JP4034570B2 - 自動車内装材用基材及び自動車内装材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車内装材用基材及び自動車内装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車の室内は各種内装材を設けることによって、室内を装飾している。このような内装材には自動車の室内で使用することができるように、様々な要求がある。例えば、装飾性、成形性、成形作業性、耐熱性、寸法安定性、剛性、軽量性、リサイクル性、防音性、快適性などが求められている。これらの中でも、耐熱性、剛性、或いは寸法安定性は特に必要な物性である。つまり、自動車の室内は夏の高温時には、約90℃まで達することがあるため、この熱によって内装材が垂れ下がったり、変形することは許されないのである。
【0003】
そのため、このような耐熱性、剛性、或いは寸法安定性を付与するために、フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を不織布に含浸した基材を用いた内装材が知られている。しかしながら、この内装材は熱硬化性樹脂を硬化させる際に、人体に有害であるホルムアルデヒドを発生するという問題があった。
【0004】
また、耐熱性、剛性、或いは寸法安定性を付与するための別の内装材として、ガラス繊維を使用した基材を用いたものが知られている。しかしながら、ガラス繊維は皮膚への刺激性があるなど作業性に劣るものであると同時に、廃棄時には産業廃棄物として取り扱う必要があるため、環境への負荷の大きいものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、ホルムアルデヒドを発生せず、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れる自動車内装材用基材及び自動車内装材を提供することを第1の目的とし、前記特性に加えて、作業性に優れ、環境への負荷を低減することのできる自動車内装材用基材及び自動車内装材を提供することを第2の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車内装材用基材(以下、単に「基材」と表現することがある)は、「吸水性繊維と熱融着性繊維を含み、ニードルの作用により絡合した不織布中に、5〜100質量%がエチレン性不飽和酸無水物またはカルボン酸基が酸無水物基を形成することができるエチレン性不飽和ジカルボン酸からなるラジカル重合により得られたポリマー、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルカノールアミン、及びリン含有反応促進剤を含有するホルムアルデヒドを含まない水性結合剤を含んでおり、前記リン含有反応促進剤量が前記ポリマーとアルカノールアミンの和に対して、1.5質量%よりも少ないことを特徴とする自動車内装材用基材。」である。この基材中に含まれている水性結合剤はホルムアルデヒドを含まず、しかも硬化させる際の架橋反応はカルボン酸基とヒドロキシル基との反応である為、架橋時に新たにホルムアルデヒドが発生することもない。また、この基材は水性結合剤の架橋によって硬化させることができる、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れる自動車内装材を製造できるものである。
【0007】
前記自動車内装材用基材の不織布が有機繊維のみからなると、作業性に優れ、しかも使用後は産業廃棄物として処分する必要はなく、焼却処分することができるため、環境への負荷も小さいものである。
【0008】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、吸水性繊維を含んでいるため、この吸水性繊維が水性結合剤を吸収してガラス繊維並の寸法安定性の良い繊維となるため、寸法安定性が向上する。
【0009】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、繊度が6dtex以上の太繊維を含んでいると、更に剛性を高めることができる。
【0010】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、熱融着性繊維を含んでいるため、更に剛性を高めることができる。
【0011】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、吸水性繊維、繊度が6dtex以上の太繊維、及び熱融着性繊維を含んでいると、寸法安定性及び剛性を更に高めることができる。
【0012】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維がニードルの作用により絡合しているため、寸法安定性を更に高めることができる。
【0013】
