JP4029784B2 - 内燃機関のバルブクリアランス量推定装置 - Google Patents

内燃機関のバルブクリアランス量推定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のバルブクリアランス量推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特許文献1に開示されているように、バルブリフト量に応じた機械的バルブ開口面積、バルブの作動角などに基づいて吸入空気量を算出すること知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−180892号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、始動直後のエンジン冷機状態、減速時燃料カット運転後、高車速高負荷運転時、または高水温時においては、シリンダヘッド・動弁系部品の熱膨張(熱変形)に伴いバルブクリアランス量が変化し、これに伴ってバルブリフト量が変化するため、バルブの作動状態を正確に知るためには、実際のバルブクリアランス量を知ることが重要であった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、実バルブクリアランス量を精度良く算出することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのため本発明では、実バルブクリアランス量を、動弁系部品の熱変形によるバルブクリアランス変化量に基づいて算出する。また、動弁系部品の熱変形によるバルブクリアランス変化量を、動弁系部品のバルブ傘部の径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量と、動弁系部品の軸方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量とに分離して算出する。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、熱変形によるバルブクリアランスの変化量を考慮して、実バルブクリアランス量を精度良く推定できるため、エンジンの各種制御に反映させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、内燃機関のバルブクリアランス量推定装置の構成図である。
【0009】
エンジン1の各気筒のピストン2により画成される燃焼室3には、点火プラグ4を囲むように、吸気バルブ5と排気バルブ6とを備えている。吸気バルブ5及び排気バルブ6のリフト特性(開閉時期)は、吸気側及び排気側に設けられたバルブタイミング可変機構の可変動弁ソレノイド22,23により、カム軸に対するカム24,25の位相を変化させることで、バルブタイミングの制御が可能である。
【0010】
吸気通路7には、電子制御スロットル弁19が設けられており、これにより吸入空気量が制御される。燃料の供給は、吸気通路7に気筒毎に(または各燃焼室3に直接臨ませて)設けたインジェクタ20によりなされる。燃焼室3内で混合気は点火プラグ4により点火されて燃焼し、排気通路8へ排出される。
【0011】
ここで、電子制御スロットル弁19、インジェクタ20、点火プラグ4(パワトラ内蔵点火コイル21)、可変動弁ソレノイド22,23の作動は、エンジンコントロールユニット(ECU)40により制御される。
【0012】
これらの制御のため、ECU40には、各種センサからの信号が入力されている。
クランク角センサ14は、エンジン回転に同期してクランク角信号を出力し、これによりクランク角位置と共にエンジン回転数を検出可能である。そして、カム角センサ16,17は、吸気バルブ5及び排気バルブ6のカム角を検出可能であり、これにより可変動弁ソレノイド22,23の作動状態を検出可能である。
【0013】
そして、吸気通路7にて吸入新気量を検出するエアフロメータ9、電子制御スロットル弁19下流にて吸気圧力を検出する吸気圧力センサ10、排気通路7にて排気圧力を検出する排気圧力センサ11、排気通路8にて排気温度を検出する排気温度センサ12、排気通路8にて排気中に含まれる酸素濃度を検出するO2センサ(酸素センサ)13、エンジン1の冷却水温度を検出する水温センサ15、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ18、エンジン1の振動(特にノッキング振動)を検出するノックセンサ29の出力信号もECU40に入力され、これらの状態を検出可能である。なおノックセンサ29は、吸気バルブ5及び排気バルブ6の動作振動(着座振動など)を検出可能である。
【0014】
図2は、エンジン1の主要部を示す断面図である。
吸気バルブ5及び排気バルブ6は、それぞれシリンダヘッド27に摺動可能に取り付けられている。そして、バルブ5,6の一端はバルブ傘部5a,6aがバルブシート30,31に着座可能であり、他端にはバルブリフタ33,34が取り付けられ、このバルブリフタ33,34がバルブスプリング28,29によりカム24,25に向けて付勢されている。
【0015】
ここで、燃焼室3において燃焼が行われると、動弁系部品(吸気バルブ5、排気バルブ6など)及びシリンダヘッド27が熱膨張により変形する。以下、吸気バルブ5及び排気バルブ6の熱変形によるバルブクリアランス(バルブ5,6の端部のバルブリフタ33,34と、カム(ベースサークル)24,25との間隔)の変形量を算出する考え方について、図3を用いて説明する。
【0016】
図3は、吸気バルブ5及び排気バルブ6の熱変形によるバルブクリアランス変化量を算出するための考え方を示す概略図である。なお、吸気バルブ5及び排気バルブ6についてのバルブクリアランス変化量の算出については、同じ処理をするため、ここでは吸気バルブ5について説明する。
