JP4032949B2 - 光ファイバ洗浄装置及び洗浄方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ端部の被覆除去部分を洗浄液に浸して超音波振動により洗浄する光ファイバ洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ同士を融着接続する場合、光ファイバ端部の被覆を除去してガラスの裸ファイバを露出させ、被覆端から所定の長さになるようにカットし、次いで光ファイバの双方のカット端面を突き合せて加熱融着する。光ファイバの被覆を除去した後、通常、裸ファイバ表面の被覆除去の際の残り屑、作業時に付着する塵埃や微粒子を除去するために裸ファイバ表面を清掃あるいは洗浄する。この清掃が不充分であると、融着接続時の位置決めが正しく行なえなかったり、融着接続部に塵埃等が混入するというようなことがある。この結果、接続部の接続損失が増加あるいは接続強度が低下するというようなことになる。
【0003】
光ファイバ端部の被覆除去部分を、他の固体に触れずに洗浄する方法として、光ファイバ端部の被覆除去部分を洗浄液に浸して超音波振動により洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。図4は、前記特許文献1に開示されている光ファイバ洗浄装置の概略を説明する図である。図中、1は洗浄槽、2は支持基板、3はベースリング、4はホルダリング、5は中央要素、6は貫通孔、7は突起、8は光ガイド、9は調整リング、10はロックナット、11は洗浄液、12はファイバホルダ、12aはホルダベース、12bは押さえ蓋、13は光ファイバ(リボンファイバ)、13aは裸ファイバ、13bはファイバ被覆を示す。
【0004】
洗浄槽1は、円筒形の容器で形成され、上端のフランジ部1aをベースリング3とホルダリング4で挟んで洗浄装置の支持基板2に取付けられる。ホルダリング4内には中央要素5を摺動可能に配し、中央要素5の上端には調整リング9を回転可能に取付ける。調整リング9は、ホルダリング4に螺合されていて、回動することにより中央要素5を上下方向に摺動させる。また、ホルダリング4にはロックナット10が螺合されていて、このロックナット10を調整リング9の下端に当接させることにより、調整リング9の回転移動をロックする。
【0005】
中央要素5の中央には、上方側が広げられた貫通孔6が設けられ、この貫通孔6の下方には突起7が設けられている。また、中央要素5には、ガラス又はプラスチックの光ガイド8が取付けられている。洗浄槽1内に洗浄液11が入れられた状態で調整リング9が回動され、中央要素5の上下方向の位置調整が行なわれる。光ガイド8の下端8aが洗浄液11に接触したとき、光ガイド8の上面が暗くなるので、この位置で調整リング9の回動を停止する。次いで、ロックナット10を調整リング9の下端に当接するまで回動し調整位置をロックする。
【0006】
洗浄しようとする光ファイバ13の端部は、ファイバホルダ12により保持される。ファイバホルダ12は、ホルダベース12aに1対の押さえ蓋12bが開閉可能に設けた形状のもので、光ファイバ13は、押さえ蓋12bを閉じることにより固定される。光ファイバ13の先端は、ファイバ被覆13bを除去して所定長さの裸ファイバ13aが露出された形でファイバホルダ12に保持され、この状態で中央要素5の貫通孔6に挿入される。
【0007】
ファイバホルダ12の下端は、貫通孔6の下方に設けられた突起7に当たって挿入が停止され、ファイバ被覆13bの端部から露出する裸ファイバ13aを所定位置まで洗浄液11に浸すことができる。洗浄槽1には、超音波振動を付与する圧電振動手段(図示せず)が設けられていて、洗浄液11に振動を与え所定時間洗浄される。洗浄後、ファイバ被覆13bの端部から所定長さの裸ファイバ13aが露出するようにカットされ、次いで融着接続される。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−180636号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような洗浄装置を用いることにより、洗浄液11の液面を静止状態に保つことにより、ファイバ被覆13bには洗浄液11が接触しないようにして洗浄することはできる。しかし、例えば、海底光ケーブルの敷設、保守等で、洋上の船内で接続作業を行なうような場合、船の揺れによって洗浄装置自体が揺れを受ける。この場合、洗浄液11の液面レベルが上下に変動し、また、液面に波が発生し、ファイバ被覆13bの端部分も洗浄液11で濡らされる。
