JP4032080B2 - 種籾の消毒装置 - Google Patents

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Description

本発明は、種籾の表面に付着しまたは籾殻と果皮との間に潜む病原菌(いもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病、ごま葉枯病、褐条病、もみ枯細菌病などの病原菌が主な例である)を温水を浴びせて殺菌、滅菌または除菌(以下、消毒という)をする種籾の消毒装置に関するものである。
種子を所定温度の温水に所定時間浸すことにより、種子に付着している病原菌を殺菌する方法およびその装置は、平成11年3月31日に発行された特許第2876001号公報に記載されているものがある。また、種籾を種籾収納容器に収納してタンク内の温水に浸し、タンク内の温水を循環させながら種籾容器の上方から浴びせるようにしたものは特開平11−266610号公報に、同じくタンク内の温水を種籾容器の下方から噴き上げて種籾に浴びせるようにしたものは特開平8−9714号公報にそれぞれ記載されている。
前掲の特許第2876001号公報に記載されているように、従来の温水による種籾の消毒方法おいては、温水の温度や種籾を浸す時間にもよるが、概して発芽率の低下をきたしやすいので、温水の温度と浸漬時間の微細かつ厳格な管理が要求される。
ところで、従来の温水による種籾の消毒は、網袋に入れた種籾をタンク内に詰め込んでタンクに所定温度の温水を満たすか、または温水を張ったタンク内に網袋に入れた種籾を浸すことにより行われるが、タンク内において種籾に接する温水の温度は浸漬当初にかなり低下する現象を伴うので、特開平11−266610号公報に記載されているように上方から浴びせたり、また特開平8−9714号公報に記載されているようにタンク内の温水を種籾容器の下方から噴き上げて種籾に浴びせるようにしたものでは、タンク内の温水を如何に循環させて温度管理を行っても、10分間程度の消毒時間で種籾に接する温水を適切に保つことは難しく、消毒が不十分になることが避けられない。
また、網袋に入れた籾を温水に浸すと、籾の堆積層外部と内部とで温水の温度差が生じるが、この温度差は温水を循環させてもほとんど解消しないので、やはり種籾の消毒が不十分となることが避けられないものであった。
そして、このような現象は、消毒しようとする種籾の温度が低い場合に顕著に現れるので、特に寒冷地においては、温水による種籾の消毒は不適切であるとされ、実用に供されていないのが実情である。
特許第2876001号公報 特開平11−266610号公報 特開平8−9714号公報
そこで、本発明は、温水機から供給される設定温度の加圧温水を、温水噴射部から種籾収納部の上方に向けて噴射して堆積する種籾に直に浴びせてからその温水を種籾収納部からタンク内に流入させるように構成したことにより、消毒をする種籾は、温水タンク内の中央部で温水に取り囲まれて浸漬された状態でさらに、消毒しようとする種籾をタンク内の温水に浸した際に種籾に接する温水の温度が一時的にかなり低下することがあるにもかかわらず、温水機から直に供給される設定温度の温水を種籾の全表面および種籾の層全体にわたって均等に浴びせて適切な温水温度で消毒を行うことができ、また、比較的高温の温水を時間の短縮を図って均等に浴びせることも可能であって、種籾の表面に付着した病原菌の消毒はもとより、籾殻と果皮の間に潜む病原菌を、発芽率の低下につながる籾殻と果皮間の温水滲入をともなわず、高い発芽率を維持しながら十分な消毒を行うことができる種籾の消毒装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る種籾の消毒装置は、種籾の表面に付着しまたは籾殻と果皮との間に潜む病原菌を温水を浴びせて消毒する種籾の消毒装置であって、種籾を収納する多孔容器または種籾を収納した網袋を入れる多孔箱状の種籾収納部と、この種籾収納部の下に位置して温水を噴き上げる温水噴射部と、温水噴射部に設定温度の加圧温水を供給する温水機と、種籾収納部と温水噴射部とを内部に据え置くタンクから成り、タンク内には、多孔状台板がタンクの底面との間に一定の高さを成すように置かれていて、多孔状台板上の中央部には、上面に多数の温水噴射孔をあけた密閉