JP4035585B2 - 異常診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、調節弁と電空ポジショナとコントローラとを備えた調節弁制御システムに必要に応じて接続され、この調節弁制御システムの異常を診断する異常診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7に特開平11−166655号公報(文献1:特願平9−337503号)に開示された調節弁制御システムの概略を示す。同図において、1はコントローラ、2は調節弁、3は調節弁2の弁開度を制御する電空ポジショナ、L1,L2はコントローラ1と電空ポジショナ3との間を接続する通信線である。この通信線L1,L2を介してコントローラ1より電空ポジショナ3へ4〜20mAの入力電流Iが調節弁2への設定値データとして与えられる。
【0003】
電空ポジショナ3は、通信ライン駆動部3Aと、データ処理制御部3Bと、電空変換部3Cと、角度センサ3Dとを備えている。通信ライン駆動部3Aは、コントローラ1との間でデータの通信を行うインターフェイス3A1と、ハンドヘルドコミュニケータ(SFC)4との間でデータの通信を行うインターフェイス3A2とを有している。SFC4は、作業者が持つ携帯型の設定器であり、必要に応じて調節弁制御システム100(電空ポジショナ3)に接続される。
【0004】
データ処理制御部3Bは、CPU3B1とメモリ3B2とを有し、コントローラ1からの通信ライン駆動部3Aを介する設定値データを受けてこれを処理し、コントローラ1からの入力電流I=4mAに対して電空変換部3Cへのコイル駆動電流IMを0mAとし、入力電流I=20mAに対して電空変換部3Cへのコイル駆動電流IMを最大値とする。電空変換部3Cは、データ処理制御部3Bからのコイル駆動電流IMを空気圧(電空変換信号)に変換し、調節弁2へ供給する。調節弁2は、電空ポジショナ2からの電空変換信号を受ける操作器2Aを備えており、この操作器2Aを介して弁2Cの開度が制御される。
【0005】
角度センサ3Dは、弁2Cの開度をフィードバックレバー(図9に示す5)の回転角度位置(弁開度位置)として検出するセンサで、その検出した弁開度位置をデータ処理制御部3Bへ送る。データ処理制御部3Bは、角度センサ3Dからの弁開度位置に基づき、弁2Cの開度をフィードバック制御する。
【0006】
図9は電空ポジショナ3の角度センサ3Dと調節弁2との配置関係を示す図である。調節弁2は操作器2Aと弁軸2Bと弁2Cとを備えている。操作器2Aは、ダイアフラムを有してなり、電空変換部3Cからの空気圧に応じ弁軸2Bを上下動させて、弁2Cの開度を調整する。
【0007】
この弁軸2Bのリフト位置、すなわち弁2Cの開度を検出するべく、角度センサ3Dと弁軸2Bとの間にフィードバックレバー5が連結されている。フィードバックレバー5は、弁軸2Bのリフト位置に応じて角度センサ3Dの中心Oを軸心として、回動する。このフィードバックレバー5の回転角度位置(弁開度位置)から弁2Cの開度を知ることができる。
【0008】
〔オートセットアップ〕
この調節弁制御システム100では、電空ポジショナ3を現場に設置して実際に調節弁2を制御する前に、SFC4から電空ポジショナ3に指令を与えて、オートセットアップを行う。このオートセットアップでは、「全閉/全開位置」,「操作器動作の形式」,「入力電流設定値」,「異常時電気信号出力方向(バーンアウト方向)」などの設定やゼロ/スパン調整、制御パラメータの自動チューニングなどを行う。なお、このオートセットアップは使用開始時の他、メンテナンス時などにも行う。
【0009】
オートセットアップの実行時の電空ポジショナ3での動作例を図8を用いて説明する。図8(a)はデータ処理制御部3Bから電空変換部3Cへのコイル駆動電流IMを示し、図8(b)は同図(a)に示したコイル駆動電流IMに応ずる弁2Cの開度変化を示す。
【0010】
データ処理制御部3BのCPU3B1は、全閉位置コイル駆動電流IMSHUT(IMSHU=0)を電空変換部3Cへ与え、これにより弁2Cが静止状態となったことを確認したt1点において、角度センサ3Dによって検出される弁開度位置X0をゼロ点位置Xzeroとしてメモリ3B2に記憶するとともに、全開位置コイル駆動電流IMOPEN(IMOPEN=最大値)を電空変換部3Cへ与える。
【0011】
これにより、IMOPENに応じた空気圧が電空変換部3Cを介して調節弁2の操作器2Aへ与えられ、やや遅れて弁2Cの開度が変化し始め(t2点)、やがてIMOPENに応じた開度位置(実際の全開度位置に対して余裕をみて大きめに設定されている最大開度位置、例えば110%位置)となる(t3点)。
【0012】
次に、CPU3B1は、弁2Cが静止状態となったことを確認したt4点において、角度センサ3Dによって検出される弁開度位置を仮の全開度位置(仮の全開位置)X110 として求め、この仮の全開度位置X110 から下記(1)式によって実際の全開度位置(実際の全開位置)X100 を求める。すなわち、仮の全開位置X110 をオーバストローク補正することによって、実際の全開位置X100 を求める。そして、この求めた実際の全開位置X100 をスパン点位置Xspanとしてメモリ3B2に記憶する。
X100 =〔(X110−X0)/1.1〕+X0 ・・・・(1)
【0013】
また、CPU3B1は、弁2Cが静止状態となったことを確認したt4点において、全閉位置コイル駆動電流IMSHUTを電空変換部3Cへ与える。これにより、IMSHUTに応じた空気圧が電空変換部3Cを介して調節弁2の操作器2Aへ与えられ、やや遅れて弁2Cの開度が変化し始め(t5点)、やがてIMSHUTに応じた開度位置(全閉位置)となる(t6点)。
