JP4040721B2 - グラビア印刷方法およびグラビア印刷物 - Google Patents

グラビア印刷方法およびグラビア印刷物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はグラビア印刷方法およびグラビア印刷物に関し、特に、電気信号に基づいて彫刻針(ダイヤモンド針)もしくはレーザを駆動させ、版胴面に多数のセルを彫刻するいわゆる電子彫刻方式の手法を利用して凹版を形成し、この凹版を用いて印刷を行いグラビア印刷物を製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
グラビア印刷は、凹版を用いた印刷手法であり、主に写真画像を含んだ高品質の印刷物を作成する用途に利用されている。グラビア印刷に用いる版には、多数の凹状のセルが形成され、このセル内に充填されたインキが紙面へと転写されることになる。したがって、グラビア印刷物では、多数のセル状のインキ(網点)によって画像が形成されることになる。別言すれば、グラビア印刷によって紙面上に形成される画像は、所定のピッチで縦横に配列された多数の網点から構成され、個々の網点のインキ量によって濃淡表現がなされることになる。
【0003】
グラビア印刷を行う場合、多数の画素から構成される原画像を用意し、この原画像上の画素の画素値(濃度値)をセルの大きさに変換することにより、1つの画素を1つのセルで表現した凹版を作成することになる。大きな画素値を有する画素は大きなセルに変換され、小さな画素値を有する画素は小さなセルに変換される。このセルの大小は、紙面上でのインキの量に反映され、原画像の濃度分布に応じた濃淡パターンが紙面上に再現されることになる。
【0004】
グラビア印刷用の凹版を形成するための方法としては、物理的な彫刻方式と化学的な腐食方式とが一般に知られている。物理的な彫刻方式は、物理的な方法によってセルを形成する方式であり、通常は電気信号に基づいて彫刻針(ダイヤモンド針)もしくはレーザを駆動させることによりセルの彫刻が行われるため、電子彫刻方式とも呼ばれている。物理的な彫刻方式として最も一般的な方法は、機械彫刻方式と呼ばれている彫刻針を用いた方式である。機械彫刻方式は、個々のセルをダイヤモンド針で1つ1つ物理的に彫刻してゆく方法を採るもので、通常、版面を複数のダイヤモンド針で走査しながら、打刻を行ってゆくことになる。打刻時におけるダイヤモンド針と版面との距離を制御することにより、打刻により形成されるセルの大きさを調節することができる。原画像上の各画素の画素配列および画素値に基づいて、セル彫刻装置による走査処理および打刻処理を制御することにより、原画像に応じた版を作成することができる。
【0005】
一方、化学的な腐食方式は、一般に「網グラビア方式」とも呼ばれており、腐食液を用いた化学処理により、版面上に多数のセルを一括して形成するものである。通常は、原画像上の各画素の情報に基づいて、網点フィルム上にセル配列のイメージを出力し、この網点フィルムを用いたフォトリソグラフィ工程により版が作成される。すなわち、版面に形成されたレジスト層に対して、網点フィルム上のイメージを焼き付け、現像工程およびエッチング工程を経て、セル内部の領域を腐食除去して凹部を形成することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、グラビア印刷用の凹版を形成するための方法として、2とおりの方式が知られているが、最近では、機械彫刻方式を代表とする物理的な方式が主流になりつつある。腐食方式は、化学処理を伴うため、エッチング液の温度や疲労具合によって腐食の状態が変動し、再現性を確保することが困難であるという問題を抱えている。また、同一の版面上においても、エッチング液の流れの具合によって部分部分で腐食速度に差が生じ、形成されるセルの大きさが部分ごとに不均一になるおそれもある。したがって、腐食方式で版を作成するためには、熟練した技術者が、独自のノウハウを駆使しながら作業を進める必要がある。これに対し、機械彫刻方式は、電子式セル彫刻装置の性能が向上し、比較的容易に再現性を確保できるようになってきており、近年、普及度が急伸している。しかも、腐食方式は化学処理による環境汚染の問題も指摘されてきており、特に、欧州各国においては、ほとんどのグラビア印刷が、機械彫刻方式で行われている。
【0007】
しかしながら、デザイナーや写真家の中には、いまだに腐食方式のグラビア印刷物の画質を支持する者が少なくない。もちろん、機械彫刻方式によるグラビア印刷物の画質と、腐食方式によるグラビア印刷物の画質とを、客観的な尺度で比較評価することは適切ではない。両者の相違は、あくまでも主観的な嗜好の問題であり、その評価は観者の感性に負うところが多い。ただ、このような主観的な評価によると、腐食方式のグラビア印刷物は、機械彫刻方式のグラビア印刷物に比べて、「立体感に富む」、「人間の肌の表現力に優れる」、「不快な筋が観察されにくい」といった利点を有すると言われている。また、機械彫刻方式によるグラビア印刷物では、画素値が所定のしきい値を越えると、隣接するセル間のインキが結合し、急激に濃度値が高くなるトーンジャンプという現象が生じ、画質を劣化させることも知られている。
【0008】
そこで本発明は、機械彫刻方式に代表される物理的な彫刻方式を採りつつ、疑似的に化学的な腐食方式のグラビア印刷物に近い画質をもったグラビア印刷物を実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、所定のピッチで配列された複数のセルを彫刻することにより凹版を作成し、この凹版を用いて印刷を行うグラビア印刷方法において、
印刷対象となる画像のうち、文字および線画の部分を表わす文字・線画データを用意する段階と、
印刷対象となる画像のうち、階調画像の部分を表わす階調画像データを用意する段階と、
文字・線画データと階調画像データとを合成するコンバイン処理を行い、多数の画素の集合からなる合成データを作成する段階と、