容器を成す水噴射部が設けられており、上記温水機と温水噴射部とは加圧温水の送水経路で接続し、かつタンク内底部とは排温水の回収経路でそれぞれ接続して温水循環経路を構成してあり、温水機から供給される設定温度の加圧温水を、温水噴射部から種籾収納部に噴き上げて種籾収納部内においてタンク内の中央部で温水に取り囲まれて浸漬され状態で堆積する種籾に浴びせてその温水を種籾収納部からタンク内に流入させるように構成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項2に係る種籾の消毒装置は、請求項1の構成において、温水機は、温水噴射部に設定温度の加圧温水を供給する加温および温度制御機能を有し、その温度の設定範囲は50.0〜65.0℃であることを特徴とするものである。
本発明によれば、温水機から供給される設定温度の加圧温水を、温水噴射部から種籾収納部の上方に向けて噴射して堆積する種籾に直に浴びせてからその温水を種籾収納部からタンク内に流入させるように構成したことにより、消毒をする種籾は、温水タンク内の中央部で温水に取り囲まれて浸漬された状態でさらに、消毒しようとする種籾をタンク内の温水に浸した際に種籾に接する温水の温度が一時的にかなり低下することがあるにもかかわらず、温水機から直に供給される設定温度の温水を種籾の全表面および種籾の層全体にわたって均等に浴びせて適切な温水温度で消毒を行うことができ、また、比較的高温の温水を時間の短縮を図って均等に浴びせることも可能であって、種籾の表面に付着した病原菌の消毒はもとより、籾殻と果皮の間に潜む病原菌を、発芽率の低下につながる籾殻と果皮間の温水滲入をともなわず、高い発芽率を維持しながら十分な消毒を行うことができる。
図1は本発明に係る種籾の消毒装置を示す斜視図、図2は同上断面図、図3は同上一部の斜視図、図4は同上種籾の消毒態様を示す要部断面図である。
図1および図2において、1は本発明に係る種籾の消毒装置である。この種籾の消毒装置1は、タンク2と温水機3とを備えている。タンク2内には、多孔状台板4が底面との間に一定の高さを成すように置かれており、多孔状台板4上の中央部には温水噴射部5が設けられている。この温水噴射部5は、上面に多数の温水噴射孔6をあけた密閉容器を成しており、温水噴射部5は、加圧温水の送水経路を成す送水管7により温水機3の温水貯留部8に接続されている。温水機3は送水ポンプ9を備えており、この送水ポンプ9の送水側は温水貯留部8に接続され、かつ吸水側には、タンク2の底部から排温水を回収する回収経路を成す吸水管10が接続されている。温水機3は、タンク2より背丈が高く、その背丈が高く成っている正面上部が設定表示部11を成している。温水機3は、温水噴射部5に設定温度の加圧温水を供給する加温および温度制御機能を有し、温度の設定範囲は50.0〜65.0℃で、保護上限温度は67.0℃である。
なお、タンク2および温水機3は、種籾を温水に浸して発芽を促す催芽にも使用するので、温水機3は、0〜35℃または0〜50℃の温度設定範囲、保護上限温度37℃または52℃の機能を兼備しているものである。
12は種籾収納部である。この種籾収納部12は、図4に示すように、種籾aを十分余裕をもたせて収納した網袋13を入れる多孔箱状を成しており、図示の実施の形態ではその全面が多孔面と成っていて、底面のみは温水の通りをよくするため格子状にして各孔を大きく形成してある(図示せず)。網袋13には種籾を3分の1を目安にして収納する。
多孔箱状の種籾収納部12は、四隅部に支脚14を有し、かつ左右の把手15により可搬自在となっており、上面は開閉または着脱自在となっている。種籾収納部12は、タンク2内において温水噴射部5を跨ぐように多孔状台板4上に載置される。温水噴射部5を跨ぐように載置された種籾収納部12の底面は、図2に示すように温水噴射部5の上面に接しまたは極く近接した状態となる。
温水機3は、図1に破線で示したように、その正面をタンク2の内側に向けて配置することができる。そして、温水機3をこのように配置することにより、タンク2内に種籾収納部12を搬入設置したり、また搬出撤去する作業をともないながら、温水機3の設定操作や表示の確認をすることができるので、作業上便利である。
