JP4038864B2 - インクジェットヘッドおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は対向電極間に電圧を印加することにより発生する静電気力を駆動源として利用している静電型アクチュエータおよびその製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、静電気力により相対変位する部材の表面に疎水膜を備えた静電型アクチュエータにおける当該疎水膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタのインクジェットヘッド等には、半導体の微細加工技術を用いて形成された微小構造のアクチュエータが用いられている。この微小構造のアクチュエータとしては、その駆動源として静電気力を利用した静電駆動方式のものが知られている。例えば、本出願人によって、静電気力を利用してインク液滴を吐出するタイプのインクジェットヘッドが特開平5−50601号、同6−70882号公報に開示されている。
【0003】
この形式のインクジェットヘッドは、インクノズルに連通しているインク室の底面が弾性変形可能な振動板として形成されている。この振動板には、一定の間隔で基板が対向配置されている。これらの振動板および基板には、それぞれ対向電極が配置され、これらの対向電極の間の空間は封止された状態となっている。対向電極間に電圧を印加すると、これらの間に発生する静電気力によってインク室の底面(振動板)が基板の側に静電吸引あるいは静電反発されて振動する。このインク室の底面の振動に伴って発生するインク室の内圧変動によりインクノズルからインク液滴が吐出される。対向電極間に印加する電圧を制御することにより、記録に必要な時にのみインク液滴を吐出する、所謂インク・オン・デマンド方式が実現される。
【0004】
ここで、対向電極間に繰り返し電圧を印加してインクジェットヘッドを駆動している間に、対向電極の表面、すなわち、対向しているインク室底面および基板の表面に水分が付着すると、これらの極性分子の帯電によって、静電吸引特性あるいは静電反発特性が低下する恐れがある。また、基板の表面に吸着した極性分子が相互に水素結合して、インク室底面が基板側に貼り付いたままの状態(スティッキング状態)となり、動作不能となる恐れがある。
【0005】
このような弊害を回避するために、インク室底面および基板表面に疎水化処理を施すことが考えられる。例えば、パーフルオロデカン酸(PFDA)の配向単分子層をこれらの表面に形成することにより、これらの表面を疎水化することが考えられる。
【0006】
PFDAを用いた疎水化処理が施された静電型アクチュエータの例は、例えば、特開平7−13007号公報、USP5、331、454に開示されている。これらの公報においては、静電型アクチュエータであるマイクロメカニカル装置における対向電極の表面にPFDAの配向単分子層を形成することにより、これらが駆動中に膠着状態に陥ること等を防止するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、PFDAを用いた疎水化処理は次のような解決すべき課題がある。まず、PFDAを単に相対変位する部材の対向表面に付着したのみでは、その層の耐久性が十分ではない。このため、静電気力によって繰り返し相対変位させられるこれらの部材の間に発生する繰り返し電界のために、PFDAの層が部材の表面から剥離し、剥離部分が凝集して部材間の相対変位を妨げる異物が発生するおそれがある。このような異物が発生すると、静電型アクチュエータが動作不能に陥る危険性もある。
【0008】
次に、静電型アクチュエータでは、印加する電圧が低くても相対変位する対向部材の間に発生する静電気力を十分に大きな力とするために、これらの対向部材の間隔を可能な限り狭くすることが望ましい。また、静電型アクチュエータの高密度化、一層の微小化を達成するためにも、対向部材の間隔を可能な限り狭くすることが望ましい。しかしながら、対向部材の間隔を狭くすると、PFDAの分子は大きいので、狭い間隔の対向部材表面にそれを付着させることが不可能となってしまう。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、耐久性のある疎水膜を備えた静電型アクチュエータおよびその製造方法を提案することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、静電気力により相対変位する対向部材の間隔が狭い場合においてもこれらの対向部材の表面に付着形成可能な疎水膜を備えた静電型アクチュエータおよびその製造方法を提案することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一定の間隔で対向配置され相対変位可能な対向部材と、これらの対向部材の間に静電気力を発生させて当該対向部材を相対変位させる駆動手段と、前記対向部材のうちの少なくとも一方の部材における他方の部材との対向表面に形成した疎水膜とを有する静電型アクチュエータにおいて、前記対向部材間には、疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物が気密封止されるようにしている。
【0012】
