JP4037161B2 - インバータ装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池、風力発電装置、燃料電池等などを電力供給源とする分散電源が交流電力系統と連係しつつ負荷に電力を供給するインバータ装置、および、分散電源が負荷へ交流電力を供給中に、前記インバータ装置が、停電等によって前記交流電力系統の電源側が遮断され、単独運転状態になったことを検知するインバータ装置の単独運転検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、風力エネルギーを利用して電力を発生する風力発電や、太陽光エネルギーを利用して電力を発生する風量発電などの自然エネルギーを有効利用した発電設備や、公害を発生しない水素などの燃料を利用して電力を発生する燃料電池などの発電設備を住宅に自家発電用として設置し、これらから得られる直流電力を交流電力に返還し、商用電源との系統連係運転を行うことが考えられている。
【0003】
このような発電設備と商用電源の連携運転については、社団法人日本電気協会が発行している分散型電源系統連係技術指針などに、商用電源による供給電力の信頼性、安全性、品質、保護協調を確保しつつ円滑な系統連係運転を行うための技術指針が示されている。
【0004】
この技術指針には、「交流電力系統の停電時に自家用発電設備が系統から切断されない状態で単独運転を継続していると、停電区域であるべき線路が充電状態となるため、保守員が感電する恐れがある。」という保安上の問題点のあることを指摘している。
【0005】
この技術指針には、上記問題点を指摘したうえで、以下に示す受動的方式と能動的方式とを組み合わせ、単独運転検出の有効性を高めた上で、単独運転時に発電設備を交流電力系統から解列することを推奨している。そして、受動的方式として、電圧位相跳躍検出方式および周波数変化率検出方式、能動的方式として、周波数シフト方式(周波数ドリフト方式)、無効電力変動方式、有効電力変動方式、および、負荷変動方式等を示している。
【0006】
周波数シフト方式は、交流電力系統が通常運転時に分散電源装置の出力に周波数バイアスを与えておいて、単独運転移行時に交流電力系統電圧に現れる周波数変化を検出して単独運転状態になった事を検出する方式である。従来、単独運転検出方式として周波数シフト方式を利用したインバータ装置には、特開平8−134656号公報に記載されたものが知られている。
【0007】
以下、従来の周波数シフト方式を単独運転検出方式として採用した従来のインバータ装置の構成を図9に示し、図9を参照しながら説明する。図9に示すように、直流電源101より供給された直流電力は、インバータ装置102により交流電力系統103に連係させつつ交流電力に変換され、負荷104に供給されている。負荷104にはインバータ装置102とは別に、交流電力系統103の交流電力が、遮断器105および柱上トランス106を介して供給されている。負荷104にかかる電圧の周波数の上限値fmaxを監視するオーバーフレクエンシーリレー(以降OFRと称す)107と、同周波数の下限値fminを監視するアンダーフレクエンシーリレー(以降UFRと称す)108は、周波数の上下限値の範囲を超えた事を検出できるようにインバータ装置102に接続されている。負荷104は、図9に示すように、並列等価抵抗109、並列等価インダクタンス110、および、並列等価キャパシタンス111より成る並列共振回路による等価回路で表現する事ができる。
【0008】
従来の周波数シフト方式を単独運転検出方式として採用した従来のインバータ装置102の検出動作を図10のフローチャートに示す。なお以下の説明においては、交流電力系統の定格周波数をf0(例えば60Hz)とした系統連携運転を想定して説明する。
【0009】
交流電力系統103が正常であれば、従来の周波数シフト方式を採用するインバータ装置102は、図10に示すフローチャートのステップ113にて、交流電力系統103の電圧の周波数fをほぼf=f0[Hz](ここで、f0は交流電力系統の定格周波数で例えば50Hz)として検出するが、ステップ114にて(f0−fa)〜(f0+fa)の範囲内にあると判定されるので、インバータ装置102は、図10に示すフローチャートのステップ112→113→114→115→116→117→118→119→113、112→113→114→115→116→120→118→119→113、または、112→113→114→115→116→121→118→119→113のループを繰り返して、周波数バイアスを与えないF=f0、すなわち、定格周波数の出力電流を挿入しつつ、定格周波数f0に+Δfのバイアスを与えたF=(f0+Δf)の周波数の出力電流、または、定格周波数f0に−Δfのバイアスを与えたF=(f0−Δf)の周波数の出力電流を交互に出力する。
【0010】
交流電力系統103が停電となったとき、前回サイクルのステップ121においてインバータ装置102が周波数 F=(f0+Δf)の出力電流を出力した場合、ステップ113において、交流電力系統103の電圧の周波数fは、インバータ装置102の出力電流の周波数に等しい F=(f0+Δf)として検出され、インバータ装置102は、ステップ114にて、(f0−fa)〜(f0+fa)の範囲外にあると判定されるので、ステップ122にて、(f>f0)と判定し、図10に示すステップ112→113→114→122→123→118→119→113のループを繰り返し、出力電流の周波数を上昇させ、このループを何度か繰り返したところで、周波数上限値fmaxに達した事を監視していたOFR107の信号を検出したインバータ装置102はステップ124を実行し、単独運転状態になったことを検出して出力を停止する。
【0011】
また、交流電力系統103が停電となったとき、前回サイクルのステップ121においてインバータ装置102が周波数 F=(f0−Δf)の出力電流を出力した場合、ステップ113において、交流電力系統103の電圧の周波数fは、インバータ装置102の出力電流の周波数に等しい F=(f0−Δf)として検出され、インバータ装置102は、ステップ114にて、(f0−fa)〜(f0+fa)の範囲外にあると判定し、ステップ122にて、(f<f0)と判定するので、図10に示すステップ112→113→114→122→125→118→119→113のループを繰り返し、出力電流の周波数を減少させ、このループを何度か繰り返したところで、周波数下限値fminに達した事を監視していたUFR108の信号を検出したインバータ装置102はステップ124を実行し、単独運転状態になったことを検出して出力を停止する。
【0012】
図11(a)〜(b)は従来の単独運転検出方法によるインバータ装置102の出力電流波形のタイミングを示すタイムチャートであって、交流電力系統103の定格電圧よりも高い周波数変動を与える歪みを付与したインバータ出力電流を図11(a)、交流電力系統の定格電圧よりも低い周波数変動を与える歪みを付与したインバータ出力電流を図11(b)に示すものである。図において、点線で示す波形は、交流電力系統103の電圧波形を示し、実線で示す波形は、インバータ装置102の出力電流波形を示す。
【0013】
図11(a)に示すように、従来のインバータ装置102は、出力電流の周波数が増加するように、ゼロクロスポイントを期間終点する所定期間tzが出力ゼロとなるわずかに歪んだ電流を出力する。図11(a)に示すt0は、交流電力系統の電圧波形の半周期であり、t1はインバータ装置102の出力電流波形の正弦波形部分の半周期である。ここで、電圧波形の半周期、すなわち、t0に対するゼロ時間tzの割合は、チョッピング・フリクションcf(以降、cf値と称する)と呼ばれる。図11(a)に示すインバータ102の出力電流は、交流電力系統電圧の定格半周期t0よりも短い半周期t1の基本波成分を持つので、第1半サイクルにおいて交流電力系統電圧の定格周波数f0よりも高い周波数となる。次の第2の半サイクルが始まる前に、インバータ装置102の出力電流がゼロに達したとき、出力電流は、時間tzの期間、交流電力系統電圧の次の半サイクルが始まるまで、ゼロを維持しつづける。次の半サイクルについては、インバータ装置102の出力電流と、交流電力系統電圧の方向が逆向きとなるだけで、第1半サイクルと同様な歪みを付与した電流が出力される。
【0014】
図11(b)に示すように、インバータ装置102は、出力電流の周波数が減少するように、出力電流波形のピークポイントからゼロクロスポイントに至る下降波形経路側に任意の電流を出力するわずかに歪んだ電流を出力する。図11(b)に示すt2はインバータ装置102の出力電流波形の正弦波形部分の半周期である。図11(b)に示すインバータ102の出力電流は、第1半サイクルにおいて交流電力系統電圧の定格半周期t0よりも長い半周期t2の基本波成分を持つので、定格周波数f0よりも低い周波数となる。次の半サイクルについては、インバータ102の出力電流と、交流電力系統電圧の方向が逆向きとなるだけで、第1半サイクルと同様な歪みを付与した電流が出力される。
【0015】
