JP4037051B2 - 感熱記録材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応などを利用した感熱記録材料(例えば、ビデオプリンター用フィルムなどの透明感熱シート)に関するものであり、特にMRIやCT等の画像のシャウカステンでの診断及び参照を目的とした、銀塩フィルムライクで高画質、高濃度、高保存性の医療用画像形成シートとして好適な感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、感熱発色プロセスを利用した記録材料は種々提案されている。この感熱記録材料は、一般的には紙、合成紙あるいはプラスチックフィルムの上に無色又は淡色のロイコ染料及び顕色剤が溶解または分散された塗布液を塗布して製造される。特に近年医療分野を中心に、銀塩X線フィルムの湿式プロセスに起因する廃液処理問題及び画像のデジタル化の流れから、簡易にアウトプットできるドライフィルムのシステムが求められている。現在の医療用のドライプロセスとしては▲1▼光露光熱定着システム ▲2▼熱転写システム ▲3▼直接感熱記録システムの3つが挙げられる。
そのうちの1つである感熱記録材料は、従来より電子計算機、ファクシミリ、券売機、ラベルプリンター、レコーダー等の種々の記録材料として使用されており、現像、定着等の頻雑な処理を施す必要がなく、比較的簡単な構造でコンパクトな装置で短時間に記録できること、騒音の発生が少ないこと、さらにコストが安いこと等の利点により、近年急速に市場が拡大しつつある。
【0003】
医療画像アウトプット用フィルム(以下、医療用メディア)には様々な特性が求められている。例えば高い階調性を確保するために高濃度であることが上げられる。一般に医療用メディアに求められる最高濃度は、例えば透過型メディアでは2.5以上とする意見が多いが、近年特に注目されているマンモグラフィー用透過型メディアにおいては、従来のような低濃度部のみならず、シャウカステン(バックライト)を高輝度化して高濃度部の濃淡が分かるようにして参照する必要があるためさらに高濃度、例えば透過濃度で4.0以上の発色が求められている。
【0004】
また、反射型医療用メディアにおいては、感熱記録層を厚膜化すればある程度まで高濃度にすることが可能であるが、ある領域を境にしてそれ以上の濃度上昇が鈍り、却って地肌濃度上昇などの弊害が生じるために発色効率の良い構成が求められる。これは一般用途の透過型医療用メディアにおいても同様のことが言える。薄膜で従来と同じ濃度を得ることが可能であれば、地肌濃度、透明性などの性能面でも、コストや残留溶剤など、製造工程においても有利である。
【0005】
また、湿式銀塩タイプの医療用メディアにおいては、診断フィルムの10年以上の保管が要求されているため、その代替を狙うとすれば長期間の画像堅牢性も必要である。特に医療用メディアにおいては階調性が非常に重要であるため、保存性が確保されていないというのは致命的である。
このように医療用途においては、従来の感熱記録メディアが用いられている分野よりも高濃度、高保存性の要求が極めて高い。例えば、透過銀塩フイルムの代替を考えた場合、濃度では透過濃度で最低でも2.5以上、保存性においても10年以上の保管が求められている。このような背景の元、ロイコ染料タイプの感熱記録で医療用途に対する品質を達成するために必要な顕色剤の条件としては、ロイコ染料を強く発色させることができ、且つ長期に渡る高い画像保存性が可能であることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高濃度、高保存性を達成した、医療画像表示用途に好適な感熱記録材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、支持体上に無色又は淡色のロイコ染料と、該ロイコ染料を加熱発色せしめる顕色剤及び結着剤としてのバインダー樹脂を主成分とする感熱記録層を設けてなる感熱記録材料において、上記条件を満たす医療用メディアに好適な顕色剤として特定のサリチル酸誘導体が特に透明タイプの医療用メディアを設計する場合に非常に優れた性能を有することを見い出し、しかもその発色性を最も効率よく発揮させるバインダー樹脂としてはセルロースアセテート系樹脂が好適であり、これらを組み合わせることにより、高濃度、高保存性を達成した感熱記録材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、支持体上に無色又は淡色のロイコ染料と、該ロイコ染料を加熱発色せしめる顕色剤及び結着剤としてのバインダー樹脂を主成分とする感熱記録層を設けてなる感熱記録材料において、顕色剤が下記一般式(1)で表される化合物であり、且つバインダー樹脂が下記一般式(2)で表される構成単位を有するセルロースアセテート系樹脂であることを特徴とする感熱記録材料が提供される。