前記有機珪素化合物は、例えば、前記有機珪素化合物は、式R3−Si−X、もしくは式R3−SiNHSi− R3(Rはアルキル基、Xはハロゲンもしくはアミノ基を示す)で表される化合物であり、ヘキサメチルジシラザン((CH3)3SiNHSi(CH3)3)、ヘキサエチルジシラザン((C2H5)3SiNHSi(C2H5)3)、トリメチルクロロシラン((CH3)3SiCl)、トリエチルクロロシラン((C2H5)3SiCl)、トリメチルアミノシラン((CH3)3SiNH2)、トリエチルアミノシラン((C2H5)3SiNH2)等が含まれる。また、前記有機珪素化合物は、例えば、ジメチルジクロロシラン((CH3)2SiCl2)等の式R2−Si−X(Rはアルキル基、Xはハロゲン、アミノ基、もしくはシリル化アミンを示す)で表される化合物であってもよい。
【0013】
本発明を適用可能な静電型アクチュエータはインクジェット記録装置に用いるインクジェットヘッドである。この場合には、静電型アクチュエータを、前記第1および第2の部材の相対変位によって容積が変動するインク室と、当該インク室に連通しているインクノズルとを有する構成とし、前記駆動手段を、前記第1の部材および前記第2の部材に形成した対向電極と、これらの対向電極の間に電気パルスを印加する電圧印加手段とを備えた構成とし、前記電気パルスの印加に応じて前記インクノズルからインク液滴を吐出させるようにすればよい。
【0014】
このように、本発明では相対変位する部材の対向表面に疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物からなる疎水膜を形成し、対向部材間が気密封止されている。この疎水膜は、PFDAからなる疎水膜に比べて耐久性がある。また、分子が小さいので、相対変位する部材の間隔が狭い場合においても、それらの対向表面に付着させることができる。
【0015】
一方、本発明は、上記構成の静電型アクチュエータの製造方法に関するものであり、一定の間隔で対向配置され相対変位可能な対向部材と、これら対向部材の間に静電気力を発生させて当該対向部材を相対変位させる駆動手段と、前記対向部材のうちの少なくとも一方の部材における他方の部材との対向表面に形成された疎水膜とを有する静電型アクチュエータの製造方法において、前記対向表面に前述した疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物を用いて前記疎水膜を形成する付着工程と、前記疎水膜が安定して前記対向表面に定着するように、各対向部材の対向表面の隙間を気密封止する封止工程とを行うようにしている。
【0016】
詳細に説明すると、本発明者等は、対向表面に疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物の一つであるヘキサメチルジシラザン(HMDS)からなる疎水膜を付着した直後から外部(大気中)に放置した場合における疎水膜の耐久性を調べたところ、図7に示すように、放置した直後から急激に低下して数分後に所定のレベルにおちつき、その後、さらに数日間放置すると、耐久性は再び徐々に回復することが分かった。より詳しく現象を説明すると、図7の領域Bの範囲内で対向部材間を封止したものは、対向部材間(対向する電極から構成されるキャパシタ)の充放電を400〜500万回繰り返すと、対向部材間にゲル状の異物が発生し、アクチェエータを作動させることが困難となる。このゲル状の異物は、対向部材間の隙間を早く封止するほど、発生する時期が遅くなる(領域A)。即ち対向部材間の隙間内のHMDS濃度を上げるほど、ゲル状の異物が発生しにくくなるということが分かった。一方、気密封止まで所定時間以上放置したものもゲル状の異物が発生しにくくなる(領域C)。
【0017】
この特異な現象は、対向部材間に過多に存在する有機珪素化合物は、静電型アクチュエータに充放電を繰り返すうちにゲル化しやすく、極めて過多な有機珪素化合物が封止されれば逆にゲル化が抑制されるということを示唆している。また、気密封止まで所定時間以上放置すれば、過多な有機珪素化合物が加水分解により除去され、異物化の原因となる過多な有機珪素化合物が除去されるものと考えられる。
【0018】
即ち、このような実験結果から、耐久性のある疎水膜を得るためには、対向表面に有機珪素化合物からなる疎水膜を形成した後、1)隙間の有機珪素化合物の濃度が所定値以上に保たれた状態のまま当該隙間を気密封止するか、2)数日間大気中に対向部材を放置した後隙間を封止すればよいということが分かった。
【0019】
隙間の有機珪素化合物の濃度が所定値以上に保たれた状態のまま当該隙間を気密封止する方法1)で静電型アクチュエータを製造する場合、本発明者等の実験によれば、有機珪素化合物の濃度が0.3%以上の状態で隙間を気密封止すれば、疎水膜の耐久性を実用上支障のない程度に高められることが確認された。また、有機珪素化合物の濃度が0.8%以上の状態で隙間を気密封止すれば、疎水膜の耐久性を実用上十分なものにできることが確認された。
【0020】
更には、封止工程を、常温および常圧の下で行えばよいことも確認された。
【0021】
また、付着工程では、常圧中で、予め定められた濃度となるように有機珪素化合物を気化させた雰囲気中に対向部材を放置すれば良い。この場合には、有機珪素化合物からなる疎水膜が形成された後は、対向部材を有機珪素化合物が充満した雰囲気中から取り出さずに、その雰囲気中で気密封止すれば良い。有機珪素化合物が充満した雰囲気中で気密封止を行えば、隙間内の有機珪素化合物の濃度を確実に所定値以上に保持できる。
【0022】
また、数日間大気中に対向部材を放置した後、隙間を封止する方法2)を用いて静電型アクチュエータを製造する場合、この放置工程では、積極的に水分を与えるほうが好ましい。即ち湿度の高い雰囲気で放置したほうが、有機珪素化合物の加水分解が促進され、異物化の原因となる過多の有機珪素化合物が早く除去され、安定した疎水膜が形成される。