【0014】
そして、弁2Cが静止状態となったことを確認したt7点において、CPU3B1は、再度、全開位置コイル駆動電流IMOPENを電空変換部3Cへ与える。これにより、やや遅れて弁2Cの開度が変化し始め(t8点)、やがてIMOPENに応じた開度位置(最大開度位置)となる(t9点)。
【0015】
CPU3B1は、ゼロ点位置Xzeroを0%位置、スパン点位置Xspanを100%位置とし、t5点からt6点の間の99%位置から1%位置までの動作時間Tdownを計測する。また、t8点からt9点の間の1%位置から99%位置までの動作時間Tupを計測する。そして、この計測した動作時間TupとTdownの平均として、1%位置〜99%位置間の応答時間TRES (TRES =(Tup+Tdown)/2)を求める。そして、この求めた応答時間TRES より、図10に示す操作器サイズ−応答時間テーブルから操作器2Aのサイズを決定し、動作時間Tup、Tdown、応答時間TRES とともにメモリ3B2に記憶する。
【0016】
次に、CPU3B1は、弁2Cが静止状態となったことを確認したt10点において、電空変換部3Cへのコイル駆動電流IMを50%位置に応じた値IM50とし、その後、IM50での弁2Cの静止状態を確認のうえ、52%位置に応じた値IM52とする(t11点)、さらに、IM52での弁2Cの静止状態を確認のうえ、54%位置に応じた値IM54とする(t12点)。これにより、弁2Cの開度位置が最大開度位置から50%位置へと変化し、その後、50%位置から52%位置、52%位置から54%位置へとステップ応答する。
【0017】
CPU3B1は、調節弁2の弁開度の設定値を52%位置から54%位置へ変更した後、この設定値の変更により実駆動される弁開度の実値が54%位置に達してから所定時間内のオーバシュート量を積算し、この積算したオーバシュート量の平均値を平均誤差として求める。すなわち、52%位置から54%位置へのステップ応答に際する所定時間Te(ta〜tb)内の誤差面積Esを測定し、この測定した誤差面積Esより平均誤差EAを求める。この場合、誤差面積EsはEs=∫ta tb|E|dtとして、平均誤差EA(%)はEA=Es/(tb−ta)として求める。そして、CPU3B1は、この求めた平均誤差EAより、図11に示すテーブルを参照してヒステリシスレベルHYSを決定し、平均誤差EAとともにメモリ3B2に記憶する。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
文献1に示された調節弁制御システム100は、SFC4からの指令によってオートセットアップが自動的に実行される点で優れている。しかしながら、調節弁制御システム100においては、調節弁2のグランドパッキンの緩みや調節弁2に対する電空ポジショナ3の取り付け異常(ゼロ点/スパン点位置のずれ)などが生じることがあり、このような異常が生じているか否かの診断をSFC4で行わせたり、異常診断結果をSFC4において知るということはできなかった。
【0019】
なお、グランドパッキンとは、調節弁2の弁軸2Bに連結されたバルブステムに挿通された部材であり、弁2Cからのプロセス流体のリークを防止するために設けられている。図12にその要部を示す。同図において、2−1はバルブステム、2−2は上蓋、2−3はクランドパッキンである。クランドパッキン2−3は、複数のリング状のパッキン2−4とパッキン2−4の上下面に設けられたパッキンスプリング2−5とによって構成され、バルブステム2−1に挿通されている。
【0020】
バルブステム2−1は上蓋2−2の軸孔2−6に挿通され、軸孔2−6の内壁面とバルブステム2−1の外周面との間にクランドパッキン2−3が位置している。クランドパッキン2−3の下端は軸孔2−6の内段部2−7によりその位置が規制されている。クランドパッキン2−3の上端は、スタッドボルト2−10により上蓋2−2の上端に締め付けられたパッキンフランジ2−9により、パッキン押さえ2−8を介して押さえつけられている。
【0021】
スタッドボルト2−10を締め付けたり、緩めたりすることによって、バルブステム2−1が摺動する際のグランドパッキン2−3のバルブステム2−1の外周面への密着力を調整することができる。すなわち、グランドパッキン2−3は摩耗などにより次第に緩み、グランドパッキン2−3とバルブステム2−1との隙間からプロセス流体がリークする虞れがある。このような場合、スタッドボルト2−10の締め直しを適宜行って、密着力の最適化を図る。
【0022】
〔グランドパッキンの異常診断〕
グランドパッキンの異常診断を行う技術として、特開平5−187405号公報(文献2)や特開平8−219305号公報(文献3)などに開示されたものがある。
文献2に示された技術では、電空ポジショナにおいて、診断開始信号が出力されてから診断開始に応じて弁開度の変化信号を受信するまでの時間差を計測し、この時間差が設定値以下となったら、グランドパッキンが緩んでいると判定する。
【0023】
文献3に示された技術では、電空ポジショナにおいて、調節弁の弁開度の制御を継続しながら、ゲインを発振限界の上限値又は下限値に変更して、所定時間中に入力信号の変化回数と弁開度信号の変化回数との差が所定値以上になった変化回数を求め、この変化回数が基準値以上になったときに異常と判定する。異常と判定されたときのゲインが発振限界の上限値のときはグランドパッキンが緩んでいると判定し、異常と判定されたときのゲインが発振限界の下限値のときは弁プラグとガイドリングとの間やグランドパッキンとロッドとの間に不純物が混入したか、あるいはグランドパッキンが変質して硬化したものと判定する。
【0024】
〔文献2に示された技術の問題〕