合成データを構成する個々の画素の画素値にノイズ成分を付加することにより修正データを作成する段階と、
修正データを構成する個々の画素の画素値に応じた大きさのセルを彫刻することにより凹版を作成する段階と、
この凹版を用いて印刷を行う段階と、
を行うようにし、
文字・線画データおよび階調画像データの一方もしくは双方に対して、所定の空間周波数成分を増減させるフィルタ処理を行い、このフィルタ処理後のデータに対してコンバイン処理を行った後に、ノイズ成分を付加する処理を行うようにしたものである。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係るグラビア印刷方法において、
文字・線画データを所定の色成分ごとに分ける分版処理と、階調画像データを所定の色成分ごとに分ける分版処理とを行い、分版後のデータに対して各色成分ごとにコンバイン処理を行い、各色成分ごとの合成データのそれぞれに対して、別個独立してノイズ成分を付加する処理を行うようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係るグラビア印刷方法において、
コンバイン処理を行った後、合成データを構成する画素についての解像度を変換する処理を行い、解像度変換後の合成データに対して、ノイズ成分を付加する処理を行うようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係るグラビア印刷方法において、
文字・線画データを、所定の画素値と当該画素値を有する画素列の長さとを示すデータの集合によって構成されるランレングスデータの形式で用意し、
階調画像データを、所定の画素値をもった画素配列によって構成されるビットマップデータの形式で用意するようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係るグラビア印刷方法において、
合成データを構成する個々の画素のピッチの2〜5倍の周期をもったノイズ成分を、各画素値に付加することにより修正データを作成するようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第4の態様に係るグラビア印刷方法において、
与えられたデジタルデータに応じた電圧を針駆動部に供給してセルを機械的に彫刻する打刻コントローラを有するセル彫刻装置と、打刻コントローラが供給する電圧を変動させる機能をもった電圧変動装置と、を用意し、
合成データにノイズ成分を付加して修正データを作成し、この修正データに基づいてセルの彫刻を行う処理に代えて、
合成データを打刻コントローラに与え、電圧変動装置により打刻コントローラの供給する電圧を変動させる処理を行うことによりノイズ成分の付加を行うようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第6の態様に係るグラビア印刷方法によって、グラビア印刷物を作成するようにしたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
§1. 機械彫刻方式と腐食方式とにおけるセルの相違
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。はじめに、一般的な機械彫刻方式のグラビア印刷物と腐食方式(網グラビア方式)のグラビア印刷物とのセル構成の相違を述べておく。図1は、機械彫刻方式の工程で作成されたグラビア印刷版の部分拡大図、図2は、腐食方式の工程で作成されたグラビア印刷版の部分拡大図である。いずれも元になる画像データは、網点密度60%の平網に相当する画像データであり、セル(図にハッチングを施した領域)の面積は、全体のほぼ60%となっている。図示の横幅は900μm程度であり、通常、肉眼で観察した場合には、個々のセルの存在は認識できない。しかしながら、これを拡大して観察すると、両方式で作成された版では、セルの形状や分布に大きな差があることがわかる。
【0018】
図1に示すように、機械彫刻方式で作成された版上には、同一の形状および大きさを有するセルが、同一ピッチで規則正しく配置されている。これは、既に述べたように、版面を複数のダイヤモンド針で走査しながら、規則正しく打刻を行ってゆくためである。したがって、ここに示す例のように、平網画像の場合、同一形状かつ同一面積のセルが規則正しく配置されることになる。前述したトーンジャンプという現象は、このようなセルの規則的配置に起因して生じる現象である。すなわち、網点密度の値があるしきい値を越えると、個々のセルの面積が臨界値を越え、印刷物上で隣接する網点間のインキが相互に結合し、網点の境界線が失われ、濃度値が急激に増加することになる。
【0019】
これに対し、図2に示すように、腐食方式で作成された版上には、原画像が平網であるにもかかわらず、形状および大きさがそれぞれ異なったセルが配置されている。個々のセルは、形状が様々であり、大きさも微小なものから、かなり大きなものまで千差万別のように見える。しかしながら、これは通常のセルパターンに、いわゆる「白線パターン」と呼ばれるパターンを合成した合成パターンに基づき、腐食を行っているためである。図2に示されているパターンを注意深く観察すると、所定ピッチで配置されたセルパターン(ハッチングを施して示すパターン)に白線パターン(セルを分割するような格子状のパターン)が重複している様子が認識できる。一般に、セルを配置するピッチに比べて、白線パターンを構成する格子のピッチは小さく設定され、個々のセルは、白線パターンにより種々の態様で分割されることになる。図2に示す例でも、ところどころに四分割、三分割あるいは二分割されたセルの痕跡が認識できる。この白線パターンによる分割態様が様々であるため、分割後の個々のセルは、形状も大きさも様々なものになる。
【0020】
