JP4037437B2 - 熱成形用シートの成形方法および成形装置 - Google Patents

熱成形用シートの成形方法および成形装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4037437B2
JP4037437B2 JP2006131561A JP2006131561A JP4037437B2 JP 4037437 B2 JP4037437 B2 JP 4037437B2 JP 2006131561 A JP2006131561 A JP 2006131561A JP 2006131561 A JP2006131561 A JP 2006131561A JP 4037437 B2 JP4037437 B2 JP 4037437B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mold
sheet
frame
convex
clamp
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006131561A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006341595A5 (ja
JP2006341595A (ja
Inventor
栄嗣 澤田
哲 大屋
宏介 新居
浩一 工藤
啓介 工藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd filed Critical Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Priority to JP2006131561A priority Critical patent/JP4037437B2/ja
Publication of JP2006341595A publication Critical patent/JP2006341595A/ja
Publication of JP2006341595A5 publication Critical patent/JP2006341595A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4037437B2 publication Critical patent/JP4037437B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)
  • Blow-Moulding Or Thermoforming Of Plastics Or The Like (AREA)

Description

本発明は、装飾層を有する積層シート、例えば、自動車関連部材、建築関連部材、家電品等に用いられる外層塗装が不要なシートとして有用な、装飾鮮鋭性に優れた成形用積層シートの成形方法および成形装置に関する。特に、金属調あるいは、印刷調の意匠を有する成形用積層シートの成形方法および成形装置に関する。
一般に、着色された樹脂成形体を製造する場合、樹脂自体に顔料を練り込み、着色して射出成形等により成形する方法のほか、成形体にスプレー塗装などを施す方法がある。例えば、金属調の意匠が要求される場合は、金属顔料の練り込みの困難さ、顔料流れ跡が目立ちやすいなどの理由で、着色法よりも塗装法が採用されることが多い。塗装法の場合、塗膜を焼き付けて高分子成分を架橋させれば、表面保護の効果も期待できる。また、近年は、揮発性有機溶剤の排出に対する作業環境保護や外部環境保護の観点から、揮発性有機溶剤を用いた塗料の代わりに水系塗料や粉体塗料を使用する等の無溶剤化も図られている。しかしながら、無溶剤化された塗装法による金属調の意匠の表現は今なお困難である。
一方、成形体表面に印刷等の複雑な意匠を施す方法については、着色法や塗装法では対応できない。
これに対して、成形性支持樹脂層を積層した着色シートを射出成形時に樹脂成形体と一体化して成形する方法が知られている。この方法によれば、無溶剤で、金属調あるいは印刷調の意匠を有する樹脂成形部材を製造することが可能である。
従来、熱成形用シートの成形方法は、熱成形用シートを十分熱可塑化させたのちにシートと金型を真空状態として賦形する真空成形法や、空気圧でシートを金型に押し付けて賦形する圧空成形法、凹形状金型と凸形状金型の間で挟み込んで賦形するプレス成形法(マッチモールド成形法)等がある。前記プレス成形法は、力学的賦形法であるため型再現性が良好であるが、成形時に金型内にシートが引き込まれるため皺が発生し易く、また、シートの伸びが不均一であるため得られる成形体が偏肉するという課題があった。
このような、熱成形用シートの過剰な伸びを防止し、シート厚みを保ち皺等を軽減する目的で、例えば、上下のポイントクランプにて、それぞれ複数からなる雌雄型の個々の型の境界部分で、可塑化させた熱可塑性発泡樹脂シートを最小限に挟圧してクランプした後、雌雄型を閉じて成形を行う方法(例えば特許文献1参照)や、樹脂シートの周縁部を、該樹脂シートの厚みにより少し広い間隔をもって上下の押さえ板で挟み、その後、前記樹脂シートの端部をシートクランパから開放し、プラグを下降させて前記樹脂シートの周縁部を上下の押さえ板間で滑らせながら前記樹脂シートを押し下げ、次いで、前記上下の押さえ板で樹脂シートの周縁部を固定し、上下の押さえ板を下降させた後、真空及び/又は圧空成形を行う方法(例えば特許文献2参照)等が知られている。
これらの方法はいずれも、熱成形用シートを十分に可塑化あるいは軟化させた後に成形を行う場合に有効な方法である。ここでいう「十分に可塑化あるいは軟化」とは、具体的には、保持した熱成形用シートがドローダウンする程度まで加熱を行った後の状態を示し、少なくとも、熱成形用シートに使用する樹脂のガラス転移温度プラス20℃以上の熱を十分加えた後の状態を表す。
しかし上記方法は、高温を加えることの出来ない成形シートには適用できない。例えば、輝度の高い金属調の意匠を有するシートとして、金属薄膜細片を結着樹脂ワニス中に分散したインキ皮膜を有する、熱成形時の展延性は優れる積層シートが知られているが(例えば特許文献3参照)、該シートで使用している金属薄膜細片インキは、高熱により光沢が失われてしまう。また、印刷調の意匠を有する積層シートは、印刷層に顔料を使用するため、高温により退色等が生じ、得られる成形体に色むらが生じたり、変色したりすることがある。また、複雑な意匠については、熱成形用シートの過度の伸びにより、絵柄が変形してしまうといった問題もある。
上記方法において低温、例えば熱成形用シートに使用する樹脂のTg付近で成形を行うと、意匠性は保たれるが、熱成形が困難となる。例えば特許文献1の方法では、部分クランプとクランプされていない部分とで過度の力がかかり、シートが破れたり、シートの引き込みにより得られる成形体に皺が入る場合がある。また、特許文献2の方法ではシートが完全に保持されていないので金型に追随せず型再現性に劣り、(ブリッジと呼ばれる)皺発生による不良が発生し易く、所望の形状の成形体が得られない。
特開平06−226834号公報 特開平10−166436号公報 特開2002−46230号公報
本発明は、意匠性に影響を及ぼさないような低温での成形が可能であり、且つ、皺等の発生もない成形体を得ることを課題とする。
本発明者らは、意匠性を保ちつつ熱成形性に優れた成形体を得る方法として、熱成形用シートに使用している熱可塑性樹脂のガラス転移温度(ここで言うガラス転移温度とは、JIS K7244−1法に準拠して測定される動的粘弾性測定を用いて、周波数1Hz、測定開始温度0℃、昇温速度3℃/分の測定条件で測定した力学的減衰が、極大値を示すときの温度とする。以下Tgと略す)に近い温度、具体的には、前記熱成形用シートの金型成形すべき部分を含む一部を、前記熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度(Tg(A))に対し、(Tg(A)−30)℃〜(Tg(A)+10)℃の温度範囲内で加熱可塑化した後(この状態での熱成形用シートは、部分的に可塑化されているが流動はしない状態、粘弾性的には貯蔵弾性率がやや低下し始めた転移域からゴム域にかかるまでの状態である。)、前記金型成形すべき部分の周囲全周を一対の枠状クランプを用いて両面から挟持固定した状態で、一方の金型の少なくとも一部を前記枠状クランプの内側にて前記加熱可塑化した部分に押し当てて前記一方の金型と前記枠状クランプとの間で前記加熱可塑化した部分を伸張させ、しかるのち、他方の金型を前記加熱可塑化した部分に接触させ、前記一方の金型と前記他方の金型とにより前記加熱可塑化した部分を挟み込んで成形することで、上記課題を解決できることを見いだした。
即ち本発明は、熱可塑性樹脂層(A)を1層もしくは複数層と、装飾層(B)とを積層した熱成形用シートを、一対の金型に挟み熱成形する方法であって、
JIS K7244−1法に準拠し、周波数1Hz、測定開始温度0℃、昇温速度3℃/分の測定条件にて動的粘弾性を測定したときの、力学的減衰が極大値を示すときの温度をガラス転移温度(Tg)とした場合、
前記熱成形用シートの金型成形すべき部分を含む一部を、前記熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度(Tg(A))(但し熱成形用シートが前記熱可塑性樹脂層(A)を複数層有する場合は、複数ある熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度のうち最も高い温度をTg(A)とする)に対し、(Tg(A)−30)℃〜(Tg(A)+10)℃の温度範囲内で加熱可塑化した後、
前記熱成形用シートの前記金型成形すべき部分の周囲全周を、前記熱成形用シートの両面から、一対の枠状クランプを用いて挟持固定し、
前記加熱可塑化した部分の片方の面に一方の金型の一部を押し当てることにより、前記一方の金型と前記枠状クランプとの間で前記加熱可塑化した部分を伸張させ、
しかるのち、前記一方の金型が当接する前記加熱可塑化した部分の面とは逆方向から、他方の金型を前記加熱可塑化した部分に接触させ、
前記一方の金型と前記他方の金型とにより前記加熱可塑化した部分を挟み込んで成形する熱成形用シートの成形方法を提供する。
また、本発明は、JIS K7244−1法に準拠し、周波数1Hz、測定開始温度0℃、昇温速度3℃/分の測定条件にて動的粘弾性を測定したときの、力学的減衰が極大値を示すときの温度をガラス転移温度(Tg)とした場合、
熱可塑性樹脂層(A)を1層もしくは複数層と装飾層(B)とを積層した熱成形用シートの金型成形すべき部分を含む一部を、前記熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度(Tg(A))(但し熱成形用シートが前記熱可塑性樹脂層(A)を複数層有する場合は、複数ある熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度のうち最も高い温度をTg(A)とする)に対し、(Tg(A)−30)℃〜(Tg(A)+10)℃の温度範囲内で加熱可塑化した後、前記熱成形用シートの前記金型成形すべき部分の両面に一対の金型を接触させて成形する装置であり、
熱成形用シートの金型成形すべき部分の周囲全周を挟持固定する枠状クランプを各金型の周囲に具備し、前記枠状クランプは前記金型に対して相対的に移動自在である熱成形用シートの成形装置を提供する。
本発明の成形方法によれば、熱成形用シートを、熱可塑性樹脂のTgの、(Tg(A)−30)℃〜(Tg(A)+10)℃の温度範囲内で加熱可塑化したのちに、熱成形用シートの金型成形すべき部分の周囲全周を枠状クランプで挟持固定するので、該シートを強力に固定した状態で、前記枠状クランプの内側の熱成形用シートに金型を押し当てることができる。これにより、成形直前の該熱成形用シートの張力を適正化(均一化)することができ、一対の金型内へのシート引き込みによる皺の発生および不均一な展延による意匠性の低下を抑制することができる。熱成形用シートに使用する熱可塑性樹脂のTgを適宜選択することで成形時の温度をコントロールできるので、装飾層に使用する顔料やインキの耐熱性等に応じた成形温度を設定することができる。枠状クランプは可動であるので、枠状クランプによる熱成形用シートの挟持固定を加熱可塑化後に行うことにより、シートの張力を適正化することができる。
本発明の装置は低温成形が可能であるので、意匠性が保たれた成形体を得ることができる。
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1および図2は、本発明の成形方法および成形装置の第1形態例を説明する模式的断面図である。図1と図2では成形方法が異なるが、同一の成形装置を用いている。
図1および図2において符号1は熱成形用シートを表す。本発明で用いられる成形装置は、一方のマッチモールド成形用金型としての凸型10および凹型20と、それぞれの金型10,20が固定される固定板13,23と、熱成形用シート1の金型成形すべき部分2の周囲全周を両面から挟持固定(クランプ)する一対の枠状クランプ14,24と、枠状クランプを金型に対して駆動する駆動手段としてのシリンダー16,26を備える。
図4に示すように、凸型10は、熱成形用シート1に接触して成形体の凹部側の形状を成形する凸型本体11と、凸型本体11を収容するボックス12を備える。凸型本体11の裏面とボックス12の底面との間には、間隙を埋めるためブロック12a(図1および図2参照)が挿入されており、ボックス12は固定板13に固定されている。凸型本体11は、外周部に設けられた水平面11aと、凸型本体11の中央部に設けられた天面11cと、水平面11aおよび天面11cの間をつなぐ斜面11bとを有し、斜面11bおよび天面11cは、水平面11aより高い位置にある。この凸型10には、金型の温度を調節するため、内部に水や油等の媒体の流路(図示せず)が設けてあり、金型温度調節機と接続することができるが、金型の温度調節方法としては特に限定されず、前記手法以外でも構わない。凸型10の水平面11aと斜面11bの接合部には、必要に応じて、エアー抜き穴や真空孔(不図示)を設けてもよい。これらの孔は、成形体に跡が残らないよう、なるべく小さいほうが好ましい。孔の直径は、具体的には、直径0.3〜1.2mmの範囲内が好ましく、0.3〜0.6mmの範囲がより好ましい。
凸型10の周囲には、枠状クランプ14が設けられている。枠状クランプ14の両側部には一対の張出部14aが外側に突設されており、この張出部14aには、シリンダー16の駆動軸(ロッド)16aの先端が固定されている。これにより、枠状クランプ14は凸型10に対して相対的に移動自在に構成されている。図4(a)は、枠状クランプ14を凸型10に対して下げた状態を、図4(b)は枠状クランプ14を凸型10に対して上げた状態を示す。枠状クランプ14を駆動するシリンダー16は、凸型10のボックス12と共通の固定板13に固定されている。このため、固定板13を不図示の駆動手段で駆動させることにより、熱成形用シート1に対して凸型10と枠状クランプ14との両方を同時に近づけ、また遠ざけることができる。
図5に示すように、凹型20は、熱成形用シート1に接触して成形体の凸部側の形状を成形する凹型本体21と、凹型本体21を収容するボックス22を備える。凹型本体21の裏面とボックス22の底面との間には、間隙を埋めるためブロック22a(図1および図2参照)が挿入されており、ボックス22は固定板23に固定されている。凹型本体21は、外周部に設けられた水平面21aと、凹型本体21の中央部に設けられた底面21cと、水平面21aおよび底面21cの間をつなぐ斜面21bとを有し、斜面21bおよび底面21cは、水平面21aより低い位置にある。この凹型20には、金型の温度を調節するため、内部に水や油等の媒体の流路(図示せず)が設けてあり、金型温度調節機と接続することができるが、金型の温度調節方法としては特に限定されず、前記手法以外でも構わない。
凹型20の斜面21bと底面21cの接合部には、必要に応じて、エアー抜き穴や真空孔(不図示)を設けてもよい。これらの孔は、成形体に跡が残らないよう、なるべく小さいほうが好ましい。孔の直径は、具体的には、直径0.3〜1.2mmの範囲内が好ましく、0.3〜0.6mmの範囲がより好ましい。
凹型20の周囲には、枠状クランプ24が設けられている。枠状クランプ24の両側部には一対の張出部24aが外側に突設されており、この張出部24aには、シリンダー26の駆動軸(ロッド)26aの先端が固定されている。これにより、枠状クランプ24は凹型20に対して相対的に移動自在に構成されている。図5(a)は、枠状クランプ24を凹型20に対して下げた状態を、図5(b)は枠状クランプ24を凹型20に対して上げた状態を示す。枠状クランプ24を駆動するシリンダー26は、凹型20のボックス22と共通の固定板23に固定されている。このため、固定板23を不図示の駆動手段で駆動させることにより、熱成形用シート1に対して凹型20と枠状クランプ24との両方を同時に近づけ、また遠ざけることができる。