グランドパッキンの異常は弁開度が第1の開度から第2の開度に設定変更されたときの整定性の悪化を引き起こす。この整定性の変化を試験しないと調節弁の弁開度制御に及ぼすグランドパッキンの異常は正確に判定することができない。すなわち、文献2に示された技術では、弁の動き始めに要する時間の変化だけで、グランドパッキンの異常を判定するようにしているので、正確さに欠ける。
【0025】
〔文献3に示された技術の問題〕
文献3に示された技術では、グランドパッキンの異常を判定するために決めておかなくてはならないしきい値が多く、1つの事象に対して多段階に設定するようにしているため、各しきい値を決める手間が大変である。また、適切なしきい値に設定するのも難しく、異常診断を行うための処理も複雑となる。
【0026】
〔ゼロ点/スパン点位置の異常診断〕
調節弁のゼロ点/スパン点位置の異常診断を自動で行う技術は確立されておらず、定期点検時に調節弁の制御を中断したうえで、保守作業者がダイヤルゲージを使ってメンテナンス時のゼロ点位置とスパン点位置を調整している。そして、ゼロ点位置、スパン点位置がそれぞれどの程度ずれれば異常かどうかは、保守作業者の判断に委ねられている。
【0027】
この手動による異常診断では、ダイヤルゲージを使ってゼロ点位置、スパン点位置を調べる作業が非常に面倒である。
また、問題となるゼロ点位置、スパン点位置のずれ量が作業者の判断に委ねられているので、その判断が妥当であるかどうかは保証されない。
また、問題となるゼロ点/スパン点位置のずれはストロークの長さの違いによって異なる。すなわち、ストローク長が短い場合には少しのずれでも大きな誤差となるが、ストローク長が長ければ許容されるずれは大きくなる。このようなストロークの長さの違いによって異なるゼロ点/スパン点位置のずれの問題に対し、明確な指標がなく、ストロークの長短に拘わらず一律に所定以上のずれがあった場合に保守作業者が異常と判断しているので、正確さに欠ける。
【0028】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、弁開度制御システムに必要に応じて接続し、主として調節弁に対する電空ポジショナの取り付け異常を、電空ポジショナのオートセットアップ機能を利用した簡単な処理動作で、また簡単なしきい値で、しかも正確に判定することのできる異常診断装置を提供することにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、調節弁の弁開度を全閉になるように制御し、この調節弁の弁開度が全閉になったことを確認した時点での弁開度位置をゼロ点位置として求める一方、調節弁の弁開度を実際の全開度位置に対して余裕をみて大きめに設定されている最大開度になるように制御し、この調節弁の弁開度が最大開度になったことを確認した時点での弁開度位置を仮の全開度位置として求め、この仮の全開度位置をオーバストローク補正することによって調節弁の実際の全開度位置をスパン点位置として求めるゼロ/スパン計測手段と、このゼロ/スパン計測手段によって計測されるオートセットアップ実行時のゼロ点位置およびスパン点位置を記憶する記憶手段とを有する電空ポジショナを備えた調節弁制御システムに必要に応じて接続される例えばSFCを異常診断装置とし、この異常診断装置に、電空ポジショナに異常診断指令を送る異常診断指令送信手段と、この異常診断指令送信手段からの異常診断指令に応えて電空ポジショナから送られてくるオートセットアップ実行時のゼロ点位置およびスパン点位置を初期ゼロ点位置および初期スパン点位置として読み取る初期位置読取手段と、異常診断指令送信手段からの異常診断指令を受けて電空ポジショナのゼロ/スパン計測手段が計測するゼロ点位置およびスパン点位置を診断時ゼロ点位置および診断時スパン点位置として読み取る現在位置読取手段と、初期位置読取手段により読み取られた初期ゼロ点位置と現在位置読取手段により読み取られた診断時ゼロ点位置との差をゼロ点偏差として求め、初期位置読取手段により読み取られた初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対するゼロ点偏差の割合が予め設定されている第1の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定する第1の異常判定手段と、初期位置読取手段により読み取られた初期スパン点位置と現在位置読取手段により読み取られた診断時スパン点位置との差をスパン点偏差として求め、初期位置読取手段により読み取られた初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対するスパン点偏差の割合が予め設定されている第2の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定する第2の異常判定手段とを設けたものである。
【0032】
この発明によれば、異常診断装置から電空ポジショナに異常診断指令を送ると、ゼロ/スパン計測手段によって計測され記憶手段に記憶されているオートセットアップ実行時のゼロ点位置およびスパン点位置が電空ポジショナから送られてくる。異常診断装置は、この電空ポジショナから送られてくるオートセットアップの実行時のゼロ点位置およびスパン点位置を初期ゼロ点位置および初期スパン点位置として読み取る。
また、電空ポジショナのゼロ/スパン計測手段は、異常診断装置からの異常診断指令を受けて、調節弁の弁開度を全閉になるように制御し、この調節弁の弁開度が全閉になったことを確認した時点での弁開度位置をゼロ点位置として求める一方、調節弁の弁開度を実際の全開度位置に対して余裕をみて大きめに設定されている最大開度になるように制御し、この調節弁の弁開度が最大開度になったことを確認した時点での弁開度位置を仮の全開度位置として求め、この仮の全開度位置をオーバストローク補正することによって調節弁の実際の全開度位置をスパン点位置として求め、この求めたゼロ点位置およびスパン点位置を異常診断装置へ送る。
