一般に電解法は、被処理水中の窒素成分の濃度が高いほど脱窒効率がよく、窒素成分濃度が数百mg/リットル(以下、「L」と記す。)以下のように被処理水の窒素成分濃度が低いと、カソードの硝酸イオン還元効率が低下するため、脱窒効率が低いという特性を有する。そのため、硝酸性窒素成分の濃度が低い被処理水を処理してさらに濃度を低下させるためには、長時間にわたって処理を行う必要があり、ランニングコストがかかるという問題がある。
本発明は、このような従来技術における問題点に着目してなされたものであって、効率よく被処理水から窒素を除去することができる水処理装置を提供することを目的とする。
本発明に係る水処理装置は、電解槽に貯留された窒素成分を含む被処理水を電気分解して窒素ガスを発生させることによって被処理水から窒素成分を除去する電解窒素除去装置と、処理すべき原水を被処理水として逆浸透膜(RO膜)を備えたROユニットを用いて透過水と濃縮水とに分離するとともに、濃縮水を前記電解窒素除去装置の被処理水として供給するRO装置とを備えることを特徴とする。
また上記水処理装置において、前記RO装置は、処理すべき原水を被処理水としてRO膜を用いて透過水と濃縮水とに分離するとともに、濃縮水を前記電解窒素除去装置の被処理水として供給する第1ROユニットと、第1ROユニットの透過水を被処理水としてRO膜を用いて透過水と濃縮水とに分離するとともに、濃縮水を前記第1ROユニットの被処理水に混合する第2ROユニットとを備えるようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記電解窒素除去装置における電気分解後の電解処理水を被処理水としてRO膜を備えたROユニットを用いて透過水と濃縮水とに分離するとともに、濃縮水を前記RO装置に与えられる被処理水に混合する第2RO装置を設けるようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記電解窒素除去装置における電気分解後の電解処理水と前記RO装置で得られた透過水とを混合して外部に放流するようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記第2RO装置で得られた透過水と前記RO装置で得られた透過水とを混合して外部に放流するようにしてもよい。
また上記水処理装置において、処理すべき原水に浮遊物除去(SS:suspended solids除去)を施して前記RO装置に供給するSS除去装置を備えるようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記SS除去装置として精密濾過膜(MF膜)を備えたMF装置を用いるようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記MF装置が備えるMF膜をSS除去時とは逆方向に塩素イオンを含む洗浄水を流して洗浄したときの洗浄後の逆洗水を、処理すべき原水に混合するようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記RO装置の前段に、当該RO装置に与えられる被処理水のpHを6〜8に調整するpH調整装置を設けるようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記電解窒素除去装置は、被処理水の導電率を検出し、検出した導電率に基づいて電気分解に用いる電流値を設定するようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記電解窒素除去装置は、被処理水の導電率を検出し、検出した導電率に基づいて電気分解を行う時間を設定するようにしてもよい。
また上記水処理装置において、前記電解窒素除去装置は、被処理水の導電率と前記RO装置で得られた透過水の導電率とを検出し、検出した2つの導電率に基づいて、外部に放流する放流水の窒素成分濃度が所定の範囲内となるように、電気分解を行う時間または電気分解に用いる電流値を設定するようにしてもよい。
本発明の水処理装置によれば、アンモニア性窒素、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素等の窒素成分が含まれる原水が与えられると、RO装置によって透過水と濃縮水とに分離され、窒素成分濃度が高い濃縮水が電解窒素除去装置に被処理水として供給される。電解窒素除去装置では、窒素成分濃度が高い濃縮水を被処理水として電気分解が行われ、窒素成分が被処理水から除去される。このように、窒素成分濃度が高い濃縮水を被処理水として処理するので、原水を分離せずにそのまま処理する場合に比べて、短時間で効率よく窒素成分を除去することができ、脱窒効率のよい処理が可能となる。
