JP4030081B2 - 建築物用の補強金具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物用の補強金具に係り、特に木造建築物の土台、柱、梁等の構造部材どうしの連結を補強する建築物用の補強金具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、木造建築物の耐震性についての関心が高まっており、構造部材である土台、柱、梁等の連結部分にも補強金具が取り付けられている。
この種の補強金具は、金具本体である金属板に釘や木ネジ等の固定部材が挿通される複数の挿通穴が形成されたものからなる。
【0003】
補強金具は連結すべき2つの木材をほぞ接ぎ等で予め連結した上で、金属板を連結した木材にまたがるように当接させ、釘等を挿通穴に挿通し、木材に食い込ませることにより金属板を2つの木材にまたがるように固定して、木材の連結を補強している。
この種の補強金具は、ステンレススチール等の金属によって構成され、一定以上の強度を必要とすることから、その厚さ寸法は2ミリメートル以上となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の補強金具は、その固定を釘や木ネジのみによって行うので、補強強度は自ずと限界がある。
また、従来の補強金具を木材に取り付けるには、補強金具を連結すべき2つの木材にまたがるように当接させ、片方の手で押さえながら釘を指で挟んで支持し、もう片方の手で金槌を使って釘を挿通穴から木材に打ち込んでいた。従って、金属板を正確な位置に取り付けるには、相当の熟練が必要であった。
【0005】
さらに、従来の補強金具は2ミリメートル以上の厚さ寸法となっているので、補強する柱等に凹部を形成し、この凹部内に補強金具を配置して、構造材に合板を張る邪魔にならないようにしている。即ち、従来の補強金具は2ミリメートル以上の厚さ寸法があることから、柱等の側面上にそのまま取り付けたのでは凸部が形成されてしまい、合板を平らに張ることができなくなってしまう。このため、柱等に補強金具を収容するための凹部をわざわざ形成しなくてはならず、手間のかかる作業を強いられている。一方、補強金具の厚さ寸法を単に小さくしただけでは、強度が低下するという不都合を生じることになる。
【0006】
本発明は上記した従来の問題点に鑑みて為されたものであり、従来の補強金具と比べて補強強度を飛躍的に向上させることができ、しかも、木材への補強金具の正確な位置決めを簡単なものとでき、さらに柱等に凹部を形成して収容することなく合板を張る邪魔とならないほど厚さ寸法が小さく、且つ十分な強度を有する建築物用の補強金具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明の建築物用の補強金具が開発された。
請求項1の発明は、木材に当接する金具本体と、前記金具本体に形成され前記金具本体を木材に取り付けるための固定部材が挿通される複数の挿通穴とを有し、前記金具本体を連結すべき複数の木材にまたがるように配置し、前記固定部材を前記挿通穴に挿通させた上で木材に打ち込むことにより前記金具本体を前記複数の木材に固定して、前記複数の木材の連結を補強する建築物用の補強金具において、前記金具本体の木材に当接する側に前記挿通穴に空洞部が連続する突出部を設け、前記突出部は前記金具本体に連続する、径寸法が先端にいくほど徐々に小さくなるベース部と、前記ベース部に連続して設けられ、円筒状で先端が尖った打ち込み部とによって構成されており、前記打ち込み部の先端は分かれて切れ目が形成されていることを特徴とする建築物用の補強金具である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した建築物用の補強金具において、金具本体の厚さ寸法は、0.3ミリメートルから1.5ミリメートルであることを特徴とする建築物用の補強金具である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した建築用の補強金具において、固定部材が金具本体の平坦な表面から突出しないようにするため固定部材の頭部を収容する収容凹部を金具本体に形成したことを特徴とする建築用の補強金具である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る建築物用の補強金具1を図1から図4に示した実施の形態に従って説明する。
補強金具1は、長方形の板状の金具本体3と、複数の挿通穴5と、突出部7とによって構成されている。
金具本体3の厚みは約0.5ミリメートルであり、素材はステンレス鋼である。
金具本体3には、10個の挿通穴5が金属本体3を貫通するように形成されている。挿通穴5は、金具本体3に互いに十分な間隔をおいて形成されている。
【0013】
符号4は、金具本体3の連結すべき複数の木材に当接する側の面、即ち裏面を示し、これと反対側の面は表面6を示す。