結局、腐食方式で版を作成する場合、網点フィルム上に用意されるもともとの画像パターン自体が、所定ピッチで配置されたセルのパターンと白線パターンとの合成パターンになっており、形状も大きさも異なった多数のセルから構成されていることになる。それに加えて、実際の腐食工程では、腐食液の温度、疲労度、流速などが部分ごとに変動するため、版上に形成される個々のセルの形状および大きさには、部分ごとに揺らぎの要素が加わることになる。結局、腐食方式で作成された版上の個々のセルは、白線パターンによる分割態様に基づく揺らぎの要素と、腐食工程時の条件に基づく揺らぎの要素との相乗効果により、形状も大きさも様々なものになる。
【0021】
このように、腐食方式で作成された版には、形状も大きさも様々なセルが形成されるため、この版を用いたグラビア印刷物上には、トーンジャンプという現象は生じない。図1および図2には、原画像が平網画像の例を示したが、原画像が階調画像の場合にも、同様の理由により画質の差が生じていると考えてよい。すなわち、一般に、「立体感に富む」、「人間の肌の表現力に優れる」、「不快な筋が観察されにくい」といった言葉で表現される腐食方式の利点は、セルの形状や大きさに揺らぎの要素(白線パターンによる分割の揺らぎと腐食条件の揺らぎ)が付加されているためと考えることができる。
【0022】
§2. 本発明の基本概念
本発明の目的は、作業が容易で環境汚染の問題もない物理的な彫刻方式を採りつつ、疑似的に化学的な腐食方式のグラビア印刷物に近い画質をもった印刷物を実現することにある。そのためには、上述した揺らぎの要素を疑似的に付加してやればよい。本発明の基本概念は、所定の画素値を有する画素の配列によって構成される原画像を用意し、この原画像を構成する各画素のもつ画素値に、ノイズ成分を付加することにより揺らぎの要素を含んだ修正画像を作成し、この修正画像を構成する個々の画素の画素値に応じた大きさのセルを彫刻してグラビア印刷用の版を作成することにより、物理的な彫刻方式を採りつつ、腐食方式のグラビア印刷物に近い画質をもった印刷物を疑似的に作成することにある。
【0023】
いま、図1に示す機械彫刻方式で作成された版と、図2に示す腐食方式で作成された版とについて、セルの大きさ分布を比較するために、図3に示すようなグラフを考えてみる。このグラフは、横軸に空間的広がりをとり、縦軸にセルの大きさをとったものである。ここで、グラフの破線は、機械彫刻方式で作成された平網画像の版についてのセルの大きさ分布を示しており、グラフの実線は、腐食方式で作成された平網画像の版についてのセルの大きさ分布を示している。図示のとおり、機械彫刻方式の場合、セルの大きさが空間的に一定であるのに対し、腐食方式の場合、セルの大きさは空間的にランダムに変動している。
【0024】
ダイヤモンド針により打刻される個々のセルの大きさは、対応する画素の画素値に応じて決定される。そこで、原画像を構成する各画素のもつ画素値に、ノイズ成分を付加して修正画像を作成すれば、この修正画像に基づいて作成される版上では、セルの大きさは空間的に変動を生じたものになる。たとえば、図4に示すグラフは、平網画像からなる原画像と、これにノイズ成分を付加した修正画像と、についての画素値の空間分布を示している。ここで、画素値はセルの大きさに対応した量であり、この修正画像に基づいて作成された版上のセルも、空間的に大きさが変動したものになる。原画像が階調画像であった場合は、図5のグラフ(この例は単調なグラデーション画像についてのグラフ)に示すように、もともとの原画像における画素値も空間的に変動することになるが、ノイズ成分を付加した修正画像の画素値は、より細かな変動を示すことになる。
【0025】
§3. 本発明に係るグラビア印刷方法の一実施形態
図6は、本発明に係るグラビア印刷方法を実施するためのシステム構成例を示すブロック図である。このシステムを用いてグラビア印刷を行うには、まず、印刷対象となる画像のうち、文字および線画の部分を表わす文字・線画データLWと、階調画像の部分を表わす階調画像データCTとを用意する。文字・線画データLW(一般に、Line Work と呼ばれている部分についてのデータ)は、全画像中の階調をもたない文字の部分や、階調をもたない線で描かれた部分についての画像データであるのに対し、階調画像データCT(一般に、Continuous Tone と呼ばれている部分についてのデータ)は、主として写真原稿に基づいて作成された連続階調をもった部分についての画像データである。グラビア印刷の工程では、通常、文字・線画データLWと階調画像データCTとは、このように別個に用意される。
【0026】
いずれのデータも、いわゆるラスター形式(多数の画素の集合からなる形式)で画像を表現したデータであるが、本実施形態では、文字・線画データLWが、ランレングスデータで構成されているのに対し、階調画像データCTは、ビットマップデータで構成されている。ランレングスデータは、所定の画素値と当該画素値を有する画素列の長さとを示すデータであり、たとえば、(a,b)なる単位データによって、画素値aを有する画素がb画素分連続して現れることを示すことができる。文字・線画データLWで表現される画像は、連続階調を有していないため、同一の画素値を有する画素が複数連続して配置されることが多い。このため、文字・線画データLWについては、ランレングスデータの形式を採ることにより、データ量の削減を図ることができる。一方、階調画像データCTで表現される画像は、写真画像のような連続階調をもった画像であるため、所定の画素値をもった画素配列によって構成されるビットマップデータの形式を採っている(もちろん、データ圧縮技術を用いて圧縮した形式を採ることも可能である)。
【0027】
こうして用意した文字・線画データLWおよび階調画像データCTは、ロゴコンバイン装置100に入力され、オペレータの操作に基づいて必要な加工処理が施される。このロゴコンバイン装置100自体は、一般的なグラビア印刷において利用されている公知の装置である。図6に示すロゴコンバイン装置100は、分版処理部110、面付処理部120、フィルタ処理部130、コンバイン処理部140、解像度変換処理部150を有している。