また本発明の水処理装置によれば、RO装置では、窒素成分が含まれる原水が与えられると、第1ROユニットによって透過水と濃縮水とに分離され、濃縮水が電解窒素除去装置に被処理水として供給され、透過水は第2ROユニットによってさらに透過水と濃縮水とに分離され、濃縮水が第1ROユニットの被処理水に混合される。このように、第1ROユニットの透過水を第2ROユニットを用いてさらに濃縮水と透過水とに分離し、濃縮した濃縮水を第1ROユニットの被処理水として供給するので、1つのROユニットを用いる場合に比べて透過水に残存する窒素成分を少なくすることができ、被処理水からの窒素成分の除去量を増加させることができる。また、透過水に残存する窒素成分が少なくすることができるので、水質規制に適合した窒素濃度の透過水を得ることができ、透過水を外部に放流することが可能になる。
また本発明の水処理装置によれば、電解窒素除去装置における電気分解後の電解処理水は、第2RO装置によって透過水と濃縮水とに分離され、濃縮水が第1RO装置の被処理水として供給される。電解処理水中に残存している塩素イオンは、主として濃縮水に含まれることになるので、濃縮水を第1RO装置の被処理水として戻すことによって、電解窒素除去に必要な塩素イオンを再利用することができる。また、電解処理水の窒素成分濃度が外部に放流できる濃度に達する前に電気分解を終了しても、第2RO装置によって電解処理水を濃縮水と透過水とに分離して濃縮水を再びRO装置に供給して処理するので、透過水の窒素成分濃度を水質規制に適合した濃度に調節することができ、透過水を外部に放流することができる。また、電解処理水の窒素成分濃度が水質規制に適合した濃度に低下するまで電気分解を行う必要がなくなるので、脱窒効率の低い低濃度での電気分解を行わなくてもよく、電解窒素除去装置における消費電力を少なくすることができる。
また本発明の水処理装置によれば、電解窒素除去装置における電気分解後の電解処理水とRO装置で得られた透過水とを混合して外部に放流するので、外部に放流する放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した濃度に調整することができる。また、電解処理水の窒素成分濃度が水質規制に適合した濃度に低下するまで電気分解を行う必要がなくなるので、脱窒効率の低い低濃度での電気分解を行う必要がなく、比較的短時間の電解処理を行うだけでよくなる。これによって、電解窒素除去装置における消費電力を少なくすることができる。
また本発明の水処理装置によれば、電解窒素除去装置における電気分解後の電解処理水を第2RO装置で処理して得られた透過水とRO装置で得られた透過水とを混合して外部に放流するので、外部に放流する放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した濃度に容易に調整することができる。また、電解処理水とRO装置で得られた透過水とを混合して外部に放流する場合と比較すると、電解処理水の濃度が高くてもよいことになるので、電解処理時間を短時間にすることが可能となり、電解窒素除去装置における消費電力を少なくすることができる。
また本発明の水処理装置によれば、処理すべき原水はSS除去装置によって浮遊物が除去されてからRO装置に供給されるので、RO装置での透過水と濃縮水との分離処理を効率よく行うことができる。
また本発明の水処理装置によれば、処理すべき原水はMF装置によって浮遊物が除去されてからRO装置に供給されるので、微細な浮遊物が除去された被処理水をRO装置に供給することができ、RO装置での透過水と濃縮水との分離処理を効率よく行うことができる。
また本発明の水処理装置によれば、MF膜を洗浄した後の塩素イオンを含む逆洗水、たとえば次亜塩素酸が処理すべき原水に混合される。次亜塩素酸はRO装置によって濃縮水側に分離されるので、塩素イオンを電解窒素除去装置における電気分解に再利用することができる。これによって、電解窒素除去装置において、塩素イオンを投入する必要がなくなり、または塩素イオンの投入量が少なくなり、ランニングコストを少なくすることができる。
また本発明の水処理装置によれば、pHが6〜8に調整された被処理水がRO装置に与えられるので、RO装置が備えるRO膜の透過率を一定に保つことができ、透過水と濃縮水との分離を安定して行うことができる。