【0017】
吸気バルブ5は、傘部5aと軸部5bとで大別構成されている。バルブ5の傘部5aは、バルブシート30に着座しているため、燃焼室3において燃焼が行われると、主に傘方向(径方向)に熱膨張されて変形する。傘部5aが熱膨張すると、その熱変形量分だけ傘方向に変形し、バルブシート30と接する傘部5aの部分が図示の下向きに押し出されるため、バルブクリアランス量が増加することとなる。
【0018】
一方、バルブ5の傘部5aからの熱伝導により軸部5bに熱が伝導されるため、軸部5bが軸方向に熱膨張されて変形する。軸部5bが熱膨張すると、その熱変形量分だけカム24に向かって変形するため、クリアランス量が減少することとなる。
【0019】
図4は、バルブクリアランス量推定装置の制御構成図である。
図示の通り、先ず、バルブ傘方向代表温度算出手段によりバルブ傘方向(径方向)の代表温度TdI,TdEを算出する。一方、バルブ軸方向代表温度算出手段によりバルブ軸方向の代表温度TaxI,TaxEを算出する。なお、TdIは吸気バルブ5の傘方向の代表温度、TdEは排気バルブ6の傘方向の代表温度、TaxIは吸気バルブ5の軸方向の代表温度、TaxEは排気バルブ6の軸方向の代表温度を示している。
【0020】
次に、バルブ傘方向代表温度算出手段が行う吸気バルブ5及び排気バルブ6の代表温度TdI,TdEの算出について、図5のバルブ代表温度の算出フローチャートを用いて説明する。なお、吸気バルブ5及び排気バルブ6について同じ処理を行うため、吸気バルブ5の代表温度TdIの算出についてのみ述べる。
【0021】
ステップ1(図では「S1」と示す。以下同様)では、スタータスイッチがON(STSW=1)であるか否かを判断する。スタータスイッチがON(STSW=1)の場合には、ステップ2へ進み、吸気バルブ5の傘方向の温度TdIを水温Twとして算出する(TdI=Tw)。一方、スタータスイッチがOFF(STSW=0)の場合には、ステップ3へ進む。
【0022】
ステップ3では、燃料カット状態(例えば、アクセルを踏んだ状態から減速のためにアクセルを離した状態など)であるか否かを判断する。燃料カット状態であるか否かの判断にあっては、これは、アクセル開度センサ18、燃料噴射パルス、または空燃比などの信号に基づいて判断する。燃料カット状態である場合には、ステップ4へ進み、吸気バルブ5の温度上昇分平衡温度(水温を基準としている)TdIhを0とする(TdIh=0)。これは、傘方向のバルブ温度は、ほぼ水温Twに向けて収束し、温度上昇しないためである。一方、燃料カット状態でない場合には、ステップ5へ進む。
【0023】
ステップ5では、図6に示すマップから温度上昇分平衡温度TdIhを算出する。
図6は、温度上昇分平衡温度算出マップであり、横軸はエンジン回転数Ne、縦軸は発熱量Qを示している。なお、平衡温度TdIhは、排気温度と相関が高いため、排気温度センサ12の信号に基づいて算出されたマップにより算出してもよい。
【0024】
図の矢印の通り、回転数Ne、発熱量Qが高くなれば、温度上昇分平衡温度TdIhも高くなる。なお、温度上昇分平衡温度TdIhは、水温Twからの温度上昇量である。
【0025】
ここで、発熱量Qは、低位発熱量(発熱率)QLと燃料噴射量Tiとの積により、次式により算出する。
Q=QL×Ti
低位発熱量QLは、目標燃焼当量比TFBYAの変化によるリッチ・リーン時の燃焼生成物それぞれの低位発熱量変化のトータル分であり、図7に示すテーブルにより算出する(但し、NOx分は無視する)。なお、目標燃焼当量比TFBYAは、理論空燃比(ストイキ)を14.7とすると、目標燃焼空燃比より次式により表され、目標燃焼空燃比がストイキのときに1となる。
【0026】
TFBYA=14.7/目標燃焼空燃比
図7は、低発熱量算出テーブルであり、横軸は目標燃焼当量比TFBYA、縦軸は低位発熱量QLを示している。なお、図示の通り、目標燃焼当量比TFBYAがストイキよりリッチになると、未燃焼成分(COなど)が増加して発熱量が減少するため、低位発熱量QLが減少する。
【0027】
再度図5を参照して、ステップ6では、温度変化割合Aを図8のマップにより算出する。
図8は、温度変化割合算出マップであり、横軸はエンジン回転数Ne、縦軸は発熱量Qを示している。なお、温度変化割合Aは、排気温度と相関が高いため、排気温度センサ12の信号に基づいて算出されたマップにより算出してもよい。
【0028】
図の矢印の通り、回転数Ne、発熱量Qが高くなれば、温度変化割合Aの値も大きくなる。
ステップ7では、水温Twからの温度上昇量VTdIを次式から算出する。
【0029】
VTdI=A×(TdIh−TdIz)+TdIz
ここで、TdIzはバルブ傘方向の温度の前回値である。平衡温度TdIhと前回値TdIzとの差に温度変化割合A(0≦A≦1)を積算することで、前回値TdIzからの温度上昇分を算出する。すなわち、この式は一次遅れの式であり、平衡温度TdIhに対して温度上昇量VTdIを一次遅れで追従させるものである。
【0030】
ステップ8では、次式に示す通り、吸気バルブ5の傘方向代表温度TdIを、水温Twと、温度上昇量VTdIとを加算することで算出する。これは平衡温度TdIh、前回値TdIzは、いずれも水温Twからの温度上昇量であるためである。
【0031】
TdI=Tw+VTdI
次に、図4に示すバルブ軸方向代表温度算出手段のバルブ5,6の軸方向代表温度TaxI,TaxEの算出について説明する。
【0032】
バルブ5,6の軸方向の温度は、バルブ傘部5a,6aからの熱伝導を伴うため、図3に示すように、バルブ5,6を軸方向に均等分した各部位(x=0,1,2,…)の1つ前(バルブ傘側)の部位温度から時間経過(t=0,1,2,…)による温度変化を考える必要がある。
【0033】
