、第2水洗部9は、コンベヤと水洗槽との組み合せに限らず、例えば可動ネットとネット上方に設けられた水噴射装置との組み合せであってもよい。このような構成からなる第2水洗部9は、単に水洗ローラのみを複数配列させてなる従来の水洗構造を採用する場合よりも占有面積が少なくて済む。また第2水洗工程は無張力下で行なうので、水洗槽に一定時間浸漬しておくことによっても実施できる。水洗槽での浸漬は成形体の一時保存を兼ねることができ、しかも新たな設備増加は招かずに済む。従って、溶媒抽出時間の短縮及び設備の水洗設備の小型化の観点から、成形体中心部の溶媒濃度が85重量%以下で、且つドープ成形体中のポリマーに対する溶媒含有率が10重量%以上という要件を満足する範囲で、できる限り速く第1水洗を終了して、第2水洗工程に移行することが好ましい。
【0042】
以上のような第1水洗工程及び第2水洗工程により、成形体中のポリマーに対する溶媒含有率(溶媒がポリリン酸の場合にはリン酸濃度)が2重量%以下となるまで、ドープ成形体から溶媒を抽出することが好ましい。
【0043】
以上のように、本発明の製造方法は、第1水洗工程で成形体の強度を確保し、第2水洗工程で溶媒抽出効率を高めているので、成形体の強度を損なうことなく、従来の単なる水洗ローラの多数配設する製造方法よりも製造設備を小型化できる。
【0044】
尚、上記水洗工程中又は水洗工程後に、中和工程を実施して、繊維の強度保持を図ることが好ましい。中和には、アルカリ金属の塩基が用いられ、繊維中に残存する溶媒(例えばリン酸)に対するアルカリ金属のモル比が0.2〜1.5とすることが好ましい。
【0045】
また、水洗後の繊維内部には、溶媒との相互拡散で繊維内部に入り込んだ水(非溶媒)が含まれており、非溶媒を多く含んだ状態では、有機溶剤分子や金属イオンを繊維内に注入することができる。従って、水洗後又は水洗工程中に、顔料、染料、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を繊維内に含浸させることが可能である。
【0046】
さらに、水洗後に、改質剤を含有する液に浸漬して、繊維を改質処理してもよい。改質処理をした場合には、次の乾燥工程に移行する前に、繊維表面に付着した余剰な改質剤含有液を絞り出すか又は改めて抽出する処理をあわせて行なうことが好ましい。
【0047】
以上のような水洗工程(必要に応じて中和処理、改質処理等の工程)を経て得られるポリマー糸条体をはじめとするポリマー成形体中には、非溶媒たる水が含まれているので、次いで、乾燥することが好ましい。乾燥は、ポリマー糸条体中の水分を完全に抽出する場合はもちろん、PBZ繊維の平衡水分率相当以下にまで水分を抽出するだけでもよい。平衡水分率は、使用される環境により変化するが、およそポリマーに対して2重量%である。
【0048】
乾燥方法は特に限定しないが、工業的プロセスでは、生産性の観点から高温のオーブンで短時間で乾燥させる方式が好ましい。特にPBZポリマーは非常に耐熱性に優れていて、230℃以上の温度で乾燥しても強度低下は生じない。よって、オーブンの温度を高くして、バッチ乾燥におけるサイクルタイムを短くすることができる。乾燥温度にもよるが、一般にオーブンによる乾燥の場合、30〜60秒間必要であることから、多量のエネルギーを要する乾燥装置が必要である。設備費用やエネルギーコストを小さくできる方式としては、図1に示すように、PBZ繊維を可動式ネット9の上に積載し、溶媒抽出・乾燥に必要な時間がとれるようにゆっくりと移動させる方式がある。ここで、ネットには、多孔板のようなものでも、金属や樹脂の編み組みでもよく、必要に応じて、トウの交絡を生じ難い機構を採用できる。尚、ポリマー糸条体中の水分は常温でも蒸発するので、常温で放置してもポリマー重量に対して3重量%以下にまで乾燥させることができる。
【0049】