マッチモールド成形においては、凸型10の表面形状と凹型20の表面形状を同形状とする。ただし、凸型10と凹型20を合わせた際の両金型間のクリアランスは、使用する熱成形用シート1の厚みおよび熱成形時の展開率を考慮して適切に調整する必要がある。具体的には、凸型10と凹型20とのクリアランスは、実際に得られる三次元成形体の厚み分布に対して−50〜+30%の範囲内にすることが好ましく、より好ましくは、−30〜+10%の範囲内で設計すると良い。金型間のクリアランスが大きすぎると、熱成形時に両金型でシートを挟み込むことができなくなり、得られる成形体の型再現性が悪くなると共に、冷却ムラにより該成形体の変形が大きくなる。逆に、前記クリアランスが小さすぎると成形体に圧迫痕及び真空孔痕が残りやすくなる。特に、熱成形用シート1として意匠性を有する加飾シートを用いる場合、前記クリアランスを適切にすることで、成形時の意匠性の変化が小さくなり、目的とする意匠性を有する成形体が得やすくなる。
また、金型を加温して用いる場合は、金型の熱膨張率を考慮して金型設計(特に、クリアランス調整)を行う必要がある。
本発明において、金型10,20の具体的な形状や寸法は、成形体の形状や寸法によって適宜設計が可能であり、また熱成形用シート1の熱成形性に依存するため、特に限定されるものではないが、十分な型再現性を有する三次元成形体を得るためには、金型のコーナー部のR値は0.2mm以上、展開率は500%以内、最大絞り比(最大高さ/底部の最低長さ)が1.5以下、最大傾斜角度87°以内が好ましい。さらに好ましくは、コーナー部のR値が0.5mm以上、展開率が350%以内、最大絞り比が1.0以下、最大傾斜角度が85°以内である。
本発明は、熱成形用シート1を成形するための凸型10および凹型20に加えて、可動式の枠状クランプ14,24を併用することにより、マッチモールド成形特有の問題である成形皺の発生(これは金型内へのシート引き込みにより発生する。)を効果的に抑制することができる。また、低温成形時のシート弛みによる成形皺の発生も同時に抑制することができる。
可動式枠状クランプ14,24は、可動式ゆえに加熱後にシート1を挟持固定することができるため、熱成形用シート1を強力に固定することが可能で、金型10,20内へのシート1の引き込みによる成形皺を著しく抑制することができる。汎用の連続成形機では、加熱時のシート固定方法として枠状クランプを用いる場合は少なく、また、枠状クランプを使用する場合であっても、加熱前にシートをクランプするため、シート固定力が不十分であった。また、熱成形用シート1は、一般的に、熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度以下では熱膨張によりシートが弛みやすく、この弛みにより成形皺が発生するという問題があるが、本発明の特徴的要素である可動式枠状クランプ14,24を用いれば、加熱後の熱成形用シート1を枠状クランプ14,24で保持したまま凸型10または凹型20に押し当てることにより、成形前(凹型20と凸型10の勘合前)の皺を除去することが出来る。
可動式枠状クランプ14,24の構造としては、加熱後にシート1を固定でき、かつ、可動時に凸型10及び凹型20とぶつからない形状が好ましい。具体的には、可動式枠状クランプ14,24とボックス12,22(ボックスが無い場合、凸型10及び凹型20)との距離は、シートの性状および厚みに依存するため限定されないが、成形前の皺を効果的に抑制できることから、シート厚みより大きく20mm以下の範囲内が好ましい。
枠状クランプ14,24は、熱成形用シート1を挟持固定するシート固定部15,25の面上に、例えば図7に示すように、互いに嵌合する凸部31と凹部32との組み合わせを有することが好ましい。これにより、熱成形用シート1を両枠状クランプ14,24間に挟持固定したときに、一方の枠状クランプに突設された凸部31を他方の枠状クランプに凹設された凹部32に嵌入させ、熱成形用シート1をより強力に固定できる。これら凸部31及び凹部32の組み合わせ方としては、凸型側枠状クランプ14に凸部31、凹型側枠状クランプ24に凹部32を設けるのでもよく、逆に、凸型側枠状クランプ14に凹部32、凹型側枠状クランプ24に凸部31を設けるのでもよく、これらを併用してもよい。
凸部31および凹部32の形状は特に限定されるものではなく、凸部31としては、ピン状、リブ状、鋸歯状、山形、三角形状、柱状など各種形状を採用可能である。また凹部32としては溝、底を有する穴、貫通穴など各種形状を採用可能である。クランプ時、凸部31と凹部32で熱成形用シート1を挟み込む形態でもよいし、熱成形用シート1を食い破って穴を開ける形態でもよい。
枠状クランプ14,24の可動方向は、特に限定されないが、金型10,20の水平面11a,21aに対して垂直な上下方向であることが、シート1の張りを金型に接触させる圧力によって調節することが可能になり、成形皺を効果的に抑制できる上、コスト的に有利であることから好ましい。また、枠状クランプ14,24を可動させる動力についても、特に限定されないが、空気圧または油圧を用いたシリンダー16,26を用いる方式が簡便であることから好ましく、とりわけ空気圧式シリンダー(以下、エアーシリンダーと示す。)のほうが実行速度が速いためより好ましい。また、シリンダーを用いる場合、シートのクランプ力が均一となることから、シリンダーを2個以上使用することが好ましく、4個以上の使用がより好ましい。
枠状クランプ14,24を用いて成形用シートを固定するクランプ力は、熱成形用シート1の性状および枠状クランプの形状によるため限定されないが、マッチモールド成形時の金型内へのシート引き込みによる皺不良を良好に抑制できることから5kgf{約50N}以上が好ましい。また、クランプ応力としては0.05kgf/cm{約5kPa}以上が好ましい。
本発明の金型10,20及び可動式枠状クランプ14,24の材質は、特に限定されず、従来マッチモールド成形用金型に使用される各種金属等を用いることができる。具体的には、アルミニウム系鋼材、鉄系鋼材、熱硬化樹脂等が挙げられ、特に、金型の材料としては硬質アルミニウム鋼材が好ましい。また、必要に応じて、研磨処理、フッ素樹脂処理、アルマイト処理、窒化処理、硼化処理、メッキ処理等の表面処理を施すこともできる。
本発明に係るマッチモールド成形用金型及び成形方法は、シート加熱装置、下型可動装置、上型可動装置が具備されている各種成形機で用いることができるが、操作性の観点から、真空成形機(プラグ機構付き)若しくは真空圧空成形機が好ましい。シート加熱装置としては、シート表面に加熱装置の痕が残らないことから、シートの片面若しくは両面からの間接加熱方式が好ましい。また、多様な成形方法が可能となることから、下型可動装置及び上型可動装置の少なくとも一方に真空機構が具備されていることが好ましい。また、真空機構を有する可動装置の一方の可動装置には、圧空機構が具備されていても良い。また、下型可動装置及び上型可動装置の駆動方式は特に限定されず、エアーシリンダー式、油圧シリンダー式、サーボモーター式等を用いることができる。ただし、下型と上型の型閉力は、熱成形用シート1の性状および金型形状に依存するが、通常は10kgf{約100N}以上必要であり、型再現性が良好となることから、100kgf以上{約1kN以上}であることがより好ましい。また、型閉応力としては、0.05kgf/cm{約5kPa}以上が好ましい。なお、ここで言う型閉力とは、凹型と凸型とを勘合する際の最大圧縮力を示す。具体的には、下型可動装置及び上型可動装置の最大推力の小さいほうから、凹型用及び凸型用の可動式枠状クランプの最大推力の大きいほうを差し引いた推力を示す。
すなわち、本発明の成形装置を用いれば、下型可動装置、上型可動装置、凹型用可動式枠状クランプ及び凸型用可動式枠状クランプの推力の調整により、シートのクランプ力、成形速度、型閉力を自在に選択することができる。例えば、可動式枠状クランプの推力を高くすると、シートのクランプ力が高く、成形速度が遅く、型閉力が低くなり、逆に、可動式枠状クランプの推力を低くすると、シートのクランプ力が低く、成形速度が速く、型閉力が高くなる。
本発明に係る成形方法としては、以下の(1)ないし(9)の手順によるマッチモールド成形を用いることが好ましい。
(1) 熱成形用シート1を成形機付属のクランプ(不図示)で固定する。
(2) ヒーター(不図示)を該シート1の上方および/または下方の位置へ移動させる。
(3) 該シート1を所定温度になるまで前記ヒーターで加熱する。
ここでいう所定温度とは、使用する熱成形用シートの意匠性が保たれる温度であることが好ましく、例えば、使用する熱成形用シートが、少なくとも熱可塑性樹脂層(A)と装飾層(B)とを有する熱成形用シートであり、前記熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度を(Tg(A))と表すとき、(Tg(A)−30)℃〜(Tg(A)+10)℃の温度範囲内であることが好ましい。また、シートの加熱部位は、少なくとも金型成形すべき部分であるが、一般には、シートの枠状クランプ部分まで均一に加熱することが好ましい。
(4) 前記ヒーターを成形機外に退避させる。
(4′) 加熱位置と成形位置が異なる場合は、加熱されたシートを金型位置まで移動させる。
(5) シート1の上側に配置した凹型20を下降させ、シート1の下側に配置した凸型10を上昇させる。
(6) 熱成形用シート1を両面から枠状クランプ14,24により挟持固定した後、凹型20の下降及び凸型10の上昇を利用して、そのまま凹型20と凸型10でシート1を挟み込むようにして三次元形状とする、
(7)凹型20と凸型10で該シート1を挟み込んだまま所定時間保持する。
(8)凹型20を上昇、凸型10を下降させ、三次元形状とした成形体を両金型10,20および両枠状クランプ14,24から離した後、該成形体をエアー等で所定時間冷却する。
(9)成形機付属のクランプを開放する。
(6)において、シートを挟持固定するときにシートが金型と接していないほうが、シート伸びが均等になりやすいため好ましい。
(2)〜(4)において、シリンダー16,26の上昇及び下降の動作を手動又は電磁弁の操作により枠状クランプ14,24の高さを調節し、作動時の枠状クランプ14,24とヒーターとの接触を回避することができる。
なお、上記手順(2)に代えて、該シート1を金型10,20間から退避させて、成形機外に設置したヒータ(不図示)の位置まで移動させても構わない。この場合、上記手順(4)に代えて、該シート1を成形機外から金型10,20間の位置に移動させる。
また、(8)において、シリンダー16の作動により離型速度が早くなり、成形体と凸型との離型性が劣る場合は、シリンダー16の作動を手動又は電磁弁操作により開放した上で凹型を下降させれば良い。
また、シート1上側に凸型10、シート1下側に凹型20を配置することも可能である。この場合、手順(5),(6)では凸型10を下降、凹型20を上昇させ、手順(8)では凸型10を上昇、凹型20を下降させる。
手順(6)において、可動式枠状クランプ14,24の形状選択および推力調整により、以下の2通りの成形法A,Bを選択することができる。いずれの成形法を適用することも可能であり、金型デザインやシート構成等を考慮して、より適正な方法を選択するのが望ましい。
(成形法A)
図1(a)に示すように、熱成形用シート1を両面から枠状クランプ14,24により挟持固定した後、図1(b)に示すように、凹型側枠状クランプ24の下降推力を凸型側枠状クランプ14の上昇推力より小さくすることにより、加熱後に可動式枠状クランプ14,24により固定された熱成形用シート1を、先に凹型20に押し当てる。すなわち、凹型20の水平面21aを熱成形用シート1の中央部に押し当て、熱成形用シート1の金型成形すべき部分2を凸型10側に突出させる。これにより、熱成形用シート1には、凹型20の水平面21aに接触した部分と、枠状クランプ14,24で挟持固定された部分との間で段差を生じさせてシート1の皺を伸ばすことができる。しかるのち、図1(c)に示すように、凸型10と凹型20とでシート1を挟み込んで三次元形状に成形する。
図1(b)において、凹型20の水平面21aと、凹型側枠状クランプ24がシート1を挟持固定する面25との間の高低差は、熱成形用シート1の性状および金型形状に依るため特に限定されないが、低温成形時のシート弛みを効果的に除去できることから2〜30mmの範囲内が好ましい。なお、前記高低差の符号は、凹型20の水平面21aが凹型側枠状クランプ24のクランプ面25より凸型10側に突出している場合を正とする。
この成形法Aによれば、装飾層を有する加飾シートを用いる場合、該装飾層が可視となる意匠面を凹型20側に向けることにより、装飾鮮鋭性が良好な成形体が得やすい。さらに、印刷柄を装飾層として有する加飾シートを用いて、得られる成形体を部分的に加飾する場合、図柄位置を合わせやすく、また、成形時の偏肉が起こりにくいため、図柄自体の不均一変形も少なくなる。
また、凹型20が下側、凸型10が上側であっても同様である。
(成形法B)
図2(a)に示すように、熱成形用シート1を両面から枠状クランプ14,24により挟持固定した後、図2(b)に示すように、凹型側枠状クランプ24の下降推力を凸型側枠状クランプ14の上昇推力より大きくすることにより、加熱後に可動式枠状クランプ14,24により固定された熱成形用シート1を、先に凸型10に押し当てる。すなわち、凸型10の天面11cを熱成形用シート1の中央部に押し当て、熱成形用シート1の金型成形すべき部分2を凹型20側に突出させる。これにより、熱成形用シート1には、凸型10の天面11cに接触した部分2aと、枠状クランプ14,24で挟持固定された部分との間2bで段差を生じさせてシート1の皺を伸ばすことができる。しかるのち、図2(c)に示すように、凸型10と凹型20とでシート1を挟み込んで三次元形状に成形する。
図2(b)において、凸型10の水平面11aと、凸型側枠状クランプ14がシート1を挟持固定する面15との間の高低差は、熱成形用シート1の性状および金型形状に依存するため特に限定されないが、低温成形時のシート弛みを効果的に除去できることから−30〜15mmの範囲内が好ましい。なお、前記高低差の符号は、凸型10の水平面11aが凸型側枠状クランプ14のクランプ面15より凹型20側に突出している場合を正とし、前記水平面11aが前記クランプ面15より低い位置にある場合を負とする。図2(b)に示す例では、凸型10の水平面11aと凸型側枠状クランプ14のクランプ面15とがほぼ同一面上にあり、前記高低差はほぼ0mmである。また、凸型側枠状クランプ14がシート1を挟持固定する面15との間の高低差を0mm未満とし、且つ、凸型に設けた真空孔から真空吸引することにより、型再現性がさらに良好となる場合がある。
この成形法Bによれば、凸型10の天面11cと枠状クランプ14,24との間でシート1は凸型10の斜面11bにも水平面11aにも接触させずに伸張させることができるので、成形体の勾配部(金型10,20の斜面11b,21bによって成形される部分)により多くの面積のシートを配分することができる。よって、展開率の高い部分や勾配の大きい部分を有するような形状の金型を用いる場合に、型再現性が良好な成形体が得やすい。
また、凹型20が下側、凸型10が上側であっても同様である。
次に、本発明の成形方法および成形装置の第2形態例を説明する。
図3は、本発明の成形方法の第2形態例を説明する模式的断面図である。図6は、図3で用いられる枠状クランプを設けた凹型を示す斜視図である。
本形態例では、凸型10および凸型側枠状クランプ14としては、上記第1形態例と同様に、図4に示すものを用いることができる。凹型側枠状クランプ24としては、図3および図6に示すように、枠状クランプ24の内周縁部にフランジ部27が延びており、該フランジ部27が凸型側枠状クランプ14の内周縁部よりも内側にある枠状クランプを用いる。この場合、凹型20Aとしては、凹型本体21の水平面21aの高さがフランジ部27の厚み以上に、ボックス22の端縁より突出しているものを用いる。凹型本体21の高さを調節する方法としては、凹型本体21の裏側に高さ調節用のプレート22bを挿入する方法があり、この方法によれば、図5の凹型20のボックス22内にプレート22bを追加するだけで図6の凹型20Aを構成することができる。