このインバータ装置102によるインバータ出力電流波形の歪ませ方は、図11(a)に示したほか、図12(a)に示すように、ゼロクロスポイントを含んだその両側の所定期間tzが出力レベルゼロとなる歪みをインバータ出力に付与しても良い、そうすれば、インバータ装置102の出力電流の見かけ上の半周期t1は、定格周波数の半周期t0よりも短くなる結果、出力電流の周波数は定格周波数f0より高くなる。
【0016】
さらには、図11(b)に示したほか、図12(b)に示すように、ゼロクロスポイントを含んだその両波高ピーク側に任意の出力を出力する歪をインバータ出力波形に付与してもよい。そうすれば、インバータ装置102の出力電流の見かけ上の半周期t2は、定格周波数の半周期t0よりも長くなる結果、出力電流の周波数は定格周波数f0より高くなる。
【0017】
図11(a)〜(b)に示したようなインバータ装置102の出力電流の歪ませ方を使って、図10のフローチャートに示した検出動作に従ってインバータ装置102を制御した場合において、交流電力系統が正常時のインバータ装置102の出力電流波形を図13に示す。図において、点線で示す波形は、交流電力系統103の電圧波形を示し、実線で示す波形は、インバータ装置102の出力電流波形を示す。
【0018】
さらに、図12(a)〜(b)に示したようなインバータ装置102の出力電流の歪ませ方を使って、図10のフローチャートに示した検出動作に従ってインバータ装置102を制御した場合において、交流電力系統が正常時のインバータ装置102の出力電流波形を図14に示す。図において、点線で示す波形は、交流電力系統103の電圧波形を示し、実線で示す波形は、インバータ装置102の出力電流波形を示す。
【0019】
ところで、図15(a)〜(b)は、それぞれ、分散電源装置の出力電流と、交流電力系統電圧のタイミングを示すタイムチャートで、交流電力系統と連系しつつ直流電力を交流電力に変換する分散型電源装置にあっては、図15(a)に示す分散型電源装置の出力電流は、その位相が、図15(b)に示す交流電力系統電圧の位相に一致させて運転するのが、直流を交流に変換する電力変換器としての利用率が最も高い理想的な状態である。図13および図14で明らかなよう、従来のインバータ装置102は、理想的な分散型電源装置のように、その出力電流の位相が交流電力系統電圧の位相に出来るかぎり一致するように、ゼロクロスポイント近傍で周波数変動をともなう歪が付与されるような電流が出力されているので、直流電力を交流電力に変換する電力変換器の利用率が高くなる出来る限り理想に近い良好な状態で運転されていると言う事が言える。
【0020】
図16は、従来のインバータ装置102のcf値をパラメータとした出力電流波形の周波数特性を示す周波数スペクトラムで、cf値が0.05、0.02、および、0.01の各場合について測定した結果を示す。インバータ装置102の出力電流波形は、図13に示すようにゼロクロスポイント近傍において歪みを付与された隅関数となるので、出力電流の周波数特性は、奇数次の高調波成分のみが存在する図16に示すような周波数スペクトラムとなる。図で明らかなように、cf値が大きな値をとるほど、出力電流の高調波成分の振幅は大きくなるという傾向を示している。
【0021】
図17は、従来のインバータ装置102について任意の並列等価インダクタンスの値に対して、不感帯として動作する並列等価キャパシタンスの値の限界点をプロットして得た不感帯の特性図である。すなわち、従来の周波数シフト方式を採用した従来のインバータ装置102について、図9で述べた負荷7の並列等価抵抗109の抵抗値をR[Ω]、並列等価インダクタンス110のインダクタンスをL[H]、および、並列等価キャパシタンス111のキャパシタンスをC[F]とおき、等価インダクタンスLを横軸に、負荷7の等価キャパシタンスCを縦軸にとり、cf値をパラメータとして変化させた場合の不感帯を調べた実験結果が図17である。実験では、等価抵抗Rは14.4Ωの場合について述べてある。図において横軸に平行な2本の点線は、OFR107またはUFR108のみを受動的単独運転検出方法として使った場合において、任意の等価インダクタンスLの値に対して、不感帯として動作する等価キャパシタンスCの限界点をプロットしたものである。すなわち、横軸に平行な2本の点線で囲まれた領域は、OFR107またはUFR108のみを受動的単独運転検出方法として使った場合における不感帯領域を示している。
【0022】
次に、一点鎖線または二点鎖線で示す曲線は、従来の周波数シフト方式のみを能動的単独運転検出方式として使った従来のインバータ装置102について、任意の等価インダクタンスLの値に対して、不感帯として動作する等価キャパシタンスCの限界点をプロットしたものである。すなわち、一点鎖線または二点鎖線で示す曲線で囲まれた領域は、従来の周波数シフト方式のみを能動的単独運転検出方法として使った場合における不感帯を示している。受動的単独運転による不感帯と能動的単独運転による不感帯の領域が重なり合わない場合、システム全体として不感帯が存在しない理想的な特性を得ていると言える。また、受動的単独運転による不感帯と能動的単独運転による不感帯が重なり合う領域が小さい場合、システム全体として不感帯となる領域が小さい良好な特性を得ていると言える。図で明らかなように、cf値として大きな値を選んだ方が不感帯の重なり合う領域が小さくなる良好な特性が得られるという事がわかる。
【0023】
次に、従来のインバータ装置2について調べたcf値と出力電流の歪み率THDiの関係を図18に示す。図に示すように、cf値と電流歪み率THDiの関係は線形比例していることがわかる。一般的に、電流歪み率THDiが大きくなるほど、交流電力系統に接続されるトランスや各種回転電機のような誘導性負荷によって消費される損失が増大する事が知られており、図18に示す特性から、cf値を大きくとるほど、誘導性負荷等によって消費される損失が増大する事がわかる。
【0024】
以上述べたように、図17の説明で述べた特性から、従来の周波数シフト方式による能動的独運転方式では、不感帯の領域を小さくするか、または、不感帯の領域を無くして、単独運転検知感度を良好にするためには、cf値を大きくする必要があるが、図18に述べた特性から、cf値を大きくすると、電流歪み率THDiが増大し、誘導性負荷によって消費される損失が増大するという問題点があった。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
このような出力周波数に変動が生じるように、所定の信号を与えることにより、出力波形のゼロクロスポイントおよびその近傍の所定区間を歪ませ、この歪みにより生じるインバータ装置の周波数変動を検出してインバータ装置の単独運転を検知する従来の単独運転検出方法を搭載する従来のインバータ装置では、単独運転検知感度を上げるため、不感帯の領域を小さくする、または、不感帯の領域を無くすためにcf値を大きく設定する必要があったが、cf値を大きく設定すると、インバータ装置の出力電流の高調波成分が大きくなり、出力電流の電流歪み率が増大し、高調波電流が原因となって発生する交流電力系統に接続される誘導性負荷に消費される損失が増大するという問題点があり、単独運転検知感度を上げるため、不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧して、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さい単独運転検知方法を搭載したインバータ装置が要求されている。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明のインバータ装置は上記目的を達成するために、直流電力を交流電力系統に連係させつつ交流に変換して負荷に供給し、前記交流電力系統との連係を離れて単独運転をはじめた際にインバータ出力に生じる周波数変動、もしくは周波数変動に起因する変動を検出してインバータ主回路の単独運転を検知する単独運転検知手段を有するインバータ装置において、該インバータ装置の出力周波数に変動が生じるように、インバータ出力のピークポイントおよびその近傍の所定区間において、インバータ出力電流の変位が連続で、かつ、インバータ出力電流の周波数が不連続な周波数変動をともなう電流歪を付与する電流歪付与手段を備え、電流歪付与手段は、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む所定の周波数区間の範囲内にある場合は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する第2の電流波形を交互に繰り返して出力し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形が出力を完了する時点で発生するピークポイントにおいて、前記第2の電流波形のピークポイントのタイミングが、前記交流電力系統電圧のピークポイントに一致するようにしたことを特徴とするインバータ装置としたものである。
【0029】
