JP4031277B2 - 多層抄インクジェット記録用紙及び製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インクジェット記録用紙に関するもので、特に高速記録が可能で、印字画像の滲みが無く、高濃度で発色性に優れ、同時にオフセット印刷が可能で、ハガキ、カード用紙類として好適な多層抄インクジェット記録用紙とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター技術の飛躍的な進歩とその低価格化によってデジタル画像の取り扱いが極めて容易になり、それに伴って高性能なパーソナルプリンターが開発されて広く普及しており、銀塩写真並みのフルカラー印刷を手軽に行なうことが可能になった。現在、パーソナルプリンターとして最も普及しているのはインクジェットプリンターである。インクジェット方式の利点としては、多色化が容易なこと、高速印刷が可能であること、非接触型で低騒音であること、装置が小型で安価なことが挙げられる。
【0003】
インクジェット方式の画像形成システムは、以下の通りである。すなわち、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の各色のインクを、サーマル方式やピエゾ方式等によってノズルから微小な液滴として吐出し、記録媒体上に画像を形成せしめる。
現在、インクジェットプリンターの殆どが取り扱いの容易さから水性インクを用いており、インクジェット用紙に要求される特性としては、それらのインクを使用した場合に、発色が鮮やかで且つ滲みが発生せず解像度が高いこと、インク吸収速度が速いこと、耐候性に優れること等が挙げられる。
【0004】
更に最近では印字が一層速くなり、多数枚を連続印字した時に短時間で直前の記録用紙の印字部と直後の記録用紙の裏面(白面)が順次重なることとなるために、直前の記録用紙の印字部の色が直後の記録用紙の裏面(白面)に移ってしまう裏移りと呼ばれる現象が発生する場合がある為に、更なる速いインク吸収性が求められている。
またインクジェットプリンターで印字される以前にオフセット印刷で所定の画像や文字が印刷される場合もある。
【0005】
インクジェット印刷は普通紙にも可能であるが、写真のような高精細画像を記録する場合や、郵便物やポスターのように屋外で風雨にさらされる可能性のある場合は、基紙上に多孔性白色顔料とポリビニルアルコール等の水性バインダーからなるインク受理層を設けて優れた画像再現性と高い耐候性を付与した、いわゆるインクジェット専用紙が使用される。その際用いられる顔料は、粒径数μm〜十数μm程度の多孔性非晶質シリカ等がインク吸収能力やコスト面から優れており、従来、それらの顔料を使用したマットタイプのインクジェット専用紙が一般的である。
【0006】
これらの要求を満足させるために、いくつかの提案がなされてきた。
特開昭55−5830号公報では、基紙表面にインク吸収性の塗膜を設けたインクジェット記録用紙が開示され、特開昭55−11829号公報ではインク吸収速度の異なる2層構造を持つ塗工紙が開示されている。更に、特公平6−55542号公報、第2618359号特許掲載公報、第2618358号特許掲載公報では各種溶媒の混合による水溶液が、任意時間で記録紙へ浸透する量を規定して、品質向上をはかっている。
特公平6−55542号公報では重合度400のポリエチレングリコールと水の割合が1:1の水溶液の浸透量を規定している。第2618358号特許掲載公報ではジエチレングリコール30重量%水溶液の任意接触時間で浸透量を規定している。
【0007】
従来は、郵便葉書には、文字、図柄等を描く場合、主にペン・筆などが使用されてきたが、これまでは高サイズ処理を施すことによりペン等の滲みに対する適性を付与していた。
しかしながら最近、郵便葉書の印字手段としてインクジェットプリンターの普及が著しく、インクジェットプリンタで印字した場合、従来の葉書ではインク吸収性が悪く、発色性も劣っていた。そのため近年インク受容層としてインク吸収性、発色性の優れた顔料塗工層を片面にもうけることが行われてきた。この場合一般的には基紙として一層の構造より構成されている原紙が使用される場合が多いが、非顔料塗工面のオフセット印刷適性を満足させるために高サイズ処理を施した原紙を用いると、原紙の吸収性が不足することからインク受容層を設ける場合に塗工層を厚くしなければならないという問題があった。
【0008】
インクジェット印字で印字面に多色印字する場合は、吸水量が高いほうが望ましい。
即ち、吸水量を高めることでインクジェットインクの吸収速度が速く、高速で印字された場合にも裏移りと呼ばれる、印字物を重ねた時の別な紙へのインク転写による汚れが無くなり、又多色印字の境界部の滲みも少なくなる。
一方、顔料を塗布していない基紙が剥き出しとなっている非顔料塗工面へ、ボールペン、鉛筆、毛筆、マジックインク等で筆記したり、黒文字のみを印字するインクジェットプリンターの場合は、コブ吸水度を低くすることが望ましい。コブ吸水度が高いと水溶性インクを使用したボールペン、毛筆、マジックインクでは文字が滲んだり、インクジェットプリンターではフェザリングと呼ばれる現象が発生する。
【0009】
従って、従来の単層抄片面塗工のインクジェット用紙においては、印字面側のコブ吸水度を高くし、且つ、非顔料塗工面側のコブ吸水度を低くするような設計がなされてきたが、特に、印字面側の品質を優先するために、原紙処方においては内添サイズ剤の微量添加が行なわれてきた。
このような場合、非顔料塗工面側の吸水量を低くするような手段としては、非顔料塗工面側にだけ、アルキルケテンダイマー(AKD)、スチレンアクリル系サイズで代表される表面サイズを塗布することが行なわれてきた。
【0010】
しかしながら、このような非顔料塗工面側に表面処理を施しただけでは、満足のいくコブ吸水度値が得られなかった。
更に、インクジェット用紙においてはプリンターの良好な搬送性が求められているが、搬送性は、非顔料塗工面の表面処理により左右される。表面サイズ剤を多用すると、その特性により滑ったり、逆に滑りづらくなったりして、2枚一緒に紙が送られる重送トラブルやプリンターに紙が入っていかないミスフィードを起こしやすくなる。
【0011】
多層抄紙をインクジェット用紙として用いる例としては、特開平1−78877号公報、特開平9−143900号公報、特開平11−105414号公報に提案されているが、いずれも普通紙の風合いをもった非顔料塗工紙または、微塗工タイプのインクジェット用紙を対象としたものであり、顔料塗工タイプのインクジェット用紙に比較すると印字品質としては充分満足できるものではなかった。
【0012】
従来、十分なインク受容量を持つインク吸収層を確保するには6〜15g/m2が必要とされていた。しかし、一般に塗工液の濃度を上げて塗工量を確保しようとすると、粘度が上がってしまい、逆に塗工液の濃度を下げて塗工量を確保しようとすると塗工層の水分過多により莫大な乾燥能力が必要となり、1台の抄紙機上での塗工は困難であった。
このように従来は、オフコーターで塗工を行わなければならなかったためにどうしても生産効率が上がらなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インクジェットプリンターで高速印字が可能で、インク吸収性、画像再現性に優れ且つ表面強度に優れ、オフセット印刷にも適応した多層抄インクジェット記録用紙の提供、並びに該多層抄インクジェット記録用紙をオンマシンにて効率良く製造するための製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
この観点から本発明者等は本発明に先だって、多層抄きした基紙の片面側には顔料を主体とするインク受容層を設け、その反対面側には顔料を主体とするインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである多層抄インクジェット記録用紙であって、インク受理層を設けた側からの5秒間の吸水量を20g/m2以上とし、反対側の基紙が剥き出してある面の吸水量を15g/m2以下とすることで印字品位、インク吸収性ともに優れたインクジェット用紙が得られることを提案した(特願2000−324563号)。
しかしながら、顔料を主体とするインク受容層からのインク吸収性、印字品位をさらに高めるべく鋭意検討した結果、インク受容層及びそれに接する基紙の表面層の吸水性を制御するだけでは必ずしも十分ではないことを本発明者等は見出した。
【0015】
すなわち、3層以上からなる多層抄紙においては基紙の表裏に位置する表面層及び裏面層の吸収性のみならず、その中間に位置する中間層の吸収性が非常に重要な役割を果たしており、該中間層の液体吸収性は表面層及び裏面層のいずれか一方の吸収性にあわせたのでは最良の印字品位と吸収速度のバランスが得られず、吸収性に勾配をもたせることが極めて重要であるという発見に基づき本発明を完成させた。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下の発明により上記課題を解決した。
1.多層抄きした基紙の片面側には顔料を主体とするインク受容層を設け、該基紙の反対面側に顔料を主体とするインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである多層抄インクジェット記録用紙であって、前記基紙が木材パルプ及び/又は古紙パルプを主成分とする3層以上の抄き合わせからなり、インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層とし、該表面層と裏面層の中間に位置する層を中間層とし、該表面層から中間層及び裏面層にかけて各層のサイズ度が順次高くなるように勾配をもたせた層から構成され、かつ、インク受容層吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m 2 当りのg数として算出した値)が20g/m 2 以上であり、反対側の裏面層の吸水量が15g/m 2 以下であり、基紙の中間層の表面層と接する面側からの吸水量が16〜40g/m 2 であることを特徴とする多層抄インクジェット記録用紙である。
【0017】
2.前記基紙の表面層の吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m 2 当りのg数として算出した値)が20〜60 g /m 2 であることを特徴とする請求項1記載の多層抄インクジェット用紙である。
【0018】
3.基紙の表面層の内添サイズ剤添加量が0〜0.03重量%、基紙の裏面層の内添サイズ添加量が0.1重量%以上であり、基紙の中間層の内添サイズ剤添加量は0〜0.1重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層抄インクジェット記録用紙である。
【0019】
4.インク受容層の塗工量を固形分で6〜13g/m2の割合で設けてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録用紙である。
【0020】
5.木材パルプ及び/又は古紙パルプを主成分とする3層以上の抄き合わせによって、インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層とし、該表面層と裏面層の中間に位置する層を中間層とし、該表面層から中間層及び裏面層にかけて各層のサイズ度が順次高くなるように勾配をもたせ、かつ、インク受容層吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m 2 当りのg数として算出した値)を20g/m 2 以上とし、前記裏面層の吸水量を15g/m 2 以下とし、前記中間層の表面層と接する面側からの吸水量を16〜40g/m 2 とした層から構成される基紙を形成する工程と、該基紙の片面側に設けるインク受容層を塗工・乾燥する工程とをオンマシン上で行い、オンマシン塗工装置がエアナイフコーターであり、塗料を前記基紙に付与後エアナイフで計量するまでの時間が2秒以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、基紙の一方の面に1層以上のインク受容収層を設けてなる。基紙は木材パルプ及び/又は古紙パルプを主成分とする3〜7層の抄き合わせからなり、基紙の坪量は145〜400g/m2であり、各層の坪量は通常40〜150g/m2の範囲にある。本発明では多層抄紙で構成される基紙においてインク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、表面層と裏面層の中間に位置する層を中間層と定義する。したがって中間層は層数によって1〜5層から形成される。本発明では表面層から中間層及び裏面層にかけて各層のサイズ度が順次高くなるように勾配をもたせた基紙を形成することが肝要である。
【0022】
サイズ度を5秒吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて被測定面から吸収された水の重量を測定し、m2当りのg数として算出した値、以下本発明での吸水量は特に断らない限り5秒吸水量を意味する)で表現すると、数値が順次低くなる方向に勾配をもたせることを意味する。中間層のサイズ度は特に表面層と接する面側の吸収性が重要であり、中間層が複数層からなる場合は表面層と接する面側からの吸水量をもって中間層のサイズ度とする。各層のサイズ度の評価は基紙の状態では表面層、中間層及び裏面層の3層に剥離し、表面層は基紙の表面の吸水量、中間層は表面層と接する面の吸水量、裏面層については基紙の裏面からの吸水量の各値を比較することでサイズ度に勾配がとれているかを確認できる。
【0023】
顔料塗工層を設けた状態では基紙の表面層表面からの5秒吸水量の測定ができないことから表面層と中間層の界面で剥離し、表面層において中間層と接する面側からの吸水量を測定することで評価する。簡便的には表面層、中間層及び裏面層の3層に剥離し、マイクロシリンジを用いて一定量の水を各層に滴下し、吸収時間を測定することで、各層のサイズ度に勾配がとれているかを確認できる。各層の5秒吸水量は表面層で20〜60g/m2、中間層で16〜30g/m2、裏面層で15g/m2以下の範囲が好ましいが、サイズ度に勾配がとれていることが必要である。中間層のサイズ度が表面層と同じ無サイズの場合はインクジェットプリンターで印字した場合の発色性、表面強度、耐擦れ性が不満足であり、中間層のサイズ度が裏面層と同じ場合にはインクジェットプリンターでの乾燥性、にじみ、高速インクジェットプリンターでの裏移り、滲み、裏抜けが悪化する。
また中間層のサイズ度が表面層より低い場合はインクジェットプリンターでの滲みが悪化する。
【0024】
インク受容層を設けた側の吸水量、すなわちインク受容層側からの吸水量(以下、「インク受容層吸水量」という。)を(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m2当りのg数として算出した値)20g/m2以上とし、基紙の中間層の表面層と接する面側からの吸水量が16〜30g/m2、反対側のインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである面の吸水量を15g/m2以下としたのは次の理由による。即ち、インク受容層吸水量が20g/m2以上であれば、インクジェットプリンターで多色インクを高速印字された場合でも、インク吸収が速く、裏移りと呼ばれる現象が発生しない。一方、吸水量が20g/m2未満であると裏移りと呼ばれる現象が発生し易くなり好ましくない。これらインク受容層吸水量は、原紙処方とカラー処方の組合せによって制御することができるが、特にインク受容層を設ける基紙の内添サイズ剤添加量が重要である。
【0025】
基紙の中間層の表面層と接する面側からの吸水量は16〜40g/m2であるが、16g/m2未満ではインクジェットプリンターでの乾燥性、滲み、高速インクジェットプリンターでの裏移り、滲み、裏抜けが悪化し、40g/m2を超えると表面強度、耐擦れ性が悪化する。
反対側のインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである非顔料塗工面の吸水量を15g/m2以下としたのは、特に万年筆の水性インク、墨汁等で筆記した場合の滲みを防ぐためである。吸水量が15g/m2を超えると滲みが発生し好ましくない。一方インクジェットプリンターで印字されることも考慮すると好ましい範囲は5〜15g/m2である。この場合通常単色インクで印字されるが、5g/m2未満ではインクジェットプリンターで印字した場合吸収性が悪くなる。
これら非顔料塗工面の吸水量は、表面サイズ剤を塗布することによってある程度は調節することができるが、プリンターでの搬送性不良等の弊害も発生しやすくなり、非顔料塗工面側の内添サイズ添加量が重要となる。
【0026】
基紙の表面層は、パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0〜0.03重量%含まれるようにする。内添サイズ剤は填料としてタルクを用いる場合には強化ロジンサイズ剤等が用いられ、填料として炭酸カルシウムを用いる場合には中性ロジンサイズ剤、ASA、AKD等が用いられる。サイズ剤添加量がこの範囲以上になると、塗工面の吸水量が20g/m2未満となり、裏移りと呼ばれる現象が発生し易くなり好ましくない。
【0027】
基紙の裏面層は、パルプ100重量部に対して内添サイズを0.1重量%以上含むようにする。内添サイズ剤は填料としてタルクを用いる場合には強化ロジンサイズ剤等が用いられ、填料として炭酸カルシウムを用いる場合には中性ロジンサイズ剤、ASA、AKD等が用いられる。
サイズ剤添加量が0.1重量%未満になると、非顔料塗工面側の吸水量が15g/m2を超え、水性インクなどの滲みが発生し易くなり好ましくない。
【0028】
基紙の中間層は、パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0〜0.1重量%含まれるようにする。内添サイズ剤は填料としてタルクを用いる場合には強化ロジンサイズ剤等が用いられ、填料として炭酸カルシウムを用いる場合には中性ロジンサイズ剤、ASA、AKD等が用いられる。サイズ剤添加量は第1層、第3層のサイズ度をみて、サイズ度の勾配がとれてなおかつ吸水量16〜40g/m2の範囲にはいるように添加量が決定される。サイズ剤の添加量が0重量%でも使用する原料がサイズの効いた損紙や古紙の場合で上記の範囲内にあれば可能である。サイズ剤の添加量が0.1重量%を超えると、吸水量が15g/m2以下となりたとえサイズ度の勾配がとれていてもインクジェットプリンターでの乾燥性、滲み、高速インクジェットプリンターでの裏移り、滲み、裏抜けが悪化する。
【0029】
以下に本発明に使用する被記録材の好ましい態様例を上げて具体的に説明する。
本発明で使用する基紙は多層抄であるが、その原材料は各層共に、主にL−BKP,N−BKPに代表される木材パルプを使用する。古紙パルプ、機械パルプ、草本植物パルプ等を適宜配合する事も出来る。
紙料中には紙力剤、填料、バンド、歩留まり向上剤、染料、蛍光染料等が適宜用いられる。
【0030】
紙力剤としてはカチオン澱粉、ポリアクリルアマイド等が主として用いられる。
填料としては炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成ゼオライト、珪酸カルシウム、チタン等が用いられる。
歩留まり向上剤はコロイダルシリカ、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンイミン等が用いられる。
染料、蛍光染料は紙の色相を調節するために添加され、直接染料、塩基性染料、酸性染料等が用いられる。
紙料中のサイズ剤としては填料に炭酸カルシウムを用いる場合には、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジン等が用いられ、炭酸カルシウム以外の填料では主に強化ロジン、鹸化ロジンが用いられる。紙料中のサイズ剤添加量については、前記した通りである。
【0031】
基紙の抄造は丸網抄紙機ある或いは長網抄紙機あるいは短網抄紙機あるいはそれらのコンビネーション抄紙機を用いて、少なくとも3層以上の多層抄により、上述した紙料を用いて行われる。
途中、サイズブレス、ゲートロール等に代表される澱粉、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤等の塗布液を塗布する装置を通過させる場合もあるが、この場合も製品基紙において表面層〜裏面層のサイズ度の勾配がとれ、吸水量が適正な範囲内に入るように表面サイズ剤の塗布量を調節しなければならない。
【0032】
基紙上に設けるインク受容層は、無機顔料を主体として形成される。無機顔料としては、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽重質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、二酸化チタン、焼成クレー、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク、合成シリカ、珪酸リチウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マイカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、擬ベーマイト、ハイドロキシアパタイト、層間化合物等を用いることができる。以上のような無機顔料の中でも、必要とする細孔容積及びインク吸収性を得るために多孔性合成非晶質シリカや多孔性合成非晶質アルミナ等が好ましい。
【0033】
そして、それらの製造法、例えば、水熱合成法、共沈法、ゾル−ゲル法、CVD、PVD、MBE法等の製造法については限定されない。さらに、上記無機顔料のうち、カップリング剤や有機物による表面改質や、金属イオン交換法、気相蒸着法や液相析出法による表面処理など、多元的な機能性を付与させるための表面処理が施された無機顔料が使用されてもかまわない。また、印刷保存性の向上を目的に、ラジカルトラッピング剤や還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤を含浸させた顔料スラリーといったものでもインクジェット適性を著しく損なわない場合には使用してもかまわない。
【0034】
本発明に用いられる接着剤としては水溶性バインダーや水性バインダーまたはその混合物が使用される。水溶性バインダーとしては以下のようなものが使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピリジン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、酸化でんぷん、エステル化でんぷん、酵素変性でんぷん、カチオン化でんぷん、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等がある。このうち、バインダー力やピグメントとの親和性の観点から、また、塗料調製時に粘性制御がしやすいといった点からポリビニルアルコールの使用がより好ましい。ここでは、ケン化度や重合度といったものは、特に限定されるものではない。
【0035】
水性バインダーとしてはスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、アクリル系重合体等を使用することができる。
これらの接着剤は顔料100重量部に対して10重量部〜50重量部用いられるが、顔料の結合に充分な量であればその比率は特に限定されるものではない。インク受容層に用いる塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、潤滑剤、湿潤剤、離型剤、保水剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、染料固着剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、流動改良剤、印刷適性向上剤、香料、脱臭剤等を適宜選定して添加することができる。
【0036】
インク受容層は、このようにして調製された塗工液を一般の塗工方式、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、チャンブレックスコーター、リップコーター、ロッドコーターなどの塗工方式によってオフマシンコーターあるいはオンマシンコーターで、単層あるいは多層塗工することで、本発明の多層抄インクジェット用紙を得ることができる。塗料の液性からはエアーナイフコーター、カーテンコーター、ロッドコーター等が好ましく、さらに好ましくはエアナイフコーターであり、経済性、効率性を考慮するとオンマシンコーターの利用が好ましい。特に通常、既存の白板紙マシンはオンマシンコーターを抄紙パートの後に装備しており、これらの設備を利用することが経済的に有利である。但しオンマシンコーターでは原紙の温度が高いこともあり塗料からの脱水が急激であるため塗工層の表面強度が落ちやすく、これを避けるべく、塗料中の接着剤を増量すると今度は印字品質が悪化する。このため塗料を基紙に付与後は2秒以内に計量することが必要である。これは塗料の付与部と計量部間の距離と塗工速度を適正化することで達成できる。
【0037】
インク受容層である記録層の塗工量は、片面あたりの乾燥塗工量が6〜13g/m2となるようにマシンコーターにて塗工されるが、塗工量が6g/m2より少ない場合には、インク吸収性及び紙表面の被覆が十分でないため、インクジェット印字において滲み、均一性の悪化を生じさせる。また、塗工量が13g/m2を超える場合は塗工層強度の低下やインクジェット記録紙のカール性の悪化、経済的な不利益を招く。
ここで、インク受容層は、ある一定塗工量を数回に分けて塗工することもできる。数回に分割してインク受容層を塗工する方法としては、1層ごとに乾燥して塗工する場合と、複数層をウエット・オン・ウエットで同時に塗工する方法を挙げることができる。
【0038】
塗工後の乾燥方式は特に限定されるものではなく、以下の乾燥方式、すなわち熱風乾燥、赤外線乾燥、常温乾燥、凍結乾燥等が挙げられるが、その乾燥効率から赤外線乾燥、熱風乾燥が好ましい。
また、インク受容層の塗工後には、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等のキャレンダー装置を用いて平滑化処理を行うことができる。
この方式は特に限定されるものではない。
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
実施例1
<基紙の作成>
LBKP100部カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)500ccのパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、硫酸バンド0.3%、を添加し基紙の表面層とした。続いて、表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H星光化学工業社製)0.02%、硫酸バンド0.2%を添加し、中間層を得た。表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.3%、硫酸バンド0.3%を配合して裏面層を得た。各層の設定米坪は60g/m2として抄紙機により抄き合わせたのち、以下の配合の液を使ってサイズプレス処理を行い米坪180g/m2の多層抄基紙を抄造した。
【0040】
<サイズプレス液配合>
酸化澱粉(王子エースA:王子コーンスターチ社製)7部、表面サイズ剤(SS373:日本PMC社製)0.3部、水92.7部
<インク受容層用塗工液の調製>
合成非晶質シリカ(商品名:サイロジェットP412、グレースデビソン社製、平均粒子径12.0μm、平均細孔容積2.0ml/g)100部を使用し、そこに分散剤として、ポリアクリル酸ソーダ0.2部(商品名:キャリボンL−400、三洋化成社製)を添加し、カウレス分散機で20.0%の顔料スラリーを調製した。
この顔料スラリーにポリビニルアルコール20部(商品名:PVA−117、クラレ社製)とエチレン酢酸ビニル30部(商品名;スミカフレックス401、住友化学社製)及び染料固着剤10部(商品名;DA−108、星光化学工業社製)を添加、攪拌・分散し、さらに水を添加し、固形分濃度が20%の塗工液を得た。
【0041】
<インク受容層の形成>
得られた塗工液を、上記の基紙の表面層面に片面乾燥塗工量10g/m2となるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤーで熱風乾燥した。さらに、マシンカレンダーで表面処理を行い本発明のインクジェット記録用紙を得た。抄紙−インク受容層の形成工程はオンマシン上で行い、顔料塗工液付与後計量までの時間は0.8秒であった。
【0042】
実施例2
実施例1において基紙の作成を下記でおこなった以外は実施例1と同様にして本発明の多層抄インクジェット記録用紙を得た。
<基紙の作成>
LBKP100部(CSF=500cc)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.02%、硫酸バンド0.3%、を添加し基紙の表面層とした。続いて、表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.04%、硫酸バンド0.2%を添加し、中間層を得た。表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.3%、硫酸バンド0.2%を配合して裏面層を得た。得られた各層を抄紙機により抄き合わせた。各層の設定米坪は60g/m2として抄紙機により抄き合わせたのち、サイズプレス処理を行いなる米坪180g/m2の多層抄原紙を抄造した。
【0043】
実施例3
実施例1において基紙の作成を下記でおこなった以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用紙を得た。
<基紙の作成>
LBKP100部(CSF=500cc)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤0.03%、硫酸バンド0.3%、を添加し基材のインク吸収層を設ける面の表面層とした。続いて、表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.06%、硫酸バンド0.2%を添加し、中間層を得た。表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤0.2%、硫酸バンド0.2%を配合して裏面層を得た。各層の設定米坪は60g/m2として抄紙機により抄き合わせたのち、サイズプレス処理を行い米坪180g/m2の多層抄原紙を抄造した。
【0044】
実施例4
実施例1において塗工量を6g/m2にした以外は実施例1と同様にして本発明の多層抄インクジェット記録用紙を得た。
【0045】
実施例5
実施例1において塗工量を13g/m2にした以外は実施例1と同様にして本発明の多層抄インクジェット記録用紙を得た。
【0046】
比較例1
実施例1において基紙の作成を下記でおこなった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
<基紙の作成>
LBKP100部(CSF=500cc)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、硫酸バンド0.3%、を添加し基材のインク吸収層を設ける面の表面層とした。続いて、表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、、硫酸バンド0.2%を添加し、中間層を得た。表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.3%硫酸バンド0.2%を配合して裏面層を得た。各層の設定米坪は60g/m2として抄紙機により抄き合わせたのち、サイズプレス処理を行い米坪180g/m2の多層抄原紙を抄造した。
【0047】
比較例2
実施例1において基紙の作成を下記でおこなった以外は実施例1と同様にして多層抄インクジェット記録用紙を得た。
<基紙の作成>
LBKP100部(CSF=500cc)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.03%、硫酸バンド0.3%、を添加し基紙の表面層とした。続いて、表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、硫酸バンド0.2%を添加し、中間層を得た。表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.3%、硫酸バンド0.2%を配合して裏面層を得た。各層の設定米坪は60g/m2として抄紙機により抄き合わせたのち、サイズプレス処理を行い米坪180g/m2の多層抄原紙を抄造した。
【0048】
比較例3
実施例1において基紙の作成を下記でおこなった以外は実施例1と同様にして多層抄インクジェット記録用紙を得た。
<基紙の作成>
LBKP100部(CSF=500ml)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.03%、硫酸バンド0.3%、を添加し基紙の表面層とした。続いて、表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.3%硫酸バンド0.2%を添加し、中間層を得た。表面層と同様のパルプスラリーにカチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.3%、硫酸バンド0.2%を配合して裏面層を得た。各層の設定米坪は60g/m2として抄紙機により抄き合わせたのち、サイズプレス処理を行い米坪180g/m2の多層抄原紙を抄造した。
【0049】
比較例4
実施例1において基紙の作成を下記でおこなった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
<基紙の作成>
LBKP100部(CSF=500cc)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(コロパールE−5H 星光化学工業社製)0.02%、硫酸バンド0.3%、を添加し1層からなる米坪180g/m2の原紙を抄造した。
【0050】
評価方法
得られた用紙は、23℃−50%RHの環境下で24時間調湿後、それぞれ下記の方法により、評価を行った。
吸水量
6×6cmの紙片を用意し、測定する反対面を非透水性フィルムでシールし重量を測定した。次いでシールした試験片を23℃の水中に浸漬し、5秒後直ちに余分な液を吸い取り紙で取り除いて重量を測定した。前後の重量差より吸収された水の重量を計算し、m2当りのg数として算出した。
【0051】
フルカラーインクジェット適性
印刷評価1
市販のキヤノン製のBJ F200インクジェットプリンターを用いフォトインクで印字した結果を以下の項目について視感で評価した。
・発色性
・インク乾燥性
・インクの裏抜け
・インク滲み
印字評価2
高速インクジェットプリンターとしてキヤノン製のP−400Cを用いて印字した結果を以下の項目について視感で評価した。
・インク滲み
・インクの裏抜け
・ 裏移り
尚、裏移りは10枚連続印字し、インクジェット用紙の裏面にインクが1枚でも転移した場合を×、全量移らない場合を○として評価した。
【0052】
非顔料塗工面
万年筆で筆記した場合、滲みが発生しないときを◎、発生した時を×とした。
学振式摩擦堅牢度
用紙の記録層と表面強度に優れた黒色の色紙(商品名:やよいカラー紙、北越製紙社製)とを密着させ、学振式摩擦堅牢度試験機にて、荷重300gの条件で20往復摩擦によっての粉落ち具合を目視観察にて行った。
【0053】
RI印刷強度
RI印刷試験機を使用し、T.V=15のオフセット印刷用インキによって、記録層の表面強度を測定した。ゴム製のブランケット汚れとその汚れをオフセット印刷適性に優れるグロスタイプのA2コート(商品名:μコート、北越製紙社製)に転写させ、その転写パターンと共に評価した。
【0054】
以上の印字物の評価は、下記要領によって記述することにした。
◎…優れている、○…やや優れている(実用レベル)、△…普通(実用許容範囲レベル)×…劣っている(実用的でない)
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用紙は、インク吸収性、発色性、表面強度に優れ、高濃度で、高品位画像を高速で印字することが出来る。
本発明のインクジェット記録紙の製造方法は、上記インクジェット用紙の製造をオンマシン上で行うことを可能とするものであって、生産効率を大幅に向上させ、また低価格での該インクジェット用紙を供給することを可能ならしめるものである。
【0058】
更に具体的に各請求毎に対応する発明の効果を述べる。
請求項1においては、中間層のサイズ度が表面層と同じ無サイズの場合はインクジェットプリンターで印字した場合の発色性、表面強度、耐擦れ性が不満足であり、中間層のサイズ度が裏面層と同じ場合にはインクジェットプリンターでの乾燥性、にじみ、高速インクジェットプリンターでの滲み、裏抜けが悪化する。また中間層のサイズ度が表面層より低い場合はインクジェットプリンターでの滲みが悪化することとなる。
【0059】
また請求項1において、インク受容層吸水量を20g/m2以上とし、基紙の中間層の表面層と接する面側からの吸水量が16〜40g/m2、反対側のインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである面の吸水量を15g/m2以下としたのは、インク受容層吸水量が20g/m2以上であれば、インクジェットプリンターで多色インクを高速印字された場合でも、インク吸収が速く、裏移りと呼ばれる現象が発生しない。一方、吸水量が20g/m2未満であると裏移りと呼ばれる現象が発生し易くなり好ましくない。また、基紙の中間層の表面層と接する面側からの吸水量は16〜40g/m2であるが、16g/m2未満ではインクジェットプリンターでの乾燥性、滲み、高速インクジェットプリンターでの滲み、裏抜けが悪化し、40g/m2を超えると表面強度、耐擦れ性が悪化することとなる。さらに、反対側のインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである非顔料塗工面の吸水量を15g/m2以下としたのは、特に万年筆の水性インク、墨汁等で筆記した場合の滲みを防ぐためである。吸水量が15g/m2を超えると滲みが発生し好ましくないためである。
【0060】
請求項3においては、基紙の表面層は、パルプ100重量部に対して、内添サイズ剤を0〜0.03重量%含まれるようにすることとしたのは、サイズ剤添加量がこの範囲以上になると、塗工面の吸水量が20g/m2未満となり、裏移りと呼ばれる現象が発生し易くなり好ましくないためである。基紙の裏面層のサイズ剤添加量が0.1重量%未満になると、非顔料塗工面側の吸水量が15g/m2を超え、水性インクなどの滲みが発生し易くなり好ましくないためである。そして、基紙の中間層のサイズ剤の添加量が0.1重量%を超えると、吸水量が15g/m2以下となりたとえサイズ度の勾配がとれていてもインクジェットプリンターでの乾燥性、滲み、高速インクジェットプリンターでの裏移り、滲み、裏抜けが悪化することとなる。
【0061】
請求項4においては、インク受容層塗工量は、片面あたりの乾燥塗工量が6〜13g/m2となるように塗工されるが、塗工量が6g/m2より少ない場合には、インク吸収性及び紙表面の被覆が十分でないため、インクジェット印字において滲み、均一性の悪化を生じさせる。また、塗工量が13g/m2を超える場合は塗工層強度の低下やインクジェット記録紙のカール性の悪化、経済的な不利益を招くこととなる。
【0062】
本発明に係る請多層抄インクジェット記録用紙の製造方法は、オンマシンコーターでは原紙の温度が高いこともあり塗料からの脱水が急激であるため塗工層の表面強度が落ちやすく、これを避けるべく、塗料中の接着剤を増量すると今度は印字品質が悪化することから、塗料を基紙に付与後は2秒以内にエアナイフで計量することにより印字品質の悪化が解消される。
Claims (5)
- 多層抄きした基紙の片面側には顔料を主体とするインク受容層を設け、該基紙の反対面側に顔料を主体とするインク受容層を設けずに基紙が剥き出しである多層抄インクジェット記録用紙であって、前記基紙が木材パルプ及び/又は古紙パルプを主成分とする3層以上の抄き合わせからなり、インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層とし、該表面層と裏面層の中間に位置する層を中間層とし、該表面層から中間層及び裏面層にかけて各層のサイズ度が順次高くなるように勾配をもたせた層から構成され、かつ、インク受容層吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m 2 当りのg数として算出した値)が20g/m 2 以上であり、反対側の裏面層の吸水量が15g/m 2 以下であり、基紙の中間層の表面層と接する面側からの吸水量が16〜40g/m 2 であることを特徴とする多層抄インクジェット記録用紙。
- 前記基紙の表面層の吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m 2 当りのg数として算出した値)が20〜60 g /m 2 であることを特徴とする請求項1記載の多層抄インクジェット用紙。
- 前記基紙の表面層の内添サイズ剤添加量が0〜0.03重量%、該基紙の裏面層の内添サイズ添加量が0.1重量%以上であり、該基紙の中間層の内添サイズ剤添加量は0〜0.1重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層抄インクジェット記録用紙。
- 前記インク受容層の塗工量を固形分で6〜13g/m2の割合で設けてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のインクジェット記録用紙。
- 木材パルプ及び/又は古紙パルプを主成分とする3層以上の抄き合わせによって、インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層とし、該表面層と裏面層の中間に位置する層を中間層とし、該表面層から中間層及び裏面層にかけて各層のサイズ度が順次高くなるように勾配をもたせ、かつ、インク受容層吸水量(水を用いて5秒間一定面積の被測定面に接触させ、余分な液を吸い取り紙で取り除いて、被測定面から吸収された水の重量を測定し、m 2 当りのg数として算出した値)を20g/m 2 以上とし、前記裏面層の吸水量を15g/m 2 以下とし、前記中間層の表面層と接する面側からの吸水量を16〜40g/m 2 とした層から構成される基紙を形成する工程と、該基紙の片面側に設けるインク受容層を塗工・乾燥する工程とをオンマシン上で行い、オンマシン塗工装置がエアナイフコーターであり、塗料を前記基紙に付与後エアナイフで計量するまでの時間が2秒以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
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