本形態例における枠状クランプ14,24は、第1形態例の成形装置で述べたのと同様に、熱成形用シート1を挟持固定するシート固定部15,25の面上に互いに嵌合する凸部31と凹部32との組み合わせ(図8,図9参照)を有することが好ましい。これにより、熱成形用シート1を両枠状クランプ14,24間に挟持固定したときに、一方の枠状クランプに突設された凸部31を他方の枠状クランプに凹設された凹部32に嵌入させ、熱成形用シート1をより強力に固定できる。これら凸部31及び凹部32の組み合わせ方としては、凸型側枠状クランプ14に凸部31、凹型側枠状クランプ24に凹部32を設けるのでもよく、凸型側枠状クランプ14に凹部32、凹型側枠状クランプ24に凸部31を設けるのでもよく、これらを併用してもよい。
本形態例においては、上述の成形法B(シートに対して先に凸型を押し当てる)と同様の方法によりシート1の成形ができる。すなわち、図3(a)に示すように、熱成形用シート1を両面から枠状クランプ14,24により挟持固定した後、図3(b)に示すように、凹型側枠状クランプ24のクランプ圧力を凸型側枠状クランプ14のクランプ圧力より大きくすることにより、加熱後に可動式枠状クランプ14,24により固定された熱成形用シート1を、先に凸型10に押し当てる。すなわち、凸型10の天面11cを熱成形用シート1の中央部に押し当て、熱成形用シート1の金型成形すべき部分2を凹型20A側に突出させる。これにより、熱成形用シート1には、凸型10の天面11cに接触した部分2aと、枠状クランプ14,24で挟持固定された部分との間2bで段差を生じさせて皺を伸ばすことができる。しかるのち、図3(c)に示すように、凸型10と凹型20Aとでシート1を挟み込んで三次元形状に成形する。さらに、図3(b)の段階において、加熱後に可動式枠状クランプ14,24により固定された熱成形用シート1を、先に凸型10に押し当てたとき、凹型側枠状クランプ24の内周縁部のフランジ部27と凸型10の外周縁部17(ここではボックス12の端縁)との間で熱成形用シート1を挟持固定(クランプ)し、さらに、凸型10の裾部(水平面11aと斜面11bの接合部)に設けた真空孔18(図3(b)参照)より、熱成形用シート1の加熱可塑化した部分を凸型10側から真空吸引する。
この構成によれば、凸型側の真空を効果的に使用することができるため、さらに型再現性良好な成形体が得やすい。真空吸引の際、凸型10の凸部とフランジ部27との間隔(図3(b)において水平方向の間隔)は、皺発生が抑制できるとともに、型再現性が更に良好となることから、5〜50mmが好ましい。また、フランジ部27の形状としては、凸型10の凸部とフランジ部27との間隔が均一である必要はなく、展開率が高い部分の間隔を意図的に長くしたり、ブリッジ不良が発生しやすい部分の間隔を意図的に短くしたりすれば、意匠保持性および型再現性を更に良好にすることができる。
意匠性を有する加飾シートを用いる場合、低温で成形するほど意匠性変化が少なく、装飾鮮鋭性の優れた成形体が得やすく、また、本発明によれば、比較的低温でも型再現性良好な成形体が得られることから、熱成形温度は、該シートの真空成形温度(該シートを真空成形で成形する際の最適な温度)よりも10℃以上低いことが好ましい。具体的には、意匠性を有するシートが、少なくとも熱可塑性樹脂層(A)と装飾層(B)とを有する熱成形用シートであるとき、熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度(Tg(A))が、(Tg(A)−30)℃を下限、(Tg(A)+10)℃を上限とする温度範囲内で成形すると、意匠性に影響がなく、例えば金属光沢性加飾シートの場合には高光沢性の成形体が得られ、顔料を使用した印刷加飾シートの場合には、色むらや変色のない成形体を得ることができる。さらに、成形体の部分加飾を目的とした印刷柄を装飾層として有する加飾シートの場合に図柄合わせしやすいことから好ましい。
ただし、ここで言うガラス転移温度(以下Tgと言う。)とは、JIS K7244−1法に準拠して測定される動的粘弾性測定(以下、DMAと示す。)を用いて、フィルム状又はシート状の試料片について、周波数1Hz、測定開始温度0℃、昇温速度3℃/分の測定条件で測定した力学的減衰(以下、tanδと示す。)が、極大値を示すときの温度(ピーク温度と言う)とする。
熱成形用シートが熱可塑性樹脂層(A)を複数層有する場合は、複数ある熱可塑性樹脂層(A)のTgのうち最も高い温度をTg(A)とする。また、複数層ある熱可塑性樹脂フィルム層(A)の少なくとも1層はTgを有する樹脂層が必須とする。従って、複数層ある熱可塑性樹脂層(A)のうちtanδが極大値を示さない層がある場合(PP等の結晶性樹脂)は、Tgを有する層のTgを上記温度範囲の基準とする。また熱成形温度は、(Tg(A)−25)℃を下限、(Tg(A)+5)℃を上限とすると、なお好ましい。
さらに具体的には、遠赤外線ヒーターを用いた場合、ヒーター温度で200〜500℃、間接加熱時間を5〜30秒とし、該シートがマッチモールド成形可能となる温度、例えば、DMAの貯蔵弾性率(E’)が10〜500MPaとなる温度にすることが好ましい。
一般に熱可塑性樹脂シートの成形温度は、熱可塑性樹脂の粘弾性および成形体の形状にもよるが、真空成形法の場合はDMAの貯蔵弾性率(E’)が50MPa以下となる温度、圧空成形法の場合はDMAの貯蔵弾性率(E’)が250MPa以下となる温度が目安であり、それ以下では成形は困難とされている。具体的には、前記貯蔵弾性率を50MPa以下にするためには、熱成形用シートを、該熱可塑性樹脂層のTgプラス20℃以上に加熱する必要がある。
一方、本発明の熱成形用シートの成形方法は、前記貯蔵弾性率が500MPa以下となる温度で成形が可能であり、具体的には、熱成形用シートを、該熱可塑性樹脂層(A)の(Tg(A))に対し(Tg(A)−30)℃以上に加熱することで、成形が可能である。
一般的に、熱可塑性樹脂シートを加熱すると、一次膨張、熱収縮、二次膨張(ドローダウン)の順の過程を経る場合が多い。真空成形法等の汎用の熱成形法では、熱収縮から二次膨張の温度範囲で金型に賦形するが、本発明の成形方法は一次膨張から熱収縮の温度範囲で賦形を行うことが特徴であり、意匠性に影響を及ぼさないような低温での成形を可能とする。
すなわち、本発明の課題の1つである皺は、前記特許文献1及び2で課題及び解決される皺とは異なる。即ち、前記の特許文献1および特許文献2で解決される成形時の皺発生は、二次膨張によるシート弛みに起因するものであるが、本発明で解決される皺は、一次膨張によるシート弛み、および、比較的低温下のため伸び難いシートが金型内に引き込まれることに起因するものであって、前記手法等の公知手法では解決できない。
また、金型温度は、熱成形用シート1の性状によるため特に限定されず、得られる成形体の外観、型再現性、成形収縮率および変形具合によって適宜調整すれば良い。例えば、0℃以上にTgを有する熱可塑性樹脂層を有する積層シートであれば、該層が接する側の金型温度を(Tg−50)℃〜(Tg−10)℃の範囲内とすることにより、型再現性が良好になるため好ましく、もう一方の金型との間に必要に応じて温度勾配を設けても良い。また、プレス成形終了後、得られた成形体をエアー等で冷却することが好ましい。具体的には、20〜200℃の範囲で、凸型と凹型とでシートを挟み込む時間(前記の工程(7)に該当する。)が10秒〜5分であれば良好に成形することができる。
装飾層を有する積層シートを使用する場合、どちらの面から金型に接触させるかは特に限定はないが、熱可塑性樹脂層(A)(装飾層(B)が可視となる意匠面の側)から金型に接触させると、装飾層の金属薄膜細片の配向が揃った状態を金型によって維持しやすいので、装飾鮮鋭性が良好な成形体が得やすい。また、後述の、熱可塑性樹脂層(A)が複数あり、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)と、装飾層(B)と、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)とがこの順に積層された積層シートである場合は、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)側から変形させると、装飾層(B)の変形がマイルドになり、意匠性保持効果が高いと考えられる。一方、型再現性の観点からは、Tg(A−M)を有する熱可塑性樹脂層側、即ち変形し難いほうから変形させたほうが良い場合もある。
そこで、金型デザインやシート構成等を考慮して、より適正な方法を選択するのが望ましい。
(熱成形用シート)
本発明では、熱成形用シートとして、樹脂等からなる単層シートを用いても、複数の層を積層してなる積層シートを用いてもよいが、意匠性を有する加飾シートであることが、本発明の効果を最も発揮でき好ましい。意匠性を付与する装飾層を構成する着色剤に特に限定はないが、本発明の成形方法を使用すると、熱に弱い着色剤も使用することができる。熱に弱い着色剤としては、例えば、金属蒸着膜、金属薄片や金属粒子を使用した金属インキ、酸化鉄等の無機顔料、アゾ系等の有機顔料、および、油溶性染料が挙げられる。
(装飾層)
装飾層(B)は、具体的には、インキ又は塗料を常法により熱可塑性樹脂層(A)に展着させて得る。金属調の意匠の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法又はメッキ法等により金属薄膜を形成させても良い。また後述の、熱可塑性樹脂層(A)が複数あり、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)と、装飾層(B)と、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)とがこの順に積層された積層シートを使用する場合は、意匠性の観点から、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)に展着させる方法が好ましい。
インキ又は塗料を熱可塑性樹脂フィルム層に展着させる方法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター、コンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を用いることができる。
装飾層が薄すぎると隠蔽性に劣り意匠性が損なわれる場合があり、厚すぎると熱成形時に色むらが発生しやすいことから、装飾層としてインキ又は塗料を用いる場合、該層の厚みは0.1〜5μmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmであり、金属薄膜を用いる場合、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μmである。また、該熱可塑性樹脂フィルム層と装飾層の密着性を制御する目的で、該熱可塑性樹脂フィルム表面にはコロナ処理やプライマー塗工等の表面処理を施しても良い。
(高輝性インキ)
金属調の意匠を付与する装飾層として、真空蒸着等による金属薄膜層などを用いることもできる。その場合、金属薄膜の成分としては、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、真鍮(Cu−Zn)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、ニッケルクロム(Ni−Cr)、ステンレス鋼(SUS)、クロム銅(Cr−Cu)、アルミニウムシリコン(Al−Si)等の金属が挙げられる。
本発明の成形方法および成形装置を用いれば、高展延部での金属薄膜層にひび割れによる輝度低下を著しく抑制できるが、高輝性インキからなる高輝性インキ層を用いたほうが前記の輝度低下が更に抑制できることから好ましい。ここで高輝性インキとは、金属薄膜細片を結着樹脂中に分散してなり、鏡面状金属光沢を有するインキである。該インキ中の不揮発分に対する金属薄膜細片の含有量は3〜60質量%の範囲内が好ましい。金属薄膜細片を使用した高輝性インキは、該インキを印刷または塗布した際に金属薄膜細片が被塗物表面に対して平行方向に配向する結果、従来の金属粉を使用したメタリックインキでは得られない、高輝度の鏡面状金属光沢が得られる。
(高輝性インキ中の金属薄膜細片)
前記高輝性インキに用いられる金属薄膜細片の金属としては、金属薄膜の成分として前記に例示した各種金属を好ましく用いることができる。該金属を薄膜にする方法としては、アルミニウムのように融点の低い金属の場合は蒸着を、アルミニウム、金、銀、銅など展性を有する金属の場合は箔を、融点が高く展性に乏しい金属の場合はスパッタリング等を挙げることができる。なかでも、蒸着金属薄膜から得た金属薄膜細片が好ましく用いられる。金属薄膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μmである。インキ中に分散させる金属薄膜細片の面方向の大きさは5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。金属薄膜細片の面方向の大きさが5μm未満の場合は、高輝性インキの塗膜の輝度が低下するほか、インキをグラビア方式あるいはスクリーン印刷方式で印刷または塗布する場合に、版の目詰まりの原因となる。
以下に、金属薄膜細片の作製方法を、特に好ましい蒸着法を用いた場合を例として説明する。金属を蒸着する支持体フィルムには、ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムなどを用いることができる。まず、支持体フィルム上に塗布等によって剥離層を設けた後、該剥離層上に所定の厚さになるよう金属を蒸着する。蒸着膜面には、酸化を防ぐためトップコート層を塗布する。剥離層およびトップコート層を形成するためのコーティング剤は、互いに同一のものを使用することができ、また、異なるものを使用することもできる。
前記剥離層または前記トップコート層に使用する樹脂は、特に限定されない。具体的には、例えば、ニトロセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール(EVA)樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化EVA樹脂、石油系樹脂などを挙げることができる。剥離層またはトップコート層に使用する溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が好ましく用いられる。
上記金属蒸着フィルムを、前記剥離層および前記トップコート層を溶解する溶剤中に浸漬して撹拌し、金属蒸着膜を分離する。さらに剥離した金属蒸着膜を溶剤中で撹拌することによって面方向の大きさが約5〜25μmの金属薄膜細片とし、濾別、乾燥する。剥離に用いられる溶剤は、前記剥離層および前記トップコート層を溶解するものであれば、それ以外に特に限定はない。金属薄膜をスパッタリングで作製した場合も、上記と同様な方法で金属薄膜細片とすることができる。金属箔を用いる場合は、溶剤中に浸漬してそのまま撹拌機で所定の大きさに粉砕すればよい。
金属薄膜細片は、インキ中における分散性を高めるために表面処理するのが好ましい。表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の有機脂肪酸;メチルシリルイソシアネート等のイソシアネート類;ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられ、公知慣用の方法で金属薄膜細片の表面に吸着させる。
(高輝性インキ中の結着樹脂)
前記高輝性インキに用いられる結着樹脂としては、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料などに通常用いられているものを用いることができる。具体例としては、塗料用アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂などの重合系樹脂;あるいは塗料用ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂等が好ましく用いられる。また、これらの樹脂にカルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基、アミノ基、四級アンモニウム塩基などの極性基を化学的に結合させたものを、使用または併用してもよい。
(高輝性インキ中の添加剤)
前記高輝性インキには、必要に応じて、意匠性、展延性を阻害しない限り、インキ中に消泡、沈降防止、顔料分散、流動性改質、ブロッキング防止、帯電防止、酸化防止、光安定性、紫外線吸収、内部架橋等を目的として、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に使用されている各種添加剤を加えても構わない。このような添加剤としては、着色用顔料、染料、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤、ポリイソシアネート等を挙げることができる。