異常診断装置は、この電空ポジショナから送られてくるゼロ点位置およびスパン点位置を診断時ゼロ点位置および診断時スパン点位置として読み取り、初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対するゼロ点偏差(初期ゼロ点位置と診断時ゼロ点位置との差)の割合が予め設定されている第1の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定する。また、初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対するスパン点偏差(初期スパン点位置と診断時スパン点位置との差)の割合が予め設定されている第2の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定する。これにより、主として、調節弁に対する電空ポジショナの取り付け異常が検出される。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る異常診断装置の一実施の形態の概略を示すブロック図である。この異常診断装置は図7に示したSFC4内に異常診断機能を付加したものである。以下、図7に示した従来のSFC4と区別するために、図1に示した異常診断装置をSFC4’とする。
【0035】
SFC4’は、CPU4−1と、RAM4−2と、ROM4−3と、E2 PROMなどのメモリ4−4と、ディスプレイ4−5と、操作キー4−6と、プリンタ4−7と、インターフェイス4−8〜4−11とを備えている。CPU4−1は、RAM4−2やメモリ4−4にアクセスしながら、ROM4−3に格納されたプログラムに従って動作する。メモリ4−4には後述する各種の異常診断用のしきい値が格納されている。
【0036】
このSFC4’は、従来のSFC4と同様に、必要に応じて調節弁制御システム100に接続される。SFC4’は、従来のSFC4が有していた電空ポジショナ3にオートセットアップを行わせる機能に加えて、オートセットアップの実行時に電空ポジショナ3のメモリ3B2に記憶されたパラメータと電空ポジショナ3が有するオートセットアップ機能の一部を利用して異常診断を行う機能を有している。以下、SFC4’において行われる異常診断処理動作について、図2〜図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0037】
なお、この異常診断に際し、調整弁制御システム100の電空ポジショナ3ではすでにオートセットアップが行われており、メモリ3B2にオートセットアップ実行時のパラメータとして応答時間TRES 、動作時間Tup,Tdown、平均誤差EA、ゼロ点位置Xzero、スパン点位置Xspanが記憶されているものとする。
【0038】
〔異常診断処理〕
異常診断を行う場合、作業者はSFC4’を調節弁制御システム100の電空ポジショナ3に接続し、操作キー4−6を介してCPU4−1へ異常診断を行う旨の指示を行う。CPU4−1は、この作業者からの指示を受けて、電空ポジショナ3へ異常診断指令を送る(図2に示すステップ201)。
【0039】
この異常診断指令は、インターフェイス3A2を介して、電空ポジショナ3のCPU3B1へ与えられる。CPU3B1は、SFC4’からの異常診断指令を受診すると(図3に示すステップ301)、メモリ3B2に格納されているオートセットアップ実行時のパラメータTRES ,Tup,Tdown,EA,Xzero,Xspanを読み出し、インターフェイス3A2を介してSFC4’へ送信する(ステップ302)。
【0040】
SFC4’のCPU4−1は、電空ポジショナ3から送られてくるオートセットアップ実行時のパラメータTRES ,Tup,Tdown,EA,Xzero,Xspanを初期値TRES (i),Tup(i),Tdown(i),EA(i),Xzero(i),Xspan(i)として読み取る(ステップ202)。
【0041】
オートセットアップ実行時のパラメータの送信後、電空ポジショナ3のCPU3B1は、全閉位置コイル駆動電流IMSHUT(IMSHUT=0)を電空変換部3Cへ与える(ステップ303)。そして、弁2Cが静止状態となったことを確認のうえ(ステップ304のYES:図8に示すt1点)、この時の角度センサ3Dによって検出される弁開度位置X0をゼロ点位置Xzeroとして求める(ステップ305)。
【0042】
また、t1点において、全開位置コイル駆動電流IMOPEN(IMOPEN=最大値)を電空変換部3Cへ与える(ステップ306) これにより、IMOPENに応じた空気圧が電空変換部3Cを介して調節弁2の操作器2Aへ与えられ、やや遅れて弁2Cの開度が変化し始め(図8に示すt2点)、やがてIMOPENに応じた開度位置(実際の全開度位置に対して余裕をみて大きめに設定されている最大開度位置、例えば110%位置)となる(図8に示すt3点)。
【0043】
次に、CPU3B1は、弁2Cが静止状態となったことを確認すると(ステップ307のYES:図8に示すt4点)、角度センサ3Dによって検出される弁開度位置を仮の全開度位置(仮の全開位置)X110 として求め(ステップ308)、この仮の全開度位置X110 を前記(1)式によってオーバストローク補正し、実際の全開度位置(実際の全開位置)X100 を求める(ステップ309)。そして、この求めた実際の全開位置X100 をスパン点位置Xspanとするとともに(ステップ310)、全閉位置コイル駆動電流IMSHUT(IMSHUT=0)を電空変換部3Cへ与える(ステップ311)。
