JP4039645B2 - 真空処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、スパッタリング装置、エッチング装置、CVD(化学蒸着)装置、イオン注入装置等のような真空中で基板を処理する真空処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSI(大規模集積回路)等の電子デバイスやLCD(液晶ディスプレイ)等の表示装置は、基板に対する各種の表面処理を経て製作される。このような表面処理を行う装置は、基板を真空中に配置して処理するものが多く、スパッタリング装置、エッチング装置、CVD(化学蒸着)装置、イオン注入装置等として知られている。
【0003】
このような真空処理装置は、処理室内の所定の位置に基板を位置させるため、処理室内に基板ホルダーを組み込んで、基板ホルダーに基板を保持させている。図5は、従来の真空処理装置に使用されている基板ホルダーの一例を示す正面断面概略図である。
基板ホルダー1は、処理室内の中央に配置された台状の部材であり、上面に基板9が載置されて保持される。また、多くの場合、基板9を加熱したり冷却したりして温度制御する機構が基板ホルダー1に内蔵されており、図5に示す例では、ヒータ3が内蔵されている。
【0004】
真空中においては基板ホルダー1と基板9との間の熱伝達効率が低下するため、基板ホルダー1と基板9との間にガスを供給して部分的に熱伝達効率を高めるためのガス供給系4が設けられている。基板ホルダー1の基板保持面(この例では上面)には、凹部が形成されており、この凹部にヘリウム又は水素等のガスを供給するようになっている。ガスは凹部内に封じ込められ、凹部の圧力が上昇する。この結果、基板ホルダー1と基板9との間の熱伝達効率が向上するようになっている。
【0005】
さらに、基板ホルダー1の基板保持面に静電気を誘起させて基板9を静電吸着し、基板ホルダー1と基板9との接触性を高めることにより熱伝導性を向上させるため、静電吸着機構5が基板ホルダー1に備えられている。基板ホルダー1の基板9に接触する側の部分は誘電体で形成された誘電体ブロック11になっている。静電吸着機構5は、誘電体ブロック11内に設けられた一対の吸着電極51と、吸着電極51間に直流電圧を印加する吸着電源52とから主に構成されている。
【0006】
吸着電極51間に直流電圧が印加されると、誘電体ブロック11の表面(基板保持面)に静電気が誘起され、基板9が静電吸着される。この結果、基板ホルダー1と基板9との接触性が高くなり、温度制御の効率が向上する。例えば、基板9が半導体ウェーハであり、基板ホルダー1と基板9との間にヘリウム又は水素等のガスを導入して2〜5Torr程度の圧力にした場合、室温から400℃程度の温度まで基板9を加熱するのに120秒程度を要するが、基板9を静電吸着すると、20秒程度で済む。
【0007】
基板ホルダーと基板との接触性を向上させる手段としては、上記静電吸着方式の他、機械的なクランパの方式がある。クランパ方式の場合、基板の周縁をクランパと呼ばれるリング状の部材で機械的に押さえつけるようにする。しかしながら、スパッタリング装置等の成膜処理を行う装置では、クランパと基板との間にまたがって薄膜が堆積し、基板とクランパとが“癒着”してしまうという問題が発生する。“癒着”が生ずると、基板が基板ホルダーから取り外せなくなり、搬送エラーとなってしまう。上述した静電吸着方式によると、このような癒着が生じないので好適である。
【0008】
しかしながら、上記静電吸着方式でも、以下のような問題があることが発明者の研究により判明した。図6は、静電吸着方式を用いた従来の真空処理装置の問題点を説明した図である。
【0009】
上記のように、静電吸着方式によると、クランパ方式に比べ、“癒着”の問題が生じないので好適であるが、基板保持面に誘起させる静電気を大きくして基板ホルダーへの基板9の接触性を向上させようとすると、基板9が基板ホルダーに強く押さえつけられる結果、基板9の裏面90に傷91が生じ、これが原因で、膨大な量のパーティクル(微粒子)92が生じる問題があることが判明した。例えば、基板保持面に1×10−4kg/cm2 以上の静電吸着力が生じると、基板9の裏面におけるパーティクル92の発生の問題が顕在化する。