また本発明の水処理装置によれば、窒素成分濃度と導電率との間に一定の相関関係があることに着目し、電解窒素除去装置では、被処理水の導電率が検出され、検出された導電率に基づいて電気分解に用いる電流値が設定される。後述するように、本件発明者によって、被処理水の窒素成分濃度が高くなると、導電率も高くなることが確認されている。したがって、たとえば被処理水の導電率が高い場合は窒素成分濃度が高いと推定でき、窒素成分濃度が高い被処理水を処理するためには大量の電流が必要となるので、大きな電流値が設定される。逆に、被処理水の導電率が低い場合は窒素成分濃度が低いと推定でき、窒素成分濃度が低い被処理水を処理するためにはそれほど大量の電流を必要としないので、小さな電流値が設定される。このように、最適な電解条件で被処理水の電気分解を行うことができ、窒素除去を効率よく行うことが可能となる。
また本発明の水処理装置によれば、窒素成分濃度と導電率との間に一定の相関関係があることに着目し、電解窒素除去装置では、被処理水の導電率が検出され、検出された導電率に基づいて電気分解を行う時間が設定される。後述するように、本件発明者によって、被処理水の窒素成分濃度が高くなると、導電率も高くなることが確認されている。したがって、たとえば被処理水の導電率が高い場合は窒素成分濃度が高いと推定でき、窒素成分濃度が高い被処理水を処理するためには大量の電流が必要となるので、電気分解時間として長い時間が設定される。逆に、被処理水の導電率が低い場合は窒素成分濃度が低いと推定でき、窒素成分濃度が低い被処理水を処理するためにはそれほど大量の電流を必要としないので、電気分解時間として短い時間が設定される。このように、最適な電解条件で被処理水の電気分解を行うことができ、窒素除去を効率よく行うことが可能となる。
また本発明の水処理装置によれば、窒素成分濃度と導電率との間に一定の相関関係があることに着目し、電解窒素除去装置では、被処理水の導電率とRO装置で得られた透過水の導電率とがそれぞれ検出され、検出された2つの導電率に基づいて電気分解を行う時間または電気分解に用いる電流値が設定される。電気分解時間または電流値を設定する際に、被処理水の導電率だけでなく、RO装置で得られた透過水の導電率も使用するのは、電解窒素除去装置からの電解処理水または第2RO装置からの透過水とRO装置からの透過水とを混合して外部に放流するときに、外部に放流する放流水の窒素成分濃度が水質規制で定められた所定の範囲内となるようにするためである。
電解窒素除去装置からの電解処理水とRO装置からの透過水とを混合して外部に放流する場合は、まず、検出した被処理水の導電率に基づいて被処理水の窒素成分濃度を推定するとともに、検出した透過水の導電率に基づいて透過水の窒素成分濃度を推定する。続いて、推定した窒素成分濃度に基づいて、電解処理水と透過水との混合水の窒素成分濃度が所定の範囲内となるような電解処理水の窒素成分濃度を推定する。それから、推定した電解処理水の窒素成分濃度と被処理水の窒素成分濃度とに基づいて、電気分解時間または電流値を設定する。たとえば、電気分解前の窒素成分濃度と電気分解後の窒素成分濃度との差が大きい場合は、長い電気分解時間または大きな電流値を設定し、差が小さい場合は、短い電気分解時間または小さな電流値を設定する。このように、電解処理水とRO装置からの透過水とを混合して外部に放流する際に、放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した値に効率よく調整することができる。
また、電解処理水をさらに第2RO装置によって濃縮水と透過水とに分離し、第2RO装置からの透過水とRO装置からの透過水とを混合して外部に放流する場合も、上記と同様に、被処理水の導電率とRO装置からの透過水の導電率とに基づいて、電気分解を行う時間または電気分解に用いる電流値が設定することができる。この場合も、放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した値に効率よく調整することができる。
図1は、本発明の実施形態である水処理装置1の概略的構成を構成図である。水処理装置1は、電解槽に貯留された窒素成分を含む被処理水を電気分解して窒素ガスを発生させることによって被処理水から窒素成分を除去する電解窒素除去装置2と、被処理水を逆浸透膜(RO膜)を用いて透過水と濃縮水とに分離するとともに、濃縮水を電解窒素除去装置2の被処理水として供給するRO装置3と、処理すべき原水を貯留する原水槽4と、原水槽4に貯留された被処理水に対して浮遊物除去(SS除去)を施してRO装置3に供給するSS除去装置5と、RO装置3に供給される被処理水のpHを調整するための薬液槽6と、RO装置3で得られた透過水を貯留して電解窒素除去装置2における電気分解後の電解処理水に混合させる希釈水槽7とを備えて構成される。