乾燥工程を経た繊維は、巻取ローラ10で巻き取られるが、さらに繊維の配向度を高めたり、分子鎖間のパッキングを高める目的で、巻取前に、更に400℃以上の温度で熱処理を行なってもよい。熱処理は、熱処理による強度低下を防止するために、張力下で行なうことが好ましい。
【0050】
本発明の方法は、PBZ繊維をはじめとするPBZ連続成形体全般に適用できるが、特に捲縮を付与したPBZフィラメントの製造方法、ひいては紡績用のPBZ短繊維の製造に適している。すなわち、図1において、第1水洗部6から第2水洗部9へ移行する間に賦型処理を行なうためのギヤ11を設置すれば、溶媒抽出が終了してなるポリマー糸条体を賦型処理する場合よりも捲縮付与が容易となる。従って、本発明の製造方法によれば、捲縮堅牢度に優れたPBZフィラメントを製造することができ、賦型処理又は第2水洗後に所定長さに切断すれば紡績用のPBZ短繊維を得ることができる。第2水洗工程は実質無張力で行なうので、切断された繊維(短繊維)であっても実施できる。
【0051】
このようにして得られた捲縮堅牢度に優れたPBZ短繊維は、ウェッブや紡績糸の製造に好適である。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後の趣旨を逸脱しない限度で適当に変更を加えて実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
〔測定法〕
下記実施例及び比較例で採用した各種の測定及び評価方法は次の通りである。
【0054】
▲1▼ドープの固有粘度
ドープをメタンスルホン酸で希釈した溶液の粘度を30℃で測定した。
【0055】
▲2▼成形体中心部(糸条体の場合には芯部)の溶媒濃度(リン酸濃度)の見積もり
ドープ成形体の試料を、第1水洗液と同じ温度の80RH%空気中で吸湿させ、一定時間経過時の重量増加を測定して、試料内への水分拡散量を求めた。求められた水分拡散量のデータを基に成形体内への水分浸透量を推定し、これより成形体中心部のリン酸濃度を算出した。
【0056】
▲3▼成形体中のポリマーに対する溶媒(リン酸)の含有率(リン酸/ポリマー)ドープ成形体の試料を綿布に挟んで表面の水分を手早く拭き取った後、80℃で16時間かけて乾燥した。乾燥した試料をペレット状に固めて、フィリップスPW1404/DY685の蛍光X線測定装置で試料中のリン酸濃度を測定した。
【0057】
▲4▼繊維(又はフィルム)の引張強度
JIS−L1013に記載の方法に準じて測定した。すなわち、試料を引張試験機のつかみに取付け、試料が切断したときの荷重(g)を測定した。
【0058】
▲5▼繊維の捲縮性
捲縮性は、捲縮数、捲縮度、及び捲縮弾性度で評価した。
【0059】
(a)捲縮数
短繊維の一端を固定し、他端にデニール当たり2mgの荷重をかけた状態で、捲縮の山数及び繊維長を測定し、1インチ当たりの山数に換算した値を捲縮数とした。
【0060】
(b)捲縮率
短繊維の一端を固定し、他端にデニール当たり2mgの荷重をかけて繊維長(L1)を測定する。次に、デニール当たり50mgの荷重をかけて、30秒後の繊維長(L2)を測定し、次式により捲縮率を算出した。
捲縮堅牢度(%)=100×(L2−L1)/L2
【0061】
(c)捲縮弾性度
捲縮を伸ばしたときの長さ(L2)の測定後に、120秒間、無荷重で放置し、再びデニール当たり2mgの荷重をかけて繊維長(L3)を測定し、次式により捲縮弾性度を算出する。
捲縮弾性度(%)=100×(L2−L3)/(L2−L1)
【0062】
実施例1〜4、比較例1〜3:
PBOをポリリン酸に溶解して、PBO含有率が13.8重量%となるドープ(ポリマーに対するリン酸含有率は625重量%であり、極限粘度24)を調製し、図1に示す装置を用いて、PBO繊維を製造した。
【0063】