発明によれば、第1と第2の電流波形が出力を完結するピークポイントにおいて、出力電流位相と負荷電圧位相は同時にゼロとなり、インバータ装置の瞬時効率が最も大きい出力電流の位相が交流電力系統電圧の位相に一致する理想的な状態に限りなく近づける事ができ、直流電力を交流電力に変換する変換器として最も大きい利用率でインバータ装置を運転する事ができ、単独運転検知感度を上げるため、不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧して、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さい単独運転検知方法を搭載したインバータ装置が得られる。
【0030】
また他の手段は、電流歪付与手段は、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む前記所定の周波数区間の範囲外にある場合は、前記交流電力系統電圧の周波数変化に応じて正帰還ループでインバータ出力周波数が変化するような電流歪を付与する電流波形を出力することを特徴とする請求項記載のインバータ装置としたものである。
【0031】
そして本発明によれば、単独運転検知感度を上げるため、不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧して、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さい単独運転検知方法を搭載したインバータ装置が得られる。
【0032】
また他の手段は、第1の電流波形は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する出力電流の周期を任意回連結するものであって、第2の電流波形はその出力周波数が下降する電流歪を付与する出力電流の周期を任意回連結するものであることを特徴とする請求項記載のインバータ装置としたものである。
【0033】
そして本発明によれば、単独運転検知感度を上げるため、不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧して、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さい単独運転検知方法を搭載したインバータ装置が得られる。
【0034】
また他の手段は、電流歪付与手段は、ある時点で検出される交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングと、その後検出される前記交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングまでの経過時間を、該経過時間内に出現する前記交流電力系統電圧一周期分の出現個数で除算して前記交流電力系統電圧周期の平均値を演算する電圧周期演算手段と、該交流電力系統電圧周期の4分の1に相当する期間を、前記交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングから経過させたタイミング、および、前記交流電力系統電圧周期の平均値の4分の3に相当する期間を、前記交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングから経過させたタイミングをピークポイントとして決定するピークポイント決定手段を備えることを特徴とする請求項記載のインバータ装置としたものである。
【0035】
そして本発明によれば、単独運転検知感度を上げるため、不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧して、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さい単独運転検知方法を搭載したインバータ装置が得られる。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明は、直流電力を交流電力系統に連係させつつ交流に変換して負荷に供給し、前記交流電力系統との連係を離れて単独運転をはじめた際にインバータ出力に生じる周波数変動、もしくは周波数変動に起因する変動を検出してインバータ主回路の単独運転を検知する単独運転検知手段を有するインバータ装置において、該インバータ装置の出力周波数に変動が生じるように、インバータ出力のピークポイントおよびその近傍の所定区間において、インバータ出力電流の変位が連続で、かつ、インバータ出力電流の周波数が不連続な周波数変動をともなう電流歪を付与する電流歪付与手段を備え、電流歪付与手段は、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む所定の周波数区間の範囲内にある場合は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する第2の電流波形を交互に繰り返して出力し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形が出力を完了する時点で発生するピークポイントにおいて、前記第2の電流波形のピークポイントのタイミングが、前記交流電力系統電圧のピークポイントに一致するようにしたことを特徴とするインバータ装置としたものであり、単独運転の検知感度を良好にするために周波数変動の大きい電流歪を付与しても、ピークポイントまたはその近傍において発生する出力電流の高調波成分は極めて微小な振幅となり、インバータ出力電流歪率は極めて微小な値となるので、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷による損失は僅かな値にとどめる事ができ、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さい単独運転検知感度の良好なインバータ装置が得られ、また、単独運転時に移行した時に、交流電力系統に接続される誘導性負荷によってインバータ出力周波数が上昇したり、または、交流電力系統に接続される容量性負荷によりインバータ出力周波数が下降することがあっても、ある期間は電流歪付与による周波数変動と負荷による周波数変動が相殺し合って単独運転を検出できなくなっても、次の期間では周波数変動を助長し合うようになるので、インバータ出力周波数は確実に変動する事になり、確実に単独運転を検知できる。また、直流電力を交流電力に変換する変換器として最も大きい利用率となるように、このように交互に出力される第1と第2の電流波形が出力を完結する交流電力系統電圧の前記ピークポイントにおいて、その出力電流の位相が、交流電力系統電圧の位相に一致するようにしたことを特徴としたものであり、インバータ装置の瞬時効率が最も大きい出力電流の位相が交流電力系統電圧の位相に一致する理想的な状態に限りなく近づける事ができ、分散電源として最も大きな利用率でインバータ装置を運転できるという作用を有する。
【0038】
また、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む所定の周波数区間の範囲外にある場合は、前記交流電力系統電圧の周波数変化に応じて正帰還ループでインバータ出力周波数が変化するような電流歪を付与する電流波形を出力することを特徴としたものであり、インバータ装置が単独運転に移行した際に、負荷電圧周波数は正帰還ループで加速されて迅速に変動して単独運転と判定される周波数上限値または周波数下限値に達するので、単独運転に移行した際に迅速に単独運転を検出できるという作用を有する。
【0039】
また、インバータ装置の出力周波数が上昇する電流歪を付与する出力電流の周期を任意回連結する第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する出力電流の周期を任意回連結する第2の電流波形を交互に出力することを特徴としたものであり、第1と第2の電流波形が出力を完結する期間において、出力電流の平均値は零となり直流成分が消失するので、直流成分が交流電力系統に加わる事によって発生する各種電気機器への悪影響が発生しないという作用を有する。
【0040】
また、本発明の電圧周期演算手段は、ある時点で検出される交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングと、その後検出される交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングまでの経過時間を、該経過時間内に出現する前記交流電力系統電圧一周期分の出現個数で除算して交流電力系統電圧周期の平均値を演算することを特徴としたものであり、負荷電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングのゼロクロスポイントのみの間隔から計測される電圧周期は、負荷電圧の波形変化の影響を受けずに安定した電圧周期が得られ、その安定した電圧周期の平均値を演算する事による低域フィルタ効果により高周波成分を除去した、さらに安定した電圧周期平均値を得ることができる。また、本発明のピークポイント決定手段は、該交流電力系統電圧周期の4分の1に相当する期間を、該交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングから経過させたタイミング、および、該交流電力系統電圧周期の平均値の4分の3に相当する期間を、該交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングから経過させたタイミングをピークポイントとして決定することを特徴としたものであり、負荷の状態によって変化する負荷電圧の波形変化による発生タイミングのばらつきがほとんど発生しない負荷電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングのゼロクロスポイントの位置から、安定した該電圧周期平均値の4分の1と4分の3の時間を経過させたタイミングでピークポイントを決定しているので、発生タイミングのばらつきがほとんどない安定したタイミングのピークポイントを得ることができ、発生タイミングのばらつきのない安定したタイミングでピークポイントを決定する事により、ピークポイントを基に歪電流を作成する動作を確実にして、本発明のインバータ装置が確実に動作できるという作用を有する。