(高輝性インキ中の溶剤)
前記高輝性インキに用いられる溶剤としては、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に使用されている公知慣用の溶剤を使用することができる。具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル等を挙げることができる。
(高輝性インキの調製方法)
一般にインキの配合原料を安定して分散させるには、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、あるいはサンドミル等を使用して練肉することにより、顔料その他添加剤をサブミクロンまで微粒子化する。しかし、上述の高輝性インキにおいては、金属光沢を発現させるために配合する金属薄膜細片は5〜25μmの大きさが好ましく、上記練肉を行った場合は金属薄膜細片が微粒子化してしまい、金属光沢が極端に低下するおそれがある。したがって、高輝性インキを調製する場合には練肉は行わず、単に上記配合原料を混合してインキとすることが望ましい。そのためには、分散性を向上させる目的で、前記したように金属薄膜細片を表面処理しておくことが好ましい。
本発明においては、特に、装飾層が熱可塑性樹脂層で挟まれた構成である積層シートを用いた場合に、該積層シートの優れた意匠性を損なうことなく、所望の形状に成形が可能であるので好ましい。
具体的には、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)と、装飾層(B)と、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)とが、この順に積層されてなる積層シートが好ましい。
この積層シートでは、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)側が表面層となり、意匠性の高い装飾層(B)が透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)を通して視覚可能とされる。透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)と装飾層(B)との間には、一層以上の装飾保護層、インキ層、接着剤層などを設けてもよい。また、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)上には、成形の際に表面層となる側に1層以上の表面保護層(トップコート層)を設けてもよい。
また、本発明の成形方法によって得られる三次元成形体は、優れた装飾鮮鋭性を有することから、該成形体を射出金型内に挿入して一体射出成形するインモールド成形(インサート成形)に好適に用いることができる。その場合、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)は、得られる成形体の最も射出成形用樹脂側となる層であるため、該射出樹脂との熱融着性を有することが好ましい。また、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)には、装飾層の保護、および、積層シートまたは得られる成形体としての強度や剛性を補助する役目も有する。
装飾層(B)と支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)との間には、一層以上の他のインキ層、接着剤層などを設けてもよい。また、該構成を有する積層シートを使用する場合は、成形時の加熱可塑化の温度は、前記加熱可塑化する温度が、前記層(A−1)および前記層(A−2)の高い方のガラス転移温度をTg(A-M)と表すとき、(Tg(A-M)−30)℃〜(Tg(A-M)+10)℃の温度範囲内であることが好ましい。
(透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1))
熱成形用シートに用いることが可能な熱可塑性樹脂層(A−1)としては、フィルム形状であることが好ましく、加熱によって展延性を有するフィルムが用いられる。熱可塑性樹脂フィルムは、透明または半透明の単層または多層フィルムが好適であり、着色剤を含有してもよい。マッチモールド成形では、熱による成形工程を行うため、Tgが30〜300℃の範囲である熱可塑性樹脂を主体とするフィルムが好ましく、さらに好ましいTgは50〜250℃である。前記熱可塑性樹脂の例を挙げれば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレートやポリエチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリアクリルニトリル、アクリルニトリル−スチレン樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂、ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、メチルペンテン樹脂、セルロース系樹脂等が好ましく用いられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、熱成形性及び装飾層の鮮鋭性が優れることから、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選択される1種または2種以上を主成分とするフィルムが好ましい。
また、該フィルムの透明性を阻害しない範囲内で、前記例示の樹脂を2種類以上を混合若しくは多層化して用いても良い。
また、耐衝撃性を改善する目的で、熱可塑性樹脂フィルムとして用いられる前記例示の各種樹脂を、透明性を阻害しない範囲内でゴム変性体としても良い。ゴム変性体とする方法については特に限定されないが、各種樹脂の重合時にブタジエン等のゴム成分モノマーを添加して共重合する方法、及び、該樹脂と合成ゴム若しくは熱可塑性エラストマーとを熱溶融ブレンドする方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルムは、透明性を損なわない範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、潤滑剤等のフィルム用途に常用される各種添加剤を含有しても良い。更に、意匠性の観点から、顔料若しくは染料等の着色剤を含有し、意図的に透明性を低下させることもできる。熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、常法によりフィルム化すれば良く、さらに、熱成形時の展延性を阻害しない範囲内で、一軸方向若しくは二軸方向に延伸処理を施しても良い。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に制限しないが、装飾保護層(後述)および装飾層がインキ等の展着層である場合の塗工性、および、熱成形性が良好なことから、30〜2000μmの範囲が好ましく、より好ましくは、50〜500μmである。
(支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2))
熱成形用シートに用いられる支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)としては、マッチモールド成形を行うため、Tgが30〜300℃の範囲である熱可塑性樹脂を主体とするフィルムが好ましく、さらに好ましいTgは50〜250℃である。前記熱可塑性樹脂の例を挙げれば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン(AAS)樹脂、アクリロニトリル/エチレンゴム/スチレン(AES)樹脂、(メタ)アクリル酸エステル/スチレン(MS)樹脂、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)樹脂、スチレン/イソプレン/ブタジエン/スチレン(SIBS)樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂やポリプロピレン(PP)系樹脂、塩化ビニル(PVC)系樹脂などの汎用樹脂、ならびにオレフィン系エラストマー(TPO)、塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)等の熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。また、前記例示の樹脂を2種類以上を混合若しくは多層化して用いても良い。なかでも、自動車外装部品を代表とする複雑な形状を有する成形体においても賦形性が優れていることから、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂およびそれらのブレンド品やAAS樹脂、ABS樹脂などが、より好ましく使用される。これらの樹脂には、衝撃強度などの改良を目的として、エチレンプロピレンゴム(EPR)、SBS、SIBS、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン(SEBS)などのゴム系改質剤を添加しても構わない。支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)の厚みは特に制限しないが、例えば、10μm〜3000μmが好ましい。
(支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)中の無機フィラー)
熱成形用積層シートは熱成形によって三次元形状の成形体となる。このとき支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)と熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)に使用される熱可塑性樹脂の成形収縮率が異なると、成形体に変形が起こり、良好な形状を保つことが難しい。この場合、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)の樹脂に無機フィラーを添加すると、成形収縮率を細かく制御することができ、支持基材樹脂層と熱可塑性樹脂フィルム層とで熱可塑性樹脂の成形収縮率の差を小さくすることができるので、成形中および成形後の変形を防ぐことができる。本発明で使用可能な無機フィラーの種類は特に限定されないが、タルク、炭酸カルシウム、クレー、珪藻土、マイカ、珪酸マグネシウム、シリカなどが挙げられる。
支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)への無機フィラーの添加量は、成形加工性と成形収縮率のバランスの点から、該層(A−2)の樹脂に対する質量百分率にして5〜60質量%が好ましい。無機フィラーの粒径は、特に限定しないが、粒径が大きすぎると層(A−2)の表面に凹凸が生じ、装飾層を有する加飾シートの場合、装飾鮮鋭性が損なわれるおそれがある。このため、装飾層の下地である層(A−2)は平滑性が要求されるため、層(A−2)に添加される無機フィラーの平均粒径は8μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。特に、鏡面状金属光沢を有する加飾シートの場合は、2μm以下が好ましい。
(支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)中の着色剤)
支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)に着色剤を含有させると、成形体の下地色の隠蔽性が良好となるので好ましい。ここで用いる着色剤は、特に限定されず、目的とする意匠に合わせて、一般の熱可塑性樹脂の着色に使用される慣用の無機顔料、有機顔料、染料などが使用できる。例えば、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、複合酸化物系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、バナジウム酸ビスマス、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク等の無機顔料;アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アンスラキノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料;金属錯体顔料等が挙げられる。また、染料としては、主として油溶性染料のグループから選ばれる1種または2種以上を使用することが好ましい。
支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)に配合される着色剤の添加量は、着色剤の種類、目的とする熱成形用シートの厚みや色調等により異なるが、色相や下地色の隠蔽性を確保し、かつ衝撃強度を維持するために、該層(A−2)を構成する樹脂に対する質量百分率にして0.1〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは、0.5〜15質量%の範囲である。樹脂に対して、着色剤の添加量が20質量%を超えると衝撃強さが低下し、着色剤の添加量が0.1質量%未満であると、色相や下地色の隠蔽性が十分でない傾向にある。
(支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)中の他の添加剤)
さらに支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)には、その衝撃強度や成形性が損なわれない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤等の添加剤を添加してもよく、これらの添加剤は単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
(装飾保護層)
熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)と装飾層(B)との間には、耐熱性、耐溶剤性、意匠性、耐候性等を向上させる目的で、一層以上の装飾保護層を設けてもよい。特に、装飾層(B)が高輝性インキからなる場合、インキ保護層として下記の装飾保護層を設けることが望ましい。装飾保護層に使用できる樹脂の種類については、熱成型用シートの展延性を阻害しない限り、特に制限はないが、架橋密度の調整の容易さ、耐候性、熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)との接着性などの点から、アクリル系樹脂が好ましい。樹脂の架橋機構についても特に制限はなく、アクリル系樹脂の場合、UV硬化、EB硬化、水酸基含有共重合体/イソシアネート硬化、シラノール/水硬化、エポキシ/アミン硬化などが使用できる。中でも、架橋密度の調整の容易さ、耐候性、反応速度、反応副生物の有無、製造コストなどの点から、水酸基含有共重合体/イソシアネート硬化が好ましい。
また、装飾保護層に意匠性を付与するため、装飾保護層中に着色剤を添加して着色層としてもよい。その場合に着色剤の添加量は、着色剤の種類、目的とする色調、装飾保護層の厚み等により異なるが、装飾層(B)を隠蔽しないように、装飾保護層の全光線透過率は20%以上であることが好ましく、特に、全光線透過率が40%以上であることがより好ましい。装飾保護層に添加できる着色剤としては、顔料が好ましい。ここで用いる顔料は特に限定されず、着色顔料、メタリック顔料、干渉色顔料、蛍光顔料、体質顔料、防錆顔料などの公知慣用の顔料を使用することができる。
前記着色顔料としては、例えばキナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、ピグメントレッド等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ペリレンレッド等のフタロシアニン系顔料などの有機顔料;酸化チタンやカーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。メタリック顔料としては、アルミニウム粉、ニッケル粉、銅粉、真鍮粉、クロム粉等が挙げられる。干渉色顔料としては、真珠光沢状のパールマイカ粉や真珠光沢状の着色パールマイカ粉等が挙げられる。
