JP4031628B2 - 半導体多層膜結晶、およびそれを用いた発光素子、ならびに当該半導体多層膜結晶の成長方法 - Google Patents

半導体多層膜結晶、およびそれを用いた発光素子、ならびに当該半導体多層膜結晶の成長方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウルツ鉱型の結晶構造を持つ半導体多層膜結晶、およびそれを用いた発光素子、ならびに当該半導体多層膜結晶の成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のウルツ鉱型の結晶構造を持つ半導体基板(以下、ウルツァイト型基板と略称する。)の製造方法には、以下のようなものが知られている。
【0003】
まず、サファイア(Al23)からなる基板上に、窒化ガリウム(GaN)からなる結晶層を形成する構成が報告されている(S.Nakamura:J.Vac.Sci.Technol.A,Vol.13,No.3,P.705,May/Jun 1995)(以下、第1の従来例と呼ぶ)。この場合、図6(a)に示すように、窒化ガリウムからなる結晶層の表面には、面方位の(0001)面(=c面)が現われる。
【0004】
一方、図6(b)に示すように、主面の面方位が(0001)面以外の面方位を持つ窒化ガリウムからなる結晶層の成長方法が、特許第2743901号公報(以下、第2の従来例と呼ぶ)に開示されている。該公報には、閃亜鉛鉱(ジンクブレンド)型の結晶構造を持つ砒化ガリウム(GaAs)からなる基板における、(001)面を基準として傾斜角が0°を越えて35°未満である主面上に、窒化ガリウムからなる半導体結晶を成長させることを記載している。なお、成長した窒化ガリウム結晶層の表面の面方位は教示されていない。
【0005】
また、特開平10−190059号公報(以下、第3の従来例と呼ぶ)には、III 族元素の原料に塩化物を用いた気相成長法を用いて、主面の面方位が(100)面の砒化ガリウムからなる基板上、又は(100)面から15°以内で傾斜した主面を持つ傾斜基板上に窒化ガリウム系半導体を成長すると、c軸が砒化ガリウム基板の[111]方向に向いたウルツァイト型の良質な窒化ガリウム系半導体層が成長することを開示している。この窒化ガリウム系半導体層のc軸は基板面に垂直な方向から55°程度傾いており、そのへき開面は基板面に垂直な(11−20)面であることを開示している。なお、ここでも、成長した窒化ガリウム結晶層の表面の面方位は教示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記第1の従来例は、サファイア基板上に成長した窒化ガリウム結晶層の表面は(0001)面であり、さらに六方柱状晶を含む構成となっている。すなわち、窒化ガリウム結晶層は、実質的に多数のコラム型結晶の集合体となっている。その結果、柱状晶の一部が各c軸を中心に回転して格子欠陥を生じ、結晶性が劣化するという問題がある。また、各柱状晶ごとに結晶の成長速度が異なるため、平坦な表面を得ることができないという問題がある。
【0007】
さらに、第1の従来例において、気相成長法により結晶成長を行なう場合には、結晶表面がガリウム面となる。これは、閃亜鉛鉱型の砒化ガリウムにおいては(111)A面に相当する。一般に、砒化ガリウムの(111)A面は結晶成長が困難であり、特に2次元成長が困難である。また、(111)A面にエッチングを行なったとしても、平坦なエッチングがされにくいという問題がある。これは、エッチングレートが遅いため、エッチングレートが速い他の面がエッチングされてしまい、その結果、エッチング面が凹凸状となるためである。これは、窒化ガリウムの(0001)面に対してウエットエッチングを行なった場合に、エッチピット付近が激しくエッチングされて凹凸状を呈することと良く符合する。
【0008】
一方、第3の従来例においては、砒化ガリウムからなる基板上に成長した窒化ガリウムは格子定数の差による歪の影響により、c軸の方向が5°程度傾き、さらには、六方柱状晶も回転して、格子欠陥が導入される。従って、第3の従来例に係る成長方法は、窒化ガリウムのc軸が基板面に垂直な方向から55°傾いていても、種々の面方位の微結晶によりその表面が形成されてしまうという問題がある。
【0009】
また、ウルツァイト型の単結晶体を形成する炭化珪素(SiC)においても、その表面の面方位には(0001)面を用いている。
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決し、基板主面の平坦性が向上し、特に柱状晶(コラム)を含まないウルツァイト型基板を形成できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明は、ウルツァイト型基板の主面に、閃亜鉛鉱型結晶からなる基板の主面に通常用いられる(001)面とほぼ等価な面である(10−12)面を用いる構成とする。なお、本願明細書においては、結晶面を表わすミラー指数における負符号”−”は該符号に続く一の指数の反転値を表わしている。