本発明の自動車内装材(以下、単に「内装材」と表現することがある)は、前記自動車内装材用基材を用いたものであるため、ホルムアルデヒドを発生しない、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れるものである。特に、水性結合剤を架橋した状態で含んでいると、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れている。
【0014】
前記内装材が表皮材を貼り合わせたものであると、車室内の装飾性に優れるものである。
【0015】
前記内装材が非通気性フィルムを貼り合わせたものであると、車室内の空気が通気しないため、内装材の汚れを防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の基材を構成する不織布はどのような繊維から構成されていても良いが、内装材を使用した後に焼却処分できるように、有機繊維のみから構成されているのが好ましい。
【0017】
本発明の不織布を構成する繊維として、吸水性繊維、繊度が6dtex以上の太繊維、熱融着性繊維を挙げることができる。
【0018】
まず、吸水性繊維は後述のような水性結合剤を吸収することによって、ガラス繊維並の寸法安定性の良い繊維となるため、内装材の寸法安定性を向上させることができる。この吸水性繊維とは公定水分率が1%以上の繊維をいう。より具体的には、天然繊維(綿、麻など)、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などを挙げることができる。このような吸水性繊維は不織布全体の質量の10%以上含まれているのが好ましく、20%以上含まれているのがより好ましい。他方、吸水性繊維の混率を大幅に高くすると、梅雨の時期のような高温多湿時における剛性の低下が著しくなることから、不織布全体の質量の40%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましい。
【0019】
次に、繊度が6dtex以上の太繊維を含んでいることによって、内装材の剛性を更に高めることができる。この太繊維の繊度が大きければ大きい程、剛性を高めることができるため、10dtex以上であるのが好ましく、12dtex以上であるのがより好ましい。なお、太繊維の繊度の上限は特にないが、極端に繊度の大きい太繊維を使用すると、繊維同士の接着点の数の減少につながる為、30dtex以下であるのが好適である。なお、本発明における「繊度」はJIS L 1015に規定されているA法により得られる値をいう。この太繊維を構成する具体的な樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。これらの中でもポリエチレンテレフタレートは耐熱性が非常に高いため好適である。このような太繊維は内装材の剛性を高めることができるように、不織布全体の質量の40%以上含まれているのが好ましく、50%以上含まれているのがより好ましい。他方、後述のような熱融着性繊維により繊維間接着を強化し、三次元構造により剛性を向上させるのが好ましいため、熱融着性繊維との兼ね合いから、不織布全体の質量の70%以下であるのが好ましく、60%以下であるのがより好ましい。
【0020】
そして、熱融着性繊維を含んでいることによって、内装材の剛性及び形態安定性を向上させることができる。この熱融着性繊維は熱融着性繊維以外の繊維(例えば、吸水性繊維、太繊維など)を溶融させることなく、熱融着できる樹脂を繊維表面に備えている(好ましくは繊維表面が熱融着できる樹脂のみからなる)。つまり、熱融着性繊維以外の繊維よりも融点の低い(好ましくは10℃以上低い、より好ましくは20℃以上低い)樹脂を繊維表面に備えている。なお、熱融着性繊維は熱融着できる樹脂のみから構成されていても、熱融着できる樹脂に加えて、熱融着できる樹脂よりも融点の高い(好ましくは10℃以上高い、より好ましくは20℃以上高い)樹脂を備えていても良い。後者のように、熱融着できる樹脂よりも融点の高い樹脂を備えていると、この樹脂によって繊維形態を保つことができ、内装材の剛性及び形態安定性をより向上させることができるため好適である。また、熱融着できる樹脂よりも融点の高い樹脂を備えている場合、熱融着性繊維の横断面形状として、例えば、芯鞘型(偏芯型)、海島型、貼り合せ型、多層貼り合せ型、オレンジ型を挙げることができ、これらの中でも熱融着面積の広い芯鞘型(偏芯型)又は海島型であるのが好ましい。更に、前記融点の低い樹脂は熱融着性繊維以外の繊維によって異なるが、例えば、熱融着性繊維以外の繊維がレーヨン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維とからなる場合には、変性ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。なお、本発明における「融点」は、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で室温から昇温して得られる融解吸熱曲線の極大値を与える温度をいう。なお、極大値が2つ以上ある場合には、最も低温の極大値を融点とする。このような熱融着性繊維は内装材の剛性及び形態安定性を向上させることができるように、不織布全体の質量の10%以上含まれているのが好ましく、20%以上含まれているのがより好ましい。他方、熱融着性繊維量が多すぎると、厚さの低下が発生しやすいため、不織布全体の質量の50%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましい。
