JP4034018B2 - 多機能抽出システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコーヒーや茶等の飲料、朝鮮人参やその他生薬原料から薬用成分を抽出した健康飲料や医薬飲料等を、工業レベルで製造するのに適した多機能抽出システムに関するものである。
【0002】
【発明の背景】
コーヒー、紅茶等の缶飲料は、消費者の嗜好の多様化に応えて、種々のバリエーションが市販されており、例えばコーヒー飲料にあっては、比較的薄味のものから濃厚な味覚のものまで、多種にわたって商品展開がなされている。ところで比較的濃厚なコーヒーとして知られるエスプレッソコーヒーの場合、本来高速抽出されるべきものであるが、このような高速抽出は、缶コーヒー等を生産するための工業的な大量生産になじみにくく、このため現状で市販されているものはエスプレッソコーヒーにできるだけ味覚や食感を近似させるべく、従来の抽出手法の範囲で工夫されたものに過ぎなかった。
【0003】
すなわち従来、エスプレッソコーヒーなどの製品等を工業的に抽出する場合、粉砕したコーヒー豆を原料とした材料を抽出器の容器本体に投入するとともに、そこに処理液たる熱水を注入して抽出するものであって、この際この処理液の滞留時間を容器内で充分とって、入念な抽出を行うという発想がとられており、具体的には例えば図5に示すような装置が用いられていた。
【0004】
まず従来型の一つの抽出器101は、図5(a)に示すように例えば容器本体110を比較的細長いタワー状に形成し、その下方に小径の極めて微小な孔111を側面等に形成した取出パイプ112を設けてそこから徐々に製品となった処理液Lを取り出すようにしていた。また他の従来型の抽出器102としては図5(b)に示すように容器本体110の底部に円錐状にフィルタ113を形成し、ここを徐々に処理液Lを通過させ、取出パイプ114を取り出すようにした構成をとっている。
【0005】
しかしながらいずれも従来のコーヒー抽出器をほぼ踏襲して、上方から単に処理液を注入し、処理液の容器本体110内における滞留時間を長く押しとどめるという発想にとらわれたものに過ぎず、それ以上の改良、工夫の試みはされていないのが現状である。このため当然ながら抽出時間も長くかかり、勢い製造効率は悪く、結果的に高コストの製品しか提供し得ないものとなっていた。加えてコーヒー飲料等に重要な要素となる香気成分やコーヒーオイル成分等は、通常上方に逃げがちであり、図5に示す従来手法の場合、材料Wから下方に導かれる製品状態となった処理液Lに対し、むしろ香気等は上方に逃げたり、あるいは容器本体上部にとどまる状態となり、必ずしも充分に香気等を利用し尽くせないという問題があった。
【0006】
【解決を試みた技術的課題】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、従来の固定観念にとらわれず、抽出時間が速く且つ香気成分等の逸失のない優れた抽出手法を開発し、例えば従来工業的に抽出することが難しかったエスプレッソコーヒー等の抽出も効果的に行い得るようにすることを技術課題としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項1記載の多機能抽出システムは、抽出器の後段に冷却器 (3) を接続して成る抽出システムであって、
前記抽出器は、密閉自在の容器本体(10)の内部に、材料受入部(10C) と、この材料受入部(10C) の上下に位置する通液部(10A,10B) とを仕切フィルタ(15)によって区画して成るものであり、
前記仕切フィルタ(15) は、作用面が容器本体(10)の胴断面にほぼ等しくなるように形成され、且つその構成は、環状のリム (15A) に対して簀子状に形成されたサポート杆 (15B) の材料受入部 (10C) 側にフィルタエレメント (15C) を張設した構成であって、更にこの簀子状のサポート杆 (15B) 側から支持枠 (16) によって支承するものであり、
また、前記フィルタエレメント (15C) は、楔断面の金属線材が、楔状先端を通液部 (10A,10B) 側に向けるように多数並列されて成るものであって、
抽出にあたっては、処理液(L) を容器本体(10) の下方から加圧状態で供給した後、上方から材料(W) のエキス分を抽出した状態の処理液(L) として取り出せるようにするととも に、取り出した処理液 (L) を、この加圧密閉状態のまま冷却器 (3) に送り、加圧密閉状態のまま冷却するようにしたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、まず材料受入部における仕切フィルタを充分に大きな作用面積としたので、短時間の抽出で処理液が材料を通過し、迅速な抽出が行い得る。しかも処理液は下方から上方に向かって供給されるため、上方に移動しがちな香気成分等を逃さずに製品となる処理液に取り込むことができる。
