JP4035915B2 - 梁継手部の保守方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は建築構造物の梁継手部の保守方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4に見られる様にH鋼の鉄骨の支柱1,1(一方は図示せず)間にH鋼の梁2を掛渡して設ける場合、一般に前記支柱1に仕口梁4が溶接付けされ、該仕口梁4に母材梁5が継手部3を介して連結される。前記仕口梁4が前記支柱1に溶接付けされることで前記仕口梁4と支柱1間には曲げ反力が発生するので、前記梁2に作用する曲げモーメントが最小となる位置は前記支柱1から所定距離離れた位置となる。前記継手部3は曲げモーメントが最小となる位置に設けられる。
【0003】
図4に示される前記継手部3は所謂ピン継手と呼ばれるものであり、以下該継手部3について説明する。
【0004】
前記仕口梁4のウェブ部4aと前記母材梁5のウェブ部5aとを2枚のウェブ連結プレート6,6により挾み、ウェブ連結プレート6、ウェブ部4a、ウェブ連結プレート6にボルト7が貫通螺着され、ウェブ連結プレート6、ウェブ部5a、ウェブ連結プレート6にボルト7が貫通螺着される。
【0005】
而して、前記仕口梁4と前記母材梁5とは所要の隙間G(5〜10mm程度)を明け、前記ボルト7、ウェブ連結プレート6を介して連結される。該ウェブ連結プレート6の取付け後、該ウェブ連結プレート6の外面には防錆用の塗装が施される。
【0006】
前記隙間Gは施工誤差に対応して設けられるものであるが、実際の施工後の隙間Gは1〜3mm、6〜7mm、10〜13mm等とまちまちである。建築構造物が屋外に設けられ、前記継手部3が風雨に曝される場合、前記隙間Gには雨水が集中して流れ易い。前記隙間Gが充分広ければ、雨水は溜ることもなく流下するが、該隙間Gが5mmより小さい場合では、表面張力、或は隙間に溜った埃等により、雨が止んだ後も該隙間Gに保水される。
【0007】
前記ウェブ連結プレート6の内面(前記ウェブ部5a、前記ウェブ部4aと接触する面)は塗装等の防錆処理は施されていない。これは、前記母材梁5とウェブ連結プレート6との間、ウェブ連結プレート6と仕口梁4との間の荷重伝達が、前記ウェブ部5aとウェブ連結プレート6、ウェブ連結プレート6とウェブ部4aとの間の摩擦力にも依存しており、塗装等の処理は摩擦力を減少することによる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した様に、前記ウェブ連結プレート6の外面側にはボルト締付け後防錆用の塗装処理が施されるが、内面側には防錆処理がなされていない。更に、前記隙間Gには雨水が溜りやすく、溜った雨水は長時間に亘って保水されるので、前記ウェブ連結プレート6の隙間Gに面する部分が経時的に腐食していく。近年に至っては、酸性雨の問題があり、酸性雨である場合には腐食の進行は更に早くなる。この腐食の進行により、図5に見られる様に前記ウェブ連結プレート6には溝状の減肉部8が生じる。該減肉部8が生じると前記ウェブ連結プレート6の耐力が低下するので、所要時期には該ウェブ連結プレート6の交換等適宜な保守をしなければならない。尚、ウェブ連結プレート6の保守として塗装メンテナンスが行われるが、外面に対してのみであり、内面に塗装メンテナンスを行うことはできないので、隙間Gに面する部分の腐食の対策とはなっていない。
【0009】
上記した減肉状態は外観検査では解らず、又前記継手部3には鉛直力が作用しているので前記ウェブ連結プレート6を取外して検査することもできない。従って、現状では他箇所の定期保守に合わせ、該ウェブ連結プレート6の腐食の状態とは関係なく該ウェブ連結プレート6を交換するということを行っている。
【0010】
ところが、前記継手部3に鉛直力が作用している状況での前記ウェブ連結プレート6の交換は容易ではなく、コストが掛かり、作業期間も長期に亘っていた。更に又、該ウェブ連結プレート6の腐食状態も環境、施工状況等によりまちまちであり、該ウェブ連結プレート6の交換が適正時期に行われるという保証はなかった。
【0011】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡単で而も安全性の高い作業で、ウェブ連結プレートの補強が行える梁継手部の保守方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、梁と梁を連結する連結プレートの外面の梁と梁の間隙に対応する部分に、該間隙より幅広の補強板を溶接する梁継手部の保守方法に係り、該補強板で連結プレートの溝状の減肉部分を補強する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1、図2に示される梁継手部は図4の従来例で示したと同様ピン継手であり、図1、図2中、図4、図5中で示したものと同一のものには同符号を付してある。