すなわち、ドープを金属編みの濾材に通過させ、ついで2軸混練と脱泡を行なった後、昇圧させ、ドープ温度を175℃に保った状態で、332個の細孔が穿設された紡糸口金から紡出した。紡出したドープの糸条体は、紡糸口金直下に設けられた保温筒を経て、長さ500mmのエアギャップで、60℃にまで冷却された後、紡糸口金から1700mm下方に設けられた凝固浴中に導入した。このときの紡糸速度は500m/分とし、紡糸ドープ量は500デニール相当に調節した。
【0064】
凝固液は、35℃の22重量%リン酸水溶液を用いた。凝固浴にドープ糸条体を浸漬してから2秒後、10重量%リン酸水溶液を噴出できるスプレー装置を0.5秒間隔で設置した第1水洗部に導き、ここで6秒間水洗した後、第2水洗部を構成する水洗槽にコンベヤから振り落とし、当該水槽中で2日間放置した後、24℃の室内の暗所で乾燥した。
【0065】
第1水洗工程における工程張力又は第1水洗時間を表1に示すように変えた以外は同様の条件で、実施例1〜4及び比較例1〜3の繊維を製造した。
【0066】
各製造条件及び第1水洗後の繊維中心部のリン酸濃度、第1水洗後の繊維中のリン酸濃度、第2水洗後の繊維中のPBO量に対するリン酸の含有率、及び乾燥後の繊維強度を、表1に示す。尚、第2水洗後とあるのは、振り落とし直後のドープ糸条体について測定した。
【0067】
比較例4:
実施例1で調製したドープを実施例1と同様の条件で凝固浴を通過させた後、工程張力をかけた状態で行なう第1水洗工程を行なわずに、直接水洗槽に振り落として水洗を行なった。水洗槽で2日間放置した後乾燥して、PBO繊維を得た。得られた繊維について、第1水洗後の繊維中心部のリン酸濃度、第1水洗後の繊維中のPBOに対するリン酸含有率、第2水洗後のPBOに対するリン酸含有率、及び乾燥後の繊維強度を、表1に示す。尚、第1水洗後とあるのは、凝固浴を通過した後のドープ糸条体に関して測定し、第2水洗後とあるのは、振り落とし直後のドープ糸条体について測定した。
【0068】
比較例5:
実施例1で調製したドープを用いて実施例1と同様の条件で凝固浴を経た後、水洗の全工程を水洗ローラで行なって、PBO繊維を得た(図3参照)。つまり、比較例5では、水洗工程を2つに分けず、全水洗工程を張力下で行なった。
【0069】
得られた繊維について、第1水洗後の繊維中心部のリン酸濃度、第1水洗後の繊維中のPBOに対するリン酸含有率、第2水洗後の繊維中のPBOに対するリン酸含有率、及び乾燥後の繊維強度を、表1に示す。尚、第1水洗後とあるのは、実施例で行なった第1水洗工程に相当する分の水洗ローラを通過した後のドープ糸条体について測定し、第2水洗後とあるのは、水洗終了後(乾燥前)のドープ糸条体について測定した。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1〜3及び比較例1、2から分かるように、第1水洗工程時間が同じである限り中心部のリン酸濃度は同じであり、第1水洗工程における工程張力が大きくなる程、第1水洗後の繊維全体におけるポリマーに対するリン酸含有率は大きくなっている。そして、第2水洗工程の張力を無張力下で行っても第2水洗後のポリマーに対するリン酸含有率は第1水洗後のリン酸含有率に比例し、且つ第2水洗後(乾燥前)のリン酸濃度に繊維強度が反比例するため、結局、第1水洗工程の工程張力が大きすぎると繊維強度が弱くなる(比較例2参照)。一方、第1水洗工程の張力が小さくなりすぎても、溶媒による配向緩和が生じるため、繊維強度が小さくなる(比較例1参照)。
【0072】
また、実施例2,4及び比較例3から、第1水洗工程の張力が同じであっても、第1水洗時間が短くなる程、第1水洗における溶媒抽出が不十分となるため、第1水洗後のリン酸濃度が高くなる。そして、第1水洗時間が短い(第1水洗後のリン酸濃度が大きい)もの程繊維の強度が小さくなる傾向にあることがわかる。これらのことから、繊維中心の溶媒濃度が所定濃度以下となる程度までは第1水洗工程、すなわち工程張力をかけた状態で溶媒抽出を行なわなければ所定の強度が得られないことが分かる。
【0073】