蛍光顔料としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、縮合アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、モノアゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、ナフトール系顔料、フラバンスロン系顔料、アンスラピリミジン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、ピラゾロン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスアンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料等の有機顔料;ニッケルジオキシンイエローや銅アゾメチンイエローなどの金属錯体;酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母などの無機顔料が挙げられる。
(積層シートの積層)
装飾層(B)または他のインキ層と支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)とを接合するには、接着剤層または粘着剤層を介して接着することが好ましい。
接着剤層による接着方法としては、慣用の溶剤型接着剤を用いたドライラミネーション法、ウェットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法等で積層することができる。前記接着剤層を構成する接着剤は、慣用のフェノール樹脂系接着剤、レゾルシノール樹脂系接着剤、フェノール−レゾルシノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアロマチック系接着剤などの熱硬化性樹脂系接着剤;エチレン−不飽和カルボン酸共重合体などを用いた反応型接着剤;酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、塩化ビニル樹脂、ナイロン、シアノアクリレート樹脂等の熱可塑性樹脂系接着剤;クロロプレン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、SBR系接着剤、天然ゴム系接着剤などのゴム系接着剤などが挙げられる。特に、アクリル樹脂とポリプロピレン系樹脂との接着性が良好であり、かつ真空成形、マッチモールド成形のときの伸びの追随性が良好なことから、アクリルウレタン系接着剤が好ましい。
接着剤の塗工方式は、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター、コンマコーター、コンマリバースコーター、マイクロリバースコーター等の塗工方式を用いることができる。接着剤の塗布量は、接着性が十分で、乾燥性も良好であるためには、0.1〜30g/mの範囲が好ましく、特に好ましくは、2〜10g/mである。接着剤の塗布量が少なすぎると接着力が弱くなり、接着剤の塗布量が多すぎると乾燥性が低下する傾向にある。接着剤層の厚さとしては、0.1〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜20μm、特に好ましくは2〜10μmである。
支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)の接着面には、接着剤層を構成する接着剤との親和性を向上させる目的で、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理、電子線照射処理、粗面化処理、オゾン処理等の表面処理;真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のドライプレーティング処理が施されてもよい。
また、接着剤層に代えて、粘着剤層を設けることもできる。粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリアルキルシリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が好ましく用いられる。
(表面保護層)
本発明で用いられる熱成形用シートでは、成形の際の表面側に、意匠性、耐摩擦性、耐擦傷性、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等の性能を付与するために、表面保護層として、透明、半透明または着色クリアのトップコート層を1層以上設けることができる。トップコート剤としては、熱成形用シートの展延性を阻害しない限り、ラッカータイプ、イソシアネートもしくはエポキシ等による架橋タイプ、UV架橋タイプまたはEB架橋タイプが好ましく用いられる。
以下、具体例をもって本発明を説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における物性評価は、下記の測定法または試験法にて行った。また、特に断りのない限り、「部」および「%」はいずれも質量基準によるものとする。
(実施例1)
積層シートの作製方法及びマッチモールド成形方法を以下に示す。
(A−1)熱可塑性樹脂フィルム層
透明または半透明の熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)として、ヘイズ:0.1%、厚さ125μmのゴム変性PMMAフィルム(商品名「テクノロイS−001」、住友化学工業社製、Tg=125℃)を使用した。
(A−1/B中間層)装飾保護層
前記熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)と装飾層(B)の密着性を向上させるため、アクリルポリオール樹脂「6KW−032E」(商品名、大日本インキ化学工業社製、固形分38%(溶剤:酢酸エチル)、水酸基価30KOHmg/g)46部と4−メチル−2−ペンタノン46部との混合溶液に、イソシアヌレート環含有ポリイソシアネート「BURNOCK DN−981」(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、固形分75%(溶剤:酢酸エチル)、官能基数3、NCO濃度14%)8部を混合(合計100部)し、装飾保護層用溶液(プライマー)を調製した。
(B)装飾層
アルミニウム薄膜細片(厚さ0.04μm、面方向の大きさ5〜25μm)を10部、酢酸エチル37.25部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール31.5部、ニトロセルロース1.25部を混合(合計110部)して、アルミニウム薄膜細片スラリーを調製した。
得られたアルミニウム薄膜細片スラリーを30部、結着樹脂としてカルボン酸含有塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂(UCC社製「ビニライトVMCH」)を3部、ウレタン樹脂(荒川化学製「ポリウレタン2593」不揮発分32%)を8部、酢酸エチル23部、4−メチル−2−ペンタノン26部、イソプロピルアルコール10部を混合(合計100部)し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%である装飾層用溶液(高輝性インキ)を調製した。
(B/A−2中間層)接着剤
装飾層(B)を有する熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)と支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)を接着するため、主剤として、芳香族ポリエステルポリオール樹脂「LX−703VL」(商品名、大日本インキ化学工業社製)15部、硬化剤として、脂肪族ポリイソシアネート「KR−90」(商品名、大日本インキ化学工業社製)1部及び希釈剤として、酢酸エチル18部を混合(合計34部)し、ポリエステルウレタン系接着剤を調製した。
(A−2)支持基材となる熱可塑性樹脂層
支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)としては、プロピレン−エチレンランダムコポリマー「FS3611」(商品名、住友化学工業社製)を主体成分とする第1層(C−1)とプロピレン−ブテンランダムコポリマー「SP7834」(商品名、住友化学工業社製)を主体成分とする第2層(C−2)が積層された2種2層シートを用いた。
第1層(C−1)用として、前記「FS3611」80部、低密度ポリエチレン「F200」(商品名、住友化学工業社製)10部、エチレンプロピレンラバー「P−0480」(商品名、三井化学製)10部、黒色マスターバッチ「ペオニーブラックF31246」(商品名、大日本インキ化学工業社製、低密度ポリエチレン/カーボンブラック=60/40)2部をドラムタンブラーでドライブレンド(合計102部)して層(C−1)用の樹脂を作製した。
第2層(C−2)用として、前記「SP7834」35部、前記「F200」10部、前記「P−0480」15部、タルクのマスターバッチ(平均粒径1.8μmのタルク/「SP7834」=60/40)40部の合計100部に対して、前記「ペオニーブラックF31246」2部をドラムタンブラーを用いてドライブレンド(合計102部)して、層(C−2)用の樹脂を作製した。層(C−2)中に含まれるタルクは24質量%であった。
次に、50mmφ単軸押出機と65mmφ単軸押出機の2台の押出機を用いて、上記2種の層(C−1)、層(C−2)用の原料樹脂をそれぞれ210℃で溶融させ、クローレン社製のフィードブロックにより、層(C−1)/層(C−2)=30/70の層構成比となるように2層を積層し、Tダイを通してシート状に押出成形した後、すぐに40℃に温度調節された金属ロールで冷却し、厚みが0.30mmの支持基材樹脂層用シートを得た。
なお、前記の層(C−1)と層(C−2)からなる積層体(A−2)は、DMA測定においてtanδが0℃以上で極大値を示さなかった。
(シートの積層方法)
前記ゴム変性PMMAフィルム(A−1)に前記装飾保護層(A−1/B中間層)用溶液をマイクログラビアコーターを使用し乾燥膜厚2.0μmとなるよう塗工及び乾燥した後、50℃で3日間エージング処理を行った。次に、装飾層(B)として前記高輝性インキを前記装飾保護層上にグラビアコーターを使用して乾燥膜厚2.0μmとなるように塗工及び乾燥した。さらに、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)用シートの接着面(プロピレン−エチレンランダムコポリマーを主体成分とする層(C−1))にぬれ指数40dyne/cmとなるようにコロナ処理を施した後、前記接着剤(B/A−2中間層)をマイクログラビアコーターを用いて乾燥膜厚5μmとなるように塗布、乾燥し、前記ゴム変性PMMAフィルムの高輝性インキ塗工面とを貼り合わせ、50℃で3日間のエージング処理を行い、成形用積層シート(S−1)を得た。該シート(S−1)の20°光沢値(測定角度20度)は1050%であった。
(20°光沢値の測定方法)
ここで、20°光沢値は、BYK Gardner社製「Micro−TRI−gloss」を用いて、JIS Z8741に従って測定した(以下の各実施例、比較例においても同様である)。
(マッチモールド成形方法)
(評価金型)
水平面11a及びボックス12が周囲183×204mmの長方形(面積373cm)(凸型部の斜面11bの外周は113×158mm)、天面11cが51×66mmの長方形、水平面11aから天面11cまでの高さが50mm、斜面11bの傾斜勾配がそれぞれ35、55、60、70°、天面11cと斜面11bの接合部がそれぞれ0.5,1,5,3mmR、斜面11b同士の接合部が5mmR、斜面11bと水平面11aの接合部が0.5mmRの台形形状の凸型10を使用した。また、凹型と凸型とを合わせた際のクリアランスが400μm及び200μmになるよう2種類の凹型を設計し、本実施例の成形性評価には前者を用いた。更に、凸型の水平面11aと斜面11bの接合部には直径0.5mmの真空孔を設け、凹型の底面21cと斜面21bの接合部には直径0.5mmのエアー抜き孔を設けた。
また、枠状クランプ14及び24としては、内縁が190×210mmの長方形で、幅が10mmのフランジ部を有さない枠状クランプを用い、凹型の枠状クランプと凸型の枠状クランプの勘合部は図7の32及び31に示す形状とした。なお、クランプ部の面積は84cmであった。
また、金型及び枠状クランプの鋼材としては、大同アミスター社製の硬質アルミニウム合金「アルミーゴHARD」(商品名)を用い、森精機社製の立形マシニングセンタ「NV5000」(商品名)を用いて作製した。
また、枠状クランプを動作させる方法としては、可動シリンダー16及び26を各4セット用い、具体的には、コガネイ社製エアーシリンダー「ジグシリンダーCシリーズCDA50×50」(商品名、シリンダー径50mm、ストローク50mm、ロッド(16a及び17a)径20mm)を用いた。
なお、可動式枠状クランプ及びエアーシリンダーを含む凹型全体及び凸型全体の質量は、ともに約25kg(重量はともに約25kgf)であった。
(成形条件)
本実施例のマッチモールド成形には、ハーミス社製FE38PHの小型真空成形機を用いた。凹型及び凹型用可動式枠状クランプをプラグ可動装置(上側)に、凸型及び凸型用可動式枠状クランプを金型可動装置(下側)に取り付け、以下に示す手順でマッチモールド成形を実施した。
(1)前記積層シート(S−1)の熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)側が上になるよう成形機のクランプで固定する。
(2)上側ヒーター(不図示)を該シート(S−1)の上方へ移動させる(下側ヒーターは不使用)。
(3)該シート(S−1)を所定温度になるまで加熱する。
(4)前記ヒーターを退避させる。
(5)固定板23に固定した凹型20を下降、固定板13に固定した凸型10を上昇させる。
(6)凹型20の下降及び凸型10の上昇を利用して、金型の可動式枠状クランプ14,24で該シート1を挟んだ後、そのまま凹型20と凸型10でシートを挟み込むようにして三次元形状とする。
(7)凹型20と凸型10で該シートを挟み込んだまま1分間保持する。
(8)凹型20を上昇、凸型10を下降させた後、三次元形状とした成形体をエアーで5秒間冷却する。
(9)成形機のクランプを開放する。
以上の(1)〜(9)の工程によりマッチモールド成形体を得た。
具体的には、ヒーター温度は370℃、シートとヒーター間の距離は130mm、加熱時間は12秒とし、成形開始時のシート温度は115℃であった。なお、シート温度は、キーエンス社製の赤外放射温度計IT2−80(放射率ε=0.95)を用いて、金型中心の上部付近のシート温度を下側(支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)側)から測定した。ヒーターでシートを加熱している際の最高温度を成形温度とした。
また、金型温度調節器を用いて、凹型温度は95℃、凸型温度は75℃とした。更に、凹型の可動式枠状クランプとしては、フランジ部を有しない枠状クランプ(図5)を用いて、枠状クランプを可動させる4個のエアーシリンダー(50mmφ)の下降圧力をすべて1kgf/cm{約0.1MPa}(推力:約80kgf{約800N})、凸型の4個のエアーシリンダー(50mmφ)の上昇圧力をすべて2kgf/cm{約0.2MPa}(推力:約160kgf{約1600N})、凹型可動用エアーシリンダー(104mmφ)の下降圧力及び凸型可動用エアーシリンダー(112mmφ)の上昇圧力を5kgf/cm{約0.5MPa}(推力:約425kgf{約4250N}及び約492kgf{約4920N})とし、加熱後に可動式枠状クランプにより固定されたシートを、先に凹型に押し当てる成形法A(図1)を用いた。なお、枠状クランプでシートを固定するクランプ力は約80kgf{約800N}(応力としては約0.95kgf/cm{約95kPa})、成形時の凹型と凸型との型閉力は(凹型推力425kgf+凹型重量25kgf−凸型用枠状クランプ推力160kgf=290kgf){約2.9kN}(応力としては約0.78kgf/cm{約78kPa})であった。
(成形可否評価方法)
前記手法により得られた成形体の成形可否評価方法としては、皺の発生状況を目視にて評価した。
[評価基準]○:皺発生無し、△:成形体の立ち上がり部に3mm未満の皺が発生、×:成形体に3mm以上の皺が発生、又は、その他著しい外観不良が発生(具体的には、チルドマークと呼ばれる冷却痕の発生、圧迫痕の発生、真空孔痕の発生等が挙げられる。)