【0023】
なお、1)2)いずれのタイミングで対向部材間の封止を行う封止方法を採用しても、前記付着工程に先立って、前記対向表面間の水分を低減する前処理を行うことが好ましい。即ち、本発明の静電型アクチュエータの製造方法においては、前記付着工程に先立って、前記対向表面間の水分を低減する乾燥工程を行えば、有機珪素化合物の付着状況の安定化を図ることができ、封止工程における有機珪素化合物の付着状態のばらつきが発生するのを回避できる。
【0024】
本発明の製造方法によって製造された静電型アクチュエータは、インクジェットプリンタに用いるインクジェットヘッドに適用可能である。この場合には、静電型アクチュエータを、前記対向部材の相対変位によって圧力変動するインク室と、当該インク室に連通しているインクノズルとを有する構成とする。また、前記駆動手段を、前記対向部材の各々に形成した対向電極と、これらの対向電極に電圧パルスを印加する電圧印加手段とを備えた構成とする。さらに、前記電圧パルスの印加に応じて前記インクノズルからインク液滴が吐出されるようにすれば良い。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の静電型アクチュエータインクジェットヘッドをインクジェットヘッドに適用した例について説明する。
【0026】
(全体構成)
図1は本発明を適用したインクジェットヘッドの分解斜視図である。また、図2は組み立てられたインクジェットヘッドの断面構成図(図3のII-II断面)、図3はその平面図、図4はその部分(IV-IV)断面図である。
【0027】
これらの図に示すように、インクジェットヘッド1は、インク液滴を基板の上面に設けたインクノズルから吐出させるフェイスインクジェットタイプであり、静電駆動方式のものである。インクジェットヘッド1は、キャビティープレート3を挟み、上側にノズルプレート2、下側にガラス基板4がそれぞれ積層された3層構造となっている。
【0028】
キャビティープレート3は、例えばシリコン基板であり、プレートの表面には底壁が振動板5として機能するインク室6を構成することになる凹部7と、凹部7の後部に設けられたインク供給口8を形成することになる細溝9と、各々のインク室6にインクを供給するためのインクリザーバ10を構成することになる凹部11とがエッチングによって形成されている。このキャビティープレート3の下面は鏡面研磨によって平滑化されている。
【0029】
このキャビティープレート3の上側に接合されるノズルプレート2は、キャビティープレート3と同様に、例えばシリコン基板である。ノズルプレート2において、インク室6の上面を規定している部分には各インク室6に連通する複数のインクノズル21が形成されている。
【0030】
静電型アクチュエータは、一時的に各インク室内の圧力を上昇させて、対応するインクノズルからインク滴を吐出させるために、各インク室に対して夫々設けられている。静電型アクチュエータは微少な隙間をもって対向する2個の電極部材を有しており、本実施形態では、一方の電極は後述する変形可能な振動板5としてインク室6の底に形成されており、他方の電極は、ガラス基板4の凹部16に形成されている。なお、後述するように、本実施形態では、キャビティープレート3が導体であるため、振動板5自体が静電型アクチュエータの一方の電極として機能している。
【0031】
ノズルプレート2をキャビティープレート3に接合することにより、上記の凹部7、11、および細溝9が塞がれて、インク室6、インク供給口8、インクリザーバ10のそれぞれが区画形成される。
【0032】
なお、インクリザーバ10の底面を規定する部分にはインクリザーバ10にインクを供給するための孔12aが設けられており、基板接合後、後述するガラス基板4に設けられた孔12bと共にインク供給孔12を形成する。インク供給孔12には、不図示の接続チューブを介して不図示のインクタンクに接続される。インク供給孔12から供給されたインクは、各インク供給口8を経由して独立した各インク室6に供給される。
【0033】
キャビティープレート3の下側に接合されるガラス基板4は、シリコンと熱膨張率が近いホウ珪酸ガラス基板である。このガラス基板4において、各々の振動板5に対向する部分には振動室(隙間)15を構成することになる凹部16が形成されている。この凹部16の底面には、振動板5に対向する個別電極17が形成されている。個別電極17は、ITOからなるセグメント電極部18と端子部19を有している。
【0034】
このガラス基板4をキャビティープレート3に接合することにより、各インク室6の底面を規定している振動板5と個別電極17のセグメント電極部18は、非常に狭い隙間を隔てて対向する。この隙間15はキャビティープレート3とガラス基板4の間に配置した封止材20によって封止される。
【0035】
振動板5は薄肉とされており、面外方向、すなわち、図2において上下方向に弾性変形可能となっている。この振動板5は、各インク室側の共通電極として機能する。この共通電極としての振動板5の底面51にはヘキサメチルジシラザン((CH3)3SiNHSi(CH3)3、以下単にHMDSと呼ぶ)を用いて有機珪素化合物からなる疎水膜22が形成されている。この振動板5に対向する個別電極17のセグメント電極部18の表面にも、HMDSを用いて有機珪素化合物からなる疎水膜23が形成されている。隙間15を挟み、振動板5と、対応する各セグメント電極部18とによって対向電極が形成されている。
【0036】