【0041】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0042】
【実施例】
図1は本発明の実施例を示すブロック図である、図1に示すように、直流電源1より供給された直流電力は、インバータ装置2により交流電力系統3に連係させつつ交流電力に変換され、並列等価抵抗4、並列等価インダクタンス5、並列等価キャパシタンス6より構成される負荷7に供給されている。負荷7にはインバータ装置2とは別に、交流電力系統3の交流電力が、遮断器8および柱上トランス9を介して供給されている。
【0043】
インバータ装置2は、直流電源1より供給された直流電力を交流電力系統3に連系させつつ交流電力に変換して負荷7に供給するインバータ主回路10と、負荷7に供給された負荷電圧Voを検出する電圧検出器11と、負荷電圧Voを基にしてゼロクロスポイントのタイミングを検出してゼロクロス同期信号ZSを発生するゼロクロス検出回路12と、インバータ主回路10が出力する出力電流Ioを検出する電流検出回路13と、負荷電圧Vo、ゼロクロス同期信号ZS、および、出力電流Ioを基にして単独運転検知をするために電流歪を付与した電流がインバータ2から出力されるようにインバータ主回路10をPWM制御するゲートパルス信号GPを発生する電流歪付与手段14と、電流歪付与手段14が出力するゲートパルス信号GPを基にしてインバータ主回路10を駆動するゲートドライブ信号GDを発生するゲートドライブ回路15を備えている。インバータ主回路10と負荷7の間にはコイル16、17とコンデンサ18によって構成され、インバータ出力に含まれる高調波成分を除去するフィルタ回路19が挿入されている。
【0044】
電流歪付与手段14は、記憶している電流波形パターンIWPをゼロクロス同期信号ZSに同期させて出力する電流波形記憶手段20と、電流波形パターンIWPをゼロクロス同期信号ZSに同期させて電流波形記憶手段20から順次読み出して出力電流設定信号Isetと乗算して電流目標値Iobjを演算する乗算手段21と、出力電流Ioと電流目標値Iobjの差を演算して電流偏差eiを計算する電流偏差演算手段22と、電流偏差eiを基にPI演算した制御量IYを計算するPI演算手段23と、制御量IYをパルス幅変調してPWMデータDpwmを発生するPWM変調手段24と、負荷電圧Voの極性が負から正に変動するタイミングをとらえて負荷電圧Voの電圧周期Tvを演算する電圧周期演算手段25と、負荷電圧Voの極性が負から正に変動するタイミングと電圧周期Tvからピークポイントを検出してピークポイント同期信号PSを発生するピークポイント決定手段26と、ピークポイント同期信号PSに同期してPWMデータアドレスポインタAPpwmを発生するPWMデータアドレスポインタ発生手段27と、PWM変調手段24が発生するPWMデータDpwmを記憶して、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指定するアドレスのPWMデータDpwmをピークポイント同期信号PSに同期して順次読み出してゲートパルス信号GPを発生するPWM記憶手段28と、ゼロクロス信号ZSの間隔から計測した負荷電圧Voの半周期から電圧周波数を演算し、この周波数が周波数上限値OFを超えるか、または、周波数下限値UFを下回る場合はゲートドライブ回路15のスイッチング制御を停止させる周波数異常信号FERを発生する周波数異常検出手段29と、負荷電圧Voが電圧上限値OVを超えるか、または、電圧下限値UVを下まわる場合はゲートドライブ回路15のスイッチング信号を停止させる電圧異常信号VERを発生する電圧異常検出手段30を備えている。
【0045】
次に、このインバータ装置の動作について説明する。図2(a)〜(c)は、それぞれ、負荷電圧Vo、ゼロクロス同期信号ZS、および、ピークポイント同期信号PSのタイミングを示すタイムチャートである。電圧検出器11で検出された負荷電圧Voはゼロクロス検出回路12に入力される。ゼロクロス検出回路12は、図2(a)に示す負荷電圧Voが電圧零または零近傍に達するタイミングをとらえて、図2(b)に示すようなゼロクロス同期信号ZSを発生する。
【0046】
電圧周期演算手段25は、負荷電圧Voの極性が負から正に変化するタイミングのゼロクロスポイントのうち、今回発生したゼロクロスポイントから数えて、m回前〜(m−1)回前のゼロクロスポイントの間隔から計測される周期Tm、(m−1)回前〜(m−2)回前のゼロクロスポイントの間隔から計測される周期Tm−1、・・…、2〜1回前のゼロクロスポイントの間隔から計測されるT1、および、今回周期Toをそれぞれ計測し、これらのm個の周期Tk(k=0〜(m−1))から(数1)で示す演算式より平均周期Tavrを計算する。
【0047】
【数1】
Figure 0004037161
【0048】
(数1)で示す演算式は、高い周波数成分を除去する低域フィルタとしての効果があり、高い周波数成分の変動を抑えた安定した平均周期Tavrが得られる。ゼロクロス信号の間隔から計測される半周期から電圧周期の平均値を演算する場合、負荷の状態によっては、負荷電圧Voの波形が変形して、負荷電圧Voが正となる区間と負荷電圧Voが負となる区間が均等にならない場合があり、電圧周期の平均値がゼロクロスポイント毎に振動する事があるが、本実施例の電圧周期演算手段25では、負荷電圧Voの極性が負から正に変化するタイミングのゼロクロスポイントのみの間隔から電圧周期を計測しているので、負荷電圧波形の変形の影響を受けずに安定した電圧周期が得られる。さらに、その平均値を演算する事による高い周波数成分の変動を抑えた低域フィルタとしての効果により安定した電圧周期平均値を得ることができる。
【0049】
次に、ピークポイント決定手段26は、今回発生した負荷電圧Voの極性が負から正に変化するタイミングのゼロクロスポイントから(数1)より求めた平均周期Tavrの1/4の時間、すなわちTavr/4だけ経過したタイミングと、平均周期Tavrの3/4すなわち3Tavr/4だけ経過したタイミングを負荷電圧Voがピーク値に達するピークポイント・タイミングとして検出して、図2(c)に示すようなピークポイント同期信号PSを発生する。本実施例のピークポイント決定手段26では、負荷の状態によって変化する負荷電圧Voの波形変化による発生タイミングのばらつきがほとんど発生しない、負荷電圧Voの極性が負から正に変化するタイミングのゼロクロスポイントの位置から、前述した電圧周期演算手段25で求めた安定した平均周期Tavrの4分の1および4分の3の時間を経過させたタイミングでピークポイントを決定しているので、発生タイミングのばらつきがほとんどない安定したタイミングのピークポイントを得ることができる。
【0050】
電流波形記憶手段20では、記憶している電流波形パターンIWPをゼロクロス同期信号に同期して読み出して乗算手段21に出力する。乗算手段21は、出力電流設定信号Isetと電流波形パターンIWPを乗算して電流目標値Iobjを作製して電流偏差演算手段22に出力する。電流偏差演算手段22は、電流検出器10が計測したインバータ装置2が出力する出力電流Ioと電流目標値Iobjから電流偏差eiを演算してPI演算手段23に出力する。PI演算手段23は、電流偏差eiに正比例する比例項と電流偏差を一定区間積分した電流偏差積分値に比例する積分項を加算したPI制御量IYを演算してPWM変調手段24に出力する。PWM変調手段24は、制御量IYをパルス幅変調してインバータ主回路10をPWM制御するためにインバータ主回路10のスイッチング素子を制御する基のデータパターンとなるPWMデータDpwmを作製してPWM記憶手段28に格納する。ここで、PWMデータDpwmの基になるPI制御量IYの余弦波一周期分に相当するPWMデータDpwmが、PWM記憶手段28に格納されるものとする。例えば、PWMデータDpwmがPWM記憶手段28に格納されている開始アドレス値をNstr、PWMデータDpwmがPWM記憶手段28に格納されている最終アドレス値をNendとおくと、PWM記憶手段28の開始アドレスNstrには、PI制御量IYの余弦波形の位相が零となるPWMデータDpwmが格納され、最終アドレスNendにはPI制御量IYの余弦波形の位相が2πとなるPWMデータDpwmが格納されている。
