JP4039910B2 - 窒素処理方法及び窒素処理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する窒素処理方法及び窒素処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、湖沼、内湾等の閉鎖性水域において、生活排水や産業排水中の窒素やリンなどの栄養塩類流入が原因と考えられる赤潮、アオコの異常発生が大きな社会問題となっている。このため、行政指導の下で大規模集中汚染源に対しては活性汚泥法などによる排水処理を行われている。閉鎖系水域への排水の水質基準は、一日当たりの排水量が50トン以上と規模の大きな事業場に対する規制があり、この排出規制は、これまではCOD(化学的酸素要求量)のみであった。窒素については全窒素量で120mg/lの一般排出基準に留まっていたが、今後は全窒素量を現行の1/10にすることも検討されている。
【0003】
しかし、一般の小規模生活排水ではBOD(生物化学的酸素要求量)のみを処理するものが多く、硝酸塩などの窒素成分は処理されていないのが現状である。また、ヨーロッパ地域では、化学肥料や家畜の排泄物から、水溶性の硝酸塩が土壌中に浸透して起こる地下水の汚染が深刻な問題になっている。汚染水を人間が摂取した場合、神経障害、ガン、幼児のメトヘモグロビン血症などを引き起こすことが知られている。以上の点で、高性能な硝酸態窒素除去法の早期開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
硝酸態窒素の除去には、一般的には嫌気的条件下での脱窒細菌による生物的処理が用いられている。脱窒菌の殆どは従属栄養細菌であり、増殖には有機物を必要とする。それ故、無機系排水のように有機物をあまり含有しない排水を処理する場合、水素供与体としてメタノール等を添加するだけでなく、嫌気性浄化槽の設置が不可欠となる。そのため、設置場所や経費面が問題となっている。また、生物的処理では、温度や排水に含まれる有害成分の影響を受けやすいという課題もある。
【0005】
生物的手法以外にはイオン交換法、膜分離法、触媒法等の物理化学的手法が存在するが、その経済性に問題が残されている。一方、電解法による排水処理は操作が簡単であり、装置の大きさに対して処理能力が大きく、BOD源がない排水の処理も可能である。
【0006】
従来の電解法による窒素除去に関する研究としては、被処理水に電流を流してアンモニア、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素を酸化、又は、還元分解して窒素ガスにする方法がある。この場合、従来の被処理水の電気分解法では、アノードに例えば、白金、イリジウム、パラジウムなどの貴金属材料を用いていた。
【0007】
そして、被処理水に電流を流すことにより、アノードにおいてアンモニア態窒素が活性酸素や次亜塩素酸により酸化され、窒素化合物が窒素ガスに変換されることで窒素化合物の処理が行われていた。
【0008】
しかしながら、従来の電解による窒素化合物の処理方法では、被処理水の窒素化合物の濃度が所定の値以上、例えば1000mg/l以上では、脱窒反応の電流効率が著しく低下するため、窒素化合物の処理効率が低いという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、汚染地下水などの窒素化合物を含有する被処理水を効率的に処理することができる窒素処理方法及び窒素処理システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の窒素処理方法は、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する方法であって、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度に基づいて希釈率を調整することにより、当該被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈した後、当該被処理水を電気化学的手法により処理することを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する方法において、処理水を希釈し、当該被処理水の窒素化合物濃度を低下させた後、当該被処理水を電気化学的手法により処理するので、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。また、本発明では被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈するので、電気化学的手法による被処理水中の窒素化合物の処理に最適な窒素化合物濃度で窒素処理を行うことができるようになり、より一層窒素化合物の処理効率を向上させることができるようになる。
【0012】
特に、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度に基づいて希釈率を調整するので、常に、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に被処理水を希釈することができるようになる。
【0013】
請求項2の発明の窒素処理方法は、上記発明において電気化学的手法により処理された後の被処理水を希釈液として用いることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、上記発明において、電気化学的手法により処理された後の被処理水を希釈液として用いるので、新たな上水等を用いることなく被処理水の希釈を行うことができるようになり、排水量の増加によるランニングコストの高騰を抑制することができると共に、環境に適した窒素処理を実現することができるようになる。
【0015】
請求項3の発明の窒素処理システムは、被処理水中の窒素化合物を処理するものであって、被処理水に少なくとも一部が浸漬され、電気化学的手法により当該被処理水を処理するための少なくとも一対の電極と、被処理水を希釈し、当該被処理水の窒素化合物濃度を 低下させる希釈処理手段を備え、この希釈処理手段は、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段を有し、この濃度検出手段の検出する濃度に基づいて被処理水の希釈率を調整することにより、当該被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明の窒素処理システムは、上記発明において、濃度検出手段は、イオンセンサであることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明によれば、被処理水中の窒素化合物を処理する窒素処理システムにおいて、被処理水に少なくとも一部が浸漬され、電気化学的手法により当該被処理水を処理するための少なくとも一対の電極と、被処理水を希釈し、当該被処理水の窒素化合物濃度を低下させる希釈処理手段を備えるので、被処理水を希釈処理手段にて希釈処理した後、前記各電極を用いて電気化学的手法により効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0018】
