JP4038563B2 - エレベータの速度制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータにおける速度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベータの速度制御装置には、図9に示すようなベクトル制御装置が使用される。図中、1はエレベータのモータ、2はモータ1の軸又はエレベータのかごと等速で動作する部分に取り付けられた速度パルス検出器、3はこの速度パルスからモータ速度ωnを検出する速度検出回路、4は速度指令Nと速度検出値ωnとの偏差をPI演算する速度制御アンプ。
【0003】
5はアンプ4からのトルク電流指令値Itを励磁電流設定値I0からモータの一次電流値I1を求める一次電流演算回路、6はItとI0の位相角φを求める位相演算部、7はItとI0及び回路11〜13で求めた2次時定数からすべり周波数ωsを求めるすべり周波数演算部、8はωsとωnを加算して角周波数ω0を出力する加算器。
【0004】
9はI1,φ,ω0からモータ1の一次電流Ia,Ib,Icを求める一次電流演算部、10はこの一次電流を電線指令値としてモータに一次電流Ia,Ib,Icを出力するインバータである。なお、11は電流検出器、12はA/D変換器、13は二次時定数演算部を示す。
【0005】
図1に上記エレベータの速度制御装置における速度検出回路3の構成を示す。この速度検出回路は、2種類のカウンタ31及び32と、カウンタ31の同期を制御する同期制御部33とカウンタ31又は32からのキャリー信号CYを通す論理和回路34と、この論理和回路からの信号を受けて同期制御部33にカウンタ停止信号を出力するカウンタ停止出力部35で構成されている。
【0006】
一方のカウンタ31は上記速度検出器2(図9)の出力周波数を4倍周した信号FP4をカウントする。このカウンタを「モータ回転パルスカウンタ」と以後説明する。速度パルス検出器2の出力周波数を4倍周した信号FP4の波形例を図2に示す。ここでは、速度パルス検出器2の出力のそれぞれ立ち上がりエッジから一定幅のパルスを生成した場合の波形を示している。
【0007】
他方のカウンタ32は、CPUクロック等の高速クロック信号(数MHz〜数十MHz)をカウントする。このカウンタ32を「クロックカウンタ」と以後説明する。
【0008】
図1の構成において、モータ回転パルスカウンタ31には初期値を書き込むことができるようにして、クロックカウンタ32にはカウンタ・リセット信号の入力により、カウンタの状態を初期値へ戻すことができるようにしている。
【0009】
そこで、速度パルス検出器からの信号を4倍周した信号FP4をトリガとして、クロックカウンタ32の動作を開始させ、モータ回転パルスカウンタ31がオーバフローしたところで、このカウンタのCY(キャリー)信号を出力させ、論理和回路34を介してカウンタ停止出力部35からカウンタ同期制御部33にカウンタ停止信号を出力してクロックカウンタ32を停止させる。
【0010】
こうすると、速度パルス検出器からの信号を4倍周した信号FP4のパルスが設定数発生する間の時間をクロックカウンタ32の値から知ることができることになる。この時間を検出して演算することによりエレベータの速度検出を行っている。
【0011】
モータ回転速度の計算式は(1)式で示される。
【0012】
【数1】
Figure 0004038563
【0013】
また、次回の検出のための、モータ回転パルスカウンタ31にセットするカウント値RNCTのセット値は(2)式のように計算して決定している。
【0014】
【数2】
Figure 0004038563
【0015】
(2)式によると、クロックカウンタ32が多くカウントしたときは、次回検出のためのモータ回転パルスカウンタ1にセットする値RNCTを小さくセットすることになる。実際には、制御装置の速度制御周期よりも短い時間間隔、つまりRMCTの値となるように、RNCTを選択して速度検出を行うことになる。
【0016】