【0028】
分版処理部110は、文字・線画データLWを、CMYKの各色成分ごとに分け、分版された文字・線画データLW(C),LW(M),LW(Y),LW(K)を生成する処理と、階調画像データCTを、CMYKの各色成分ごとに分け、分版された階調画像データCT(C),CT(M),CT(Y),CT(K)を生成する処理と、を実行する。後の工程は、これら各分版データごとに(各色成分ごとに)行われる。
【0029】
面付処理部120は、各分版データごとに、面付処理を行う機能を有する。たとえば、1枚の版によって4頁分の印刷物を印刷する場合、4頁分の画像データを同一平面上に配置した4面割り付けが行われる。続いて、フィルタ処理部130におけるフィルタ処理が、各分版データごとに実施される。このフィルタ処理は、画像データの所定の空間周波数成分を増減させる処理である。最も典型的なフィルタ処理は、いわゆる「シャープネス処理」と呼ばれている輪郭線を強調する処理である。このようなフィルタ処理は公知の技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。次に、コンバイン処理部140において、分版された文字・線画データと分版された階調画像データとを、それぞれ各色成分ごとに合成するコンバイン処理が行われ、分版合成データC1,M1,Y1,K1が作成される。たとえば、分版合成データC1は、色成分Cに関する合成データであり、分版された文字・線画データLW(C)と分版された階調画像データCT(C)とを合成することにより得られる。この実施形態では、文字・線画データLWと階調画像データCTとは、同じ画素配列を有するラスターデータの形式で用意されており、このコンバイン処理は、文字・線画データLWのレイヤーを階調画像データCTのレイヤーの上面に重ね合わせる処理によって行われる。すなわち、文字・線画データLWに対応する画像内の透明な部分のみ、階調画像データCTが現れることになる。
【0030】
続いて、解像度変換処理部150において、各分版合成データC1,M1,Y1,K1に対する解像度変換が行われる。この分版合成データC1,M1,Y1,K1は、そもそも文字・線画データLWおよび階調画像データCTを分版して得られたデータであるため、この時点では、すべて同じ解像度を有している。ところが、グラビア印刷を行う上では、各分版画像が同一の解像度を有していると、各色成分の網点ピッチが同一になるため、干渉によるモアレ縞発生といった弊害が生じるおそれがある。そこで、各色成分の分版画像ごとに、それぞれ異なる解像度が得られるように解像度変換処理が行われる。この解像度変換処理は、具体的には、画素数を所定間隔で間引く処理によって行われる。たとえば、4画素を1画素に置換し、もとの4つの画素の画素値の平均を新たな画素の画素値とするような処理を行えば、1/4の解像度をもった画像を得ることができる。分版合成データC2,M2,Y2,K2は、こうして解像度変換が行われた後の画像データである。
【0031】
結局、ロゴコンバイン装置100に、文字・線画データLWおよび階調画像データCTを与えると、最終的に、それぞれ固有の解像度をもった分版合成データC2,M2,Y2,K2が得られることになる。従来の一般的なグラビア印刷方法では、こうして得られた分版合成データC2,M2,Y2,K2に基づいて、セルの彫刻作業を行うことになるが、本発明では、その前にノイズ付加処理が行われることになる。すなわち、ロゴコンバイン装置100から出力された分版合成データC2,M2,Y2,K2は、ノイズ付加装置200に入力され、ノイズ成分の付加が行われた後、分版合成データC3,M3,Y3,K3として出力され、セル彫刻装置300に与えられる。ノイズ成分の付加処理は、各分版データごとに別個独立して行われる。セル彫刻装置300は、このノイズ成分を含んだ分版合成データC3,M3,Y3,K3(図4もしくは図5に示す修正画像に相当する画像データ)に基づいて、ダイヤモンド針を用いた打刻作業を行い、それぞれC版,M版,Y版,K版の各グラビア印刷版を作成する処理を行う。すなわち、各画像データの画素配列が示すピッチで、個々の画素が有する画素値に応じた大きさのセルが版上に形成されることになる。
【0032】
§4. 付加するノイズ成分の空間周波数
ここでは、図6に示すシステムにおけるノイズ付加装置200で付加すべきノイズ成分の空間周波数について検討しておく。
【0033】
ノイズ成分を付加する最も単純な方法は、所定の分散範囲内の増分値および減分値をランダムに発生させ、個々の画素の画素値に対して、発生させた増分値を加えるかもしくは発生させた減分値を減じる修正を行う方法である。たとえば、図7に示すような所定の分散をもった正規分布を用いて、平均を示す中央位置に基準値0を定義し、この基準値より右側に増分値、左側に減分値をそれぞれ定義する。そして、コンピュータで乱数を発生させて、この正規分布に従った頻度で、増分値あるいは減分値をランダムに発生させ、個々の画素の画素値を増減させるのである。より具体的には、ロゴコンバイン装置100から出力された各分版合成データC2,M2,Y2,K2のそれぞれについて、個々の画素のもつ画素値に所定の増分値を加えるか、減分値を減じる処理を実施すればよい。このような方法でノイズ成分を付加した分版合成データC3,M3,Y3,K3に基づいて、セルの形成を行えば、セルの大きさの空間的な分布にランダムなノイズ成分が付加されることになる。
【0034】