電解窒素除去装置2は、アノードと、カソードと、アノードおよびカソードを収容するとともに被処理水を貯留する電解槽と、アノードとカソード間に直流電流を供給する直流電源と、直流電源を制御する制御装置と、電解槽に導入される被処理水の導電率を検出する検出装置とを備えて構成される。また希釈槽7には、希釈水槽7に貯留されているRO装置3で得られた透過水の導電率を検出する検出装置が設けられている。2つの検出装置からの検出結果は、制御装置に送信される。制御装置は、後述するように2つの検出装置からの検出結果に基づいて直流電源を制御し、電気分解の時間や電流値を設定する。
RO装置3は、被処理水を貯留する処理水槽31と、処理水槽31の被処理水をRO膜を使用して濃縮水と透過水とに分離する第1ROユニット32と、第1ROユニット32で得られた濃縮水を貯留する濃縮水槽33と、第1ROユニット32で得られた透過水を貯留する透過水槽34と、透過水槽34の透過水をRO膜を使用して濃縮水と透過水とに分離する第2ROユニット35とを備えて構成される。
処理すべき原水は、窒素成分を含む溶液であり、原水槽4に供給されて貯留される。窒素成分とは、アンモニア性窒素、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素などである。原水槽4に貯留されている原水は、図示しないポンプによって所定量SS除去装置5に送られ、SS除去装置5によって浮遊物除去(SS除去)が施されて有機物などが除去され、処理水槽31に送られて被処理水として貯留される。また、処理水槽31には薬液槽6から酸性溶液またはアルカリ性溶液、たとえば苛性ソーダ溶液や硫酸溶液が図示しない定量ポンプで供給され、これによって処理水槽31内の被処理水のpHが6〜8に調整される。
SS除去装置5としては、たとえばMF膜を使用したMF装置を使用することができる。MF装置を使用する場合、所定の期間ごとにたとえば1週間に1回程度、濃度が数百mg/Lの次亜塩素酸溶液などをSS除去時とは逆方向に流してMF膜を洗浄している。そこで、水処理装置1では、SS除去装置5として使用するMF装置の洗浄時の逆洗水を原水槽4に戻すように構成している。これによって、逆洗水に含まれている塩素イオンを電解窒素除去装置2の電気分解に再利用することが可能となる。なお、逆洗水にはMF膜で除去されたSS成分が含まれているので、このSS成分を除去するために逆洗水を原水槽4に戻す配管中にフィルタ8を設けている。
処理水槽31の被処理水は、図示しないポンプによって第1ROユニット32に送られる。第1ROユニット32では、被処理水が濃縮水と透過水とに分離される。第1ROユニット32で得られた濃縮水は、処理水槽31に戻されて第1ROユニット32では循環運転が行われる。第1ROユニット32では、濃縮水側の流速をF0、透過水側の流速をF1とすると、F1/F0が20%以下で循環運転が行われ、システム回収率が66.7%以上になるまで、すなわち第1ROユニット32で得られた透過水の水量が、第1ROユニット32に与えられた被処理水の水量の66.7%以上になるまで運転が行われる。これによって、処理前の被処理水に比べてイオン濃度が約3倍に濃縮された濃縮水が得られる。この濃縮水は、処理水槽31から図示しないポンプによって濃縮水槽33に送られる。
また、第1ROユニット32で得られた透過水は、透過水槽34に送られて貯留される。透過水槽34の透過水は、図示しないポンプによって第2ROユニット35に被処理水として送られる。第2ROユニット35では、被処理水が濃縮水と透過水とに分離される。第2ROユニット35で得られた濃縮水は、透過水槽34に戻されて第2ROユニット35では循環運転が行われる。第2ROユニット35では、濃縮水側の流速をF3、透過水側の流速をF4とすると、F4/F3が20%以下で循環運転が行われ、システム回収率が66.7%以上になるまで、すなわち第2ROユニット35で得られた透過水の水量が、第2ROユニット35に与えられた被処理水の水量の66.7%以上になるまで運転が行われる。これによって、処理前の被処理水(第1ROユニット32で得られた透過水)に比べてイオン濃度が約3倍に濃縮された濃縮水が得られる。この濃縮水は、透過水槽34から図示しないポンプによって処理水槽31に送られる。また、第2ROユニット35で得られた透過水は、希釈水槽7に送られて貯留される。