【化4】
(式中、R1は炭素数4〜16の直鎖のアルキル基又はアルキルアミノ基を表す。)
【化5】
(式中、R2はそれぞれ独立に水素原子、アセチル基、プロピオニル基またはブタノイル基を表す。)
また、本発明によれば、前記顕色剤が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする上記に記載の感熱記録材料が提供される。
【化6】
(式中、R2は炭素数6〜12の直鎖アルキル基を表す。)
また、本発明によれば、前記感熱記録層中に、4種以上の異なるロイコ染料が存在することを特徴とする上記のいずれかに記載の感熱記録材料が提供される。
また、本発明によれば、上記のいずれかに記載の感熱記録材料の感熱記録層上に保護層を設けてなる感熱記録材料において、該保護層が、溶剤の主成分が酢酸エチルである塗布液を塗布乾燥して形成されたものであることを特徴とする感熱記録材料が提供される。
また、本発明によれば、感熱記録層および保護層の形成時の乾燥温度が80℃以上であることを特徴とする上記のいずれかに記載の感熱記録材料が提供される。
また、本発明によれば、前記支持体が、透明なポリエチレンテレフタレートフイルムであることを特徴とする上記のいずれかに記載の感熱記録材料が提供される。
また、本発明によれば、前記感熱記録材料の非画像部のJIS K7105にて規定される曇り度が、50%以下であることを特徴とする上記のいずれに記載の感熱記録材料が提供される。
さらに、本発明によれば、青色に着色されていることを特徴とする上記のいずれかに記載の感熱記録材料が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、無色又は淡色のロイコ染料と、該ロイコ染料を加熱発色せしめる顕色剤及びバインダー樹脂を主成分とする感熱記録層を設けてなる感熱記録材料に関し、該顕色剤に特徴を有し、下記一般式で表される化合物を用いたものである。
【化7】
(式中、R1は炭素数4〜16の直鎖のアルキル基又はアルキルアミノ基を表す。)
【0010】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、4−(n−ブタノイルアミノ)サリチル酸、4−(n−ヘキサノイルアミノ)サリチル酸、4−(n−オクタノイルアミノ)サリチル酸、4−(ヘキサデカノイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−ブチルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−ヘキシルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−オクチルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−ヘキサデシルカルバモイルアミノ)サリチル酸等が挙げられる。
【0011】
特に、顕色剤としては、下記一般式(3)で示される化合物が地肌カブリ、保存性において優れる。
【化8】
(式中、R2は炭素数6〜12である直鎖アルキル基を表す。)
これらの化合物は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。また、さらなる効果向上を狙って、種々公知の顕色剤を混合することもできる。
【0012】
顕色剤として、上記一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体が好ましい理由としては、(a)顕色能基として発色に関する高い性能を有するサリチル酸骨格、(b)発色性や保存性に寄与する接合基部分、(c)地肌濃度や濃度低下の抑制に効果のあるアルキル基部分、の3つの要因によって、医療画像出力メディアに求められる品質を高いレベルで実現するためであると考えられる。(a)について、サリチル酸骨格を有するものの代わりに一般的な顕色剤に見られるフェノール基を有するものを用いると濃度が低く、また保存性に難がある。(b)については、例えば−NHと−C=Oを逆にして電子求引性の基を用いると保存性が著しく低下するし、他の接合基では顕色剤分子の会合性が悪いことが原因であると思われる。(c)については、炭素数が4よりも小さい場合は水や有機溶剤への溶解性が上がるために地肌カブリが甚だしく、逆に炭素数が16より大きいと保存性が低下する。従って、上記(a)(b)(c)の組み合わせが重要であり、一般式(1)で表される化合物は、顕色剤として医療画像出力メディアに求められる品質を達成するのに極めて優れている。
【0013】