また、本発明では、希釈処理手段は、被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈するので、前記各電極を用いた電気化学的手法による被処理水中の窒素化合物の処理に最適な窒素化合物濃度で窒素処理を行うことができるようになり、より一層窒素化合物の処理効率を向上させることができるようになる。
【0019】
特に、希釈処理手段は、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段を備え、濃度検出手段の検出する濃度に基づいて当該被処理水の希釈率を調整するので、常に、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に被処理水を希釈することができるようになる。
【0020】
更に、請求項4の発明によれば、濃度検出手段は、イオンセンサであるので、容易に硝酸態窒素としての硝酸イオン及び亜硝酸態窒素としての亜硝酸態イオンの濃度を検出することができ、容易に、且つ、低コストにて本発明を実現することができるようになる。
【0021】
請求項5の発明の窒素処理システムは、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により処理された後の被処理水を希釈液として用いることを特徴とする。
【0022】
請求項5の発明によれば、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により処理された後の被処理水を希釈液として用いるので、新たな上水等を用いることなく被処理水の希釈を行うことができるようになり、排水量の増加によるランニングコストの高騰を抑制することができると共に、環境に適した窒素処理を実現することができるようになる。
【0023】
請求項6の発明の窒素処理システムは、請求項5の発明において、希釈処理手段は、被処理水を貯留する希釈槽と、電極が浸漬される被処理水を貯溜する処理槽と、希釈槽へ被処理水を供給する供給手段と、希釈槽内の被処理水を処理槽に搬送する搬送手段と、処理槽内の被処理水を希釈液として希釈槽へ返送する返送手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、希釈槽内には、該希釈槽内の水位を検出する水位検出手段を備え、制御手段は、当該水位検出手段の出力に基づいて供給手段及び返送手段を制御することを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明において、希釈処理手段は、被処理水を貯留する希釈槽と、電極が浸漬される被処理水を貯溜する処理槽と、希釈槽へ被処理水を供給する供給手段と、希釈槽内の被処理水を処理槽に搬送する搬送手段と、処理槽内の被処理水を希釈液として希釈槽へ返送する返送手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、希釈槽内には、該希釈槽内の水位を検出する水位検出手段を備え、制御手段は、当該水位検出手段の出力に基づいて供給手段及び返送手段を制御するので、常に、窒素処理に適した窒素化合物濃度に被処理水を希釈することができるようになる。
【0025】
請求項7の発明の窒素処理システムは、請求項3、請求項4又は請求項5の発明において、希釈処理手段は、被処理水を貯留する希釈槽と、電極が浸漬される被処理水を貯溜する処理槽と、希釈槽へ被処理水を供給する供給手段と、希釈槽内の被処理水を処理槽に搬送する搬送手段と、処理槽内の被処理水を希釈液として希釈槽へ返送する返送手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、濃度検出手段は、希釈槽内又は希釈槽の前段に設けられ、制御手段は、供給手段により被処理水を希釈槽に供給すると共に、濃度検出手段の出力に基づき、処理槽内にて電気化学的手法により処理された被処理水を返送手段により希釈槽に返送し、排出手段により処理槽内の被処理水を排出した後、希釈槽内にて希釈された被処理水を搬送手段により処理槽に搬送することを特徴とする。
【0026】
請求項7の発明によれば、請求項3、請求項4及び請求項5の発明において、希釈処理手段は、被処理水を貯留する希釈槽と、電極が浸漬される被処理水を貯留する処理槽と、希釈槽へ被処理水を供給する供給手段と、希釈槽内の被処理水を処理槽に搬送する搬送手段と、処理槽内の被処理水を希釈液として希釈槽へ返送する返送手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、濃度検出手段は、希釈槽内又は希釈槽の前段に設けられ、制御手段は、供給手段により被処理水を希釈槽に供給すると共に、濃度検出手段の出力に基づき、処理槽内にて電気化学的手法により処理された被処理水を返送手段により希釈槽に返送し、排出手段により処理槽内の被処理水を排出した後、希釈槽内にて希釈された被処理水を搬送手段により処理槽に搬送するので、希釈槽内に貯留された被処理水を濃度検出手段の出力に基づき、供給手段及び返送手段により、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0027】
これにより、簡易なシステムにて、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0028】
また、希釈槽内にて窒素化合物濃度を調整された被処理水は、搬送手段により処理槽に搬送され、希釈槽とは別槽にて電解による脱窒処理を行うことができる。そのため、希釈処理及び脱窒処理を別段で行うため、処理効率の向上を図ることができる。
【0029】
請求項8の発明の窒素処理システムは、請求項6又は請求項7の発明に加えて、希釈槽内への被処理水及び希釈液の供給量の積算値を検出する供給量検出手段を備え、制御手段は、当該供給量検出手段の出力に基づいて供給手段及び返送手段を制御することを特徴とする。
【0030】
請求項8の発明によれば、請求項6又は請求項7の発明に加えて、希釈槽内への被処理水及び希釈液の供給量の積算値を検出する供給量検出手段を備え、制御手段は、当該供給量検出手段の出力に基づいて供給手段及び返送手段を制御するので、簡易なシステムにて、希釈槽内の被処理水を窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0031】