【0044】
これにより、IMSHUTに応じた空気圧が電空変換部3Cを介して調節弁2の操作器2Aへ与えられ、やや遅れて弁2Cの開度が変化し始め(図8に示すt5点)、やがてIMSHUTに応じた開度位置(全閉位置)となる(図8に示すt6点)。そして、CPU3B1は、弁2Cが静止状態となったことを確認のうえ(ステップ312のYES:図8に示すt7点)、t5点からt6点の間の99%位置から1%位置までの動作時間Tdownを測定するとともに(ステップ313)、再度、全開位置コイル駆動電流IMOPENを電空変換部3Cへ与える(ステップ314)。
【0045】
これにより、やや遅れて弁2Cの開度が変化し始め(図8に示すt8点)、やがてIMOPENに応じた開度位置(最大開度位置)となる(図8に示すt9点)。そして、CPU3B1は、弁2Cが静止状態となったことを確認のうえ(ステップ315のYES:図8に示すt10点)、t8点からt9点の間の1%位置から99%位置までの動作時間Tupを測定する(ステップ316)。そして、この測定した動作時間TupとTdownの平均として、1%位置〜99%位置間の応答時間TRES (TRES =(Tup+Tdown)/2)を求める(ステップ317)。
【0046】
次に、CPU3B1は、電空変換部3Cへのコイル駆動電流IMを50%位置に応じた値IM50とし(ステップ318)、その後、IM50での弁2Cの静止状態を確認のうえ(ステップ319のYES)、52%位置に応じた値IM52とする(ステップ320:図8に示すt11点)。さらに、IM52での弁2Cの静止状態を確認のうえ(ステップ321のYES)、54%位置に応じた値IM54とする(ステップ322:図8に示すt12点)。これにより、弁2Cの開度位置が最大開度位置から50%位置へと変化し、その後、50%位置から52%位置、52%位置から54%位置へとステップ応答する。
【0047】
CPU3B1は、調節弁2の弁開度の設定値を52%位置から54%位置へ変更した後、52%位置から54%位置へのステップ応答に際する所定時間Te(ta〜tb)内の誤差面積Esを測定し(ステップ322)、この測定した誤差面積Esより平均誤差EAを求める(ステップ323)。この場合、誤差面積EsはEs=∫ta tb|E|dtとして、平均誤差EA(%)はEA=Es/(tb−ta)として求める。
【0048】
そして、CPU3B1は、ステップ305で求めたゼロ点位置Xzero、ステップ310で求めたスパン点位置Xspan、ステップ313で計測した動作時間Tdown、ステップ316で計測した動作時間Tup、ステップ324で求めた平均誤差EAを、診断時のパラメータとしてインターフェイス3A2を介してSFC4’へ送信する(ステップ325)。
【0049】
SFC4’のCPU4−1は、電空ポジショナ3から送られてくる診断時のパラメータTRES ,Tup,Tdown,EA,Xzero,Xspanを現在値TRES(p)、,Tup(p),Tdown(p),EA(p),Xzero(p),Xspan(p) として読み取る(ステップ203)。なお、図3に示したステップ301〜324の処理は、電空ポジショナ3が有するオートセットアップ機能の一部を利用して行われる。また、調節弁2の種類などによっては、全閉位置コイル駆動電流IMSHUTを最大値、全開位置コイル駆動電流IMOPENを0とすることもある。
【0050】
次に、CPU4−1は、メモリ4−4に格納されている異常診断用のしきい値を読み出す(ステップ204)。メモリ4−4には、応答時間TRES に対する異常診断用のしきい値としてTaが、動作時間Tupに対する異常診断用のしきい値としてTuが、動作時間Tdownに対する異常診断用のしきい値としてTdが、平均誤差EAに対する異常診断用のしきい値としてYが、ゼロ点位置Xzeroに対する異常診断用のしきい値としてZzeが、スパン点位置Xspanに対する異常診断用のしきい値としてZspが格納されている。
【0051】
図5に異常診断用のしきい値Ta,tu,Td,Y,Zze,Zspのデフォルト値を示す。この実施の形態では、Ta,Tu,Tdがそれぞれ1sec 、EAが0.3%、Zzeが1.0%、Zspが3.0%とされている。
【0052】
次に、CPU4−1は、ステップ202で読み取ったオートセットアップ実行時のパラメータ(初期値)と、ステップ203で読み取った診断時のパラメータ(現在値)と、ステップ204で読み取った異常診断用のしきい値とから異常診断を行う(ステップ205)。
【0053】
図4にステップ205における異常診断のサブルーチンを示す。CPU4−1は、応答時間TRES の初期値TRES (i)と現在値TRES (p)との差の絶対値ΔTRES を求め、このΔTRES と異常診断用のしきい値Taとを比較し(ステップ401)、ΔTRES が異常診断用のしきい値Taよりも大きければ(ΔTRES >Ta)、フラグFRES をFRES =1とする(ステップ402)。ΔTRES が異常診断用のしきい値Taよりも小さければ(ΔTRES ≦Ta)、フラグFRES をFRES =0とする(ステップ403)。
【0054】
次に、CPU4−1は、動作時間Tupの初期値Tup(i)と現在値Tup(p)との差の絶対値ΔTupを求め、このΔTupと異常診断用のしきい値Tuとを比較し(ステップ404)、ΔTupが異常診断用のしきい値Tuよりも大きければ(ΔTup>Tu)、フラグFuをFu=1とする(ステップ405)。ΔTupが異常診断用のしきい値Tuよりも小さければ(ΔTup≦Tu)、フラグFuをFu=0とする(ステップ406)。
【0055】