【0010】
パーティクル92は、処理室内を浮遊し、時として基板9の表面93に付着する。基板9の表面93にパーティクル92が付着すると、回路欠陥等の致命的な製品不良が生じ易くなる。
発明者が調査したところでは、基板9が直径200mmの半導体ウェーハである場合、上記裏面90に生ずるパーティクル92は1万個から3万個にも達する。半導体ウェーハの表面のパーティクル92は、通常、約50個以下であることを考えると、表面の約200倍から600倍ものパーティクル92が裏面90に発生することが判明した。
【0011】
本願の発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、基板の裏面におけるパーティクルの発生を効果的に抑制した真空処理装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、真空中で基板を処理する真空処置装置であって、処理室内の所定位置に基板を保持するよう配設された基板ホルダーと、基板ホルダーの基板保持面に静電気を誘起させて基板を静電吸着させる静電吸着機構とを備えており、静電吸着の際に基板の裏面が接触する基板ホルダーの表面積は、基板の裏面の全面積の50分の1以上20分の1以下となっており、基板ホルダーの基板保持面と基板との間の空間に熱伝達用のガスを供給するガス供給系が設けられており、基板ホルダーの表面には複数の突起が設けられてこの突起の先端が基板の裏面に接触しており、これらの複数の突起は、熱伝達用のガスを封じ込めることのない形状となっており、基板ホルダーの表面には、基板の裏面に接触する突起とは別に、基板の裏面には接触しない非接触突起が設けられており、この非接触突起により、基板と基板ホルダーとの間のガスのコンダクタンスが小さくなっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、上記請求項1の構成において、前記基板ホルダーは、基板の裏面に接触する部分の表面が予め平坦化処理され、その後に前記処理室内に運び込まれて配設されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、上記請求項2の構成において、前記平坦化処理は、前記基板又は前記基板と同等の材質の板状部材の前記基板ホルダーへの着脱を150回以上繰り返す処理であるという構成を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係る真空処理装置の概略構成を示す正面図、図2は、図1の装置に使用された基板ホルダーの基板保持面の構成を説明する平面図である。
以下の説明では、真空処理装置の一例として、スパッタリング装置を採り上げる。従って、図1に示す装置は、スパッタリング装置であり、処理室2を構成する真空容器20と、処理室2内を排気する排気系21と、処理室2内に被スパッタ面が露出するようにして設けたターゲット6と、ターゲット6にスパッタ放電用の電圧を印加するスパッタ電源61と、処理室2内にスパッタ放電用のガスを導入するガス導入系7と、スパッタされたターゲット6の材料が到達する処理室2内の所定位置に基板9を配置するための基板ホルダー1とから主に構成されている。
【0014】
真空容器20は、ステンレス等の金属で形成された気密な容器である。真空容器20の器壁には、基板9の搬入搬出のための開口200が設けられており、この開口200を開閉するようにしてゲートバルブ201が設けられている。そして、ゲートバルブ201を介して不図示の搬送チャンバーが接続されている。
排気系21は、クライオポンプ等の真空ポンプ211を備えて処理室2内を10-8Torr程度まで排気可能に構成される。その他、排気系21は、バリアブルオリフィス等の排気速度調整器212を備えている。
【0015】
ターゲット6は、作成する薄膜の材料から形成された板状の部材である。ターゲット6は、真空容器20の上壁部の開口を気密に塞ぐよう設けられている。尚、ターゲット6と真空容器20とは絶縁されている。スパッタ電源61は、ターゲット6に負の直流電圧又は高周波電圧を印加するようになっている。