請求項9の発明の窒素処理システムは、請求項3、請求項4又は請求項5の発明に加えて、希釈処理手段は、被処理水を貯留し、該処理水に電極が浸漬される処理槽と、該処理槽へ被処理水を供給する供給手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、処理槽内の水位を検出する水位検出手段と、供給手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、濃度検出手段は、処理槽又は処理槽の前段に設けられ、制御手段は、濃度検出手段及び水位検出手段の出力に基づき、排出手段により処理槽内にて電気化学的手法により処理された被処理水の一部を排出した後、供給手段により被処理水を処理槽に供給することを特徴とする。
【0032】
請求項9の発明によれば、請求項3、請求項4又は請求項5の発明に加えて、希釈処理手段は、被処理水を貯留し、該処理水に電極が浸漬される処理槽と、該処理槽へ被処理水を供給する供給手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、処理槽内の水位を検出する水位検出手段と、供給手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、濃度検出手段は、処理槽又は処理槽の前段に設けられ、制御手段は、濃度検出手段及び水位検出手段の出力に基づき、排出手段により処理槽内にて電気化学的手法により処理された被処理水の一部を排出した後、供給手段により被処理水を処理槽に供給するので、処理槽内に貯留された被処理水を濃度検出手段及び水位検出手段の出力に基づき、供給手段及び排出手段により、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0033】
これにより、簡易なシステムにて、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0034】
また、被処理水を希釈する槽と窒素処理を行う槽とを同一槽にて行うことにより、システムの簡素化を図ることができるようになる。
【0035】
請求項10の発明の窒素処理システムは、上記各窒素処理システムの発明に加えて、カソードを構成する電極は、周期表の第Ib族又は第IIb族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものにより構成し、アノードを構成する電極は、不溶性材料又はカーボンにより構成することを特徴とする。
【0036】
請求項10の発明によれば、上記各窒素処理システムの発明に加えて、カソードを構成する電極は、周期表の第Ib族又は第IIb族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものにより構成し、アノードを構成する電極は、不溶性材料又はカーボンにより構成するので、被処理水中の硝酸態窒素の亜硝酸態窒素及びアンモニアへの還元反応を促進することができ、還元反応に要する時間を短縮することができるようになる。また、本発明の如く被処理水中の窒素化合物濃度が低い場合であっても効率的に窒素化合物の除去を行うことができるようになる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明の窒素処理方法を適用した窒素処理システムSの概要を示す説明図である。本実施例における窒素処理システムSによって処理される被処理水は、例えば化学肥料や家畜の排泄物により水溶性の硝酸塩、即ち、硝酸態窒素が土壌中に浸透し、当該硝酸態窒素により汚染された地下水、若しくは、工業排水又は家庭用排水であるものとする。尚、本実施例で用いられる被処理水は硝酸態窒素などを含む全窒素濃度が比較的高い、例えば1000mg/l以上の硝酸態窒素を含有する汚染地下水等であるものである。また、本実施例における被処理水は、少なくともハロゲン化物イオンとして塩化物イオンが含有されているものとする。
【0038】
係る窒素処理システムSは、上記被処理水を貯留するための貯留槽10と、貯留槽10に貯留された被処理水を希釈する希釈処理手段(詳細は後述する。)と、前記希釈処理手段にて希釈された被処理水の窒素処理を行う窒素処理手段としての窒素処理装置1とにより構成されている。
【0039】
希釈処理手段は、希釈槽11を備えており、この希釈槽11内には、貯留される被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段としてのイオンセンサ22が設けられている。また、この希釈槽11には、供給手段としての供給電磁弁13を介して配管12が接続されており、これにより、貯留槽10内の被処理水が希釈槽11に搬送可能とされる。更に、この希釈槽11には、搬送手段としての搬送電磁弁15を介して配管14が接続されており、これにより、当該希釈槽11内の被処理水が前記窒素処理装置1(詳細は後述する処理槽2)に搬送可能とされる。
【0040】
前記窒素処理装置1を構成する処理槽2には、返送手段としてのポンプ17及び返送電磁弁18を介して配管16が接続されており、これにより、処理槽2内の被処理水を希釈液として希釈槽11に返送可能とされている。更に、前記処理槽2には、窒素処理した後の被処理水の一部を外部に排水するための配管23が排出手段としての排出電磁弁19を介して接続されている。
【0041】
尚、配管12であって供給電磁弁13の上流側、及び配管14であって搬送電磁弁15の上流側にはそれぞれポンプ20、21が設けられていてもよいものとする。
【0042】
また、本実施例では、供給電磁弁13が設けられる配管12及び返送電磁弁18が設けられる配管16には、当該電磁弁13及び18を通過する被処理水及び希釈液の供給量の積算値を検出する供給量検出センサ(供給量検出手段)24、25がそれぞれ設けられているものとする。
【0043】
尚、本実施例では、希釈槽11への被処理水や希釈液の供給量は供給量検出センサ24、25のみにより検出しているが、これ以外に、希釈槽11内の水位を検出する水位センサ(水位検出手段)を並設若しくは、該水位センサのみにより希釈槽11内への供給量を検出してもよいものとする。
【0044】
ここで、図2は窒素処理システムSの制御装置としてのマイクロコンピュータ30を示している。マイクロコンピュータ30の入力側には、前記イオンセンサ22及び供給量検出センサ24、25が接続されていると共に、マイクロコンピュータ30の出力側には、各電磁弁13、15、18、19及び各ポンプ17、20、21が接続されている。これにより、各電磁弁13、15、18、19及び各ポンプ17、20、21は、各センサ22、24、25の出力に基づいて制御される。
【0045】