振動板5と個別電極17との間には電圧印加装置25が接続されている。電圧印加装置25の一方の出力は各個別電極17の端子部19に接続され、他方の出力はキャビティープレート3に形成された共通電極端子26に接続されている。キャビティープレート3自体は導電性をもつため、この共通電極端子26から振動板(共通電極)5に電圧を供給することができる。また、より低い電気抵抗で振動板5に電圧を供給する必要がある場合には、例えば、キャビティープレート3の一方の面に金等の導電性材料の薄膜を蒸着やスパッタリングで形成すれば良い。本例では、キャビティープレート3とガラス基板4との接続に陽極接合を用いているので、キャビティープレート3の流路形成面側に導電膜を形成してある。
【0037】
このように構成したインクジェットヘッド1においては、電圧印加装置25からの駆動電圧が対向電極間に印加されると、対向電極間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板5はセグメント電極部18の側へ撓み、インク室5の容積が拡大する。次に、電圧印加装置25からの駆動電圧を解除して対向電極間の電荷を放電すると、振動板5はその弾性復帰力によって復帰し、インク室6の容積が急激に収縮する。この時発生する内圧変動により、インク室6に貯留されたインクの一部が、インク室6に連通しているインクノズル21から記録紙に向かって吐出する。
【0038】
なお、インクジェットヘッド1で使用されるインクとしては、水、アルコール、トルエン等の主溶媒にエチレングリコール等の界面活性剤と、染料または顔料とを溶解または分散させることにより調製される。さらに、インクジェットヘッド1にヒータを設けておけば、ホットメルトインクも使用できる。
【0039】
(製造方法)
以下静電型アクチュエータの最適な製造方法について説明する。
【0040】
図5には上記構成のインクジェットヘッド1の製造工程の一例の概略フローチャートを示してある。この図に示すように、まず、ステップST1において、インクジェットヘッド1を構成しているキャビティープレート3、ノズルプレート2、ガラス基板4をそれぞれウエハから加工して製造する。次に、ステップST2において、それらの3部材を相互に組み立てて(接合して)インクジェットヘッドを形成する。すなわち、間隔15が形成されるように、キャビティープレート3の底面側にガラス基板4を組み付ける。この状態では、共通電極である振動板5の底面51、およびセグメント電極部18の表面のいずれにも疎水膜は形成されていない。
【0041】
次に、ステップST3の前処理(乾燥)工程において、インクジェットヘッド1に対して前処理を施し、その表面に付着している水分を除去、あるいは可能な限り低減する。例えば、ドライエアーを供給した処理槽内にインクジェットヘッド1を放置すれば良い。このような前処理工程を行うと、HMDSの付着状況の安定化を図ることができる。すなわち、振動板5の底面51、およびセグメント電極部18の表面から余分な付着水分を低減・除去して、HMDSの付着状況の安定化を図り、次の工程におけるHMDSの付着状態にばらつきが発生するのを回避できる。なお、ドライエアーを用いる方法の他、処理槽内を真空にして加熱する真空加熱工程、処理槽内を真空雰囲気および窒素雰囲気に交互に切り換える工程、及びこれらの組合せを前処理工程として採用することができる。
【0042】
次に、ステップST4のHMDS付着工程において、共通電極である振動板5の底面51、およびセグメント電極部18の表面に、それぞれHMDSからなる疎水膜22、23を形成する。例えば、HMDSを入れた容器を前記処理槽内に置き、ドライエアーの供給を止め、常温、常湿で雰囲気圧力を大気圧として、この状態を、HMDSが拡散により十分隙間15に侵入するまで(本形態では約20時間程度)維持する。この結果、共通電極である振動板5の底面51およびセグメント電極部18の表面にはHMDSからなる疎水膜22、23が形成される。この時の処理槽内のHMDS濃度は約0.3%以上にすれば良い。
【0043】
図6には、シリコン製の振動板5の底面およびITO製のセグメント電極部18の表面に形成されたHMDSの疎水層22a、23aの分子結合状態を示してある。この図に示すように、各表面では、OH基が疎水基であるOSi(CH3 )3 基と入れ代わった状態となる。
【0044】
次に、ステップST5の気密封止工程において、処理槽内からインクジェットヘッド1を取り出さずに、処理槽内で振動板5とセグメント電極部18との間の空間を気密封止し、隙間15を形成する。この時、気密封止された隙間15のHMDS濃度は約0.3%以上になる。
【0045】
図7は疎水膜22、23を形成した直後にインクジェットヘッドを外部に放置した場合における放置時間と疎水膜22、23の耐久性の相関関係のグラフである。なお、このグラフは、封止工程における処理槽内のHMDS濃度が0.8%以上になるようにした場合に得られたものである。また、耐久性は、振動板5の1回の振動を1サイクルとして測定したものである。
【0046】
このグラフから分かるように、HMDSからなる疎水膜22、23を形成した後に、その状態のまま封止せずに処理槽内から取り出して、大気中に放置しておくと、疎水膜22、23の耐久性は処理槽内から取り出した直後(右下がり領域A)に急激に低下する。そして、数分後に所定の耐久性レベルに安定する。(安定領域B)。その後、さらに放置しておくと、数日後には耐久性が再び徐々に回復する。(右上がり領域C)。また、右上がり領域Cの耐久性は、疎水膜22、23を形成した直後(右下がり領域A)の耐久性に比べれば低いレベルである。
【0047】