【0012】
具体的には、本発明に係る半導体多層膜結晶は、窒化ガリウム基板および前記窒化ガリウム基板上に成長した(10−12)面を主面とする半導体多層膜よりなり、前記半導体多層膜はガリウム、アルミニウム及びインジウムのうちの少なくとも1つを III 族元素とする III- V族窒化物半導体結晶よりなり、前記窒化ガリウム基板の表面は(10−12)面である。
【0013】
本発明の半導体基板によると、面方位が(0001)面から晶帯軸の<10−10>方向に約45°〜約65°傾いた(10−12)面は、後述するように、砒化ガリウムのような閃亜鉛鉱型の結晶構造の(001)面とほぼ等価な面となる。この(001)面は、六方柱状晶とならないため、結晶表面の平坦化を図ることができ、さらにはエッチング面も平坦となる。
【0014】
また、半導体基板を構成する2元素をAXとすると、基板面に第1の元素Aのみが現わるA面、又は第2の元素Xのみが現われるB面のように、特定の極性を示す面方位が現われないため、基板上に成長する結晶層の品質が良好となり、また、基板に対するエッチング面の平坦化を図ることができる。
【0016】
本発明の半導体基板において、主面の面方位が晶帯軸の<1−210>方向におよそ−10°〜+10°の範囲で傾斜していることが好ましい。ウルツァイト型結晶構造の(10−12)面は、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面と完全には等価な結晶面とならないため、このように主面の面方位を晶帯軸の<1−210>方向におよそ−10°〜+10°の範囲で傾斜させて調整を行なうと、基板を構成する結晶品質が向上する。
【0018】
本発明の半導体基板において、半導体基板には柱状晶が存在しないことが好ましい。
【0020】
本発明に係る半導体多層膜結晶の製造方法は、窒化ガリウム基板を、(0001)面から<10−10>方向に55度の角度に傾斜してなる(10−12)面を中心に、45度から65度の角度でスライスする工程と、燐酸あるいは硫酸を含む溶液でスライス後の前記窒化ガリウム基板表面をエッチングする工程と、前記窒化ガリウム基板表面に気相成長法により(10−12)面を主面とする半導体多層膜を成長する工程とを有前記半導体多層膜はガリウム、アルミニウム及びインジウムのうちの少なくとも1つを III 族元素とする III- V族窒化物半導体結晶よりなる
【0021】
本発明の半導体基板の製造方法によると、基板の主面の面方位を(0001)面から晶帯軸の<10−10>方向に約45°〜約65°傾けて形成するため、本発明の半導体基板を得ることができる。
【0033】
本発明に係る半導体多層膜結晶を用いた発光素子も本発明の趣旨に含まれる。
【0047】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0048】
従来、図6(a)に示すように、例えば窒化ガリウム(GaN)のようなウルツァイト型の結晶構造を持つウルツァイト型基板上に、III-V族化合物半導体を結晶成長させる場合に、面方位が(0001)面となる主面を持つウルツァイト型基板を用いている。前述したように、(0001)面を主面とするウルツァイト型基板上に成長した場合には、結晶中に柱状晶を含むため、図6(b)に示す閃亜鉛鉱型の結晶構造における(001)面上に結晶成長させる場合のような良好な結晶品質を得ることができない。
【0049】
そこで、本願発明者らは、ウルツァイト型結晶構造について種々の検討を重ねた結果、以下のような知見を得ている。
【0050】
すなわち、図1に示すように、ウルツァイト型結晶構造における面方位の(10−12)面は、図2に示す閃亜鉛鉱型の結晶構造における(001)面とほぼ等価な面であるという知見である。
【0051】
従って、主面の面方位が、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面とほぼ等価な面である(10−12)面を持つウルツァイト型基板の上に、ウルツァイト型の結晶構造の半導体結晶を成長させると、閃亜鉛鉱型結晶構造を持つ砒化ガリウム(GaAs)の場合と同様に、平坦な表面を容易に且つ確実に得ることができる。
【0052】
また、例えば、窒化ガリウムからなるウルツァイト型基板に対してエッチングを行なったとしても、その主面が閃亜鉛鉱型の(001)面とほぼ等価な、特定の極性を有さない(10−12)面であるため、燐酸又は硫酸を用いたウエットエッチングにより、平坦なエッチング面を得ることができる。
【0053】
図3はウルツァイト型結晶構造における(10−12)面が(0001)面に対して傾斜する傾斜角θと、傾斜する傾斜方向とを表わしている。図3に示すように、傾斜角θは55°であり、傾斜方向は<10−10>方向であることを確認している。