図2に詳細に示すように金具本体3の裏面4の挿通穴5の縁には、それぞれ突出部7が設けられている。突出部7はベース部8と、べース部8に連続して形成された打ち込み部10とによって構成されている。ベース部8は径寸法が先端にいくほど徐々に小さくなる円筒状に形成されている。打ち込み部10はほぼ円筒状で、その途中から4つに分かれ、その分かれた部分の先端は尖っている。また、突出部7の内部空間は空洞部9になっている。突出部7の一端は外方に向かって開放されており、他端は金具本体3と連結され一体になっている。即ち、突出部7の空洞部9は挿通穴5と連続している。
また、金具本体3の表面6側には、後述する木ネジ15の頭部15aを収容するための収容凹部30が形成されている。この収容凹部30は挿通穴5に連通している。
【0014】
突出部7の肉厚はベース部8が最も厚く、打ち込み部10の先端に行くに従って薄くなっている。従って、打ち込み部10は木材中に食い込み易くなっている。また、ベース部8は、金具本体3を補強するいわばリブのような役目を果たすことになる。
突出部7の素材は金具本体3の素材と同じであり、突出部7の突出高さは約2〜3ミリメートル程度である。
【0015】
次に、この補強金具の木材への取付方法について説明する。
連結すべき土台11と柱13は、ほぞ接ぎにより予め連結しておく(図3参照)。補強金具1を、土台11と柱13の連結部分にまたがるように、即ち5個の挿通穴5が土台11上に位置し、且つ残りの5個の挿通穴5が柱13上に位置するように土台11と柱13に当接させる。その際、突出部7が設けられた裏面4側が土台11と柱13に当接するようにする。
【0016】
そして、金槌で全ての突出部7を軽く打ち込むことにより、突出部7を土台11及び柱13に食い込ませる。それによって、補強金具1は土台11及び柱13の正確な位置に止められることになる。
突出部7には打ち込み部10が設けられているので、金槌で軽く叩くだけで、突出部7が土台11及び柱13に簡単に食い込む。また、打ち込み部10の先端は4つに分かれ、4つの切れ目12を有しているが、ベース部8が金具本体3との間に形成されているので、切れ目12から亀裂が生じるようなことがあっても、亀裂が金具本体3に伝播するのを防止することができる。
【0017】
次に、固定部材としての木ネジ15を挿通穴5から土台11及び柱13にねじ込む。木ネジ15は挿通穴5及び突出部7の空洞部9を貫通した後、土台11及び柱13に食い込んで、補強金具1を土台11及び柱13に固定する。
なお、木ネジ15の太さは、突出部7の空洞部9に極僅かな隙間を開けて挿通できる寸法に製作されている。
図4に詳細に示すように、木ネジ15の頭部15aは収容凹部30に収容されるので、頭部15aは表面6から突出しない。
【0018】
そして、図3に示すように合板16を土台11及び柱13に張る。上記したように補強金具1の金具本体3の厚さ寸法は0.5ミリメートルであり、しかも木ネジ15の頭部15aは収容凹部12に収容され金具本体3の表面6から突出しないので、厚さ寸法が2.0ミリメートル以上ある従来の補強金具と異なり、土台11及び柱13に凹部を形成し、この凹部に収容しなくても合板16を張る邪魔にならない。即ち、金具本体3の厚さ寸法は、合板16を張る支障にならない。一方、金具本体3には、リブの役目を果たす打ち込み部10(特に、ベース部8)が形成され補強されており、しかも打ち込む部10は土台11及び柱13に食い込んでいるので、従来の補強金具より厚さ寸法が小さくても十分な強度を有することになる。
【0019】
また、図3、図4に示すように、補強金具1は土台11と柱13とに当接し固定され、土台11と柱13との連結が補強される。土台11と柱13には、木ネジ15と突出部7とが、土台11と柱13に対してほぼ垂直方向に食い込んでいる。木ネジ15の一部は突出部7に納まっている。
【0020】
土台11と柱13の一方又は両方に、土台11と柱13との連結状態を破壊するような力、例えばせん断力が加えられたような場合には、突出部7には木ネジ15と同じように応力が生じる。更に、木ネジ15が曲がるのを阻止する、即ち木ネジ15の補強の役目も果たす。前述のように木ネジ15の太さは、空洞部9に極僅かな隙間を開けて挿通できる寸法に製作されているので、木ネジ15と突出部7との間にガタは殆どなく、突出部7と木ネジ15は連結状態を破壊しようとする力に対して、一体的に抗することになる。
【0021】
このように、補強金具1は、突出部7が土台11及び柱13に食い込み、しかも、突出部7によって木ネジ15自体も補強されて、連結状態を破壊しようとする力に一体的に抗することになるので、従来の補強金物に比べて補強強度を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
実験では、従来から用いられている、厚さ2.3ミリメートルのいわゆZ金物に比べて、約1.3倍の強度を発揮した。この実験は、土台11を固定して、柱13を引っ張り、どの程度の力で土台11と柱13とが分離するかを内容とするものである。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
例えば、実施の形態においては、金具本体として単純な長方形の板状のものを使用したが、連結態様に応じて、T字形やL字形等種々のものを使用できる。