【0021】
本発明の不織布は上述のような繊維、つまり吸水性繊維、繊度が6dtex以上の太繊維、及び熱融着性繊維を含んでいると、剛性及び寸法安定性に特に優れているため、好ましい組み合わせである。これら繊維の配合比(不織布全体に対する質量比)は、(吸水性繊維):(太繊維):(熱融着性繊維)=10〜40:40〜70:10〜50であるのが好ましく、(吸水性繊維):(太繊維):(熱融着性繊維)=20〜30:50〜60:20〜30であるのがより好ましい。
【0022】
本発明の不織布は内装材の寸法安定性を高めることができるように、構成繊維がニードル及び/又は流体流(特に水流)の作用により絡合しているのが好ましく、ニードルにより絡合していると厚さを確保できるためより好ましい。更に、前述のような熱融着性繊維を含んでおり、絡合しているとともに熱融着性繊維が熱融着していると、接触点が多い状態で熱融着した状態にあり、更に剛性や寸法安定性を向上させることができるため、特に好適である。
【0023】
本発明の基材は前述のような不織布中に、5〜100質量%がエチレン性不飽和酸無水物またはカルボン酸基が酸無水物基を形成することができるエチレン性不飽和ジカルボン酸からなるラジカル重合により得られたポリマー(成分A)、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルカノールアミン(成分B)、前記ポリマー(成分A)とアルカノールアミン(成分B)の和に対して、1.5質量%よりも少ないリン含有反応促進剤を含有する、ホルムアルデヒドを含まない水性結合剤を含むものである。そのため本発明の基材はホルムアルデヒドを含まず、しかも硬化させる際の架橋反応は、カルボン酸基とヒドロキシル基との反応である為、架橋時に新たにホルムアルデヒドが発生しない。また、この基材は水性結合剤の架橋によって硬化させることができるため、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れる自動車内装材を製造できるものである。
【0024】
このポリマー(成分A)は、エチレン性不飽和酸無水物またはカルボン酸基が酸無水物基を形成することができるエチレン性不飽和ジカルボン酸からなるラジカル重合により得られたポリマーであり、このポリマーは、例えば、次のようなエチレン性不飽和ジカルボン酸(以下、「モノマーa」と表現することがある)、或いはモノマーaに加えてモノマーbをラジカル重合して得られる。
【0025】
このモノマーaとして、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、それらの金属塩、アンモニウム塩或いはそれらの混合物を挙げることができ、マレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0026】
他方、モノマーbとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エテン、プロペン、ブテン、イソブテン、シクロペンテン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルアセテート、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、およびこれらの混合物を挙げることができ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、エテン、アクリルアミド、スチレンおよびアクリロニトリルまたはこれらの混合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド或いはこれらの混合物が特に好ましい。
【0027】
なお、モノマーaは5〜100質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%を構成する。モノマーbを含む場合、モノマーbはモノマーaの残り、つまり0〜95質量%、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%を構成する。
【0028】
本発明の水性結合剤は上述のようなポリマーを架橋させるために、アルカノールアミン(成分B)を含んでいる。このアルカノールアミンは2つ以上のヒドロキシル基を有することによって、上述のようなポリマーとエステル化反応を生じて架橋することができる。
【0029】
この成分Bは2つ以上のヒドロキシル基を有していれば良く、特に限定するものではないが、次のような構造式を有するものが好適である。
【0030】
【化1】
【0031】