【0054】
さらに、本願発明者らは、図3に示す(10−12)面を±10°以内で傾斜させると結晶表面の平坦性が向上し、±5°以内で傾斜させるとさらに好ましいという知見を得ている。
【0055】
(10−12)面を±10°以内で傾斜させる理由は、図4に示すように、閃亜鉛鉱型結晶構造が有する面心立方格子の場合に存在するはずの原子Xが、ウルツァイト型結晶構造が有する細密充填格子の場合には存在せず、代わりに原子Yの格子位置にずれて存在するためである。
【0056】
このように、ABCABCというように、3層が規則的に積層する閃亜鉛鉱型結晶構造と、ABABというように、2層が規則的に積層するウルツァイト型結晶構造の両者の本質的な原子配置の違いにより、閃亜鉛鉱型結晶構造における(001)面と、ウルツァイト型結晶構造における(10−12)面とが完全に等価な面とはならない。
【0057】
このため、ウルツァイト型結晶構造における、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面と等価な面は(10−12)面から±5°以内の範囲でずれることになる。従って、ウルツァイト型基板において、その主面の面方位を(10−12)面から±5°以内で傾斜させると、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面と極めて近い面方位を持たせることができる。
【0058】
なお、ウルツァイト型結晶構造における(10−12)面においては、閃亜鉛鉱型結晶構造における<110>方向と等価な方向が<1−210>方向となるため、該<1−210>方向に±10°以内の方向で傾斜させてもよい。さらに、閃亜鉛鉱型結晶構造における<100>方向と等価な<3−30−2>方向に±10°以内で傾斜させてもよい。
【0061】
(ウルツァイト型基板の第1の製造方法)
以下、前記のように構成されたウルツァイト型基板の第1の製造方法について説明する。
【0062】
まず、引き上げ方向を<0001>(=c軸)方向とする、5mm角の種結晶を用意する。この種結晶には格子欠陥が導入されておらず、また不純物がドープされていないアンドープの結晶片を用いる。
【0063】
次に、約4万気圧で且つ温度が約2500℃の窒素雰囲気で、窒化ガリウムを溶融し、用意した種結晶を用いて窒化ガリウムからなる単結晶体をc軸方向に引き上げる。
【0064】
次に、形成された結晶体から、(0001)(=c)面から<10−10>方向に約45°〜65°の角度で、より好ましくは約50°〜60°の角度でスライスすることにより、(10−12)面又はその近傍面を主面とする窒化ガリウムからなるウエハを形成する。
【0065】
なお、ここで、晶帯軸の<10−12>方向を引き上げ方向とする種結晶を用いてもよい。この場合には、(10−12)面を、引き上げ方向に対して垂直にスライスすることにより、切り出すことが可能となるため、窒化ガリウムからなるウエハの大口径化を図ることができる。
【0066】
次に、形成されたウエハの表面を研磨によりほぼ鏡面状にして、その後、燐酸、硫酸又はこれらの混合溶液によりさらに平坦な鏡面状になるようにエッチングを行なう。
【0067】
このように、第1の製造方法によると、窒化ガリウムからなる単結晶体を引き上げ法により形成するため、単結晶体には、原理的に柱状晶が含まれることがない。さらに、ウルツァイト型結晶構造を持つ単結晶体から、そのc面から<10−10>方向に約55°の角度でスライスして、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面と極めて近い面方位に相当する(10−12)面又はその近傍面を切り出してウエハ主面を形成する。このため、該ウエハの主面に対してウエットエッチングを行なったとしても、エッチング表面が凹凸状となることはなく、鏡面状態を維持することができる。
【0068】
なお、単結晶体の引き上げ時に、窒化ガリウムの溶融体中にアルミニウムを添加しておくと、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる単結晶体を引き上げることができる。また、アルミニウム(Al)及びボロン(B)を添加しておくことにより、窒化ボロンアルミニウムガリウム(BAlGaN)からなる単結晶体を引き上げることができる。
【0069】
(結晶成長方法)
さらに、第1の実施形態に係るウルツァイト型基板上に、III-V族窒化物半導体結晶を成長させる場合には、再度、燐酸、硫酸又はこれらの混合溶液により、ウエハ表面に対してエッチング洗浄を行なって、表面を10nm程度の厚さ分だけ除去することにより、ウエハを清浄化する。
【0070】
次に、例えば、エッチング清浄されたウルツァイト型基板を反応室に投入し、有機金属気相成長(MOVPE)法により、該ウルツァイト型基板をアンモニア雰囲気中で900℃程度にまで昇温する。