また、比較例4のように、水洗工程の全てを無張力下で行なう(すなわち第1水洗工程を省く)場合であっても十分な溶媒抽出を達成することはできるが、溶媒抽出の間に張力が全くかけられていないために繊維強度は小さくなる。逆に、比較例5のように、全水洗工程を張力下で行なう(すなわち第2水洗工程を行なわない)場合でも、最終的に溶媒残存率(表1中、第2水洗後の糸条体のポリマーに対するリン酸含有率に相当)は実施例よりも劣っており、繊維強度も途中で張力を開放した実施例と同程度であり、張力をかける工程が長い分だけ装置の大型化を招くだけであった。
【0074】
実施例5:
PBOをポリリン酸に溶解して、ポリマー(PBO)濃度が14.0重量%となるドープ(ポリマーに対するリン酸濃度は614重量%となり、極限粘度26.4)を調製した。調製したドープを、幅×長さが0.07mm×2.4mmのスリットダイから168℃で押し出して(ドープ吐出量は、3.5g/分)、フィルム状成形体を得た。常温空気中で引き取り速度50m/分まで延伸(延伸張力130g)した後、深さ500mmの水洗槽で水深450mmの位置に設けた可動ロールで折り返して引出して、5本の引き取りローラと可動ローラとの間を90gの力で引張つつ、第1水洗を10秒間行い、引き続き、水洗液と接触させながら巻き取った。得られたフィルムの線密度は90d相当で、第1水洗の工程張力は1g/dに該当し、本発明の要件を満たしていた。また、巻き取ったスプールにおいてフィルム間に水が存在し、第1水洗後に行なった水洗液との接触工程は実質的には無張力の状態で水洗する第2水洗工程に該当する。得られたフィルムの厚みは46μmであった。第1水洗後の成形体中心部のリン酸濃度、第1水洗後の成形体中のPBOに対するリン酸含有率、第2水洗後のPBOに対するリン酸含有率、及び得られたフィルムの強度を測定した結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
得られたフィルム(実施例5)は、所定のフィルム強度を満足していた。しかも、製造装置は、多数のローラを配設する場合と比べて小型化することができた。
【0077】
実施例6:
図1に示す装置において、第1水洗部6と第2水洗部9との間に直径150mm、150丁の機械歯車11を設置し、実施例2と同様の条件で第1水洗を行なった後、ドープ糸条体を上記機械歯車11を通過させることにより賦型処理を行った。捲縮付与されたドープ糸条体を移動速度1m/分で走行するネットコンベヤ上に振り落とし、ネット上面から水を噴射することにより第2水洗を行なった後、乾燥コンベヤに移して300℃の加熱空気で乾燥し、油剤を付与してから、切断装置に供給して、長さ44mmの短繊維を製造した。得られた短繊維について、捲縮性及び繊維強度を測定した結果を表3に示す。
【0078】
比較例6:
捲縮付与のための機械歯車の設置位置を、エアギャップ部分に変更した以外は、実施例6と同様にして、短繊維を製造した。得られた短繊維について、捲縮性及び繊維強度を測定した結果を表3に示す。
【0079】
比較例7:
実施例2に基づいて凝固、水洗し、乾燥した後、捲縮付与のための機械歯車を通過させて捲縮付与し、その後、切断装置で切断して、短繊維を製造した。得られた短繊維について、捲縮性及び繊維強度を測定した結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表3からわかるように、乾燥前に捲縮付与した繊維は、乾燥後に捲縮付与した繊維(比較例7)と比べて、捲縮数、捲縮度、捲縮弾性度が大きく、捲縮性はドープ糸条体の状態で行なう方が優れていることが分かる。さらに、実施例6と比較例6とから、捲縮付与後に工程張力をかけながら水洗工程を行なうと、所定の繊維強度を確保できないことが分かる。
【0082】
実施例7:
第1水洗工程まで実施例2と同様に行なったドープ糸条体を、上方から水が噴射されるネットコンベヤの上に振り落として、無張力状態で第2水洗を行なった。ドープ糸条体中の平均リン酸濃度が1重量%まで水洗した後、染料(アシッドブラック48)の6重量%溶液中に3秒間浸漬した。浸漬後、ドープ糸条体を取り出して、300℃の乾燥用空気をネットの下側から供給するネットコンベヤ上に振り落として水分率1.8重量%まで乾燥して、巻取機でフィラメントを巻き取った。このようにして染色されたフィラメントを得ることができた。尚、水洗コンベヤの長さは3mで水洗時間は30秒、乾燥コンベヤの長さは3mで乾燥時間は20秒であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明のポリベンザゾール成形体の製造方法によれば、所定の強度を確保しつつ、製造設備の小型化を図ることができる。従って、従来よりもポリベンザゾール繊維の製造コストをダウンすることができる。
また、本発明の製造方法を利用すれば、捲縮性に優れたポリベンザゾール繊維、ひいては紡績性に優れたポリベンザゾール短繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一実施態様を示す装置概略図である。
【図2】成形体中心部のリン酸濃度の計算結果の一例を示すグラフである。
【図3】従来の製造方法の一実施態様を示す装置概略図である。
【符号の説明】
1 ドープ
2 紡糸口金
3 ドープ糸条体
5 凝固浴
6 第1水洗部
7 コンベヤ
8 水洗槽
9 第2水洗部
11 賦型処理用歯車
Claims (5)
- ポリベンザゾールを溶媒に溶解してなるポリベンザゾールドープから得られるドープ成形体を、凝固浴に通した後水洗することにより、該ドープ成形体から該溶媒を抽出して、その後巻き取る、糸条体であるポリベンザゾール成形体を製造する方法において、
0.05〜5g/dの張力下で、ドープ成形体の中心部の溶媒濃度が85重量%以下で且つドープ成形体中のポリベンザゾールに対する溶媒含有率が10重量%以上となるまで行なう第1の水洗工程と、
該第1水洗工程後に、実質的に無張力下で行なう第2の水洗工程とを有することを特徴とするポリベンザゾール成形体の製造方法。 - ポリベンザゾールを溶媒に溶解してなるポリベンザゾールドープから得られるドープ成形体を、凝固浴に通した後水洗することにより、該ドープ成形体から該溶媒を抽出してポリベンザゾール成形体を製造する方法において、
0.05〜5g/dの張力下で、ドープ成形体の中心部の溶媒濃度が85重量%以下で且つドープ成形体中のポリベンザゾールに対する溶媒含有率が10重量%以上となるまで行なう第1の水洗工程と、
該第1水洗工程後に、実質的に無張力下で行なう第2の水洗工程とを有し、更に、第1水洗工程と第2水洗工程との間で、賦型処理工程を行なうことを特徴とするポリベンザゾール成形体の製造方法。 - 前記第1水洗工程は、水洗液の濃度を段階的に低下させた複数の第1水洗部を通過することによって行われ、
前記凝固浴は、前記複数の第1水洗部の少なくとも1つである請求項1又は2に記載のポリベンザゾール成形体の製造方法。 - 溶媒としてポリリン酸を用いる請求項1〜3のいずれかに記載のポリベンザゾール成形体の製造方法。
- 前記第2水洗工程は、第1水洗工程後のドープ成形体を、水洗槽に振り落とすことにより行なう請求項1〜4のいずれかに記載のポリベンザゾール成形体の製造方法。
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JPH11131326A JPH11131326A (ja) | 1999-05-18 |
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-
1998
- 1998-08-27 JP JP24213798A patent/JP4041221B2/ja not_active Expired - Lifetime
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