[式中、R1は水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、或いは炭素数が1〜10のヒドロキシルアルキル基を表す、R2及びR3は互いに独立して、炭素数1〜10のヒドロキシルアルキル基を表す]
【0032】
より好ましい成分Bとしては、R1が水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、或いは炭素数2〜5のヒドロキシルアルキル基からなり、しかもR2及びR3は互いに独立して、炭素数2〜5のヒドロキシルアルキル基からなるのが好ましい。
【0033】
より具体的には、成分Bとして、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、或いはメチルジイソプロパノールアミンなどを挙げることができ、これらの中でもトリエタノールアミンが特に好適である。
【0034】
本発明の水性結合剤は更に架橋反応を促進させるために、リン含有反応促進剤を含有している。このリン含有反応促進剤としては、例えば、アルカリ金属ハイポホスファイト、−ホスファイト(亜リン酸塩)、ポリフォスフェート、リン酸二水素、ポリリン酸、次亜リン酸、リン酸、アルキルフォスフィン酸、これらの塩および酸のオリゴマーもしくはポリマーなどを挙げることができる。
【0035】
本発明の水性結合剤は上述のような成分A、成分B、及びリン含有反応促進剤を含有するものであるが、成分Aのカルボキシル基と成分Bのヒドロキシル基とのモル比が20:1〜1:1であるのが好ましい。なお、酸無水物基は2つのカルボキシル基を有すると考える。また、リン含有反応促進剤の含有量は成分Aと成分Bの和に対して1.5質量%よりも少ない。好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.3質量%以下であり、最も好ましくは0.1質量%以下である。
【0036】
本発明の水性結合剤は上述のような構成からなる、ホルムアルデヒドを含まないものである。そのため、本発明の基材は水性結合剤を含有している状態でも、水性結合剤を架橋させたとしても、ホルムアルデヒドを発生しない人体へ悪影響を与えないものである。
【0037】
本発明の基材は前述のような不織布中に前述のような水性結合剤を含むものであるが、その量は所望の寸法安定性、剛性、及び耐熱性を得る為に、水性結合剤を含んでいない不織布の質量に対して30%以上含んでいるのが好ましく、60%以上含んでいるのがより好ましい。他方、水性結合材量が多すぎると、自重により垂下りやすくなるため、水性結合剤を含んでいない不織布の質量に対して200%以下であるのが好ましく、100%以下であるのがより好ましい。
【0038】
このような本発明の基材は、例えば、上述のような繊維(吸水性繊維、太繊維、熱融着性繊維)を混綿した後、乾式法又は湿式法によりウエブを形成した後、繊維同士を結合(例えば、片面または両面側からニードル又は流体流により絡合させる方法、バインダーを片面または両面側から含浸し、乾燥する方法、熱融着性繊維を融着させる方法、或いはこれらを組み合わせる方法)して不織布を製造した後、この不織布に対して前述のような水性結合剤を付与することによって製造することができるし、不織布の結合手段として前述のような水性結合剤を使用することによって製造することができる。これらの中でも、絡合させた後に水性結合剤で結合する方法であると、耐熱性、剛性、及び寸法安定性の優れる基材を簡潔に製造できるため好適である。なお、水性結合剤で結合する際には、水性結合剤が架橋してしまい、成形性を悪くしないように、水性結合剤が架橋しない温度で乾燥するのが好ましい。この温度は実験を繰り返すことによって、適宜設定することができる。
【0039】
本発明の内装材は上述のような基材を用いているため、ホルムアルデヒドが発生せず、耐熱性、剛性、及び寸法安定性に優れるものであり、特に内装材を構成する基材の水性結合材が架橋した状態にあると、耐熱性、剛性、及び寸法安定性に優れている。更には、不織布構成繊維が有機繊維のみからなる場合には、作業性に優れる環境への負荷の小さいものである。
【0040】
本発明の内装材は上述のような基材を含んでいれば良く、その他の材料は特に限定するものではないが、表皮材及び/又は非通気性フィルムを貼り合わせているのが好ましい。前者のように表皮材を貼り合せたものであると、車室内の装飾性に優れるものであり、後者のように非通気性フィルムを貼り合わせたものであると、車室内の空気が通気しないため、内装材の汚れを防止することができる。
【0041】
この表皮材としては、例えば、不織布、織物、編物等を挙げることができる。なお、必要により、表皮材と基材との間にウレタンなどからなるクッション材を含んでいても良い。このような表皮材と基材との貼り合せは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる非通気性フィルム、通気性フィルム、或いはスパンボンド不織布等を接着媒体として使用することにより実施できる。なお、このような接着媒体を利用した接着は、基材の成形と一緒に実施しても良いし、基材の成形とは別に実施しても良い。