【0051】
図3(a)〜(f)は、それぞれ、インバータ装置2が単独運転状態となっていない通常の運転状態における負荷電圧Voピークポイント同期信号PS、PI制御量IY、後術するPWMデータアドレスポインタAPpwmの読み出し増加率、PWMデータアドレスポインタAPpwm、および、インバータ出力電流Ioのタイミングを示すタイムチャートである。図3(f)において、点線で示す波形は、交流電力系統3の電圧波形を示し、実線で示す波形は、インバータ装置2の出力電流波形を示す。
【0052】
前述したように、ピークポイント決定手段26は、図3(a)に示す負荷電圧Voのピークポイント近傍で、図3(b)に示すようなピークポイント同期信号PSを発生する。PI演算手段23は、交流電力系統電圧Voと同相となる図3(c)に示すようなPI制御量IYを出力する。PWM記憶手段28は、このPI制御量IYをパルス幅変調したPWMデータDpwmを順次記憶する。PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、単位時間あたりに増加するカウントアップ値が一定の割合でカウントアップ動作をし続けるカウンタを内臓しており、該内臓カウンタが指示するカウント値に対する一定の読み出し増加率でカウントアップするPWMデータアドレスポインタAPpwmを出力する。
【0053】
ここで、該内臓カウンタのカウント値に対するPWMデータアドレスポインタAPpwmの読み出し増加率をRcとおくと、図3に示すピークポイントが立ち上がる▲1▼のタイミングにおいて、PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、図3(d)に示すように、該読み出し増加率Rcが1を越える適当な値Rc1に設定し、同時に該内臓カウンタをリセットする。この時、PWMデータアドレスポインタAPpwmは、該内臓カウンタに1を越える値に設定された読み出し増加Rc1を乗算して得られる、PWM記憶手段28に格納されている開始アドレス値Nstrを指示している。PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、該内臓カウンタをカウントアップし続け、該内臓カウンタに1を越える値に設定された読み出し増加Rc1を乗算して得られるアドレス値を、PWMデータアドレスポインタAPpwm値として出力し続ける。PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指示するアドレスが最終アドレス値Nendに達すると、図3に示す▲2▼のタイミングにおいて、該内臓カウンタをリセットする。この時、PWMデータアドレスポインタAPpwmは、再び、開始アドレス値Nstrを指示している。▲2▼のタイミングにおいて、PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、図3(d)に示すように、読み出し増加率Rcを(数2)に示すRc2に設定する。
【0054】
【数2】
Figure 0004037161
【0055】
c2は1以上の値に設定されるので、(数3)より、Rc2は1以下の値となる。PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、該内臓カウンタをカウントアップし続け、該内臓カウンタに1以下の値に設定された読み出し増加Rc1を乗算して得られるアドレス値を、PWMデータアドレスポインタAPpwm値として出力し続ける。PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指示するアドレスが最終アドレス値Nendに達すると、図3に示す▲3▼のタイミングにおいて、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指示するアドレスが最終アドレス値Nendを維持し続けるように該内臓カウンタのカウンタ値をそのままの値に維持する。そして、図3に示す次のピークポイントが立ち上がる▲1▼’のタイミングで、該内臓カウンタをリセットする。この時同時に、PWMデータアドレスポインタAPpwmは、再びPWM記憶手段28に格納されている開始アドレス値Nstrを指示する。▲1▼’のタイミングにおいて、PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、図3(d)に示すように、読み出し増加率Rcを再びもとのRc1に設定する。ここで、ピークポイントが立ち上がる▲1▼’のタイミングの方が、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指示するアドレスが最終アドレス値Nendに達する▲3▼のタイミングに先行する場合は、ピークポイントが立ち上がる▲1▼’のタイミングで、該内臓カウンタをリセットし、読み出し増加率RcをRc1に設定する。▲1▼’のタイミング以降は、前述した▲1▼のタイミングから▲1▼’のタイミングまでの処理と同様の処理を繰り返し動作し続ける。
【0056】
PWM記憶手段28は、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指示するPMWデータを順次読み出して、ゲートドライブ信号GDを作製してゲートドライブ回路15に出力する。ゲートドライブ回路15は、インバータ主回路10にゲートドライブ信号GDを出力する。インバータ主回路10は、内臓するスイッチング回路を該ゲートドライブ信号GDによってPWM制御した結果インバータ装置2から、図3(f)に示すような出力電流を出力する。図3に示す▲1▼のタイミングから▲2▼のタイミングまでの期間を区間T1、▲2▼のタイミングから▲1▼’のタイミングまでの期間を区間T2とする。区間T1において、PWMデータアドレスポインタAPpwmが指示するアドレスポインタ値は、▲1▼のタイミングで、PWM記憶手段28に格納されている開始アドレス値Nstrからカウントアップを開始して、▲2▼のタイミングで最終アドレス値Nendに達するまでのアドレス値を指示している。PWM記憶手段28には、開始アドレス値Nstrから最終アドレス値Nendまで、余弦波一周期分が記憶されているので、インバータ主回路2からは、図3(f)に示すような余弦波一周期分の電流が出力される事になる。区間T2においても同様に、インバータ主回路2からは、図3(f)に示すような余弦波一周期分の電流が出力される事になる。従って、区間T1は、この区間に出力される電流波形(以降第1の電流波形と称す)の周期に相当し、区間T2は、この区間に出力される電流波形(以降第2の電流波形と称す)の周期に相当する。図3(f)に示すように、負荷電圧Voの定格周期をT0とおくと、図3から明らかなように、第1の電流波形の周期T1は、負荷電圧の定格周期T0よりも短いので、その周波数は定格周波数f0よりも上昇しており、第2の電流波形の周期T1は、負荷電圧の定格周期T0よりも長いので、その周波数は定格周波数f0よりも下降している。▲2▼のタイミングにおいて、PWMデータアドレスポインタAPpwmは、余弦波の位相が零に相当するPWMデータが格納されている最終アドレス値Nend、または、開始アドレス値Nstr、を指示するので、▲2▼のタイミングにおいて、インバータ装置2の出力電流波形は連続となる。▲3▼のタイミングにおいても同様に、次のピークポイントが立ち上がる▲1▼’のタイミングまでPWMデータアドレスポインタAPpwmは、余弦波の位相が零に相当するPWMデータが格納されている最終アドレス値Nendを維持し、▲1▼’のタイミングで、PWMデータアドレスポインタAPpwmは、余弦波の位相が零に相当するPWMデータが格納されている開始アドレス値Nstrを指示するので、インバータ装置2の出力電流波形は連続となる。以上で述べたように、本発明のインバータ装置2の歪電流付与手段14の処理により、ピークポイント近傍において、インバータ装置2の出力電流波形はその変位が連続で、周波数が不連続となる。
【0057】
次に、本発明のインバータ装置の電流歪付与手段14により、第1の電流波形と第2の電流波形が出力を完結する交流電力系統電圧のピークポイントにおいて、インバータ装置2の出力電流の位相が、交流電力系統電圧の位相に一致するメカニズムについて説明する。
(数2)を変形すると(数3)のようになる。
【0058】
【数3】
Figure 0004037161
【0059】
ここで、該内臓カウンタの単位時間あたりのカウント値をCtとおく。
(数3)の両辺に(Nend−Nstr)をかけてCtで割ると(数4)のように変形できる。
【0060】
【数4】
Figure 0004037161
【0061】
区間T1において、PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、PWMアドレスポインタADpwmを開始アドレスNstrから開始して、単位時間あたりのカウント値がRc1・CtでT1なる期間カウントアップ動作をするとPWMアドレスポインタADpwmはNendに達するから、(数5)が成立する。
