JP4030094B2 - 非粘着性エラストマー成形体およびその製造方法 - Google Patents
非粘着性エラストマー成形体およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非粘着性エラストマー成形体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エラストマー成形体は、その表面に滑性や離型性がないため、金属面等と長い時間接触させておくと自然と固着する。例えば、ゴム材料からなるパッキンを装置や機器の金属面に装着した場合、長期間経過してパッキンを取り替えようとしても、パッキンが金属面に付着してしまい、パッキンを取り除くことが困難になるという問題があった。
【0003】
そこで、従来では、エラストマー成形体の表面にシリコーン系やふっ素系の処理液を塗布し、熱処理等を施して塗布面を硬化、反応させる(表面処理)ことで、エラストマー成形体の表面に非粘着性を与えることが行われている。例えば、特許第2631113号公報には、ポリマー成形体の表面に滑性や離型性を付与するための処理剤として、エトキシシラントリイソシアネート、テトライソシアネートシランおよびトリメチルイソシアネートの混合物からなるシリルイソシアネートとポリエステルとからなるものが示されている。
【0004】
また、一次架橋したエラストマー予備成形体を、架橋剤成分を溶剤で溶解した処理液中に浸漬し、あるいは前記処理液を吹き付ける等してエラストマー予備成形体を溶剤で膨潤させ、表面部分にのみ架橋剤成分を染みこませ、熱処理を施して表面部分のみをさらに架橋させて(表面改質)表面を硬化することにより非粘着性を付与することも行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シリコーン系やふっ素系の処理液で表面処理した場合、処理膜が使用中に剥がれ易く、装置汚染の原因になりやすい。特に半導体製造装置や液晶製造装置に、表面処理膜を施したエラストマーをパッキンとして使用したような場合、剥がれた表面処理膜が製造装置内でウエハーやパネルの表面に落下してこれらを汚染することがある。
【0006】
また、溶剤でエラストマー予備成形体を膨潤させ、表面部分にのみ架橋剤成分を染みこませ、硬化させた場合には、余剰な架橋剤や溶剤がエラストマー予備成形体中に残留しやすく、架橋剤に由来する微粉末が落下したり、所謂アウトガスを放出する等して同様の装置汚染を引き起こすことがある。
【0007】
そこで、本発明は、従来の表面処理のような装置汚染を引き起こすことがなく、非粘着性に優れたエラストマー成形体を提供すること、並びにそのための有効かつ簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、架橋剤及び充填材を含まない未架橋のエラストマー成形体に、γ線を照射して全体を架橋させ、その後、電子線を照射して表面のみをさらに架橋させることを特徴とする非粘着性エラストマー成形体の製造方法、並びに前記製造方法により得られ、表層部及び内部がともに放射線架橋され、かつ、表層部が内部に比べて高度に架橋されていることを特徴とする非粘着性エラストマー成形体を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0010】
本発明において、未架橋エラストマーとしては、放射線によって架橋するものが全て対象となりえる。代表的なものとしては、ふっ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ふっ素系熱可塑性エラストマー等が挙げられるがこれらに制限されるものではない。
【0011】
本発明が適用されるエラストマー成形体は、半導体製造分野、医療分野、食品分野等の清浄さが要求される分野に使用されることが期待されるが、これらの分野ではエラストマー成形体自体に純粋性が要求される。例えば、半導体製造分野においてウエットプロセスで用いられる場合には、エラストマー成形体中の金属元素の溶出、ドライプロセスではプラズマによってエラストマー成形体が劣化し、充填剤等がパーティクルの要因となる問題がある。そのため、本発明が適用されるエラストマー成形体においてもこのような要求を満たしておくことは重要である。
【0012】
そのため、本発明では架橋剤や充填材等の配合材を使用しない未架橋エラストマーを対象とし、例えば、テトラフロロエチレン/プロピレン共重合体またはテトラフロロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデン共重合体の単体、あるいはそれらの混合物を用いることができる。
【0013】
上記の未架橋エラストマーは、先ず、γ線を照射して、成形体全体をほぼ均一に架橋させる。γ線は透過力が強く、飛程も長いので、未架橋エラストマー全体を架橋するために有効である。
【0014】
次いで、未架橋エラストマーに電子線を照射して、表層部のみ更に高度に架橋させる。電子線の照射により、数μm〜数百μm程度の厚みで表層部が高度に架橋され、結果として非粘着性が付与される。
【0015】