本例の製造方法では、隙間15のHMDS濃度が約0.3%以上の状態を保持したまま、当該隙間15を気密封止している。従って、実質的にHMDSからなる疎水膜22、23を形成した直後に隙間15が気密封止されることになる。すなわち、図7の右下がり領域Aで隙間15を気密封止したことになる。このため、振動板5の表面およびセグメント電極部18の表面に形成された疎水膜22、23の耐久性としては、疎水膜22、23が形成された直後あるいはそれに近いものになる。図8から明らかなように、疎水膜22、23を形成した後、隙間15のHMDS濃度が約0.3%以上のまま気密封止すれば、数千万〜数十億サイクル程度の耐久性が得られる。
【0048】
図8は、図7における右下がり領域Aに含まれる放置時間内で隙間15を気密封止したときに得られる当該隙間内のHMDS濃度と、疎水膜22、23の耐久性の相関関係のグラフである。このグラフから分かるように、インクジェットヘッド1は隙間15が0.3%以上のHMDS濃度となるように気密封止されているので、疎水膜22、23の耐久性は、約2千万サイクル以上になる。従って、疎水膜22、23を形成してから数日間放置した後に、隙間15を気密封止した場合と同等あるいはそれ以上の耐久性を持つ疎水膜を得ることができる。例えば、隙間15のHMDS濃度を約0.4%以上にすると、1億サイクル以上の耐久性を持つ疎水膜22、23を得ることができる。
【0049】
ここで、隙間15のHMDS濃度を高めるにしたがって疎水膜22、23の耐久性は上昇する。但し、HMDS濃度が約0.8%となると疎水膜の耐久性は50億サイクル程度に飽和する。このため、処理槽内のHMDS濃度の管理誤差を考慮すれば、処理槽内のHMDS濃度を1.0%ないし1.1%前後に設定して、この処理槽内で隙間15を気密封止することが最も好ましい。 以上説明したように、本例の方法によれば、HMDSからなる疎水膜22、23の耐久性を充分なものとするために、疎水膜形成後に数日間に渡って放置する必要がない。即ち、短時間で静電型アクチュエータを製造できるという利点を有する。
【0050】
なお、気密封止工程では、処理槽内からインクジェットヘッド1を取り出して気密封止を行っても良い。この場合には、図7から分かるように、インクジェットヘッド1を処理槽内から取り出すと、疎水膜22、23の耐久性は急激に低下する。このため、インクジェットヘッド1を処理槽内から取り出した直後、例えば、図7の例では約3分以内に気密封止すれば良い。
【0051】
ここで、ステップST4のHMDS付着工程を行うと、キャビティープレート3のその他の表面にも疎水膜が形成されて疎水性が付与されてしまい、インク流路の気泡の排出性が悪化する等の問題が生じる。しかしながら、ステップST5の気密封止工程を行った後に、RCA洗浄(アンモニア、過酸化水素水の混合液を用いた洗浄)等を行うことにより簡単にインク流路表面から疎水膜を除去することが可能である。このため、気泡の排出性悪化等の問題が併発されることを防止できる。
【0052】
(製造方法の他の実施例)
以上、図7の領域Aの特性を用いて、HMDSの濃度を保った状態で封止する製造方法について説明したが、静電型アクチュエータ(インクジェットヘッド)の形状、設備上の理由から濃度を保った状態で封止する作業が困難な場合もあり得る。このような場合は、付着工程後、図7の領域Cに見られる特性を積極的に用いて耐久性を向上させてもよい。以下、図9の概略フローチャートを用いて、インクジェットヘッドの製造工程の他の実施例を説明する。尚、前述の実施例(図5)と同一の工程については一部説明を省略する。
【0053】
ステップST1、ステップST2は、前述の実施例と同一の工程であり、共通電極である振動板5の底面51、およびセグメント電極18の表面の何れにも疎水膜は形成されていないインクジェットヘッドが組み立てられる。また、ステップST3の前処理工程においても、前述の実施例と同様な処理を施して、その表面に付着している水分を除去・低減する。
【0054】
次に、ステップST4aのHMDSの付着工程においては、気相処理あるいは液相処理によって、共通電極である振動板5の底面51およびセグメント電極18の表面にHMDSを付着させることができる。気相処理には、HMDSを大気圧中で蒸着する方法と真空中で蒸着する方法がある。前述の実施例は大気圧中で蒸着させるものを説明したが、本実施例では、付着工程後直ぐに封止するものではないので、これに限るものではない。例えば、HMDS雰囲気中においてインクジェットヘッド1を20°C乃至200°Cに保持し、真空度を10Torr以上に高い状態に保持して、約5乃至150分程度放置すれば、HMDSからなる疎水膜を振動板5の底面51およびセグメント電極18の表面に形成できる。
【0055】
液相処理はHMDS中にインクジェットヘッドを浸漬することによりHMDSを付着する方法であり、この方法では、毛細管力によって、隙間Gの間にHMDSが入り込み、振動板5の底面51およびセグメント電極18の表面にHMDSが付着する。この方法では、例えば、インクジェットヘッド1およびHMDSを常温に保持し、HMDS液にインクジェットヘッド1を5分以上浸漬し、しかる後に、20°乃至200°Cの雰囲気中において隙間Gに入り込んでいる余分なHMDSを気化させて除去すればよい。これらの方法は、短時間でHMDS付着を行うことができるという利点を有する。
【0056】
次に、ステップST4bの後処理工程としては、水分付与工程と、放置工程とを挙げることができる。これらの各工程は単独でもよいし、組み合わせて採用してもよい。
【0057】