【0062】
【数5】
Figure 0004037161
【0063】
区間T2において、PWMデータアドレスポインタ発生手段27は、PWMアドレスポインタADpwmを開始アドレスNstrから開始して、単位時間あたりのカウント値がRc2・CtでT2なる期間カウントアップ動作をするとPWMアドレスポインタADpwmはNendに達するから、(数6)が成立する。
【0064】
【数6】
Figure 0004037161
【0065】
読み出し増加率Rcを1とする場合、単位時間あたりのカウント値がCtとする内臓カウンタが、開始アドレスNstrからカウントアップを開始してからT0なる時間カウントアップ動作をするとカウント値はNendに達するから、(数7)が成立する。
【0066】
【数7】
Figure 0004037161
【0067】
(数5)〜(数7)を変形すると(数8)〜(数10)のようになる。
【0068】
【数8】
Figure 0004037161
【0069】
【数9】
Figure 0004037161
【0070】
【数10】
Figure 0004037161
【0071】
(数8)〜(数10)を(数4)に代入すると、(数11)が成立する。
【0072】
【数11】
Figure 0004037161
【0073】
すなわち、区間T1における読み出し増加率Rc1に適当な値を設定した後、区間T2における読み出し増加率Rc2を(数3)に従って設定すれば(数11)が成立し、交互に出力される第1と第2の電流波形が出力を完結する期間(T1+T2)は、負荷電圧の2周期分2T0に等しくなる。これは、第1と第2の電流波形が出力を完結する図3で示す▲3▼のタイミングにおいて、交流電力系統電圧が2周期分を出力するタイミングに一致している事を意味する。ところで、第1の電流波形は、ピークポイントが立ち上がる図3で示す▲1▼のタイミングよりその出力を開始しているので、第1と第2の電流波形が出力を完結する期間(T1+T2)、すなわち、交流電力系統電圧の2周期分2T0を経過するタイミングは、交流電力系統電圧ピークポイントに一致する。ゆえに、本発明のインバータ装置2の電流歪付与手段14により、第1の電流波形と第2の電流波形が出力を完結する交流電力系統電圧のピークポイントにおいて、インバータ装置2の出力電流の位相は、交流電力系統電圧の位相(零)に一致する。
【0074】
図4(a)〜(c)は、それぞれ、図3で述べたインバータ装置2が単独運転状態となっていない通常の運転状態において、負荷電圧Vo、ピークポイント同期信号PS、および、インバータ出力電流Ioのタイミングを示すタイムチャートを拡大したものである。図4(c)において、点線で示す波形は、交流電力系統3の電圧波形を示し、実線で示す波形は、インバータ装置2の出力電流波形を示す。前述した電流歪付与手段14によりインバータ装置2を制御すれば、インバータ装置2は、T1、T3…区間において、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形を出力し、T2、T4…区間において、その出力周波数が下降する電流歪を付与する第2の電流波形を出力し、第1と第2の電流波形が出力を完結するピークポイントにおいて、出力電流位相が負荷電圧位相に一致するような電流波形Ioを出力する。すなわち、T1、T3区間において、出力電流Ioは負荷電圧Voに対して進み位相となるが、T2、T4区間において、出力電流Ioは負荷電圧Voに対して遅れ位相となり、第1と第2の電流波形が出力を完結するピークポイントにおいて、出力電流位相と負荷電圧位相は同時にゼロとなり、図4に示すように、インバータ装置の瞬時効率が最も大きい出力電流の位相が交流電力系統電圧の位相に一致する理想的な状態に限りなく近づける事ができ、直流電力を交流電力に変換する変換器として最も大きい利用率でインバータ装置2を運転する事ができる。
【0075】
このインバータ装置2では、交流電力系統3の停電等が原因となって発生する単独運転状態を、次のように検知してインバータ出力を停止している。
【0076】
まず、インバータ装置2が供給している無効電力が、負荷7が要求している無効電力に一致しない場合について述べる。この場合、インバータ装置2が単独運転状態となると、負荷電圧Voの周波数は、急激に定格周波数から変動し、これにともなって負荷電圧Voの電圧値も変動する。周波数異常検出手段29は、図2(b)に示す隣り合うピークポイント信号PSの間隔から計測した負荷電圧Voの半周期から負荷電圧Voの周波数を演算し、その負荷電圧Voの周波数が周波数上限値OFから周波数下限値UFの範囲からはずれる事を監視し、周波数上限値OFを超えるか、または、周波数下限値UFを下回る場合は、周波数異常信号FERを発生してインバータ主回路10のスイッチング制御を停止させる。
【0077】
電圧異常検出手段30は、負荷電圧Voの周波数が変動した事で同時に変動する負荷電圧Voが、電圧上限値OVから電圧下限値UVの範囲からはずれる事を監視し、負荷電圧Voが電圧上限値OVを超えるか、電圧下限値UVを下まわる場合は、電圧異常信号VERを発生してインバータ主回路10のスイッチング信号を停止させる。
【0078】
次に、インバータ装置2が供給している無効電力と負荷7が要求している無効電力とがほぼ一致する状態において、本発明による単独運転検出方法について述べる。
【0079】
図5は、今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数計測値Fiと次回サイクルにて電流歪付与手段14によって制御されるインバータ装置2の出力電流周波数設定値Foの関係を示すものである。図5に示すように、本発明のインバータ装置2の電流歪発生手段14は、定格周波数f0を含む所定の区間[f0−Δf、f0+Δf](以降所定区間Aと称す)を設け、負荷電圧Voの周波数が所定区間Aの範囲内にある場合は、インバータ装置2は、前述した第1と第2の電流波形を交互に繰り返して出力する。今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数計測値Fiが所定区間Aの範囲以下となる場合は、次回サイクルにて制御されるインバータ装置2の出力電流周波数設定値Foを、今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数計測値Fiよりもさらに低くなるように設定する。今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数計測値Fiが所定区間Aの範囲以上となる場合は、次回サイクルにて制御されるインバータ装置2の出力電流周波数設定値Foを、今回サイクルにて計測される負荷電圧Voの負荷電圧周波数計測値Fiよりもさらに高くなるように設定する。
【0080】
ところで、インバータ装置2が供給している無効電力と負荷7が要求している無効電力とがほぼ一致する状態で、インバータ装置2が単独運転状態になると負荷供給電圧Voの周波数はほとんど変動しなくなり、前述した負荷電圧Voの周波数の異常周波数検出や負荷電圧Voの異常電圧検出で単独運転は監視できなくなる。さらに、インバータ装置2が単独運転に移行しているときのインバータ出力周波数は、インバータ装置2が接続される負荷7の種類によっても影響を受け、負荷7が誘導性負荷である場合には出力周波数は上昇し、負荷7が容量性負荷である場合には出力周波数は下降する。従って、歪電流付与による周波数変動と負荷7による周波数変動の大きさが同じで極性が逆となる場合は、相殺しあって周波数変動が発生しない場合がある。
【0081】
そこで、負荷電圧Voの周波数が、所定区間Aの範囲内にあると判断する場合は、前述したように、インバータ装置2から、周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形と、周波数が下降する電流歪みを付与する第2の電流波形を交互に繰り返して出力すれば、ある基間は電流歪付与による周波数変動と負荷による周波数変動が相殺し合って周波数変動がなくても、次の期間では周端数変動を助長し合うようになり、インバータ装置2の出力周波数は確実に変動するようになる。
【0082】
次に、今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数計測値Fiが所定区間Aの範囲以下となる場合は、前述したように、次回サイクルにて歪電流付与手段14によって制御されるインバータ装置2の出力電流周波数設定値Foを今回計測される負荷電圧周波数計測値Fiよりもさらに低くなるように設定しておけば、負荷電圧周波数が正帰還ループで減少する動作を刳り返して、周波数異常検出手段29は、負荷電圧周波数Foが周波数下限値UFに達したところで確実に単独運転を検出し、周波数異常信号FERを出力して、インバータ主回路10のスイッチング動作を停止させる。
【0083】