【0010】
光ファイバ端部の洗浄液には、アセトンを用いる場合が多く、ファイバ被覆13bがアセトン等で濡れると膨潤しやすい。特に、光ファイバを高強度融着接続するような場合には、ファイバ被覆13bの端部分をクランプして位置決め等を行なうことから、ファイバ被覆13bが膨潤したりすると、精度の高い位置決めができなくなり、また、洗浄液は可燃性を有するため融着時の熱でファイバ被覆13bが燃えやすいという問題がある。したがって、ファイバ被覆13bには、洗浄液11が付着しないようにして洗浄する必要がある。
【0011】
上述した洗浄装置で、洗浄液面の面積を縮小することにより、波の発生を抑制することが考えられる。しかし、洗浄液面の面積を縮小すると、洗浄槽1の容積も小さいものを用いることになる。洗浄槽1の容積が小さいと、洗浄液の蒸発により洗浄液面の低下が早く、洗浄液の汚濁で洗浄能力も低下するので交換頻度が多くなり、効率的な作業ができなくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、洗浄槽の容積を大きくでき、且つ波の発生を抑制することができる洗浄槽を備えた光ファイバ洗浄装置と洗浄方法の提供を課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による光ファイバ洗浄装置は、単心又は多心の光ファイバ端部の被覆除去部分を、洗浄液中に浸して超音波振動により洗浄する光ファイバ洗浄装置であって、洗浄槽を仕切壁により複数の区画室に分割して洗浄液面を複数に分割し、波の発生を抑制するようにしたものである。
【0014】
また、本発明による光ファイバ洗浄方法は、単心又は多心の光ファイバ端部の被覆除去部分を、洗浄液中に浸して超音波振動により洗浄する光ファイバ洗浄方法であって、洗浄槽を仕切壁により複数の区画室に分割して洗浄液面を複数に分割し、分割された区画室に光ファイバ端部の被覆除去部分を浸して洗浄することにより、光ファイバ端部の被覆除去部分を濡らさないようにしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の洗浄対象とする光ファイバは、融着接続する単心又は多心の光ファイバである。単心の光ファイバは、ガラスの裸ファイバの外面をファイバ被覆(1層又は2層)で被覆したもので、光ファイバ心線又は光ファイバ素線と称されている形態のものである。また、多心の光ファイバは、複数本の光ファイバ心線又は素線を、共通被覆で一体化した光ファイバテープ心線又はリボンファイバと称されているものである。
【0016】
図1及び図2により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は洗浄槽の概略を示す斜視図、図1(B)は断面図、図2(A)及び図2(B)は光ファイバの洗浄形態を説明する図である。図中、20は洗浄液、21は洗浄槽、21aは底壁、22は仕切壁、23は区画室、24は開渠部、25は光ファイバ、25aは裸ファイバ、25bはファイバ被覆、26はファイバホルダ、27はホルダ保持体、28は保持フレーム、29は超音波発生器を示す。
【0017】
洗浄槽21は、図1に示すように、例えば、比較的大型の矩形容器で形成し、この矩形容器内を仕切壁22により複数の区画室23に分割する。仕切壁22は、隣り合う区画室の間で洗浄液20が互いに自由に移動できるように、適当の位置に開渠部24が設けられる。図1では、この開渠部24を仕切壁22の下端を洗浄槽21の底壁21aから浮かせることにより、洗浄槽21の最下部に設けた例を示している。なお、開渠部24を最下部に設けることにより、洗浄液20の液面レベルが低下しても互いに移動可能である。