ここで、前述により算出した傘方向の代表温度TdI,TdEを軸方向の基準温度(x=0の部位における温度)とする。そして、基準温度の一次遅れから時間変化に対する軸方向の各部位の温度変化(T=0,1,2,…)を以下の式により算出する。
【0034】
T(x+Δx,t+Δt)=−(qΔx/λ)+T(x,t+Δt)
ここで、qは熱流速(熱伝導量)であり、単位面積当たり単位時間に移動する熱量の大きさを示している。λは熱伝導率、すなわち熱の伝わり易さを示す比例定数であり、バルブの材料の種類及びその状態によって決まる物性値である。Δxは、バルブ軸方向に等分する間隔である。Δtは、経過時間である。
【0035】
上記で時間変化に対する各部位の温度を算出し、所定時間、例えば10秒前までのデータをRAMに読み込み、平均値を演算する。この演算結果をバルブ軸方向の代表温度TaxI,TaxEとする。
【0036】
ここで再度図4を参照して、熱膨張係数算出手段は、バルブ傘方向代表温度TdI,TdE及びバルブ軸方向代表温度TaxI,TaxEに基づいて、バルブの熱膨張係数THECXdI,THECXdE,THECXaxI,THECXaxEを算出する。なお、THECXdIは吸気バルブ5の傘方向の熱膨張係数、THECXdEは排気バルブ6の傘方向の熱膨張係数、THECXaxIは吸気バルブ5の軸方向の熱膨張係数、THECXaxEは排気バルブ6の軸方向の熱膨張係数を示している。
【0037】
熱膨張係数は、温度が1℃上昇したときにバルブがどのくらい膨張するかを表す定数であり、バルブ温度と材質とに相関が高い。熱膨張係数は温度、材質により値が決まっているため、代表点2点による直線近似式(図9参照)に、上記において算出した傘・軸方向のバルブ代表温度TdI,TdE,TaxI,TaxEを入力することで、バルブ代表温度に対する熱膨張係数を算出する。
【0038】
バルブ傘→軸方向換算熱変形量算出手段は、水温Twと、熱膨張係数算出手段により算出した値とに基づいて、バルブ傘方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量(バルブ傘方向の熱変形量)を軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量(バルブ軸方向の熱変形量)VCLRdI,VCLRdEに換算する。
【0039】
ここで、バルブ傘方向の熱変形量は、バルブ5,6の傘部5a,6aとバルブシート30,31との接触角度に応じて、燃焼室側に突き出す量、すなわちバルブクリアランス量を増加させる量となるため(図3参照)、その角度を考慮し、軸方向の熱変形量として考える。バルブ傘部5a,6aとバルブシート30,31との接触角度をθとして、バルブ傘部5a,6aの傘方向長さ(傘部5a,6aの直径)VdI♯,VdE♯、バルブ傘方向代表温度TdI,TdE、材質に基づいた熱膨張係数THEXCdI,THEXCdE、バルブ傘方向代表温度と水温との差(TdI−Tw,TdE−Tw)の積により以下の式に示すようにして、傘方向→軸方向の熱変形量VCLRdI,VCLRdEをそれぞれ算出する。なお、バルブ傘部とバルブシートとの接触角度θを45度(tanθ=1)として、動弁系部品の熱変形量を簡略的に計算することが好ましい。
【0040】
VCLRdI=1/2×tanθ×VdI♯×THEXdI×(TdI−Tw)
VCLRdE=1/2×tanθ×VdE♯×THEXdE×(TdE−Tw)
また、バルブ軸方向熱変形量算出手段は、水温Twと、熱膨張係数算出手段により算出した値とに基づいて、バルブ軸部5b,6bの熱変形によるバルブクリアランスの変化量(バルブ軸部5b,6bの熱変形量)VCLRaxI,VCLRaxEを算出する。なお、VCLRaxIは吸気バルブ軸部5bの軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量、VCLRaxEは排気バルブ軸部6bの軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量を示している。
【0041】
バルブ軸部熱変形量VCLRaxI,VCLRaxEは、バルブ5,6の軸部5b,6bの熱膨張した量であり、そのままクリアランス量を狭める量となる(図3参照)。従って、バルブ軸部熱変形量VCLRaxI,VCLRaxEは、次式に示す通り、バルブ軸部5b,6bの軸方向長さ(バルブ軸部5b,6bの長さ)VaxI♯,VaxE♯、バルブ軸方向代表温度VaxI,VaxE、材料に基づいた熱膨張係数THEXCaxI,THEXCaxE、バルブ軸方向の代表温度と水温Twとの差(TaxI−Tw,TaxE−Tw)の積により算出される。
【0042】
VCLRaxI=VaxI♯×THEXCaxI×(TaxI−Tw)
VCLRaxE=VaxE♯×THEXCaxE×(TaxE−Tw)
そして、バルブ熱変形量算出手段は、バルブ傘→軸方向換算熱変形量算出手段により算出したバルブ傘部5a,6aの径方向の熱変形によるバルブクリアランス変形量(バルブ傘→軸方向換算熱変形量)VCLRdI,VCLRdEと、バルブ軸方向熱変形量算出手段により算出したバルブ軸部5b,6bの軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量(バルブ軸部5b,6bの熱変形量)VCLRaxI,VCLRaxEとの差により、バルブ5,6の熱変形によるバルブクリアランス変化量(バルブ熱変形量)VDCLRI,VDCLREを算出する。
【0043】
VDCLRI=VCLRdI−VCLRaxI
VDCLRE=VCLRdE−VCLRaxE
ここで差(VCLRdI−VCLRaxI,VCLRdE−VCLRaxE)により算出するのは、軸方向に影響する量、すなわちバルブ傘→軸方向換算熱変形量VCLRdI,VCLRdEは、バルブシート30,31とバルブ5,6との接触角度θに応じて燃焼室側に突き出す量であり、バルブクリアランスを広げる量となる一方、バルブ軸部熱変形量VCLRaxI,VCLRaxEは正反対、すなわちバルブクリアランスを狭める量となるためである(図3参照)。