ここで、モータ回転パルスカウンタにセットする値RNCTは、通常4の倍数に設定される。つまり最小値は4で、速度が増加するに伴い8,12,16…と増加させる演算を行う。これは、速度パルス検出器の特性によるもので、図3に示す、A−Eの区間や、B−Fの区間のように、同じ相の立ち上がりから次回の立ち上がりまでの区間で速度検出演算を行うと検出誤差が抑えられるが、A−Bの区間やA−Cの区間で検出すると検出誤差が大きくなるということによる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の速度検出方法を用いてエレベータの速度制御をした場合には、次のような問題を生ずる。
エレベータの動作開始時に、速度パルス検出器からのパルスが4個以上来ないと制御装置はエレベータが動作したことを認識できない。つまり、運転開始時の速度検出に時間遅れを生ずることとなり、図8に示すように、かごの振動(スタートショック)を生ずることとなる。
【0018】
これは、速度指令SP(=N)が立ち上がり始めても運転開始時の速度検出には遅れを生ずるため、速度検出SFB=(ω n は立ち上がらない。この場合、速度制御アンプは検出速度を指令に追従させようとPI出力を増加させるように制御する。そして、速度パルス検出器からのパルスが4個きた時点で第1回目の速度検出を完了する。このとき速度制御アンプのPI出力PIOUT(=I t が大きすぎることとなり、その結果、速度検出SFBの立ち上がりが急峻となり、振動を引き起こすことになる。
【0019】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、極低速領域における速度制御性能を高めることができるエレベータの速度制御装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モータ回転パルスカウンタが速度パルス検出器からの信号を4倍周した信号をセット数カウントする間クロックカウンタがクロックをカウントし、モータ回転パルスカウンタのセットカウント値とクロックカウンタのカウント値からエレベータの速度を検出する速度検出回路と、速度指令値と速度検出値との偏差をPI演算する速度制御アンプとを備えたエレベータの速度制御装置において、
速度検出値が定格速度に対し予め設定した一定値以下の場合に、モータ回転パルスカウンタにセットする値を4の整数倍から1の整数倍に切り替える制御を行うと共に、前記速度制御アンプのPゲインを下げる制御を行う。
【0021】
これにより極低速領域での速度検出精度が高まるので、低速運転時、スタート時、ストップ時の速度制御性が高まる。
【0022】
また、上記モータ回転パルスカウンタのカウント条件の変更に加えて同時に速度制御アンプのPゲインを変えて振動を抑える。
【0023】
また、上記速度制御アンプのPゲインを変えるとき、速度制御アンプに1次遅れフィルタを適用することで、Pゲイン切り替えに起因するアンプ出力の急変を抑える。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
本発明は、従来の技術の項で説明したエレベータの速度制御回路(図9)における速度検出回路(図1)を図4のフローで制御するものである。
【0025】
すなわち、図1の速度検出回路において、従来はモータ回転パルスカウンタ31にセットする値RNCTは、エレベータの動作開始時に最小値の4とし、速度が増加するに伴い8,12,16…と増加する演算をして制御しているが、本発明は、図4に示すように現在の速度検出値DSPが定格速度に対して予め設定した一定値以下(例えば2%以下)である場合に、モータ回転パルスカウンタ31にセットする値RNCTを通常4として制御していたのを1として制御する(101,102)。
【0026】
これにより、エレベータの動作開始時に、速度パルス検出器2からのパルスが4個以上こないと制御装置はエレベータが動作を開始したことを認識できなかったが、パルス1個で認識できるため、図4に示した速度制御アンプ4(図9)の出力PIOUTの振れが早期に抑えられて、図5に示すように、スタートショックを抑えることが可能となる。
【0027】
実施の形態2
実施の形態1のモータ回転パルスカウンタ31にセットする値RNCTの最小値を従来4として制御していたのを1として制御する方法に加えて、次の制御を行う。
【0028】
現在の速度検出値DSPが定格速度に対して予め設定した一定値以下(例えば2%以下)である場合に、速度制御アンプ4(図9)のP(比例)ゲインを下げる。速度制御アンプ4は速度指令N(=SP)と速度検出ωn(=DSP)の偏差からトルク指令を演算しており、Pゲインはこのアンプの増幅度ということになる。