次に、図3を参照して窒素処理装置1について説明する。本実施例における窒素処理装置1は、電気化学的手法(電解)により被処理水の脱窒処理を行うものであり、内部に配管14を介して希釈された被処理水を流入させる図示しない流入口と、配管23を介して外部に被処理水を流出される流出口29(図1のみ図示する。)及び、配管16を介して脱窒処理された被処理水を希釈液として希釈槽11に返送する返送口31(図1のみ図示する。)を有する処理室4を構成する処理槽2と、該処理室4内の希釈被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置される一対の電極、即ち、アノード5と、カソード6と、該電極5、6に通電するための電源7とから構成されている。尚、電源7は、上記マイクロコンピュータ30の出力側に接続されており、該マイクロコンピュータ30により制御されている。また、図3において8は、処理槽2内を撹拌するための撹拌手段としての撹拌子である。
【0046】
前記カソード6は、周期表の第Ib族又は第IIb族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものとして、例えば、亜鉛、銅、銀、亜鉛と銅の合金である真鍮により構成されており、前記アノード5は、不溶性金属、例えば白金、イリジウム、パラジウム又はその酸化物などから構成される不溶性電極又はカーボンより構成されている。
【0047】
また、図3に示す如くアノード5とカソード6との間に位置して、アノード5を囲繞するように、円筒状に形成された遮蔽部材9が設けられている。該遮蔽部材9は、例えばガラス繊維やプラスチックのメッシュなどの非導電性部材にて構成されており、これにより、アノード5から発生する酸素気泡が、カソード6側に通過することを阻止することができる。このとき、アノード5側に存するイオンは、該遮蔽部材9を通過してカソード6側に移動することができる。また、遮蔽部材9は、汚泥の流水により生じる撹拌又は、前記撹拌子8による撹拌によりアノードに流水の影響を与えない構成とされている。
【0048】
以上の構成により、本実施例の窒素処理システムSの窒素処理について説明する。まず、貯留槽10内に予め貯留された被処理水を配管12を介して希釈槽11内に搬送する。初めマイクロコンピュータ30は、搬送電磁弁15を閉じ、供給電磁弁13を開放する。更に、マイクロコンピュータ30は、ポンプ20を運転し、供給量検出センサ24により希釈槽11内に供給される被処理水の供給量を検出する。そして、希釈槽11内に設けられたイオンセンサ22により検出された被処理水中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度及び供給量検出センサ24によって検出された供給量に基づいて、ポンプ20を停止し、供給電磁弁13を閉鎖する。
【0049】
即ち、イオンセンサ22により検出された硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が高い場合には、供給量検出センサ24の出力により、比較的少ない量の被処理水のみを希釈槽11に供給し、イオンセンサ22により検出された硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が比較的低い場合には、供給量検出センサ24の出力により、比較的多量の被処理水を希釈槽11に供給する。
【0050】
その後、マイクロコンピュータ30は、返送手段としての返送電磁弁18を開放し、ポンプ17を運転し、詳細は後述する窒素処理装置1によって処理された後の希釈液としての被処理水を希釈槽11内に供給し、供給量検出センサ25によって検出された供給量に基づいて、希釈槽11内の被処理水中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が脱窒処理における電流効率が高くなる範囲、例えば、300mg/l以上800mg/l以下の範囲となるように調整する。
【0051】
本実施例では、上述の如く検出されたイオン濃度に応じて希釈槽11内に貯留された被処理水に希釈液を加え、希釈槽11内に一定量の希釈被処理水を調整する。尚、特に脱窒処理における電流効率が高くなる、即ち電流効率が70%以上となる400mg/l以上630mg/l以下の範囲に被処理水を調整してもよい。本実施例では、上記範囲において最も電流効率の良い500mg/l程度に被処理水を調整するものとする。
【0052】
但し、窒素処理装置1により処理された被処理水がない場合には、水道水や工業用水などを希釈槽11に供給し、希釈槽11内に貯留された被処理水の硝酸イオン及び亜硝酸イオンが上記濃度範囲となるように調整する。
【0053】
上述の如く希釈槽11において所定の濃度範囲に調整された希釈被処理水は、マイクロコンピュータ30によりポンプ21が運転され、搬送電磁弁15が開放されることにより、窒素処理装置1の処理槽2に搬送される。このとき、排出電磁弁19及び返送電磁弁18はマイクロコンピュータ30により閉鎖されているものとする。
【0054】
そして、マイクロコンピュータ30により電源7をONとし、カソード6及びアノード5に通電することにより、処理槽2内に搬送された希釈被処理水は、電解処理される。カソード6側では、希釈被処理水中に含まれる硝酸イオンは、還元反応により亜硝酸イオンに変換される(反応式A)。また、硝酸イオンの還元反応により生成された亜硝酸イオンは、更に、還元反応により、アンモニアに変換される(反応式B)。以下に、反応式A及び反応式Bを示す。
反応式A NO3 -+H2O+2e-→NO2 -+2OH-
反応式B NO2 -+5H2O+6e-→NH3(aq)+7OH-
【0055】
一方、アノード5側では、上述の如く希釈被処理水中に少なくともハロゲン化物イオンとして塩化物イオンが存在することから、アノード5の表面から次亜塩素酸やオゾン又は活性酸素が発生し、希釈被処理水中におけるアンモニアの脱窒作用を生じ、窒素ガスを生成する(反応式C)。以下に、反応Cを示す。
反応式C 2NH3+3HClO→N2↑+3HCl+3H2O
【0056】
尚、ここで、希釈被処理水中に含有される塩化物イオンが所定の濃度、例えば100mg/lに満たない場合には、図示しない塩化物イオン調整手段により、格別に塩化物イオンとして例えば塩化カリウム又は塩化ナトリウムを濃縮被処理水中に添加する。これにより、希釈被処理水は、電解により、より一層次亜塩素酸を発生しやすい状態となり、効率的に希釈被処理水中のアンモニアの脱窒処理を行うことができるようになる。
【0057】
これにより、500mg/l程度の硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有する希釈被処理水は、窒素処理装置1において、効率的に窒素化合物の除去処理を行うことができ、10乃至30mg/Lの硝酸態窒素を含有する被処理水として外部に排水処理することができるようになる。
【0058】