以上のように構成された本発明に係る種籾の消毒装置1によれば、種籾収納部12に種籾aを十分余裕をもたせて収納した網袋13を入れ、種籾収納部12をタンク2内において温水噴射部5を跨ぐように多孔状台板4上に載置すれば、種籾aは温水タンク2内の中央部で温水に取り囲まれて浸漬された状態でさらに温水噴射部5から上方に噴射する温水を種籾収納部12の下から上方に向けて噴射し、堆積する種籾aに、温水機3から供給される設定温度の温水を直に、しかも噴射温水圧による浮上作用を伴わせて撹拌しながら浴びせるので(図4参照)、消毒をする種籾には、消毒しようとする種籾aをタンク2内の温水に浸した際に温水温度の低下を来たすことがあるにもかかわらず、常に温水機3から供給される設定温度の温水を種籾aの全表面および種籾の層全体にわたって均等温度の温水を浴びせて適切な消毒を行うことができる。また、比較的高温の温水を時間の短縮を図って種籾aに均等に浴びせることも可能であって、種籾aの表面に付着した病原菌の消毒はもとより、籾殻と果皮の間に潜む病原菌を、発芽率の低下につながる籾殻と果皮間の温水滲入をともなわず、高い発芽率を維持しながら十分な消毒を行うことができる。
温水機3からは温水噴射部5に対して、前述のように、50.0〜65.0℃の範囲の特定の温度と、5分〜20分の浸種時間の範囲内の特定の時間だけ温水を供給するが、温水の温度と浸種時間は病原菌の種類や種籾の品種等の条件に応じて選定される。ただし、多くの場合は、温水の温度は60℃、噴射時間は10分間程度が適当である。
なお、種籾の消毒に先だって、種籾の塩水選、水洗および風乾処理を行うことと、消毒後の種籾は、発芽障害防止のため直ちに常温(10℃程度)の真水(水道水)に浸して温度を下げ、発芽抑制処理を行うことは従来のとおりである。また、消毒後の種籾は同じタンクを用いて催芽処理をすることも従来のとおりである。
農薬を使わない温水による種籾の消毒は、自然環境を考えた種子消毒法であるが、高精度の厳格な温度管理が要求されるところから、特に温度管理の難しい寒冷地では実用にならないとされ敬遠されてきた。しかし、本発明に係る種籾の消毒装置によれば、消毒しようとする籾の温度や外気温度に左右されることなく、種籾に浴びせる温水の温度管理が的確にできるので、温暖地から寒冷地まで農薬を一切使用することなく安全に種籾の消毒を行うことができる。本発明に係る種籾の消毒装置は、自然環境の保全と安全な農産食品の供給に寄与するところがきわめて大である。
本発明に係る種籾の消毒装置を示す斜視図である。 本発明に係る種籾の消毒装置を示す断面図である。 本発明に係る種籾の消毒装置を示す一部の斜視図である。 本発明に係る種籾の消毒装置において種籾の消毒態様を示す要部断面図である。
符号の説明
1 種籾の消毒装置
2 タンク
3 温水機
4 多孔状台板
5 温水噴射部
6 温水噴射孔
7 送水管
8 温水貯留部
9 送水ポンプ
10 吸水管
11 設定表示部
12 種籾収納部
13 網袋
14 支脚
15 把手
a 種籾

Claims (2)

  1. 種籾の表面に付着しまたは籾殻と果皮との間に潜む病原菌を温水を浴びせて消毒する種籾の消毒装置であって、種籾を収納する多孔容器または種籾を収納した網袋を入れる多孔箱状の種籾収納部と、この種籾収納部の下に位置して温水を噴き上げる温水噴射部と、温水噴射部に設定温度の加圧温水を供給する温水機と、種籾収納部と温水噴射部とを内部に据え置くタンクから成り、タンク内には、多孔状台板がタンクの底面との間に一定の高さを成すように置かれていて、多孔状台板上の中央部には、上面に多数の温水噴射孔をあけた密閉容器を成す水噴射部が設けられており、上記温水機と温水噴射部とは加圧温水の送水経路で接続し、かつタンク内底部とは排温水の回収経路でそれぞれ接続して温水循環経路を構成してあり、温水機から供給される設定温度の加圧温水を、温水噴射部から種籾収納部に噴き上げて種籾収納部内においてタンク内の中央部で温水に取り囲まれて浸漬され状態で堆積する種籾に浴びせてその温水を種籾収納部からタンク内に流入させるように構成されていることを特徴とする種籾の消毒装置。
  2. 温水機は、温水噴射部に設定温度の加圧温水を供給する加温および温度制御機能を有し、その温度の設定範囲は50.0〜65.0℃であることを特徴とする請求項1記載の種籾の消毒装置。
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