今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数計測値Fiが所定区間Aの範囲以上となる場合は、前述したように、次回サイクルにて歪電流付与手段14によって制御されるインバータ装置2の出力電流周波数設定値Foを今回計測される負荷電圧周波数計測値Fiよりもさらに高くなるように設定しておけば、負荷電圧周波数が正帰還ループで増大する動作を刳り返して、周波数異常検出手段29は、負荷電圧周波数Foが周波数上限値OFに達したところで確実に単独運転を検出し、電圧異常信号VERを出力してインバータ主回路10のスイッチング動作を停止させる。
【0084】
図6は、負荷電圧周波数が所定区間Aの範囲内にある場合のインバータ装置2の出力電流の周波数スペクトラムである。すなわち、インバータ装置2から、周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形と、周波数が下降する電流歪みを付与する第2の電流波形を交互に繰り返して出力した図3(f)に示す出力電流波形について、電流波形の周波数変動率ζをパラメータとした場合の、出力電流の高調波の次数と、基本波成分に対する高調波成分の振幅の割合との関係を示したものである。ここで、図3(f)で示すように、周波数が上昇(下降)する歪みを付与した電流波形の周期をTi(i=1,2,3…)、負荷電圧Voの定格周波数をT0とおくと周期変動率ζは(数12)としている。
【0085】
【数12】
Figure 0004037161
【0086】
インバータ装置2の出力電流波形は、 図3(f)で示すように、遇関数となっているので、その周波数スペクトラムは奇数次高調波成分のみが存在する周波数スペクトラムとなる。
【0087】
ところで、従来技術の説明で述べたcf値は、(数13)で示す、電圧波形の半周期t0に対するゼロ時間tzの割合と定義される。
【0088】
【数13】
Figure 0004037161
【0089】
(数13)より(数14)が成立する。
【0090】
【数14】
Figure 0004037161
【0091】
(数12)と(数14)を比較すると、(数14)の2tzは、(数12)の電流波形周期Ti(i=1,2,3…)と定格周期T0との差|Ti−T0|に相当し、(数14)の2t0は(数12)の定格周期T0に相当するので、(数14)において、2tz→|Ti−T0|、2t0→T0のように置き換えると(数12)になる。すなわち、従来のインバータ装置102のcf値とは、本発明の周期変動率ζに相当する量と考えて良い。図6と図14を比較して明らかなように、cf値に相当するパラメータである周波数変動率ζの各値、0.01、0.02、0.05のそれぞれにおいて、本発明のインバータ装置2の出力電流の高調波成分は、従来のインバータ装置102のそれと比較して、著しく減少している事がわかる。
【0092】
図7は、本発明のインバータ装置2の周期変動率ζと出力電流歪率THDiの関係と従来のインバータ装置102のcf値と出力電流歪率THDiの関係を示したものである。図において、実線は本発明のインバータ装置2の周期変動率ζと電流歪み率THDiの関係、点線は従来のインバータ装置102のcf値と電流歪み率THDiの関係を示す。図を見て明らかなように、cf値に相当する同一レベルの周波数変動率ζにおいて、本発明のインバータ装置2の出力電流歪率THDiは、従来のそれと比較して著しく減少している事がわかる。
【0093】
図8は、本発明のインバータ装置2について、任意の並列等価インダクタンス5の値に対して、不感帯として動作する並列等価キャパシタンス6の値の限界点をプロットして得た不感帯の特性である。
【0094】
図8では、負荷7の並列等価抵抗4の抵抗値をR[Ω]、並列等価インダクタンス5のインダクタンスをL[H]、および、並列等価キャパシタンス6のキャパシタンスをC[F]とおき、等価インダクタンスLを横軸に、キャパシタンスCを縦軸にとり、従来例のcf値を0.01、0.02および0.05の各値に変化させたのと同様に、ここでは、これに相当するパラメータである周波数変動率ζを0.01、0.02および0.05の各値に変化させたときの不感帯を調べた実験結果を示す。実験では、従来例と同様に、等価抵抗Rは14.4Ωの場合について調べてある。
【0095】
図において横軸に平行な2本の点線は、周波数異常検出手段29のみを受動的単独運転検出方法として使った場合において、任意の等価インダクタンスLの値に対して、不感帯として動作する等価キャパシタンスCの限界点をプロットしたものである。すなわち、横軸に平行な2本の点線で囲まれた領域は、周波数異常検出手段29のみを受動的単独運転検出方法として使った場合における不感帯領域を示している。
【0096】
次に、一点鎖線または二点鎖線で示す曲線は、単独運転検出方法として、前述した本発明の歪電流付与手段14による能動的単独運転検出方法のみを使ったインバータ装置2について、任意の等価インダクタンスLの値に対して、不感帯として動作する等価キャパシタンスCの限界点をプロットしたものである。すなわち、一点鎖線または二点鎖線で示す曲線で囲まれた領域は、本発明の能動的単独運転検出方法のみを使った場合における不感帯を示している。受動的単独運転検出方法による不感帯と能動的単独運転検出方法による不感帯が重なり合う領域が小さい場合、システム全体として不感帯となる領域が小さい良好な特性を得ていると言える。図8と図17を比較して明らかなように、従来のcf値に相当するパラメータである本発明の周波数変動率ζの各値、0.01、0.02、0.05のそれぞれにおいて、本発明のインバータ装置2の不感帯特性は、従来のインバータ装置102の不感帯特性とほぼ同等のものが得られた。次に、本発明のインバータ装置2の単独運転検知感度を向上するために、能動的単独運転検出方法と受動的単独運転検出方法の不感帯領域が最も小さくなる、周波数変動率ζとして0.05を選んだ場合について考える。周波数変動率ζとして0.05を選んだ場合において、本発明のインバータ装置2の能動的単独運転検出方法と受動的単独運転検出方法の不感帯領域は、その周波数変動率ζに相当するcf値として、0.05を選んだ場合において、従来のインバータ装置102のそれとほぼ同一の特性が得られる。従って、周波数変動率ζとして0.05を選んだ場合の本発明のインバータ装置2の能動的単独運転検出方法による不感帯領域と、受動的単独運転検出方法による不感帯領域の重なり合う部分の不感帯領域は、その周波数変動率ζに相当するcf値として0.05を選んだ場合において、従来のインバータ装置102のそれとほぼ同一のものが得られる。ゆえに、周波数変動率ζとして0.05を選んだ場合の本発明のインバータ装置2の単独運転検知感度は、その周波数変動率に相当するcf値として0.05を選んだ場合の従来のインバータ装置102の単独運転検知感度とほぼ同等のものが得られる。ところが、前述した図7の説明で、cf値に相当する同一レベルの周波数変動率ζにおいて、本発明のインバータ装置2の出力電流歪率THDiは、従来のそれと比較して著しく減少するので、高調波電流が原因となって発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができる。すなわち、本発明のインバータ装置2と従来のインバータ装置102の単独運転検知感度を同等の性能とした場合、本発明のインバータ装置2は、従来のインバータ装置102と比較して、高調波電流が原因となって発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができる。
【0097】
以上で述べたように、本発明のインバータ装置2では、単独運転検知感度を良好にした従来のインバータ装置102のように、高調波電流が原因となって発生する誘導性負荷によって消費される損失が増大すると言う問題を低減する事ができ、単独運転の検知感度を良好にするために、周波数変動率ζを大きくして不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧する事ができるので、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さくてすむという理想的なインバータ装置を提供する事ができる。
【0098】
なお、実施例の電圧周期演算手段は、ある時点で検出される交流電力系統電圧の極性が負から正に変動するタイミングと、その後検出される交流電力系統電圧の極性が負から正に変動するタイミングまでの経過時間を、該経過時間内に出現する交流電力系統電圧一周期分の出現個数で除算して交流電力系統電圧周期の平均値を演算したが、ある時点で検出される交流電力系統電圧の極性が正から負に変動するタイミングと、その後検出される交流電力系統電圧の極性が正から負に変動するタイミングまでの経過時間を、該経過時間内に出現する前記交流電力系統電圧一周期分の出現個数で除算して交流電力系統電圧周期の平均値を演算してもよく、その作用効果に差異を生じない。
【0099】
なお、実施例のピークポイント決定手段は、該交流電力系統電圧周期の4分の1に相当する期間を、交流電力系統電圧の極性が負から正に変動するタイミングから経過させたタイミング、および、交流電力系統電圧周期の平均値の4分の3に相当する期間を、交流電力系統電圧の極性が負から正に変動するタイミングから経過させたタイミングをピークポイントとして決定したが、該交流電力系統電圧周期の4分の1に相当する期間を、交流電力系統電圧の極性が正から負に変動するタイミングから経過させたタイミング、および、交流電力系統電圧周期の平均値の4分の3に相当する期間を、交流電力系統電圧の極性が正から負に変動するタイミングから経過させたタイミングをピークポイントとして決定してもよく、その作用効果に差異を生じない。