【0044】
また、シリンダヘッド熱変形量算出手段は、水温Twが平衡状態、すなわちシリンダヘッド27等の各部品が水温Twと等しい状態にある場合において、シリンダヘッド27の熱変形によるバルブクリアランス変化量(実バルブクリアランス量に与える影響を補完する量)VCLRSTDI,VCLRSTDEを算出する。なお、VCLRSTDIは水温平衡状態における吸気バルブ5の軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量VDCLRIに与える補完量、VCLRSTDEは水温平衡状態における排気バルブ6の軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量VDCLREに与える補完量を示している。
【0045】
ここで、クーラント(エンジン1の冷却水)と接する、又は近接しているシリンダヘッド27、バルブシート30,31、カムシャフトベースサークル半径部と、バルブ5,6とは、水温平衡時には、水温Twとの温度差が小さいため、熱変形量は図10に示すように、常温(25℃)と温間時(80℃)とにおける水温平衡時の設計値に対して、水温により補間してシリンダヘッド27の熱変形によるバルブクリアランス変化量VCLRSTDI,VCLRSTDEを算出する。
【0046】
図10は、水温平衡状態のクリアランス量算出マップであり、横軸は水温、縦軸は吸気バルブ5及び排気バルブ6の各基準クリアランス量(mm)を示している。なお図10においては、初期クリアランス量を0として示しており、これにより算出される水温平衡状態のバルブクリアランス変化量は、設計値+熱変形量となる。
【0047】
また、バルブクリアランス量算出手段は、次式に示す通り、バルブ熱変形量算出手段及びシリンダヘッド熱変形量算出手段の各算出値を加算して、バルブクリアランス量VCLRI,VCLREを算出する。なお、VCLRIは吸気バルブ5のバルブクリアランス量、VCLREは排気バルブ6のバルブクリアランス量をそれぞれ示している。
【0048】
VCLRI=VDCLRI+VCLRSTDI
VCLRE=VDCLRE+VCLRSTDE
なお、初期クリアランス量を考慮する場合には、バルブクリアランス量VCLRI,VCLREの算出の式において、初期クリアランス量算出マップ等により算出した値を加えて算出する。
【0049】
次に、バルブクリアランス量VCLRI,VCLREを算出するための、燃焼室3近傍の各部位の温度算出について、図11を用いて説明する。
図11は、燃焼室3に面する各部品の温度推定制御構成図である。
【0050】
図示の通り、吸気バルブ温度算出手段により前述の吸気バルブ5の温度を算出する。ここでは、バルブ温度として前述の傘方向代表温度TdI,TdEを用いる。
【0051】
そして、吸気バルブ温度算出手段により算出した吸気バルブ5の温度TdI,TdEに基づいて、排気バルブ温度算出手段、プラグ周り壁温度算出手段、シリンダ壁温度算出手段、ピストン冠面温度算出手段、及びシリンダヘッド壁温度算出手段が各部位(燃焼室3に面する部品)の温度をそれぞれ算出する。
【0052】
図12は、バルブ5,6の軸方向代表温度TaxI,TaxEをバルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度TdI,TdEから算出する制御構成図である。
バルブ傘方向代表温度算出手段は、回転数Ne、目標燃焼当量比TFBYA、水温Tw、及び吸入空気量に基づいてバルブ5,6の平衡温度TdIh,TdEhを算出する。これは、水温Tw等から平衡温度TdIh,TdEhを算出することにより、発熱量変化、燃焼室壁に付着した燃料の気化変化、排気温度やクーラント流量変化の影響を考慮するためである。そして、平衡温度TdIh,TdEh用いてバルブ傘方向(径方向)の代表温度TdI,TdEを算出する。
【0053】
なお、バルブ傘方向代表温度TdI,TdEは、図8に示すように、エンジン回転数Neと発熱量(または吸入空気量)から算出した温度変化量(時定数)Aを用いて算出してもよい。これによりエンジン回転数Ne、吸入空気量から温度変化割合を算出し、発熱量変化やクーラントの流量変化の影響を考慮してバルブ傘方向代表温度TdI,TdEを算出する。
【0054】
そして、バルブ軸方向代表温度算出手段は、バルブ傘方向の代表温度TdI,TdEに基づいて、バルブ5,6の軸方向の代表温度TaxI,TaxEを算出する。具体的には、バルブ傘方向の代表温度TdI、TdEに補正係数をかけることでバルブ軸方向の代表温度TaxI,TaxEを算出する。
【0055】
なお、バルブ傘方向の代表温度TdI、TdEを基準温度として、これに補正係数をかけることで動弁系部品(バルブ5,6)の他の部位の温度、例えば図3に示すように軸方向の均等分した各部位(x=0,1,2,3…)の温度を推定して、これからバルブ軸方向の代表温度TaxI,TaxEや他の部位の平衡温度を算出してもよい。このようにしてバルブ傘方向代表温度TdI、TdEから軸方向の熱伝導による温度変化を考慮した軸方向代表温度TaxI,TaxEを推定することが実現される。一箇所の温度(バルブ傘方向の代表温度TdI、TdE)から複数の箇所の温度を推定することで、ECU40のメモリ容量(ROM容量)を削減すると共に、測温センサを省略してコストを削減する。
【0056】
ここで、バルブ5,6は吸気と排気、傘方向と軸方向ではそれぞれ温度及び温度応答が異なるため、それぞれに分けて説明する。以下、傘方向(径方向)のバルブ代表温度TdI,TdEを前述の図5に示す算出フローチャートに基づいて説明する。なお、図5と同じ処理については、詳細な説明を省略する。
【0057】