しかしながら、全くランダムに画素値を増減させる方法では、必ずしも十分な効果が期待できるとは限らない。たとえば、ある領域内の画素については、たまたま増分値による修正が集中して行われ、別な領域内の画素については、たまたま減分値による修正が集中して行われたような場合、領域ごとに濃度ムラが生じてしまうことになる。このような弊害を避けるためには、所定の空間周波数で増減するノイズ成分を用意して修正を行うようにするのが好ましい。たとえば、図8のグラフに示されているノイズ成分を考える。ここで、グラフの横軸は空間的広がりを示し、縦軸はノイズ成分の増分値あるいは減分値を示している。この例では、ノイズ成分は空間的に周期Lをもって増減している。別言すれば、ある領域では増分値を示していたら、その隣の領域では減分値を示すようになっている。このように、所定の空間周波数で増減を繰り返すノイズ成分を用いると、全くランダムに増減するノイズ成分を用いた場合に比べて、より十分な効果が期待できる。
【0035】
本願発明者は、セルのピッチの2〜5倍の周期をもったノイズ成分を用いると、効果的であることを見出だした。特に、セルのピッチの2〜3倍の周期をもったノイズ成分を付加すると非常に効果的である。たとえば、図8に示すノイズ成分の周期Lが、セルのピッチの2倍程度であるとすると、1つのセルは基準値より大きくなり、これに隣接するセルは基準値より小さくなる。このように、交互に大小を繰り返すようなセル構成は、本発明の効果を得るために非常に有効である。本願発明者が行った実験によれば、付加するノイズ成分の空間周波数が低くなると、印刷物に再現される画像にいわゆるザラザラ感が見られるようになる。すなわち、用いるノイズ成分の空間周波数は、できるだけセル配置の空間周波数に近付けるようにするのが好ましく、これより空間周波数の低いノイズ成分を用いるほど、画質にザラザラ感が生じるようになる。これは、通常のグラビア印刷では、セルのピッチがたとえば(1/175)mmというように、肉眼で個々のセルを観察することが困難な値に設定されていることに関係していると考えられる。すなわち、ノイズ成分の空間周波数をセルの空間周波数と同程度にすると、ノイズ成分が肉眼では認識されることがなくなり、自然な画像を再現することができるが、ノイズ成分の空間周波数を低くすると、ノイズ成分が肉眼で認識されることになり、ザラザラ感が生じてくるものと思われる。
【0036】
なお、本発明に係るグラビア印刷方法では、図6のシステムに示されているように、ロゴコンバイン装置100から出力される分版合成データC2,M2,Y2,K2に対して、ノイズ付加装置200によるノイズ付加処理が実施される。別言すれば、ロゴコンバイン装置100による種々の画像処理が完了した後に、ノイズ成分の付加が行われることになる。このように、ロゴコンバイン装置100による処理を行った後に、ノイズ成分を付加する処理を行うことは、ロゴコンバイン装置100による種々の処理に何ら弊害をもたらさないという点で重要である。
【0037】
もちろん、ロゴコンバイン装置100に入力する前の段階で、文字・線画データLWや階調画像データCTに予めノイズ成分を付加する処理を行っておくことも可能である。しかしながら、上述したように、付加すべきノイズ成分としては、セルピッチの2〜3倍程度、あるいは2〜5倍程度の周期をもったものが好ましいので、文字・線画データLWや階調画像データCTに対して予めノイズ成分を付加しておいた場合、ノイズ成分がロゴコンバイン装置100内の画像処理に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、フイルタ処理部130におけるフィルタ処理(特に、シャープネス処理)や、解像度変換処理部150における解像度変換処理は、画像データの空間周波数に変更を加える処理であるため、処理前の段階からノイズ成分が含まれていると、このノイズ成分により何らかの影響を受け、期待どおりの処理が行われない可能性が出てくる。このような観点においては、図6のシステムのように、ロゴコンバイン装置100におけるすべての処理が完了した後に、最終段階として、ノイズ成分の付加処理を行うのが好ましい。
【0038】
§5. 具体的なノイズ成分の付加処理
ここでは、原画像に対してノイズ成分を付加するための具体的な手法を提案する。いま、図9(a) に示されているように、M行N列の画素配列として原画像Pが用意されている場合を考える。この原画像Pを構成する個々の画素には所定の画素値が定義されている。ここでは、この原画像P上のm行n列目の画素の画素値をP(m,n)と表すことにする。このような原画像Pに対して、図9(b) に示すような修正用ノイズ画像Aを用意する。この修正用ノイズ画像Aは、原画像Pと同様に、M行N列の画素配列からなり、たとえば、m行n列目の画素には、画素値A(m,n)が定義されている。このような修正用ノイズ画像Aを用意することができれば、原画像P上の個々の画素のもつ画素値を、修正用ノイズ画像A上の対応位置にある画素のもつ画素値によって修正することにより、図9(c) に示すように、M行N列の画素配列からなる修正画像Pを得ることができる。この修正画像P上のm行n列目の画素の画素値をP(m,n)と表すことにすれば、この画素値P(m,n)は、たとえば、
(m,n)=P(m,n)+A(m,n)
なる式で求めることができる。もちろん、画素値P(m,n)を定義するための式は、上式に限定されるものではなく、関数fを用いて、
(m,n)=f(P(m,n),A(m,n))
なる形式で表現される任意の一般式を用いればよい。
【0039】
このような手法により得られる修正画像Pの特性は、どのような修正用ノイズ画像Aを用いたかによって大きく左右される。本願発明者は、当初、この修正用ノイズ画像Aとして、最も典型的なホワイトノイズ画像を用いることを考えた。たとえば、図10に示すように、M行N列の画素配列を定義し、各画素の画素値として全くランダムな値を定義すれば(たとえば、各画素ごとに発生させた乱数を、そのまま画素値として採用すればよい)、ホワイトノイズ画像Wが得られる。このホワイトノイズ画像Wでは、m行n列目の画素の画素値W(m,n)は、他の画素の画素値とは全く無関係に定義されたノイズ値となる。このようなホワイトノイズ画像Wの画素値の空間的分布には、あらゆる空間周波数成分が含まれている。たとえば、図10において、第m行目に並んだ複数の画素のもつ画素値を一次元分布としてとらえ、画素値の空間的変動を示すグラフをフーリエ変換すると、画素の解像度に基づいて定まる理論的に可能な空間周波数の全範囲にわたって、ほぼ均一な空間周波数分布が得られる。