【0042】
また、非通気性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂から構成していることができる。なお、表皮材と非通気性フィルムとを併用する場合には、非通気性フィルムは基材の表皮材貼り合わせ面とは反対面に貼り合せたり、基材と表皮材との間に貼り合せることができる。このような非通気性フィルムと基材、場合により表皮材との貼り合せは、例えば、非通気性フィルムの融着性を利用して実施することができ、この貼り合わせも、基材の成形と一緒に実施しても良いし、基材の成形とは別に実施しても良い。
【0043】
このような内装材は、例えば、上述のような基材及び他の必要な材料(例えば、表皮材及び/又は非通気性フィルム)を積層した後、加熱、好ましくは加熱に加えて加圧することによって水性結合材を架橋させて製造することができる。なお、この加熱温度は水性結合材が架橋開始温度よりも高いのが好ましく、一般的に前述の水性結合材の架橋開始温度は150℃程度であるため、150℃以上で加熱するのが好ましく、200℃以上で加熱すれば、更に効率良く架橋させることができる。また、基材が熱融着性繊維を含んでいる場合には、この加熱時に同時に融着させると、更に耐熱性、剛性、及び寸法安定性に優れる内装材を製造することができる。更に、この加熱によって表皮材及び/又は非通気性フィルムを貼り合せることができるが、この架橋させる際の加熱とは別に加熱して表皮材及び/又は非通気性フィルムを貼り合せても良い。
【0044】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートからなる太繊維(繊度:14.3dtex、繊維長:51mm、融点:260℃)を50mass%、レーヨン繊維(吸水性繊維、繊度:3.3dtex、繊維長:51mm)を30mass%、変性ポリエステルからなる鞘成分(繊度:4.4dtex、繊維長:51mm、融点:160℃)とポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)からなる芯成分からなる熱融着性芯鞘型繊維を20mass%とを混綿した後、開繊して繊維ウエブを形成した。
【0046】
次いで、この繊維ウエブの両面からニードルによる絡合(針密度:25本/cm2)を施して、絡合繊維ウエブ(目付:300g/m2、厚さ:10mm)を形成した。
【0047】
次いで、この絡合繊維ウエブを、ホルムアルデヒドを含まない水性結合剤(BASFディスパージョン株式会社製、アクロナール2348、架橋開始温度:約150℃、5〜100質量%がエチレン性不飽和酸無水物またはカルボン酸基が酸無水物基を形成することができるエチレン性不飽和ジカルボン酸からなるラジカル重合により得られたポリマー、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルカノールアミン、及びリン含有反応促進剤を含有するホルムアルデヒドを含まない水性結合剤を含んでおり、前記リン含有反応促進剤量が前記ポリマーとアルカノールアミンの和に対して、1.5質量%よりも少ないものである)からなる浴に浸漬して、水性結合剤を含浸した後に乾燥(乾燥温度:150℃)して、水性結合剤を含有する本発明の基材(水性結合剤量:200g/m2、目付:500g/m2、厚さ:8mm)を製造した。なお、水性結合剤は架橋していなかった。
【0048】
次いで、この基材を温度230℃に設定されたヒートプレス機により加熱加圧して、平板状の成形体(厚さ:5mm)を製造した。なお、この際に熱融着性芯鞘型繊維を融着させた。また、この成形体製造の際に前記水性結合材を架橋させたが、ホルムアルデヒドは発生しなかった。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同じ太繊維を60mass%、レーヨン繊維を20mass%、熱融着性芯鞘型繊維を20mass%とを混綿したこと以外は、実施例1と全く同様にして、繊維ウエブの形成、絡合繊維ウエブ(目付:300g/m2、厚さ:10mm)の形成、及び水性結合剤による結合を実施して、水性結合剤を含有する本発明の基材(水性結合剤量:200g/m2、目付:500g/m2、厚さ:8mm)を製造した。なお、水性結合剤は架橋していなかった。
【0050】
次いで、この基材を温度230℃に設定されたヒートプレス機により加熱加圧して、平板状の成形体(厚さ:5mm)を製造した。なお、この際に熱融着性芯鞘型繊維を融着させた。また、この成形体製造の際に前記水性結合材を架橋させたが、ホルムアルデヒドは発生しなかった。
【0051】
(曲げ時最大点荷重)
JIS K 7203(硬質プラスチックの曲げ試験)に準じて測定した。つまり、実施例1及び実施例2の成形体をたて150mm、よこ50mmの大きさの短冊状に裁断して試験片を作製した。
【0052】
次に、各試験片を100mmの間隔をあけて配置された2つの支持台間にまたがるように設置し、この試験片の中央部分(支持台から50mm離間した地点)を加圧くさびにより速度50mm/min.で加圧し、この荷重値の最大値を曲げ時最大点荷重とした。曲げ時最大点荷重が3N/25mm以上であれば実用上問題が生じない。この結果は表1に示す通りであった。