本実施形態のスパッタリング装置では、ターゲット6の背後に磁石機構62が設けられており、マグネトロンスパッタリングを行うようになっている。磁石機構62は、中心磁石621と、中心磁石621を取り囲む異なる磁極の周状の周辺磁石622とよりなる。ターゲット6を通して弧状の磁力線が周状に連なる形状の磁場が形成され、これによって平板マグネトロンスパッタリングが可能となる。
【0016】
ガス導入系7は、アルゴン等のスパッタ率の高いガスを処理室2内に導入するようになっている。ガス導入系7は、バルブ71や流量調整器72等を備えている。
【0017】
基板ホルダー1は、本実施形態の装置の大きな特徴点を成している。基板ホルダー1は、真空容器20の下壁部に固定された台状の部材であり、その上面に基板9を保持するようになっている。
そして、従来と同様に、基板ホルダー1はヒータ3を内蔵しており、基板9を所定温度に加熱するようになっている。尚、ヒータ3は、通電により発熱する抵抗加熱方式のものが採用される。ヒータ3は、基板9に平行な面内に複数設けられており、それぞれのヒータ3に独立して制御されるヒータ電源31が設けられている。熱電対等の不図示の温度センサからの信号により各ヒータ電源31を独立して制御することで、基板9を均一な温度に加熱することができる。
【0018】
また、同様に、基板ホルダー1と基板9との間にガスを供給して部分的に熱伝達効率を高めるためのガス供給系4が設けられている。ガス供給系4は、基板ホルダー1に設けたガス供給路41に接続されたガス供給管と、ガス供給管上に設けた不図示のバルブや流量調整器等から構成されている。
【0019】
また、本実施形態の装置でも、基板9を基板ホルダー1に静電吸着させる静電吸着機構5が設けられている。即ち、基板ホルダー1の基板9に接触する側の部分は誘電体で形成された誘電体ブロック11になっており、静電吸着機構5は、誘電体ブロック11内に設けられた一対の吸着電極51と、吸着電極51間に直流電圧を印加する吸着電源52とから主に構成されている。
尚、吸着電源52としては、正の直流電源と負の直流電源とが設けられており、それぞれの出力電圧は+1000V、−1000Vである。また、誘電体ブロック11の材質には、アルミナセラミックス又は窒化アルミ等が使用される。
【0020】
ここで、上記誘電体ブロック11の形状は、図5に示す従来のものと異なっている。この点を図1及び図2を使用して説明する。
図1及び図2から分かる通り、本実施形態では、誘電体ブロック11は、円盤状の部材の表面に円柱状の小さな突起121,122を複数設けた形状になっている。これらの突起121,122のうち、中央付近に設けられた突起121は、基板9に接触する突起(以下、接触突起と呼ぶ)である。接触突起121は、直径が3mm程度で、高さが50ミクロン程度である。接触突起121は、基板ホルダー1の中心軸に対して対称な位置に4個設けられている。
一方、突起122は、基板9には接触しない突起(以下、非接触突起)である。非接触突起122は、直径が3mm程度で、高さが20ミクロン程度である。非接触突起122は、基板ホルダー1の中心軸に対して対称な位置に36個設けられている。
【0021】
また、誘電体ブロック11のほぼ中央には、ガス供給系4が供給するガスの噴出口110が設けられている。噴出口110から噴出するガスは、突起121,122の間を通り抜けながら基板9の裏面に沿って流れ、基板ホルダー1の側方に抜けるようになっている。尚、ガスを中央から周辺部に向かって流す構成は、中央の方が周辺部に比べて比較的ガス圧が高くなり易い。この構成は、基板9の中央は周辺部に比べて熱放散が少なく高温になり易いことを考慮したものであり、基板9の加熱温度を均一化させるのに貢献している。
【0022】