本発明で使用するバインダー樹脂は、下記一般式(2)で表されるセルロースアセテート系樹脂であり、高い発色性と保存性を達成できる。このようなセルロースアセテート系樹脂としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体が好ましい。これらのうちでもガラス転移温度が高いものは保存性が向上し、また乾燥温度に対するマージンが大きいために残留溶剤量を減らすことが可能であることから好ましい。
【化9】
(式中、R2はそれぞれ独立に水素原子、アセチル基、プロピオニル基またはブタノイル基を表す。)
上記R2は独立しており、例えばセルロースアセテートであれば水素原子またはアセチル基、セルロースアセテートプロピオネートであれば水素原子またはアセチル基またはプロピオニル基、セルロースアセテートブチレートであれば水素原子またはアセチル基またはブタノイル基で構成される。
【0014】
上記セルロースアセテート系樹脂がこのような特性を示す理由は定かではないが、樹脂中に水酸基が散在していることと密接に関わっていると思われる。他にも樹脂中に水酸基を持つものはあるが多くは直鎖型飽和炭素鎖からなっているために自由度が大きく、それに対してセルロースアセテートは環状部分がほとんどであり、ロイコ染料と上記の一般式(1)で示される顕色剤の会合状態を保持するように働いていると考えられる。
記録層におけるバインダー樹脂の使用量としては特に限定するものではないが、階調性や透明性、支持体との接着性を確保するためには、塗工液の全固形量に対して15重量%以上であることが好ましく、発色性等を考慮したより好ましい範囲としては30〜60重量%の範囲で調節すると良い。
【0015】
本発明で用いられるロイコ染料は電子供与性を示す化合物であり、単独または2種以上混合して適用されるが、それ自体無色あるいは淡色の染料前駆体であり、特に限定されず従来公知のもの、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好ましく用いられる。特に好ましくはフルオラン系およびフタリド系のロイコ染料であり、このような化合物の例としては、例えば以下に示すようなものが挙げられるが、勿論これらに限られるものではない。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、
3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、
10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、
3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、
3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド等。
【0016】
本発明の感熱記録材料においては、全発色濃度域における色調の純黒化を達成するために、複数のロイコ染料を混合することが好ましい。その中でも特に4種以上のロイコ染料を混合することが好ましい。特に好適なのは、単独で用いたときに緑〜黒の発色を示す、可視領域に2つの吸収極大を持つ染料(例えば2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン)を全ロイコ染料の構成比で50%以上とする染料を1種とし、その他の少なくとも3種は、単独で用いたときに前記した染料を含めて互いに異なる色調に発色するものを選択し(発色色調をCIE−LAB表色系のa*−b*平面にプロットした場合に、ほぼ全濃度域で単一の象限に収まるものを、各象限1つ以上選択)、それぞれ5%以上の構成比とすると、医療画像表示に適した発色のメディアを得られる。
【0017】
本発明において感熱記録層を形成するには、有機溶剤を使用し、ロイコ染料を溶解させた塗布液を調製して支持体に塗布すると特に良い。かかる有機溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEK)、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が、単独あるいは混合有機溶剤として使用される。このうちトルエン、MEK、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましく、特にトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルから選ばれる溶剤を有機溶剤系塗布液中の溶剤成分のうちの50重量%以上に含有させた混合溶剤にすると、地肌カブリに優れる感熱シートが得られる。
【0018】