【0040】
しかしながら、このようなホワイトノイズ画像Wを、そのまま修正用ノイズ画像Aとして用いた場合、最終的に得られるグラビア印刷物には、いわゆるザラザラ感が見られ、必ずしも好ましい結果にはならない。既に述べたように、本発明で付加するノイズ成分の空間周波数は、できるだけセル配置の空間周波数に近付けるのが好ましい。本願発明者は、ホワイトノイズ画像Wに対して、所定の空間フィルタを用いたフィルタリング処理を行うことにより、セルの空間周波数に近い周波数成分をもったノイズ画像を生成できることに着目し、フィルタリング処理後のノイズ画像を修正用ノイズ画像Aとして用いることにより、本発明として好ましい結果が得られることを見出だした。
【0041】
たとえば、図10に示すM行N列の画素配列からなるホワイトノイズ画像Wに適用するために、図11に示すような3行3列の空間フィルタFを定義する。ここでは、この空間フィルタFの行をα=−1,0,1と表し、列をβ=−1,0,1と表すことにし、α行β列の位置に定義されたフィルタ値をφ(α,β)と表すことにする。このような空間フィルタFを、図12に示すように、ホワイトノイズ画像W上のm行n列目の画素に適用し、
A(m,n)=Σ(φ(α,β)・W(m+α,n+β))
(但し、Σはα=−1,0,1、β=−1,0,1についての総和)
なる演算で新たな画素値A(m,n)を求めるようにし、この新たな画素値A(m,n)をもった修正用ノイズ画像を、図9(b) に示す修正用ノイズ画像Aとして用いればよい。このようなフィルタリング処理後に得られる修正用ノイズ画像Aは、セルの空間周波数に近い周波数成分をもったノイズ画像になるため、この修正用ノイズ画像Aを用いて、原画像Pを修正画像Pに変換すれば、ザラザラ感のない自然な画質をもったグラビア印刷物を得ることができる。
【0042】
図13は、本願発明者が実際に用いた空間フィルタFのフィルタ値の具体例を示す図である。このような空間フィルタFを用いた場合、m行n列目の画素値A(m,n)は、
Figure 0004040721
なる式により得られることになる。
【0043】
なお、上述の演算を行う際、通常は、ホワイトノイズ画像Wを格納するための第1の画素配列と、修正用ノイズ画像Aを格納するための第2の画素配列とを用意し、第1の画素配列内の画素値W(i,j)を読出して参照しながら、上式の右辺の演算を行い、その結果として得られた画素値A(i,j)を第2の画素配列内へ書き込むという処理が行われる。
【0044】
図6に示すシステムにおいて、上述の手法に基づくノイズ付加処理を実施するのであれば、ロゴコンバイン装置100から出力された分版合成データC2,M2,Y2,K2を、それぞれ図9(a) に示す原画像Pとし、それぞれについて、図9(b) に示す修正用ノイズ画像Aを用意して修正処理を行えばよい。得られた修正画像Pが、セル彫刻装置300に与えるべき分版合成データC3,M3,Y3,K3になる。
【0045】
§6. アナログ的なノイズ成分の付加処理
図6に示すノイズ付加装置200は、デジタル的にノイズ成分を付加する装置である。すなわち、ノイズ付加装置200においては、多数の画素からなるデジタル画像データに対して、個々の画素が有する画素値を増減することにより、ノイズ成分の付加が行われる。ただ、本発明に係るグラビア印刷方法を実施する上でのノイズ成分の付加処理は、必ずしもデジタル的に行う必要はなく、アナログ的に行うことも可能である。この場合、図6に示すノイズ付加装置200を用いる代わりに、セル彫刻装置300が打刻作業を行う際に、アナログ的にノイズ成分を付加する手段を設けるようにすればよい。
【0046】
図14は、一般的なセル彫刻装置300に、電圧変動装置400を付加することにより、アナログ的なノイズ成分の付加処理を実現した構成例を示すブロック図である。セル彫刻装置300内には、与えられたデジタルデータに応じた電圧を供給する打刻コントローラ310と、この打刻コントローラ310からの供給電圧によって動作する針駆動部320と、この針駆動部320によって駆動されて打刻作業を行うダイヤモンド針330とが設けられている(この他にも、打刻対象となる版面に対して、ダイヤモンド針330を走査する機構などが備わっているが、ここでは説明を省略する)。針駆動部320は、打刻コントローラ310から与えられる電圧に応じて、ダイヤモンド針330の枢軸335と版面との距離を調節する機能と、所定の周期でダイヤモンド針330を図の矢印方向に揺動させて打刻を行う機能とを有している。より具体的には、打刻コントローラ310からの供給電圧が大きければダイヤモンド針330の枢軸335を版面に近付ける制御を行い、供給電圧が小さければ枢軸335を版面から遠ざける制御を行う。その結果、大きな電圧が供給されたときには大きなセルが打刻され、小さな電圧が供給されたときには小さなセルが打刻されることになる。
【0047】
打刻コントローラ310は、与えられたデジタルデータ(画素値)に応じた大きさの電圧を針駆動部320に対して供給する機能を有している。すなわち、このセル彫刻装置300に対して、大きなデジタルデータを与えれば大きなセルが打刻され、小さなデジタルデータを与えれば小さなセルが打刻されることになる。したがって、デジタル的に付加されたノイズ成分を有するデータをセル彫刻装置300に与えれば、版面には、大きさの分布にノイズ成分が付加されたセル形成が行われることになる。
【0048】