(成形体の型再現性評価方法)
前記手法により得られた成形体の型再現性評価方法としては、成形体天面の四方コーナー部の3mmR部についてR再現性を測定した。
[評価基準]◎:R再現性80%以上、○:R再現性60%以上80%未満、△:R型再現性40以上60%未満、×:R再現性40%未満
(成形体の光沢性評価方法)
成形体の天面部及び斜面部において、展開率110%部及び展開率150%部の20°光沢値を測定し、成形前後の光沢値変化により光沢保持率を算出した。展開率の測定方法としては、厚み変化率により算出した。
[評価基準]◎:光沢保持率80%以上、○:光沢保持率60%以上80%未満、△:光沢保持率40%以上60%未満、×:光沢保持率40%未満
(評価結果)
成形体(M−1)について上記評価方法により評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は○、展開率110%部の20°光沢値は850%、光沢保持率は81%であり、展開率110%部の光沢性評価は◎であった。また、展開率150%部の20°光沢値は750%、光沢保持率は71%であり、展開率150%部の光沢性評価は○であった。
以上の結果より、実施例1により得られた成形体(M−1)は、型再現性、金属光沢性が良好であることが解った。
(実施例1a)
熱可塑性フィルム層(A−1)の装飾層(B)側に、予め、1mm間隔の黒色の碁盤目柄を印刷した以外は実施例1と同様にして成形体(M−1a)を得た。展開率110%部では碁盤目柄の歪みがほとんど認められず、展開率150%部では碁盤面柄自体は変形しているものの罫線の歪みはほとんど認められなかった。
(実施例2)
凹型用枠状クランプとして図6に示すフランジ部27付きの枠状クランプ24を用いて、枠状クランプを可動させる4個のエアーシリンダーの下降圧力をすべて0.2MPa、凸型の4個のエアーシリンダーの上昇圧力をすべて0.1MPaとし、加熱後に可動式枠状クランプにより固定されたシートを、先に凸型に押し当てる成形法B(図3)を用いた以外は実施例1と同様にして成形用積層シート(S−2)および成形体(M−2)を得た。なお、枠状クランプでシートを固定するクランプ力は約800N(応力としては約95kPa)、成形時の凹型と凸型との型閉力は約2.9kN(応力としては約85kPa(水平面21aが周囲175×196mmの長方形(面積343cm))であった。次に、該成形体(M−2)について評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は◎、110%展開部の20°光沢値は800%、光沢保持率は76%であり、110%展開部の光沢性評価は○であった。また、150%展開部の20°光沢値は650%、光沢保持率は62%であり、150%展開部の光沢性評価は○であった。
(実施例2a)
熱可塑性フィルム層(A−1)の装飾層(B)側に、予め、1mm間隔の黒色の碁盤目柄を印刷した以外は実施例2と同様にして成形体(M−2a)を得た。展開率110%部では碁盤目柄の歪みがほとんど認められなかったものの、展開率150%部では罫線がやや歪んで見えた。
(実施例3)
熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)(Tg=125℃)の厚みが75μmであり、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)が、透明性ABS樹脂(メチルメタクリレート−アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、商品名「SXH−290」、日本エイアンドエル社製、Tg=115℃)から65mmφ単軸押出機のみを用いて製膜した厚み200μmの単層シートであり、積層方法の接着剤塗工側を高輝性インキ塗工面とした以外は実施例1と同様にして成形用積層シート(S−3)を得た。該シート(S−3)の20°光沢値は950%であった。さらに、クリアランスが200μmに設計した凹型を用いた以外は実施例1と同様にして成形体(M−3)を得た。
該成形体(M−3)について評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は◎、110%展開部の20°光沢値は800%、光沢保持率は84%であり、110%展開部の光沢性評価は◎であった。また、150%展開部の20°光沢値は600%、光沢保持率は63%であり、150%展開部の光沢性評価は○であった。
(実施例4)
上記プライマー及び高輝性インキを用いず、装飾層(B)として、予め、熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)に真空蒸着法により0.04μmのアルミニウム薄膜を積層した以外は実施例1と同様にして、成形用積層シート(S−4)を得た。該シート(S−4)の20°光沢値は1450%であった。更に、実施例1と同様にして成形体(M−4)を得た。
該成形体(M−4)について評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は○、110%展開部の20°光沢値は1350%、光沢保持率は93%であり、110%展開部の光沢性評価は◎であった。また、150%展開部の20°光沢値は650%、光沢保持率は45%であり、150%展開部の光沢性評価は△であった。
(実施例5)
上記プライマー及び高輝性インキを用いず、装飾層(B)として、予め、熱可塑性樹脂フィルム層(A−1)の装飾層(B)側に、グラビア印刷用インキ「ユニビアNT」(大日本インキ化学工業社製)を用いたグラビア印刷法により、第一版目に1mm間隔の黒色の碁盤目柄を、第二版目および第三版目に白色のベタ柄を印刷した以外は実施例3と同様にして、成形用積層シート(S−5)を得た。更に、実施例1と同様にして成形体(M−5)を得た。
該成形体(M−5)について評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は◎であった。また、展開率110%部では碁盤目柄の歪みがほとんど認められず、展開率150%部では碁盤面柄自体は変形しているものの罫線の歪みはほとんど認められなかった。また、展開率110%部と展開率150%部の白色度に大きな違いは認められなかった。
(実施例6)
成形開始時のシート温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして、成形体(M−6)を得た。
該成形体(M−6)について評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は○、110%展開部の20°光沢値は1000%、光沢保持率は95%であり、110%展開部の光沢性評価は◎であった。また、150%展開部の20°光沢値は850%、光沢保持率は81%であり、150%展開部の光沢性評価は◎であった。
(実施例7)
成形開始時のシート温度を130℃とした以外は、実施例1と同様にして、成形体(M−7)を得た。
該成形体(M−7)について評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は◎、110%展開部の20°光沢値は650%、光沢保持率は62%であり、110%展開部の光沢性評価は○であった。また、150%展開部の20°光沢値は600%、光沢保持率は57%であり、150%展開部の光沢性評価は△であった。
(比較例1)
成形温度が140℃である以外は実施例1と同様にして比較用成形体(M−1′)を得た。比較用成形体(M−1′)について実施例1と同様の手法により評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は◎、110%展開部の20°光沢値は400%、光沢保持率は38%であり、110%展開部の光沢性評価は×であった。また、150%展開部の20°光沢値は250%、光沢保持率は24%であり、150%展開部の光沢性評価は×であった。また、成形体(M−1′)の天面部と斜面の接合部にはエアー抜き孔の痕が残り、天面の一部に凹型と凸型でシートを挟み込んだ際の圧迫痕が残った。
(比較例1a)
熱可塑性フィルム層(A−1)の装飾層(B)側に、予め、1mm間隔の黒色の碁盤目柄を印刷した以外は比較例1と同様にして比較用成形体(M−1a′)を得た。展開率110%部では罫線の歪みはほとんど認められなかったものの碁盤目柄がやや変形し、展開率150%部であきらかな罫線の歪みが認められた。
(比較例2)
実施例1と同一シートについて、可動式枠状クランプを用いず、凸型のみで真空成形を実施した。成形温度を140℃とし、比較用成形体(M−2′)を得た。比較用成形体(M−2′)について実施例1と同様に評価した結果、成形可否評価は△、型再現性評価は○、110%展開部の20°光沢値は300%、光沢保持率は29%であり、110%展開部の光沢性評価は×であった。また、150%展開部の20°光沢値は200%、光沢保持率は19%であり、150%展開部の光沢性評価は×であった。
(比較例2a)
熱可塑性フィルム層(A−1)の装飾層(B)側に、予め、1mm間隔の黒色の碁盤目柄を印刷した以外は比較例2と同様にして比較用成形体(M−2a′)を得た。展開率110%部では罫線の歪みにともない碁盤目柄の変形が認められ、展開率150%部ではあきらかに不均一な罫線の歪みが認められた。
(比較例3)
実施例1と同一シートについて、可動式枠状クランプを用いず、凹型及び凸型を用いてマッチモールド成形を実施した。実施例1と同様に成形温度を115℃とし、比較用成形体(M−3′)を得た。比較用成形体(M−3′)について実施例1と同様に評価した結果、成形可否評価は×、型再現性評価は△、展開率110%部の20°光沢値は800%、光沢保持率は76%であり、展開率110%部の光沢性評価は○であった。また、展開率150%部の20°光沢値は500%、光沢保持率は48%であり、展開率150%部の光沢性評価は△であった。また、成形時のシート引き込みにより、シートの一部が成形機のクランプから外れ、成形体のすべての斜面部にシートと凹型との接触によるチルドマーク(冷却痕)が発生した。
(比較例4)
実施例1と同一シートについて、本発明の可動式枠状クランプをエアーシリンダーから取り外し、エアーシリンダーのロッド(直径20mm)4本のみを動作させて、実施例1と同一成形条件でマッチモールド成形を行い、比較用成形体(M−4′)を得た。比較用成形体(M−4′)について実施例1と同様に評価した結果、成形可否評価は×、型再現性評価は△、展開率110%部の20°光沢値は800%、光沢保持率は76%であり、展開率110%部の光沢性評価は○であった。また、展開率150%部の20°光沢値は500%、光沢保持率は48%であり、展開率150%部の光沢性評価は△であった。また、成形時のシート引き込みにより、シートの一部が成形機のクランプから外れ、成形体のすべての斜面部にシートと凹型との接触によるチルドマーク(冷却痕)が発生した。
(比較例5)
実施例1と同一シートについて、可動式枠状クランプ14および24の短辺部分を取り外し、シートの二辺のみしか固定できない状態とし、実施例1と同一成形条件でマッチモールド成形を行い、比較用成形体(M−5′)を得た。比較用成形体(M−5′)について実施例1と同様に評価した結果、成形可否評価は×、型再現性評価は△、展開率110%部の20°光沢値は800%、光沢保持率は76%であり、展開率110%部の光沢性評価は○であった。また、展開率150%部の20°光沢値は550%、光沢保持率は52%であり、展開率150%部の光沢性評価は△であった。また、クランプされていない一部にシート破れが発生するとともに、成形時にシートクランプが出来なかった側の二斜面については、シートと凹型との接触によるチルドマーク(冷却痕)が発生した。
(比較例6)
成形温度が140℃である以外は実施例5と同様にして比較用成形体(M−6′)を得た。比較用成形体(M−6′)について実施例5と同様の手法により評価した結果、成形可否評価は○、型再現性評価は◎であった。また、展開率110%部では罫線の歪みはほとんど認められなかったものの碁盤目柄がやや変形し、展開率150%部であきらかな罫線の歪みが認められた。また、展開率150%部では下地が透けて見え、展開率110%部との白色度の違いが認められた。更に、成形体(M−6′)の斜面の天面寄りの一部にはシートと凸型との接触によるチルドマーク(冷却痕)が発生した。
(まとめ)
表1および表2に上記各実施例および比較例の実施条件の要点および評価結果をまとめる。
Figure 0004037437
Figure 0004037437
実施例1〜4では、可動式枠状クランプを用いることにより、比較的低温でマッチモールド成形を行い、成形体に皺の発生がなく、型再現性も良好で、装飾層の金属光沢を維持することもできた。
実施例5では、装飾層として金属光沢層を用いなかったが、色柄の変化が少なく外観良好な成形体が得られた。
比較例1では、可動式枠状クランプを用いることにより、成形体に皺の発生がなく、良好な型再現性が得られたが、成形温度が比較的高かったためか、光沢保持率が劣る結果となった。
比較例2では、可動式枠状クランプおよび凹型を省略して真空成形を行ったところ、成形体に3mm未満の皺が発生した。また、真空成形では成形に最適な温度が高く、シートの展延性が不均一であるためか、光沢保持率が悪くなった。
比較例3では、可動式枠状クランプを省略してマッチモールド成形を行ったところ、シートの加熱後にシートの弛みを充分に伸ばすことができず、また、金型内へのシート引き込みを防止できなかったため、成形体に3mm以上の皺が多数発生した。また、前記と同様の原因によりシートの展延性が不均一であるためか、150%展開部の光沢保持率が劣る結果となった。
比較例4,5では、枠形状ではない可動式クランプを用いたマッチモールド成形を行ったところ、加熱後のシート弛みをある程度伸ばすことができたが、金型内へのシート引き込みを防止する効果が不十分であったため、比較例3と同様に成形皺が多発した。また、比較例3と同様の原因で、150%展開部の光沢保持率が劣る結果となった。
また、実施例1a,2aおよび比較例1a,2aの比較により、印刷柄を装飾層として有する加飾シートの場合、比較的低温でマッチモールド成形を行うことにより、印刷柄の変形を抑制できることが解かった。
更に、金属光沢層を用いていない実施例5および比較例6の比較でも同様の結果となった。
本発明は、特に、自動車関連部材、建築関連部材、家電品等の用途に使用され、優れた装飾鮮鋭性を有し、外層塗装が不要な成形品の製造に有用である。特に、鏡面状金属光沢性を有する成形用積層シートの成形方法および成形装置として有用である。
本発明の成形方法の第1形態例の成形法Aを説明する模式的断面図であり、(a)はシートを枠状クランプで挟持固定した状態、(b)は挟持固定したシートを一方の金型に接触させた状態、(c)は挟持固定したシートを両方の金型で型締めしている状態を示す。 本発明の成形方法の第1形態例の成形法Bを説明する模式的断面図であり、(a)はシートを枠状クランプで挟持固定した状態、(b)は挟持固定したシートを一方の金型に接触させた状態、(c)は挟持固定したシートを両方の金型で型締めしている状態を示す。 本発明の成形方法の第2形態例を説明する模式的断面図であり、(a)はシートを枠状クランプで挟持固定した状態、(b)は挟持固定したシートを一方の金型に接触させた状態、(c)は挟持固定したシートを両方の金型で型締めしている状態を示す。 枠状クランプを設けた凸型の一例を示す斜視図であり、(a)は金型に対して枠状クランプを下げた状態、(b)は金型に対して枠状クランプを上げた状態を示す。 枠状クランプを設けた凹型の一例を示す斜視図であり、(a)は金型に対して枠状クランプを下げた状態、(b)は金型に対して枠状クランプを上げた状態を示す。 枠状クランプを設けた凹型の他の例を示す斜視図であり、(a)は金型に対して枠状クランプ(一部を切り欠いて図示してある)を下げた状態、(b)は金型に対して枠状クランプを上げた状態を示す。 第1形態例の成形装置において枠状クランプが互いに嵌合する凹部および凸部を有する場合の一例を示す概略図である。 第2形態例の成形装置において枠状クランプが互いに嵌合する凹部および凸部を有する場合の一例を示す概略図である。 第2形態例の成形装置において枠状クランプが互いに嵌合する凹部および凸部を有する場合の他の例を示す概略図である。
符号の説明
1…熱成形用シート、2…金型成形すべき部分、10…凸型、11…凸型本体、12…ボックス、13…固定板、14…枠状クランプ、15…クランプ面、17…凸型の外周縁部、18…真空孔、20…凹型、21…凹型本体、22…ボックス、23…固定板、24…枠状クランプ、25…クランプ面、27…フランジ部、31…凸部、32…凹部。