本発明で使用する支持体の具体例としては、上質紙、中性紙、酸性紙、再生紙、コート紙、ポリオレフィン樹脂ラミネート紙、合成紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらを貼り合わせたフィルム等が挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムであるが、これらに限られるものではない。これらの内、透明性が高いシートを得るためには、支持体単独の曇り度(JIS K7105で規定される曇り度、ヘーズ)が10%以下であるポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
また、感熱記録層塗布液の塗布層の接着性向上のために、少なくとも片面をコロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理等による表面改質をすることができる。
【0019】
以上、本発明の感熱記録材料の主成分であるロイコ染料、顕色剤、バインダー樹脂、使用する溶剤等の具体例を挙げたがこれらに限られるものではない。また、必要に応じ公知のフィラー、顔料、界面活性剤、熱可融性物質を添加することができる。
【0020】
本発明の感熱記録層はロイコ染料および顕色剤などをバインダー樹脂とともに均一に分散もしくは溶解しこれを支持体上に塗布、乾燥して作製するが、塗工方式はダイファウンテン方式、ワイヤーバー方式、グラビア方式、エアーナイフ方式等、特に限定されない。これらのうち、塗工層の均一性を得ることができるものとして、支持体に接触することなく塗布することが可能なダイファウンテン方式が好ましい。
記録層液において、分散物の粒径が記録材料全体の透明性、あるいは保護層の表面粗さ、ひいては印字時のドット再現性に大きく関与するので、粒径は1.0μm以下、特に屈折率の影響から0.5μm以下にすると透明性が著しく向上する。
記録層の膜厚は、記録層の組成や感熱記録材料の用途にもよるが1〜50μm程度、好ましくは3〜20μm程度である。
また、記録層塗布液には、必要に応じて、塗工性の向上あるいは記録特性の向上を目的に界面活性剤等種々の添加剤を加えることもできる。
【0021】
本発明においては、感熱記録層上に、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性及びサーマルヘッドに対するヘッドマッチング性の向上のために保護層を設けることが好ましい。感熱記録層上に設ける保護層は透明性の観点から考えると樹脂単独の層を設けるのが理想的であるが、樹脂のみの保護層では平滑性が高すぎて、スティッキング、ゴミの引きずりによる印字欠陥の面で充分な性能が得にくい。特に支持体としてプラスチックフィルムを用いた場合は紙を支持体とした場合と比較して平滑になりやすいことからヘッドマッチングが低下し、ゴミを引きずりやすくなる傾向がある。また、一般的な熱可塑性樹脂の場合、ガラス転移点がサーマルヘッドによる加熱よりも低いため、樹脂単独の保護層では表面の変質や記録層の露出などが起きてしまう場合がある。このような印字不良、欠陥は医療画像を出力する材料としては致命的である。このスティッキング、ゴミの引きずり等に対する性能向上の手段としてはフィラーを含有させるのが一般的である。しかし、透明感熱記録材料の場合、保護層に従来の反射記録材料に使用されるようなフィラーを含有させると透明性が低下する場合が多い。フィラーを添加して透明性を維持するためには小粒径フィラーにより表面を細かく粗らす方法、大粒径フィラーを少量添加して表面を部分的に粗らす方法等の方法がある。本発明においては必要に応じて上記の2つの方法を組み合わせて保護層を形成させることも可能である。保護層表面の摩擦係数としてはヘッドマッチング(滑性を上げる方向)とプラスチックフィルムで発生しやすいゴミの引きずり防止(滑性を下げる方向)の両面から見て0.07〜0.14の範囲が好ましい。
【0022】
本発明において保護層に用いられる樹脂としては、水溶性樹脂の他、水性エマルジョン、疎水性樹脂及び紫外線、電子線硬化樹脂等を用いることができ、これらを必要に応じて併用することも可能である。透明性の観点から記録層と保護層の樹脂の屈折率は支持体の屈折率との比で0.8〜1.2の範囲に入る材料を用いることが好ましい。樹脂の具体例としてはポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、セルロースアセテート系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。また、樹脂とともに架橋剤を用いることができ、該架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等、従来から公知の化合物を使用することができる。イソシアネート化合物の具体例としては、トルイレンジイソシアネート、その2量体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート及びこれらの誘導体等分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物が挙げられる。またエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、フィラーの例としてはホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、板状水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、焼成クレー、カオリン、ハイドロタルサイト等の無機フィラーや、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素−ホルマリン共重合体粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粒子、グアナミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子、メラミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子の有機フィラーが挙げられる。本発明においてはヘッド摩耗の観点から有機フィラーではメラミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子が、無機フィラーとしてはカオリン、タルク、水酸化アルミニウムが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、また数々の特性を付与するために複数のフィラーを同時に用いても良い。
【0024】
さらにヘッドマッチング性を向上させるために保護層にワックス、オイル類を添加したり、樹脂としてシリコーンで変性された樹脂を混合して用いたり、樹脂と充填剤の比を調節する、などにより摩擦係数を調節することができる。ここで用いることができるワックス類としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチロールステアリルアミド、パラフィンワックス、ポリエチレン、カルナウバワックス、酸化パラフィン、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。オイルとしては一般的なシリコーンオイル等を用いることができる。
【0025】
本発明の保護層塗布液に使用できる溶剤は特に限定されず、例えば水をはじめとして、前記した記録層塗布液に好適な有機溶剤などを、単独あるいは混合溶剤として使用される。これらのうち、特に溶解能が高い溶剤を用いると保護層液塗布時に記録層からのロイコ染料の溶出があるために記録層内の染料含有量が低下し、保存性への悪影響が見られる。溶解能が低い溶剤を用いると低分子が保護層中に拡散しないために保護層の強度低下もないし、記録層塗布後の地肌カブリを溶剤のみで低減することもできる。また高沸点溶剤を用いると溶剤が層中に残りやすく、こちらも保存性には好ましくない。従って、ロイコ染料の溶解性が低く沸点も低いという点から、酢酸エチルを主成分(70重量%以上)とした保護層塗布液を用いるのが特に好ましい。
【0026】
保護層塗布液の塗工方法は、特に制限はなく、従来公知の方法で塗工することができる。好ましい保護層厚は0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。保護層厚が薄すぎると、記録材料の保存性やヘッドマッチング等の保護層としての機能が不充分であり、厚すぎると記録材料の熱感度が低下するのに加え、コスト的にも不利である。
【0027】
本発明では、感熱記録層や保護層は、各層の塗布液を塗布し、引き続き乾燥ボックスに搬送し乾燥して形成するが、この乾燥に供される気体の温度は80℃以上であると好ましい。乾燥温度が80℃未満であっても塗膜は形成されるが、乾燥工程終了直後では塗液に使用されている溶剤が充分に除去されず、保存性に影響が出る。また製品の性能の安定化のために30〜60℃の環境下で数日〜数週間に渡ってキュアが行われることがしばしばあるが、この工程でのブロッキングの懸念があるし、キュアに掛ける時間が延びるために生産管理上好ましくない。乾燥温度は高い程良いが、あまり高くなると塗膜のムラにつながるし、地肌カブリ等の品質にも影響する。地肌カブリは、ある程度のレベルまでは保護層塗布によって低減されるため、特に好ましい乾燥温度範囲は80〜150℃である。
【0028】
本発明の感熱記録材料の非画像部のJIS K7105にて規定される曇り度は、医療用途における透過画像診断の観点から考えると、50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下である。50%を超えるとシャウカステン装着時の画像の鮮明さに欠ける。
【0029】