また、CPU4−1は、動作時間Tdownの初期値Tdown(i)と現在値Tdown(p)との差の絶対値ΔTdownを求め、このΔTdownと異常診断用のしきい値Tdとを比較し(ステップ407)、ΔTdownが異常診断用のしきい値Tdよりも大きければ(ΔTdown>Td)、フラグFdをFd=1とする(ステップ408)。ΔTdownが異常診断用のしきい値Tdよりも小さければ(ΔTdown≦Td)、フラグFdをFd=0とする(ステップ409)。
【0056】
次に、CPU4−1は、平均誤差EAの初期値EA(i)と現在値EA(p)との差の絶対値ΔEAを求め、このΔEAと異常診断用のしきい値Yとを比較し(ステップ410)、ΔEAが異常診断用のしきい値Yよりも大きければ(ΔEA>Y)、フラグFEAをFEA=1とする(ステップ411)。ΔEAが異常診断用のしきい値Yよりも小さければ(ΔEA≦Y)、フラグFEAをFEA=0とする(ステップ412)。
【0057】
続いて、CPU4−1は、ゼロ点位置Xzeroの初期値Xzero(i)と現在値Xzero(p)との偏差、すなわち初期ゼロ点位置Xzero(i)と診断時ゼロ点位置Xzero(p)との差をゼロ点偏差として求め、初期ゼロ点位置Xzero(i) から初期スパン点位置Xspan(i) までの初期ストローク長に対するゼロ点偏差の割合をZzeroとして求める(ステップ413)。
【0058】
また、CPU4−1は、スパン点位置Xspanの初期値Xspan(i)と現在値Xspan(p)との偏差、すなわち初期スパン点位置Xspan(i)と診断時スパン点位置Xspan(p) との差をスパン点偏差として求め、初期ゼロ点位置Xzero(i)から初期スパン点位置Xspan(i)までの初期ストローク長に対するスパン点偏差の割合をZspanとして求める(ステップ414)。
【0059】
そして、CPU4−1は、ステップ413で得たゼロ点偏差の割合Zzeroと異常診断用のしきい値Zzeとを比較し(ステップ415)、Zzeroが異常診断用のしきい値Zzeよりも大きければ(Zzero>Zze)、フラグFzをFz=1とする(ステップ416)。Zzeroが異常診断用のしきい値Zzeよりも小さければ(Zzero≦Zze)、フラグFzをFz=0とする(ステップ417)。
【0060】
また、CPU4−1は、ステップ414で得たスパン点偏差の割合Zspanと異常診断用のしきい値Zspとを比較し(ステップ418)、Zspanが異常診断用のしきい値Zspよりも大きければ(Zspan>Zsp)、フラグFsをFs=1とする(ステップ419)。Zspanが異常診断用のしきい値Zspよりも小さければ(Zspan≦Zsp)、フラグFsをFs=0とする(ステップ420)。
【0061】
そして、CPU4−1は、ステップ401〜420の処理によって求めたフラグFRES ,Fu,Fd,FEA,Fz,Fsの値に基づいて、各種項目毎に正常/異常の判定を行う(ステップ421)。この場合、フラグFRES ,Fu,Fd,FEA,Fz,Fsの1つでもその値が「1」であれば、総合的なバルブ診断結果を「異常(バルブシンダンNG)」とする。フラグFRES ,Fu,Fd,FEA,Fz,Fsの全てが「0」であれば、総合的なバルブ診断結果を「正常(バルブシンダンOK)」とする。
【0062】
また、フラグFRES ,Fu,Fdの1つでもその値が「1」であれば、調節弁のの作動スピードに対する診断結果を「異常(サドウスピードNG)」とする。フラグFRES ,Fu,Fdの全てが「0」であれば、調節弁のの作動スピードに対する診断結果を「正常(サドウスピードOK)」とする。また、フラグFEAが「1」であれば、グランドパッキンに対する診断結果を「異常(グランドパッキンNG)」とする。フラグFEAが「0」であれば、グランドパッキンに対する診断結果を「正常(グランドパッキンOK)」とする。また、フラグFz,Fsの1つでもその値が「1」であれば、電空ポジショナの取り付け状態に対する診断結果を「異常(AVPトリツケNG)」とする。フラグFz,Fsが共に「0」であれば、電空ポジショナの取り付け状態に対する診断結果を「正常(AVPトリツケOK)」とする。
【0063】
フラグFRES が「1」であるということは、ステップ401でのΔTRES がΔTRES >Taであるということであり、図8に示した弁開度の1%位置から99%位置間の応答時間TRES (TRES =(Tup+Tdown)/2)がオートセットアップの実行時よりもTaを超えて大きくなった、あるいはTaを超えて小さくなったことを意味している。すなわち、何らかの異常によって、調節弁の作動スピードが遅くなった、あるいは速くなったことを示している。
【0064】
例えば、操作器のスプリングの異常(バネ定数)やシール部品の異常(劣化、脱落、切断)、電空ポジショナの空気回路(ノズル・フラッパ、絞り)の異常(つまり、エア漏れ、緩み)などの異常の発生を示している。このような異常をΔTRES とTaとの比較によって知ることができる。なお、応答時間TRES が問題がなくても、動作時間Tup,Tdownの何れか一方に問題が生じていることもあるので、ステップ404やステップ407でΔTupやΔTdownをチェックするようにしている。
【0065】
フラグFEAが「1」であるということは、ステップ410でのΔEAがΔEA>Yであるということであり、図8に示した弁開度の52%位置から54%位置へのステップ応答に際する所定時間Te内の誤差面積Esより求められる平均誤差EAがオートセットアップの実行時よりもYを超えて大きくなった、あるいはYを超えて小さくなったことを意味している。
【0066】
調節弁2のグランドパッキン2−3が緩むと、バルブステム2−1との間の摩擦が減るため、誤差面積Esが小さくなる。調節弁2のグランドパッキン2−3が変質して硬化したり、グランドパッキン2−3とバルブステム2−1との間に不純物が混入したりすると、バルブステム2−1との間の摩擦が増すため、誤差面積Esが大きくなる。