まず、水分付与工程は、形成されたHMDSからなる疎水膜から余分なHMDSを加水分解することにより除去する工程である。形成されたHMDSの疎水膜に水分を付与すると、当該疎水膜の経時変化による異物化を抑制でき、膜の安定化を改善できることが確認された。この工程としては、例えば、前述したHMDSの付着工程の終了後に、インクジェットヘッドを、湿度が20乃至100%RH、温度が20°C乃至200°Cの雰囲気中に放置する工程を挙げることができる。ここで、水分付与工程は、HMDSの付着工程の終了後に開始してもよいが、HMDSの付着工程の途中から開始してもよい。この場合には、HMDSの付着工程の最初ではHMDSのみの雰囲気中にインクジェットヘッドを入れ、途中から、雰囲気中にHMDSと共に水分を加えればよい。
【0058】
次に、放置工程は、例えば、HMDSの付着後にインクジェットヘッドを、温度20°C乃至200°Cで湿度が45%Rh〜85%Rh、好ましくは約60%Rhの雰囲気中に数日から1週間程度放置する工程である。この工程を経ることにより、HMDSの結合状態を安定化させることができ、当該疎水膜の経時変化による異物化を抑制でき、膜の安定化を改善できることが確認された。
【0059】
これら一連の工程後、対向部材間の隙間を封止し(ST5)、インクジェットヘッドが完成する。
【0060】
(インクジェットヘッドの隙間の封止部分の構造)
以下、図7、図10、図11を用いて、インクジェットヘッドのインクジェットヘッドの隙間の封止部分の構造について説明する。
【0061】
HMDSの濃度の高い状態で対向部材間の隙間を封止することが望ましいことは、前述の実施例で説明した通りである。このためにはHMDSを充填した槽内で隙間を封止する作業を行う工程を採用することが好ましいが、反面、以下の欠点も併せ持つ。即ち、槽内で封止材、具体的にはエポキシ系の接着剤を用いて隙間を封止することは、容易な作業ではない。また、HMDS以外の接着剤の成分で槽内を汚染することは、品質管理上好ましくない。
【0062】
従って、槽内に所定時間置かれた静電型アクチュエータを、槽内から取り出した後迅速に隙間の封止を行う工程を採用するほうが、静電型アクチュエータの大量生産には適している。
【0063】
槽内から取り出した直後から、隙間内のHMDSが低下し、封止までの間に時間がかかれば耐久性が低下することは、図7からも明らかである。即ち、図7の領域Aの部分の傾きは、槽内から取り出した後の静電型アクチュエータの対向部材間の隙間のHMDSの濃度の低下する速度を表し、この速度が大きいほど、素早く封止する必要がある。
【0064】
本実施例は、対向部材間の隙間を封止する構造に関し、封止までの隙間内のHMDSの濃度の低下を抑えるものである。
【0065】
図10は、図1に示したインクジェットヘッドの対向部材間の隙間の封止部分を示す平面図である。符号18は個別電極であり、端子部19と個別電極18はリード部17bによって接続されている。これら電極17、17bはガラス基板4上に設けられた凹部16にITOを蒸着することにより形成される。
【0066】
図示のように、凹部16は2つの部分に区画されている。アクチュエータ部分(振動室15)となる部分の凹部の寸法は幅b、長さaであり、振動室15と外部とをつなぐ管15bとなる部分の凹部の寸法は幅d、長さLである。尚、ガラス基板4とキャビティープレート3を接合し、HMDSを振動室15内に入れ付着させた後、管15bの解放端は封止材20によって閉じられる。
【0067】
振動室15の体積をV(a×b×g、gは対向部材間(振動板5と電極17間の距離)とし、管15bの断面積をS(d×g)としたとき、以下の式で表される値Kの大小が、槽内から取り出した後の静電型アクチュエータの対向部材間の隙間のHMDSの濃度の低下する速度に関係し、K≧25であれば、槽外で隙間の封止を行っても十分静電型アクチュエータの耐久性を確保できることが実験で得られた。
【0068】
K=V・L/S
図7の領域Aの実線部分はK=10、波線部分はK=25の場合の耐久性と気密封止までの時間の相関を示すものである。図から明らかなように1分以内で封止すれば、K=25であれば1億パルス程度の耐久性を得ることができるのに対し、K=10では1000万パルス程度の耐久性を得ることも難しい。K=10で1億パルスの耐久性を得るためには、槽外に出して10秒程度で封止工程を終了させる必要があり、大量生産を前提とした工程では事実上不可能である。
【0069】
図11は、他の実施例のインクジェットヘッドの隙間の封止部分の平面図を示すものである。なお、図10と同一の符号のものは、図10で説明した実施例と同一のものを指す。
【0070】
列状に配置された複数の振動室15には、それぞれ、各振動室15と封止部20aを結ぶ管15bが接続されており、更に、この各管15bを結ぶバイパス管15cが設けられている。このバイパス管15cの解放端側にも封止部20bが設けられている。
【0071】
本実施例のインクジェットヘッドは、以下の手順により、HMDSが振動室15内に封止され、製造される。
【0072】
まず、ガラス基板4の所定の位置をエッチングし凹部を形成し、凹部内の所定の位置に個別電極17を形成する。このガラス基板4と、振動板5が設けられたキャビティープレート3を陽極接合することにより振動室15,管15b、15cが形成される。各管15bの解放端を封止材20aにより封止した後、所定濃度のHMDSが充填された槽内にインクジェットヘッドを入れ、所定時間槽内に放置する。その後、インクジェットヘッドを槽外に取り出し、バイパス管15cの解放端を封止材20bにより封止し、振動室内に所定濃度以上のHMDSを入れたまま、振動室を外気から遮断する。
【0073】