この感熱記録材料は、防眩効果あるいは画像認識性向上を目的として青色に着色して用いることもできる。青み付けの方法としては支持体に青顔料を混練する方法、塗工層のいずれか1層以上に青染料、青顔料を添加する方法等が採用され、青み付けの濃度レベルとしては透過濃度で0.15〜0.25の範囲が、色調としてはa*=−4〜−15、b*=−5〜−15(測定条件;d/0、10度視野、光源D65にて10nmごとに吸光度測定して算出)に囲まれる範囲の色が好ましい。用いることのできる青顔料、青染料は特に限定されず、種々公知の材料を使用することができる。
【0030】
なお、本発明においては、支持体と感熱記録層との間、保護層と感熱記録層の間に接着性、平滑性の向上などの必要に応じて中間層として顔料、バインダー、熱可融性物質などを含有する層を設けることが出来る。
本発明の感熱記録材料において合成紙やプラスチックフィルムを用いた場合、帯電等によるゴミ付着の可能性が非常に高くなる。また、静電気により搬送性が低下する場合もある。これに対して帯電防止材料を含有させるなどにより帯電防止能を有するバック層を設けて帯電防止を行うことが好ましい。帯電防止材料としては電子伝導型、イオン伝導型等の公知の材料が挙げられ、表面抵抗値としてゴミ付着に対して効果が見られる1×1010オーム/m2以下とすることが好ましい。また、本発明の感熱記録材料においてはカール調整、搬送性調整のためのバック層、銀塩フィルムライクにマット剤を含んだバック層も設けることが可能であり、これについても前記した記録層、保護層の材料等、種々の公知の材料を使用することが出来る。マット剤の粒径としては0.3〜10μm程度が好ましく、バック層の厚みとしては0.1〜10μmの範囲が好ましい。
【0031】
本発明の感熱記録材料は、医療用途のプリンターに対して平板、またはロールの形態で供給されるが、平板の場合は銀塩フィルムと同等となるように感熱記録材料の全厚を170〜250μmとすることが好ましい。ロールの場合は巻き長さ、巻き癖カール等の点から感熱記録材料の全厚を50〜140μm程度とすることが好ましい。特にプラスチックフイルムを支持体として用いた場合は、ロールの流れ方向のガーレー剛度を190〜250mgfとすることが好ましい。
【0032】
本発明の感熱記録材料の記録方法は仕様目的によって熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱等、特に限定されないが、この感熱記録材料は医療診断画像などの高精細かつ高階調な画像を印画するのに適しており、また装置のコスト、出力スピード、コンパクト化の観点からもサーマルヘッドを用いて印画するのが最も好ましい。
【0033】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、以下における部及び%はいずれも重量基準である。
【0034】
<記録層塗布液〔B液〕の調整>
先ず、下記表1に従って組成物をボールミルで粉砕、分散し、顕色剤分散液[A液]を調製した。
[A液]
顕色剤 15部
15%バインダー樹脂溶解液
(溶媒:MEK/トルエン=5/5) 20部
MEK 25部
トルエン 40部
さらに表1に従って各成分を混合し、記録層塗布液[B液]を作製した。
[B液]
[A液] 40部
ロイコ染料 6部
15%バインダー樹脂溶解液
(溶媒:MEK/トルエン=5/5) 48部
トルエン 6部
【0035】
【表1】
【0036】
表1に記録層塗布液中の成分は下記のとおりである。
(1)顕色剤
A:4−(N’−デシルカルバモイルアミノ)サリチル酸
B:4−(デカノイルアミノ)サリチル酸
C:4−(N−デシルカルバモイル)サリチル酸
D:4−(N’−オクタデシルカルバモイルアミノ)サリチル酸
(2)ロイコ染料(下記混合物)
2−アニリノ−3−メチル−6−
(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオラン 65部
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−
メチルインドール−3−イル)フタリド 5部
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン 15部
3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−
エトキシフェニル)−4−アザフタリド 15部
(3)バインダー樹脂
a:イーストマンケミカル社製CAP−482−0.5
(ガラス転移温度142℃)
b:イーストマンケミカル社製CAP−551−0.2
(ガラス転移温度101℃)
c:積水化学社製エスレックKS−1
(ガラス転移温度110℃のポリビニルアセタール)
【0037】
<保護層塗布液〔D液〕の調整>