【0029】
低速領域で速度制御アンプ4のPゲインを下げることにより、速度制御PIアンプの振れが小さくなり、図6に示すように、追従は遅れるもののスタートショックを更に抑えることが可能となる。
【0030】
なお、この例では、速度制御アンプのPゲインの切り替え点でアンプ出力PIOUTが急変する。この出力急変は、エレベータのかごを動かすトルクが急変することとなるためである。
【0031】
実施の形態3
実施の形態2に示した速度制御アンプ4のPゲインの切り替えにあたって、適用するPゲインにフィルタをかける。フィルタ処理は、通常の1次遅れフィルタを使用する。これにより、速度制御アンプ出力PIOUTの出力の急変がなくなるため、図7に示すように、従来のようにトルク急変(図8)もなくなり、エレベータとしてより安定した乗心地を実現することが可能となる。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。
【0033】
(1)エレベータの極低速領域において、速度パルス検出器からのパルスを計数するカウンタのカウント条件を変更しているので、速度検出精度が高まり、低速運転時、スタート時、ストップ時の速度制御性が向上する。
【0034】
(2)前記カウント条件を変更するレベルを調整することにより、速度や負荷条件の異なるエレベータにおいても適用することが可能となる。
【0035】
(3)前記速度パルス検出器からのパルスを計数するカウント条件の変更と併せて、速度制御PIアンプのPゲインを変更することにより、振動を抑えた制御が可能となる。
【0036】
(4)前記速度パルス検出器からのパルスを計数するカウント条件の変更と併せて、速度制御PIアンプのPゲインを変更する制御において、このPゲインの切り替えにあたり1時遅れフィルタを適用することで、Pゲインの切り替えに起因する振動を抑えた制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】速度検出回路の構成説明図。
【図2】4倍周波数形例を示す波形図。
【図3】速度パルス検出器の特性説明図。
【図4】実施の形態1の制御説明図。
【図5】実施の形態1の制御特性説明図。
【図6】実施の形態2の制御特性説明図。
【図7】実施の形態3の制御特性説明図。
【図8】従来例の制御特性説明図。
【図9】エレベータの速度制御装置の回路構成図。
【符号の説明】
1…エレベータのモータ
2…速度パルス検出器
3…速度検出回路
4…速度制御アンプ
5…一次電流値演算部
6…位相演算部
7…すべり周波数演算部
9…一次電流演算部
10…インバータ
11…電流検出器
12…A/D変換器
13…二次時定数演算部
31…モータ回転パルスカウンタ
32…クロックカウンタ
34…カウンタ停止出力部
35…カウンタ同期制御部
N,SP…速度指令
0…励磁電流
t…トルク電流指令
1…一次電流値
a,Ib,Ic…一次電流
φ…位相角
ωn,SFB…速度検出値
ω0…角周波数
ωs…すべり周波数
τ2…二次時定数
CY…キャリー信号
DSP…モータ回転速度
KNP…変換係数
RNCT…モータ回転パルスカウンタにセットするカウント値
RMCT…クロックカウンタのカウント値

Claims (2)

  1. モータ回転パルスカウンタが速度パルス検出器からの信号を4倍周した信号をセット数カウントする間クロックカウンタがクロックをカウントし、モータ回転パルスカウンタのセットカウント値とクロックカウンタのカウント値からエレベータの速度を検出する速度検出回路と、速度指令値と速度検出値との偏差をPI演算する速度制御アンプとを備えたエレベータの速度制御装置において、
    速度検出値が定格速度に対し予め設定した一定値以下の場合に、モータ回転パルスカウンタにセットする値を4の整数倍から1の整数倍に切り替える制御を行うと共に、前記速度制御アンプのPゲインを下げる制御を行うことを特徴とするエレベータの速度制御装置。
  2. 速度制御アンプのPゲインの切り替えにあたって、適用するPゲインに1次遅れフィルタを使用することを特徴とする請求項1記載のエレベータの速度制御装置。
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