【0015】
仕口梁4に母材梁5が継手部3を介して連結される。
【0016】
前記仕口梁4のウェブ部4aと前記母材梁5のウェブ部5aとを2枚のウェブ連結プレート6,6により挾み、ウェブ連結プレート6、ウェブ部4a、ウェブ連結プレート6にボルト7が貫通螺着され、ウェブ連結プレート6、ウェブ部5a、ウェブ連結プレート6にボルト7が貫通螺着され、前記仕口梁4と前記母材梁5とは前記ボルト7、ウェブ連結プレート6を介して連結され、前記仕口梁4と母材梁5間には所要の隙間Gが明けられる。前記ウェブ連結プレート6の取付け後、該ウェブ連結プレート6の外面には防錆用の塗装が施される。
【0017】
前述した様に、年月を経ると前記ウェブ連結プレート6の内面の前記隙間Gに臨接する部分は、腐食により溝状の減肉部8が生じる。減肉の状況は建築構造物の立地条件、例えば海岸近くである或は山中である等、過去の保守実施実績等で経験的に推察しうるので、所定時期に以下の補強方法を実施する。
【0018】
腐食による前記ウェブ連結プレート6の減肉は、前記隙間Gに臨接する部分に限定されることが、発明者の調査で分っている。従って、前記ウェブ連結プレート6の補強は溝状の減肉部8に限って行えば充分である。
【0019】
該ウェブ連結プレート6が前記ウェブ部4a、ウェブ部5aに取付けられた状態で、前記隙間Gの幅より広い幅を有する短冊状の補強板10を前記ウェブ連結プレート6の外面の減肉部8対応部分に溶接付する。前記補強板10の板厚は、前記ウェブ連結プレート6の板厚より厚く、例えば1.5倍の厚さとする。
【0020】
前記補強板10を溶接することで、前記減肉部8の厚みは前記ウェブ連結プレート6の残置板厚に前記補強板10の板厚を加えたものとなり、充分な耐力を有する。更に、腐食が進み、前記ウェブ連結プレート6が腐食で破断したとしても、前記補強板10が充分な板厚、耐力を有するので、強度的には何ら心配ない。又更に、腐食が前記補強板10に迄進行したとしても、該補強板10の耐力が問題となる時期は、建築構造そのものが寿命に達していると考えられる。
【0021】
ここで、前記補強板10の板厚を前記ウェブ連結プレート6の板厚より厚くしたのは、前記補強板10が前記仕口梁4、母材梁5の部材の中心より外側に偏心することを考慮したものである。即ち、前記補強板10の無い状態では、前記ウェブ部5a、ウェブ連結プレート6、ウェブ部4aを経て前記支柱1に荷重が伝達されるが、前記ウェブ連結プレート6が破断した状態では、ウェブ部5a、ウェブ連結プレート6、補強板10、ウェブ連結プレート6、ウェブ部4aを経て支柱1に伝達され、前記補強板10はウェブ連結プレート6の板厚分だけ偏心しており、偏心していることからモーメントが発生することが考えられ、偏心によるモーメントの発生に対応する為である。
【0022】
上記した補強方法は、前記ウェブ連結プレート6を外す必要がないので、簡単に行え、更に補強時期が早い場合でも、該ウェブ連結プレート6の強度が増し、安全性が向上するので、何ら支障はない。
【0023】
図3で示す継手は、所謂剛継手と呼ばれるものであり、前記仕口梁4、母材梁5の上下のフランジ部分4b,5bもフランジ連結プレート11により連結されている。この剛継手の場合、前記ウェブ連結プレート6に対して前記補強板10を溶接するのは勿論、前記フランジ連結プレート11にも前記補強板10を溶接することで、継手の補強が行われる。
【0024】
【発明の効果】
以上述べた如く本発明によれば、梁間を連結する連結プレートの減肉部分を外側から補強するので、連結プレートの取外しが必要なく、作業が簡単で安全性が高いという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】同前本発明の他の実施の形態を示す正面図である。
【図4】従来例の正面図である。
【図5】図4のB−B矢視図である。
【符号の説明】
1 支柱
2 梁
3 継手部
4 仕口梁
5 母材梁
6 ウェブ連結プレート
8 減肉部
10 補強板
G 隙間
Claims (1)
- 梁と梁を連結する連結プレートの外面の梁と梁の間隙に対応する部分に、該間隙より幅広の補強板を溶接することを特徴とする梁継手部の保守方法。
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JP07849099A JP4035915B2 (ja) | 1999-03-23 | 1999-03-23 | 梁継手部の保守方法 |
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1999
- 1999-03-23 JP JP07849099A patent/JP4035915B2/ja not_active Expired - Fee Related
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