【0067】
ステップ410では、このようなグランドパッキンの異常をYという1つのしきい値で知ることができる。また、しきい値が1つでよいので、しきい値の設定が容易である。また、電空ポジショナ3のオートセットアップ機能を利用して平均誤差EAの初期値および現在値を求めているので、SFC4’での処理も簡単となる。また、整定性の変化を考慮しているので、グランドパッキンの異常判定が正確に行われる。
【0068】
フラグFzが「1」であるということは、ステップ415でのZzeroがZzero>Zzeであるということであり、初期ゼロ点位置Xzero(i) から初期スパン点位置Xspan(i) までの初期ストローク長に対するゼロ点偏差の割合ZzeroがZzeよりも大きく、オートセットアップ実行時のゼロ点位置Xzero(i) に対して診断時のゼロ点位置Xzero(p) のずれが大きいことを意味している。
【0069】
また、フラグFsが「1」であるということは、ステップ418でのZspanがZspan>Zspでであるということであり、初期ゼロ点位置Xzero(i)から初期スパン点位置Xspan(i)までの初期ストローク長に対するスパン点偏差の割合ZspanがZspよりも大きく、オートセットアップ実行時のスパン点位置Xspan(i) に対して診断時のスパン位置Xspan(p)のずれが大きいことを意味している。
【0070】
ゼロ点位置Xzeroやスパン点位置Xspanは電空ポジショナの取り付けネジの緩みなどによって変化する。ステップ415や418では、このような電空ポジショナの取り付け異常をZzeやZspという2つのしきい値で知ることができる。この場合、しきい値Zze,Zspは1つの事象に対して1つであるので、しきい値の設定が容易である。また、電空ポジショナ3のオートセットアップ機能を利用してゼロ点位置Xzeroやスパン点位置Xspanの初期値および現在値を求めているので、SFC4’での処理も簡単となる。また、初期ストローク長に対するゼロ点偏差/スパン点偏差の割合を異常診断の指標としていることにより、調節弁の大小(ストロークの長さの違い)を考慮に入れ、同じ診断方法であらゆる調節弁のゼロ点/スパン点位置の異常診断を行うことができる。
【0071】
CPU4−1は、このステップ401〜421(ステップ205)で得た異常診断結果(NG/OK)を、その異常診断に際して用いた異常診断用のしきい値と併せてディスプレイ4−5に表示する。あるいは、プリンタ4−7によって紙面上に印字する(紙面上で表示する)。図6にプリンタ4−7による印字例を示す。
【0072】
異常診断用のしきい値は調節弁の種類や大きさによって異なる。本実施の形態では、異常診断結果と異常診断用のしきい値とを併せて表示するようにしているので、この異常診断結果と異常診断用のしきい値を見ながら、実験を重ねて行くことによって、適切なしきい値を決めることができる。一度適切なしきい値が決まれば、次回の異常診断からはしきい値の設定は不要となる。
【0073】
なお、本実施の形態では、調節弁の作動スピードに対する異常診断と、グランドパッキンの異常診断と、電空ポジショナの取り付け状態に対する異常診断とを連続して行うようにしたが、それぞれ独立して行わせるようにしてもよい。この場合、SFC4’からは、異常診断の種別毎に異常診断指令を送る。
【0074】
また、本実施の形態では、ステップ410でのΔEAがΔEA>Yとなった場合をグランドパッキンの異常と判断するようにしたが、ΔEA>Yとなるのはグランドパッキンが異常である場合に限られない。すなわち、グランドパッキンの異常以外の要因でΔEA>Yとなることもある。例えば、弁本体におけるガイドの固着やかじり、操作器におけるステムのかじり、電空ポジショナにけるレバーの軸受けの固着やかじりなどで、ΔEA>Yとなることもある。本実施の形態では、ΔEA>Yとなる主要因として、グランドパッキンの異常と表示するようにしている。
【0075】
また、本実施の形態では、ステップ415でZzero>Zzeとなった場合やステップ418でZspan>Zspとなった場合を電空ポジショナの取り付け異常と判断するようにしたが、Zzero>Zzeとなったり、Zspan>Zspとなるのは電空ポジショナの取り付け状態が異常となった場合に限られない。すなわち、電空ポジショナの取り付け異常以外の要因でZzero>Zzeとなったり、Zspan>Zspとなることもある。例えば、弁本体におけるシートの固着やかじり、電空ポジショナでのフィードパックレバー/ピンの折損、操作器におけるスプリングの折損や倒れ、ステムの曲がりや緩みなどで、Zzero>Zzeとなったり、Zspan>Zspとなったりする。本実施の形態では、Zzero>Zzeとなったり、Zspan>Zspとなる主要因として、電空ポジショナの取り付け異常と表示するようにしている。
【0076】