【0024】
実施の形態においては、2つの木材を連結させているが、それ以上の数の木材を連結させるのにも、本発明の補強金具は使用できる。
本発明の補強金具は、折り曲げて使用してもよい。従って、補強金具が当接・固定される複数の木材の面を全て揃える必要はない。
また、突出部7の先端を尖った形状にしなくてもよい。さらに、上記実施の形態では、打ち込み部10は途中から4つに分かれているが、2つ又は3つ或いは5つ以上に分かれるように形成してもよい。
【0025】
補強金具の使用箇所に応じて、挿通穴を形成すればよく、金具本体に均一に設ける必要はない。
また、全ての挿通穴の縁に突出部を設ける必要はなく、一部の挿通穴の縁にのみ突出部を設けることも可能である。
更に、形成された挿通穴及び突出部の空洞部の全てに固定部材を挿通させる必要はない。従って、1種類の補強金具で、複数の種類の木造建築物の木材を連結するのに対応させることもできる。
【0026】
突出部は、実施の形態においては金具本体の挿通穴をバーリング加工して形成されているが、別途形成して挿通穴の縁上に接着させてもよい。
また、突出部は、円筒状である必要はなく、固定部材が挿通可能であればいずれの形状でもよい。
さらに、ベース部を設けないで、突出部を金具本体に直接形成することも可能である。
【0027】
上記実施の形態では、金具本体の厚さ寸法を0.5ミリメートルにしたが、本発は、これに限定されず、0.3ミリメートルから1.5ミリメートルの範囲内で適宜調節することができる。この場合に金具本体の厚さ寸法の変更に伴い打ち込み部の高さ寸法、ベース部の厚さ寸法等も適宜変更する。
【0028】
実施の形態においては、予め木材をほぞ接ぎして連結しておき、本発明の補強金具を補強用に用いているが、本発明の補強金具のみで木材を連結させてもよい。
また、補強金具の素材は、ステンレス鋼に限らず、亜鉛メッキ等の防錆処理が施された鉄等でもよい。固定部材は、木ネジに限らず釘等でもよい。
さらに、上記実施の形態では金槌を用いて補強金具を仮止めしたが、仮止めを行わず、木ネジ等によって固定してもよい。この場合でも打ち込み部は木ネジをねじ込んだり、釘を打ち込めば、木材に食い込む。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明の建築物用の補強金具にあっては、木材どうしの連結部分の補強強度を飛躍的に向上させることができるようになる。
しかも、本発明の建築物用の補強金具は、木材上の正確な位置に簡単に取り付けることができるようになる。
また、本発明の建築物用の補強金具は、木材に簡単に打ち込むことができ、さらに金具本体に亀裂が伝播することもない。
【0030】
また、本発明の建築物用の補強金具は、打ち込み部が形成されているので、十分な強度を保ちつつ、厚さ寸法を小さくすることができる。更に、固定部材の頭部を収容する収容凹部が金具本体に形成されているので、柱及び梁等に補強金具を収容するための凹部を形成せず、柱及び梁等の側面に取り付けても、合板を張る邪魔となうことがなく、柱等に凹部を形成する面倒な作業を省略することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る建築物用の補強金具の斜視図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る建築物用の補強金具を用いて補強した柱と梁の断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 補強金具
3 金具本体
4 裏面
5 挿通穴
6 表面
7 突出部
8 ベース部
9 空洞部
10 打ち込み部
11 土台
13 柱
15 木ネジ
30 収容凹部

Claims (3)

  1. 木材に当接する金具本体と、前記金具本体に形成され前記金具本体を木材に取り付けるための固定部材が挿通される複数の挿通穴とを有し、前記金具本体を連結すべき複数の木材にまたがるように配置し、前記固定部材を前記挿通穴に挿通させた上で木材に打ち込むことにより前記金具本体を前記複数の木材に固定して、前記複数の木材の連結を補強する建築物用の補強金具において、
    前記金具本体の木材に当接する側に前記挿通穴に空洞部が連続する突出部を設け、前記突出部は前記金具本体に連続する、径寸法が先端にいくほど徐々に小さくなるベース部と、前記ベース部に連続して設けられ、円筒状で先端が尖った打ち込み部とによって構成されており、前記打ち込み部の先端は分かれて切れ目が形成されていることを特徴とする建築物用の補強金具。
  2. 請求項1に記載した建築物用の補強金具において、金具本体の厚さ寸法は、0.3ミリメートルから1.5ミリメートルであることを特徴とする建築物用の補強金具。
  3. 請求項1又は2に記載した建築用の補強金具において、固定部材が平坦な金具本体の表面から突出しないようにするため固定部材の頭部を収容する収容凹部を金具本体に形成したことを特徴とする建築用の補強金具。
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