濃縮水槽33の濃縮水は、被処理水として電解窒素除去装置2に図示しないポンプによって供給される。電解窒素除去装置2では、被処理水は電解槽に貯留される。電解槽には、アノードおよびカソードが備えられている。アノードおよびカソードには直流電源が接続されている。直流電源は、制御装置によってアノードおよびカソードに供給する電流値や電流供給時間が制御される。アノードとカソードとの間には直流電源から直流電流が供給されて通電され、これによって被処理水が電気分解される。この電気分解によって、被処理水中の窒素成分は窒素ガスとして放出され、被処理水からの窒素成分の除去が行われる。
電気分解後の電解処理水は、電解槽から排出される。排出が完了すると、再び被処理水が供給されて電気分解が行われる。このように電解窒素除去装置2では、被処理水の供給、電気分解、排水が繰り返される。そして、水処理装置1では、電解窒素除去装置2から排出される電解処理水と希釈水槽7に貯留されている第2ROユニット35で得られた透過水とが混合され、混合水が外部に放流される。
上述したように、水処理装置1では、アンモニア性窒素、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素等の窒素成分が含まれる原水が与えられると、RO装置3によって透過水と濃縮水とに分離され、窒素成分濃度が高い濃縮水が電解窒素除去装置2に被処理水として送られる。電解窒素除去装置2では、窒素成分濃度が高い濃縮水を被処理水として電気分解が行われ、窒素成分が被処理水から除去される。このように、窒素成分濃度が高い濃縮水を被処理水として処理するので、原水を分離せずにそのまま処理する場合に比べて、短時間で効率よく窒素成分を除去することができ、脱窒効率のよい処理が可能となる。
また水処理装置1のRO装置3では、窒素成分が含まれる原水が与えられると、第1ROユニット32によって透過水と濃縮水とに分離され、濃縮水が電解窒素除去装置2に被処理水として送られ、透過水は第2ROユニット35によってさらに透過水と濃縮水とに分離され、濃縮水が第1ROユニット32の被処理水に混合される。このように、第1ROユニット32の透過水を第2ROユニット35を用いてさらに濃縮した濃縮水を第1ROユニット32の被処理水として戻すようにしたので、1つのROユニット32を用いる場合に比べて透過水に残存する窒素成分を少なくすることができ、被処理水からの窒素成分の除去量を増加させることができる。また、透過水に残存する窒素成分を少なくすることができるので、水質規制に適合した窒素濃度の透過水を容易に得ることができ、透過水を外部に放流することが可能になる。
図2は、水処理装置1による処理結果を示す遷移図である。図2には、窒素濃度(T−N)が521mg/L(NH4−N:289mg/L,NO3−N:177mg/L,NO2−N:55mg/L)の原水を処理したときの処理結果が示されている。まず、上記の原水に対して、SS除去装置(MF装置)5で10μmのカートリッジフィルターと0.45μmのMF膜とを用いてSS除去を施して、500Lの被処理水を生成した。なお、被処理水のpH調整は行わなかった。この被処理水の窒素濃度は、530mg/L(NH4−N:294mg/L,NO3−N:180mg/L,NO2−N:55mg/L)であった。なお、原水の窒素濃度との間に差があるのは、測定誤差と考えられる。
500Lの被処理水を、第1ROユニット32でシステム回収率約70%で循環運転すると、150Lの濃縮水と350Lの透過水とが得られた。濃縮水の窒素濃度は、1420mg/L(NH4−N:749mg/L,NO3−N:512mg/L,NO2−N:160mg/L)であった。この濃縮水を、電解窒素除去装置2で1000A、4Vで45分間電気分解した。電気分解後の電解処理水の窒素濃度は、175mg/L(NH4−N:28mg/L,NO3−N:147mg/L,NO2−N:0mg/L)であった。
一方、第1ROユニット32で得られた透過水の窒素濃度は、91mg/L(NH4−N:54mg/L,NO3−N:27mg/L,NO2−N:9mg/L)であった。350Lの透過水を、第2ROユニット35でシステム回収率約70%で循環運転すると、117Lの濃縮水と233Lの透過水とが得られた。濃縮水の窒素濃度は、198mg/L(NH4−N:112mg/L,NO3−N:65mg/L,NO2−N:21mg/L)であた。また、透過水の窒素濃度は、14mg/L(NH4−N:12mg/L,NO3−N:1mg/L,NO2−N:1mg/L)であった。