上記構成の基板ホルダー1においては、静電吸着の際に基板9の裏面が接触するのは、上記接触突起121の先端に限られている。そして、接触突起121の先端の面積の合計は、基板9の裏面の全面積の50分の1程度になっている。具体的に説明すると、基板9が直径200mmの半導体ウェーハの場合、接触突起121の先端の面積の合計は630mm2 程度である。従って、50分の1程度になる。図5に示す従来の基板ホルダー1では、基板9の裏面への接触面積は、基板9の裏面の面積の10分の1程度であるので、それに比べると、5分の1程度に減少している。
【0023】
本実施形態の装置がこのように基板接触面積を減少させるのは、従来の装置で見られた基板9の裏面が傷付けられることによるパーティクルの発生を抑制するためである。本願の発明者の研究によると、基板9の裏面に対する基板ホルダー1の接触面積を、基板9の裏面の全面積に対して20分の1以下にすると、パーティクルの発生個数が効果的に減少するのが確認されている。
【0024】
一方、あまり接触面積を少なくすると、基板9の静電吸着が不十分となり、基板9の配置位置のずれや熱伝達の低下等の問題を生ずる。発明者の研究によると、基板9の裏面の全面積に対して、接触面積が50分の1より少なくなると、このような問題が顕在化するのが確認されている。従って、接触面積は、基板9の裏面の全面積に対して50分の1以上20分の1以下であることが必要である。
【0025】
また、上述した通り、ガス供給系4が供給したガスは、基板ホルダー1の側方に抜けるようになっている。つまり、図5に示す従来の場合と異なり、基板9と基板ホルダー1との間の空間にガスを封じ込めるような構造にはなっていない。この点は、基板ホルダー1の基板9への接触面積を低減させるのに貢献している。
つまり、ガスを封じ込めるような構成を採る場合、基板ホルダー1の基板保持面の縁に周状の突起を設けて堰堤とする必要がある。しかしながら、このような堰堤を設けると、それだけ接触面積が大きくなってしまい、基板9の裏面が傷つく可能性が高くなってしまう。そこで、本実施形態では、ガスを封じ込める構造を採用せず、ガスが基板9の裏面の中央から側方に流れて抜ける構造を採用している。
【0026】
但し、ガスが封じ込められない構造では、基板9と基板ホルダー1との間の空間の圧力が十分に上昇せず、基板9と基板ホルダー1との熱伝達の効率が十分に向上しない恐れがある。このため、本実施形態では、非接触突起122を設けてコンダクタンスの低下を図っている。このような非接触突起122が複数存在する結果、噴出口110から噴出するガスのコンダクタンスが小さくなり、基板9と基板ホルダー1との間の空間の圧力が高くなる。このため、熱伝達効率の低下が効果的に防止されている。
例えば、上述した寸法例において、噴出口110からのガスの噴出量が10-3リットル/分程度であり、真空容器20内の他の場所での圧力が10-3Torr程度である場合、基板9と基板ホルダー1との間の空間の圧力は10Torr程度まで上昇できる。尚、ガスは、非接触突起122と基板9の裏面との間の空間も通過するようになっている。このため、この部分における熱伝達効率も向上するようになっている。
【0027】
また、前述した接触突起121は、真空容器20内への配設に先立つ前処理により、先端面が平坦化されている。この平坦化処理の結果、基板9の裏面が傷つけられることが少なくなり、パーティクルの発生がさらに抑制されている。
平坦化処理は、真空容器20内に基板ホルダー1を配設する前に、基板9又は基板9と同等の材質の板状部材を治具として用い、この治具の基板ホルダー1への着脱動作を繰り返すことで行われる。具体的には、例えばスパッタ成膜を行う基板9と同じ基板を、搬送ロボット等を使用して基板ホルダー1に載置した後、取り上げる。この動作を150回以上繰り返した後、接触突起121の先端を洗浄する。洗浄は、例えば純水中での超音波洗浄が効果的である。
【0028】
このようにして接触突起121の表面を平坦化処理をした後に洗浄し、その後、基板ホルダー1を真空容器20内に配設する。基板9を基板ホルダー1に保持させて実際にスパッタリングを行う際には、接触突起121の先端面が平坦化されているため、基板9の裏面を傷つけてしまうことが少なくなり、パーティクルの発生が抑制される。尚、接触突起121は、誘電体ブロック11と一体に形成されている場合もあるし、誘電体ブロック11とは別な部材であって上記平坦化処理及び洗浄の後に誘電体ブロック11に固定される場合もある。