ところが、電圧変動装置400により、打刻コントローラ310が供給する電圧をアナログ的に変動させるようにすれば、このセル彫刻装置300による打刻時にノイズ成分を付加することが可能になる。この場合、セル彫刻装置300に与えるデジタルデータは、ノイズ成分を含んでいる必要はない。すなわち、図6に示すシステムにおいて、ロゴコンバイン装置100から出力された分版合成データC2,M2,Y2,K2を、そのままセル彫刻装置300に与えればよい。前述したように、本発明において付加すべきノイズ成分は、セルピッチの2〜5倍の周期にするのが好ましく、特に、2〜3倍の周期にするのが好ましい。したがって、電圧変動装置400としては、ダイヤモンド針330による1つのセルの打刻周期を考慮して、その2〜5倍もしくは2〜3倍程度の周期をもった電圧変動を発生させる回路を用いるようにすればよい。
【0049】
§7. 本発明に係るグラビア印刷物
以上、本発明に係るグラビア印刷方法を述べてきたが、ここでは、このような印刷方法によって得られるグラビア印刷物の特徴を述べておく。
【0050】
図15は、上述の方法によって作成されたグラビア印刷版の一例を示す部分拡大図である。ここに示す例は、図1に示す例と同様に、網点密度60%の平網に相当する部分についてのセル構成を示している。従来の機械彫刻方式で作成された図1に示す版と比べると明らかなように、本発明の機械彫刻方式で作成された図15に示す版では、個々のセルの大きさが空間的に変動している。
【0051】
このようなグラビア印刷版を用いて印刷を行えば、腐食方式で作成したグラビア印刷物に近い画質をもった印刷物を得ることができる。図16は、図1に示すグラビア印刷版を用いて作成された印刷物の部分拡大図であり、図17は、図15に示すグラビア印刷版を用いて作成された印刷物の部分拡大図である。グラビア印刷版上の各セルの形状と比べて、グラビア印刷物上の各網点の形状は若干異なっているが、これは凹状のセル内に蓄積されたインキが紙面上に転写されて網点を形成する際のインキの物理的ふるまいに基づくものである。
【0052】
このように、個々のセルと個々の網点とは、形状は若干異なるものの、位置および大きさに関しては、互いに対応した関係にある。図16と図17とを比べると、網点のピッチは両者で同じであるが、個々の網点の大きさに関しては大きな相違がみられる。すなわち、図16に示す従来のグラビア印刷物では、個々の網点の大きさ(面積)がほぼ一定であるのに対し、図17に示す本発明のグラビア印刷物では、個々の網点の大きさの空間的分布に、網点のピッチの2〜3倍程度の周期をもったノイズ成分が付加されている。たとえば、一次元の空間的分布を調べるために、図17に示すように、任意の座標軸Zを定義し、この座標軸Z上に配置された網点の大きさの分布に着目すると、網点の配置ピッチの2〜3倍程度の周期で、網点の大きさが大きくなったり小さくなったり変化していることがわかる。すなわち、網点の大きさにランダム性が付加されていることになる。
【0053】
なお、ここでは説明の便宜上、平網部分(文字・線画データLWで示される部分)についての例を示したが、階調部分(階調画像データCTで示される部分)についても、個々のセルの大きさが空間的に変動するという同様の効果が得られることになる。特に、階調部分については、本発明の方法を適用することにより、「立体感に富む」、「人間の肌の表現力に優れる」、「不快な筋が観察されにくい」といった腐食方式の特徴を再現することができ、機械彫刻方式で作成したグラビア印刷物であるにもかかわらず、腐食方式で作成したグラビア印刷物に非常に近い画質を得ることができた。
【0054】
以上、本発明を図示する実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの他にも種々の形態で実施可能である。特に、ノイズ成分を付加する手法は、上述の実施形態で述べた手法に限定されるものではなく、この他にも種々の方法を採ることが可能である。
【0055】
また、上述した実施形態では、彫刻針(ダイヤモンド針)を用いた打刻により版胴面に多数のセルを形成して凹版を作成する機械彫刻方式を例にとった説明を行ってきたが、本発明に係るグラビア印刷方法は、必ずしも機械彫刻方式による凹版作成を前提とするものではない。本発明の基本的な技術思想は、物理的方法によりセル形成を行うグラビア印刷であるにもかかわらず、化学的方法によりセル形成を行うグラビア印刷に近い画質を得る点にある。したがって、本発明におけるセルの形成方法は、機械彫刻方式に限定されるものではなく、物理的な方法によりセルを形成することができれば、どのような方法を採ってもかまわない。本発明は、たとえば、レーザを用いてセルを彫刻するグラビア印刷方法にも適用可能であり、いわゆる電子彫刻方式によってセルを形成するグラビア印刷方法に広く適用可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係るグラビア印刷方法によれば、文字・線画データと階調画像データとを合成した後、この合成データにノイズ成分を付加してセル形成を行うようにしたため、物理的な彫刻方式を採りつつ、疑似的に化学的な腐食方式のグラビア印刷物に近い画質をもった印刷物を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】機械彫刻方式の工程で作成されたグラビア印刷版の部分拡大図である。
【図2】腐食方式の工程で作成されたグラビア印刷版の部分拡大図である。
【図3】機械彫刻方式で作成された版と、腐食方式で作成された版とについて、セルの大きさ分布を比較するためのグラフである。
【図4】平網画像からなる原画像と、これにノイズ成分を付加した修正画像と、についての画素値の空間分布を示すグラフである。
【図5】階調画像からなる原画像と、これにノイズ成分を付加した修正画像と、についての画素値の空間分布を示すグラフである。
【図6】本発明に係るグラビア印刷方法を実施するために用いるシステムの一構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るグラビア印刷方法に用いられる正規分布のノイズ成分を示すグラフである。