先ず、下記組成物をボールミルで体積平均粒径0.3μmまで粉砕・分散しフィラー分散液[C液]を作製した。
[C液]
シリカ 15部
10%ポリビニルアセタール溶解液
(積水化学社製エスレックKS−1、溶媒:MEK) 15部
MEK 70部
さらに、下記組成物を充分に攪拌し保護層塗布液[D液]を作製した。
[D液]
[C液] 10部
10%ポリビニルアセタール溶解液
(積水化学社製エスレックKS−1、溶媒:MEK) 10部
MEK 12部
【0038】
<保護層塗布液〔D’液〕の調整>
同様に、下記組成物をボールミルで体積平均粒径0.3μmまで粉砕・分散しフィラー分散液[C’液]を作製した。
[C’液]
シリカ 15部
10%ポリビニルアセタール溶解液
(積水化学社製エスレックKS−1、溶媒:酢酸エチル) 15部
酢酸エチル 70部
さらに、下記組成物を充分に攪拌し溶媒の主成分を酢酸エチルとする保護層塗布液[D’液]を作製した。
[D’液]
[C’液] 10部
10%ポリビニルアセタール溶解液
(積水化学社製エスレックKS−1、溶媒:酢酸エチル) 10部
酢酸エチル 12部
【0039】
<感熱記録シートの作製>
以上のようにして調製した記録層塗布液[B液]、保護層塗布液[D液]または[D’液]を、それぞれ表2に示したものを用い、厚さ175μmの透明ポリエステルフィルム(曇り度3%)上にワイヤーバーを用いて順次塗工し、所定の乾燥温度下で充分に乾燥して感熱記録層、保護層を形成した。記録層膜厚は17μm、保護層は厚さ4μmとした。
【0040】
【表2】
【0041】
評価方法、測定方法は下記のとおりである。
以上のようにして作製された感熱記録シートに対し、ソニー社製サーマルプリンタUP−70XRを用いてグレースケールを印画した。このうち、透過濃度0.7付近の画像を保存性試験に用いた。
▲1▼ 透過濃度はGretag Macbeth社製透過濃度計TD−904(black)を用いて測定した。
▲2▼ 保存性試験は50℃、90%r.h.の環境に設定された高温高湿保管庫内に48時間放置して実施した。
濃度保存性については、下記式で示される式で算出した。変化量が30%以内であれば実用に耐えうる画像であり、15%以内であれば画像濃度の変化を識別しにくい。
保存性(%)=〔(保存後濃度−保存前濃度)÷保存前濃度〕×100
▲3▼ 非画像部の曇り度は、スガ試験機社製直読ヘーズコンピューターHGM−2DP型により測定した。
▲4▼ 粒径は堀場製作所社製レーザー回折式粒径測定装置LA−700で測定した。
評価結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、高画質、高濃度で保存性に優れ、特にMRIやCT等の医療用画像形成シートとして好適な感熱記録材料を提供することができる。

Claims (7)

  1. 支持体上に無色又は淡色のロイコ染料と、該ロイコ染料を加熱発色せしめる顕色剤及び結着剤としてのバインダー樹脂を主成分とする感熱記録層を設けてなる感熱記録材料において、顕色剤が下記一般式(3)で表される化合物であり、且つバインダー樹脂が下記一般式(2)で表される構成単位を有するセルロースアセテート系樹脂であることを特徴とする感熱記録材料。
    (式中、R 2 は炭素数6〜12の直鎖アルキル基を表す。)
    (式中、R2はそれぞれ独立に水素原子、アセチル基、プロピオニル基またはブタノイル基を表す。)
  2. 前記感熱記録層中に、4種以上の異なるロイコ染料が存在することを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料。
  3. 請求項1〜2のいずれかに記載の感熱記録材料の感熱記録層上に保護層を設けてなる感熱記録材料において、該保護層が、溶剤の主成分が酢酸エチルである塗布液を塗布乾燥して形成されたものであることを特徴とする感熱記録材料。
  4. 感熱記録層および保護層の形成時の乾燥温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感熱記録材料。
  5. 前記支持体が、透明なポリエチレンテレフタレートフイルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感熱記録材料。
  6. 前記感熱記録材料の非画像部のJIS K7105にて規定される曇り度が、50%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれに記載の感熱記録材料。
  7. 青色に着色されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感熱記録材料。
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