このようなバイパス管を設けることにより、インクジェットヘッド自体の面積を増やすことなく、バイパス管を設けないものに比べK値を50〜60倍程度を上げることができる。即ち、槽内から取り出した後の静電型アクチュエータの対向部材間の隙間のHMDSの濃度の低下を抑制することができる。
【0074】
また、HMDS付着工程後、隙間を封止する箇所も1カ所ですみ、封止する面積もバイパス管を設けないものに比べ小さいので、より迅速に封止を行えるという利点を有する。
【0075】
[その他の実施の形態]
なお、上述した実施形態では、一定の間隔で対向配置され相対変位可能な対向部材の両面に、即ち、共通電極として機能する振動板の底面と、振動板に対向する個別電極の表面に疎水膜を形成する例について述べたが、いずれか一方の面のみに形成しても、対向部材同士が貼り付いたままの状態(スティッキング状態)に陥ることを防止する効果が得られる。例えば、個別電極が形成されている基板の表面に疎水膜を形成した後、その基板に振動板が形成された基板を接合するようにすれば、対向部材の一方の面のみに疎水膜を形成した静電型アクチュエータを得ることができる。このような方法を用いてインクジェットヘッドを製造すれば、製造工程中にインク流路表面に疎水膜は形成されないので、RCA洗浄(アンモニア、過酸化水素水の混合液を用いた洗浄)等を行ってインク流路表面の疎水膜を除去する後処理は不要となる。
【0076】
更に、上述の実施形態では、対向部材間に気密封止される化合物としてHMDSを例にとって説明したが、これに限らず、疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物であれば本発明に適用可能である。この有機珪素化合物は、例えば、式R3−Si−X、もしくは式R3−SiNHSi− R3(Rはアルキル基、Xはハロゲンもしくはアミノ基を示す)で表される化合物であり、HMDSの他に例えば、ヘキサエチルジシラザン((C2H5)3SiNHSi(C2H5)3)、トリメチルクロロシラン((CH3)3SiCl)、トリエチルクロロシラン((C2H5)3SiCl)、トリメチルアミノシラン((CH3)3SiNH2)、トリエチルアミノシラン((C2H5)3SiNH2)等が含まれる。また、例えば、ジメチルジクロロシラン((CH3)2SiCl2)等の式R2−Si−X(Rはアルキル基、Xはハロゲンもしくはアミノ基を示す)で表される有機珪素化合物を本発明に適用してもよい。
【0077】
また、前述したインクジェットヘッド1は、インク液滴を基板の上面に設けたインクノズルから吐出させるフェイスインクジェットタイプであるが、基板の端部に設けたインクノズルから吐出させるエッジインクジェットタイプにも本発明のインクジェットヘッドを適用できる。
【0078】
また、上記の例では、インクジェットヘッドに対して本発明を適用した例であるが、本発明はインクジェットヘッド以外の静電型アクチュエータ、例えば、例えば、特開平7−54259号公報に開示されているようなマイクロメカニカル装置、静電型アクチュエータを用いた表示装置、マイクロポンプ等に対しても同様に適用できる。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の静電型アクチュエータにおいては、静電気力により相対変位する対向部材の対向表面に、例えばHMDS等の、疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物からなる疎水膜を形成した構成を採用している。これら有機珪素化合物はPFDA等に比べて分子が小さく、しかも形成された疎水膜の耐久性が高く、膜安定性も高い。従って、本発明によれば、対向部材の間隔が狭い静電型アクチュエータに対しても均一でばらつきの無い疎水膜を形成できる。また、耐久性および動作安定性の高い静電型アクチュエータを実現することができる。
【0080】
また、本発明の静電アクチェータの製造方法では、相対変位可能な対向部材の対向表面に、例えばHMDS等の、疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物を用いて疎水膜を形成した後、各対向部材の対向表面の隙間における有機珪素化合物の濃度を予め定められた値以上の状態で、当該隙間を気密封止する。この方法によって、耐久性に優れた有機珪素化合物からなる疎水膜を短時間で得ることができる。また、疎水膜を形成した後、所定期間大気中に放置した後隙間を封止しても耐久性を向上することができる。
【0081】
さらに、静電型アクチュエータとしてのインクジェットヘッドに対して有機珪素化合物の疎水膜を形成するする場合には、次のような利点もある。有機珪素化合物による疎水膜の形成は、インクジェットヘッドを構成しているシリコン基板、シリコン製のノズルプレート、ガラス基板を相互に組み立てた後、換言すると、一定のギャップで対向電極を配置した方が好ましい場合がある。この理由は、高温下で行われる陽極接合での疎水膜の分解防止と陽極接合強度を確保するためである。しかし、各部材を接合した後に疎水膜を形成すると、シリコン基板はインク流路も兼ねているので、インク流路にも疎水膜が形成されて疎水性が付与されしまい、気泡の排出性が悪化する等の問題を生ずる。しかしながら、HMDS等の有機珪素化合物は、封止剤による気密封止後にRCA洗浄等を行うことにより簡単にインク流路表面から除去することが可能であり、気泡の排出性悪化等の問題が併発することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの概略縦断面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【図4】図1のインクジェットヘッドの一部を示す概略横断面図である。