【0029】
上記平坦化処理において、基板9又は基板9と同等の材質の板状部材を治具として使用することは、以下のような知見に基づいている。
発明者は、上述した従来の装置の問題点を分析する過程で、基板9の処理枚数が多くなるにつれて、基板9の表面でのパーティクルの発見個数が少なくなっていくことを見出した。図3は、この点を確認した実験の結果を示す図であり、基板9の処理枚数(回数)と、基板9の裏面で発見されたパーティクルの個数との関係を示した図である。
【0030】
図3に示す実験は、図5に示すのと同様の基板ホルダー1を用いて基板9への処理を繰り返しながら、基板9の表面のパーティクル個数を調べたものである。パーティクル個数は、レーザー光を基板9の表面に照射し、パーティクルの存在によって散乱するレーザー光の強度を検出することにより計測した。尚、パーティクルは粒径0.2μm以上のもを計測した。
図3から分かる通り、処理枚数が少ないうちには、約3万個程度のパーティクルが計測されたが、150枚程度の基板9を処理すると、パーティクルは約3千個程度に激減するのが確認された。このような結果から、基板9の着脱を繰り返す過程で、基板ホルダー1の基板保持面が平坦化され、基板9の裏面を傷つけることがなくなり、パーティクルの発生個数が減少するものと判断された。
【0031】
本実施形態の装置は、このような知見を踏まえ、上述した通り接触突起121の先端面を予め平坦化処理し、その後、真空容器20内に配設している。つまり、基板9の処理を繰り返す過程で基板ホルダー1の基板保持面で生ずるであろう変化を予め生じさせてしまうという発想である。このような構成のため、基板9の裏面の傷によるパーティクルの発生が効果的に抑制されるのである。
【0032】
また、図4は本実施形態の装置の効果を確認した実験の結果を示す図である。図3と同様に、図4の横軸は基板の処理枚数、縦軸は基板の裏面で発見されたパーティクルの個数となっている。尚、図4中の−●−で示す曲線が実施形態の装置における結果を、−○−で示す曲線が図5に示す従来の装置における結果をそれぞれ示している。
図4から分かる通り、従来の装置では、50枚の処理枚数の段階では2万個程度のパーティクルが基板9の裏面に存在している。そして、150枚の処理枚数の段階でも、減少したとはいえ、1万個程度のパーティクルが依然として存在している。一方、本実施形態の装置では、50枚の処理枚数の段階で1000個程度と少なく、150枚の処理枚数の段階では200個程度まで減少している。この結果から分かる通り、本実施形態の装置によれば、基板9の裏面のパーティクルが従来に比べて20分の1から50分の1程度まで減少することが分かる。
【0033】
次に、本実施形態の装置の全体の動作について説明する。
まず、ゲートバルブ201を開けて、不図示の搬送チャンバーから開口200を通して基板9を処理室2内に不図示の搬送ロボットによって搬入する。基板9は、搬送ロボットによって基板ホルダー1上に載置して保持される。静電吸着機構5が動作し、基板9は基板ホルダー1に静電吸着される。そして、ガス供給系4が動作し、水素ガス又はヘリウムガスが所定の流量で基板9と基板ホルダー1との間の空間に供給される。
【0034】
処理室2内は排気系21によって予め所定圧力まで排気されており、ゲートバルブ201を閉じた後、ガス導入系7が動作する。ガス導入系7は、アルゴン等のスパッタ用ガスを所定の流量で処理室2内に導入する。この状態で、スパッタ電源61が動作し、ターゲット6に所定の電圧を印加する。この結果、ターゲット6を臨む空間にスパッタ放電が生じ、ターゲット6がスパッタされる。スパッタされたターゲット6の材料は、処理室2内の空間を飛行して基板9に達し、基板9にターゲット6の材料よりなる薄膜が堆積する。
薄膜が所定の厚さになるまでスパッタを続けた後、スパッタ電源61、ガス導入系7、ガス供給系4及び静電吸着機構5の動作を停止させる。その後、搬送ロボットによって基板9を開口200から搬送チャンバーに取り出す。
【0035】