ステップ1では、スタータスイッチがONであるか否かを判断し、ON(STSW=1)であれば、ステップ2へ進み、OFF(STSW=0)であれば、ステップ3へ進む。
【0058】
ステップ3では、燃料カット状態であるか否かを判断し、燃料カット状態であれば、ステップ4へ進む。一方、燃料カット状態でない場合には、ステップ5へ進み、図13に示すマップから温度上昇分平衡温度TdIh,TdEhを算出する。
【0059】
図13は、バルブ平衡温度算出テーブルであり、横軸はバルブに留まる熱量QvI,QvE、縦軸はバルブ平衡温度TdIh,TdEhを示している。なお、排気バルブ6の温度は、排気温度と相関が高いため、排気温度センサ等により検出される温度から平衡温度TdIh,TdEhを算出してもよい。
【0060】
ここで、バルブに留まる熱量QvI,QvEの算出について説明する。なお、QvIは吸気バルブ5に留まる熱量、QvEは排気バルブ6に留まる熱量を示している。
【0061】
吸気バルブ5の温度は、燃焼室3からバルブ5,6に入ってくる熱量Qin、クーラント(エンジン1の冷却水)に出ていく熱量Qout、バルブ5に付着した燃料が気化して出ていく熱量Qfに関係がある。このため、バルブ5,6に留まる熱量Qvは、熱量Qinから熱量Qout及び熱量Qfを差し引いて、次式に示すようにして算出する。
【0062】
Qv=Qin−Qout−Qf
但し、排気バルブ6の温度は、バルブに付着した燃料が気化して出ていく熱量Qf分がないため、次式に示す通り、バルブに入ってくる熱量Qinから出ていく熱量Qoutを差し引いて算出することができる。
【0063】
Qv=Qin−Qout
ここで、バルブに入ってくる熱量Qinを次式により算出する。
Qin=Ti×(4×CO2×Hf+28×CO×(Hf−Hco))/(44×CO2+28×CO+16×HC)×K×L×(Tg−TdIz)×(Ne/2)×60
なお、この式は吸気バルブ5についての式であるが、排気バルブ6について算出する場合には、(Tg−TdIz)を(Tg−TdEz)に置き換えて算出する。
【0064】
ここで、(4×CO2×Hf+28×CO×(Hf−Hco))/(44×CO2+28×CO+16×HC)は、目標燃焼当量比TFBYAの変化によるリッチ・リーン時の低位発熱量Hf(ストイキ時の燃料の低位発熱量)、Hco(リッチ時のみ発生するCO分の低位発熱量)変化トータル分を考慮している。Kは補正係数であり、リーン側で燃焼ガスの比熱が変化する分の発熱量が小さくなるため、図14に示すテーブルにより算出する。図14は、発熱量変化係数算出テーブルであり、横軸は目標燃焼当量比TFBYA、縦軸は発熱量変化係数Kを示している。また前述の式のLは、熱伝達率×有効面積に相当する係数、すなわち自然対流と平均ピストンスピード(エンジン回転数Neに比例する)による強制対流と、熱伝達の有効面積を考慮した係数で、図15に示す算出マップにより予め設定しておく。
【0065】
図15は、熱伝達率×有効面積に相当する係数Lの算出マップであり、横軸は回転数Ne、縦軸は基本燃料噴射量Tpを示している。
図の矢印の通り、係数Lは回転数Ne、基本燃料噴射量Tpが高いほど大きい値となる。
【0066】
なお、前述の式の(Tg−TdIz),(Tg−TdEz)は、燃焼ガス温度Tgと傘方向バルブ代表温度前回値TdIz,TdEzとの差である。
ここで、クーラントに出ていく熱量Qoutは、バルブ5,6とクーラントとの間の熱伝達なので、次式のようにして算出可能である。
【0067】
Qout=(TaxIz−Tw)×Ne×M
Qout=(TaxEz−Tw)×Ne×M
なお、TaxIzは吸気バルブ5の軸方向バルブ代表温度の前回値、TaxEzは排気バルブ6の軸方向バルブ代表温度の前回値を示している。
【0068】
ここで、本来の温度差はバルブ温度と水温との差であるが、ここでは軸方向バルブ代表温度の前回値TaxIz,TaxEzと水温Twとの差により算出する。なお、Mは係数であり、有効面積と冷却水の熱容量とから設定する値である。回転数Neは、クーラントの流量に比例する。
【0069】
ここで、バルブに付着した燃料が気化する際に奪われる熱量Qfを算出する。熱量Qfは、バルブに付着した燃料の量MFV、付着した燃料のうち気化した燃料の割合YO、燃料の物性で決まる気化潜熱CLによって算出できる。
【0070】
Qf=MFV×YO×CL
ここで、再度図5を参照して、ステップ6では、温度の時定数に相当する温度変化割合AI,AEを算出する。ここでは、ステップ4で算出したバルブに留まる熱量QvI,QvEにより、図16に示すテーブルを用いて温度変化割合AI,AEを算出する。
【0071】
図16は、バルブ温度変化割合算出テーブルであり、横軸はバルブに留まる熱量QvI,QvE、縦軸はバルブ温度変化割合AI,AEを示している。
なお、排気バルブ6については、平衡温度TdEhと同様に、排気温度との相関が高いため、排気温度から温度変化割合AI,AEを算出してもよい。
【0072】
ステップ7では、水温からの傘方向バルブ温度上昇量VTdI,VTdEを算出する。平衡温度TdIh,TdEhと、温度変化割合AI,AEとにより、水温Twからの傘方向(径方向)のバルブ温度上昇量VTdI,VTdEを次式により算出する。
【0073】
VTdI=AI×(TdIh−VTdIz)+VTdIz
VTdE=AE×(TdEh−VTdEz)+VTdEz
この式は一次遅れの式であり、平衡温度VdIh,VdEhに対して、バルブ温度上昇量VTdI,VTdEを一次遅れで追従させるものである。
【0074】
ステップ8では、傘方向バルブ代表温度TdI,TdEを、次式に示す通り、水温Twと、傘方向バルブ温度上昇量VTdI,VTdEとを加算することにより算出する。これは、傘方向バルブ温度上昇量VTdI,VTdEは、水温Twからの温度上昇であるためである。
【0075】
TdI=Tw+VTdI