【0071】
次に、基板温度を1000℃程度にまで連続的に昇温し、例えば、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)のうちの少なくとも1つをIII 族源とし、アンモニア(NH3 )をV族源としてIII-V族窒化物半導体結晶を成長する。
【0072】
ここで、成長する半導体結晶の導電型をn型とする場合には、珪素(Si)、スズ(Sn)、酸素(O)を不純物としてドーピングする。また、導電型をp型とする場合には、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)又はカルシウム(Ca)を不純物としてドーピングする。
【0073】
(ウルツァイト型基板の第2の製造方法)
以下、第1の実施形態に係るウルツァイト型基板を炭化珪素により形成する場合の第2の製造方法について説明する。
【0074】
まず、引き上げ方向を<0001>(=c軸)方向とする、5mm角の種結晶を用意する。この種結晶には格子欠陥が導入されておらず、また不純物がドープされていないアンドープの結晶片を用いる。
【0075】
次に、約10万気圧で且つ温度が約3200℃のシリコン雰囲気で、炭化珪素を溶融し、用意した種結晶を用いて炭化珪素からなる単結晶体をc軸方向に引き上げる。
【0076】
次に、形成された結晶体から、(0001)面から<10−10>方向に約45°〜65°の角度で、より好ましくは約50°〜60°の角度でスライスすることにより、(10−12)面又はその近傍面を基板主面とする炭化珪素からなるウエハを形成する。
【0077】
なお、ここでも、晶帯軸の<10−12>方向を引き上げ方向とする種結晶を用いてもよい。前述したように、この場合には、(10−12)面を、引き上げ方向に対して垂直にスライスすることにより、切り出すことが可能となるので、炭化珪素からなるウエハの大口径化を図ることができる。
【0078】
次に、形成されたウエハの表面を研磨によりほぼ鏡面状にして、その後、フッ酸、硝酸又はこれらの混合溶液によりさらに鏡面状にエッチングする。
【0079】
このように、第2の製造方法によると、炭化珪素からなる単結晶体を引き上げ法により形成するため、単結晶体には、原理的に柱状晶が含まれることがない。さらに、ウルツァイト型結晶構造を持つ単結晶体から、そのc面から<10−10>方向に約55°の角度でスライスして、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面と極めて近い面方位である(10−12)面又はその近傍面を切り出してウエハ主面を形成する。このため、該ウエハの主面に対してウエットエッチングを行なったとしても、エッチング表面が凹凸状となることはなく、鏡面状態を維持することができる。
【0080】
(結晶成長方法)
形成した炭化珪素からなる半導体基板を、結晶成長前にフッ酸、硝酸又はこれらの混合溶液により、ウエハ表面に対してエッチング洗浄を行なって、表面を10nm程度の厚さ分だけ除去することにより、ウエハを清浄化する。
【0081】
次に、例えば、エッチング清浄された半導体基板を反応室に投入し、MOVPE法により、該ウルツァイト型基板をアンモニア雰囲気中で900℃程度にまで昇温する。
【0082】
次に、基板温度を1000℃程度にまで連続的に昇温し、例えば、ガリウム、アルミニウム及びインジウムのうちの少なくとも1つをIII 族源とし、アンモニアをV族源としてIII-V族窒化物半導体結晶を成長する。
【0083】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るウルツァイト型基板の製造方法について説明する。
【0084】
まず、図6(a)に示すように、従来と同様に、昇華法又はMOVPE法等の気相成長法を用いて、主面が(001)面のサファイア基板上に、例えば窒化ガリウムからなり、表面の面方位が(0001)であり、少なくとも膜厚が5mm以上の第1の結晶層を成長する。
【0085】
次に、図3に示すように、成長した第1の結晶層における(001)面から<10−10>方向に約55°の角度で、閃亜鉛鉱型結晶構造の(001)面と極めて近い面方位である(10−12)面又はこの面に対して±10°以内の面が主面となるようにスライスする。
【0086】
次に、形成した主面上に気相成長法により、厚さが約2μmの窒化ガリウムからなる第2の結晶層を成長して、主面が(10−12)面又はこれに近い面方位を持つウルツァイト型基板を形成する。
【0087】
なお、第2の実施形態の場合には、第1の結晶層中に六方晶の回転が存在しているため、柱状晶を完全になくすことはできない。
【0088】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0089】
図5(a)〜図5(c)は本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子であって、(a)は半導体レーザ素子を形成する半導体基板の主面の面方位を表わす結晶格子を表わし、(b)は半導体レーザ素子における共振器の形成方向を表わし、(c)は半導体レーザ素子における共振器の他の形成方向を表わしている。
【0090】
まず、従来の共振器の形成方向を説明する。
【0091】
図7(a)に示すように、従来は、主面の面方位が(0001)面であるウルツァイト型基板上に、レーザ発振用の共振器を形成しているため、共振器における共振方向(レーザ発振方向)、いわゆるストライプ方向は、符号51が示す<11−20>方向、又は符号52が示す<1−100>方向である。
【0092】
一方、図7(b)に示す閃亜鉛鉱型の結晶構造を持つ半導体基板の場合には、前述したように、その主面の面方位は、一般に(001)面であり、ストライプ方向は、符号53が示す<110>方向、又は符号54が示す<1−10>方向である。
【0093】
このことから、半導体レーザ素子を、面方位が(10−12)面であるウルツァイト型基板上に形成する場合には、図5(b)に示すように、符号11が示す<1−210>方向、又は図5(c)に示すように、符号12が示す<2−1−1−2>方向を選択することが好ましいことが分かる。
【0094】
このように、共振器端面に(1−210)面又は(2−1−1−2)面を持つ共振器構造を形成すると、対向する端面同士のへき開面が互いに平行で且つ平坦となる共振器として確実に機能する。
【0095】
これにより、共振器構造の加工性が良好となる上に、発光効率が向上して、長期信頼性を得られるようになる。
【0096】
以下、第3の実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
【0097】
まず、第1の実施形態又は第2の実施形態に係る製造方法により得られた半導体基板、すなわち、主面の面方位が(10−12)面又は該(10−12)面から<10−10>方向に±10°以内で傾斜させた窒化ガリウムからなるウルツァイト型基板を用意する。
【0098】
次に、燐酸、硫酸又はこれらの混合溶液により、基板の主面に対してエッチング洗浄を行なって、該主面を10nm程度の厚さ分だけ除去することにより、ウルツァイト型基板の主面を清浄化する。
【0099】
次に、例えば、有機金属気相成長(MOVPE)法により、エッチング清浄されたウルツァイト型基板を反応室に投入し、該基板をアンモニア雰囲気中で900℃程度にまで昇温する。その後、基板温度を1000℃程度にまで昇温し、例えば、III 族源であるテトラメチルガリウム(TMG)及びテトラメチルアルミニウム(TMA)と、V族源であるアンモニア(NH3 )と、n型ドーパントの珪素を含むシランガスとを反応室に導入して、ウルツァイト型基板の主面上に、n型AlGaNからなる第1のクラッド層を成長する。
【0100】
次に、TMAの導入を中止して、第1のクラッド層の上に、n型GaNからなる第1の光ガイド層を成長する。
【0101】
次に、シランガスの導入を中止し、代わりにトリメチルインジウム(TMI)を導入することにより、第1の光ガイド層の上にInGaNからなる量子井戸活性層を成長する。
【0102】
次に、TMIの代わりにTMAを導入し、さらに、p型ドーパントのマグネシウムを含むビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)を導入して、量子井戸活性層の上にp型AlGaNからなるキャップ層を成長する。
【0103】
次に、TMAの導入を中止して、キャップ層の上にp型GaNからなる第2の光ガイド層を成長する。
【0104】
次に、TMAの導入を再開して、第2の光ガイド層の上にp型AlGaNからなる第2のクラッド層を成長する。その後、TMAの導入を再度中止して、p型GaNからなるコンタクト層を成長する。
【0105】
次に、蒸着法等により、p型コンタクト層の全面に、ニッケル(Ni)、白金(Pt)及びAu(金)からなる導体膜を順次堆積して第1の積層導体膜を形成する。その後、リソグラフィ法により、レーザ光の共振方向が<1−210>方向又は<2−1−1−2>方向となるストライプパターンを持つレジストマスクを形成する。続いて、形成したレジストマスクを用いて、第1の積層導体膜、コンタクト層、第2のクラッド層及び第2の光ガイド層に対して順次ドライエッチングを行なって、上面に第1の積層導体膜からなるp側電極を有する共振器構造を形成する。その後、燐酸又は硫酸を用いて、ドライエッチングにより露出したダメージ層をエッチング除去する。
【0106】
次に、蒸着法等により、ウルツァイト型基板における主面と反対側の面上に、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び金(Au)からなる第2の積層導体膜を形成してn側電極を形成する。
【0107】
次に、ウルツァイト型基板を、共振器長が300μm〜1mm程度で、且つへき開面が(1−210)面又は(2−1−1−2)面となるようにへき開して、半導体レーザ素子を得る。
【0108】
なお、インジウムを含む量子井戸活性層の成長時には、基板温度を1000℃よりも低い、例えば800℃程度としてもよい。
【0109】
また、p型AlGaNからなる第2のクラッド層を設けず、且つストライプ状の共振器を有さない構造とすることにより、発光ダイオード素子とすることもできる。
【0110】
また、半導体装置は発光素子に限られず、受光素子であっても良く、また、例えば、電界効果トランジスタ(FET)又はヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)のような能動素子であっても良い。このような能動素子の場合には、リーク電流の低減に極めて大きい効果がある。
【0112】
【発明の効果】
本発明に係るウルツ鉱型の結晶構造を持つ半導体基板によると、面方位が(0001)面から晶帯軸の<10−10>方向に約45°〜約65°傾いた面を主面に持つため、閃亜鉛鉱型の結晶構造の(001)面とほぼ等価な面となる。この(001)面とほぼ等価な面は、六方柱状晶とならないため、結晶表面の平坦化を図ることができ、さらにはエッチング面も平坦となる。
【0113】
また、本発明に係る半導体装置は、本発明の表面の平坦化に優れる半導体基板上に形成されているため、電気的又は光学的に優れた特性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板のウルツァイト型の結晶構造であって、基板の主面である(10−12)面を表わす模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板と等価な主面を持つ閃亜鉛鉱型の結晶構造であって、基板の主面である(001)面を表わす模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板のウルツァイト型の結晶構造であって、(10−12)面の(0001)からの傾斜方向及び傾斜角度等価な面を表わす模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体基板のウルツァイト型の結晶構造であって、(10−12)面と等価な面を表わす模式図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子を示し、(a)は半導体基板のウルツァイト型の結晶構造とその主面の面方位を表わす模式図であり、(b)は半導体レーザ素子の共振器における第1のストライプ方向を表わす模式図であり、(c)は半導体レーザ素子の共振器における第2のストライプ方向を表わす模式図である。
【図6】(a)は従来のウルツァイト型基板の結晶構造とその基板の主面である(0001)面を表わす模式図である。
(b)は従来の閃亜鉛鉱型基板の結晶構造とその基板の主面である(001)面を表わす模式図である。
【図7】(a)は従来のウルツァイト型基板の結晶構造とその基板の主面である(0001)面上に形成される共振器のストライプ方向を表わす模式図である。
(b)は従来の閃亜鉛鉱型基板の結晶構造とその基板の主面である(001)面上に形成される共振器のストライプ方向を表わす模式図である。
【符号の説明】
11 共振器
12 共振器

Claims (4)

  1. 窒化ガリウム基板および前記窒化ガリウム基板上に成長した(10−12)面を主面とする半導体多層膜よりなり、前記半導体多層膜はガリウム、アルミニウム及びインジウムのうちの少なくとも1つを III 族元素とする III- V族窒化物半導体結晶よりなり、前記窒化ガリウム基板の表面は(10−12)面である、半導体多層膜結晶。
  2. 窒化ガリウム基板の表面が(10−12)面から<1−210>方向に±10度以内の角度範囲内で傾斜している、請求項1に記載の半導体多層膜結晶。
  3. 請求項1または2に記載の半導体多層膜結晶で構成されている、発光素子。
  4. 窒化ガリウム基板を、(0001)面から<10−10>方向に55度の角度に傾斜してなる(10−12)面を中心に、45度から65度の角度でスライスする工程と、
    燐酸あるいは硫酸を含む溶液でスライス後の前記窒化ガリウム基板表面をエッチングする工程と、
    前記窒化ガリウム基板表面に気相成長法により(10−12)面を主面とする半導体多層膜を成長する工程とを有
    前記半導体多層膜はガリウム、アルミニウム及びインジウムのうちの少なくとも1つを III 族元素とする III- V族窒化物半導体結晶よりなる、半導体多層膜結晶の製造方法。
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