【0018】
また、洗浄槽21は円形の容器で形成することもできる。この場合も、同心状に配される円筒状の仕切壁及び径方向に放射状に配される仕切壁を用いることにより、複数の区画室に分割することができる。区画室の大きさは、特に厳密なものではなく、露出面積が均等になるように分割してもよいが、大小混在していてもかまわない。また、区画室は矩形状、円筒状等の種々の形状とすることができる。
【0019】
洗浄槽21を複数の区画室23に分割することにより、洗浄液20の全体の露出面積は大きくても、各区画室23での露出面積を実質的には縮小することができる。これにより、船上等のように揺れの生じる場所での使用に際して、洗浄液表面における波の発生を抑制でき、洗浄液20の収納容量を大きくすることが可能となる。
【0020】
上記のように構成された洗浄槽21は、例えば、図2(A)又は(B)に一例として示すように、複数の区画室23のうちの一つにホルダ保持体27を、保持フレーム28等を用いて配置する。保持フレーム28は、図2(A)に示すように洗浄槽21を利用してホルダ保持体27を支持するようしてもよく、図2(B)に示すように、仕切壁22の上部に係止させるような形でホルダ保持体27を支持するようしてもよい。
【0021】
光ファイバの融着接続に先立って、接続対象の光ファイバ25は、先端部のファイバ被覆25bを除去して所定長さの裸ファイバ25aを露出し、ファイバ被覆25bの部分に、例えば、ファイバホルダ26を取付ける。ファイバホルダ26は、例えば、ホルダベースと押さえ蓋部からなるヒンジ結合された開閉可能な把持形状のものを用いることができる。
【0022】
洗浄槽21内には、所定量の洗浄液20が入れられ、洗浄液20は開渠部24を通じて、複数の区画室23の液面レベルが均一になるように満たされる。洗浄槽21の下部には超音波発生器29が設けられ、洗浄液20に超音波振動が加えられる。光ファイバ25を把持したファイバホルダ26を、ホルダ保持体27の支持凹部に入れることにより位置決めされ、裸ファイバ25aの部分のみを洗浄液20に浸漬させて洗浄することができる。なお、洗浄液20の液面レベルに応じて、ファイバホルダ26からのファイバ被覆25bの突き出し量を変えることにより、裸ファイバ25aの浸漬位置を調整することができる。
【0023】
図3は本発明による具体的な光ファイバ洗浄装置の例を示す図である。図中、30は取付けフレーム、31はホルダステージ、31aはフレーム、31bはスライダ,31cは移動駒、31dは調整ネジ、32は枢軸、33は支持フレームを示す。その他の符号は、図1及び図2に示したものと同一の機能を奏する部分に同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0024】
図3に示した光ファイバ洗浄装置は、取付けフレーム30に支持フレーム33を用いて洗浄槽21を支持し、また、取付けフレーム30にホルダステージ31を、枢軸32により回動可能に取付けて構成されている。洗浄槽21は、図1に示したような矩形状のもので、仕切壁22を用いて複数の区画室23に分割している。仕切壁22は、例えば、両側にフランジ部22bを設けたコ字状に形成し、フランジ部22bを洗浄槽21の側壁部にスポット溶接等により固定して取付けられる。また、仕切壁22には、後述する裸ファイバ25aが通過するスリット22aを設ける場合もある。
【0025】
ホルダステージ31は、フレーム31aにスライダ31bを移動可能に配し、スライダ31bに固定された移動駒31cに、調整ネジ31dを螺合させて構成されている。スライダ31bには、ファイバホルダ26がマグネット等を用いて着脱可能に取付けられる。ファイバホルダ26は、ホルダベース26aに1対の押さえ蓋26bをヒンジ結合させた形状のもので、先端側に突き出し片26cを有している。
【0026】
光ファイバ25は、ファイバ被覆25bの部分を2つの押さえ蓋26bにより、ファイバホルダ26に確実に把持され、突き出し片26cの先端からわずかなファイバ被覆25bを残して裸ファイバ25aが突き出るようにされる。ファイバホルダ26は、光ファイバ25を上記の如くに把持してホルダステージ31のスライダ31b上に載置して保持される。スライダ31bは、調整ネジ31dにより位置調整され、ファイバホルダ26の位置決めがなされる。