また更に、本実施例では、希釈槽11において窒素化合物としての硝酸イオンや亜硝酸イオンを500mg/l程度にまで希釈処理した後の被処理水を窒素処理装置1により電解処理するため、効率的に窒素化合物の除去処理を行うことができる。
【0059】
ここで、図4に示される実験結果は、アノード5に白金系の電極を使用し、カソード6に真鍮の電極を使用した場合における被処理水中の硝酸態窒素濃度を示している。この実験では硝酸態窒素を含有する各溶液300mlに各電極5、6を浸漬し、該電極5、6間に2.5Aを流し、定電流電解を行った。
【0060】
図4は、硝酸態窒素濃度が100mg/l、300mg/l、500mg/l、800mg/l、1000mg/lの各溶液を電解した場合における脱窒反応の電流効率を示している。これによると、硝酸態窒素濃度が100mg/lの溶液を電解した場合の電流効率は35.2%、300mg/lの溶液を電解した場合の電流効率は68.4%、500mg/lの溶液を電解した場合の電流効率は70.6%、800mg/lの溶液を電解した場合の電流効率は61.8%、1000mg/lの溶液を電解した場合の電流効率は30.9%であった。
【0061】
これにより、被処理水の硝酸態窒素濃度が300mg/l以上800mg/l以下の場合において、脱窒反応の電解効率が60%を上回っていることが分かる。特に、硝酸態窒素濃度が100mg/lや1000mg/lの被処理水の電解を行った場合には、電解効率が上記濃度範囲の場合と比して半分以下となっており、極端に効率が低下していることが分かる。
【0062】
そのため、被処理水を希釈し窒素化合物濃度を低下させた後、電解することにより、効率的に被処理水中の窒素化合物の脱窒処理を行うことができるようになる。特に、被処理水を脱窒反応の電解効率が高くなる範囲、例えば300mg/l以上800mg/l以下の範囲に調整することにより、著しく脱窒反応の電解効率を向上させることができるようになり、より一層窒素化合物の処理効率を向上させることができるようになる。
【0063】
また、本実施例では、希釈槽11に設けられた硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度を検出するイオンセンサ22の出力に基づき貯留槽10からの被処理水の供給量と処理槽2からの希釈液の供給量を制御し、被処理水の希釈率を調整するので、常に、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に被処理水を希釈した後、高効率で脱窒処理を行うことができるようになる。
【0064】
更にまた、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段は上述の如くイオンセンサ22であるので、容易に硝酸態窒素としての硝酸イオン及び亜硝酸態窒素としての亜硝酸イオンの濃度を検出することができ、容易、且つ、低コストにて本発明を実現することができるようになる。
【0065】
上述の如き希釈被処理水の脱窒処理が終了した後、若しくは、脱窒処理を行っている間に、マイクロコンピュータ30は、搬送電磁弁15を閉じ、供給電磁弁13を開放し、再び、貯留槽10内に貯留された被処理水を配管12を介して希釈槽11内に搬送する。そして、マイクロコンピュータ30は、ポンプ20を運転し、供給量検出センサ24により希釈槽11内に供給される被処理水の供給量を検出する。そして、希釈槽11内に設けられたイオンセンサ22により検出された被処理水中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度及び供給量検出センサ24によって検出された供給量に基づいて、ポンプ20を停止し、供給電磁弁13を閉鎖する。
【0066】
その後、マイクロコンピュータ30は、返送電磁弁18を開放し、ポンプ17を運転し、上述の如く被処理水中の脱窒処理が終了した被処理水を希釈液として希釈槽11内に供給し、供給量検出センサ25によって検出された供給量に基づいて、希釈槽11内の被処理水中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が脱窒処理における電流効率が高くなる範囲、例えば、300mg/l以上800mg/l以下の範囲となるように調整する。
【0067】
尚、処理槽2内の被処理水のうち、希釈液として希釈槽11内に供給されなかった被処理水は、マイクロコンピュータ30により排出電磁弁19を開放することにより、外部に排水される。
【0068】
その後、希釈槽11内において上述の如く所定の濃度範囲に調整された希釈被処理水は、マイクロコンピュータ30によって搬送電磁弁15を開放することにより、窒素処理装置1の処理槽2内に搬送され、上述の如く脱窒処理される。
【0069】
ここで、被処理水を希釈する希釈液は、上述の如く脱窒処理された後の被処理水を用いることにより、新たな上水等を用いることなく、被処理水の希釈を行うことができる。これにより、排水量の増加によるランニングコストの高騰を抑制することができると共に、環境に適した窒素処理を実現することができるようになる。
【0070】
また、本実施例によれば、上述した如く希釈槽11と、マイクロコンピュータ30に接続された各電磁弁13、15、18、19及びポンプ17、20、21、並びにイオンセンサ22と、供給量検出センサ24、25により構成された希釈処理手段を備えた簡易なシステムにて、容易に被処理水を窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0071】
更にまた、本実施例によれば、希釈槽11内にて窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整された被処理水は、搬送電磁弁15を介して処理槽2に搬送され、希釈槽11とは別槽にて電解による脱窒処理を行うことができる。そのため、希釈処理及び脱窒処理を別段で行うことが可能となり、処理効率をより一層向上させることができるようになる。
【0072】
次に、もう一つの本発明の実施例について図5を参照して説明する。図5は本発明の第2の実施例の窒素処理方法を実現するための窒素処理システムTの概要を示す説明図である。尚、図5において図1と同一符号は同一若しくは同様の作用を奏するものとする。
【0073】
この実施例における窒素処理システムTも被処理水を貯留するための貯留槽10と、貯留槽10に貯留された被処理水を希釈する希釈処理手段と、前記希釈処理手段にて希釈された被処理水の窒素処理を行う窒素処理手段としての窒素処理装置1とにより構成されている。
【0074】