そして、電解窒素除去装置2の電解処理水と希釈水槽7の透過水とを混合して放流すると仮定すると、放流水の窒素濃度は、(175×150+14×233)/(150+233)=(26250+3262)/383=77(mg/L)となった。
ここで、比較例として、RO装置3を使用せずに、窒素濃度が521mg/L(NH4−N:289mg/L,NO3−N:177mg/L,NO2−N:55mg/L)の原水を処理した場合を説明する。RO装置3を使用した場合は、上記のようにシステム回収率を約70%としたときは150Lの濃縮水を電解窒素除去装置2で処理すればよいが、RO装置3を使用しない場合は、500Lの原水をすべて電解窒素除去装置2で処理しなければならない。電解窒素除去装置2において1バッチで処理できる水量を150Lとすれば、500Lの原水を処理するためには、3バッチ以上必要となる。また、原水を電解窒素除去装置2で処理して上記の水処理装置1による放流水の窒素濃度77mg/Lと同程度以下の窒素濃度の電解処理水を得るには、1000A、4Vで30分間電気分解を行う必要があった。このときの電解処理水、すなわち放流水の窒素濃度は、52mg/L(NH4−N:0mg/L,NO3−N:52mg/L,NO2−N:0mg/L)であった。
そして上述したように、500Lの原水を電解窒素除去装置2だけで処理するためには3バッチ以上必要となるので、電解窒素除去装置2だけで処理する場合は、処理時間が30分×3=90分以上となり、水処理装置1で処理する場合の処理時間45分の2倍以上となり、また電気分解に必要な電力も2倍以上となる。したがって、RO装置3と電解窒素除去装置2とを組み合わせた水処理装置1は、電解窒素除去装置2だけで原水を処理する場合に比べて、効率よく処理することが可能である。
図3は、他の比較例を説明するための処理結果を示す遷移図である。この比較例は、水処理装置1において、第1ROユニット32および第2ROユニット35を運転する際に、(濃縮水側の流速)/(透過水側の流速)を20%より大きくして運転したものである。図3には、窒素濃度が574mg/L(NH4−N:319mg/L,NO3−N:178mg/L,NO2−N:77mg/L)の原水を処理したときの処理結果が示されている。まず、上記の原水に対して、SS除去装置(MF装置)5で10μmのカートリッジフィルターを用いてSS除去を施して、500Lの被処理水を生成した。なお、被処理水のpH調整として、pH5の酸性溶液を加えた。この被処理水の窒素濃度は、582mg/L(NH4−N:319mg/L,NO3−N:186mg/L,NO2−N:77mg/L)であった。なお、原水の窒素濃度との間に差があるのは、測定誤差と考えられる。
500Lの被処理水を、第1ROユニット32でシステム回収率約70%で循環運転すると、135Lの濃縮水と330Lの透過水とが得られた。濃縮水の窒素濃度は、1277mg/L(NH4−N:667mg/L,NO3−N:455mg/L,NO2−N:155mg/L)であった。この濃縮水を、電解窒素除去装置2で1000A、4Vで45分間電気分解した。電気分解後の電解処理水の窒素濃度は、156mg/L(NH4−N:25mg/L,NO3−N:131mg/L,NO2−N:0mg/L)であった。
一方、第1ROユニット32で得られた透過水の窒素濃度は、164mg/L(NH4−N:42mg/L,NO3−N:78mg/L,NO2−N:44mg/L)であった。330Lの透過水を、第2ROユニット35でシステム回収率約70%で循環運転すると、90Lの濃縮水と240Lの透過水とが得られた。濃縮水の窒素濃度は、562mg/L(NH4−N:296mg/L,NO3−N:170mg/L,NO2−N:96mg/L)であった。また、透過水の窒素濃度は、70mg/L(NH4−N:33mg/L,NO3−N:19mg/L,NO2−N:18mg/L)であった。
そして、電解窒素除去装置2の電解処理水と希釈水槽7の透過水とを混合して放流すると仮定すると、放流水の窒素濃度は、(156×135+70×240)/(135+240)=(21060+16800)/375=37860/375=101(mg/L)となった。