また、仕切フィルタにおけるフィルタエレメントが楔断面の金属線であるから、抽出時における処理液の通過が円滑で且つその材料あるいは処理液等の通過に伴う機械的負荷に充分対応し得るものである。
また、仕切フィルタは更に支持枠によっても支持される状態となるから、稼動時における機械的負荷等に耐えることができる。
また、充分な香気等を含んだ状態で製品となった処理液は、密閉状態のまま冷却されるので、高温時に放散されがちな香気成分等が維持されたまま冷却される。
【0008】
また請求項2記載の多機能抽出システムは、前記請求項1記載の要件に加え、前記容器本体(10)は、
材料受入部(10C) を形成する胴部(11)と、
この胴部(11)に対し上下に設けられ、内部を通液部(10A,10B) とした蓋部(12)を
有することを特徴として成るものである。
この発明によれば、蓋部の存在により材料の投入等の稼動にあたっての段取り作業あるいは運転時以外における清掃等のメンテナンス作業が容易に行い得る。
【0009】
更にまた請求項3記載の多機能抽出システムは、前記請求項2記載の要件に加え、前記仕切フィルタ(15)は胴部(11)と蓋部(12)とに挟持されて取り付けられることを特徴ととして成るものである。
この発明によれば、仕切フィルタ等の設置あるいは取り外し等も極めて容易に且つ合理的に行い得る。
【0010】
更にまた請求項4記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記容器本体(10)には給気配管(22)が並設されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、蒸気等供給できる配管が存在するため、例えば冷水等で抽出を行う場合、抽出速度が鈍りがちな材料にあらかじめ蒸気等を供給して加熱し、これらを活性化させておくような処理が可能であり、更にまた内部の加熱殺菌等も行い得る。
【0011】
更にまた請求項5記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記容器本体(10)には処理液(L) の流れ方向を上方から下方へ向かわせる反転配管(23)が並設されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、処理液を上方から下方に供給した方が好ましいような製品の場合であっても使用することが可能である。
【0012】
更にまた請求項6記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2、3、4、または5記載の要件に加え、前記容器本体(10)には、加振装置(14)が付設されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、抽出時に容器本体に振動を与えることができ、効果的な抽出を更に助ける。
【0013】
更にまた請求項7記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記抽出にあたっては、容器本体(10)内に供給した材料(W) を加圧して密に充填した後、抽出を行うことを特徴として成るものである。
この発明によれば、材料受入部に投入する際、材料を適度に加圧でき密に充填できるため、より効率的に抽出が行える。
【0014】
更にまた請求項8記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の要件に加え、前記抽出にあたっては、抽出に先立ち容器本体(10)内に蒸気または熱水のいずれか一方または双方を供給し、材料(W) を活性化させる予備処理を行うことを特徴として成るものである。
この発明によれば、冷水抽出の場合であっても材料が活性化処理されているので、効率的な抽出が図られる。
【0015】
更にまた請求項9記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の要件に加え、前記抽出にあたっては、処理液(L) が材料(W) と接触している際におけるすべての時間または一部の時間にわたって加振がされることを特徴として成るものである。
この発明によれば、抽出時において材料及び処理液が加振され、効果的な抽出を更に助ける。
【0016】
更にまた請求項10記載の多機能抽出システムは、前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の要件に加え、前記抽出は、エスプレッソコーヒーの抽出であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、従来工業的に抽出することが難しかったエスプレッソコーヒー等の抽出も効果的に行い得る。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図示の実施の形態に基づいて具体的に説明する。符号1は本発明に係る多機能抽出器であって、このものは図1及び図2に示すように給液タンク2と冷却器3とを前後に接続させて成るものである。まず多機能抽出器1について具体的に説明する。このものは容器本体10を主要部材とするものであり、飲料製造という高度に衛生管理が要求される分野であることに因み、容器本体10並びに関連部材の多くはステンレス材料が用いられる。この容器本体10は適宜の架台Fに支持されており、容器本体10は円胴状の胴部11と、その上下に設けられる蓋部12とに分割されるものであり、この蓋部12を区別するときは下蓋部12Aと上蓋部12Bとして示す。これら蓋部12は下蓋部12A、上蓋部12B共に開閉機構13により胴部11に対し開閉自在に取り付けられている。具体的構成はピボット状のヒンジ13Aに対し側面から見てベルクランク状のアーム13Bを回転自在に支持させ、このアーム13Bの一端に前記蓋部12を固定するとともに、他端にシフトシリンダ13Cの摺動子を接続させている。
【0018】
なおこのシフトシリンダ13Cは一例として電動タイプのものが用いられるものであり、シリンダ駆動モータ13Dにより駆動される。また蓋部12の閉鎖状態は前記シフトシリンダ13Cの伸長時において蓋部12が胴部11に対し密着して得られるが、その状態を更にボルト状のクランプ13Eにより締め合わせその固定を図るようにしている。もちろんクランプ13Eはこのような手法のほか、トグルクランプを用いたバックル状のもの、あるいはバイヨネットクラッチ状の自動ロック可能な機構等、適宜高圧容器の蓋部閉鎖機構に用いられる機構をとり入れることが可能である。
【0019】
更に容器本体10は処理液Lによって材料Wのエキス分を抽出するにあたって、その効果をより高めるために全体を振動させることもできる加振装置14を具える。すなわち容器本体10における胴部11にはモータと重心を偏心させた回転体を一体とさせた加振装置14を取り付け、モータを回転させることにより一定周波数の機械的振動が発生するようにしているものである。
【0020】
このような容器本体10はその内部を中空とするものであり、この内部は前記下蓋部12Aの内部を下方の通液部10Aとし、また上蓋部12Bの内部を上方の通液部10Bとし、その中間の胴部11の内側を材料受入部10Cとするものである。そして材料受入部10Cとその上下双方の通液部10A、10Bの間には仕切フィルタ15が設けられている。この仕切フィルタ15は全体として円形の平板状部材であり、図1に示すように円環状のリム15Aに対し一定間隔毎に帯状金属材から成るサポート杆15Bを粗い簀子状に形成し、更にサポート杆15Bの材料受入部10C側にフィルタエレメント15Cを張設したものである。このフィルタエレメント15Cは、要は材料Wの通過を許さない程度の濾過作用ができればよいものであるが、請求項1で定義したように楔断面の金属線材を多数密に簀子状に配設したものとする。
【0021】
なおフィルタエレメント15Cの個々の金属線材が断面楔状であることに因み、処理液Lの通過方向に見て通過開始端と通過終了端の通過幅Dがそれぞれ異なるが、その配設態様は図3に示すように下方の通液部10Aと材料を受け入れる材料受入部10Cとの間に設ける仕切フィルタ15にあっては、下方を幅広とし、上方の通液部10Bと材料受入部10Cとの境界部の仕切フィルタ15については、逆に材料受入部10C側を狭く、上方の通液部10B側を広くするような配設態様とするのである。要はフィルタエレメント15Cの楔状先端は、いずれも通液部10A、10B側に向けるように設定する。
【0022】
このような仕切フィルタ15は更に容器本体10側に設ける支持枠16によって支承される。具体的には格子状の支持枠16を容器本体10における上下の蓋部12に設けるようにする。更に処理液Lの供給、取り出しのために前記下蓋部12Aには一例としてそのほぼ中央に短寸の管状の給液口17を形成し、一方、上蓋部12Bには同様に短寸の管状の取出口18を設ける。また更に図2に骨格的に示すように下蓋部12Aには給気口、例えば加熱した蒸気や、処理液Lの上方からの排出用の加圧空気(あるいは酸化を嫌う場合は窒素ガス等)を供給できる給気口19を形成する。
【0023】
このような多機能抽出器1に対し、更にその上流側に給液タンク2が接続されるとともに、下流側に冷却器3が接続される。以下これらの配管構造について説明すると、給液配管20は、前記給液タンク2から適宜ポンプ等を介して給液口17に接続され、更に出口側には取出配管21を設けてこれを前記冷却器3に至らせる。また容器本体10における前記給気口19に対しては給気配管22が設けられるものであり、この給気配管22は適宜エアフィルタ等をその途中に具えるとともに、必要に応じてこの配管途中を分岐させ、取出配管21に合流させる。なおこの給気配管22によって、例えば冷水等で抽出を行う場合、抽出速度が鈍りがちな材料Wにあらかじめ蒸気等を供給して加熱し、活性化させる予備処理や抽出器内部の加熱殺菌処理等が行える。
【0024】
更にこの実施の形態では反転配管23を有する。すなわちこの装置は通常下方から処理液Lを供給するのであるが、それを反転して上方から供給できるようにするための配管であり、図2の骨格図において二点鎖線で示す経路である。もちろんそれらはその途中で切替弁24を具え、経路の選択が図られるのは言うまでもない。
【0025】
更に冷却器3は冷水を通す冷媒コイル30を冷却器3の冷却液31内を通過させ、冷却液31を冷却するものであり、この冷却器3内を製品を移送する取出配管21が通過することにより、その冷却が図られるのである。これによって理解されるように材料Wのエキス分を抽出して製品となった処理液Lは密閉状態のまま冷却がなされるのである。
【0026】
本発明の多機能抽抽出システムは以上述べたような構成を有するものであり、次のような作動の下にその抽出がなされる。
(1)材料の準備
材料Wとしては、以下コーヒーのエスプレッソを中心に述べるが、このようなコーヒー以外にも紅茶、緑茶、ウーロン茶、更にはドクダミ茶、その他エキスを抽出して飲用として適する素材すべてが適用可能である。またそれらの一般的な飲料のほか、薬用の飲料として朝鮮人参等を材料Wとして適用できる。抽出にあたっては、まずこのような材料Wを容器本体10における材料受入部10Cに所定量投入する。もちろんこの際は胴部11に対し、下蓋部12Aを閉鎖した状態にし、且つその間に下方の仕切フィルタ15を挟み込んで保持したような状態とし、一方、上蓋部12Bを開放した状態としてこの作業を行う。
なお材料Wを材料受入部10Cに充填するにあたっては、より効率的に抽出を行うべく、材料Wを適度に加圧し、密に充填することが好ましい。因みにその加圧手段としては、例えば加振装置14によって胴部11を振動させる形態や、ランマー等によって材料Wを適度に押し固めるようにする形態が採り得るし、あるいは特に器具等を使わずに、作業者が直接手で押さえるようにしても構わない。また加圧するタイミングも所定量すべてを一度に投入した後、最後に加圧する形態はもとより、投入を何回かに分散し、投入と加圧とを繰り返し行う形態等が採り得る。
【0027】
(2)処理液の注入
このような作業が終了した後、上蓋部12Bを上方の仕切フィルタ15を挟み込むような状態に閉鎖する。このような状態で給液タンク2からの処理液Lを給液配管20を通って給液口17から容器本体10内に注入する。なおこの処理液L自体は当然コーヒー等を抽出させる場合には熱水であるが、前記生薬等のエキス分を抽出する場合には例えばアルコール等を用いることも可能である。なおこのエスプレッソコーヒー等を抽出する場合には、この処理液Lは加圧した状態とすることが好ましい。その圧力はほぼ20kg/cm2 前後を上限とした圧力とすることが好ましい。もちろん処理液Lを容器本体10に対し下方から供給し、上方から抜き出すわけであるから、そのような動きが達成される相応の圧力を最低限有することは言うまでもない。
【0028】
(3)抽出作用
このようにして処理液Lが容器本体10に供給されてくると、まず下方の通液部10Aを満たした後、液面が更に上昇して処理液Lはフィルタエレメント15Cを通って材料Wと接し、その材料Wのエキスを充分抽出しながら上方の通液部10Bを満たし、更にここから逸流する処理液Lは取出口18から取出配管21に取り出されてゆくのである。この抽出作用を行う際、前記請求項6または9において定義したように加振装置14を作動させ、材料Wと処理液Lとに振動を与え、抽出をより効果的に行わせることが好ましい。もちろんこの加振にあたっては請求項9の記載からも理解されるように、加振手段は必ずしも請求項6で定義したような容器本体10に取り付けた加振装置14であることを要しない。例えば加振棒を容器本体10内、特に材料受入部10C等に設け、材料W、処理液Lに直接接触しながら加振するようなものであってもよい。
【0029】
因みにこの抽出は処理液Lを連続的に送り込みながら順次取出口18から取り出す連続的な抽出のほか、容器本体10内を処理液Lで満たした後、一旦注液を止め、抽出を促したのち、これを排出するような使用方法がとり得る。もちろんこの際、最後の処理液Lを上方から抜くわけであるから、前記給気口19から加圧用の空気あるいは必要に応じて窒素ガスを供給して容器本体10の内部圧力を高め、処理液Lの抜き取りを完了するのである。もちろん加圧用の空気等は給気口19から供給することを限定されず、例えば給液口17に空気供給管路を切替自在に接続させておいて、ここから供給するようにしてもよい。
【0030】
(4)フィルタエレメントの作用
このような抽出にあたり、フィルタエレメント15Cは楔状断面の部材であり、且つサポート杆15Bとの組み合わせによって充分な剛性を発揮し、処理液L等の材料Wあるいは処理液L等の圧力等に充分耐え得るものである。そして特に処理液Lの流れ方向に見て、材料受入部10Cと上方の通液部10Bとの間では処理液Lの上流側においてフィルタエレメント15Cの通過幅Dが狭く、下流側(通液部10B側)が広くなっているから、フィルタエレメント15Cにおいて材料Wの目詰まりが生じにくくなっているのである。
【0031】
もちろんこの目詰まりが回避しやすい現象は処理液Lが通常の重力方向と逆に下方から上方に向かっていることも一つの要因である。また仕切フィルタ15に対しては比較的過大な機械的負荷が生じない状態で抽出がされている。すなわち処理液Lが下方から上方に向かっていることにより材料Wの荷重等がむしろ減殺され、仕切フィルタ15にそのまま重量がかからないためである。因みに処理液Lが上方から下方に向かった場合、材料Wの重量が下方に向かい且つ処理液Lが上方に供給されて、更にそこでの抽出がされると、材料W自体が流路抵抗となって処理液Lの流動抵抗と材料Wの重量とがすべて仕切フィルタ15にかかってしまうのである。このような好ましくない状況は、処理液Lの自然流下の状況でも生ずるものであるから、ましてや抽出効率を上げるべく加圧状態に処理液Lを供給した場合より顕著なものとなってしまうのである。
【0032】
(5)冷却
このようにして抽出された材料Wのエキスを抽出したほぼ製品となった処理液Lは冷却器3を通り、その管路が冷却液31中に浸漬されていることにより冷却液31との間で熱交換を行い、例えばエスプレッソコーヒーの場合、ほぼ110℃の温度をほぼ20℃に低下させるようにしているのである。
【0033】
(6)冷水抽出の方法
このような基本的な操作により処理液Lによる材料Wのエキス分の抽出が行われるわけであるが、例えば処理液Lが冷水の場合、例えば緑茶等であってもエキス分の抽出が充分に行われない場合が生ずる。この場合、例えば前記給気口19から加熱した蒸気またはシャワー状の熱水を供給して例えば茶葉のような材料Wの場合、材料の茶葉を開かせるようにして抽出がより活性化できるような状態に予備処理を行う。そしてその後冷水の処理液Lを通過させて抽出を行う。
【0034】
【発明の効果】
本発明は以上述べたような構成を有するものであり、次のような効果を奏する。
すなわち請求項1記載の発明によれば、まず材料受入部10Cにおける仕切フィルタ15を充分に大きな作用面積としたので、短時間の抽出で処理液Lが材料Wを通過し、迅速な抽出が行い得るという効果を奏する。しかも処理液Lは下方から上方に向かって供給されるため、上方に移動しがちな香気成分等を逃さずに製品となる処理液Lに取り込むことができるという効果を奏する。
また、仕切フィルタ15におけるフィルタエレメント15Cが楔断面の金属線であるから、抽出時における処理液Lの通過が円滑で且つその材料Wあるいは処理液L等の通過に伴う機械的負荷に充分対応し得るという効果を奏する。
また、仕切フィルタ15は更に支持枠16によっても支持される状態となるから、稼動時における機械的負荷等に耐えることができるという効果を奏する。
また、充分な香気等を含んだ製品となった処理液Lは密閉状態のまま冷却されるので、加熱時に放散されがちな香気成分等が維持されたまま冷却されるという効果を奏する。
【0035】
更にまた請求項2記載の発明によれば、蓋部12の存在により材料Wの投入等の稼動にあたっての段取り作業あるいは運転時以外における清掃等のメンテナンス作業が容易に行い得るという効果を奏する。
【0036】
更にまた請求項3記載の発明によれば、仕切フィルタ15等の設置あるいは取り外し等も極めて容易に且つ合理的に行い得るという効果を奏する。
【0037】
(0041)
更にまた請求項4記載の発明によれば、蒸気供給できる配管が存在するため、例えば冷水等で抽出を行う場合、抽出速度が鈍りがちな材料Wにあらかじめ蒸気等を供給して加熱し、これらを活性化させておくような処理が可能であり、更にまた内部の加熱殺菌等も行い得るという効果を奏する。
【0038】
更にまた請求項5記載の発明によれば、処理液Lを上方から下方に供給した方が好ましいような製品の場合であっても使用することが可能であるという効果を奏する。
【0039】
更にまた請求項6記載の発明によれば、抽出時に容器本体10に振動を与えることができ、効果的な抽出を更に助けるという効果を奏する。
【0040】
更にまた請求項7記載の発明によれば、材料受入部10Cに投入する際、材料Wを適度に加圧でき密に充填できるため、より効率的に抽出が行える。
【0041】
更にまた請求項8記載の発明によれば、冷水抽出の場合であっても材料Wが活性化処理されているので、効率的な抽出が図られるという効果を奏する。
【0042】
更にまた請求項9記載の発明によれば、抽出時において材料W及び処理液Lが加振され、効果的な抽出を更に助けるという効果を奏する。
【0043】
更にまた請求項10記載の発明によれば、従来工業的に抽出することが難しかったエスプレッソコーヒー等の抽出も効果的に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る多機能抽出器を一部破断して示す斜視図、並びに仕切フィルタ部を示す拡大図である。
【図2】 本発明に係る多機能抽出器を用いた抽出システムを示す説明図である。
【図3】 本発明に係る多機能抽出器を示す縦断面図、並びにフィルタエレメント部を示す拡大図である。
【図4】 本発明に係る多機能抽出器を示す平面図である。
【図5】 従来の抽出手法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 多機能抽出器
2 給液タンク
3 冷却器
10 容器本体
10A 通液部(下方の)
10B 通液部(上方の)
10C 材料受入部
11 胴部
12 蓋部
12A 下蓋部
12B 上蓋部
13 開閉機構
13A ヒンジ
13B アーム
13C シフトシリンダ
13D シリンダ駆動モータ
13E クランプ
14 加振装置
15 仕切フィルタ
15A リム
15B サポート杆
15C フィルタエレメント
16 支持枠
17 給液口
18 取出口
19 給気口
20 給液配管
21 取出配管
22 給気配管
23 反転配管
24 切替弁
30 冷媒コイル
31 冷却液
D 通過幅
F 架台
L 処理液
W 材料
Claims (10)
- 抽出器の後段に冷却器 (3) を接続して成る抽出システムであって、
前記抽出器は、密閉自在の容器本体(10)の内部に、材料受入部(10C) と、この材料受入部(10C) の上下に位置する通液部(10A,10B) とを仕切フィルタ(15)によって区画して成るものであり、
前記仕切フィルタ(15) は、作用面が容器本体(10)の胴断面にほぼ等しくなるように形成され、且つその構成は、環状のリム (15A) に対して簀子状に形成されたサポート杆 (15B) の材料受入部 (10C) 側にフィルタエレメント (15C) を張設した構成であって、更にこの簀子状のサポート杆 (15B) 側から支持枠 (16) によって支承するものであり、
また、前記フィルタエレメント (15C) は、楔断面の金属線材が、楔状先端を通液部 (10A,10B) 側に向けるように多数並列されて成るものであって、
抽出にあたっては、処理液(L) を容器本体(10) の下方から加圧状態で供給した後、上方から材料(W) のエキス分を抽出した状態の処理液(L) として取り出せるようにするとともに、取り出した処理液 (L) を、この加圧密閉状態のまま冷却器 (3) に送り、加圧密閉状態のまま冷却するようにしたことを特徴とする多機能抽出システム。 - 前記容器本体(10)は、
材料受入部(10C) を形成する胴部(11)と、
この胴部(11)に対し上下に設けられ、内部を通液部(10A,10B) とした蓋部(12)を
有することを特徴とする請求項1記載の多機能抽出システム。 - 前記仕切フィルタ(15)は胴部(11)と蓋部(12)とに挟持されて取り付けられることを特徴とする請求項2記載の多機能抽出システム。
- 前記容器本体(10)には給気配管(22)が並設されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の多機能抽出システム。
- 前記容器本体(10)には処理液(L) の流れ方向を上方から下方へ向かわせる反転配管(23)が並設されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の多機能抽出システム。
- 前記容器本体(10)には、加振装置(14)が付設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の多機能抽出システム。
- 前記抽出にあたっては、容器本体(10)内に供給した材料(W) を加圧して密に充填した後、抽出を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の多機能抽出システム。
- 前記抽出にあたっては、抽出に先立ち容器本体(10)内に蒸気または熱水のいずれか一方または双方を供給し、材料(W) を活性化させる予備処理を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の多機能抽出システム。
- 前記抽出にあたっては、処理液(L) が材料(W) と接触している際におけるすべての時間または一部の時間にわたって加振がされることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の多機能抽出システム。
- 前記抽出は、エスプレッソコーヒーの抽出であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の多機能抽出システム。
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