上記において、γ線、電子線の照射条件は、制限されるものではないが、総線量として共に5kGy〜500kGyが望ましく、好ましくは70kGy〜150kGyである。 放射線の線量はエラストマー成形体のシール材としての性質に影響を与える。照射線量が不足すると、架橋不足となり、成形体に充分な機械的強度、圧縮永久歪み等の物性を付与できなくなる。一方、照射線量が過大になると、エラストマー分子の崩壊反応が進行し、低分子化して機械強度等の物性が低下する。従って、照射線量が5kGy未満では架橋が進まず、圧縮永久歪み率が殆ど改善されない。また、500kGyを超えると伸び率に影響し、伸び率が100%〜110%程度に止まる。更に、機械的強度が低下してくる。
【0016】
また、放射線の照射雰囲気は、真空中、大気中、不活性ガス等が好ましい。γ線照射の場合、特に好ましくは、真空中、不活性ガス中等の酸素を極力排除した雰囲気である。照射雰囲気に酸素が存在すると架橋反応を阻害し、エラストマー成形体の機械的強度が不十分となったり、表面がベタ付くといった問題が発生するおそれがある。電子線照射の場合は、空気中でも問題はない。
【0017】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0018】
(実施例1)
ダイキン工業(株)製「ダイエルG912」(市販品;テトラフロロエチレン/ヘキサフロロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体)の原料ゴムを金型にセットし、熱プレスを用いて金型温度が170℃となるまで予熱した後、加圧して10分間程度保持した。次に熱プレスより金型を取り出し、金型温度60℃以下となるまで冷却した後、脱型して未架橋エラストマー成形体を得た。そして、この未架橋エラストマー成形体に、窒素雰囲気中で総線量120kGyのγ線を照射した後、電子線を加速電圧200keV、総線量80kGyで照射してエラストマー成形体を得た。
【0019】
(比較例1)
実施例1と同様に未架橋エラストマーを作成し、総線量120kGyのγ線を照射し、電子線は照射せずにエラストマー成形体を得た。
【0020】
(実施例2)
旭硝子(株)製「アフラス100H」(市販品;テトラフロロエチレン/プロピレン共重合体)の原料ゴムを金型にセットし、熱プレスを用いて金型温度が170℃となるまで予熱した後、加圧して10分間程度保持した。次に熱プレスより金型を取り出し、金型温度60℃以下となるまで冷却した後、脱型して未架橋エラストマー成形体を得た。そして、この未架橋エラストマー成形体に、窒素雰囲気中で総線量80kGyのγ線を照射した後、電子線を加速電圧200keV、総線量80kGyで照射してエラストマー成形体を得た。
【0021】
(比較例2)
実施例2と同様に未架橋エラストマー成形体を作成し、総線量80kGyのγ線を照射し、電子線は照射せずにエラストマー成形体を得た。
【0022】
(性能評価)
上記実施例1〜2、比較例1〜2で得た各エラストマー成形体について、次の項目で評価した。結果を表1にまとめて示す。
[硬さ] JIS K 6253に準じて硬さ試験を実施した。
[圧縮永久ひずみ(%)] JIS K 6262に準じた。 但し、条件は200℃×72時間である。
[Heリーク量(Pam3/sec)] エラストマー成形体をOリング状に切り出し、これを2枚のフランジで挟んで20%圧縮し、Oリングの内側にヘリウムガス1MPaを負荷した。そして、Oリング外部に漏洩するヘリウムガスをヘリウムリークディテクタで連続的に測定し、Oリングから漏洩するヘリウム量が一定になった時点をヘリウムリーク量とした。
[剥離力(N)] エラストマー成形体をOリング状に切り出し、これを2枚のアルミ板で挟んで30%圧縮し、この状態で200℃で22時間加熱する。加熱後、アルミ板ごと室温まで冷却し、アルミ板の剥離力を測定した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1より、実施例1および実施例2のエラストマー成形体は、電子線により表層部が高度に架橋されているため、剥離力が比較例1および比較例2のエラストマー成形体と比べてそれぞれ小さくなっており、非粘着性が向上したことがわかる。また、実施例1および実施例2のエラストマー成形体は、Heリーク量が比較例1および比較例2のエラストマー成形体と同等以下であり、優れたシール性も兼備していることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、非粘着性に優れたエラストマー成形体を容易に得ることができる。しかも、この非粘着性エラストマー成形体は、高度に架橋された部分が表面の数〜数百μm程度であるため、エラストマーそのものがもつ機械的性質を損なうことがない。また、表面改質であるので、従来の表面処理膜を形成する方式のように、表面処理膜が剥離して装置を汚染するおそれもない。更に、架橋成分や溶剤を使用しないためアウトガスを放出することもない。
Claims (3)
- 架橋剤及び充填材を含まない未架橋のエラストマー成形体に、γ線を照射して全体を架橋させ、その後、電子線を照射して表面のみをさらに架橋させることを特徴とする非粘着性エラストマー成形体の製造方法。
- 前記γ線及び電子線のそれぞれの照射線量が70kGy〜150kGyであることを特徴とする請求項1記載の非粘着性エラストマー成形体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法により得られ、表層部及び内部がともに放射線架橋され、かつ、表層部が内部に比べて高度に架橋されていることを特徴とする非粘着性エラストマー成形体。
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