TdE=Tw+VTdE
次に、軸方向に均等分した各部位でのバルブ温度Tax(x,t)の算出について図3を用いて説明する。
【0076】
バルブ軸方向へは熱伝導を伴うため、軸方向に均等分した各部位(x=0,1,2,…)の1つ手前の部位での時間経過(t=0,1,2,…)による温度変化を考える。
【0077】
そして、前述のステップ8で算出した傘方向バルブ代表温度TdI,TdEを軸方向の基準温度(x=0)とする。
Tax(0,0)=Tax(1,0)=Tax(2,0)=…=Tax(x,0)
軸方向に均等分した各部位でのバルブ温度Tax(x,t)は、バルブ傘方向代表温度TdI,TdEに対して一次遅れであり、軸方向にそれぞれ時間変化に対して温度変化するものとして、Tax(x,t)を次式により算出する。
【0078】
Tax(x,t)=−(qΔx/λ)+Tax(x−1,t−1)
ここで、qは熱流速であり、単位面積当たり単位時間に移動する熱量の大きさを示している。λは熱伝導率、すなわち熱の伝わり易さを示す比例定数であり、バルブの材質の種類及び状態によってきまる物性値である。
【0079】
次に、軸方向のバルブ代表温度TaxI,TaxEを算出する。軸方向のバルブ代表温度の算出については、軸方向に均等分した各部位でのバルブ温度Tax(x,t)を用いて、所定時間前(例えば10秒前)までのデータをRAMに読み込み、次式により算出する。
【0080】
【数1】
Figure 0004029784
ここで、iはバルブ5,6の軸部5b,6bを軸方向に等分した数である。
【0081】
また、軸方向のバルブ代表温度TaxI,TaxEを算出する際に、次式に示すように、傘方向(径方向)のバルブ代表温度TdI,TdEに所定の係数(補正係数)Pを乗算して軸方向の代表温度TaxI,TaxEを算出してもよい。
【0082】
TaxI=TdI×P
TaxE=TdE×P
ここでは、吸気バルブ5若しくは排気バルブ6の温度を推定しているが、バルブの平衡温度、温度変化割合(時定数)に係数をかけ、燃焼室に面する複数の部位の平衡温度、温度変化割合を求め、一次遅れにより算出してもよい。例えば、吸気バルブ5の傘方向平衡温度TdIhと温度変化割合Aとにそれぞれ係数をかけ、シリンダ壁温Tcの平衡温度Tchと温度変化割合Bとを算出してもよい。
【0083】
このようにして算出したシリンダ壁の平衡温度Tch、温度変化割合B、及びシリンダ壁の前回値温度Tchzから、一次遅れによりシリンダ壁温Tcを次式により算出することもできる。
【0084】
Tc=B×(Tch−Tchz)+Tchz
本実施形態によれば、実バルブクリアランス量VCLRI,VCLREを、シリンダヘッド27に対する動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の熱変形によるバルブクリアランス変化量に基づいて算出する。このため、動弁系部品及びシリンダヘッド27の熱変形によってバルブクリアランス量が変化した場合においても、変化後のバルブクリアランス量VCLRI,VCLREを精度良く算出でき、エンジン1の各種制御に反映させることができる。
【0085】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の熱変形によるバルブクリアランス変化量VDCLRI,VDCLREを、動弁系部品のバルブ傘部5a,6aの径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量VCLRdI,VDCLRdEと、動弁系部品の軸方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量VCLRaxI,VCLRaxEとに分離して算出する。このため、軸方向と傘方向(径方向)とでは、温度、温度応答、クリアランス量への影響がそれぞれ異なるので、2方向に分離して算出することでバルブ軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量VDCLRI,VDCLREを精度良く算出することができる。
【0086】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)のバルブ傘部5a,6aの径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量VCLRdI,VDCLRdEは、バルブ傘部5a,6aとバルブシート30,31との接触角度θに基づいて算出する。このため、バルブ傘方向の熱変形量を軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量VCLRdI,VCLRdEに換算することができる。
【0087】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)のバルブ傘部5a,6aの径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量VCLRdI,VDCLRdEは、接触角度θを45度として計算する。このため、傘方向の熱変形量を軸方向の熱変形によるバルブクリアランス変化量VCLRdI,VCLRdEに換算する際の計算負荷を減少することができる。
【0088】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)のバルブ傘部5a,6aの径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量VCLRdI,VDCLRdEと、動弁系部品の軸方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量VCLRaxI,VCLRaxEとは、それぞれ別々の代表温度(TaxI,TaxE、TdI,TdE)に基づいて算出する。このため、傘方向の熱変形は燃焼室3の燃焼からの熱を受ける一方、軸方向の熱変形は傘部5a,6aからの熱伝導によるものであり、別々に算出することで精度良くバルブクリアランス量VCLRI,VCLREを算出できる。