このように、第1ROユニット32および第2ROユニット35を運転する際に、(濃縮水側の流速)/(透過水側の流速)を20%より大きくして運転した場合は、20%以下で運転した場合に比べて、濃縮水の濃縮率が低く、電解窒素除去装置2に送られる濃縮水の窒素濃度が低くなるので、電解窒素除去装置2における処理効率が低下してしまう。したがって、上述したように、第1ROユニット32および第2ROユニット35を運転する際に、(濃縮水側の流速)/(透過水側の流速)を20%以下で運転するのが好ましい。
また水処理装置1では、電解窒素除去装置2における電気分解後の電解処理水とRO装置3で得られた透過水とを混合して外部に放流するので、外部に放流する放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した濃度に調整することができる。また、電解処理水の窒素成分濃度が水質規制に適合した濃度に低下するまで電気分解を行う必要がなくなるので、脱窒効率の低い低濃度での電気分解を行う必要がなく、比較的短時間の電解処理を行うだけでよくなる。これによって、電解窒素除去装置における消費電力を少なくすることができる。
また水処理装置1では、処理すべき原水はSS除去装置(MF装置)5によって浮遊物が除去されてからRO装置3に供給されるので、RO装置3での透過水と濃縮水との分離処理を効率よく行うことができる。
また水処理装置1によれば、SS除去装置5であるMF装置のMF膜を洗浄した後の塩素イオンを含む逆洗水、たとえば次亜塩素酸が処理すべき原水に混合される。次亜塩素酸はRO装置3によって濃縮水側に分離されるので、塩素イオンを電解窒素除去装置2における電気分解に再利用することができる。これによって、電解窒素除去装置2において、塩素イオンを投入する必要がなくなり、または塩素イオンの投入量が少なくなり、ランニングコストを少なくすることができる。
また水処理装置1では、pHが6〜8に調整された被処理水がRO装置3に与えられるので、RO装置3が備えるRO膜の透過率を一定に保つことができ、透過水と濃縮水との分離を安定して行うことができる。
また水処理装置1では、電解窒素除去装置2において、電解槽に導入される被処理水の導電率を検出するとともに、RO装置3で得られた透過水の導電率を検出して、電気分解を行う電流値または電解処理時間を設定している。これは、導電率と窒素濃度との間に一定の相関関係があることに着目し、導電率から窒素濃度を推定し、電気分解条件を設定するものである。
図4は、導電率と窒素濃度との関係を示すグラフである。図4に示すように、導電率が高くなるにつれて、窒素濃度も高くなることが確認されている。そこで、水処理装置1では、窒素成分濃度と導電率との間に一定の相関関係があることに着目し、電解窒素除去装置2は、被処理水の導電率を検出し、検出した導電率に基づいて電気分解に用いる電流値を設定する。したがって、たとえば被処理水の導電率が高い場合は窒素濃度が高いと推定でき、窒素濃度が高い被処理水を処理するためには大量の電流が必要となるので、大きな電流値が設定される。逆に、被処理水の導電率が低い場合は窒素濃度が低いと推定でき、窒素濃度が低い被処理水を処理するためにはそれほど大量の電流を必要としないので、小さな電流値が設定される。このように、最適な電解条件で被処理水の電気分解を行うことができ、窒素除去を効率よく行うことが可能となる。
また電解窒素除去装置2は、被処理水の導電率を検出し、検出した導電率に基づいて電気分解を行う時間を設定するようにしてもよい。たとえば被処理水の導電率が高い場合は窒素濃度が高いと推定でき、窒素濃度が高い被処理水を処理するためには大量の電流が必要となるので、電気分解時間として長い時間が設定される。逆に、被処理水の導電率が低い場合は窒素濃度が低いと推定でき、窒素濃度が低い被処理水を処理するためにはそれほど大量の電流を必要としないので、電気分解時間として短い時間が設定される。このように、最適な電解条件で被処理水の電気分解を行うことができ、窒素除去を効率よく行うことが可能となる。
さらに電解窒素除去装置2は、被処理水の導電率とRO装置3で得られた透過水の導電率とをそれぞれ検出し、検出した2つの導電率に基づいて電気分解を行う時間または電気分解に用いる電流値を設定するようにしてもよい。電気分解時間または電流値を設定する際に、被処理水の導電率だけでなく、RO装置3で得られた透過水の導電率も使用するのは、電解処理水と透過水とを混合して外部に放流するときに、放流する電解処理水と透過水との混合水の窒素濃度が水質規制で定められた所定の範囲内となるようにするためである。