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂層(A)を1層もしくは複数層と、装飾層(B)とを積層した熱成形用シートを、一対の金型に挟み熱成形する方法であって、
    JIS K7244−1法に準拠し、周波数1Hz、測定開始温度0℃、昇温速度3℃/分の測定条件にて動的粘弾性を測定したときの、力学的減衰が極大値を示すときの温度をガラス転移温度(Tg)とした場合、
    前記熱成形用シートの金型成形すべき部分を含む一部を、前記熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度(Tg(A))(但し熱成形用シートが前記熱可塑性樹脂層(A)を複数層有する場合は、複数ある熱可塑性樹脂層(A)のガラス転移温度のうち最も高い温度をTg(A)とする)に対し、(Tg(A)−30)℃〜(Tg(A)+10)℃の温度範囲内で加熱可塑化した後、
    前記熱成形用シートの前記金型成形すべき部分の周囲全周を、前記熱成形用シートの両面から、一対の枠状クランプを用いて挟持固定し、
    前記加熱可塑化した部分の片方の面に一方の金型の一部を押し当てることにより、前記一方の金型と前記枠状クランプとの間で前記加熱可塑化した部分を伸張させ、
    しかるのち、前記一方の金型が当接する前記加熱可塑化した部分の面とは逆方向から、他方の金型を前記加熱可塑化した部分に接触させ、
    前記一方の金型と前記他方の金型とにより前記加熱可塑化した部分を挟み込んで成形することを特徴とする熱成形用シートの成形方法。
  2. 前記一方の金型が凸型であり、前記他方の金型が凹型である請求項1に記載の熱成形用シートの成形方法。
  3. 前記一方の金型が凹型であり、前記他方の金型が凸型である請求項1に記載の熱成形用シートの成形方法。
  4. 凹型側の枠状クランプの内周縁部が凸型側の枠状クランプの内周縁部よりも内側にある枠状クランプを用い、
    一方の金型の少なくとも一部を前記枠状クランプの内側にて前記加熱可塑化した部分に押し当てて前記一方の金型と前記枠状クランプとの間で前記加熱可塑化した部分を伸張させる際、凹型側の枠状クランプの内周縁部と凸型の外周縁部との間で前記熱成形用シートを挟持固定した状態で、前記加熱可塑化した部分を凸型側から真空を用いて吸引する請求項2に記載の熱成形用シートの成形方法。
  5. 前記熱成形用シートが、透明または半透明の熱可塑性樹脂層(A−1)と、装飾層(B)と、支持基材となる熱可塑性樹脂層(A−2)とがこの順に積層された積層シートであり、前記加熱可塑化する温度が、前記層(A−1)および前記層(A−2)の高い方のガラス転移温度を(Tg(A-M))と表すとき、(Tg(A-M)−30)℃〜(Tg(A-M)+10)℃の温度範囲内である、請求項1に記載の熱成形用シートの成形方法。
  6. 前記装飾層(B)が、金属薄膜細片を結着樹脂中に分散したインキ皮膜からなる金属調の装飾層である請求項1に記載の熱成形用シートの成形方法。
  7. 加熱可塑化した熱成形用シートの金型成形すべき部分の周囲全周を挟持固定する枠状クランプを各金型の周囲に具備し、前記枠状クランプは前記金型に対して相対的に移動自在である熱成形用シートの成形装置であって、
    前記成形装置が、
    マッチモールド成形用金型としての凸型及び凹型と、熱成形用シートの金型成形すべき部分の周囲全周を両面から挟持固定する凸型用可動式枠状クランプ及び凹型用可動式枠状クランプと、前記凸型用可動式枠状クランプを前記凸型に対して駆動する駆動手段としてのシリンダーと、前記凹型用可動式枠状クランプを前記凹型に対して駆動する駆動手段としてのシリンダーを有し、
    少なくとも、シート加熱装置、下型可動装置及び上型可動装置が具備されている成形機の、該下型可動装置に、凸型及び前記凸型用可動式枠状クランプ、もしくは、凹型及び凹型用可動式枠状クランプを取り付け、且つ、該上型可動装置に、凸型及び前記凸型用可動式枠状クランプ、もしくは、凹型及び凹型用可動式枠状クランプの、前記下型可動装置に取り付けていないほうの金型及び枠状クランプを取り付けて使用する成形装置であり、
    前記枠状クランプは前記金型に対して相対的に移動自在であり、前記成形機の下型可動装置、前記成形機の上型可動装置及び前記枠状クランプの推力を調整することにより、前記熱成形用シートのクランプ力、成形速度、及び型閉力を自在に選択可能であることを特徴とする熱成形用シートの成形装置。
  8. 前記枠状クランプは、前記金型と共通の固定板に支持されている請求項7に記載の熱成形用シートの成形装置。
  9. 凹型側の枠状クランプの内周縁部が凸型側の枠状クランプの内周縁部よりも内側にあって凹型側の枠状クランプの内周縁部と凸型の外周縁部との間で前記熱成形用シートをクランプ可能に構成し、かつ前記凸型が前記熱成形用シートを凸型側から真空を用いて吸引するための真空孔を有する請求項7または8に記載の熱成形用シートの成形装置。
  10. 前記枠状クランプは熱成形用シートを挟持固定する面上に、互いに嵌合する凹部および凸部を有し、熱成形用シートを両枠状クランプ間に挟持固定したときに、一方の枠状クランプに突設された凸部を他方の枠状クランプに凹設された凹部に嵌入可能にした請求項7〜9のいずれかに記載の熱成形用シートの成形装置。
JP2006131561A 2005-05-10 2006-05-10 熱成形用シートの成形方法および成形装置 Expired - Fee Related JP4037437B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006131561A JP4037437B2 (ja) 2005-05-10 2006-05-10 熱成形用シートの成形方法および成形装置