【0027】
光ファイバ25がホルダステージ31上に保持された後、ホルダステージ31は、枢軸32により鎖線で示すように90度回動される。この回動により、裸ファイバ25aは洗浄槽21の洗浄液20内に浸漬される。裸ファイバ25aがホルダステージ31とともに回動するとき、仕切壁22に当たる状態となるが、前述した仕切壁22に設けたスリット22aを通過して、その回動が妨げられることなく洗浄液20に浸漬させることができる。
【0028】
光ファイバ25の洗浄は、上述したようにホルダステージ31を回動させるだけの操作で、光ファイバ25を洗浄槽21内に入れたり出したりすることができ、作業者のスキルに頼ることなく容易に行なうことができる。また、ファイバ被覆25bの部分は、洗浄液20に浸からないようにする必要があるが、洗浄液20の液面レベルの変動状態を見ながら、光ファイバ25の支持位置を、調整ネジ31dによりスライダ31bを移動調整することにより容易に設定することができる。
【0029】
以上の図1〜図3に示した洗浄装置は、何れも洗浄槽21を仕切壁22により複数の区画室23に分けているため、その洗浄液の露出面積を小面積に分割することができる。洗浄液面における波は、分割された小面積単位で発生するので、波の大きさも小さいものとなり、波の発生が抑制される。この結果、洗浄液面の上下動も小さく、ファイバ被覆25bを濡らさずに裸ファイバ25aの部分のみを、効率よく洗浄することができる。
【0030】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、洗浄槽を仕切壁により小面積の区画室に分けるだけの簡単な構成で、洗浄液面における波の発生を抑制することができ、船上等の揺れのある場所での使用に際しても、ファイバ被覆が洗浄液で濡れるのを軽減することができる。また、洗浄槽の容量を大きくすることができるので、洗浄液の補充、交換の回数が少なくて済み、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による洗浄装置に用いる洗浄槽の概略を説明する図である。
【図2】本発明による洗浄装置の概略を説明する図である。
【図3】本発明の洗浄装置の具体例を説明する図である。
【図4】従来の洗浄装置の例を説明する図である。
【符号の説明】
20…洗浄液、21…洗浄槽、21a…底壁、22…仕切壁、22a…スリット、22b…フランジ部、23…区画室、24…開渠部、25…光ファイバ、25a…裸ファイバ、25b…ファイバ被覆、26…ファイバホルダ、26a…ホルダベース、26b…押さえ蓋、26c…突き出し片、27…ホルダ保持体、28…保持フレーム、29…超音波発生器、30…取付けフレーム、31…ホルダステージ、31a…フレーム、31b…スライダ、31c…移動駒、31d…調整ネジ、32…枢軸、33…支持フレーム。

Claims (4)

  1. 単心又は多心の光ファイバ端部の被覆除去部分を、洗浄液中に浸して超音波振動により洗浄する光ファイバ洗浄装置であって、洗浄槽を仕切壁により複数の区画室に分割して洗浄液面を複数に分割したことを特徴とする光ファイバ洗浄装置。
  2. 前記仕切壁に開渠部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ洗浄装置。
  3. 前記開渠部は、前記仕切壁の下端に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ洗浄装置。
  4. 単心又は多心の光ファイバ端部の被覆除去部分を、洗浄液中に浸して超音波振動により洗浄する光ファイバ洗浄方法であって、洗浄槽を仕切壁により複数の区画室に分割して洗浄液面を複数に分割し、分割された区画室に前記光ファイバ端部の被覆除去部分を浸して洗浄することを特徴とする光ファイバ洗浄方法。
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