希釈処理手段は、前記電極が少なくとも一部浸漬される処理槽2を備えている。前記貯留槽10には、供給手段としての供給電磁弁13を介して配管12が接続されており、これにより、貯留槽10内の被処理水が処理槽2に搬送可能とされる。そして、該貯留槽10には、処理槽2への前段として該貯留槽10に貯留される被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段としてのイオンセンサ22が設けられている。また、処理槽2には、窒素処理した後の被処理水の一部を外部に排水するための配管23が排出手段としての排出電磁弁19を介して接続されている。尚、配管12であって供給電磁弁13の上流側にはポンプ20が設けられていてもよいものとする。
【0075】
また、本実施例では、処理槽2には、該処理槽2内の水位を検出する水位センサ(水位検出手段)32が設けられているものとする。更に、この処理槽2には、電気化学的手法により、被処理水中の窒素化合物を処理する電極、即ち、アノード5と、カソード6と、該電極5、6に通電するための電源7とが設けられている。
【0076】
尚、本実施例においても、前記カソード6は、周期表の第Ib族又は第IIb族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものとして、例えば、亜鉛、銅、銀、亜鉛と銅の合金である真鍮により構成されており、前記アノード5は、不溶性金属、例えば白金、イリジウム、パラジウム又はその酸化物などから構成される不溶性電極又はカーボンより構成されている。
【0077】
ここで、図6は窒素処理システムTの制御装置としてのマイクロコンピュータ33を示している。マイクロコンピュータ33の入力側には、前記イオンセンサ22及び水位センサ32が接続されていると共に、マイクロコンピュータ33の出力側には、各電磁弁13、19及びポンプ20及び電源7が接続されている。これにより、各電磁弁13、19及びポンプ20及び電源7は、各センサ22、32の出力に基づいて制御される。
【0078】
以上の構成により、かかる実施例の窒素処理システムTの窒素処理について説明する。尚、通常、処理槽2内には、前回の脱窒処理において脱窒処理された被処理水が貯留されているものとする。但し、処理槽2内に脱窒処理された被処理水が貯留されていない場合には、水道水や工業用水などを予め処理槽2内に貯留しておくものとする。まず、マイクロコンピュータ33は、イオンセンサ22により貯留槽10内に貯留された被処理水の中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度を検出し、この濃度に基づいて、排出弁19を開閉制御し、処理槽2内に前記イオンセンサ22により検出した濃度に応じた量の被処理水を残留させる。
【0079】
次いで、マイクロコンピュータ33は、供給電磁弁13を開放すると共に、ポンプ20を運転し、上記と同様にイオンセンサ22により検出した濃度に応じた量の被処理水を供給する。
【0080】
即ち、イオンセンサ22により検出された硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が高い場合には、マイクロコンピュータ33は、水位センサ32から検出される被処理水の水位が比較的高い位置になるように排出電磁弁19の開閉を制御し、その後、水位センサ32が満水を検出するまで供給電磁弁13を開き、貯留槽10から処理槽2へ被処理水を供給する。他方、イオンセンサ22により検出された硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が低い場合には、マイクロコンピュータ33は、水位センサ32から検出される被処理水の水位が低い位置になるまで排出電磁弁19を開放し、その後、水位センサ32が満水を検出するまで供給電磁弁13を開き、貯留槽10から処理槽2へ被処理水を供給する。
【0081】
これにより、処理槽2内の被処理水は、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度が脱窒処理における電流効率が高くなる範囲、例えば、300mg/l以上800mg/l以下の範囲となるように調整される。尚、特に脱窒処理における電流効率が高くなる、即ち電流効率が70%以上となる400mg/l以上630mg/l以下の範囲に被処理水を調整してもよい。本実施例では、上記範囲において最も電流効率の良い500mg/l程度に被処理水を調整するものとする。
【0082】
上述の如く処理槽2内において希釈処理された希釈被処理水は、マイクロコンピュータ33により電源7がONとされることにより、カソード6及びアノード5に通電され、処理槽2内に搬送された希釈被処理水は、電解処理される。カソード6側では、希釈被処理水中に含まれる硝酸イオンは、還元反応により亜硝酸イオンに変換される(前記反応式A)。また、硝酸イオンの還元反応により生成された亜硝酸イオンは、更に、還元反応により、アンモニアに変換される(前記反応式B)。
【0083】
一方、アノード5側では、上述の如く希釈被処理水中に少なくともハロゲン化物イオンとして塩化物イオンが存在することから、アノード5の表面から次亜塩素酸やオゾン又は活性酸素が発生し、希釈被処理水中におけるアンモニアの脱窒作用を生じ、窒素ガスを生成する(前記反応式C)。
【0084】
これにより、かかる実施例においても、被処理水は、希釈処理手段により、脱窒処理に最適な窒素化合物濃度に希釈した後、脱窒処理されるため、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0085】
また、かかる実施例では、被処理水の窒素化合物の濃度に基づいて、処理槽2内への被処理水の供給及び排出をマイクロコンピュータ33により制御することで、被処理水を脱窒反応に最適な窒素化合物濃度に希釈処理することができ、簡易なシステムにて本発明を実現することができるようになる。
【0086】
更にまた、かかる実施例では、被処理水を希釈する槽と、窒素処理を行う槽とを同一の処理槽2にて行うことにより、より一層システムの簡素化を図ることができるようになる。
【0087】
また、上記各実施例によれば、従来の如く被処理水中にメタノールなどの格別な添加剤を用いることなく、被処理水中に含有される硝酸態窒素などの窒素化合物を効率的に除去することができるため、メンテナンス作業性を向上させることができる。
【0088】
更に、従来のように生物的処理により硝酸態窒素などの窒素化合物の処理を行わないため、細菌等の温度管理を不要とすることができると共に、窒素処理システム自体を小型化することができ、コストの削減を図ることができるようになる。
【0089】
【発明の効果】