上述した実施形態では、スパッタリング装置を真空処理装置の例として採り上げたが、エッチング装置、CVD(化学蒸着)装置、イオン注入装置等の他の真空処理装置であっても同様に実施できる。
また、基板9の材質や基板ホルダー1の基板保持面の材質によっては、前述した平坦化処理は必ずしも必要ではない場合がある。尚、基板9又は基板9と同等の材質の板状物を治具として用いる方法は平坦化処理の一例であって、他の形状や材質のものを使用しても同様の効果が得られる場合がある。
【0036】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の請求項1の発明によれば、基板の裏面が接触する基板ホルダーの表面積が基板の裏面の全面積の50分の1以上20分の1以下となっているので、基板の裏面におけるパーティクルの発生を効果的に抑制しつつ、十分な静電吸着の効果を得ることができる。また、基板と基板ホルダーとの間にガスを封じ込める構造ではないので、基板ホルダーへの基板の接触面積を小さくするのに効果的である。その上、基板と基板ホルダーとの間の空間の圧力を高めて熱伝達効率を向上させることができる。請求項2又は3の発明によれば、上記請求項1の効果に加え、基板ホルダーの基板保持面が予め平坦化処理されているので、基板の裏面での傷の発生が少なくなり、パーティクルの発生がさらに抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施形態に係る真空処理装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の装置に使用された基板ホルダーの基板保持面の構成を説明する平面図である。
【図3】基板の処理枚数が多くなるにつれて基板の表面でのパーティクルの発見個数が少なくなっていくことを確認した実験の結果を示す図である。
【図4】本実施形態の装置の効果を確認した実験の結果を示す図である。
【図5】従来の真空処理装置に使用されている基板ホルダーの一例を示す正面断面概略図である。
【図6】静電吸着方式を用いた従来の真空処理装置の問題点を説明した図である。
【符号の説明】
1 基板ホルダー
11 誘電体ブロック
110 噴出口
121 接触突起
122 非接触突起
2 処理室
20 真空容器
21 排気系
3 ヒータ
31 ヒータ電源
4 ガス供給系
41 ガス供給路
5 静電吸着機構
51 吸着電極
52 吸着電源
6 ターゲット
61 スパッタ電源
62 磁石機構
7 ガス導入系
9 基板
91 傷
92 パーティクル
Claims (3)
- 真空中で基板を処理する真空処置装置であって、処理室内の所定位置に基板を保持するよう配設された基板ホルダーと、基板ホルダーの基板保持面に静電気を誘起させて基板を静電吸着させる静電吸着機構とを備えており、
静電吸着の際に基板の裏面が接触する基板ホルダーの表面積は、基板の裏面の全面積の50分の1以上20分の1以下となっており、
基板ホルダーの基板保持面と基板との間の空間に熱伝達用のガスを供給するガス供給系が設けられており、基板ホルダーの表面には複数の突起が設けられてこの突起の先端が前記基板の裏面に接触しており、これらの複数の突起は、熱伝達用のガスを封じ込めることのない形状となっており、
基板ホルダーの表面には、基板の裏面に接触する突起とは別に、基板の裏面には接触しない非接触突起が設けられており、この非接触突起により、基板と基板ホルダーとの間のガスのコンダクタンスが小さくなっていることを特徴とする真空処理装置。 - 前記基板ホルダーは、その基板の裏面に接触する部分の表面が予め平坦化処理され、その後に前記処理室内に運び込まれて配設されていることを特徴とする請求項1記載の真空処理装置。
- 前記平坦化処理は、前記基板又は前記基板と同等の材質の板状部材の前記基板ホルダーへの着脱を150回以上繰り返す処理であることを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の真空処理装置。
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