まず、検出した被処理水の導電率に基づいて被処理水の窒素濃度を推定するとともに、検出した透過水の導電率に基づいて透過水の窒素濃度を推定する。続いて、推定した窒素濃度に基づいて、電解処理水と透過水との混合水の窒素濃度が所定の範囲内となるような電解処理水の窒素濃度を推定する。それから、推定した電解処理水の窒素濃度と被処理水の窒素濃度とに基づいて、電気分解時間または電流値を設定する。たとえば、電気分解前の窒素濃度と電気分解後の窒素濃度との差が大きい場合は、長い電気分解時間または大きな電流値を設定し、差が小さい場合は、短い電気分解時間または大きな電流値を設定する。このように、電解処理水とRO装置3で得られた透過水とを混合して外部に放流する際に、放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した値に効率よく調整することができる。
図5は、本発明の第2実施形態である水処理装置11の概略的構成を示す構成図である。第2実施形態は、上述の第1実施形態と類似しているので、同一の構成には同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。第2実施形態の特徴は、電解窒素除去装置2の後段に第2RO装置9を設け、電解窒素除去装置2における電解処理後の電解処理水を第2RO装置9によって濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水を処理水槽31に戻すとともに、透過水を希釈水槽7に貯留されているRO装置3で得られた透過水と混合して外部に放流するようにしたことである。
電解窒素除去装置2では、窒素成分を除去するために、電解槽にNaCl等を加えることによって塩素イオンを付加している。この塩素イオンは電解処理後の電解処理水中にも残存している。そこで、水処理装置11では、電解窒素除去装置2における電気分解後の電解処理水を、第2RO装置9によって透過水と濃縮水とに分離し、濃縮水を第1RO装置の被処理水として処理水槽31に戻している。塩素イオンは主として濃縮水側に含まれることになるので、電解処理水に残存している塩素イオンを再利用することができる。
また水処理装置11では、電解窒素除去装置2における電気分解後の電解処理水は、第2RO装置9によって透過水と濃縮水とに分離され、濃縮水がRO装置3の被処理水として処理水槽31に戻される。したがって、電解処理水の窒素成分濃度が外部に放流できる濃度に達する前に電気分解を終了しても、電解処理水を濃縮水と透過水とに分離して濃縮水を再びRO装置3に戻して処理するので、第2RO装置9の透過水の窒素濃度を水質規制に適合した濃度に調節することができ、透過水を外部に放流することができる。また、電解処理水の窒素濃度が水質規制に適合した濃度に低下するまで電気分解を行う必要がなくなるので、脱窒効率の低い低濃度での電気分解を行わなくてもよく、電解窒素除去装置2における消費電力を少なくすることができる。
さらに水処理装置11では、電解窒素除去装置2における電気分解後の電解処理水を第2RO装置9で処理して得られた透過水と、RO装置3で得られた透過水とを混合して外部に放流するので、外部に放流する放流水の窒素濃度を水質規制に適合した濃度に容易に調整することができる。また、第1実施形態の水処理装置1のように電解処理水とRO装置3で得られた透過水とを混合する場合と比較すると、電解処理水の濃度が高くてもよいことになるので、電解処理時間を短時間にすることが可能となり、電解窒素除去装置2における消費電力を少なくすることができる。
また、水処理装置11においても上記の水処理装置1と同様に、被処理水の導電率とRO装置3で得られた透過水の導電率とに基づいて、電気分解を行う時間または電気分解に用いる電流値が設定することができる。まず、検出した被処理水の導電率に基づいて被処理水の窒素濃度を推定するとともに、検出したRO装置3の透過水の導電率に基づいてRO装置3の透過水の窒素濃度を推定する。続いて、推定した窒素濃度に基づいて、第2RO装置9の透過水とRO装置3の透過水との混合水の窒素濃度が所定の範囲内となるような第2RO装置9の透過水の窒素濃度を推定する。続いて、推定した第2RO装置9の透過水の窒素濃度に基づいて、第2RO装置9に与えられる被処理水すなわち電解処理水の窒素濃度を推定する。それから、推定した電解処理水の窒素濃度と被処理水の窒素濃度とに基づいて、電気分解時間または電流値を設定する。このように水処理装置11においても、放流水の窒素成分濃度を水質規制に適合した値に効率よく調整することができる。