【0053】
【表1】
【0054】
(耐熱垂下り)
実施例1及び実施例2の成形体をたて300mm、よこ50mmの大きさの短冊状に裁断して試験片を作製した。次に試験片の一端から70mmまでの領域を直方体の台の上に固定し、残りの230mmの領域が直方体の台から突き出た状態で試験片を設置し、この状態を維持させたまま温度90℃に設定された恒温槽に4時間放置した後の、突き出された領域の先端部における垂下り量を測定した。垂下り量が10mm以下であれば実用上問題が生じない。
【0055】
表1から明らかなように、本発明の基材は耐熱性、剛性、及び寸法安定性に優れるものであることが確認された。
【0056】
【発明の効果】
本発明の自動車内装材用基材はホルムアルデヒドを含まず、しかも硬化させる際の架橋反応によってホルムアルデヒドが発生しないため、人体に対して悪影響を及ぼさない。また、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れている。
【0057】
前記自動車内装材用基材の不織布が有機繊維のみからなると、作業性に優れ、しかも使用後は産業廃棄物として処分する必要はなく、焼却処分することができるため、環境への負荷も小さい。
【0058】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、吸水性繊維を含んでいると、この吸水性繊維が水性結合剤を吸収してガラス繊維並の寸法安定性の良い繊維となるため、寸法安定性が向上する。
【0059】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、繊度が6dtex以上の太繊維を含んでいると、更に剛性を高めることができる。
【0060】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、熱融着性繊維を含んでいると、更に剛性を高めることができる。
【0061】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維として、吸水性繊維、繊度が6dtex以上の太繊維、及び熱融着性繊維を含んでいると、寸法安定性及び剛性を更に高めることができる。
【0062】
前記自動車内装材用基材の不織布構成繊維がニードル及び/又は流体流の作用により絡合していると、寸法安定性を更に高めることができる。
【0063】
本発明の自動車内装材はホルムアルデヒドを発生しない、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れるものである。特に、水性結合剤を架橋した状態で含んでいると、耐熱性、剛性、寸法安定性に優れている。
【0064】
前記内装材が表皮材を貼り合わせたものであると、車室内の装飾性に優れている。
【0065】
前記内装材が非通気性フィルムを貼り合わせたものであると、車室内の空気が通気しないため、内装材の汚れを防止することができる。
Claims (8)
- 吸水性繊維と熱融着性繊維を含み、ニードルの作用により絡合した不織布中に、5〜100質量%がエチレン性不飽和酸無水物またはカルボン酸基が酸無水物基を形成することができるエチレン性不飽和ジカルボン酸からなるラジカル重合により得られたポリマー、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルカノールアミン、及びリン含有反応促進剤を含有するホルムアルデヒドを含まない水性結合剤を含んでおり、前記リン含有反応促進剤量が前記ポリマーとアルカノールアミンの和に対して、1.5質量%よりも少ないことを特徴とする自動車内装材用基材。
- 不織布が有機繊維のみからなることを特徴とする、請求項1記載の自動車内装材用基材。
- 不織布構成繊維として、繊度が6dtex以上の太繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の自動車内装材用基材。
- 不織布構成繊維として、吸水性繊維、繊度が6dtex以上の太繊維、及び熱融着性繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の自動車内装材用基材。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の自動車内装材用基材を用いていることを特徴とする自動車内装材。
- 水性結合剤が架橋した状態で含んでいることを特徴とする、請求項5記載の自動車内装材。
- 表皮材を貼り合わせていることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の自動車内装材。
- 非通気性フィルムを貼り合わせていることを特徴とする、請求項5〜請求項7のいずれかに記載の自動車内装材。
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