以上詳述した如く請求項1の発明によれば、電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する方法において、処理水を希釈し、当該被処理水の窒素化合物濃度を低下させた後、当該被処理水を電気化学的手法により処理するので、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。また、本発明では被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈するので、電気化学的手法による被処理水中の窒素化合物の処理に最適な窒素化合物濃度で窒素処理を行うことができるようになり、より一層窒素化合物の処理効率を向上させることができるようになる。
【0090】
特に、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度に基づいて希釈率を調整するので、常に、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に被処理水を希釈することができるようになる。
【0091】
請求項2の発明によれば、上記発明において、電気化学的手法により処理された後の被処理水を希釈液として用いるので、新たな上水等を用いることなく被処理水の希釈を行うことができるようになり、排水量の増加によるランニングコストの高騰を抑制することができると共に、環境に適した窒素処理を実現することができるようになる。
【0092】
請求項3の発明によれば、被処理水中の窒素化合物を処理する窒素処理システムにおいて、被処理水に少なくとも一部が浸漬され、電気化学的手法により当該被処理水を処理するための少なくとも一対の電極と、被処理水を希釈し、当該被処理水の窒素化合物濃度を低下させる希釈処理手段を備えるので、被処理水を希釈処理手段にて希釈処理した後、前記各電極を用いて電気化学的手法により効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0093】
また、本発明では、希釈処理手段は、被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈するので、前記各電極を用いた電気化学的手法による被処理水中の窒素化合物の処理に最適な窒素化合物濃度で窒素処理を行うことができるようになり、より一層窒素化合物の処理効率を向上させることができるようになる。
【0094】
特に、希釈処理手段は、被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段を備え、濃度検出手段の検出する濃度に基づいて当該被処理水の希釈率を調整するので、常に、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に被処理水を希釈することができるようになる。
【0095】
更に、請求項4の発明によれば、濃度検出手段は、イオンセンサであるので、容易に硝酸態窒素としての硝酸イオン及び亜硝酸態窒素としての亜硝酸態イオンの濃度を検出することができ、容易に、且つ、低コストにて本発明を実現することができるようになる。
【0096】
請求項5の発明によれば、請求項3又は請求項4の発明に加えて、電気化学的手法により処理された後の被処理水を希釈液として用いるので、新たな上水等を用いることなく被処理水の希釈を行うことができるようになり、排水量の増加によるランニングコストの高騰を抑制することができると共に、環境に適した窒素処理を実現することができるようになる。
【0097】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明において、希釈処理手段は、被処理水を貯留する希釈槽と、電極が浸漬される被処理水を貯溜する処理槽と、希釈槽へ被処理水を供給する供給手段と、希釈槽内の被処理水を処理槽に搬送する搬送手段と、処理槽内の被処理水を希釈液として希釈槽へ返送する返送手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、希釈槽内には、該希釈槽内の水位を検出する水位検出手段を備え、制御手段は、当該水位検出手段の出力に基づいて供給手段及び返送手段を制御するので、常に、窒素処理に適した窒素化合物濃度に被処理水を希釈することができるようになる。
【0098】
請求項7の発明によれば、請求項3、請求項4及び請求項5の発明において、希釈処理手段は、被処理水を貯留する希釈槽と、電極が浸漬される被処理水を貯留する処理槽と、希釈槽へ被処理水を供給する供給手段と、希釈槽内の被処理水を処理槽に搬送する搬送手段と、処理槽内の被処理水を希釈液として希釈槽へ返送する返送手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、濃度検出手段は、希釈槽内又は希釈槽の前段に設けられ、制御手段は、供給手段により被処理水を希釈槽に供給すると共に、濃度検出手段の出力に基づき、処理槽内にて電気化学的手法により処理された被処理水を返送手段により希釈槽に返送し、排出手段により処理槽内の被処理水を排出した後、希釈槽内にて希釈された被処理水を搬送手段により処理槽に搬送するので、希釈槽内に貯留された被処理水を濃度検出手段の出力に基づき、供給手段及び返送手段により、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0099】
これにより、簡易なシステムにて、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0100】
また、希釈槽内にて窒素化合物濃度を調整された被処理水は、搬送手段により処理槽に搬送され、希釈槽とは別槽にて電解による脱窒処理を行うことができる。そのため、希釈処理及び脱窒処理を別段で行うため、処理効率の向上を図ることができる。
【0101】
請求項8の発明によれば、請求項6又は請求項7の発明に加えて、希釈槽内への被処理水及び希釈液の供給量の積算値を検出する供給量検出手段を備え、制御手段は、当該供給量検出手段の出力に基づいて供給手段及び返送手段を制御するので、簡易なシステムにて、希釈槽内の被処理水を窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0102】
請求項9の発明によれば、請求項3、請求項4又は請求項5の発明に加えて、希釈処理手段は、被処理水を貯留し、該処理水に電極が浸漬される処理槽と、該処理槽へ被処理水を供給する供給手段と、処理槽内の被処理水を排出する排出手段と、処理槽内の水位を検出する水位検出手段と、供給手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、濃度検出手段は、処理槽又は処理槽の前段に設けられ、制御手段は、濃度検出手段及び水位検出手段の出力に基づき、排出手段により処理槽内にて電気化学的手法により処理された被処理水の一部を排出した後、供給手段により被処理水を処理槽に供給するので、処理槽内に貯留された被処理水を濃度検出手段及び水位検出手段の出力に基づき、供給手段及び排出手段により、窒素処理に最適な窒素化合物濃度に調整することができるようになる。