【0100】
なお、実施例のインバータ装置2は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する電流波形1周期分の第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する電流波形1周期分の第2の電流波形を交互に出力しているが、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する電流波形1周期分を2、3、4…m回連結した第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する電流波形1周期分を2、3、4…m回連結した第2の電流波形を交互に出力しても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0101】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように、本発明によれば、インバータ装置の出力周波数に変動が生じるように、インバータ出力のピークポイントおよびその近傍の所定区間において、インバータ出力電流の変位が連続で、かつ、インバータ出力電流の周波数が不連続な周波数変動をともなう電流歪を付与し、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む所定の周波数区間の範囲内にある場合は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する第2の電流波形を交互に繰り返して出力し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形が出力を完了する時点で発生するピークポイントにおいて、前記第2の電流波形のピークポイントのタイミングが、前記交流電力系統電圧のピークポイントに一致するようにしているので、インバータ装置の瞬時効率が最も大きい出力電流の位相が交流電力系統電圧の位相に一致する理想的な状態に限りなく近づける事ができ、分散電源として最も大きな利用率でインバータ装置を運転でき、また、単独運転の検知感度を良好にするために、周波数変動率を大きくして、不感帯領域を小さくするか、または、不感帯領域を無くしても、出力電流の高調波成分が小さく、出力電流の電流歪み率を抑圧する事ができるので、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷によって消費される損失を低減する事ができ、単独運転検知感度が良好で、高調波電流が原因で発生する誘導性負荷に消費される損失が小さいという効果のあるインバータ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図
【図2】同負荷電圧Vo、ゼロクロス同期信号ZS、および、ピークポイント同期信号PSのタイミングを示すタイムチャート
【図3】同負荷電圧Vo、ピークポイント同期信号PS、PI制御量IY、PWMデータアドレスポインタAPpwmの読み出し増加率、PWMデータアドレスポインタAPpwm、および、インバータ出力電流Ioのタイミングを示すタイムチャート
【図4】同負荷電圧Vo、ピークポイント同期信号PS、および、インバータ出力電流Ioのタイミングを示すタイムチャート
【図5】同今回サイクルにて計測される負荷電圧周波数Fiと次回サイクルにて電流歪付与手段によって制御されるインバータ装置の出力電流周波数設定値Foの関係を示す図
【図6】同負荷電圧Voの周波数が所定区間Aの範囲内にある場合のインバータ装置の出力電流の周波数スペクトラムを示す図
【図7】同インバータ装置の周期変動率ζと出力電流歪率THDiの関係と従来のインバータ装置のcf値と出力電流歪率THDiの関係を示す図
【図8】同インバータ装置について、任意の並列等価インダクタンスの値に対して、不感帯として動作する並列等価キャパシタンスの値の限界点をプロットして得た不感帯の特性を示す図
【図9】従来の周波数シフト方式を単独運転検出方式として採用した従来のインバータ装置の構成図
【図10】同周波数シフト方式を単独運転検出方式として採用した従来のインバータ装置の検出動作を示すフローチャート
【図11】同単独運転検出方法によるインバータ装置の出力電流波形のタイミングを示すタイムチャート
【図12】同単独運転検出方法によるインバータ装置の出力電流波形のタイミングを示すタイムチャート
【図13】同交流電力系統が正常時のインバータ装置の出力電流波形のタイミングを示すタイムチャート
【図14】同交流電力系統が正常時のインバータ装置の出力電流波形のタイミングを示すタイムチャート
【図15】同分散電源装置の出力電流と交流電力系統電圧のタイミングを示すタイムチャート
【図16】同インバータ装置のcf値をパラメータとした出力電流波形の周波数特性を示す周波数スペクトラムを示す図
【図17】同インバータ装置について任意の並列等価インダクタンスの値に対して、不感帯として動作する並列等価キャパシタンスの値の限界点をプロットして得た不感帯の特性図
【図18】同インバータ装置について調べたcf値と出力電流の歪み率THDiの関係を示す図
【符号の説明】
1 直流電源
2 インバータ装置
3 交流電力系統
7 負荷
10 インバータ主回路
14 電流歪付与手段
25 電圧周期演算手段
26 ピークポイント検出手段

Claims (4)

  1. 直流電力を交流電力系統に連係させつつ交流に変換して負荷に供給し、前記交流電力系統との連係を離れて単独運転をはじめた際にインバータ出力に生じる周波数変動、もしくは周波数変動に起因する変動を検出してインバータ主回路の単独運転を検知する単独運転検知手段を有するインバータ装置において、該インバータ装置の出力周波数に変動が生じるように、インバータ出力のピークポイントおよびその近傍の所定区間において、インバータ出力電流の変位が連続で、かつ、インバータ出力電流の周波数が不連続な周波数変動をともなう電流歪を付与する電流歪付与手段を備え、電流歪付与手段は、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む所定の周波数区間の範囲内にある場合は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する第1の電流波形と、その出力周波数が下降する電流歪を付与する第2の電流波形を交互に繰り返して出力し、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形が出力を完了する時点で発生するピークポイントにおいて、前記第2の電流波形のピークポイントのタイミングが、前記交流電力系統電圧のピークポイントに一致するようにしたことを特徴とするインバータ装置。
  2. 電流歪付与手段は、交流電力系統電圧の周波数が定格周波数を含む前記所定の周波数区間の範囲外にある場合は、前記交流電力系統電圧の周波数変化に応じて正帰還ループでインバータ出力周波数が変化するような電流歪を付与する電流波形を出力することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
  3. 第1の電流波形は、その出力周波数が上昇する電流歪を付与する出力電流の周期を任意回連結するものであって、第2の電流波形はその出力周波数が下降する電流歪を付与する出力電流の周期を任意回連結するものであることを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
  4. 電流歪付与手段は、ある時点で検出される交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングと、その後検出される前記交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングまでの経過時間を、該経過時間内に出現する前記交流電力系統電圧一周期分の出現個数で除算して前記交流電力系統電圧周期の平均値を演算する電圧周期演算手段と、該交流電力系統電圧周期の4分の1に相当する期間を、前記交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングから経過させたタイミング、および、前記交流電力系統電圧周期の平均値の4分の3に相当する期間を、前記交流電力系統電圧の極性が正から負または負から正のどちらか一方に変動するタイミングから経過させたタイミングをピークポイントとして決定するピークポイント決定手段を備えることを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
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