【図8】本発明に係るグラビア印刷方法に用いられる所定の空間周波数をもったノイズ成分を示すグラフである。
【図9】本発明の手法に基づくノイズ成分の付加処理の基本原理を示す図である。
【図10】図9(b) に示す修正用ノイズ画像Aを生成するために用いるホワイトノイズ画像Wを示す図である。
【図11】図10に示すホワイトノイズ画像Wに適用するための空間フィルタFの一例を示す図である。
【図12】図10に示すホワイトノイズ画像Wに、図11に示す空間フィルタFを適用した状態を示す図である。
【図13】図11に示す空間フィルタFに対して、具体的な数値を定義した例を示す図である。
【図14】アナログ的にノイズ成分の付加を行うための構成例を示すブロック図である。
【図15】本発明に係るグラビア印刷方法で作成されたグラビア印刷版の一例を示す部分拡大図である。
【図16】図1に示す従来の機械彫刻方式のグラビア印刷版を用いて印刷されたグラビア印刷物の部分拡大図である。
【図17】図15に示す本発明に係る機械彫刻方式のグラビア印刷版を用いて印刷されたグラビア印刷物の部分拡大図である。
【符号の説明】
100…ロゴコンバイン装置
110…分版処理部
120…面付処理部
130…フィルタ処理部
140…コンバイン処理部
150…解像度変換処理部
200…ノイズ付加装置
300…セル彫刻装置
310…打刻コントローラ
320…針駆動部
330…ダイヤモンド針
335…枢軸
400…電圧変動装置
A…修正用ノイズ画像
A(m,n)…修正用ノイズ画像を構成する画素の画素値
C1,C2,C3…分版合成データ
CT…階調画像データ
CT(C),CT(M),CT(Y),CT(K)…分版された階調画像データ
F…空間フィルタ
K1,K2,K3…分版合成データ
L…ノイズ成分の周期
LW…文字・線画データ
LW(C),LW(M),LW(Y),LW(K)…分版された文字・線画データ
M1,M2,M3…分版合成データ
P…原画像
P(m,n)…原画像を構成する画素の画素値
…修正画像
(m,n)…修正画像を構成する画素の画素値
W…ホワイトノイズ画像
W(m,n)…ホワイトノイズ画像を構成する画素の画素値
Y1,Y2,Y3…分版合成データ

Claims (7)

  1. 所定のピッチで配列された複数のセルを彫刻することにより凹版を作成し、この凹版を用いて印刷を行うグラビア印刷方法であって、
    印刷対象となる画像のうち、文字および線画の部分を表わす文字・線画データを用意する段階と、
    印刷対象となる画像のうち、階調画像の部分を表わす階調画像データを用意する段階と、
    前記文字・線画データと前記階調画像データとを合成するコンバイン処理を行い、多数の画素の集合からなる合成データを作成する段階と、
    前記合成データを構成する個々の画素の画素値にノイズ成分を付加することにより修正データを作成する段階と、
    前記修正データを構成する個々の画素の画素値に応じた大きさのセルを彫刻することにより凹版を作成する段階と、
    この凹版を用いて印刷を行う段階と、
    を有し、
    前記文字・線画データおよび前記階調画像データの一方もしくは双方に対して、所定の空間周波数成分を増減させるフィルタ処理を行い、このフィルタ処理後のデータに対してコンバイン処理を行った後に、ノイズ成分を付加する処理を行うことを特徴とするグラビア印刷方法。
  2. 請求項1に記載の印刷方法において、
    文字・線画データを所定の色成分ごとに分ける分版処理と、階調画像データを所定の色成分ごとに分ける分版処理とを行い、分版後のデータに対して各色成分ごとにコンバイン処理を行い、各色成分ごとの合成データのそれぞれに対して、別個独立してノイズ成分を付加する処理を行うことを特徴とするグラビア印刷方法。
  3. 請求項1または2に記載の印刷方法において、
    コンバイン処理を行った後、合成データを構成する画素についての解像度を変換する処理を行い、解像度変換後の合成データに対して、ノイズ成分を付加する処理を行うことを特徴とするグラビア印刷方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の印刷方法において、
    文字・線画データを、所定の画素値と当該画素値を有する画素列の長さとを示すデータの集合によって構成されるランレングスデータの形式で用意し、
    階調画像データを、所定の画素値をもった画素配列によって構成されるビットマップデータの形式で用意することを特徴とするグラビア印刷方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の印刷方法において、
    合成データを構成する個々の画素のピッチの2〜5倍の周期をもったノイズ成分を、各画素値に付加することにより修正データを作成することを特徴とするグラビア印刷方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の印刷方法において、
    与えられたデジタルデータに応じた電圧を針駆動部に供給してセルを機械的に彫刻する打刻コントローラを有するセル彫刻装置と、前記打刻コントローラが供給する電圧を変動させる機能をもった電圧変動装置と、を用意し、
    合成データにノイズ成分を付加して修正データを作成し、この修正データに基づいてセルの彫刻を行う処理に代えて、
    合成データを前記打刻コントローラに与え、前記電圧変動装置により前記打刻コントローラの供給する電圧を変動させる処理を行うことによりノイズ成分の付加を行うことを特徴とするグラビア印刷方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のグラビア印刷方法を用いて製造されたグラビア印刷物。
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