【0089】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の軸方向の代表温度(TaxI,TaxE)は、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度(TdI,TdE)から推定する。このため、一箇所の温度(バルブ傘方向の代表温度TdI、TdE)から容易にバルブ軸方向の代表温度(TaxI,TaxE)を推定でき、ECU40のメモリ容量(ROM容量)を削減すると共に、測温センサを省略してコストを削減することができる。
【0090】
また本実施形態によれば、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度(TdI,TdE)は、エンジン水温Tw、吸入空気量、目標燃焼当量比TFBYA及びエンジン回転数Neから算出したバルブ平衡温度TdIh,TdEhを用いて算出し、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の他の部位の温度(x=0,1,2,3…の部位における温度T0,T1,T2,T3…)は、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度TdI,TdEに補正係数をかけることで算出する。このため、発熱量変化、燃焼室壁に付着した燃料の気化変化、排気温度やクーラント流量変化の影響を考慮でき、平衡温度TdIh,TdEh用いてバルブ傘方向(径方向)の代表温度TdI,TdEを容易に算出できる。
【0091】
また本実施形態によれば、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度TdI,TdEは、吸入空気量及びエンジン回転数Neから算出した温度変化割合Aを用いて算出する。このため、発熱量変化やクーラントの流量変化の影響を考慮することができ、軸方向代表温度TaxI,TaxEを容易に算出できる。
【0092】
また本実施形態によれば、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度TdI,TdEは、エンジン水温Tw、吸入空気量、目標燃焼当量TFBYA比及びエンジン回転数Neから算出したバルブ平衡温度TdIh,TdEhに対して、エンジン水温Twからの温度上昇量VTdIが時間遅れで追従し(ステップ7)、エンジン水温Twからの温度上昇量VTdIとエンジン水温Twとを加算(Tw+VTdI)することで算出する(ステップ8)。このため、バルブ軸方向代表温度TaxI,TaxEを算出するための基準となるバルブ傘方向温度TdI,TdEを推定できる。
【0093】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の軸方向の代表温度TaxI,TaxEは、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度TdI,TdEを基準温度として、動弁系部品5,6を軸方向に均等分した各部位の温度(x=0,1,2,3…の部位における温度T0,T1,T2,T3…)の平均値により算出する。このため、傘方向の代表温度TdI,TdEを基準温度とすることで、軸方向の熱伝導による温度変化を考慮した軸方向代表温度TaxI,TaxEを推定できる。
【0094】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の軸方向の代表温度TaxI,TaxEは、バルブ傘部5a,6aの径方向の代表温度TdI,TdEに補正係数Pを乗算することで算出する。このため、バルブ軸方向代表温度TaxI,TaxEを容易に算出できる。
【0095】
また本実施形態によれば、動弁系部品の排気バルブ6の平衡温度TdEh若しくは温度変化割合Aは、排気温度から算出する。このため、平衡温度TdIh若しくは温度変化割合Aは、排気温度と相関が高いため、マップにより容易に算出でき、これを用いてバルブクリアランス量VCLRI,VCLREの算出が容易にできる。
【0096】
また本実施形態によれば、動弁系部品(吸気バルブ5,排気バルブ6)の熱変形によるバルブクリアランス変化量VDCLRI,VDCLREと、シリンダヘッドの熱変形によるバルブクリアランス変化量VCLRSTDI,VCLRSTDEとを別々に算出し、両者から、実バルブクリアランス量VCLRI,VCLREを算出する。このため、シリンダヘッド27に対する動弁系部品の熱変形量が精度良く算出できる。
【0097】
また本実施形態によれば、シリンダヘッド27の熱変形によるバルブクリアランス変化量VCLRSTDI,VCLRSTDEは、シリンダヘッド27の温度がエンジンの冷却水温度Twに等しいとして算出する。このため、シリンダヘッド27の熱変形によるバルブクリアランス変化量VCLRSTDI,VCLRSTDEを簡略化して算出できる。
【0098】
なお、上述したバルブクリアランス量VCLRI,VCLREを精度良く算出することで、特許文献1に示した吸入新気量等の算出精度を向上できる。そして、バルブクリアランス量VCLRI,VCLREに基づいて、バルブ5,6の開口面積、内部EGR量などの算出誤差を小さくすることができ、この内部EGR量に応じて、点火時期、燃料噴射量、バルブ開閉タイミングなどを補正する制御を行うことで、運転性の向上や燃費・排気等の改善を図ることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関のバルブクリアランス量推定装置の構成図
【図2】エンジンの主要部を示す断面図