【0103】
これにより、簡易なシステムにて、効率的に被処理水中の窒素化合物を処理することができるようになる。
【0104】
また、被処理水を希釈する槽と窒素処理を行う槽とを同一槽にて行うことにより、システムの簡素化を図ることができるようになる。
【0105】
請求項10の発明によれば、上記各窒素処理システムの発明に加えて、カソードを構成する電極は、周期表の第Ib族又は第IIb族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものにより構成し、アノードを構成する電極は、不溶性材料又はカーボンにより構成するので、被処理水中の硝酸態窒素の亜硝酸態窒素及びアンモニアへの還元反応を促進することができ、還元反応に要する時間を短縮することができるようになる。また、本発明の如く被処理水中の窒素化合物濃度が低い場合であっても効率的に窒素化合物の除去を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の窒素処理システムの概要を示す説明図である。
【図2】 本発明の窒素処理システムのマイクロコンピュータのブロック図である。
【図3】 窒素処理装置の概要を示す説明図である。
【図4】 被処理水の硝酸態窒素濃度に対する脱窒反応の電流効率を示す図である。
【図5】 他の実施例の窒素処理システムの概要を示す説明図である。
【図6】 他の実施例の窒素処理システムのマイクロコンピュータのブロック図である。
【符号の説明】
S、T 窒素処理システム
1 窒素処理装置
2 処理槽
4 排水処理室
5 アノード
6 カソード
10 貯留槽
11 希釈槽
12、14、16、23 配管
13、15、18、19 電磁弁
17、20、21 ポンプ
22 イオンセンサ
24、25 供給量検出センサ
30、33 マイクロコンピュータ
32 水位センサ
Claims (10)
- 電気化学的手法により被処理水中の窒素化合物を処理する方法であって、
前記被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度に基づいて希釈率を調整することにより、当該被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈した後、当該被処理水を電気化学的手法により処理することを特徴とする窒素処理方法。 - 前記電気化学的手法により処理された後の前記被処理水を希釈液として用いることを特徴とする請求項1の窒素処理方法。
- 被処理水中の窒素化合物を処理する窒素処理システムであって、
前記被処理水に少なくとも一部が浸漬され、電気化学的手法により当該被処理水を処理するための少なくとも一対の電極と、
前記被処理水を希釈し、当該被処理水の窒素化合物濃度を低下させる希釈処理手段を備え、
該希釈処理手段は、前記被処理水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度を検出する濃度検出手段を有し、該濃度検出手段の検出する濃度に基づいて前記被処理水の希釈率を調整することにより、当該被処理水の窒素化合物濃度を、300mg/l以上800mg/l以下の範囲に希釈することを特徴とする窒素処理システム。 - 前記濃度検出手段は、イオンセンサであることを特徴とする請求項3の窒素処理システム。
- 前記電気化学的手法により処理された後の前記被処理水を希釈液として用いることを特徴とする請求項3又は請求項4の窒素処理システム。
- 前記希釈処理手段は、
前記被処理水を貯留する希釈槽と、
前記電極が浸漬される被処理水を貯溜する処理槽と、
前記希釈槽へ前記被処理水を供給する供給手段と、
前記希釈槽内の被処理水を前記処理槽に搬送する搬送手段と、
前記処理槽内の被処理水を希釈液として前記希釈槽へ返送する返送手段と、
前記処理槽内の前記被処理水を排出する排出手段と、
これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、
前記希釈槽内には、該希釈槽内の水位を検出する水位検出手段を備え、
前記制御手段は、当該水位検出手段の出力に基づいて前記供給手段及び前記返送手段を制御することを特徴とする請求項5の窒素処理システム。 - 前記希釈処理手段は、
前記被処理水を貯留する希釈槽と、
前記電極が浸漬される被処理水を貯溜する処理槽と、
前記希釈槽へ前記被処理水を供給する供給手段と、
前記希釈槽内の被処理水を前記処理槽に搬送する搬送手段と、
前記処理槽内の被処理水を希釈液として前記希釈槽へ返送する返送手段と、
前記処理槽内の前記被処理水を排出する排出手段と、
これら供給手段、搬送手段、返送手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、
前記濃度検出手段は、前記希釈槽内又は前記希釈槽の前段に設けられ、
前記制御手段は、前記供給手段により前記被処理水を前記希釈槽に供給すると共に、前記濃度検出手段の出力に基づき、前記処理槽内にて電気化学的手法により処理された前記被処理水を前記返送手段により前記希釈槽に返送し、前記排出手段により前記処理槽内の前記被処理水を排出した後、前記希釈槽内にて希釈された前記被処理水を前記搬送手段により前記処理槽に搬送することを特徴とする請求項3、請求項4又は請求項5の窒素処理システム。 - 前記希釈槽内への前記被処理水及び前記希釈液の供給量の積算値を検出する供給量検出手段を備え、
前記制御手段は、当該供給量検出手段の出力に基づいて前記供給手段及び前記返送手段を制御することを特徴とする請求項6又は請求項7の窒素処理システム。 - 前記希釈処理手段は、
前記被処理水を貯留し、該処理水に前記電極が浸漬される処理槽と、
該処理槽へ前記被処理水を供給する供給手段と、
前記処理槽内の前記被処理水を排出する排出手段と、
前記処理槽内の水位を検出する水位検出手段と、
前記供給手段及び排出手段を制御する制御手段とを備え、
前記濃度検出手段は、前記処理槽又は前記処理槽の前段に設けられ、
前記制御手段は、前記濃度検出手段及び水位検出手段の出力に基づき、前記排出手段により前記処理槽内にて電気化学的手法により処理された前記被処理水の一部を排出した後、前記供給手段により前記被処理水を前記処理槽に供給することを特徴とする請求項3、請求項4又は請求項5の窒素処理システム。 - カソードを構成する前記電極は、周期表の第 I b族又は第 II b族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものにより構成し、アノードを構成する前記電極は、不溶性材料又はカーボンにより構成することを特徴とする請求項3、請求項4、請求項5、請求項6,請求項7、請求項8又は請求項9の窒素処理システム。
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