【図5】図1のインクジェットヘッドの製造工程を示す概略フローチャートである。
【図6】形成されたHMDSの疎水層を示す模式図である。
【図7】疎水膜を形成した直後にインクジェットヘッドを外部に放置した場合における放置時間と疎水膜の耐久性の相関関係のグラフである。
【図8】図7の右下がり領域に含まれる放置時間内で隙間を気密封止したときに得られる隙間内のHMDS濃度と疎水膜の耐久性の相関関係のグラフである。
【図9】図1のインクジェットヘッドの製造工程の他の実施例を示す概略フローチャートである。
【図10】図1に示したインクジェットヘッドの対向部材間の隙間の封止部分を示す平面図である。
【図11】本発明の他の実施例のインクジェットヘッドの隙間の封止部分を示す平面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 ノズルプレート
3 キャビティープレート
4 ガラス基板
5 振動板(共通電極)
6 インク室
8 インク供給口
10 インクリザーバ
15 隙間
17 個別電極
18 セグメント電極部
20 封止材
25 電圧印加装置
26 共通電極端子
Claims (12)
- 一定の間隔で電極と対向配置され、相対変位可能な振動板と、
_前記電極と前記振動板との間に静電気力を発生させて前記振動板を相対変位させる駆動手段と、
_前記振動板の相対変位によって容積が変動するインク室と、
_前記インク室に連通しているインクノズルとを備え、
_前記駆動手段は、前記振動板のそれぞれに形成した電極と、これらの電極の間に電気パルスを印加する電圧印加手段とを備え、前記電気パルスの印加に応じて前記インクノズルからインク液滴が吐出されるインクジェットヘッドであって、
_前記電極または前記振動板のうちの少なくとも一方の部材における他方の部材との対向表面には疎水膜が形成されており、前記疎水膜は疎水基を有し、かつ水酸基と反応可能な有機珪素化合物から形成されており、
_前記有機珪素化合物は、ヘキサエチルジシラザン((C 2 H 5 ) 3 SiNHSi(C 2 H 5 ) 3 )、トリメチルクロロシラン((CH 3 ) 3 SiCl)、トリエチルクロロシラン((C 2 H 5 ) 3 SiCl)、トリメチルアミノシラン((CH 3 ) 3 SiNH 2 )、トリエチルアミノシラン((C 2 H 5 ) 3 SiNH 2 )、ジメチルジクロロシラン((CH 3 ) 2 SiCl 2 )のいずれかであることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、
前記対向表面に前記有機珪素化合物を用いて前記疎水膜を形成する付着工程と、
各対向表面の隙間を気密封止する封止工程とを有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 請求項2において、各対向表面の隙間における前記有機珪素化合物の濃度を0.3%以上に保持したまま、当該隙間を気密封止する封止工程を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項3において、前記封止工程の気密封止時における前記隙間内の前記有機珪素化合物の濃度が0.8%以上であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項2乃至4のいずれかにおいて、前記封止工程は、常温および常圧で行うことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項2乃至4のいずれかにおいて、前記付着工程では、常圧中で前記有機珪素化合物を気化させた雰囲気中に当該インクジェットヘッドを放置し、前記封止工程では、前記雰囲気中で前記隙間を気密封止することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項2において、更に、前記付着工程後の疎水膜を安定化させる後処理工程を含み、当該後処理工程は、前記疎水膜に水分を付与する水分付与工程、前記疎水膜を所定の時間に渡って放置する放置工程のうちの少なくとも一つの工程を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項7において、前記水分付与工程は、前記付着工程の終了前から開始することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項2乃至8のいずれかにおいて、前記付着工程に先立って、前記対向表面間の水分を低減させる前処理工程を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項9において、前記前処理工程は真空加熱工程であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項9において、前記前処理工程は、前記対向表面の雰囲気を真空雰囲気および窒素雰囲気に交互に切り換える工程であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 請求項9において、前記前処理工程は、当該インクジェットヘッドを槽内に置き、該槽内に一定時間乾燥ガスを送りこむ工程であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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