【図3】バルブクリアランス量を算出するための考え方を示す概略図
【図4】バルブクリアランス量推定装置の制御構成図
【図5】バルブ代表温度の算出フローチャート
【図6】温度上昇分平衡温度算出マップ
【図7】低発熱量算出テーブル
【図8】温度変化割合算出マップ
【図9】水温平衡状態のクリアランス量算出マップ
【図10】燃焼室に面する部品の温度推定制御構成図
【図11】バルブ温度の推定制御構成図
【図12】バルブ傘方向代表温度からバルブ軸方向の代表温度を算出する制御構成図
【図13】バルブ平衡温度算出テーブル
【図14】発熱量変化係数算出テーブル
【図15】熱伝達率及び有効面積に相当する係数算出マップ
【図16】バルブ温度変化割合算出マップ
【符号の説明】
1 エンジン
5 吸気バルブ
6 排気バルブ
5a,6a バルブ傘部
5b,6b バルブ軸部
14 クランク角センサ
15 水温センサ
16 吸気側カム角センサ
17 排気側カム角センサ
18 アクセル開度センサ
24 吸気カム
25 排気カム
40 ECU

Claims (13)

  1. 実バルブクリアランス量を、動弁系部品の熱変形によるバルブクリアランス変化量に基づいて算出し、
    前記動弁系部品の熱変形によるバルブクリアランス変化量を、動弁系部品のバルブ傘部の径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量と、動弁系部品の軸方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量とに分離して算出することを特徴とする内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  2. 前記動弁系部品のバルブ傘部の径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量は、バルブ傘部とバルブシートとの接触角度に基づいて算出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  3. 前記動弁系部品のバルブ傘部の径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量は、前記接触角度を45度として計算することを特徴とする請求項2記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  4. 前記動弁系部品のバルブ傘部の径方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量と、前記動弁系部品の軸方向の熱変形によるバルブクリアランスの変化量とは、それぞれ別々の代表温度に基づいて算出することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  5. 前記動弁系部品の軸方向の代表温度は、前記バルブ傘部の径方向の代表温度から推定することを特徴とする請求項4記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  6. 前記バルブ傘部の径方向の代表温度は、エンジン水温、吸入空気量、目標燃焼当量比及びエンジン回転数から算出したバルブ平衡温度を用いて算出し、前記動弁系部品の他の部位の温度は、前記バルブ傘部の径方向の代表温度に補正係数をかけることで算出することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  7. 前記バルブ傘部の径方向の代表温度は、吸入空気量及びエンジン回転数から算出した温度変化割合を用いて算出することを特徴とする請求項6記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  8. 前記バルブ傘部の径方向の代表温度は、エンジン水温、吸入空気量、目標燃焼当量比及びエンジン回転数から算出したバルブ平衡温度に対して、エンジン水温からの温度上昇量が時間遅れで追従し、エンジン水温からの温度上昇量とエンジン水温とを加算することで算出することを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1つに記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  9. 前記動弁系部品の軸方向の代表温度は、前記バルブ傘部の径方向の代表温度を基準温度として、前記動弁系部品を軸方向に均等分した各部位の温度の平均値により算出することを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  10. 前記動弁系部品の軸方向の代表温度は、前記バルブ傘部の径方向の代表温度に補正係数を乗算することで算出することを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  11. 前記動弁系部品の排気バルブの平衡温度若しくは温度変化割合は、排気温度から算出することを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  12. 前記実バルブクリアランス量を、前記動弁系部品の熱変形によるバルブクリアランス変化量と、シリンダヘッドの熱変形によるバルブクリアランス変化量とに基づいて算出することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
  13. 前記シリンダヘッドの熱変形によるバルブクリアランス変化量は、前記シリンダヘッドの温度がエンジンの冷却水温度に等しいとして算出することを特徴とする請求項12記載の内燃機関のバルブクリアランス量推定装置。
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