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005137495 2005-05-10
JP2006131561A JP4037437B2 (ja) 2005-05-10 2006-05-10 熱成形用シートの成形方法および成形装置

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2006341595A JP2006341595A (ja) 2006-12-21
JP2006341595A5 JP2006341595A5 (ja) 2007-11-08
JP4037437B2 true JP4037437B2 (ja) 2008-01-23

Family

ID=37638902

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006131561A Expired - Fee Related JP4037437B2 (ja) 2005-05-10 2006-05-10 熱成形用シートの成形方法および成形装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4037437B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018142648A1 (ja) 2017-01-31 2018-08-09 三菱重工業株式会社 インサート用フィルムの樹脂層の厚さ決定方法、インサート用フィルム付き樹脂成形品の製造方法、及びインサート用フィルム

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006341388A (ja) * 2005-06-07 2006-12-21 Dainippon Ink & Chem Inc 熱成形用積層シートの成形方法及び成形体
JP5332225B2 (ja) * 2007-02-22 2013-11-06 東レ株式会社 繊維強化複合材料の製造方法
JP5554016B2 (ja) * 2009-05-29 2014-07-23 株式会社プラネット 加飾パネル及びその製造装置
JP5383442B2 (ja) * 2009-11-13 2014-01-08 本田技研工業株式会社 成形装置
WO2012115103A1 (ja) * 2011-02-21 2012-08-30 タキロン株式会社 骨接合プレート成形具及び骨接合プレート成形方法
CN102275367A (zh) * 2011-05-06 2011-12-14 张文益 一种新型复合材料及其生产方法
JP5988719B2 (ja) * 2012-06-15 2016-09-07 三菱瓦斯化学株式会社 二次元曲げされたハードコートシートの製造方法
JP6048730B2 (ja) * 2012-09-10 2016-12-21 三菱レイヨン株式会社 プリフォームの製造方法
JP2014202933A (ja) * 2013-04-05 2014-10-27 株式会社クラレ 微細構造の成形方法、それにより得られる成形品および光学部品
CN106661255A (zh) * 2014-08-07 2017-05-10 沙特基础工业全球技术有限公司 用于热成型应用的导电多层片材
WO2020016757A1 (en) * 2018-07-19 2020-01-23 3M Innovative Properties Company Conformable shielding film
CN109437524A (zh) * 2018-12-17 2019-03-08 苏州胜禹材料科技股份有限公司 不等厚玻璃3d热弯机及3d玻璃成型方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018142648A1 (ja) 2017-01-31 2018-08-09 三菱重工業株式会社 インサート用フィルムの樹脂層の厚さ決定方法、インサート用フィルム付き樹脂成形品の製造方法、及びインサート用フィルム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006341595A (ja) 2006-12-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4037437B2 (ja) 熱成形用シートの成形方法および成形装置
WO2006121079A1 (ja) 熱成形用シートの成形方法および成形装置
JP2006341388A (ja) 熱成形用積層シートの成形方法及び成形体
US10252491B2 (en) Structure integrated by vacuum-pressure forming or vacuum forming, and manufacturing method thereof
CN1946533B (zh) 用于同时装饰和注塑的片材和经装饰的树脂模塑体
JP2007118350A (ja) 成形用積層シート
US20090104441A1 (en) Laminated sheet for thermoforming, formed product, injection-molded product, and method of producing the same
WO2005051660A1 (ja) 加飾シート、加飾樹脂成形品及びその製造方法
JP4103052B2 (ja) 熱成形用積層シート、成形体、射出成形体及びその製造方法
JP2007062254A (ja) 熱成形用積層シートの成形方法
JP2007168377A (ja) 熱成形用積層シートの成形方法
JP2009018538A (ja) 加飾射出成形品及びその製造方法
JP5381090B2 (ja) 熱成形用積層シート及び加飾成形体
JP2005169654A (ja) 熱成形用積層シートの成形方法及びその成形体
JP2014159128A (ja) 熱転写フィルムの製造方法、及びそれを使用した加飾品の製造方法
JP2006116895A (ja) 熱成形用積層シート
JP2004001453A (ja) 化粧シートおよび水系塗工液
JP6855956B2 (ja) 加飾フィルムおよびそれを用いた加飾成形体の製造方法
JP2007223203A (ja) インサート成形体の製造方法
JP4403294B2 (ja) 熱成形用積層シートの成形方法及びその成形体
JP2018024247A (ja) 加飾フィルムおよびそれを用いた加飾成形体の製造方法
JP4389157B2 (ja) 熱成形用積層シートの成形方法及びその成形体
JP2016147505A (ja) 真空圧空成形または真空成形により一体化された構造体、およびその製造方法
JP2005125775A (ja) 成形用積層シート
JP2005238698A (ja) 熱成形用積層シートの成形方法及びその成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070921

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070921

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20070921

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20071011

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20071023

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20071031

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101109

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101109

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111109

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111109

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121109

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131109

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees