JP4030169B2 - ポリアミド複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、層状珪酸塩がAB型ポリアミド中に均一分散され、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、靱性に優れ、かつ前記した諸物性のばらつきの少ないAB型ポリアミド複合材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミドをガラス繊維や炭素繊維等の繊維質や炭酸カルシウム等の無機充填材で強化した樹脂組成物は広く知られている。しかし、これらの強化材はポリアミドとの親和性に乏しく、強化ポリアミド樹脂の機械的強度や耐熱性は改良されるものの、靱性が低下し、また繊維質で強化した樹脂組成物では成形品のそりが大きくなるという問題があった。しかも、前記の無機充填材で強化した樹脂組成物では、充填材を多量に配合しないと機械的強度や耐熱性が向上しないという問題もあった。
【0003】
このような強化ポリアミド樹脂の欠点を改良する試みとして、ポリアミドとモンモリロナイトに代表される層状珪酸塩とからなる樹脂組成物が提案されている(特公平8-22946 号公報、特許第 2519045号公報、特公平8-19230 号公報、特開平3-7729号公報)。
【0004】
これらの樹脂組成物は、ポリアミド鎖を層状珪酸塩の層間に侵入させることによって、層状珪酸塩が微細に均一分散された複合体とするものであり、このような目的でモンモリロナイトを用いる場合、上記の各公報に記載されているように、ポリアミドあるいはポリアミドを形成するモノマーにモンモリロナイトを配合する前に、これをアミノカルボン酸のアンモニウム塩等の膨潤化剤と接触させることによって、モンモリロナイトの層間距離を拡げるための処理が不可欠であった。したがって、当業界においては、このような処理が不要で、従来の強化ポリアミド樹脂の欠点を解消することのできる無機充填材が強く求められていた。
【0005】
このような問題点を解決する試みとして、本発明者らは、先にポリアミドを形成するモノマーに特定の膨潤性フッ素雲母系鉱物を添加して重合するという強化ポリアミド樹脂組成物を製造方法を提案した(特開平6-248176号公報)。この方法によれば、モンモリロナイトに代表される従来の層状珪酸塩を用いた場合と異なり、あらかじめ膨潤化処理を行なうことなく、機械的強度、耐熱性及び寸法安定性に優れた樹脂組成物を得ることができた。
【0006】
また、本発明者らは、pKaが0〜6又は負(25℃の水中での値)の酸を存在させた状態で、膨潤性フッ素雲母系鉱物を添加して、ポリアミド(ナイロン6又はその共重合体)を形成するモノマーを重合する方法を提案した(特開平8-3310号公報、特開平8-134205号公報)。この方法では、重合時に5kg/cm2程度の圧力を用いるだけで、機械的強度、靱性、耐熱性及び寸法安定性に優れた樹脂組成物を得ることができた。しかし、この方法はナイロン6又はその共重合体については有効であったが、ジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩モノマーを出発原料とするAB型ポリアミドの場合には、十分な機械的強度や耐熱性を有するポリアミド樹脂組成物を得ることが難しいという問題があった。
【0007】
さらに、本発明者らは、ポリアミドオリゴマーと粉体の層状珪酸塩とを混合し、さらに重縮合反応を行う方法(特願平8-44467 号)、またはポリアミドオリゴマーと粉体の層状珪酸塩とを混合し、さらに分子量増加剤を添加し、重縮合反応を行う方法(特開平8-142570号公報)を提案した。しかし、これらの方法では、膨潤性フッ素雲母系鉱物をポリアミド中に均一分散させ、物性のばらつきの少ないAB型ポリアミド複合材料を得るという点で十分とはいえなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、層状珪酸塩がAB型ポリアミド中に均一分散され、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、靱性に優れ、かつ前記した諸物性のばらつきの少ないAB型ポリアミド複合材料及びその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、その要旨は次の通りである。
(1) 層状珪酸塩が分子レベルで均一分散されたAB型ポリアミド複合材料であって、引張り破断伸度が50%以上で、かつその標準偏差が5以下であることを特徴とするポリアミド複合材料。
ただし、AはAB型ポリアミドを構成するジアミン成分の炭素数を表し、BはAB型ポリアミドを構成するジカルボン酸成分の炭素数を表す。
(2) 相対粘度が 2.0以下のポリアミドオリゴマーと濃度が10重量%以下の層状珪酸塩の水スラリー液とを混合し、重縮合することを特徴とする上記(1) 記載のポリアミド複合材料の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるAB型ポリアミドを形成するモノマーとしては、ジアミンとジカルボン酸(それらの一対の塩であるナイロン塩モノマーも含まれる)が挙げられ、具体的には次のようなものがある。
【0012】
ジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3- アミノメチル-3,5,5- トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4- アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、ビス(2-アミノエチル)ピペラジン等がある。
【0013】
ジカルボン酸としては、例えばアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10- デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸等がある。
【0014】
さらに、ナイロン塩モノマーとしては、上記ジアミンと上記ジカルボン酸とを等モル量で混合して得られる両者の1:1付加物があり、例えばナイロン66塩、ナイロン46塩、ナイロン610 塩、ナイロン612 塩等がある。
【0015】
本発明におけるAB型ポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン 610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン 612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン 116)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMDX6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン 11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド〔ナイロン11T(H)〕又はこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミド等がある。これらの中で特に好ましいものは、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン 610、ナイロン 612及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドである。
【0016】
本発明における層状珪酸塩は、珪酸塩を主成分とする負に帯電した層とその層間に介在する陽電荷(陽イオン)とからなる構造を有し、イオン交換能を有するものである。
【0017】
かかる層状珪酸塩の好ましい例としては、スメクタイト族(例えば、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト)、バーミキュライト族(例えば、バーミキュライト)、雲母族(例えば、フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト金雲母、黒雲母、レピドライト)、脆雲母族(例えば、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト)、緑泥石族(例えば、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト)等がある。
【0018】
これらの層状珪酸塩は、天然に産するものであっても人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またオニウム塩等の有機化合物で処理したものであってもよい。
【0019】
オニウム塩としては、例えばアミン塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。具体的にはデシルアミン、ラウリルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、アニリン、ベンジルアミン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、2,7 −ジアミノフルオレン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミン塩、テトラブチルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等のアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム等のホスホニウム塩の一種又は二種以上の混合物が用いられる。これらの中で、特に好ましいのは6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸の塩酸塩である。
【0020】
上記の層状珪酸塩の中で、膨潤性フッ素雲母系鉱物はAB型ポリアミド中における分散性が良好であり、本発明に用いられる層状珪酸塩としては最適のものであり、これは次式で示されるものである。
α(MF)・β(aMgF2 ・bMgO)・γSiO2
(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1 ≦α≦2、2≦β≦3.5 、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
【0021】
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物と各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0022】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインタ−カレーションして膨潤性フッ素雲母を得る方法がある(特開平2-149415号公報)。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリ金属又はフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約 700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られる。本発明で用いられる膨潤性フッ素雲母系鉱物は特にこの方法で製造されたものが好ましい。
【0023】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリ金属又はフッ化アルカリ金属の量は、混合物全体の10〜35重量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成率が低下する。
【0024】
上記の膨潤性フッ素雲母系鉱物を得るためには、珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムとすることが好ましい。これらのアルカリ金属は単独で用いてもよいし併用してもよい。また、アルカリ金属のうち、カリウムの場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られないが、ナトリウムあるいはリチウムと併用し、かつ限定された量であれば膨潤性を調節する目的で用いることも可能である。さらに、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。
【0025】
層状珪酸塩の配合量は、得られるポリアミド 100重量部あるいはそれを形成するモノマ−量に対して 0.1〜20重量部の範囲とすることが好ましい。この配合量が 0.1重量部未満では、機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性に優れた成形品が得られず、逆に20重量部を超えると、成形品の靱性の低下が大きいものとなる。
【0026】
次に、本発明のポリアミド複合材料を製造する方法について説明する。
すなわち、本発明の方法においては、まず初めに相対粘度 2.0以下(溶媒として96%濃硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で求めた値)のポリアミドオリゴマー、好ましくは相対粘度 1.5以下のポリアミドオリゴマーを得ることが必要である。そのためには、上記したジアミンとジカルボン酸との等モル混合物(もしくはナイロン塩モノマー)に、ジアミンもしくはジカルボン酸のいずれかを過剰に添加して末端基バランスを崩したうえで重縮合する方法、もしくは末端基バランスを崩さないで重縮合時間により分子量をコントロールする方法が用いられる。ポリアミドオリゴマーの相対粘度が 2.0を超えるものでは、その後の重縮合を行うことによって、層状珪酸塩が均一分散されたポリアミド複合材料とすることが難しく、機械的強度や耐熱性に優れた成形品が得られにくい。
【0027】
末端基バランスを崩したうえで重縮合する際に用いられる過剰のジアミンもしくはジカルボン酸としては、上記したAB型ポリアミドを製造する際に用いられたジアミンもしくはジカルボン酸が挙げられる。ジアミンとしてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが特に好ましい。また、ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が特に好ましい。
【0028】
この際、ジアミンもしくはジカルボン酸の添加量は、ポリアミドを形成するモノマー量に対して、0.01〜100 モル%過剰にすることが好ましい。この添加量が0.01モル%未満では、末端基バランスを崩したことにはならず、重縮合時間によりポリアミドオリゴマーの分子量をコントロールする必要がある。逆にこの存在量が 100モル%を超えると、2〜3量体程度のポリアミドオリゴマーしか得られないばかりか、ジアミンもしくはジカルボン酸がポリアミドオリゴマー中に残存するため、その後の重縮合を行うことによって、層状珪酸塩が均一分散されたポリアミド複合材料とすることが難しく、機械的強度や耐熱性に優れた成形品が得られにくい。
【0029】
次いで、上記した相対粘度が 2.0以下のポリアミドオリゴマーと、濃度を10重量%以下、好ましくは5〜10重量%に調整した層状珪酸塩の水スラリー液とを混合し、重縮合することが必要である。この際、層状珪酸塩の水スラリー液の濃度が10重量%を超えると、均一なスラリー液が得られにくいので好ましくない。
【0030】
また、ポリアミドオリゴマーを製造する工程、あるいは前記のポリアミドオリゴマーと層状珪酸塩の水スラリー液とを混合する工程において、pKa(25℃水中での値)が0〜6又は負の酸を添加するのが好ましく、この酸添加により、ポリアミド樹脂マトリックスと層状珪酸塩の密着性が増加して、より性能の優れた成形品とすることのできるポリアミド複合材料が得られる。
【0031】
このような酸としては、有機酸でも無機酸でもよく、例えば安息香酸、セバシン酸、ギ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、亜硝酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸−ペンタフルオロアンチモン(1:1)〔アルドリッチ社製「マジックアシッド」(商品名)〕、フルオロアンチモン酸等が挙げられる。
【0032】
これらの酸の添加量は、ポリアミドモノマーに対して、0.001 〜10モル%の範囲とすることが好ましい。この添加量が 0.001モル%未満であるとその効果が小さく、10モル%を超えると、アミノ基末端とカルボキシル基末端のモルバランスが崩れるため、高重合度のポリアミド複合材料が得られにくい。
【0033】
上記した方法を用いれば、ポリアミドと層状珪酸塩を単に溶融混合したものや、ポリアミドモノマーと層状珪酸塩を共存させた状態で重縮合反応を行なって得られたものに比べて、ポリアミド樹脂中の層状珪酸塩をより均一分散させることが可能となり、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、靱性に優れ、かつ前記した諸物性のばらつきの少ない成形品とすることのできるポリアミド複合材料が得られる。
【0034】
本発明の方法により得られるポリアミド複合材料の相対粘度は、溶媒として96%濃硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で求めた値で、1.5 〜5.0 の範囲にすることが好ましい。この相対粘度が 1.5未満のものでは成形品としたときの機械的強度が低下し、相対粘度が 5.0を超えるものでは成形性が低下する。
【0035】
また、本発明の方法により得られたポリアミド複合材料は、ポリアミド樹脂中に層状珪酸塩が分子レベルで均一分散されたものである。ここで分子レベルで均一分散されるとは、前記層状珪酸塩がポリアミド樹脂マトリックス中に分散される際に、それぞれが平均20Å以上の層間距離を保っている状態をいう。また、層間距離とは層状珪酸塩の珪酸塩層の平板の重心間の距離を指し、均一分散されるとは層状珪酸塩の珪酸塩層の一枚一枚がもしくは平均的な重なりが5層以下の多層物が平行にあるいはランダムに、もしくは平行とランダムが混在した状態で、その50%以上が、好ましくは70%以上が塊を形成することなく分散されている状態をいう。具体的には、ポリアミド複合材料の樹脂ペレットについて広角X線回折測定を行い、珪酸塩層の厚み方向に起因するピークが消失されていること、もしくはポリアミド複合材料の成形試験片について透過型電子顕微鏡写真撮影観察を行い、層状珪酸塩の塊がないことから確認することができる。
【0036】
本発明のポリアミド複合材料には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、層状珪酸塩以外の強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤等が添加されていてもよく、これらは重縮合時あるいは得られたポリアミド複合材料を溶融混練もしくは溶融成形する際に加えられる。
【0037】
熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
強化剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0039】
さらに、ポリアミド複合材料には、他の熱可塑性重合体が混合されていてもよく、これらはポリアミド複合材料を溶融混練もしくは溶融成形する際に加えられる。熱可塑性重合体としては、例えばポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、アクリルゴム、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン等のエラストマー又はこれらの無水マレイン酸等による酸変性物、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/フェニルマレイミド共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン6やナイロン12等のAB型ポリアミド以外のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリレート等が挙げられる。
【0040】
本発明のポリアミド複合材料は、通常の成形加工方法で目的の成形品とすることができる。例えば射出成形、押出成形、吹き込み成形、焼結成形等の熱溶融成形法により各種の成形品にしたり、有機溶媒溶液から流延法により薄膜とすることができる。
【0041】
本発明のポリアミド複合材料を用いて得られる成形品は、機械的強度、耐熱性及び寸法安定性等がポリアミド単独の場合に比べて顕著に改良され、また吸水による機械的性質や寸法変化が少ない。さらに、従来品と比較して、引張伸度が大きく、かつそのばらつきも小さいので、各種の成形品とすることができる。
【0042】
上記の成形品としては、パイプ、中空パイプ、把手、インク容器、カーテンレール、ギアー部品、ベアリングリテーナー、ブラシ、リール、ブレーカーカバー、スイッチ、コネクター、自動車外装用部品、自動車内装用部品、ライトカバー、インテークマニホールド、タイミングベルトカバー、ホイール、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー等を挙げることができる。しかし、これらに限定されるものではなく、本発明のポリアミド樹脂組成物の特性である優れた機械的強度、弾性率、耐熱性、靱性、伸度等を生かすことができる分野に幅広く用いることができる。
【0043】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例並びに比較例で用いた原料及び物性試験の測定法は次の通りである。
1.原料
(1) 膨潤性フッ素雲母系鉱物
ボールミルにより平均粒径が4μmとなるように粉砕したタルクに対し、平均粒径が同じく4μmの珪フッ化ナトリウムを全量の15重量%となるように混合し、これを磁性ルツボに入れ、電気炉にて 850℃で30分間反応させることにより合成した。
この粉末について、広角X線回折測定を行った結果、原料タルクのc軸方向の厚み 9.2Åに対応するピークは消失し、膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成を示す12〜13Åに対応するピークが認められた。
【0044】
2.測定法
(a) ポリアミド複合材料中の膨潤性フッ素雲母の分散性
広角X線回折装置(理学電機社製、広角X線回折装置RAD-rB型)により、樹脂ペレット中における膨潤性フッ素雲母の分散性を測定した。
また、曲げ測定用の試験片から小さく切り出したサンプルをエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフにて超薄切片に切り出したものについて、透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM-200CX 型、加速電圧100kV)で撮影した電子顕微鏡写真観察から、膨潤性フッ素雲母の珪酸塩層のおおよその大きさを求めることにより分散性を評価した。
(b) ポリアミドオリゴマー及びポリアミド複合材料の相対粘度
96重量%濃硫酸中に、ポリアミドオリゴマーの乾燥粉砕物及びポリアミド複合材料の乾燥樹脂ペレットの濃度が1g/dlになるように溶解し、温度25℃で測定した。
(c) 試験片の引張り強度及び引張り破断伸度
ASTM D-638に基づいて測定した。
(d) 試験片の曲げ強度及び曲げ弾性率
ASTM D-790に基づいて測定した。
(e) 試験片のアイゾット衝撃強度
ASTM D-256に基づいて、厚み 3.2mmの試験片に所定の深みのノッチをつけて測定した。
(f) 試験片の熱変形温度
ASTM D-648に基づいて、荷重 1.86MPaで測定した。
【0045】
実施例1〜3
ナイロン66塩10kgと水2kgとを内容量30リットルの反応缶に入れ、攪拌しながら15kg/cm2の圧力まで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放圧しつつ、圧力15kg/cm2、温度 280℃に保って2時間重縮合した後、1時間かけて常圧まで放圧することによりポリアミドオリゴマーを得た。このポリアミドオリゴマーの相対粘度は1.3 であった。
次いで、この常圧下、280 ℃に保ったポリアミドオリゴマーに、表1に示した割合の膨潤性フッ素雲母系鉱物の水スラリー液(以下「フッ素雲母スラリー」という)を添加し、さらに温度 280℃、常圧下で1時間重縮合を行った。重縮合の終了した時点で、反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してポリアミド複合材料のペレットを得た。
これらのペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、いずれにおいても膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークは完全に消失しており、ナイロン66マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていることがわかった。
次に、得られたペレットを射出成形機(三菱重工社製、125/75MS型)を用い、シリンダー温度 290℃、金型温度70℃、射出時間6秒、冷却時間6秒で射出成形を行い、厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0046】
比較例1
フッ素雲母スラリーの代わりに、粉体の膨潤性フッ素雲母系鉱物(以下「粉体のフッ素雲母」という)200gを用いた他は、実施例1〜3と同様の条件下で重縮合を行ってポリアミド複合材料のペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークは完全に消失しており、ナイロン66マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていることがわかった。
次に、このペレットを用いて実施例1〜3と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0047】
比較例2
ナイロン66塩10kgと水2kgと粉体のフッ素雲母200gとを内容量30リットルの反応缶に入れ、攪拌しながら15kg/cm2の圧力まで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放圧しつつ、圧力15kg/cm2、温度 280℃に保って3時間重縮合を行った。重縮合の終了した時点で、反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してポリアミド複合材料のペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークが観測され、ナイロン66マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていないことがわかった。
次に、このペレットを用いて実施例1〜3と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0048】
実施例1〜3及び比較例1〜2における原料仕込み条件、ポリアミド複合材料の相対粘度、試験片の物性値を表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1は、曲げ試験測定用の試験片について透過型電子顕微鏡写真観察を行ったところ、膨潤性フッ素雲母系鉱物の塊が所々に存在していたため、実施例1に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつき(標準偏差σn を指標とする)も大きいものであった。
比較例2は、ナイロン66マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていなかったため、実施例1に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。また、試験片の曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、熱変形温度のいずれもがかなり劣るものであった。
【0051】
実施例4〜6
ナイロン46塩10kgと水2kgとを内容量30リットルの反応缶に入れ、攪拌しながら15kg/cm2の圧力まで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放圧しつつ、圧力15kg/cm2、温度 300℃に保って2時間重縮合した後、1時間かけて常圧まで放圧することによりポリアミドオリゴマーを得た。このポリアミドオリゴマーの相対粘度は1.3 であった。
次いで、この常圧下、300 ℃に保ったポリアミドオリゴマーに、表1に示した割合のフッ素雲母スラリーを添加し、さらに温度 300℃、常圧下で1時間重縮合を行った。重縮合の終了した時点で、反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してポリアミド複合材料のペレットを得た。
これらのペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、いずれにおいても膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークは完全に消失しており、ナイロン46マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていることがわかった。
次に、得られたペレットを射出成形機(三菱重工社製、125/75MS型)を用い、シリンダー温度 310℃、金型温度70℃、射出時間6秒、冷却時間6秒で射出成形を行い、厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0052】
比較例3
フッ素雲母スラリーの代わりに、粉体のフッ素雲母200gを用いた他は、実施例4〜6と同様の条件下で重縮合を行ってポリアミド複合材料のペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークは完全に消失しており、ナイロン46マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていることがわかった。
次に、このペレットを用いて実施例4〜6と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0053】
比較例4
ナイロン46塩10kgと水2kgと粉体のフッ素雲母200gとを内容量30リットルの反応缶に入れ、攪拌しながら15kg/cm2の圧力まで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放圧しつつ、圧力15kg/cm2、温度 300℃に保って3時間重縮合を行った。重縮合の終了した時点で、反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してポリアミド複合材料のペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークが観測され、ナイロン46マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていないことがわかった。
次に、このペレットを用いて実施例4〜6と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0054】
実施例4〜6及び比較例3〜4における原料仕込み条件、ポリアミド複合材料の相対粘度、試験片の物性値を表2にまとめて示す。
【0055】
【表2】
【0056】
比較例3は、曲げ試験測定用の試験片について透過型電子顕微鏡写真観察を行ったところ、膨潤性フッ素雲母系鉱物の塊が所々に存在していたため、実施例4に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。
比較例4は、ナイロン46マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていなかったため、実施例4に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。また、試験片の曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、熱変形温度のいずれもがかなり劣るものであった。
【0057】
実施例7〜9
ナイロン 610塩10kgと水2kgを内容量30リットルの反応缶に入れ、攪拌しながら15kg/cm2の圧力まで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放圧しつつ、圧力15kg/cm2、温度 240℃に保って2時間重合した後、1時間かけて常圧まで放圧することにより、ポリアミドオリゴマーを得た。このポリアミドオリゴマーの相対粘度は1.3 であった。
次いで、この常圧下、240 ℃に保ったポリアミドオリゴマーに、表1に示した割合のフッ素雲母スラリーを添加し、さらに温度 240℃、常圧下で1時間重縮合を行った。重縮合の終了した時点で、反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してポリアミド複合材料のペレットを得た。
これらのペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、いずれにおいても膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークは完全に消失しており、ナイロン610 マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていることがわかった。
次に、得られたペレットを射出成形機(三菱重工社製、125/75MS型)を用い、シリンダー温度 250℃、金型温度70℃、射出時間6秒、冷却時間10秒で射出成形を行い、厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0058】
比較例5
フッ素雲母スラリーの代わりに、粉体のフッ素雲母200gを用いた他は、実施例7〜9と同様の条件下で重縮合を行ってポリアミド複合材料のペレットを得た。このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークは完全に消失しており、ナイロン 610マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていることがわかった。
次に、このペレットを用いて実施例7〜9と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0059】
比較例6
ナイロン 610塩10kgと水2kgと粉体のフッ素雲母200gとを内容量30リットルの反応缶に入れ、攪拌しながら15kg/cm2の圧力まで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放圧しつつ、圧力15kg/cm2、温度 240℃に保って3時間重縮合を行った。重縮合の終了した時点で、反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断してポリアミド複合材料のペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークが観測され、ナイロン 610マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていないことがわかった。
次に、このペレットを用いて実施例7〜9と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0060】
実施例7〜9及び比較例5〜6における原料仕込み条件、ポリアミド複合材料の相対粘度、試験片の物性値を表3にまとめて示す。
【0061】
【表3】
【0062】
比較例5は、曲げ試験測定用の試験片について透過型電子顕微鏡写真観察を行ったところ、膨潤性フッ素雲母系鉱物の塊が所々に存在していたため、実施例7に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。
比較例6は、ナイロン 610マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていなかったため、実施例7に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。また、試験片の曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、熱変形温度のいずれもがかなり劣るものであった。
【0063】
比較例7
二軸押出機(池貝鉄工社製、PCM-30)を用いて、相対粘度 2.7のナイロン66と粉体のフッ素雲母とを表4に示した割合で 280℃で溶融混練し、冷却、固化後、切断して押出しペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークが観測され、ナイロン66マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていないことがわかった。
次に、これらのペレットを用いて実施例1〜3と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0064】
比較例8
二軸押出機(池貝鉄工社製、PCM-30)を用いて、相対粘度 2.8のナイロン46と粉体のフッ素雲母とを表4に示した割合で 305℃で溶融混練し、冷却、固化後、切断して押出しペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークが観測され、ナイロン46マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていないことがわかった。
次に、これらのペレットを用いて実施例4〜6と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0065】
比較例9
二軸押出機(池貝鉄工社製、PCM-30)を用いて、相対粘度 2.7のナイロン 610と粉体のフッ素雲母とを表4に示した割合で 240℃で溶融混練し、冷却、固化後、切断して押出しペレットを得た。
このペレットについて、広角X線回折測定を行った結果、膨潤性フッ素雲母系鉱物の厚み方向のピークが観測され、ナイロン 610マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていないことがわかった。
次に、これらのペレットを用いて実施例7〜9と同様にして厚み 3.2mmの試験片を作成し物性試験を行った。
【0066】
比較例7〜9における溶融混練条件、ポリアミドの相対粘度、試験片の物性値を表4にまとめて示す。
【0067】
【表3】
【0068】
比較例7は、ナイロン66マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていなかったため、実施例1に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。また、試験片の曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、熱変形温度のいずれもがかなり劣るものであった。
比較例8は、ナイロン46マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていなかったため、実施例4に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。また、試験片の曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、熱変形温度のいずれもがかなり劣るものであった。
比較例9は、ナイロン 610マトリックス中に膨潤性フッ素雲母系鉱物が均一分散されていなかったため、実施例7に比べて、試験片の引張り破断伸度がやや劣り、そのばらつきも大きいものであった。また、試験片の曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、熱変形温度のいずれもがかなり劣るものであった。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、層状珪酸塩がAB型ポリアミド中に均一分散され、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、靱性に優れ、かつ前記した諸物性のばらつきの少ないAB型ポリアミド複合材料及びその製造方法を提供することができる。
Claims (3)
- 層状珪酸塩が分子レベルで均一分散されたAB型ポリアミド複合材料であって、相対粘度が 2.0 以下のポリアミドオリゴマーと濃度が 10 重量%以下の層状珪酸塩の水スラリー液とを混合し、重縮合することで製造され、引張り破断伸度が50%以上で、かつその標準偏差が0.5 〜 0.7であることを特徴とするポリアミド複合材料。ただし、AはAB型ポリアミドを構成するジアミン成分の炭素数を表し、BはAB型ポリアミドを構成するジカルボン酸成分の炭素数を表す。
- 層状珪酸塩が、膨潤性フッ素雲母系鉱物である請求項1記載のポリアミド複合材料。
- AB型ポリアミドが、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610 、ナイロン612 のいずれかである請求項1又は2記載のポリアミド複合材料。
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