このように、本実施の形態では、原因の特定までとは行かないが、かなりの精度で異常部位を知らせることが可能であり、調整ミス、誤操作などを発見でき、手直しを示唆することができ、調節弁異常診断システムの健全性を診断する簡易診断ツールとして大きな威力を発揮する。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、電空ポジショナから送られてくるオートセットアップ実行時のゼロ点位置およびスパン点位置を初期ゼロ点位置および初期スパン点位置として読み取り、電空ポジショナのゼロ/スパン計測手段により計測される診断時のゼロ点位置およびスパン点位置を診断時ゼロ点位置および診断時スパン点位置として読み取り、初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対するゼロ点偏差の割合が予め設定されている第1の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定するようにし、また、初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対するスパン点偏差の割合が予め設定されている第2の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定するようにしたので、弁開度制御システムに必要に応じて接続し、主として調節弁に対する電空ポジショナの取り付け異常を、電空ポジショナのオートセットアップ機能を利用した簡単な処理動作で、また簡単なしきい値で、しかも正確に判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る異常診断装置の一実施の形態の概略を示すブロック図である。
【図2】 この異常診断装置(SFC)における異常診断処理動作を示すフローチャートである。
【図3】 この異常診断装置からの異常診断処理指令を受信した電空ポジショナでの異常診断時の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】 図2に示したステップ205での異常診断のサブルーチンを示す図である。
【図5】 この異常診断装置のメモリに格納されている異常診断用のしきい値Ta,tu,Td,Y,Zze,Zspのデフォルト値を示す図である。
【図6】 この異常診断装置のプリンタによる異常診断結果と異常診断用のしきい値とを併せた印字例を示す図である。
【図7】 文献1に示された調節弁制御システムの概略を示すシステム構成図である。
【図8】 オートセットアップの実行時の電空ポジショナでの動作例を説明する図である。
【図9】 電空ポジショナの角度センサと調節弁との配置関係を示す図である。
【図10】 操作器サイズ−応答時間テーブルを示す図である。
【図11】 HYS(ヒステリシスレベル)−EA(平均誤差)テーブルを例示する図である。
【図12】 調節弁におけるグランドパッキンの取付部の要部を示す図である。
【符号の説明】
1…コントローラ、2…調節弁、2−1…バルブステム、2−2…上蓋、2−3…グランドパッキン、2−4…パッキン、2−5…パッキンスプリング、2−6…軸孔、2−8…パッキン押さえ、2−9…パッキンフランジ、2−10…スタッドボルト、2A…操作器、2B…弁軸、2C…弁、3…電空ポジショナ、3A…通信ライン駆動部、3B…データ処理部、3B1…CPU、3B2…メモリ、3C…電空変換部、3D…角度センサ、4’…ハンドヘルドコミュニケータ(SFC)、4−1…CPU、4−2…RAM、4−3…ROM、4−4…メモリ、4−5…ディスプレイ、4−6…操作キー、4−7…プリンタ、4−8〜4−11…インターフェイス、5…フィードバックレバー、100…調節弁制御システム。

Claims (1)

  1. 流体の流れる通路を開閉する調節弁と、
    この調節弁の弁開度を全閉になるように制御し、この調節弁の弁開度が全閉になったことを確認した時点での弁開度位置をゼロ点位置として求める一方、前記調節弁の弁開度を実際の全開度位置に対して余裕をみて大きめに設定されている最大開度になるように制御し、この調節弁の弁開度が最大開度になったことを確認した時点での弁開度位置を仮の全開度位置として求め、この仮の全開度位置をオーバストローク補正することによって前記調節弁の実際の全開度位置をスパン点位置として求めるゼロ/スパン計測手段と、このゼロ/スパン計測手段によって計測されるオートセットアップ実行時のゼロ点位置およびスパン点位置を記憶する記憶手段とを有する電空ポジショナと、
    この電空ポジショナへ前記調節弁への設定値データを送るコントローラと
    を備えた調節弁制御システムに必要に応じて接続され、この調節弁制御システムの異常を診断する異常診断装置であって、
    前記電空ポジショナに異常診断指令を送る異常診断指令送信手段と、
    この異常診断指令送信手段からの異常診断指令に応えて前記電空ポジショナから送られてくる前記オートセットアップ実行時のゼロ点位置およびスパン点位置を初期ゼロ点位置および初期スパン点位置として読み取る初期位置読取手段と、
    前記異常診断指令送信手段からの異常診断指令を受けて前記電空ポジショナの前記ゼロ/スパン計測手段が計測するゼロ点位置およびスパン点位置を診断時ゼロ点位置および診断時スパン点位置として読み取る現在位置読取手段と、
    前記初期位置読取手段により読み取られた初期ゼロ点位置と前記現在位置読取手段により読み取られた診断時ゼロ点位置との差をゼロ点偏差として求め、前記初期位置読取手段により読み取られた初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対する前記ゼロ点偏差の割合が予め設定されている第1の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定する第1の異常判定手段と、
    前記初期位置読取手段により読み取られた初期スパン点位置と前記現在位置読取手段により読み取られた診断時スパン点位置との差をスパン点偏差として求め、前記初期位置読取手段により読み取られた初期ゼロ点位置から初期スパン点位置までの初期ストローク長に対する前記スパン点偏差の割合が予め設定されている第2の異常診断用のしきい値を超えている場合に異常と判定する第2の異常判定手段と
    を備えたことを特徴とする異常診断装置。
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